説明

油入電気機器

【課題】外部に漏れ出た油のしずくが容器の下端部まで垂れる間に、油を吸収して、油のしずくの量をできる限り少なくしたり、油の垂れる時間をできる限り長くしたりすることができるようにする。
【解決手段】容器2の表面2aにおいて、容器2から外部に漏れ出た油のしずくを受け流すように、容器2の周方向および高さ方向の少なくともいずれか一方向に配置される油検知部10を、容器2の周方向において、互いの内端部が近接するように、かつ、内側に向かうにしたがって下降傾斜するように配置される一対の第1油検知部10A,10Aと、両端部が第1油検知部10A,10Aの内端部間よりも外側に延出されるようにして、第1油検知部10A,10Aの内側部間の下方に配置される第2油検知部と10Bで構成し、前記各油検知部10A,10Bが油のしずくを吸収して変色するのを外部から視認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容されている絶縁油の漏れを検出できるようにした油入電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の油入電気機器として、油入コンデンサを例にとって説明する(例えば、特許文献1参照)。該油入コンデンサは、容器と、電極とを備えている。容器は、底壁部と、側壁部と、蓋体とを有している。底壁部は、平面視矩形状の平板で構成されている。側壁部は、帯状の板体が、底壁部の周縁部に沿うように折り曲げられて、前後および左右に側壁が配置されている。そして、側壁部は、前後左右に配置された側壁によって、矩形状の下面開口部および上面開口部を有している。そして、容器の下面開口部に底壁部が溶着されるとともに、容器の内部に、複数のコンデンサ素子が収容されている。また、容器の内部に、各コンデンサ素子の絶縁を図るべく、絶縁油が収容されている。そして、絶縁油が収容された状態で、容器の上面開口部に蓋体が溶着されて、容器が密閉される。そして、電極は、蓋体に気密に固着された複数の碍子と、該各碍子の軸心に貫設されるとともに、コンデンサ素子の一対の各端子に電気的に接続された棒状の導体とを備えている。
【0003】
そして、溶接された側壁部と蓋体との溶接部、および、側壁部と底壁部との溶接部に沿うように漏油検知剤が塗布されている。該漏油検知剤は、外部に漏れ出た絶縁油を吸収して変色する。この漏油検知剤の変色を目視でチェックすることで、容器から外部に漏れ出る漏油の有無を確認している。
【0004】
また、他の従来の油入電気機器として、柱上変圧器を例にとって説明する(例えば、特許文献2参照)。該柱上変圧器は、容器と、鉄心と、巻線と、ブッシングとを備えている。容器は、箱状に形成されている。鉄心は、環状に形成されている。巻線は、鉄心に巻装された、高電圧巻線および低電圧巻線を有している。そして、容器内に、鉄心、高電圧巻線よび低電圧巻線が収容されるとともに、絶縁油が収容されている。したがって、鉄心、高電圧巻線よび低電圧巻線は、絶縁油に浸漬されて、電気的な絶縁が図られている。また、容器は、支持部材によって電柱に装柱される。該支持部材は、底部と、側部とを備えている。底部は、平面視円形状となっている。そして、底部には、所定の間隔をおいて複数の開口部が形成されている。また、支持部材は、後述する検知体を備えている。ブッシングは、磁気部材で作製されて、本体に貫設されている。そして、ブッシングの軸心部に挿通された導体が、本体の内部の高電圧巻線および低電圧巻線に電気的に接続されている。
【0005】
ここで、検知体について説明する。該検知体は、一対の吸着体と、着色剤とを備えている。吸着体は、円板状に形成されて、上下に積み重ねられている。着色剤は、各吸着体の間に挟み込まれている。そして、外部に漏れ出た絶縁油が吸着体に吸着されて全体に広がる。この際、着色剤が、吸着された絶縁油によって溶解して、絶縁油内に拡散する。そして、着色された絶縁油が各吸着体に拡散し、吸着体が変色する。この変色した吸着体を、支持部材の開口部から視認することで、絶縁油が外部に漏れ出たことを、点検者が確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平3−9312号公報
【特許文献2】特開2005−156195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したいずれの油入電気機器も、外部に漏れ出た絶縁油を吸収して変色するだけで、漏れ出た絶縁油のしずくが容器の下端部まで垂れ落ちるまでの間に、絶縁油のしずくを吸収して、絶縁油の垂れ落ちる量をできる限り少なくしたり、絶縁油の垂れ落ちる時間をできる限り長くしたりする工夫はされていない。
