説明

油圧作動液

【課題】従来使用されていた油圧作動油に代わるもので、従来の油圧作動油と同等の機能を果たす新規な油圧作動液を提供すること。
【解決手段】水100質量部に対し、水性増粘剤0.01〜10質量部を含有してなることを特徴とする油圧作動液。上記水性増粘剤は、好ましくは澱粉起源の増粘剤である。本発明の油圧作動液は、40℃における動粘度が15〜100mm2/sであることが好ましく、また、さらに酸化防止剤、殺菌剤、防腐剤及び消泡剤を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動液に関し、詳細には、各種油圧機器に従来使用されていた油圧作動油に代わり得る新規な油圧作動液に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、荷役機械、工作機械、金属加工機械、プラスチック成形機等の各種油圧機器には、動力を伝達する媒体として油圧作動油が用いられている。従来、該油圧作動油としては、油(鉱油及び/又は合成油等)が使用されてきた(例えば特許文献1及び2参照)。また、油の一部を水に置き換えたエマルション型の油圧作動油(例えば特許文献3参照)や、水−グリコール型の組成物(例えば特許文献4参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−173948号公報
【特許文献2】特開2009−179695号公報
【特許文献3】特開2008−127427号公報
【特許文献4】特開2009−126975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来使用されてきた油圧作動油に代わり得る新規な油圧作動液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水100質量部に対し、水性増粘剤0.01〜10質量部を含有してなることを特徴とする油圧作動液を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、無害で、廃棄に伴う環境への負荷がなく、燃える危険性もない油圧作動液を、安価に提供することができる。しかも、本発明によれば、様々な粘度の増粘された油圧作動液を容易に調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0008】
本発明の油圧作動液は、水100質量部に対し、水性増粘剤0.01〜10質量部を含有してなる。上記水性増粘剤としては、澱粉起源の増粘剤が好ましく用いられる。澱粉起源の増粘剤としては、例えば、馬鈴薯、葛、とうもろこし、タピオカ、小麦、さつまいも、米、カタクリ、緑豆、サゴヤシ、ワラビ等の各種植物起源の澱粉;該澱粉にエステル化、エーテル化、架橋等の処理を施した各種加工澱粉;デキストリンが挙げられる。
【0009】
上記水性増粘剤としては、上記の澱粉起源の増粘剤のほかに、増粘安定剤として知られている各種物質を使用することもできる。該増粘安定剤としては、ペクチン、グアーガム、アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、タマリンドガム、プルラン、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、サイリウム、カードラン、グルコマンナン、寒天、ゼラチン等が挙げられる。これらの増粘安定剤のうち、多糖類を2種以上組み合わせて増粘多糖類として用いてもよい。
【0010】
本発明の油圧作動油においては、上記水性増粘剤から選択した一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
本発明の油圧作動液においては、上記水性増粘剤として、市販のトロミ調製食品(いわゆるトロミ剤)を使用することができる。該トロミ剤は、乳児や老人等、摂食・嚥下機能の低い者が飲料又は食品を喉につまらせるのを防止するため、飲料又は食品にとろみをもたせ、喉でのすべりをよくするために使用されるものである。市販のトロミ剤の例としては、商品名「トロミアップV」(日清オイリオグループ社製)、商品名「スルーソフトS」(キッセイ薬品工業社製)、商品名「ムースアップ」(ヘルシーフード社製)、商品名「トロメリン顆粒」((株)三和化学研究所社製)、商品名「ソフティア1ゾル」(ニュートリー社製)、商品名「エンガード」(メジカルフーズジャパン社製)等が挙げられる。
【0012】
本発明の油圧作動液において、上記水性増粘剤の含有量は、油圧作動液が使用される油圧機器において必要とされる圧力に応じて、水100質量部に対し0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部の範囲から、適宜選択される。水100質量部に対する水性増粘剤の含有量は、使用する水性増粘剤の種類によっても異なるが、例えば、必要とされる圧力に応じ、以下のようにすることができる。
