説明

油圧ダンパ及びその油量監視方法

【課題】作業者が延長部材の貫通孔を覗き込まなくても制震用油圧ダンパ内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる制震用油圧ダンパ及びその油量監視方法を提供する。
【解決手段】シリンダ42と、ピストン50と、シリンダ42内の油室56,58と、ピストン50のピストンロッド54に設けられ油室56,58に連通する油室76を有するアキュムレータ72と、シリンダ42内の作動油の圧力変動に応じて外側への突出量が増減する棒状部材82と、アキュムレータ72を被覆する延長部材84と、延長部材84に形成された貫通孔84bに挿通する油量監視棒部材86とを備え、油量監視棒部材86を貫通孔84bに挿通したときの、延長部材84の内部に挿し込まれた油量監視棒部材86の長さ寸法によりダンパ40全体の作動油の量を判断できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物等の構造物に取り付けられ、地震等の外力による構造物の各位置相互間の変位を吸収するために用いられるような油圧ダンパ及びその油量監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ダンパには、例えば図13に示すような、地震等の外力による構造物の各位置相互間の変位を吸収して制震するために用いられる制震用の油圧ダンパ2があった。
【0003】
この従来の油圧ダンパ2は、両端を閉止された円筒状のシリンダ4と、このシリンダ4の内部に収納されて、シリンダ4内に形成されていた空間を2つの空間に区分して、それぞれの空間に作動油が充填された2つの油室8,10をその両側に形成するピストン6とを備えるようになっていた。
【0004】
このピストン6は、その両端面6a,6bから軸線方向(図13中左右方向)の外側に伸びた、2つのピストンロッド12,14を有しており、これらのピストンロッド12,14は、シリンダ4の両端面4a,4bから軸線方向の外側にそれぞれの先端部が突出していた。そして、ピストンロッド14の先端部は、シリンダ4の端面4bからその軸線方向の外側に延長する延長部材16の内部空間に収容されるようになっていた。
【0005】
そして、従来の油圧ダンパ2は、そのピストン6の中実内部の、油室8,10間を連通する油路6c,6dの途中に、上記油室8,10間の作動油の流動状態を制御するリリーフ弁18,20が設けられていた。ピストン6のピストンロッド14の内部空間には、油室8,10内の作動油の膨張、収縮を吸収して油圧ダンパ2を安定して動作させる、アキュムレータ22が備え付けられていた。
【0006】
アキュムレータ22は、ピストンロッド14の内部空間を2つの空間に区分するアキュムレータピストン26と、2つの空間の一方に形成され、上記シリンダ4内の2つの油室8,10に連通するアキュムレータ油室24と、2つの空間の他方に収納されて、アキュムレータピストン26をアキュムレータ油室24に向けて押圧するバネ28と、アキュムレータピストン26の軸線部にその基端部が一体的に形成されて、その先端部がピストンロッド14先端部の軸孔14aを通って、ピストンロッド14の先端面14bから外部に突出している棒状部材30とにより構成されていた。
【0007】
そして、シリンダ4内の油室8,10内の作動油の量は、アキュムレータ22のアキュムレータ油室24内の作動油を介して、ピストンロッド14の先端部から外部に突出した棒状部材30先端部の突出長さ寸法の変化によって監視することができるようになっていた(特許文献1の図3参照)。
【0008】
ピストンロッド14の先端部から外部に突出した棒状部材30先端部の突出長さ寸法の変化を視認できるようにするため、延長部材16にはその内部の上記棒状部材30先端部の突出長さを覗くための貫通孔16aが形成されていた。
【0009】
このような従来の油圧ダンパ2によれば、作業者が延長部材16の貫通孔16aを覗き込むことにより、ピストンロッド14の先端部から外部に突き出した、棒状部材30先端部の突出長さ寸法の変化を視認することができるので、アキュムレータ油室24内の作動油を介して、第1油室18や第2油室20内の作動油の量の変化を外部から認識することができるようにはなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−269005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の油圧ダンパ2においては、作業者が延長部材16の貫通孔16aを覗き込むことにより、前記棒状部材30の先端部の突出長さ寸法の変化を視認するようになっていたため、その視認作業が煩雑であり労力や時間、費用が掛かるという問題があった。
【0012】
また、前記棒状部材30の先端部の突出長さ寸法の変化を視認し易くするために、延長部材16の貫通孔16aの開口面積を大きくすることが考えられるが、そうすると、延長部材16の強度が不足するおそれがあるだけでなく、油圧ダンパ2の設置場所が屋外等の場合には雨水の浸入を防止する対策が必要となり、その対策のために労力や時間、費用が掛かるという問題があった。
【0013】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、作業者が延長部材の貫通孔を覗き込まなくても、油圧ダンパ内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる油圧ダンパ及びその油量監視方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明による油圧ダンパは、
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室と、
前記ピストンの前記シリンダより外側に突出するピストンロッドに設けられ、前記2つの油室に連通する油室を有するアキュムレータと、
前記シリンダ内の作動油の圧力の変動に応じて前記アキュムレータより外側に突出する量が増減する棒状部材と、
前記シリンダからその長さ方向に延長して前記アキュムレータの周囲を被覆する延長部材と、
前記延長部材に形成された貫通孔に挿通する油量監視棒部材とを備え、
前記油量監視棒部材を前記貫通孔に挿通したときの、前記延長部材の内部に挿し込まれた前記油量監視棒部材の長さ寸法によりダンパ全体の作動油の量の変化を判断できるようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による油圧ダンパは、
前記棒状部材の先端部にはテーパ面が形成されると共に、
