説明

油化装置及び油化方法

【課題】不純物成分の付着が少なく、且つ清掃が容易な油化装置及び油化方法を提供する。
【解決手段】油化装置40は、プラスチック48を入れる加熱槽41と、加熱槽41内のプラスチック48を加熱する熱源41cと、加熱槽41の上方に配置された冷却分離槽42と、加熱槽41で発生した蒸気を冷却分離槽42に導く蒸気管47と、分離液タンク43とを有する。冷却分離槽42は、プラスチック48から発生した蒸気を冷却して液体とし、液体を比重の差を利用して油分55と沈殿物56とに分離する。分離液タンク43は、は油分55と沈殿物56との間の比重を有する分離液57を貯留し、冷却分離槽42に分離液57を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油化装置及び油化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エコロジー及び地球環境保全の観点から、廃棄物の再生利用が進められている。例えばコンピュータや携帯電話等の電子機器からは、電子機器の製造に欠かせない貴金属材料を回収している。また、電子機器に使用されているプラスチック(樹脂)から油分(油種)を抽出して再利用することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−253038号公報
【特許文献2】特開2006−44988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不純物成分の付着が少なく、且つ清掃が容易な油化装置及び油化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の技術の一観点によれは、プラスチックを入れる加熱槽と、前記加熱槽内のプラスチックを加熱する熱源と、前記加熱槽の上方に配置され、前記プラスチックから発生した蒸気を冷却して液体とし、前記液体を比重の差を利用して油分と沈殿物とに分離する冷却分離槽と、前記加熱槽で発生した蒸気を前記冷却分離槽に導く蒸気管と、前記油分と前記沈殿物との間の比重を有する分離液を貯留し前記冷却分離槽に前記分離液を供給する分離液タンクとを有する油化装置が提供される。
【0006】
開示の技術の他の一観点によれば、加熱槽に装入されたプラスチックを加熱する工程と、前記プラスチックの加熱により発生したガスを蒸気管を介して前記加熱槽の上方に配置された冷却分離槽内に導入し、前記冷却分離槽内で冷却して液体とする工程と、前記冷却分離槽内において前記液体を比重の差を利用して油分と沈殿物とに分離する工程とを有し、前記分離槽内に、前記油分と前記沈殿物との間の比重を有する分離液を入れる油化方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記一観点及び他の一観点によれば、加熱槽の上方に冷却分離槽が配置されているので、加熱槽と冷却分離槽とを連絡する蒸気管の長さを短くできる。これにより、不純物成分の付着量を少なくでき、清掃が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、油化装置の一例を表した模式図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る油化装置の構造を例示する模式図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る油化装置を用いた油化方法を説明する図(その1)である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る油化装置を用いた油化方法を説明する図(その2)である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る油化装置における油分回収後の洗浄処理を説明する図(その1)である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る油化装置における油分回収後の洗浄処理を説明する図(その2)である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る油化装置における油分回収後の洗浄処理を説明する図(その3)である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る油化装置の構造を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0010】