【0008】
そこで、本発明は、外部に漏れ出た油のしずくが容器の下端部まで垂れ落ちるまでの間に、油のしずくを吸収して、油のしずくが容器の下端部まで垂れ落ちる量をできる限り少なくしたり、油のしずくが垂れ落ちる時間をできる限り長くしたりすることができる油入電気機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る油入電気機器は、絶縁油が収容される容器を備え、該容器から外部に漏れ出た油のしずくを受け流すように、容器の表面において、周方向および高さ方向の少なくともいずれか一方向に、前記油のしずくを受け流しつつ吸収して変色する油検知部が配置されることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、容器から外部に漏れ出た油のしずくを受け流しつつ吸収して変色する油検知部を、容器の表面において、周方向および高さ方向の少なくともいずれか一方向に、油のしずくを受け流すように配置するようにしたので、油のしずくが、容器の表面を略直線状に流下するのではなく、油検知部に受け流されて容器の表面を流下するようになる。この際、油検知部によって、油のしずくが受け流されつつ吸収されることで、油のしずくの流下速度も小さくなり、油のしずくが容器の下端部まで垂れ落ちるまでに時間がかかるようになる。また、油検知部が油のしずくを吸収して変色するため、変色した油検知部を外部から目視することで、容器からの油漏れを容易に確認できるようになる。
【0011】
また、本発明によれば、前記油検知部は、前記表面の周方向において、互いの内端部が近接するように配置される一対の第1油検知部と、両端部が第1油検知部の内端部間よりも外側に延出されるようにして、第1油検知部の内端部間の下方に配置される第2油検知部とで、少なくとも構成される。
【0012】
かかる構成によれば、一対の第1油検知部の内端部が、容器の表面の周方向において、近接するように配置されるので、漏れ出た油のしずくが第1油検知部間を通過しづらくなり、油量が吸収されやすくなる一方、流下速度も小さくなる。また、第2油検知部の両端部が、第1油検知部の内端部間よりも外側に延出されるので、第1油検知部間を通過した油のしずくが、第2油検知部で受け止められるようになり、油のしずくの量および流下速度がより一層小さくなる。
【0013】
また、本発明によれば、前記各第1油検知部は、内側または外側に向かうにしたがって下降傾斜する傾斜部を有するような構成を採用することもできる。
【0014】
かかる構成によれば、第1油検知部の傾斜部によって、油のしずくの流下速度が大きくなりつつも、内側または外側に向かうにしたがって下降傾斜する距離だけ、油のしずくが吸収される量が多くなるとともに、容器の下端部に垂れ落ちるまでの時間を稼ぐことができる。
【0015】
また、本発明によれば、前記第2油検知部は、前記各第1油検知部とは逆勾配の傾斜部を有するような構成を採用することもできる。
【0016】
かかる構成によれば、第2油検知部の傾斜部が、前記各第1油検知部とは逆勾配となることで、より一層、油のしずくが吸収される量が多くなるとともに、垂れ落ちるまでの時間を稼ぐことができる。
【0017】
また、本発明によれば、前記容器の表面において、周方向に配置される最上部の油検知部は、周方向に沿って線が描かれるように形成されるような構成を採用することもできる。
【0018】
かかる構成によれば、容器の上側に配置される油検知部によって、容器の周方向に沿って線を描くように形成される油検知部によって、油のしずくの流下が周方向に沿って受け流されつつ、吸収されるようになる。
【0019】
前記最上部の油検知部の下方に配置される油検知部は、前記線の太さおよび長さの少なくともいずれか一方が、下側に配置される油検知部ほど大きくなるように形成されるような構成を採用することもできる。
【0020】
かかる構成によれば、下側に配置される油検知部ほど、線の太さおよび長さの少なくともいずれか一方が大きくなるので、油のしずくを吸収する面積、変色する面積、容器の下端部に垂れ落ちるまでの時間が、前記大きさに比例して大きくなる。
【0021】
また、本発明によれば、前記容器は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される柱上変圧器の容器であり、前記各油検知部は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される側の容器の表面に設けられるような構成を採用することもできる。