前記油量監視棒部材の先端部には前記棒状部材の先端部のテーパ面と接触して摺動可能なテーパ面が形成されるようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明による油圧ダンパは、
その下端部が前記延長部材の貫通孔の内部に挿通された前記油量監視棒部材は、前記延長部材の外周面に係止する係止部が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明による油圧ダンパは、
その下端部が前記延長部材の貫通孔の内部に挿通された前記油量監視棒部材は、その下端部の端面が前記アキュムレータの外周面より径方向外側に配置されるように弾性部材により支持されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明による油圧ダンパは、
前記延長部材の貫通孔の周囲に前記延長部材の内・外周面の一方又は両方より径方向に突出したガイド部が形成されたことを特徴とするものである。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明による油圧ダンパの油量監視方法は、
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室と、
前記ピストンの前記シリンダより外側に突出するピストンロッドに設けられ、前記2つの油室に連通する油室を有するアキュムレータと、
前記シリンダ内の作動油の圧力の変動に応じて前記アキュムレータより外側に突出する量が増減する棒状部材と、
前記シリンダからその長さ方向に延長して前記アキュムレータの周囲を被覆する延長部材と、
前記延長部材に形成された貫通孔に挿通する油量監視棒部材とを備えた油圧ダンパの油量監視方法であって、
前記油量監視棒部材を前記貫通孔に挿通して、前記延長部材の内部に挿し込まれた前記油量監視棒部材の長さ寸法によりダンパ全体の作動油の量の変化を判断するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
このような本発明の油圧ダンパによれば、
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室と、
前記ピストンの前記シリンダより外側に突出するピストンロッドに設けられ、前記2つの油室に連通する油室を有するアキュムレータと、
前記シリンダ内の作動油の圧力の変動に応じて前記アキュムレータより外側に突出する量が増減する棒状部材と、
前記シリンダからその長さ方向に延長して前記アキュムレータの周囲を被覆する延長部材と、
前記延長部材に形成された貫通孔に挿通する油量監視棒部材とを備え、
前記油量監視棒部材を前記貫通孔に挿通したときの、前記延長部材の内部に挿し込まれた前記油量監視棒部材の長さ寸法によりダンパ全体の作動油の量の変化を判断できるようにしたことにより、
作業者が延長部材の貫通孔を覗き込まなくても、油圧ダンパ内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる。
【0021】
また、本発明の油圧ダンパの油量監視方法によれば、
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室と、
前記ピストンの前記シリンダより外側に突出するピストンロッドに設けられ、前記2つの油室に連通する油室を有するアキュムレータと、
前記シリンダ内の作動油の圧力の変動に応じて前記アキュムレータより外側に突出する量が増減する棒状部材と、
前記シリンダからその長さ方向に延長して前記アキュムレータの周囲を被覆する延長部材と、
前記延長部材に形成された貫通孔に挿通する油量監視棒部材とを備えた油圧ダンパの油量監視方法であって、
前記油量監視棒部材を前記貫通孔に挿通して、前記延長部材の内部に挿し込まれた前記油量監視棒部材の長さ寸法によりダンパ全体の作動油の量の変化を判断するようにしたことにより、
作業者が延長部材の貫通孔を覗き込まなくても、油圧ダンパ内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40をその軸線に沿って示す断面図である。
【図2】図1に示す加圧式アキュムレータ72及びその近傍を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図3】シリンダ42内の作動油の量が下限値より多い場合に油量監視棒部材86を延長部材84の貫通孔84aに挿し込んだときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図4】シリンダ42内の作動油の量が下限値より少ない場合に油量監視棒部材86を延長部材84の貫通孔84aに挿し込んだときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る油圧ダンパ90における、シリンダ42内の作動油の量が下限値より多い場合に油量監視棒部材94を延長部材84の貫通孔84aに挿し込んだときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る油圧ダンパ90における、シリンダ42内の作動油の量が下限値より少ない場合に油量監視棒部材94を延長部材84の貫通孔84aに挿し込んだときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る油圧ダンパ100における、シリンダ42内の全体の作動油の量が下限値より多い場合を示す、主に棒状部材82と油量監視棒部材102を含む部分拡大断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る油圧ダンパ100における、シリンダ42内の全体の作動油の量が下限値より少ない場合を示す、主に棒状部材82と油量監視棒部材102を含む部分拡大断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る油圧ダンパ110における、加圧式アキュムレータ72及びその近傍を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図10】シリンダ42内の全体の作動油の量が下限値より多い場合に油量監視棒部材112を延長部材84の貫通孔84aに押し込んだときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図11】シリンダ42内の全体の作動油の量が下限値より少ない場合に油量監視棒部材112を延長部材84の貫通孔84aに押し込んだときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態に係る油圧ダンパ120における、加圧式アキュムレータ72及びその近傍を拡大して示す部分拡大断面図である。