図1は油化装置の一例を表した模式図である。この図1に例示した油化装置10は、加熱槽11と、冷却槽12と、分離槽13とを有する。
【0011】
加熱槽11は蓋部11aと加熱槽本体11bとを有し、加熱槽本体11b内にプラスチック30を入れた後、蓋部11aを加熱槽本体11bの上にボルト及びナットにより固定する。
【0012】
加熱槽本体11bの周囲にはヒータ11cが配置されており、このヒータ11cにより加熱槽11内のプラスチック30を例えば300℃〜600℃程度に加熱する。この加熱によりプラスチック30は熱分解し、油分が揮発してガスが発生する。
【0013】
加熱槽11と冷却槽12とは配管21により接続されている。この配管21を介して、加熱槽11で発生したガスが冷却槽12に移動する。配管21の途中にはバルブ31が設けられている。このバルブ31は、油化装置10の稼動中、開状態に維持される。
【0014】
冷却槽12の周囲には放熱用フィン又は冷媒が通る冷却管等の冷却機構(図示せず)が設けられている。配管21を介して加熱槽11から冷却槽12に移動してきたガスは、冷却槽12内で冷却されて液体になる。この液体には油分だけでなく、プラスチックに添加された難燃剤やプラスチックの着色に使用された塗装材など、不純物となる種々の成分が含まれている。
【0015】
冷却槽12の底部にはバルブ32が接続されており、このバルブ32には配管22が接続されている。バルブ32も、油化装置10の稼動中は開状態に維持される。
【0016】
配管22のバルブ32と反対側の端部は、分離槽13の底部を挿通し分離槽13内の中央部まで延び出している。分離槽13は、配管22を介して冷却槽12から送られてくる液体を貯留し、比重の差を使用して油分35と沈殿物36とに分離する。分離槽13には、油分35(再生油)を取り出すためのコック33が設けられている。
【0017】
上述の油化装置10は、使用にともなって加熱槽11、冷却槽12、分離槽13及びそれらの間を接続する配管21,22等の内壁面に不純物成分が付着し、作業効率が低下したり、回収した油分(油種)に不純物成分が混入したりする。このため、比較的頻繁に清掃作業を行うことが必要である。
【0018】
以下の実施形態では、不純物成分の付着が少なく、且つ清掃が容易な油化装置及び油化方法について説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る油化装置の構造を例示する模式図である。
【0020】
図2のように、本実施形態に係る油化装置40は、加熱槽41と、冷却分離槽42と、分離液タンク43と、洗浄液タンク44と、フィルタ45と、ポンプ46と、制御部50とを有する。
【0021】
加熱槽41は蓋部41aと加熱槽本体41bとを有し、加熱槽本体41b内にプラスチック48を入れた後、蓋部41aを加熱槽本体41bの上にボルト及びナットにより固定する。加熱槽本体41bの周囲にはヒータ41cが配置されている。このヒータ41cに通電して加熱槽41内のプラスチック48を高温に加熱すると、プラスチック48は熱分解してガスが発生する。ヒータ41cは、加熱槽41内のプラスチックを加熱する熱源の一例である。
【0022】
冷却分離槽42は、加熱槽41の上に配置されている。加熱槽41の内部空間と冷却分離槽42の内部空間とは、加熱槽41の蓋部41aから垂直方向に延びる蒸気管(直管)47により連絡されている。蒸気管47は冷却分離槽42の底部を挿通し、その上端部は冷却分離槽42内の中央部よりも上方に位置している。加熱槽41で発生したガスは、蒸気管47を通って冷却分離槽42内に移動する。
【0023】
冷却分離槽42の周囲には放熱用フィン又は冷媒が通る冷却管等の冷却機構(図示せず)が設けられており、蒸気管47を介して加熱槽41から移動してきたガスは冷却分離槽42内で冷却されて液体になる。この液体には油分だけでなく不純物となる種々の成分が含まれているが、冷却分離槽42内で比重の差により油分55と沈殿物56とに分離される。
