説明

油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置

【課題】両方向の回転時、すなわち、正転時(締付時)及び逆転時(弛め時)に、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置が発生する打撃トルクの大きさの精度を高く、かつ、打撃トルクの発生周期を短くし、さらに、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置の耐久性を向上することができる油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置を提供すること。
【解決手段】打撃トルクの発生時に高圧室H及び低圧室Lとなるライナー7の内部を連通する作動油流路1bを形成し、作動油流路1bに作動油流路1bを開放する方向に付勢された弁体1dを配設するとともに、弁体1dの後背部に主軸8の羽根挿入部8aとライナ蓋7a、7bに形成された流路7c、7dを介して連通する油室15eを形成し、高圧室Hの作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸8の羽根挿入部8aの作動油の圧力の上昇に応じて、作動油流路1bが小さくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクレンチの打撃トルク発生装置として、騒音と振動が小さい油圧式の打撃トルク発生装置を使用した油圧式トルクレンチが、開発され、実用化されるに至っている(例えば、特許文献1〜2参照)。
図7及び図8は、この油圧式トルクレンチの一例を示したもので、油圧式トルクレンチ1は、高圧空気の供給、停止を行うメインバルブ2と正逆回転の打撃トルクを選択的に発生させるための正逆回転切換バルブ3を有し、両バルブ2、3を介して送気される高圧空気により回転トルクを発生するロータ4を駆動するようにし、そして、ロータ4の回転トルクを打撃トルクに変換する油圧式の打撃トルク発生装置5を油圧式トルクレンチ1のケース6内に設けるようにしている。
油圧式の打撃トルク発生装置5は、ロータ4によって回転されるライナー7に形成した空洞内に作動油を充填、密閉し、ライナー7内に同軸に嵌挿した主軸8に2個(1個又は3個以上の複数個の場合もある。)の羽根挿入溝を設け、羽根挿入溝内に羽根9を嵌挿し、羽根9をばね10にて常時主軸8の外周方向に付勢してライナー7の内周面に当接するように構成する。
また、打撃トルク発生装置5には、発生する打撃トルクの大きさを調節できるように、出力調節機構11が配設されている。
そして、ロータ4によりライナー7を回転駆動することにより、ライナー7の内周面に形成した複数個のシール面と主軸8の外周面に形成したシール面及び羽根9とが合致したとき、主軸8に打撃トルクを発生させ、主軸8の先端に係合したナット等を締め付け又は緩めるものである。
【0003】
ところで、従来の油圧式トルクレンチにおいて、打撃トルクの大きさを調節する出力調節機構11は、操作軸を操作することにより、打撃トルクの発生時に高圧室及び低圧室となるライナー7の内部を連通する作動油流路の大きさを調節する(具体的には、操作軸を開放側に操作して作動油流路を大きくすることにより打撃トルクの大きさが小さくなり、逆に、操作軸を閉鎖側に操作して作動油流路を小さくすることにより打撃トルクの大きさが大きくなる。)ことにより行うように構成されている。
しかしながら、操作軸を操作することにより調節される作動油流路の大きさは、油圧式トルクレンチの動作中は一定(固定)のため、以下(1)〜(4)の問題が生じていた。
(1)実際に発生する打撃トルクの大きさと設定した打撃トルクの大きさとの誤差が大きい。
(2)締付動作の開始時(締付部材の着座時)に異常な高い打撃トルクが発生しやすい。
(3)打撃トルク発生後(パルス発生後)の抵抗が大きく、打撃トルクの発生周期が長い。
(4)シール部への負荷圧力がかかりやすく耐久性が乏しい。
【0004】
この問題点に対処するため、本件出願人は、先に、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置が発生する打撃トルクの大きさの精度を高く、かつ、打撃トルクの発生周期を短くし、さらに、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置の耐久性を向上することができる油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置を提案した(特許文献3)。
【0005】
図2〜図3に、油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の第1参考例を示す。
本参考例の油圧式トルクレンチ1は、特許文献2に開示された従来の油圧式トルクレンチと同様、磁歪式トルク検出機構12を備え、この磁歪式トルク検出機構12の出力によってロータ4の駆動等を制御するようにしたもので、高圧空気の供給、停止を行うメインバルブ2と正逆回転の打撃トルクを選択的に発生させるための正逆回転切換バルブ3を有し、両バルブ2、3を介して送気される高圧空気により回転トルクを発生するロータ4を駆動するようにし、そして、ロータ4の回転トルクを打撃トルクに変換する油圧式の打撃トルク発生装置5を油圧式トルクレンチ1のケース6内に設けるようにしている。