【0022】
かかる構成によれば、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングから漏れ出る絶縁油を、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される側の容器の表面に設けられる各油検知部によって、油量を吸収しつつ、容器の下端部に至るまでの油のしずくの流下速度を小さくできる。また、電柱の上部に装柱される容器であっても、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される側の容器の表面に設けられる各油検知部が変色するので、地上から容易に視認することができる。
【0023】
また、本発明によれば、前記容器は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシング並びに放熱フィンが配置される柱上変圧器の容器であり、前記各油検知部は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される側の容器の表面、放熱フィンの各フィン部間の面、各フィン部の隣り合う放熱面に対して適宜設けられるような構成を採用することもできる。
【0024】
かかる構成によれば、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングから漏れ出る絶縁油を、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシング並びに放熱フィンが配置される側の容器の表面、放熱フィンの各フィン部間の面、各フィン部の隣り合う放熱面に対して適宜設けられる各油検知部によって、油量を吸収しつつ、容器の下端部に至るまでの油のしずくの流下速度を小さくできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、容器の表面において、容器から外部に漏れ出た油のしずくを受け流すように、容器の周方向および高さ方向の少なくともいずれか一方向に、油のしずくを受け流しつつ吸収して変色する油検知部を前記表面に配置するようにしたので、油のしずくが容器の下端部まで垂れ落ちるまでの間に、油のしずくを吸収して、油の垂れ落ちる量をできる限り少なくすることができるとともに、垂れ落ちるまでの時間をできる限り長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置された小容量の柱上変圧器の平面図、(b)は、図1(a)の正面図、(c)は、図1(a)の側面図。
【図2】低圧側ブッシングが配置された容器の表面に油検知部を配置した、本発明の実施形態に係る柱上変圧器を示す概略正面図。
【図3】図1の柱上変圧器が電柱に装柱された状態を示す斜視図。
【図4】(a)は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシング並びに放熱フィンが配置された大容量の柱上変圧器の平面図、(b)は、図4(a)の正面図、(c)は、図4(a)の側面図。
【図5】図4の柱上変圧器における容器の表面に油検知部を配置した、本発明の他の実施形態に係る柱上変圧器を示す概略正面図。
【図6】(a)〜(d)は、低圧側ブッシングが配置された容器の表面に、油検知部としての油検知剤を塗布した、小容量の柱上変圧器の変形例を示す概略正面図。
【図7】低圧側ブッシングが配置された容器の表面に、油検知剤が塗布されたテープを貼着した、小容量の柱上変圧器の変形例を示す概略正面図。
【図8】(a)〜(c)は、低圧側ブッシングおよび放熱フィンが配置された容器の表面に、油検知部としての油検知剤を塗布した、大容量の柱上変圧器の変形例を示す概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る油入電気機器の実施形態につき、容量の小さい10kVAの柱上変圧器を例にとって、図1(a)〜(c)〜図3を参照しながら説明する。
【0028】
該柱上変圧器1は、図1(a)〜(c)および図2に示すように、容器2と、該容器2の底板3と、容器2の蓋板4とを備えている。
【0029】