【0024】
冷却分離槽42には、分離された油分55を取り出すためのコック64と、第1の液面センサ51a及び第2の液面センサ51bとが設けられている。コック64は、冷却分離槽42の高さ方向のほぼ中央に配置されている。また、第1の液面センサ51aはコック64の下方に配置され、第2の液面センサ51bは第1の液面センサ51aの下方に配置されている。これらの液面センサ51a,51bとして、例えば光の透過率、反射率又は屈折率の変化により後述する分離液57と油分55との界面を検出する光学センサを使用することができる。
【0025】
また、冷却分離槽42の底部には、冷却分離槽42と加熱槽41とを連絡するドレイン配管63が設けられている。このドレイン配管63の途中にはドレインバルブ69が設けられている。このドレインバルブ69は、油化装置40の稼動中、制御部50により閉状態に維持される。
【0026】
更に、冷却分離槽42の底部近傍にはバルブ65が取り付けられており、このバルブ65はフィルタ45及び配管61(第1の配管)を介してポンプ46の吸引(サクション)側に接続されている。ポンプ46の吐出(デリバリー)側には配管(第2の配管)62が接続されており、この配管62の端部はバルブ66(第1のバルブ)を介して冷却分離槽42の高さ方向の中央部よりも若干下の部分に接続されている。
【0027】
また、配管62には、分離液57が貯留される分離液タンク43と、洗浄液58が貯留される洗浄液タンク44とが接続されている。分離液タンク43と配管62との間にはバルブ67(第2のバルブ)が設けられており、洗浄液タンク44と配管62との間にはバルブ68(第3のバルブ)が設けられている。バルブ65〜68は、制御部50からの信号に応じて開閉する。
【0028】
分離液タンク43には、分離液57として、油分55と沈殿物(不純物成分)56との間の比重であって油分55及び沈殿物56のいずれとも分離する液体を入れる。分離液57として例えば水を使用することができるが、本実施形態では分離液57として比重が1程度の市販の界面活性剤(液体洗剤)を使用する。
【0029】
また、洗浄液タンク44には、配管62、冷却分離槽42及び加熱槽41の洗浄に使用する洗浄液58を入れる。洗浄液58として、分離液57と同じ界面活性剤を使用してもよいが、分離液57よりも洗浄力が強い液体を使用することが好ましい。洗浄液58は、酸性又はアルカリ性の液体であってもよい。
【0030】
制御部50には操作パネル(図示せず)が設けられており、作業者は操作パネルを介して油化装置40の起動及び停止を指示する。また、油化装置40が稼働している間、制御部50はヒータ41cへの給電を制御したり、第1の液面センサ51a及び第2の液面センサ51bから入力される信号に基づいてポンプ46及びバルブ65〜67等を制御したりする。
【0031】
以下、上述の油化装置40を用いた油化方法について、図2及び図3〜図4を参照して説明する。初期状態では、コック64及びバルブ65〜69がいずれも閉状態であるとする。なお、図3〜図4では、加熱槽41等の図示を省略している。
【0032】
まず、作業者は、加熱槽本体41b内にプラスチック48を入れ、加熱槽本体41bの上に蓋部41aをボルト及びナットにより固定する。その後、作業者は、操作パネルを介して制御部50に油化装置40の稼動開始を指示する。
【0033】
稼働開始が指示されると、制御部50は、バルブ66,67を開にして、分離液タンク43内の分離液57を冷却分離槽42内に注入する(図3(a)参照)。そして、第2の液面センサ51bが分離液57の液面を検出すると、制御部50はバルブ66,67を閉とし、冷却分離槽42内への分離液57の注入を停止する。
【0034】
次に、制御部50は、ヒータ41cへの給電を開始する。ヒータ41cにより加熱槽41が所定温度(例えば300℃〜600℃)に加熱されると、加熱槽41内のプラスチック48が熱分解し、それにより発生したガスが蒸気管47を通って冷却分離槽42に移動する。
【0035】