油圧式の打撃トルク発生装置5は、ロータ4によって回転されるライナー7に形成した空洞内に作動油を充填、密閉し、ライナー7内に同軸に嵌挿した主軸8に2個(1個又は3個以上の複数個の場合もある。)の羽根挿入溝を設け、羽根挿入溝内に羽根9を嵌挿し、羽根9をばね10にて常時主軸8の外周方向に付勢してライナー7の内周面に当接するように構成する。
また、打撃トルク発生装置5には、発生する打撃トルクの大きさを調節できるように、出力調節機構11が配設されている。
そして、ロータ4によりライナー7を回転駆動することにより、ライナー7の内周面に形成した複数個のシール面と主軸8の外周面に形成したシール面及び羽根9とが合致したとき、主軸8に打撃トルクを発生させ、主軸8の先端に係合したナット等を締め付け又は緩めるものである。
【0006】
ところで、本参考例の油圧式トルクレンチにおいて、打撃トルクの大きさを調節する出力調節機構11は、操作軸11aを操作することにより、打撃トルクの発生時に高圧室H及び低圧室Lとなるライナー7の内部を連通する作動油流路11bの大きさを調節する(具体的には、操作軸11aを開放側に操作して作動油流路11bを大きくする(絞らない)ことにより打撃トルクの大きさが小さくなり、逆に、操作軸11aを閉鎖側に操作して作動油流路11bを小さくする(絞る)ことにより打撃トルクの大きさが大きくなる。)ことにより行うように構成されている。
【0007】
さらに、この出力調節機構11は、作動油流路11bに、操作軸11a及びばね11cを介して作動油流路11bを開放する方向に付勢された弁体11dを配設するとともに、この弁体11dの後背部に打撃トルクの発生時に高圧室Hとなるライナー7の内部と連通する油室11eを形成し、締付動作の進行に従って高圧室Hの作動油の圧力が上昇すると、この高圧室Hの作動油の圧力の上昇に応じて、図3(a)から図3(b)に示すように、作動油流路11bが小さくなる(絞られる)ようにしている。
【0008】
これにより、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置が発生する打撃トルクの大きさの精度を高く、かつ、打撃トルクの発生周期を短くし、さらに、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置の耐久性を向上することができる。
【0009】
上記作用効果について、図4に示す出力特性図(図4(a)は従来例(作動油流路の大きさが油圧式トルクレンチの動作中は一定(固定))の場合を、図4(b)は本参考例の場合を、それぞれ示す。)を用いて説明すると、以下のとおりである。
(1)締付状態に応じて高圧室Hとなるライナー7の内部の作動油の圧力を正確にコントロールすることができることから、実際に発生する打撃トルクの大きさと設定した打撃トルクの大きさとの誤差が、従来例:Δt1>本参考例:Δt2となり、打撃トルクの大きさの精度を高くすることができる。
(2)締付動作の開始時(締付部材の着座時)は、作動油流路11bが大きくなる(絞られていない)ことから、従来例のような異常な高い打撃トルクtxが発生しない。
(3)打撃トルク発生後(パルス発生後)に、作動油流路11bが大きくなる(絞られていない)ことから、打撃トルク発生後(パルス発生後)の抵抗が小さく、打撃トルクの発生周期が、従来例:T1>本参考例:T2となり、締付に要する作業時間を短縮することができる。
(4)締付状態に応じて高圧室Hとなるライナー7の内部の作動油の圧力を正確にコントロールすることができることから、従来例のようなシール部への負荷圧力がかかりにくく、打撃トルク発生装置5の耐久性を向上することができる。
【0010】
図5に、油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の第2参考例を示す。
本参考例の油圧式トルクレンチ1は、ロータ4の駆動等の制御を、上記第1参考例の磁歪式トルク検出機構12等のトルク検出機構の出力によって行うようにすることに代えて、特許文献1や図8に開示された従来の油圧式トルクレンチと同様、出力調節機構11にリリーフバルブBを配設し、締付動作が進行して高圧室Hの作動油の圧力(打撃トルク)が設定した大きさに達したときに、リリーフバルブBが開放され、作動油の圧力をシャットオフバルブ機構13に伝達することによって行うようにしたものである。
この方式の油圧式トルクレンチ1の場合、出力調節機構11に弁体11dを組み込むことができないため、ライナー7に、出力調節機構11とは別に、弁体14dを配設するようにする。
【0011】
弁体14dは、ばね14cを介して作動油流路14bを開放する方向に付勢されるとともに、この弁体14dの後背部に打撃トルクの発生時に高圧室Hとなるライナー7の内部と連通する油室14eを形成し、締付動作の進行に従って高圧室Hの作動油の圧力が上昇すると、この高圧室Hの作動油の圧力の上昇に応じて作動油流路14bが小さくなる(絞られる)ようにしている。
【0012】
なお、本参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の作用は、上記第1参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置と同様である。
【0013】