容器2は、箱状に形成されている。この容器2の内部には、図示していない鉄心、高電圧巻線よび低電圧巻線が収容されるとともに、絶縁油(以下、単に油という場合もある)が収容されている。そして、鉄心、高電圧巻線および低電圧巻線は、絶縁油に浸漬されて、電気的な絶縁が図られている。また、容器2の表面には、低圧側ブッシング5が配置され、図1(a)に示す該低圧側ブッシング5の中心を通る前後方向の中心線Pに対して等間隔(120度間隔)に、一対の高圧側ブッシング6,6が配置されている。また、容器2の表面2aにおいて、低圧側ブッシング5および高圧側ブッシング6,6の下方に、後述する油検知部10が配置されている(図2参照)。
【0030】
そして、図3に示すように、柱上変圧器1は、電柱11の上部に装柱され、高圧送電線12から引き下げられた各線120,120が、一対の碍子13,13を介して、柱上変圧器1の高圧側ブッシング6,6に接続される。一方、柱上変圧器1の低圧側ブッシング5から導出された線50,…が、各需要家に配線されて、各需要家に電力が供給される。
【0031】
油検知部10は、低圧側ブッシング5および高圧側ブッシング6,6から外部に漏れ出た油のしずくを受け流しつつ吸収して変色する油検知剤が使用される。この油検知剤は、容器2の表面2aにおいて、外部に漏れ出た油を受け流すように、周方向および高さ方向の少なくともいずれか一方向に配置されている。具体的に説明すると、図2に示すように、容器2の表面2aの周方向において、互いの内端部が近接するように配置される一対の直線状の第1油検知部10A,10Aと、該第1油検知部10A,10Aの内端部間よりも両端部が外側に延出されるようにして、内側部間の下方に配置される直線状の第2油検知部10Bとを備えている。そして、各第1油検知部10A,10Aは、近接するにしたがって下降傾斜する傾斜部を有している。また、第2油検知部10Bは、各第1油検知部10A,10A間の距離よりも大きい長さを有している。
【0032】
そして、低圧側ブッシング5から油が外部に漏れ出た場合、各第1油検知部10A,10Aの傾斜部に向かって流下する油のしずくは、該傾斜部に沿って各第1油検知部10A,10Aの内端部へ流下し、該内端部から下方の第2油検知部10Bの直線状部に向かって流下する。この際、第1油検知部10A,10Aおよび第2油検知部10Bは、流下する油のしずくを受け流しつつ吸収して変色する。
【0033】
このように、本実施形態にかかる柱上変圧器(油入電気機器)1によれば、互いの内端部が近接するように、一対の直線状の第1油検知部10A,10Aが配置され、該第1油検知部10A,10Aの内端部間よりも両端部が外側に延出されるように、各内端部間の下方に、直線状の第2油検知部10Bが配置されているので、外部に漏れ出た油のしずくが容器2の下端部まで垂れ落ちるまでの間に、油を吸収して、油の垂れ落ちる量をできる限り少なくしたり、油の垂れ落ちる時間をできる限り長くしたりすることができる。
【0034】
つぎに、容量の大きい30kVAの柱上変圧器15を例にとって、図4(a)〜(c)および図5を参照しながら説明する。図1(a)〜(c)の柱上変圧器1と異なる点は、低圧側ブッシング5および高圧側ブッシング6,6が配置されている側の面に、放熱フィン7,…が配置されている点である。該放熱フィン7は、図5に示すように、低圧側ブッシング5の下方の周面に複数のフィン部70,…が所定の間隔をおいて、上下方向に配置されている。各フィン部70,…は、断面がV字形状を呈しており、放熱フィン70,…の下端部の両側に、近接する内端部が下降するにしたがって下降傾斜する一対の直線状の第1油検知部10A,10Aと、第1油検知部10A,10Aの内端部間の下方に水平方向に配置された第2油検知部10Bとを備えている。
【0035】
そして、低圧側ブッシング5から外部に油が漏れた場合、各放熱フィン7のフィン部70,70間を通って流下する。また、容器20の表面20aと、フィン部70の各放熱面700,700とによって形成される空間を通って流下する。また、放熱フィン7の外側の面を通って流下する。そして、各第1油検知部10A,10Aの傾斜部に向かって流下する油は、該傾斜部に沿って各第1油検知部10A,10Aの内端部へ流下し、該内端部から下方の第2油検知部10Bの直線状部に向かって流下する。この際、第1油検知部10A,10Aおよび第2油検知部10Bは、流下する油のしずくを受け流しつつ吸収して変色する。
【0036】
このように、放熱フィン7が配置された大容量の柱上変圧器15においても、図2に示す柱上変圧器1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0037】
以下、油検知部10の変形例1〜5について図6〜図8を参照して説明する。
(変形例1)
