説明

油吸着材及び油吸着構造体

【課題】従来技術以上の利便性と安全性利用が確保でき、また従来の2次加工品よりもコストパフォーマンスに優れ、油吸着性能の向上と、さらに熱効率向上により焼き時間も短縮でき、それにともないガスの使用量も削減できて二酸化炭素排出量の削減に貢献できる油吸着剤とその製造方法を提供すること。
【解決手段】カオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナ、シャモットなどからなる原料粉末と成形助剤及び細粒子からなる造孔剤の添加材を混練した坏土を成型し、高温焼成によって得られ、SiO及びAlOが全体成分の70%以上を構成し、内部に連続した多孔質構造体を特徴とする油吸着材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類や肉、パンなどの食材を調理する際に、滲み出る焼き汁を吸着保持する油吸着構造とその製造方法に関し、調理器具内の油の飛び散りを予防するとともに、熱効率向上にともない焼き時間も短縮でき、調理器具及び食材を好適な環境で調理できる油吸着構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類や肉を網等で焼いて調理する際に、それらの調理食材から滲み出る焼き汁が調理器具を汚したり、焼き汁が発火して調理器具の損傷や食材が焦げることが原因になって調理に不具合を生じていた。さらに、焼き汁の焦げるニオイが発生して室内にニオイがつく、焼き汁が調理器具にこびりつき、清掃面が面倒などから、家庭用調理器具を使う際には特に焼き物調理を毛嫌う調理者が多い。
【0003】
このような問題を防止するものとして、家庭用調理器具の魚焼きグリルの焼き汁受け皿の底に敷いて用いるための天然ゼオライトやシリカを原料とする油吸着材が市販されている。この油吸着材は1〜5mm程度の粒系で、破砕された角張った形状や球形が主流である。また、天然ゼオライトやシリカに苛性ソーダなどの薬品や2次加工品による技術、製紙産業廃棄物やフライアッシュ、間伐材を用いた炭を造粒した技術も考案されている。
【0004】
また、2種類の可燃性物質を混練して形状を維持したまま焼成した油脂吸着材もあるが、可燃性物質を2種類使用することで製品が高価になるとともに吸水性が高すぎるため、脆く輸送時に粉になる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−102048号公報
【特許文献2】特開平8−987778号公報
【特許文献3】特開平7−108026号公報
【特許文献4】特開平7−42946号公報
【特許文献5】実開平7−36963号公報
【特許文献6】特開2005−132710号公報
【特許文献7】特開2000−271199号公報
【特許文献8】特開2005−349323号公報
【特許文献9】特願2007−171309
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献9(特願2007−171309)にて課題で挙げるように、ゼオライトは孔の形状が細孔養成機0.05〜2.0cc/gに対して比表面積30〜1000m/gと、細か過ぎる為、油の吸着速度が遅く、表面に油の皮膜を作り、その油が引火し、家庭用調理器具の引火事故の要因の1つとなっていた。
【0007】
さらにこの引火事故の原因の一つとして、吸水率が乾燥重量費4〜20%ほどと低く、吸水率が低いために使用回数も3〜5回で吸着しなくなることも上げられる。吸水率を上げるために2次加工品も考案されているが、低価格のものは不定形な形状であるためグリルの開け閉めでこぼれたり、形状の整っているものや配合が複雑なものは高価であり、また吸水率も高いため脆く粉になりやすく、家庭用としては使用し難い。特に、強度を落とす原因として、可燃性の微細粒は粘着性を阻害する為、結合剤を多く使用する必要があった。
【0008】
さらに、天然ゼオライトの形状が1〜5ミリで尖った形状であるため、粒の小ささから、調理器具に挟まると取れにくく、特にガス器具の吸気孔を塞ぐ原因となり、不完全燃焼を起こしかねない危険性がある。
【0009】
また一方、地球温暖化対策は必死の環境状況となり、調理器具なども熱効率を上げられることにより、ガスまたは電気の消費量を削減し、二酸化炭層の排出量を削減する対策がとられている。近年の調理器具は50%近い二酸化炭素排出量削減に成功しているが、調理器具は10年以上使用することから、このような二酸化炭素排出削減タイプの調理器具は全ての家庭及び調理現場に普及していないのが現状である。
【0010】