図6に、本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の第3参考例を示す。
本参考例の油圧式トルクレンチ1は、第2参考例と同様に、出力調節機構11(詳細は図5参照)にリリーフバルブを配設し、締付動作が進行して高圧室Hの作動油の圧力(打撃トルク)が設定した大きさに達したときに、リリーフバルブが開放され、作動油の圧力をシャットオフバルブ機構13(図8参照)に伝達することによって行うようにしている。
この方式の油圧式トルクレンチ1の場合、出力調節機構11に弁体を組み込むことができないため、ライナー7に、出力調節機構11とは別に、弁体15dを配設する。
【0014】
弁体15dは、作動油流路15bを挟み対向するように配設された2個の弁体15dからなり、ばね15cを介して作動油流路15bを開放する方向に付勢されている。
各弁体15dの後背部には、打撃トルクの発生時に高圧室Hとなるライナー7の内部と連通する油室15eが形成されており、締付動作の進行に従って高圧室Hの作動油の圧力が上昇すると、各弁体15dが近接する方向に移動し、高圧室Hの作動油の圧力の上昇に応じて作動油流路15bが小さくなる(絞られる)。
【0015】
本参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の作用は、第1〜第2参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置と同様であるが、2個の弁体15dを作動油流路15bを挟み対向するように配設し、高圧室Hの作動油の圧力の上昇に応じて、2個の弁体15bが作動油流路15bが小さくなる(絞られる)ように移動するようにすることにより、作動油流路15の大きさを調整するために移動する際の弁体15dの移動ストロークを小さくすることができ、これにより、応答性能を高め、打撃トルクの大きさの精度をさらに向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実開平3−40076号公報
【特許文献2】特開平6−297349号公報
【特許文献3】特開2009−83090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上記第1〜第3参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置は、上記の優れた作用効果を奏するものであるが、一方向の回転、具体的には、正転時(締付時)のみしか機能せず、他方向の回転、具体的には、逆転時(弛め時)には機能せず、上記作用効果を奏するものではなかった。
【0018】
本発明は、両方向の回転時、すなわち、正転時(締付時)及び逆転時(弛め時)に、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置が発生する打撃トルクの大きさの精度を高く、かつ、打撃トルクの発生周期を短くし、さらに、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置の耐久性を向上することができる油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置は、ロータにより回転されるライナーと、該ライナーの内部に配設した主軸及び羽根とからなる油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置において、打撃トルクの発生時に高圧室及び低圧室となるライナーの内部を連通する作動油流路を形成し、該作動油流路に作動油流路を開放する方向に付勢された弁体を配設するとともに、該弁体の後背部に主軸の羽根挿入部とライナ蓋に形成された流路を介して連通する油室を形成し、前記高圧室の作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸の羽根挿入部の作動油の圧力の上昇に応じて、前記作動油流路が小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0020】
この場合において、打撃トルクの大きさを調節する出力調節機構に前記弁体を組み込むことができる。
【0021】
また、2個の弁体を作動油流路を挟み対向するように配設するとともに、前記各弁体の後背部に主軸の羽根挿入部とライナ上蓋及び下蓋に形成された流路を介して連通する油室を形成し、前記高圧室の作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸の羽根挿入部の作動油の圧力の上昇に応じて、前記2個の弁体が前記作動油流路が小さくなるように移動するようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置によれば、両方向の回転時、すなわち、正転時(締付時)及び逆転時(弛め時)に、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置が発生する打撃トルクの大きさの精度を高く、かつ、打撃トルクの発生周期を短くし、さらに、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置の耐久性を向上することができる。
【0023】
また、打撃トルクの大きさを調節する出力調節機構に前記弁体を組み込むことにより、打撃トルク調節装置の構成を簡略化することができる。