冷却分離槽42では、加熱槽41から移動してきたガスが冷却されて液体になる。この液体には油分だけでなく、プラスチックに添加された難燃剤やプラスチックの着色に使用された塗装材など、不純物となる種々の成分が含まれている。なお、冷却分離槽42で液体とならないガスは、例えば冷却分離槽42の上部から燃焼装置(図示せず)に移送され、燃焼装置で燃焼される。
【0036】
冷却分離槽42内の液体は、比重の差により油分55と沈殿物56とに分離される。本実施形態では、前述したように冷却分離槽42内に予め比重が1程度の分離液57を入れている。このため、分離液57よりも比重が小さい油分55は分離液57の上に溜まり、分離液57よりも比重が大きい不純物成分は冷却分離槽42の底部に沈殿して沈殿物56となる(図3(b)参照)。
【0037】
一般的にプラスチックに含有される有機系難燃剤(例えば臭化化合物、リン化合物及び塩素化合物等)、無機系難燃剤(アンチモン化合物及び金属水酸化物等)及び塗装材は、比重が1よりも大きい。従って、難燃剤及び塗装材は分離液57の下に沈殿し、分離液57の上の油分55への難燃剤及び塗装剤の混入が抑制される。プラスチックに使用される代表的な難燃剤には、TBBA(テトラブロモビスフェノール)、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン及びTBBAカーボネートオリゴマー等がある。
【0038】
ところで、加熱槽41内でのプラスチックの熱分解にともなって冷却分離槽42内の油分55及び沈殿物56の量が増加し、分離液57と油分55との界面が上昇する(図3(c)。そして、第1の液面センサ51aが分離液57と油分55との界面を検出すると、制御部50は分離液57と油分55との界面が第1の液面センサ51aと第2の液面センサ51bとの間になるように、バルブ65,66,67及びポンプ46を制御する。
【0039】
例えば、バルブ66を閉、バルブ65,67を開にしてポンプ46を稼働させると、冷却分離槽42の底部の沈殿物56が分離液57とともにポンプ46の吸引側に向けて移動する。そして、沈殿物56はフィルタ45で捕捉され、分離液57はフィルタ45を透過する。フィルタ45を透過した分離液57は、ポンプ46から吐出され、配管62及びバルブ67を介して分離液タンク43に回収される(図4(a)参照)。
【0040】
分離液57が分離液タンク43に回収されると、冷却分離槽42内の分離液57と油分55との界面が第1の液面センサ51aの位置よりも低下する。そして、第2の液面センサ51bが分離液57と油分55との界面を検出すると、制御部50はバルブ67を閉、バルブ66を開にする(図4(b)参照)。
【0041】
これにより、フィルタ45を透過した分離液57が冷却分離槽42内に戻るので、分離液57と油分55との界面の低下が停止する。この状態では、フィルタ45により分離液57が濾過され、沈殿物56がフィルタ45に回収(捕捉)される。
【0042】
なお、分離液57と油分55との界面が第2の液面センサ51bよりも下になると、制御部50はバルブ66,67を開にして分離液タンク43から冷却分離槽42に分離液57を注入する。これにより、分離液57と油分55との界面が第2の液面センサ51bよりも上の位置になる。
【0043】
このようにして冷却分離槽42内の液面調整が行われている間も加熱槽41内ではプラスチック48の熱分解が行われ、それにより発生したガスが冷却分離槽42内に移動して、冷却分離槽42内の油分55の量が増加していく。
【0044】
加熱槽41内のプラスチック48の熱分解が完了すると、作業者は操作パネルを介して油化装置40に停止を指示する。これにより、制御部50は、ヒータ41cへの給電を停止する。また、制御部50は、ポンプ46の稼働を停止するとともに、バルブ65,66,67をいずれも閉にする。その後、作業者は、所定の時間だけ油化装置40を放置して、冷却分離槽42内の不純物成分を十分に沈殿させる。
【0045】
前述したように、本実施形態の油化装置40では、分離液57と油分55との界面が第1のセンサ51aの位置を超えないように、制御部50がポンプ46及びバルブ66,67を制御する。従って、不純物成分を十分に沈殿させた後にコック64を開くと、冷却分離槽42から油分55のみを取り出すことができる(図4(c)参照)。本実施形態では、冷却分離槽42内において油分55と沈殿物56との間に分離液57が介在するので、不純物成分の混入が少ない良質の油分(回収油)を得ることができる。