【図13】従来の油圧ダンパ2をその軸線に沿って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る油圧ダンパを実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0024】
図1から図4は、本発明の第1の実施の形態に係る制震用の油圧ダンパ40について説明するために参照する図である。
【0025】
本実施の形態に係る油圧ダンパ40は、図1に示すように、円筒状のシリンダ本体44と、このシリンダ本体44の軸線方向の両端部を塞ぐ一対のカバー部材46,48により構成されたシリンダ42を備えており、そのシリンダ42の内部にピストン50が収納されている。
【0026】
ピストン50は、図中左右方向に伸びる軸線を有する長さの短い円柱状に形成され、その外周部がシリンダ本体44の内周面と摺動して、その軸線方向に動くことができるようにシリンダ42内に収納されている。
【0027】
そして、シリンダ42はその内部に、ピストン50によりその両側に仕切られた第1油室56と第2油室58とを有しており、これらの第1油室56と第2油室58の内部には作動油が充填されている。
【0028】
また、ピストン50には、その図中右側の端面中央部から軸線方向に伸び、シリンダ42のカバー部材46より外側(図中右側)に突出した丸棒状の第1ピストンロッド部52と、ピストン50の第1ピストンロッド部52とは反対側(図中左側)の端面中央部から軸線方向に伸び、シリンダ42のカバー部材48より外側(図中左側)に突出した丸棒状の第2ピストンロッド部54とが一体的に形成されている。
【0029】
図1に示すように、第1ピストンロッド部52は、シリンダ42のカバー部材46に形成された嵌合孔46aに、第1油室56内の密閉状態を維持しながら摺動可能に嵌合されており、カバー部材46よりその軸線方向の外側にその先端部が突出している。
【0030】
また、第2ピストンロッド部54は、シリンダ42のカバー部材48に形成された嵌合孔48aに、第2油室58内の密閉状態を維持しながら摺動可能に嵌合されており、カバー部材48よりその軸線方向の外側にその先端部が突出していると共に、その外側に突出した先端部には加圧式アキュムレータ72が軸線方向に直列に連結して設けられている。
【0031】
そして、シリンダ42のカバー部材48の外周部には、その図中左端部が閉止された、円筒状の延長部材84の図中右端部が一体的に連結されている。この延長部材84はその内部に、第2ピストンロッド部54の軸線方向のカバー部材48より外側に突出した先端部、及び加圧式アキュムレータ72を収納すると共に、延長部材84はシリンダ42の軸線と同方向にその長さを延長するように設けられている。
【0032】
ピストン50の中実内部には、第1油室56と第2油室58との間を連通する流路60,62が、ピストン50の軸線と平行方向に形成されている。これらの流路60,62の途中にはそれぞれ、リリーフ弁64,66(調圧弁)が互いに逆向きに動作するように配置されている。
【0033】
これらのリリーフ弁64,66は、ピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ40の非作動時は、内部に作動油が流れないよう流路60,62の断面を塞ぐ機能を有しているが、地震等によりピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動する、油圧ダンパ40の作動時には、第1油室56と第2油室58の、いずれか一方の油室内の作動油の圧力が一定値を超えると、流路60,62の一方を開いて作動油が一方の油室から他方の油室内に流れることを可能とする機能を有している。
【0034】
また、ピストン50の中実内部には、シリンダ42内の第1油室56及び第2油室58と、加圧式アキュムレータ72のアキュムレータ油室76とを連通する流路68,70が形成されている。そして、ピストン50中の流路68,70、及び加圧式アキュムレータ72のアキュムレータ油室76の内部には、作動油が充填されている。
【0035】
2本の流路68,68それぞれの長さ方向途中には、不図示のオリフィス等の絞り(油圧低減手段)がそれぞれ備えられている。この油圧低減手段は、地震等によりピストン50がシリンダ22内で軸線方向に移動する油圧ダンパ40の作動時に、第1油室56及び第2油室58側から、流路70及びアキュムレータ油室76への作動油の流量を制限して、アキュムレータ油室76の作動油の圧力を、第1油室56及び第2油室58の作動油の圧力より低減する機能を有している。
【0036】
加圧式アキュムレータ72は、円筒状のアキュムレータ本体74と、このアキュムレータ本体74の内部に形成されていた1つの空間を2つの空間に区分するアキュムレータピストン78とを備えている。
【0037】
そして、加圧式アキュムレータ72はさらに、アキュムレータピストン78により区分された2つの空間の一方に形成されるアキュムレータ油室76と、2つの空間の他方に収納されて、アキュムレータピストン78をアキュムレータ油室76に向けて押圧するバネ80(弾性部材)とを備えると共に、アキュムレータピストン78の軸線部にその基端部が一体的に形成され、その先端部がアキュムレータ本体74の図中左端部の軸孔を通ってアキュムレータ本体74から外部に突出している丸棒状の棒状部材82を備えている。
【0038】
この加圧式アキュムレータ72は、シリンダ42内の第1油室56及び第2油室58の作動油の膨張、収縮を吸収する機能を有している。
【0039】
例えば、ピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動して、第1油室56と第2油室58の何れか一方の油室内の作動油の圧力が低下した場合に、その圧力が低下した油室にアキュムレータ油室76から作動油を供給することにより、作動油が不足して第1油室56や第2油室58内が負圧になることを防止して、油圧ダンパ40の性能を安定させることができるようになっている。
【0040】
また、加圧式アキュムレータ72は、作動油の予備タンクとしての機能をも有しており、油漏れなどにより第1油室56や第2油室58の作動油の量が不足した際には、アキュムレータ油室76から各油室56,58に作動油を供給することができるようになっている。
【0041】
そして、本実施の形態に係る油圧ダンパ40は、長期間経過後に、シリンダ42内の第1油室56や第2油室58、或いはアキュムレータ油室76から作動油が漏れ出して、ダンパ内の作動油の量が減少した場合には、これらの油室56,58に作動油を供給するアキュムレータ油室76内の作動油の量が減少するようになっている。
