説明

油吸着マット及び油吸着マット発射装置

【課題】 化学繊維の油吸着マットは油を吸着するので使用されているが、水も同時に吸収し水没する。焼却や廃棄時の問題もある。海上には風や波があるため海面に投下した油吸着マットを、油を吸着したい場所に確実に到達させることが困難であり、同一箇所に集合しやすい。
【解決手段】 細毛の天然繊維を約50cm角で約4mm厚のマットにし、表面から裏面へ多数の貫通孔を開けた構造の油吸着マットを提供する。この油吸着マットは体積の40倍の油を吸着し水を吸収しない。また、貫通孔は油の吸着面積を増やす。必要海面に油吸着マットを送り込むため、船体に固定した回転台上の発射筒に軸芯に巻着した油吸着マットをエアーコンプレッサーより供給される圧縮空気で発射する。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、海面に流出した油を効果的に吸着させる素材及び形状の油吸着マットと、油吸着マットを目的の場所に到着させるための手段に関している。
【背景技術】
【0002】
船舶の事故により流出した油の回収に油吸着マットが使用されている。流出した油の周りをオイルフェンスで囲み、掃海艇から油吸着マットを投下し、油を吸着したマットを回収している。
現在使用されている油吸着マットの素材はポリプロピレン等の化学繊維をマット状にしたものが主体であり、このマットを連結した形状のものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化学繊維の油吸着マットは油を吸着するので使用されているが、水も同時に吸収するので、油と水の重みで水没する問題がある。また、回収したマットの焼却や廃棄の問題もあるので、油の吸着に適し、回収廃棄しやすい油吸着マットが求められている。
海上には風や波があるため海面に投下した油吸着マットを、油を吸着したい場所に確実に到着させることが困難である。折角散布した油吸着マットが同一箇所に集合し、満足な効果を得ることができないことが多く、経費と手間の無駄になっている。そこで、油吸着マットを目的場所に到達できるような手段が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明になる油吸着マットは、細毛の天然繊維を厚さ約4mm、縦横約約50cmのマットにし、表面から裏面へ多数の貫通孔を開けた構造である。この細毛の天然繊維は1gの体積で40gの油を吸着するが水を一切吸収しない特性があるため水没することがなく、油吸着マットの回収船が油を吸着したマットを回収するまで何ヶ月も海面に浮いている。この油吸着マットは植物繊維であるためバクテリアが発生して分解されるので回収後の投棄が容易であり、焼却も可能である。
本発明では天然繊維マットに多数の貫通孔を開け、油の吸着面積を増やして油回収の効率を上げている。貫通孔を通してマットの表面にも油が吸着しやすくなる。
【0005】
海上の風や波により油吸着マットが同一箇所に集合しやすい。油吸着マットを必要な海面に確実に到達させるため、油吸着マット発射装置として発射筒の後部にエアータンク用ハウジングを設け、発射筒との間の隔壁に弁を装着し、この弁を引き金で操作する。エアータンク用ハウジングはエアーコンプレッサーに接続している。
ハウジングは回転台に回動自由に固定されているので、上下左右に発射筒の発射口を向けることができる。回転台は船体に固定具で固定することができる。
【0006】
油吸着マットの発射方法は、先端は円筒形または半球形とし、末端は圧縮空気を効果的に受ける円盤形とし、中間を棒状にした軸芯の棒状部分に吸着マットを巻着して端末を粘着テープで固定している。軸芯全体を紙製としたり、中間の棒状部分を木製にすることもできる。
【0007】
引き金を引くと作動軸が開口弁を押し発射筒とエアータンクとの間の隔壁に穴が開く。この穴からエアータンクの圧縮空気が発射筒に噴出し、発射筒に詰めた油吸着マットを発射する。目的の海面に向けて発射した油吸着マットが海面に到着すると、軸芯に巻着した油吸着マットの端末を固定している粘着テープは油や海水で緩んで外れ、油吸着マットは海面に広がる。
【0008】
エアーコンプレッサーより常時エアータンクに圧縮空気を供給しているので、引き金を引いて隔壁の穴を開けると発射筒に詰めた油吸着マットを連続して発射することができる。芯棒もキャップも植物性なので、バクテリアにより分解し、焼却時も公害の心配が要らない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
図1は本発明になる油吸着マットの斜視図である。約50cm角で約4mm厚の細毛の天然繊維を素材とする油吸着マット(21)には多数の表面から裏面へ貫通孔(22)が開いていて表面積を増やし、海面の油が油吸着マット(21)の穴(22)を通って、油吸着マット(21)の表面に上がり付着しやすくしている。油吸着マット(21)の形状、サイズ及び厚さは特定されたものでなく、任意に設定できる。また、油吸着マット(21)に開ける貫通穴(22)の形状及びサイズは丸穴に限らず任意の形状及びサイズとすることができる。
【実施例2】
【0010】
図2では本発明の油吸着マット発射装置の全体を示している。油吸着マット発射装置はエアータンク用ハウジング(2)を含む発射筒(1)は船の舷側Aに固定具(4)で固定された支柱(5)の上部の回転台(6)に回転自在に装着されている。