まず、変形例1について説明する。この変形例1は、油検知部として、油を吸収して変色する油検知剤が使用されている。そして、図6(a)に示すように、低圧側ブッシング5が配置された容器2の表面2a、具体的には、低圧側ブッシング5の下側の面において、低圧側ブッシング5の中心を通る上下方向の中心線Pを基準にして、該中心線Pから外側に向かうにしたがって下降傾斜(例えば、15〜30度)にするように、かつ、漏れ出る絶縁油を吸収できる幅寸法(例えば、3〜5cm)で、直線状(15〜20cmの長さ)に油検知剤が塗布されて、一対の第1油検知部10A,10Aが形成されている。そして、各第1油検知部10A,10Aの下方において、外側から前記中心線Pに向かうにしたがって下降傾斜するように、直線状に油検知剤が塗布されて、一対の第2油検知部10B,10Bが形成されている。
【0038】
この際、第1油検知部10A,10Aの内端部間の距離よりも、第2油検知部10B,10Bの内端部間の距離が大きくなるように、油検知剤が塗布される。また、第1検知部10A,10Aの外端部間の距離よりも、第2検知部10B,10Bの外端部間の距離が大きくなるように、油検知剤が塗布される。
【0039】
そして、第2油検知部10B,10Bの下方に、前記第1油検知部10A,10Aと同様に、一対の第3油検知部10C,10Cが形成される。この際、第2油検知部10B,10Bの内端部間の距離よりも、第3検知部10C,10Cの内端部間の距離が小さくなるように、油検知剤が塗布される。また、第2油検知部10B,10Bの外端部間の距離よりも、第3油検知部10C,10Cの外端部間の距離が小さくなるように、油検知剤が塗布される。
【0040】
上述した第1〜第3油検知部10A〜10Cの長さ寸法、幅寸法、内端部の位置、外端部の位置、傾斜角度を設定した理由は、低圧側ブッシング5から漏れ出た油のしずくが、容器2の下端部まで垂れ落ちるまでの時間が長くなるように、かつ、油検知剤に吸収されやすくなるようにするためである。
【0041】
(変形例2)
つぎに変形例2について説明する。この変形例2は、油検知部として、油を吸収して変色する油検知剤が使用されている。そして、図6(b)に示すように、一対の第1油検知部10D,10Dと、第2油検知部10Eと、一対の第3油検知部10F,10Fと、第4油検知部10Gとを備えている。第1油検知部10D,10Dは、1/4円弧状で、互いの内端部が下向きになるように油検知剤が塗布され、外端部が外向きになるように油検知剤が塗布されている。第2油検知部10Eは、第1油検知部10D,10Dの下方に配置され、1/2円弧状に油検知剤が塗布され、第1油検知部10D,10Dの内端部間の下方に配置されている。また、第2油検知部10Eは、その直径が、各第1油検知部10D,10Dの内端部間の距離よりも小さくなっている。また、第2油検知部10Eは、外周部の両端部が、各第1油検知部10D,10Dの内端部よりも内側に位置している。第3油検知部10F,10Fは、第2油検知部10Eの下方に配置され、1/4円弧状部100Fと、該円弧状部100Fの外端部から外方に向かって延出される直線状の延出部101Fとを備えるように油検知剤が塗布されている。第4油検知部10Gは、第3油検知部10F,10Fの下方に配置され、第2油検知部10Eと同様、1/2円弧状に油検知剤が塗布され、外周部の両端部が、各第3油検知部10F,10Fの内端部よりも内側に位置している。この理由としては、低圧側ブッシング5から漏れ出た油のしずくが、容器2の下端部まで流下する時間が長くなるように、かつ、油検知剤に吸収されやすくなるようにするためである。
【0042】
そして、低圧側ブッシング5から漏れ出た油のしずくは、第1油検知部10D,10Dの内端部に向かって流下し、第2油検知部10Eの両端部から受け流されて、第3油検知部10F,10Fおよび第4油検知部10Gに流下し、その後、各第3油検知部10F,10Fの内端部から第4油検知部10Gの両端部に流下する。一方、第1油検知部10D,10Dの外端部から流下した油のしずくは、第3油検知部10Fで受け流される。この際、第1〜第4油検知部10D〜10Gによって、油のしずくが受け流されつつ吸収されて、第1〜第4油検知部10D〜10Gが変色する。
【0043】
(変形例3)