【0042】
加圧式アキュムレータ72は、図2に示すように、アキュムレータ油室76内の作動油の量が減少すると、アキュムレータピストン78をアキュムレータ油室76に向けて押圧するバネ80が伸びるので、バネ80に押圧されているアキュムレータピストン78及び棒状部材82は、矢印A方向(図中右方向)に移動するようになっている。
【0043】
このため、アキュムレータ油室76内の作動油の量が減少すると、その分だけ棒状部材82の先端面82aが、アキュムレータ本体74の端面74aから突出する突出長さ寸法が短くなるようになっている。
【0044】
ここで、本実施の形態に係る油圧ダンパ40が本来の機能を発揮するのに必要な最低限の量(以下、下限値という)の作動油がシリンダ42内に充填されている場合における、アキュムレータ本体74の端面74aから棒状部材82の先端面82a迄の突出長さ寸法をLとする。
【0045】
延長部材84には、図2に示すように、円形状の貫通孔84aが形成されている。この貫通孔84aは、その加圧式アキュムレータ72寄りの縁部84b(図中右端部)が、作動油の量が下限値の場合における棒状部材82の先端面82a(先端部)と略同一位置となるように配置されている。
【0046】
また、延長部材84の貫通孔84aは、図3に示すように、その内径と略同一の外径を有する丸棒状の油量監視棒部材86を挿通させて、図中上下方向に摺動可能に嵌合することができるよう形成されている。この油量監視棒部材86には、その軸線方向(図中上下方向)に垂直な断面(図中水平面)の周部に目印86bが刻まれて設けられている。
【0047】
図3及び図4に基づいて、本発明の第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40の油量監視方法について説明する。
【0048】
まず、図3は、図1におけるシリンダ42内の第1油室56や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも多く、かつピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ40の非作動時における、棒状部材82先端部の突出状態を示す図である。
【0049】
すなわち、棒状部材82の先端面82aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L1は、上記図2に示したような作動油の量が下限値の場合におけるその突出長さ寸法Lよりも大きくなっている。
【0050】
このため、延長部材84の貫通孔84aに、油量監視棒部材86を挿通させると、油量監視棒部材86の図中下端部の先端面86aは、棒状部材82の先端部の外周面82bに当接するようになっている。
【0051】
したがって、油量監視棒部材86の先端面86aが棒状部材82の外周面82bに当接した後は、油量監視棒部材86を延長部材84の内部にそれ以上深く挿し込むことはできないようになっている。
【0052】
このとき、油量監視棒部材86の軸線方向に垂直な断面の周部に設けた上記目印86bは、延長部材84の外周面84cより外側に配置されるようになっており、外部から容易に目印86bを確認することができるようになっている。
【0053】
このように、シリンダ42内の第1油室56や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも多い場合には、挿し込まれた油量監視棒部材86の先端面86aは棒状部材82に当接するので、油量監視棒部材86の、延長部材84の内部に挿し込まれた長さ寸法は一定であり、目印86bを視認することにより、シリンダ42内の作動油の量が下限値の場合の量よりも多いことを確認することができる。
【0054】
次に、図4は、図1におけるシリンダ42内の第1油室56や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも少なく、かつピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ40の非作動時における、棒状部材82先端部の突出状態を示す図である。
【0055】
すなわち、棒状部材82の先端面82aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L2は、上記図2に示したような作動油の量が下限値の場合におけるその突出長さ寸法Lよりも小さくなっている。
【0056】
このため、延長部材84の貫通孔84aに、油量監視棒部材86を挿通させると、油量監視棒部材86の図中下端部の先端面86aは、棒状部材82の先端部の外周面82bには当接しないようになっている。
【0057】
したがって、油量監視棒部材86の先端面86aは棒状部材82に当接しないので、それらが当接する図3の場合に比べて、油量監視棒部材86を延長部材84の内部により深く挿し込むことができるようになっている。
【0058】
このため、油量監視棒部材86に設けた目印86bは延長部材84の外周面86cより内側に入り込んでしまうので、外部から目印86bを視認することはできないようになっている。
【0059】
このように本実施の形態における油圧ダンパ40は、シリンダ42内の作動油の量が下限値よりも多い場合と下限値よりも少ない場合とでは、油量監視棒部材86が延長部材84の内部に挿し込まれる長さ寸法が異なるようになっている。
【0060】
このため、油圧ダンパ40は、油量監視棒部材86を延長部材84の貫通孔84aに挿通させて、その先端面86aが棒状部材82に当接して、目印86bが延長部材84の外部の位置に出ているかを視認することにより、油圧ダンパ40が本来の機能を発揮するのに十分な油量を有しているかを外部から容易に認識することができる。
【0061】
また、油圧ダンパ40は、前記従来の油圧ダンパ2のように、作業者が延長部材16の貫通孔16aを覗き込む必要はないので、油圧ダンパ40が本来の機能を発揮するのに十分な油量を有しているかを外部から容易に認識することができる。
【0062】
また、油圧ダンパ40は、延長部材84の貫通孔84aを、その内部に収容された棒状部材82を容易に視認することができるような大きな開口面積にしなくてもよいので、前記従来の油圧ダンパ2における延長部材16の貫通孔16aよりも、その延長部材84の貫通孔84aの開口面積を小さくすることができる。
【0063】
このように、延長部材84の貫通孔84aの開口面積を小さくすることができるので、延長部材84の強度が低減するのを防止できると共に、その貫通孔84aの加工が容易になり、その貫通孔84aを閉止する雨水浸入防止対策も容易に行なうことができる。
【0064】