発射筒(1)の先端を上下左右どの向きにも変えることができるので、引き金(3)を引いて油吸着マット(21)を目的の海面に向けて発射し、到達させることができる。エアータンク用ハウジング(2)はエアータンクコンプレッサー(7)にホース(8)で接続されている。このためエアータンク用ハウジング(2)内の圧縮空気が発射により無くなると、エアーコンプレッサー(7)より直ちに圧縮空気が供給され、次の発射が可能となる。
【0011】
エアータンク用ハウジング(2)内の圧縮空気を利用するには、発射筒(1)とエアータンク用ハウジング(2)間の隔壁(9)の噴射口(10)に設けた弁(11)の開閉によって行われる。
図3、図4、図5を参照して引き金(3)が弁(11)の及ぼす作用について説明する。図3に示すように、引き金(3)を引く前は、隔壁(9)の噴射口(10)を弁(11)が塞いでいる。図4に示すように、引き金(3)を引く途中では、引き金(3)の先端が中心で回転自在に支持されている支軸(12)の片側を押し上げる動きを示す。図5に示すように、引き金(3)を完全に引くと支軸(12)の反対側の先端が弁(11)を押し、噴射口(10)からエアータンク用ハウジング(2)に溜まった圧縮空気を支軸(12)側に流入させる。この圧縮空気は発射筒(1)に詰めた油吸着マット(21)を巻着した軸芯(13)を発射する。
【実施例3】
【0012】
軸芯(13)は紙を素材とした先端(14)を円錐形または半球形の形状とし、中間を紙または木を素材とした棒状部分(15)とし、末端(16)は紙を素材とした円盤形状としている。円盤形状としている。円盤形状は平板とすることも、後部を湾曲形状とすることもできる。このように形成した軸芯(13)の棒状部分(15)に、図6に示すように、穴(22)を開けた油吸着マット(21)を巻着して端末を粘着テープ(23)で固定している。末端(16)の円盤形状は発射筒(1)の内径に密着するように構成されているのでエアータンク用ハウジング(2)から噴射される圧縮空気の爆発力が全面的に油吸着マット(21)を巻着した軸芯(13)に加えられ発射される。図7に発射筒(1)の先端から込める紙製の先端(14)と末端(16)を有する軸芯(13)の棒状部分(15)に巻着し固定した油吸着マット(21)の状態を示す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は下記の通りである。
[イ]油吸着マット体積の40倍の容積の油を吸着できる。
[ロ]マットに開けた穴で表面積を増やし、海面の油がマットの上にも吸着しやすくなっている。
[ハ]海面に流出した油を風に波に影響されず的確にマットに吸着できる。
[ニ]任意の方向に油吸着マットを飛ばし、目的の海面に到達させることができる。
[ホ]油吸着マットを発射筒に充填するのが容易である。
[ヘ]エアーコンプレッサーを使用しているので、コストが少なくて済む。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の油吸着マット及び油吸着マット発射装置は湖水や海上において流失した油を回収するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】油吸着マットの斜視図である。
【図2】油吸着マット発射装置全体の説明図である。
【図3】引き金が弁に及ぼす作用についての説明図である。
【図4】引き金が弁に及ぼす作用についての説明図である。
【図5】引き金が弁に及ぼす作用についての説明図である。
【図6】油吸着マットと軸芯の関係を示す斜視図である。
【図7】油吸着マットと軸芯に巻着した際の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
【0017】
1 発射筒
2 エアータンク用ハウジング
3 引き金
4 固定具
5 支柱
6 回転台
7 エアーコンプレッサー
8 ホース
9 隔壁
10 噴射口
11 弁
12 支軸
13 軸芯
14 先端
15 棒状部分
16 末端
21 油吸着マット
22 貫通穴
23 粘着テープ
A 舷側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細毛の天然繊維を約50cm角で約4mm厚のマットにし、表面から裏面へ多数の貫通孔を開けた構造であることを特徴とする油吸着マット。
【請求項2】
船体に固定具で固定した支柱上の回転台に発射筒を設置し、発射筒の後部のエアータンク用ハウジングとエアーコンプレッサーを接続し、エアータンク用ハウジングと発射筒の間の隔壁に装着した弁を引き金で操作して圧縮空気により油吸着マットを所定の海面へ到着させることを特徴とした油吸着マット発射装置。
【請求項3】
円錐形の先端と円盤形の末端を有する棒状の軸芯に、油吸着マットを巻着して粘着テープで固定したことを特徴とする請求項2に記載の油吸着マット発射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−41354(P2009−41354A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228299(P2007−228299)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(591163373)
【Fターム(参考)】