圧力140kgf/cm2未満の場合、0.2〜0.6質量部
圧力140kgf/cm2以上210kgf/cm2未満の場合、0.4〜0.8質量部
圧力210kgf/cm2以上300kgf/cm2未満の場合、0.6〜1質量部
圧力300kgf/cm2以上の場合、0.8〜1.5質量部
【0013】
本発明の油圧作動液は、従来の油圧作動油に代わり得る機能を発揮させる上で、動粘度が15〜100mm2/sであることが好ましく、30〜90mm2/sであることがさらに好ましい。尚、ここで示す動粘度は、40℃にて測定される値である。
【0014】
本発明の油圧作動液は、任意成分として、酸化防止剤、殺菌剤、防腐剤、消泡剤、着色剤、氷結防止剤、防錆剤等を含有することができる。また、これら以外にも、従来の油圧作動油に使用することができる各種添加剤を含有してもよい。これらの任意成分は、水溶性であることが必要である。
【0015】
本発明の油圧作動液は、上記酸化防止剤を含有すると、潤滑性が向上するため好ましい。例えばグリコシルルチンは、水産食肉加工、各種ドリンク・調味料製造等の食品分野でも使用される酸化防止剤であり、安全性が極めて高いため、本発明において酸化防止剤として好ましく用いられる。また、従来の油圧作動油に使用可能な酸化防止剤、例えばフェノール系、アミン系等の酸化防止剤も、水溶性を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。添加効果を十分に奏させつつ、経済性を満たし且つ油圧作動液の機能が損なわれないようにするために、酸化防止剤の含有量は、水100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がさらに好ましい。
【0016】
本発明の油圧作動液は、カビ、細菌、酵母等の微生物の繁殖を防止する観点から、上記殺菌剤を含有することが好ましい。食品分野で使用される殺菌剤、具体的には次亜塩素酸ナトリウム、リゾチーム等は、安全性が極めて高いため、本発明において殺菌剤として好ましく用いられる。尚、リゾチームからなる殺菌剤は、市販品〔例えば、商品名「アミカノン」(エーザイフード・ケミカル社製)〕として入手可能である。また、従来の油圧作動油に使用可能な殺菌剤、例えばイミダゾール系、チアゾール系、ニトリル系、フェノール系、トリアジン系、モルホリン系、ピリジン系等の殺菌剤も、水溶性を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。添加効果を十分に奏させつつ、経済性を満たし且つ油圧作動液の機能が損なわれないようにするために、殺菌剤の含有量は、水100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がさらに好ましい。
【0017】
本発明の油圧作動液は、カビ、細菌、酵母等の微生物の繁殖を防止する観点から、上記防腐剤を含有することも好ましい。食品分野で使用される防腐剤は、安全性が極めて高いため好ましい。食品分野で使用される防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のヒドロキシ安息香酸及びその塩若しくはそのエステルが挙げられる。また、従来の油圧作動油に使用可能な防腐剤も、水溶性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。添加効果を十分に奏させつつ、経済性を満たし且つ油圧作動液の機能が損なわれないようにするために、防腐剤の含有量は、水100質量部に対し、0.001〜3質量部が好ましく、0.005〜1質量部がさらに好ましい。
【0018】
本発明の油圧作動液は、上記消泡剤を含有することが好ましい。水に上記水性増粘剤を添加し攪拌すると気泡が多量に生じるが、気泡は本発明の油圧作動液を油圧機器に使用した時の油圧に悪影響を与える。上記消泡剤を本発明の油圧作動液に含有させれば、気泡の発生を防止することができる。食品分野で使用される消泡剤、具体的にはシリコーン樹脂系消泡剤等は、安全性が極めて高いため好ましい。食品分野で使用できるシリコーン樹脂系消泡剤としては、例えば、商品名「シリカペットS」(信越化学工業社製)が挙げられる。また、従来の油圧作動油に使用可能な消泡剤、例えばシリコーン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤も、水溶性を有するものであれば特に制限なく使用することができる。添加効果を十分に奏させつつ、経済性を満たし且つ油圧作動液の機能が損なわれないようにするために、消泡剤の含有量は、水100質量部に対し、0.001〜3質量部が好ましく、0.005〜1質量部がさらに好ましい。
【0019】