つぎに変形例3について説明する。この変形例3は、油検知部として、油を吸収して変色する油検知剤が使用されている。そして、図6(c)に示すように、油検知部10は、容器2の周方向に沿って線を描くように形成されている。具体的に説明すると、第1油検知部10Hは、両端部が跳ね上がるように、中央部が緩やかに隆起するように、連続した曲線を描くように、油検知剤が塗布されている。この際、下側の第2および第3油検知部10I,10Jほど、全体が外方に向かって引き延ばされている。具体的に説明すると、第1油検知部10Hの両端部よりも、第2油検知部10Iの両端部が外側に位置し、第2油検知部10Iの両端部よりも、第3油検知部10Jの両端部が外側に位置している。
【0044】
そして、第1油検知部10Hの隆起部100Hに流下した油のしずくは、左右に分流されて、第1油検知部10Hの両端部に向かって流れ、該両端部から第2油検知部10Iの両端部に向かって流下する。第1油検知部10Hの隆起部100Hを越えて流下した油のしずくは、第2油検知部10Iの隆起部100Iに受け流されて左右に分流される。その後、第2油検知部10Iの両端部に向かって流れ、該両端部から第3油検知部10Jの両端部に向かって流下する。第2油検知部10Iの隆起部100Iを越えて流下した油のしずくは、第3油検知部10Jの隆起部100Jに受け流されて左右に分流される。その後、第3油検知部10Jの両端部に向かって流下する。
【0045】
(変形例4)
つぎに変形例4について説明する。この変形例4は、油検知部として、油を吸収して変色する油検知剤が使用されている。そして、図6(d)に示すように、変形例3と同様に、油検知部10は、容器2の周方向に沿って線を描くように形成されている。具体的に説明すると、第1油検知部10Kは、斜め下方に下降傾斜する緩やかな円弧状になるように、油検知剤が塗布されている。第2油検知部10Lは、第1油検知部10Kの勾配よりもやや急勾配になるように、油検知剤が塗布されている。また、第2油検知部10Lは、第1油検知部10Kの長さよりもやや大きくなるように、油検知剤が塗布されている。そして、第2油検知部10Lの一端部は、第1油検知部10Kの一端部よりもやや外側に位置し、第2油検知部10Lの他端部は、第1油検知部10Kの他端部よりも外側に位置している。第3油検知部10Mは、第1油検知部10Kの同じ勾配になるように、油検知剤が塗布されている。また、第3油検知部10Mの両端部は、第2油検知部10Lの両端部からやや外側に位置している。
【0046】
そして、低圧側ブッシング5から漏れ出た油のしずくは、第1油検知部10Kに沿って斜め下方に流下する。その後、第2油検知部10Lの下側の端部に流下する。続いて、第3油検知部10Mの下側の端部に流下する。最後に、第3油検知部10Mの下側の端部から容器2の下端部に向かって流下する。一方、第1油検知部10Kの上側の端部を越えて流下する油のしずくは、第2油検知部10Lの傾斜に沿うように流下する。続いて、第3油検知部10Mの下側の端部に流下する。
【0047】
(変形例5)
つぎに変形例5について説明する。この変形例5は、油検知部10として、油検知剤が塗布されたテープが使用されている。そして、図7に示すように、直径5〜8cmの円形状に切断加工されたテープT1と、縦寸法3〜5cm、横寸法20〜25cmの矩形状に切断加工されたテープT2とが周方向および高さ方向に交互に貼着されている。具体的に説明すると、低圧側ブッシング5が配置されている容器2の表面2aの両側に、一対の円形状のテープT1,T1が貼着されている。また、各テープの間、すなわち、低圧側ブッシング5の中心を通る上下方向の中心線Pに位置するように、容器2の周方向に沿って矩形状のテープT2が貼着されている。そして、上述した一対の円形状のテープT1と、矩形状のテープT2とで、第1油検知部10Pが形成されている。この第1油検知部10Pの下方に、一対の矩形状のテープT2,T2と、円形状のテープT1とで形成される第2油検知部10Qが配置されている。そして、第2油検知部10Qの下方に、第1油検知部10Pおよび第2油検知部10Qと同様に構成された、第3および第4油検知部10R,10Sが形成されている。
【0048】
この際、第2および第4油検知部10Q,10Sの矩形状のテープT2の各内端部が、第2および第4油検知部10Q,10Sの円形状のテープT1に近接するように貼着されている。また、第1および第3油検知部10P,10Rの円形状のテープT1は、その下側の第2および第4油検知部10Q,10Sの矩形状のテープT2の外端部よりもやや外側に位置している。
【0049】