このような本発明の第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40によれば、作業者が延長部材84の貫通孔84aを覗き込まなくても、油圧ダンパ40内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる。
【0065】
図5及び図6は、本発明の第2の実施の形態に係る制震用の油圧ダンパ90について説明するために参照する図である。
【0066】
図5に示すように、本実施の形態に係る油圧ダンパ90における棒状部材92は、そのアキュムレータ本体74の端面74aから外部に突出した先端部が円錐状、すなわち、その先端部の先端92aに向かうにつれて外形寸法が小さくなるようなテーパ面92bが形成されている点において、前記第1の実施の形態における棒状部材82とは異なるものである。
【0067】
また、本実施の形態に係る油圧ダンパ90における油量監視棒部材94は、その軸線方向(図中上下方向)に互いに間隔をおいて複数の目盛94bが形成され、その軸線方向の下端部には、棒状部材92のテーパ面92bに接触する傾斜面94aが形成されている点において、前記第1の実施の形態における油量監視棒部材86とは異なるものである。
【0068】
図5及び図6に基づいて、本発明の第2の実施の形態に係る油圧ダンパ90の油量監視方法について説明する。
【0069】
まず、図5に示すように、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40と同様に、作動油の量が下限値の場合における、棒状部材92の先端92aのアキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法をLとする。
【0070】
そして図5は、図1におけるシリンダ42内の第1油室56や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも多く、かつピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ90の非作動時における、棒状部材92の先端92aの突出状態を示す図である。
【0071】
棒状部材92の先端92aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L3は、作動油の量が下限値の場合における突出長さ寸法Lよりも大きくなっている。
【0072】
そして、延長部材84の貫通孔84aに、油量監視棒部材94を挿通させると、油量監視棒部材94の図中下端部の傾斜面94aは、アキュムレータ本体74の端面74aより外側に突出した棒状部材92の先端部のテーパ面92bに接触するようになっている。
【0073】
次に、図6は、図1におけるシリンダ42内の第1油室56や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも少なく、かつピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ90の非作動時における、棒状部材92の先端92aの突出状態を示す図である。
【0074】
棒状部材92の先端92aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L4は、作動油の量が下限値のときの突出長さ寸法Lよりも小さくなっている。
【0075】
このとき、棒状部材92の先端部にはテーパ面92bが形成されているので、延長部材84の貫通孔84aに油量監視棒部材94を挿通させると、油量監視棒部材94の図中下端部の傾斜面94aは、アキュムレータ本体74の端面74aより外側に突出した棒状部材92の先端部のテーパ面92bに接触するようになっている。
【0076】
但しこのときは、油量監視棒部材94の図中下端部の傾斜面94aは、図5においては棒状部材92のテーパ面92bの加圧式アキュムレータ72側の径が太い部分に接触したが、棒状部材92のテーパ面92bの先端92a側(図中左側)の径が小さい部分に接触するようになっている。
【0077】
このため、油量監視棒部材94の延長部材84の内部に挿し込まれた長さ寸法は、油量監視棒部材94の傾斜面94aが図5において棒状部材92のテーパ面92bの径が太い部分に接触した場合よりも大きくなり、その分延長部材84の外周面84cより外側(上側)に突出する長さ寸法が小さくなることが目盛94bから分かる。
【0078】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る油圧ダンパ90においては、油量監視棒部材94の傾斜面94aは、棒状部材92のテーパ面92bに接触するようになっているので、シリンダ42内の作動油が減少するにしたがって、油量監視棒部材94の、延長部材84の内部に挿し込まれた長さ寸法が大きくなるようになっている。
【0079】
そして、油量監視棒部材94の軸線方向に互いに間隔をおいて複数の目盛94bが形成されているので、延長部材84の外周面84cより外側に位置する目盛94bを視認することにより、油圧ダンパ90が本来の機能を発揮するのに十分な油量を有しているかを外部から容易に認識することができる。
【0080】
このような本発明の第2の実施の形態に係る油圧ダンパ90によっても、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40と同様の効果を得ることができる。すなわち、作業者が延長部材84の貫通孔84aを覗き込まなくても、油圧ダンパ40内の作動油の量の変化を外部から容易に認識することができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る油圧ダンパ90によれば、シリンダ42内の作動油が減少するにしたがって、油量監視棒部材94の、延長部材84の内部に挿し込まれた長さ寸法が大きくなるようになっているので、ダンパ使用開始時から一定期間経過後において作動油の油漏れの量を計測し、その時から後のどの程度の期間において、油圧ダンパ90が本来の機能を維持できるのかを予測することができる。
【0082】
このため、油圧ダンパ90のメンテナンスの頻度をより少なく適切なものにすることができる。
【0083】
図7及び図8は、本発明の第3の実施の形態に係る制震用の油圧ダンパ100について説明するために参照する図である。
【0084】
図7に示すように、本実施の形態に係る油圧ダンパ100における油量監視棒部材102は、油量を監視する時は勿論、それ以外の時であっても常に延長部材84の貫通孔84aに挿通されている点、及びその軸線方向の上端部側に径方向外側に突出する外周凸部102b(係止部)が形成されている点において、前記第1の実施の形態における油量監視棒部材86とは異なるものである。