【0046】
以下、上述の油化装置40において、油分を回収した後の洗浄処理について、図5〜図7を参照して説明する。ここでは、初期状態において、バルブ65〜69がいずれも閉であるとする。
【0047】
冷却分離槽42から油分を回収した後、作業者が操作パネルを操作して制御部50に洗浄処理の開始を指示する。これにより、制御部50は、バルブ65,68を開にして、洗浄液タンク44内の洗浄液58をポンプ46及びフィルタ45を介して冷却分離槽42内に注入する(図5参照)。本実施形態では、ポンプ46が停止した状態で落差により洗浄液タンク44から冷却分離槽42に洗浄液58を流している。しかし、図示しないバルブによりポンプ46の吸引側と吐出側とを切り替えて、ポンプ46により洗浄液58をフィルタ45に向けて押し出してもよい。
【0048】
フィルタ45では、沈殿物56を捕捉するとき(図4(a)参照)とは逆方向に洗浄液58が流れるので、フィルタ45に捕捉されていた沈殿物が洗浄液58とともに冷却分離槽42に移動する。これにより、フィルタ45が洗浄される。
【0049】
洗浄液58の注入により、冷却分離槽42では洗浄液58と沈殿物56と分離液57とが混合した状態となる。図5〜図7では、沈殿物56及び分離液57が混合した洗浄液も、符号58で表している。冷却分離槽42に注入された洗浄液58により、冷却分離槽42内が洗浄される。
【0050】
その後、冷却分離槽42内で洗浄液58の液面が蒸気管47の上端の位置まで上昇すると、洗浄液58は蒸気管47を通って加熱槽41内に移動する。このとき、蒸気管47の内壁面に付着した不純物成分は、蒸気管47を通る洗浄液58により剥離され、洗浄液58とともに加熱槽41内に移動する。
【0051】
洗浄液58が注入される前の加熱槽41内の温度は比較的高い状態である。このため、蒸気管47から加熱槽41に洗浄液58が注入されると、洗浄液58は寸時に蒸発して蒸気が勢いよく発生する(図6参照)。この蒸気は蒸気管47を通って冷却分離槽42に移動する。
【0052】
蒸気管47内では、上から下に流れる洗浄液58と下から上に流れる蒸気とがぶつかり、その衝撃により蒸気管47の内壁面に付着した不純物成分の剥離が促進される。冷却分離槽42に進入した蒸気は、例えばエアー抜き用バルブ(図示せず)を介して外部に放出される。
【0053】
次に、制御部50は、バルブ68を閉にして冷却分離槽42への洗浄液58の注入を停止する。その後、制御部50は、ドレインバルブ69を開にして、冷却分離槽42内の洗浄液58aを加熱槽41に移動させる(図7参照)。このようにして、フィルタ45に捕捉された不純物成分、冷却分離槽42内に沈殿した不純物成分及び蒸気管47の内壁面から剥離された不純物成分が、加熱槽41内に集められる。
【0054】
本実施形態の油化装置40では、加熱槽41の上に冷却分離槽42が配置されているため、加熱槽41と冷却分離槽42との間を垂直に配置された蒸気管47で連絡することができる。この蒸気管47は短くてよく、湾曲した部分を有しないので、壁面に付着する不純物成分の量が少ない。このため、作業効率の低下が回避される。
【0055】
また、本実施形態の油化装置40では、上述したように装置自身がフィルタ45、冷却分離槽42及び蒸気管47の清掃処理を行う。装置自身が行う清掃処理によりフィルタ45、冷却分離槽42及び蒸気管47に付着した不純物成分が完全に除去できるわけではなく、本実施形態の油化装置40においても作業者による清掃作業が必要である。しかし、図1に示す油化装置10に比べて、作業者が行う清掃作業の回数を大幅に削減できる。
【0056】
更に、本実施形態の油化装置40では、油分55と沈殿物56との中間の比重を有する分離液57を冷却分離槽42内に入れて油分55と沈殿物56を分離する。このため、不純物成分の混入が少ない良質の油分を回収できる。
【0057】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る油化装置の構造を例示する模式図である。なお、本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、加熱槽内の洗浄液から金属を回収する機構を設けた点にあり、その他の構造は基本的に第1の実施形態と同様である。このため、図8において図2と同一物には同一符号を付して、重複する部分の説明は省略する。なお、図8中、符号48aは油分を回収した後のプラスチックの残渣(炭化物)を示している。