この場合、第2および第4油検知部10Q,10Sの矩形状のテープT2の各内端部が、第2および第4油検知部10Q,10Sの円形状のテープT1に近接するように貼着されることから、容器2の中央部においては、油のしずくが流れにくくなっている。また、第1および第3油検知部10P,10Rの円形状のテープT1は、その下側の第2および第4油検知部10Q,10Sの矩形状のテープT2の外側端部よりもやや外側に位置していることから、外側に向かって流れやすくなっている。また、矩形状のテープT2が水平方向に貼着されることによって、油のしずくが一旦滞留して流下したり、左右に分流して流下したりする。また、円形状のテープT1によって、油のしずくが周縁部に沿うように流下したり、左右に分流されて流下したりする。また、容器2の表面2aの略全体にテープT1,T2が貼着されているので、テープT1,T2が油を吸収して変色した場合は、視認しやすくなっている。
【0050】
なお、本発明は、前記各実施形態および変形例1〜5に限定されるものではなく、種々変更することができる。
【0051】
例えば、図8(a)に示すように、大容量の柱上変圧器15において、低圧側のブッシング5の下側に配置された放熱フィン7の外側を囲むように、油検知部としての油検知剤を塗布するようにしてもよい。具体的に説明すると、内側縁部が、矩形状になるように、かつ、外側縁部が、等脚台形状になるように油検知剤が塗布されて油検知部10Tが形成されている。この場合、容器2の下端部に向かうにしたがって油のしずくが外側に流下するようになる。また、上側の塗布部100Tを越えた油のしずくは、放熱フィン7の各フィン部70間、および、フィン部70の各放熱面700と容器2の面とで形成される間隙を通って流下し、下側の塗布部101Tによって吸収される。
【0052】
また、図8(a)に示す油検知部10Tの構成に加えて、図8(b)に示すように、放熱フィン7の各フィン部70を囲むように、油検知剤が塗布されて、油検知部10U,10Uが形成される。この油検知部10U,10Uは、各フィン部70の間を流下する油を吸収しつつ変色することになる。
【0053】
また、図8(c)示すように、放熱フィン7の上部において、左側のフィン部70の左側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて、油検知剤が塗布されたテープT1を水平方向に貼着する。右側のフィン部70の右側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて、テープT1を水平方向に貼着する。また、放熱フィン7の中央のフィン部70の左側の放熱面700と、左側のフィン部70の右側の放熱面700と、中央のフィン部70と左側のフィン部70との間の面2aとに亘って、テープT2を水平方向に貼着する。また、放熱フィン7の中央のフィン部70の右側の放熱面700と、右側のフィン部70の左側の放熱面700と、中央のフィン部70と右側のフィン部70との間の面2aとに亘って、テープT2を水平方向に貼着する。これらの各テープT1,T2によって第1油検知部Xを形成する。
【0054】
つぎに、放熱フィン7の中央部において、左側のフィン部70の左側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて、テープT1を水平方向に貼着する。また、右側のフィン部70の右側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて、テープT1を水平方向に貼着する。そして、左側のフィン部70の右側の放熱面700と、左側のフィン部70と中央のフィン部70との間の面2aとに亘って、テープT3を斜め下方に向けて貼着する。また、その下方に、中央のフィン部70の左側の放熱面700と、左側のフィン部70と中央のフィン部70との間の面2aとに亘って、テープT3を斜め下方に向けて貼着する。また、その下方に、左側のフィン部70の傾斜した右側の放熱面700と、左側のフィン部70と中央のフィン部70との間の面2aとに亘って、テープT3を斜め下方に向けて貼着する。これらの各テープT1〜T3によって、第2油検知部10Wを形成する。
【0055】
つぎに、放熱フィン7の下部において、第1油検知部10Xと同様に、テープT1,T2を貼着して、第3油検知部10Yを形成する。なお、左側のフィン部70の左側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて貼着されるテープT1、および、右側のフィン部70の右側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて貼着されるテープT1は、下側ほど外方に延出される長さが大きくなっている。
【0056】