【0085】
図7及び図8に基づいて、本発明の第3の実施の形態に係る油圧ダンパ100の油量監視方法について説明する。
【0086】
図7は、シリンダ42内の第1油室56(図1参照)や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも多く、かつピストン50(図1参照)がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ100の非作動時における、棒状部材82の先端面82aの突出状態を示す図である。
【0087】
棒状部材82の先端面82aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L1は、作動油が下限値の場合における突出長さ寸法Lよりも大きくなっている。
【0088】
そして、油量監視棒部材102は、その軸線方向の下端部が延長部材84の貫通孔84aに挿通されており、その図中下端部の先端面102aはその重力により、棒状部材82の先端部の外周面82bに当接している。このため、油量監視棒部材102の下端部は延長部材84の内部にそれ以上深く挿し込まれないようになっている。
【0089】
このとき、油量監視棒部材102の軸線方向の上端部側に設けた外周凸部102bは、延長部材84の外周面84cから離隔されるようになっており、その外周面84cから離隔している油量監視棒部材102の状態を外部から容易に確認することができるようになっている。
【0090】
次に、図8は、シリンダ42内の第1油室56(図1参照)や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも少なく、かつピストン50(図1参照)がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ100の非作動時における、棒状部材82の先端面82aの突出状態を示す図である。
【0091】
棒状部材82の先端面82aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L2は、作動油の量が下限値のときの突出長さ寸法Lよりも小さくなっている。
【0092】
このため、油量監視棒部材102は、その図中下端部の先端面102aが、棒状部材82の先端部の外周面82bには当接しないので、それらが当接する図7の場合に比べて、延長部材84の内部に(図中下方に)より深く挿し込まれている。
【0093】
そして、油量監視棒部材102の上端部に設けた外周凸部102bの下面が、延長部材84の外周面84cに接触するようになっている。
【0094】
このように本実施の形態における油圧ダンパ100は、図1のシリンダ42内の全体の作動油の量が下限値よりも多い場合と下限値よりも少ない場合とでは、油量監視棒部材102の下端部が延長部材84の内部に挿し込まれるその長さ寸法が異なるようになっている。
【0095】
そして、油圧ダンパ100は、油量監視棒部材102の上端部に設けた外周凸部102bと延長部材84の外周面84cとの間が離隔されているかを視認することにより、油圧ダンパ100が本来の機能を発揮するのに十分な油量を有しているかを外部から容易に認識することができる。
【0096】
また、油圧ダンパ100は、油量監視棒部材102に外周凸部102bが形成されているため、油量監視棒部材102の下端部が延長部材84の内部に必要以上に深く挿し込まれるのを防止することができる。
【0097】
このような本発明の第3の実施の形態に係る油圧ダンパ100によっても、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40と同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、本実施の形態に係る油圧ダンパ100によれば、油量を監視する時だけでなく、それ以外の時であっても常に、油量監視棒部材102を延長部材84の貫通孔84aに挿通させておくことができるため、油圧ダンパ100内の作動油の量を作業者が迅速に確認することができる。
【0099】
図9から図11は、本発明の第4の実施の形態に係る制震用の油圧ダンパ110について説明するために参照する図である。
【0100】
本実施の形態に係る油圧ダンパ110における油量監視棒部材112は、図9に示すように、油量を監視する時以外であっても常にその軸線方向(図中上下方向)の下端部が延長部材84の貫通孔84aに挿通されている点、及びその軸線方向の上端部側に径方向外側に突出する外周凸部122bが形成されている点において、前記第1の実施の形態における油量監視棒部材86とは異なるものである。
【0101】
そして、油量監視棒部材112は、その外周凸部122bの下面と延長部材84の外周面84cとの間に、伸縮方向(図中上下方向)の両端面が挟まれたバネ114(弾性部材)により、図中上方に向かって押圧された状態で下側から支持されている。
【0102】
ところで、前記第3の実施の形態に係る油圧ダンパ100においては、ピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動する油圧ダンパ100の作動時において、棒状部材82の先端面82aが油量監視棒部材102の下端部に接触してしまうおそれがあるが、油量監視棒部材112の図中下端部の先端面112aは、加圧式アキュムレータ72のアキュムレータ本体74の外周面74bより径方向外側に位置するようになっているため、ピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動する油圧ダンパ110の作動時においても、油量監視棒部材112の下端部に棒状部材82の先端面82aが接触しないようになっている。
【0103】
図9から図11に基づいて、本発明の第4の実施の形態に係る油圧ダンパ110の油量監視方法について説明する。
【0104】
図10は、シリンダ42内の第1油室56(図1参照)や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも多く、かつピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ110の非作動時における、棒状部材82の先端面82aの突出状態を示す図である。
【0105】
棒状部材82の先端面82aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L1は、作動油の量が下限値の場合における突出長さ寸法Lよりも大きくなっている。
【0106】
