説明

油圧緩衝器のガス封入構造

【課題】 ガス封入部のガス封入口を外部に露出させない油圧緩衝器において、ガス封入部をシリンダ又はピストンロッドに簡易に設けることができ、しかも実使用段階でそのガス封入口を繰り返し利用してガス圧を調整可能にすること。
【解決手段】 油圧緩衝器10のガス封入構造であって、ガス封入部50を設けたシリンダ11に、ゴム栓53が設けられるガス封入口51の外部に臨む開口部51Aを開く位置と閉じる位置に切換え設定できるカバー部材55(取付カラー15)を設けたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧緩衝器のガス封入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の油圧緩衝器では、シリンダの内部スペースに空気等の高圧ガスを封入することにより気体ばねを形成し、車両の乗心地の向上を図っている。
【0003】
従来、油圧緩衝器のガス封入構造として、シリンダの外周にガス封入部を設け、ガス封入部のガス封入口から高圧空気を封入するものがある。ところが、従来技術では、ガス封入部のガス封入口が外部に露出していて、ガス封入口が他部材との衝突やいたずらによって損傷し、シリンダ内のガス、油が漏れ出るおそれがある。
【0004】
そこで従来、ガス封入口が外部に露出しないガス封入構造として、特許文献1、2に記載のものが提案されている。
【0005】
特許文献1に記載の油圧緩衝器は、ガス封入治具を用いるものである。シリンダの開口端外周に補助シリンダを嵌着するとともに、ピストンロッドの先端部にキャップを嵌着し、キャップに内蔵したガス封入プラグからシリンダ内にガスを供給した後、キャップまわりに設けてあったシールガイドをラムによりシリンダの開口端内周に押し入れ、更に補助シリンダに内蔵したかしめ具によりシリンダの開口端外周をシールガイドまわりにかしめ止めするものである。ガス封入口となるシリンダの開口端内周がシールガイドにより外部に対して閉鎖され、露出しないものになる。
【0006】
特許文献2に記載の油圧緩衝器は、シリンダの頂部に設けたガス封入口にプラグ部材をガス封入可能に挿着し、ガス封入後にシリンダの頂部をかしめるように塑性変形してプラグ部材まわりのガス封入口を完全に閉鎖し、更にシリンダの頂部のプラグ部材を覆う領域に取付ヒンジ片が溶着され、シリンダを完全なガス封入状態に保つものである。ガス封入口がプラグ部材及び取付ヒンジ片により外部に対して閉鎖され、露出しないものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭63-50509
【特許文献2】実開平6-37654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載の油圧緩衝器のガス封入構造にあっては、ガス封入口を外部に露出させないものの、以下の問題点がある。
【0009】
特許文献1に記載の油圧緩衝器のガス封入構造は、ピストンロッドの先端部にガス封入治具のキャップを嵌着するものであり、ピストンロッドの先端部に車体側もしくは車軸側取付部材が設けられている場合には適用できない。
【0010】
また、ガス封入治具は補助シリンダ、キャップ、ラム、かしめ具等の多数の部品からなるものであり、構成複雑になる。そして、それらの各部品は油圧緩衝器のシリンダ径やピストンロッド径に応じたサイズを備える必要があり、油圧緩衝器の品種毎に適正サイズの部品からなる各種ガス封入治具を用意する必要がある。
【0011】
また、ガス封入治具は、ガス封入後に、ガス封入口であったシリンダの開口端内周に押し入れたシールガイドに、シリンダの開口端外周をかしめ止めしており、このガス封入口をその後繰り返し利用できない。従って、油圧緩衝器の実使用段階で、ガス封入口を利用してシリンダ内に封入済のガス圧を調整することができない。
【0012】
次に、特許文献2に記載の油圧緩衝器のガス封入構造は、ガス封入後に、シリンダの頂部において、ガス封入口を閉鎖したプラグ部材を覆う領域に取付ヒンジ片が溶着されるものであり、このガス封入口をその後繰り返し利用できない。従って、油圧緩衝器の実使用段階で、ガス封入口を利用してシリンダ内に封入済のガス圧を調整することができない。
【0013】