【0058】
本実施形態に係る油化装置70では、加熱槽41に撹拌機71が設けられている。撹拌機71は、モータと、モータの軸に接続されたプロペラ状の回転羽71aとを有し、制御部50からの信号に応じて回転羽71aが回転する。
【0059】
また、加熱槽41の底部近傍にはバルブ75が設けられている。このバルブ75は配管76を介してポンプ74の吸引側に接続しており、バルブ75とポンプ74との間には第1のフィルタ72及び第2のフィルタ73が配置されている。第1のフィルタ72はバルブ75に近い側に配置され、目の粗い金網により形成されている。第2のフィルタ73は第1のフィルタ72とポンプ74との間に配置され、第1のフィルタ72を通過した小さい粒子を捕捉する。また、ポンプ74の吐出側は、配管77を介して洗浄液タンク58に接続されている。
【0060】
本実施形態の油化装置70において、プラスチックから油分を回収して加熱槽41に洗浄液58を注入するまでの工程は第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0061】
図8のように加熱槽41内に洗浄液58を注入した後、制御部50は撹拌機71を稼働させる。これにより、加熱槽41内で洗浄液58が撹拌され、加熱槽41の内壁面に付着した不純物成分が剥離されるとともに、プラスチックの残渣(炭化物48a)が撹拌機71の回転羽71aにより粉砕される。
【0062】
ところで、電子機器から回収されたプラスチックには金属又はセラミック等(以下、「金属等」という)が混じることがある。加熱槽41内に金属等が混じったプラスチックを入れると、油分回収後には炭化物48aとともに金属等が加熱槽41内に残る。この金属等は、加熱槽41内で洗浄液58を撹拌して炭化物48aを粉砕する際に、炭化物48aから分離される。
【0063】
このように洗浄液58を撹拌して洗浄液58中に炭化物、不純物成分及び金属等が混じった状態にした後、制御部50はバルブ75を開にし、ポンプ74を稼働させる。これにより、加熱槽41内の洗浄液58はフィルタ72,73を透過する。このとき、第1のフィルタ72では金属等の比較的大きい物質が捕捉され、第2のフィルタ73では粉砕された炭化物や不純物成分等の比較的小さい物質が捕捉される。そして、金属等、炭化物及び不純物成分を除去することにより再生された洗浄液58は、配管77を介して洗浄液タンク58に回収される。
【0064】
なお、本実施形態ではフィルタ72,73を通過した洗浄液58を再生利用しているが、洗浄液58を再生利用することなく廃棄してもよい。
【0065】
本実施形態の油化装置70では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるのに加えて、撹拌機71により加熱槽41内の洗浄液58を撹拌するので、加熱槽41の内壁面に付着した不純物成分を容易に剥離できるという利点がある。また、本実施形態の油化装置70では、フィルタ72,73により洗浄液58に混入した金属等、不純物成分及び炭化物を除去して洗浄液58を再生するので、ランニングコストを低く抑えることができるという利点もある。
【0066】
更に、本実施形態では、プラスチックに金属又はセラミック等が混じっていても、第1のフィルタ72により金属又はセラミック等を回収することができるという利点もある。
【0067】
(実験例)
加熱槽41として、容積が約1リットルのステンレス容器を使用した。また、加熱槽41の周囲にはマントルヒータ(ヒータ41c)を配置した。更に、冷却分離槽42として直径が20mm、容積が2リットルの容器を使用し、加熱槽41と冷却分離槽42との間を蒸気管(直管)47で接続した。
【0068】
冷却分離槽42内には、分離液57として100ccの液体洗剤を入れた。また、加熱槽41内には、プラスチックとして難燃性ABS樹脂(ABS−FR)450gと金属部品50gとを装入した。
【0069】