油量監視棒部材112に図中上方から押圧力Fを加えると、油量監視棒部材112を図中上方に向かって押圧するバネ114が縮んで、油量監視棒部材112の下端部が延長部材84の内部に押し込まれる。
【0107】
そして、油量監視棒部材112は、その図中下端部の先端面112aが、棒状部材82の先端部の外周面82bに当接するようになっている。
【0108】
したがって、油量監視棒部材112の先端面112aが棒状部材82の外周面82bに当接した後は、油量監視棒部材112を延長部材84の内部にそれ以上深く押し込むことはできないようになっている。
【0109】
次に、図11は、シリンダ42内の第1油室56や第2油室58、及びアキュムレータ油室76内に充填されている作動油の量が下限値よりも少なく、かつピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ110の非作動時における、棒状部材82の先端面82aの突出状態を示す図である。
【0110】
棒状部材82の先端面82aの、アキュムレータ本体74の端面74aからの突出長さ寸法L2は、作動油の量が下限値の場合における突出長さ寸法Lよりも小さくなっている。
【0111】
油量監視棒部材112に図中上方から押圧力Fを加えて、油量監視棒部材112の下端部を延長部材84の内部に押し込んでも、油量監視棒部材112の図中下端部の先端面112aは、棒状部材82の先端部の外周面82bには当接しないようになっている。
【0112】
したがって、油量監視棒部材112の先端面112aは棒状部材82に当接しないので、それらが当接する図10の場合に比べて、油量監視棒部材112の下端部を延長部材84の内部により深く挿し込むことができるようになっている。
【0113】
このように本実施の形態における油圧ダンパ110は、シリンダ42内の作動油の量が下限値よりも多い場合と下限値よりも少ない場合とでは、油量監視棒部材112の下端部が延長部材84の内部に挿し込まれる長さ寸法が異なるようになっている。
【0114】
そして、油量監視棒部材112を押し込んで、その先端面112aが棒状部材82に当接するかを確認することにより、棒状部材82の突出状態を人が覗いて見なくても、油圧ダンパ110が本来の機能を発揮するのに十分な油量を有しているかを外部から容易に認識することができる。
【0115】
また、油圧ダンパ110は、油量監視棒部材112がバネ114により下側から支持されているため、油量監視棒部材112が延長部材84の内部に必要以上に深く押し込まれた状態が維持されるのを防止することができる。
【0116】
このような本発明の第4の実施の形態に係る油圧ダンパ110によっても、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40と同様の効果を得ることができる。
【0117】
また、本実施の形態に係る油圧ダンパ110によれば、油量を監視する時と同様に、それ以外の時であっても常に、油量監視棒部材112を延長部材84の貫通孔84aに挿通させておくことができるため、油圧ダンパ100内の作動油の量を作業者が迅速に確認することができる。
【0118】
また、本実施の形態に係る油圧ダンパ110によれば、ピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動する油圧ダンパ110の作動時においても、油量監視棒部材112に棒状部材82の先端面82aが接触することを防止することができる。
【0119】
図12は、本発明の第5の実施の形態に係る制震用の油圧ダンパ120について説明するために参照する図である。
【0120】
本実施の形態に係る油圧ダンパ120における延長部材122は、図12に示すように、その貫通孔122aの周囲に肉厚を有する筒状のガイド部122dが、延長部材122の内周面から径方向内側に向かって突出して形成されている点において、前記第1の実施の形態における延長部材84とは異なるものである。
【0121】
このため、延長部材122は、その貫通孔122aの深さ寸法が、前記第1の実施の形態における延長部材84の貫通孔84aの深さ寸法よりも大きく形成されている。
【0122】
そして、延長部材122は、その貫通孔122aの加圧式アキュムレータ72寄りの縁部122(図中右端部)が、作動油の量が下限値の場合における棒状部材82の先端面82a(先端部)と略同一位置となるように配置されている。
【0123】
このため、油量監視棒部材86を延長部材122の貫通孔122aに挿通させた際に、油量監視棒部材86の軸線が延長部材122の貫通孔122aの軸線方向に対して傾斜することを、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40に比べてより確実に防止することができる。
【0124】
このような本発明の第5の実施の形態に係る油圧ダンパ120によっても、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40と同様の効果を得ることができる。
【0125】
また、本実施の形態に係る油圧ダンパ120によれば、油量監視棒部材86の軸線が延長部材122の貫通孔122aの軸線方向に対して傾斜することを防止することができるため、油圧ダンパ120内の作動油の量の検出精度を、前記第1の実施の形態に係る油圧ダンパ40に比べてより確実に防止することができる。
【0126】
また、油量監視棒部材86を延長部材122の貫通孔122aに垂直に挿し込むことが容易にできるようになるので、油圧ダンパ120内の作動油の量を作業者が迅速に確認することができる。
【0127】
なお、前記第1から第5の実施の形態に係る油圧ダンパ40等においては、制震用の油圧ダンパについて説明したが、本発明は免震用の油圧ダンパとか、その他の種類の油圧ダンパにおいても適用することができる。
【0128】
また、前記実施の形態に係る油圧ダンパ40等における加圧式アキュムレータ72は、第2ピストンロッド部54に軸線方向に直列に連結して設けられていたが、図13に示す前記従来の油圧ダンパ2のように第2ピストンロッド部54の内部に設けられていてもよい。
【0129】
また、前記実施の形態に係る油圧ダンパ40等における棒状部材82等は丸棒状に形成されていたが、丸棒状に限定される必要はなく、角棒状等であってもかまわない。
【0130】
また、前記実施の形態に係る油圧ダンパ40等における延長部材84の貫通孔84aは、円形状に形成されていたが、円形状に限定される必要はなく、多角形状等であってもかまわない。また、油量監視棒部材86等の形状も丸棒状でなくともよく、延長部材84の貫通孔84aの他の形状に対応する形状に変更してもよい。
【0131】