上記着色剤は、例えば、対応圧力の異なる油圧作動液が複数ある場合に、それらの識別を容易にするために添加されるものである。着色剤としては、水溶性のものであれば特に制限はなく、例えば市販の食用色素を使用することができる。また、従来の油圧作動油に使用可能な着色剤も、水溶性のものであれば特に制限なく使用することができる。着色剤を添加していない本発明の油圧作動液が通常白色であるため、赤色ないし黄色の着色剤であると、添加量が微量であっても鮮明な着色が付されやすいため好ましい。
【0020】
本発明の油圧作動液には、氷結を防止するために、上記氷結防止剤を含有させてもよい。上記氷結防止剤としては、例えば従来の油圧作動油に使用可能なものから、水溶性のものを適宜選択して使用することができる。添加効果を十分に奏させつつ、経済性を満たし且つ油圧作動液の機能が損なわれないようにするために、氷結防止剤の含有量は、水100質量部に対し、0.001〜3質量部が好ましく、0.005〜1質量部がさらに好ましい。
【0021】
水及び水性増粘剤以外の上記任意成分の合計含有量は、本発明の効果を損なわないようにする観点から、水100質量部に対し、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下の範囲とすることが好ましい。
【0022】
本発明の油圧作動液は、廃棄に伴う環境への負荷、難燃性、経済性等の観点から、従来使用されている油(鉱油及び/又は合成油等)並びにグリコール類を含有しないことが好ましい。本発明の油圧作動液は、油(鉱油及び/又は合成油等)並びにグリコール類を使用せずとも、従来の油圧作動油に代わり得る機能を発揮することが可能である。
【0023】
本発明の油圧作動液は、その製造方法には特に制限はない。例えば、水に、上記水性増粘剤及び必要に応じて上記任意成分を添加し攪拌して、これらの成分を水中に溶解ないし分散させることにより、本発明の油圧作動液を得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に示す。但し、本発明は以下の実施例により何等制限されるものではない。
【0025】
〔実施例1〕
下記表1に記載の配合に従って、水にトロミ剤、酸化防止剤、殺菌剤、防腐剤、消泡剤及び着色剤を添加し、ミキサーで混合して、本発明の油圧作動液を得た。
【0026】
【表1】

【0027】
得られた実施例1−1〜1−4の油圧作動液について、油圧作動液としての機能の評価を行なった。また、比較のため、市販の油圧作動油(新日本石油社製、商品名「新日石68」、粘度グレード68)についても、同様にして評価を行なった。
評価の結果、実施例1−1〜1−4の油圧作動液は、従来の油圧作動油との混合はできないが、それに代わり得るものとしては十分の性能を持つことが判った。また、無害で、廃棄に伴う環境への負荷がなく、燃える危険性もなく、しかも安価に製造可能である等の利点も確認できた。
【0028】
〔実施例2〕
配合を下記表2に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして、油圧作動液を調製し、得られた油圧作動液について評価を行なった。評価の結果、実施例2−1及び2−2の油圧作動液についても、従来の油圧作動油との混合はできないが、それに代わり得るものとしては十分の性能を持つことが判った。また、無害で、廃棄に伴う環境への負荷がなく、燃える危険性もなく、しかも安価に製造可能である等の利点も確認できた。
【0029】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水100質量部に対し、水性増粘剤0.01〜10質量部を含有してなることを特徴とする油圧作動液。
【請求項2】
上記水性増粘剤が、澱粉起源の増粘剤である請求項1記載の油圧作動液。
【請求項3】
上記澱粉起源の増粘剤が、馬鈴薯澱粉又は葛澱粉である請求項2記載の油圧作動液。
【請求項4】
40℃における動粘度が15〜100mm2/sである請求項1〜3のいずれかに記載の油圧作動液。
【請求項5】
さらに酸化防止剤0.01〜5質量部を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の油圧作動液。
【請求項6】
さらに酸化防止剤、殺菌剤、防腐剤及び消泡剤を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の油圧作動液。

【公開番号】特開2011−162606(P2011−162606A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24343(P2010−24343)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(510034432)
【Fターム(参考)】