その後、加熱槽41を約5℃/minの温度上昇速度で500℃まで加熱し、500℃の温度で2時間保持した。その結果、冷却分離槽42から、難燃剤を殆ど含まない良質の油分を約332g回収することができた。
【0070】
次いで、加熱槽41内に洗浄液58として分離液57と同様の液体洗剤を注入した。そして、撹拌機71でプラスチックの残渣(炭化物)を粉砕しながら洗浄液58を撹拌し、その洗浄液58を金網からなるフィルタに通して金属を回収した。その結果、約50gの金属を回収することができた。また、加熱槽41及び配管の内壁面には不純物成分の付着による汚染は確認されなかった。
【0071】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0072】
(付記1)プラスチックを入れる加熱槽と、
前記加熱槽内のプラスチックを加熱する熱源と、
前記加熱槽の上方に配置され、前記プラスチックから発生した蒸気を冷却して液体とし、前記液体を比重の差を利用して油分と沈殿物とに分離する冷却分離槽と、
前記加熱槽で発生した蒸気を前記冷却分離槽に導く蒸気管と、
前記油分と前記沈殿物との間の比重を有する分離液を貯留し前記冷却分離槽に前記分離液を供給する分離液タンクと
を有することを特徴とする油化装置。
【0073】
(付記2)前記冷却分離槽の下部に接続されて前記沈殿物を捕捉可能なフィルタと、
ポンプと、
前記フィルタと前記ポンプの吸引側とを接続する第1の配管と、
前記ポンプの吐出側に接続された第2の配管と、
前記第2の配管と前記冷却分離槽との間に配置された第1のバルブと、
前記分離液タンクと前記第2の配管との間に配置された第2のバルブと、
前記冷却分離槽に設けられて前記分離液と前記油分との界面を検出する第1の液面センサと、
前記第1の液面センサの下方に配置され、前記分離液と前記油分との界面を検出する第2の液面センサと、
前記第1の液面センサ及び前記第2の液面センサの出力に基づいて前記ポンプ、前記第1のバルブ及び前記第2のバルブを制御する制御部と
を有することを特徴とする付記1に記載の油化装置。
【0074】
(付記3)更に、洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、
前記洗浄液タンクと前記第2の配管との間に配置されて前記制御部により制御される第3のバルブとを有することを特徴とする付記2に記載の油化装置。
【0075】
(付記4)前記分離液が界面活性剤であることを特徴とする付記2又は3に記載の油化装置。
【0076】
(付記5)更に、前記冷却分離槽の底部と前記加熱槽との間を連絡するドレイン配管と、
前記ドレイン配管の途中に設けられて前記制御部により制御されるドレインバルブと
を有することを特徴とする付記2乃至4のいずれか1項に記載の油化装置。
【0077】
(付記6)更に、前記加熱槽内を撹拌する撹拌機を有することを特徴とする付記5に記載の油化装置。
【0078】
(付記7)加熱槽に装入されたプラスチックを加熱する工程と、
前記プラスチックの加熱により発生したガスを蒸気管を介して前記加熱槽の上方に配置された冷却分離槽内に導入し、前記冷却分離槽内で冷却して液体とする工程と、
前記冷却分離槽内において前記液体を比重の差を利用して油分と沈殿物とに分離する工程とを有し、
前記分離槽内に、前記油分と前記沈殿物との間の比重を有する分離液を入れることを特徴とする油化方法。
【0079】
(付記8)前記冷却分離槽の下部に接続されて前記沈殿物を捕捉可能なフィルタと、
ポンプと、
前記分離液を貯留する分離液タンクと、
前記フィルタと前記ポンプの吸引側とを接続する第1の配管と、
前記ポンプの吐出側に接続された第2の配管と、
前記第2の配管と前記冷却分離槽との間に配置された第1のバルブと、
前記分離液タンクと前記第2の配管との間に配置された第2のバルブと、
前記冷却分離槽に設けられて前記分離液と前記油分との界面を検出する第1の液面センサと、
前記第1の液面センサの下方に配置され、前記分離液と前記油分との界面を検出する第2の液面センサと、
制御部とを有し、
前記制御部は、前記第1の液面センサ及び前記第2の液面センサの出力に基づいて前記ポンプ、前記第1のバルブ及び前記第2のバルブを制御することを特徴とする付記7に記載の油化方法。
【0080】