本発明はこのような従来技術上の問題点を解決するためになされたもので、従来の天然ゼオライトよりも粗い細孔を持ち、2次加工品の複雑な配合を減らすことで低価格とし、強度も保ち、表面に油を浮き上がらせることを防止し、それにともない安全性を向上させ、使用回数が多くても引火の危険性を少なくする油吸着材及びその製造方法を提供することを目的とする。これによって、従来技術以上の利便性と安全利用が確保でき、価格も適正価格に抑える事が可能となり、さらに熱効率向上により焼き時間も短縮でき、それにともないガスの使用量も削減できて二酸化炭素排出量の削減に貢献できる油吸着材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、本願の請求項1に係る油吸着材は、カオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナ、シャモットなどからなる原料粉末と成形助剤及び細粒子からなる造孔剤の添加材を混練した坏土を成型し、高温焼成によって得られ、SiO及びAlが全体成分の70%以上を構成し、内部に連続した多孔質構造体であることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2に係る油吸着材は、内部に細孔径が数ミリ〜0.01μmからなる連続した多孔質構造体であって、水銀圧入法による細孔分布試験で、気孔率30%以上、細孔体積0.30cm/g以上、細孔比表面積0.2〜20m/g、飽和含水比30%以上を備えることを特徴する。
【0013】
本願の請求項3に係る油吸着構造体は、焼成前成型時の粒径が8〜20ミリとすることで、グリル受け皿からはみ出さず最適な敷詰めを可能とすると共に、ガス調理器の吸気孔における詰まり、不完全燃焼を防止可能に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、本発明の効果はカオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナ、シャモットなどからなる原料粉末と成形助剤及び細粒子からなる造孔剤の添加材を混練した坏土を成型し、高温焼成によって得られ、SiO及びAlが全体成分の70%以上を構成し、内部に連続した多孔質構造体の油吸着材とすることで、造孔剤の添加剤種類を2種類から1種類に減らし、コストダウンをはかれるとともに、粗い細孔を形成でき、油吸着材に適した構造を得られる。
【0015】
本発明で得られた油吸着剤を、家庭用調理器具の受け皿に敷き詰めて使用すると、焼き汁を素早く吸収するとともに調理器具内の油の飛び散りを予防し、熱効率を向上させて、焼き時間を短縮でき、調理器具及び食材の好適な環境で調理できる。使用中に発生する魚介類や肉から滲み出る焼き汁を吸着するため、調理器具内の掃除が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る粒度測定データである。
【図2】本発明の一実施形態に係るベークライト含水比測定データである。
【図3】本発明の一実施形態に微細粒子の粒度分布を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、カオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナ、シャモットなどからなる原料粉末と成形助剤及び細粒子からなる造孔剤の添加材を混練した坏土を成型し、高温焼成によって得られ、SiO及びAlが全体成分の70%以上を構成し、内部に連続した多孔質構造体を特徴とする油吸着材を、グリルなどの焼き調理器具内の焼き汁受け皿に敷き詰め、内部の連続した多孔質構造が魚介類や肉、パンなどの食材を調理する際に染み出る焼き汁を吸着する。
【0018】
内部に連続した多孔質構造体は、カオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナなど、いずれか1種類以上からなる原料粉末に、細粒子からなる造孔剤の添加材を混練し、高温焼成することで造孔剤の添加材が焼結して作られる孔と、原料粉末同士が焼成によって粒子同士が結合しれ得られる孔からなる。原料粉末はカオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナ、シャモットなどの高温焼成によっても完全に焼結することなく、多孔質構造体を保ちやすいものがよい。
【0019】
そして、造孔剤の添加材は微細粒子を少なくすることで、成型助材の使用量を減らすことができ、細粒子は通過残留率70%以上を0.105mm以上の粒子で構成されるのが望ましい。細粒子の材質はベークライトや炭などの高温焼成で焼結する可燃性粒子が好ましい。表1は細粒子の粒度分布を示したものである。
【表1】