この場合、各フィン部70間に水平方向に貼着された第1および第3油検知部10X,10Yの各テープT1,T2と、各フィン部70間に斜め下方に向けて貼着された第2油検知部10Wの各テープT3とによって、各フィン部70の間の油のしずくが流下しにくくなる。また、左側のフィン部70の左側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて貼着されるテープT1、および、右側のフィン部70の右側の放熱面700から容器2の表面2aにかけて貼着されるテープT1が、下側ほど外方に延出される長さが大きくなっていることから、外側に向かって流下しやすくなっている。
【0057】
また、前記実施形態、変形例の場合、低圧側ブッシング5が配置されている側の容器2の表面2aに油検知部を形成してものを、例にとって説明したが、高圧側ブッシング6,6が配置されている側の容器2の表面2aにも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1…柱上変圧器(油入電気機器)、2…容器、2a…表面、5…低圧側ブッシング、6…高圧側ブッシング、7…放熱フィン、70…フィン部、700…放熱面、10…油検知部、10A、10D,10H,10K,10P,10X…第1油検知部、10B,10E,10I,10L,10Q,10W…第2油検知部、10C,10F,10R,10Y…第3油検知部、10G,10S…第4油検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁油が収容される容器を備え、該容器の表面において、容器から外部に漏れ出た油のしずくを受け流すように、容器の周方向および高さ方向の少なくともいずれか一方向に、前記油のしずくを受け流しつつ吸収して変色する油検知部が前記表面に配置されることを特徴とする油入電気機器。
【請求項2】
前記油検知部は、前記容器の周方向において、互いの内端部が近接するように配置される一対の第1油検知部と、両端部が第1油検知部の内端部間よりも外側に延出されるようにして、第1油検知部の内端部間の下方に配置される第2油検知部とで、少なくとも構成されることを特徴とする請求項1に記載の油入電気機器。
【請求項3】
前記各第1油検知部は、内側または外側に向かうにしたがって下降傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項2に記載の油入電気機器。
【請求項4】
前記第2油検知部は、前記各第1油検知部とは逆勾配の傾斜部を有することを特徴とする請求項3に記載の油入電気機器。
【請求項5】
前記容器の表面において、周方向に配置される最上部の油検知部は、周方向に沿って線が描かれるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の油入電気機器。
【請求項6】
前記最上部の油検知部の下方に配置される油検知部は、前記線の太さおよび長さの少なくともいずれか一方が、下側に配置される油検知部ほど大きくなるように形成されることを特徴とする請求項5に記載の油入電気機器。
【請求項7】
前記容器は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される柱上変圧器の容器であり、前記各油検知部は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される側の容器の表面に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の油入電気機器。
【請求項8】
前記容器は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシング並びに放熱フィンが配置される柱上変圧器の容器であり、前記各油検知部は、低圧側ブッシングおよび高圧側ブッシングが配置される側の容器の表面、放熱フィンの各フィン部間の面、各フィン部の隣り合う放熱面に対して適宜設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の油入電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50346(P2013−50346A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187534(P2011−187534)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】