また、前記実施の形態に係る油圧ダンパ120における延長部材122のガイド部122dは、その貫通孔122aの周囲に肉厚を有する筒状のガイド部122dが、延長部材122の内周面から径方向内側に向かって突出して形成されていたが、その貫通孔122aの周囲に肉厚を有する筒状のガイド部が、延長部材122の外周面122cから径方向外側に向かって突出して形成されるようになっていてもよい。
【0132】
また、延長部材122の内周面と外周面122cの内外両面から、径方向内外両側に向かって突出した、内外一対の筒状のガイド部が形成されるようになっていてもよい。
【0133】
また、前記実施の形態に係る油圧ダンパ40等のそれぞれの構成を適宜組み合わせて、これらの実施の形態と異なる油圧ダンパが構成されるようになっていてもよい。
【0134】
また、前記実施の形態に係る油圧ダンパ40等における油量監視方法においては、ピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動しない油圧ダンパ40等の非作動時における場合について説明したが、ピストン50がシリンダ42内で軸線方向に移動する油圧ダンパ40等の作動時においては、地震等の外力によりアキュムレータ油室76の圧力が安定しないので、正確に油量監視ができないため、油圧ダンパ40等の作動時における油量監視方法については省略した。
【0135】
また、前記実施の形態に係る油圧ダンパ40等における油量監視棒部材86等の代わりに、延長部材84の貫通孔84aを利用して、棒状部材82を検出して信号を出力する電気的な位置センサや、延長部材84の外周面84cから棒状部材82までの突出長さ寸法を電気的に計測して信号を出力する測長センサを用いてもよい。
【0136】
このような電気的なセンサには、油圧ダンパ40等の動作を阻害しない非接触式のセンサを用いれば、それらのセンサを油圧ダンパ40等に常時接続しておくことも可能になる。
【符号の説明】
【0137】
2 油圧ダンパ
4 シリンダ
4a,4b 端面
6 ピストン
6a,6b 端面
6c,6d 油路
8,10 油室
12,14 ピストンロッド
14a 軸孔
14b 先端面
16 延長部材
16a 貫通孔
18,20 リリーフ弁
22 アキュムレータ
24 アキュムレータ油室
26 アキュムレータピストン
28 バネ
30 棒状部材
40 油圧ダンパ
42 シリンダ
44 シリンダ本体
46,48 カバー部材
46a,48a 嵌合孔
50 ピストン
52 第1ピストンロッド部
54 第2ピストンロッド部
56 第1油室
58 第2油室
60,62 流路
64,66 リリーフ弁
68,70 流路
72 加圧式アキュムレータ
74 アキュムレータ本体
74a 端面
76 アキュムレータ油室
78 アキュムレータピストン
80 バネ
82 棒状部材
82a 先端面
82b 外周面
84 延長部材
84a 貫通孔
84b 縁部
84c 外周面
86 油量監視棒部材
86a 先端面
86b 目印
90 油圧ダンパ
92 棒状部材
92a 先端
92b テーパ面
94 油量監視棒部材
94a 傾斜面
94b 目盛
100 油圧ダンパ
102 油量監視棒部材
102a 先端面
102b 外周凸部
110 油圧ダンパ
112 油量監視棒部材
112a 先端面
112b 外周凸部
114 バネ
120 油圧ダンパ
122 延長部材
122a 貫通孔
122b 縁部
122c 外周面
122d ガイド部
A 矢印
F 押圧力
L,L1,L2,L3,L4 突出長さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室と、
前記ピストンの前記シリンダより外側に突出するピストンロッドに設けられ、前記2つの油室に連通する油室を有するアキュムレータと、
前記シリンダ内の作動油の圧力の変動に応じて前記アキュムレータより外側に突出する量が増減する棒状部材と、
前記シリンダからその長さ方向に延長して前記アキュムレータの周囲を被覆する延長部材と、
前記延長部材に形成された貫通孔に挿通する油量監視棒部材とを備え、
前記油量監視棒部材を前記貫通孔に挿通したときの、前記延長部材の内部に挿し込まれた前記油量監視棒部材の長さ寸法によりダンパ全体の作動油の量の変化を判断できるようにした
ことを特徴とする油圧ダンパ。
【請求項2】
前記棒状部材の先端部にはテーパ面が形成されると共に、
前記油量監視棒部材の先端部には前記棒状部材の先端部のテーパ面と接触して摺動可能なテーパ面が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の油圧ダンパ。
【請求項3】
その下端部が前記延長部材の貫通孔の内部に挿通された前記油量監視棒部材は、前記延長部材の外周面に係止する係止部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧ダンパ。
【請求項4】
その下端部が前記延長部材の貫通孔の内部に挿通された前記油量監視棒部材は、その下端部の端面が前記アキュムレータの外周面より径方向外側に配置されるように弾性部材により支持されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の油圧ダンパ。
【請求項5】
前記延長部材の貫通孔の周囲に前記延長部材の内・外周面の一方又は両方より径方向に突出したガイド部が形成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の油圧ダンパ。
【請求項6】
シリンダと、
前記シリンダ内に収納されたピストンと、
前記シリンダ内の前記ピストンの両側に形成された2つの油室と、
前記ピストンの前記シリンダより外側に突出するピストンロッドに設けられ、前記2つの油室に連通する油室を有するアキュムレータと、
前記シリンダ内の作動油の圧力の変動に応じて前記アキュムレータより外側に突出する量が増減する棒状部材と、
前記シリンダからその長さ方向に延長して前記アキュムレータの周囲を被覆する延長部材と、
前記延長部材に形成された貫通孔に挿通する油量監視棒部材とを備えた油圧ダンパの油量監視方法であって、
前記油量監視棒部材を前記貫通孔に挿通して、前記延長部材の内部に挿し込まれた前記油量監視棒部材の長さ寸法によりダンパ全体の作動油の量の変化を判断するようにした
ことを特徴とする油圧ダンパの油量監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−72469(P2013−72469A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210943(P2011−210943)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】