【0024】
また、2個の弁体を作動油流路を挟み対向するように配設するとともに、前記各弁体の後背部に主軸の羽根挿入部とライナ上蓋及び下蓋に形成された流路を介して連通する油室を形成し、前記高圧室の作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸の羽根挿入部の作動油の圧力の上昇に応じて、前記2個の弁体が前記作動油流路が小さくなるように移動するようにすることにより、作動油流路の大きさを調整するために移動する際の弁体の移動ストロークを小さくすることができ、これにより、応答性能を高め、打撃トルクの大きさの精度をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の一実施例を示す要部の説明図で、(a)は正面断面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の第1参考例を示す全体正面断面図である。
【図3】同参考例の、(a)は締付動作の開始時の要部正面断面図、(b)は締付動作の進行時の要部正面断面図、(c)は(a)のA−A断面図、(d)は(a)のB−B断面図ある。
【図4】出力特性図を示し、(a)は従来例(作動油流路の大きさが油圧式トルクレンチの動作中は一定(固定))の場合を、(b)は第1参考例の場合を、それぞれ示す。
【図5】油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の第2参考例を示す要部正面断面図である。
【図6】油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の第3参考例を示し、(a)は締付動作の開始時の要部正面断面図、(b)は締付動作の進行時の要部正面断面図、(c)は(a)のA−A断面図である。
【図7】従来の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置を示す全体正面断面図である。
【図8】従来の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置を示す全体正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0027】
図1に、本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の一実施例を示す(全体図省略)。
【0028】
本実施例の油圧式トルクレンチ1は、ロータ4の駆動等の制御を、上記第1参考例の磁歪式トルク検出機構12等のトルク検出機構の出力によって行うようにすることに代えて、上記第2〜第3参考例、特許文献1及び図8に開示された従来の油圧式トルクレンチと同様、出力調節機構11にリリーフバルブBを配設し、締付動作が進行して高圧室Hの作動油の圧力(打撃トルク)が設定した大きさに達したときに、リリーフバルブBが開放され、作動油の圧力をシャットオフバルブ機構13に伝達することによって行うようにしたものである。
この方式の油圧式トルクレンチ1の場合、出力調節機構11に弁体11dを組み込むことができないため、ライナー7に、出力調節機構11とは別に、弁体15dを配設するようにしている。
この方式の油圧式トルクレンチ1の場合、出力調節機構11に弁体を組み込むことができないため、ライナー7に、出力調節機構11とは別に、弁体15dを配設するようにしている。
【0029】
弁体15dは、作動油流路15bを挟み対向するように配設された2個の弁体15dからなり、ばね15cを介して作動油流路15bを開放する方向に付勢されている。
なお、本実施例においては、2個の弁体15dの動作が安定するように、一方の弁体15d(図1(a)において右側の弁体15d)を中実に、他方の弁体15d(図1(a)において左側の弁体15d)を有底筒状にそれぞれ形成し、前記右側の中実に形成した弁体15dに、左側の有底筒状に形成した弁体15dの筒状部に挿入されるばね受け兼ガイド15fを突設するようにしている。
これにより、両弁体15dの動作の安定性を向上するようにしている。
【0030】
ところで、本実施例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の弁体15dの動作原理は、第1〜第3参考例、特に、第3参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置と同様であるが、各弁体15dの後背部に形成された油室15eへの作動油の供給方式において違いがある。
すなわち、2個の弁体15dを作動油流路11bを挟み対向するように配設するとともに、各弁体15dの後背部に、主軸8の羽根挿入部8aとライナ上蓋7a及び下蓋7bに形成された流路7c、7dを介して連通する油室15eを形成し、高圧室Hの作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸8の羽根挿入部8aの作動油の圧力の上昇に応じて、2個の弁体15dが作動油流路11bが小さくなる(絞られる)ように移動するようにしている。
【0031】