【0020】
原料粉末の成形性を向上させるため成型助材を添加する。成型助材としてはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グラファイト、ポパール、のり、PVA、水ガラス、界面活性剤及び水のいずれか1種類以上が好ましい。
【0021】
原料粉末はカオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナなどをいずれか1種類以上含めば、既に成型助材を混練されたものでもよく、セラミックス製造工場から排出される廃土を使用することもできる。
【0022】
原料粉末と細粒子からなる造孔剤の添加材の配合率は、原料粉末を重量比70〜90%に対し、造孔剤の添加材を重量比10〜30%となる。成型助材は重量比10〜40%添加する。
【表2】

【0023】
これらを混練した坏土を成型し、800〜1200℃程度で焼成し、内部の細粒子からなる造孔剤の添加材と成型助材を焼結させ、原料粉末の粒子同士を結合させ、連続した多孔質構造体が得られる。このように得られた多孔質構造体の成分は、SiO及びAlが全体成分の70%以上を構成する。
【0024】
内部の連続した多孔質構造体は、数ミリ〜0.01μmの細孔径で、銀圧入法による細孔分布試験で、気孔率30%以上、細孔体積0.30cm/g以上、細孔比表面積0.2〜20m/g、飽和含水比30%以上の油吸収に適した特徴が得られる。
【表3】

【0025】
また、本発明は焼成前の成型時の粒径を8〜20ミリにすることで、焼成後もグリルの受け皿に敷き詰めるのに適した形状となり、浅い受け皿でも受け皿の出し入れ時にこぼれ落ちることなく使用できるようになる。形状は押し出し成型、攪拌造粒、パンペレ造粒、マルメライザー、ブリケットマシーン造粒、半乾式及び乾式プレス成型などでも良く、最適なのは押し出し成型である。押し出し成型は断面を複雑な形状とすることも可能であり、星や花、葉っぱ、ヒヨコ、雪だるま、ハニカムなど断面形状に制限が無い。
【0026】
内部に連続した多孔質構造体を特徴とする油吸着材は粗い細孔を持つため焼き汁を素早く吸収するとともに、調理器具内の油の飛び散りを予防し、熱効率を向上させて焼き時間も短縮でき、調理器具及び食材を好適な環境で調理できる。このときに、水を使用するグリルについては水を使用しない。水を入れることで、連続した多孔質構造を形成した無機材の吸着力を低下し、焼成過程で水蒸気が発生するため、食材の味や質を損なうことになる。
【0027】
本発明はIH調理機器やガス調理機器などの焼き汁受け皿に使用でき、水なしグリルタイプ、水ありタイプ、両面焼きグリルタイプ、片面焼きグリルタイプなど異なるグリルの形状やタイプでも使用できる。
【0028】
また、焼き調理器具内の焼き汁受け皿の上にアルミホイルを敷き詰めて、油吸着材を敷き詰めると、交換時に汚れたものを触らずに、アルミホイルに包んで捨てることができ、手が汚れず廃棄や掃除が簡単となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、本発明のカオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナ、シャモットなどからなる原料粉末と成形助剤及び細粒子からなる造孔剤の添加材を混練した坏土を成型し、高温焼成によって得られ、SiO及びAlが全体成分の70%以上を構成し、内部に連続した多孔質構造体の油吸着材は、使用原料種類が少なくなる為、コストダウンを図れる。本発明でえられた油吸着剤は粗い細孔が油の吸収に適し、表面に油浮きをすることを防止し、引火がない。また、吸収率も高く、油が飽和状態になるで、空洞を保ち、この空洞が断熱効果を持ち、焼成体(魚介類や肉など)の内部温度が早く上がり、焼き時間を短縮できる。この焼き時間の短縮は鹿角消費量を削減することになり、従って二酸化炭素の排出量を削減できる効果があり、環境改善に貢献できるとともに各種業界に非常な有益性をもたらすものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カオリン、タルク、シリカ、水酸化アルミ、アルミナ、シャモットなどからなる原料粉末と成形助剤及び細粒子からなる造孔剤の添加材を混練した坏土を成型し、高温焼成によって得られ、SiO及びAlが全体成分の70%以上を構成し、内部に連続した多孔質構造体であることを特徴とする油吸着材。
【請求項2】
内部に細孔径が数ミリ〜0.01μmからなる連続した多孔質構造体であって、水銀圧入法による細孔分布試験で、気孔率30%以上、細孔体積0.30cm/g以上、細孔比表面積0.2〜20m/g、飽和含水比30%以上を備えることを特徴する油吸着材。
【請求項3】
焼成前成型時の粒径が8〜20ミリとすることで、グリル受け皿からはみ出さず最適な敷詰めを可能とすると共に、ガス調理器の吸気孔における詰まり、不完全燃焼を防止可能に形成されることを特徴とする油吸着構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−16687(P2012−16687A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157383(P2010−157383)
【出願日】平成22年7月11日(2010.7.11)
【出願人】(507152671)株式会社環境創研 (2)
【Fターム(参考)】