(付記9)前記冷却分離槽から前記油分を回収した後、前記冷却分離槽内に前記分離液よりも洗浄力が強い洗浄液を導入し、該洗浄液を前記蒸気管を介して前記加熱槽内に注入することを特徴とする付記7又は8に記載の油化方法。
【0081】
(付記10)前記加熱槽に前記洗浄液を注入した後、前記加熱槽内の前記洗浄液を撹拌機により撹拌することを特徴とする付記9に記載の油化方法。
【符号の説明】
【0082】
10…油化装置、11…加熱槽、11a…蓋部、11b…加熱槽本体、11c…ヒータ、12…冷却槽、13…分離槽、21,22…配管、30…プラスチック、31,32…バルブ、33…コック、35…油分、36…沈殿物、40…油化装置、41…加熱槽、41a…蓋部、41b…加熱槽本体、41c…ヒータ、42…冷却分離槽、43…分離液タンク、44…洗浄液タンク、46…ポンプ、47…蒸気管、48…プラスチック、48a…炭化物、50…制御部、51a,51b…液面センサ、55…油分、56…沈殿物、57…分離液、58…洗浄液、62…配管、63…ドレイン配管、64…コック、65,66,67,68…バルブ、69…ドレインバルブ、71…撹拌機、71a…回転羽、72,73…フィルタ、74…ポンプ、75…バルブ、76,77…配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを入れる加熱槽と、
前記加熱槽内のプラスチックを加熱する熱源と、
前記加熱槽の上方に配置され、前記プラスチックから発生した蒸気を冷却して液体とし、前記液体を比重の差を利用して油分と沈殿物とに分離する冷却分離槽と、
前記加熱槽で発生した蒸気を前記冷却分離槽に導く蒸気管と、
前記油分と前記沈殿物との間の比重を有する分離液を貯留し前記冷却分離槽に前記分離液を供給する分離液タンクと
を有することを特徴とする油化装置。
【請求項2】
前記冷却分離槽の下部に接続されて前記沈殿物を捕捉可能なフィルタと、
ポンプと、
前記フィルタと前記ポンプの吸引側とを接続する第1の配管と、
前記ポンプの吐出側に接続された第2の配管と、
前記第2の配管と前記冷却分離槽との間に配置された第1のバルブと、
前記分離液タンクと前記第2の配管との間に配置された第2のバルブと、
前記冷却分離槽に設けられて前記分離液と前記油分との界面を検出する第1の液面センサと、
前記第1の液面センサの下方に配置され、前記分離液と前記油分との界面を検出する第2の液面センサと、
前記第1の液面センサ及び前記第2の液面センサの出力に基づいて前記ポンプ、前記第1のバルブ及び前記第2のバルブを制御する制御部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の油化装置。
【請求項3】
更に、洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、
前記洗浄液タンクと前記第2の配管との間に配置されて前記制御部により制御される第3のバルブとを有することを特徴とする請求項2に記載の油化装置。
【請求項4】
更に、前記冷却分離槽の底部と前記加熱槽との間を連絡するドレイン配管と、
前記ドレイン配管の途中に設けられて前記制御部により制御されるドレインバルブと
を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の油化装置。
【請求項5】
加熱槽に装入されたプラスチックを加熱する工程と、
前記プラスチックの加熱により発生したガスを蒸気管を介して前記加熱槽の上方に配置された冷却分離槽内に導入し、前記冷却分離槽内で冷却して液体とする工程と、
前記冷却分離槽内において前記液体を比重の差を利用して油分と沈殿物とに分離する工程とを有し、
前記分離槽内に、前記油分と前記沈殿物との間の比重を有する分離液を入れることを特徴とする油化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91717(P2013−91717A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234617(P2011−234617)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】