本実施例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置の作用は、第1〜第3参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置と同様である(特に、2個の弁体15dを作動油流路15bを挟み対向するように配設し、高圧室Hの作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸8の羽根挿入部8aの作動油の圧力の上昇に応じて、2個の弁体15bが作動油流路15bが小さくなる(絞られる)ように移動するようにすることにより、作動油流路15の大きさを調整するために移動する際の弁体15dの移動ストロークを小さくすることができ、これにより、応答性能を高め、打撃トルクの大きさの精度をさらに向上することができる。)が、さらに、主軸8の羽根挿入部8aは、高圧室H及び低圧室Lとなるライナー7の内部のうちの常に高圧室H側と連通するため、両方向の回転時、すなわち、正転時(締付時)及び逆転時(弛め時)に、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置が発生する打撃トルクの大きさの精度を高く、かつ、打撃トルクの発生周期を短くし、さらに、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置の耐久性を向上することができる。
【0032】
以上、本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、第1参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置に対応するように、図3において、主軸8の羽根挿入部と油室11eを連通する流路をライナ上蓋7aに形成したり、第2参考例の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置に対応するように、図5において、主軸8の羽根挿入部と油室14eを連通する流路をライナ下蓋7bに形成したり、出力調節機構11、弁体11d、14d、15dの配設箇所を、ライナー7の筒部に代えて、蓋部にする等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置は、両方向の回転時、すなわち、正転時(締付時)及び逆転時(弛め時)に、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置が発生する打撃トルクの大きさの精度を高く、かつ、打撃トルクの発生周期を短くし、さらに、油圧式トルクレンチの打撃トルク発生装置の耐久性を向上することができることから、油圧式の打撃トルク発生装置を使用した油圧式トルクレンチの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 油圧式トルクレンチ
2 メインバルブ
3 正逆回転切換バルブ
4 ロータ
5 打撃トルク発生装置
6 ケース
7 ライナー
7a ライナ上蓋
7b ライナ下蓋
7c 流路
7d 流路
8 主軸
8a 羽根挿入部
9 羽根
10 ばね
11 出力調節機構
11a 操作軸
11b 作動油流路
11c ばね
11d 弁体
11e 油室
12 磁歪式トルク検出機構
13 シャットオフバルブ機構
14b 作動油流路
14c ばね
14d 弁体
14e 油室
15b 作動油流路
15c ばね
15d 弁体
15e 油室
15f ばね受け兼ガイド
B リリーフバルブ
H 高圧室
L 低圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータにより回転されるライナーと、該ライナーの内部に配設した主軸及び羽根とからなる油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置において、打撃トルクの発生時に高圧室及び低圧室となるライナーの内部を連通する作動油流路を形成し、該作動油流路に作動油流路を開放する方向に付勢された弁体を配設するとともに、該弁体の後背部に主軸の羽根挿入部とライナ蓋に形成された流路を介して連通する油室を形成し、前記高圧室の作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸の羽根挿入部の作動油の圧力の上昇に応じて、前記作動油流路が小さくなるようにしたことを特徴とする油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置。
【請求項2】
打撃トルクの大きさを調節する出力調節機構に前記弁体を組み込んでなることを特徴とする請求項1記載の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置。
【請求項3】
2個の弁体を作動油流路を挟み対向するように配設するとともに、前記各弁体の後背部に主軸の羽根挿入部とライナ上蓋及び下蓋に形成された流路を介して連通する油室を形成し、前記高圧室の作動油の圧力の上昇に伴って上昇する主軸の羽根挿入部の作動油の圧力の上昇に応じて、前記2個の弁体が前記作動油流路が小さくなるように移動するようにしたことをたことを特徴とする請求項1又は2記載の油圧式トルクレンチの打撃トルク調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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