本発明の課題は、ガス封入部のガス封入口を外部に露出させない油圧緩衝器において、ガス封入部をシリンダ又はピストンロッドに簡易に設けることができ、しかも実使用段階でそのガス封入口を繰り返し利用してガス圧を調整可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、シリンダにピストンロッドを摺動自在に挿入し、シリンダの内部スペースにガスを封入するガス封入部をシリンダ又はピストンロッドに設け、ガス封入部がシリンダ又はピストンロッドに設けたガス封入口にゴム栓を設け、このゴム栓に刺通される注射針を介してガスを封入可能にする油圧緩衝器のガス封入構造であって、ガス封入部を設けたシリンダ又はピストンロッドに、ガス封入口の外部に臨む開口部を開く位置と閉じる位置に切換え設定できるカバー部材を設けてなるようにしたものである。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記カバー部材が、シリンダの車体側もしくは車軸側取付部材に着脱可能に設けられる取付カラー、又はピストンロッドの車体側もしくは車軸側取付部材に着脱可能に設けられる取付カラーであるようにしたものである。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記カバー部材が、シリンダ又はピストンロッドの外周に着脱可能に設けられるばね荷重調整装置の筒部材であるようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
(請求項1)
(a)シリンダ(又はピストンロッド)に設けたガス封入口に設けられるゴム栓と、シリンダ(又はピストンロッド)に設けられる、ガス封入口の外部に臨む開口部を開閉するカバー部材により、ガス封入部を構成できる。
【0018】
ガス封入部のガス封入口は閉じ位置に設定されるカバー部材により外部に露出されない。
シリンダ(又はピストンロッド)に設けられるゴム栓とカバー部材により、ガス封入部をシリンダ(又はピストンロッド)に簡易に設けることができる。
【0019】
実使用段階で、カバー部材をガス封入口の開き位置に設定し、ガス封入口に設けてあるゴム栓に注射針を刺通することができるから、そのガス封入口を繰り返し利用してガス圧を調整できる。
【0020】
(b)シリンダの内部スペースに封入したガスが、高温高圧下でゴム栓をガス封入口の外方へ押出そうとしても、ゴム栓は閉じ位置に設定されているカバー部材により完全に抜け止めされる。ゴム栓がガス封入口から小片等になって排出されることもなく、ガス封入口を完全かつ安定的に気密に封止し続けることができる。
【0021】
(請求項2)
(c)シリンダの車体側もしくは車軸側取付部材に着脱可能に設けられる取付カラー、又はピストンロッドの車体側もしくは車軸側取付部材に着脱可能に設けられる取付カラーを、上述(a)、(b)のカバー部材に兼用できる。即ち、取付カラーを車体側もしくは車軸側取付部材の取付孔に取付けることにより、ガス封入口の外部に臨む開口部を閉じることができる。取付カラーをその取付孔から取外すことにより、ガス封入口の外部に臨む開口部を開き、ガス封入口に設けてあるゴム栓に注射針を刺通することができる。
【0022】
(請求項3)
(d)シリンダ(又はピストンロッド)の外周に着脱可能に設けられるばね荷重調整装置の筒部材を、上述(a)、(b)のカバー部材に兼用できる。即ち、ばね荷重調整装置の筒部材を取付けることにより、ガス封入口の外部に臨む開口部を閉じることができる。ばね荷重調整装置の筒部材を取外すことにより、ガス封入口の外部に臨む開口部を開き、ガス封入口に設けてあるゴム栓に注射針を刺通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は油圧緩衝器の実施例1のガス封入構造を示す断面図である。
【図2】図2は図1の下部断面図である。
【図3】図3は図1の上部断面図である。
【図4】図4は図1の上部正面図である。
【図5】図5はガス封入部を用いたガス封入状態を示す断面図である。
【図6】図6は実施例2の油圧緩衝器のガス封入構造を示す上部断面図である。
【図7】図7はガス封入部を用いたガス封入状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す油圧緩衝器10は、シリンダ11にピストンロッド12を摺動自在に挿入し、シリンダ11とピストンロッド12の外側部に懸架スプリング13を介装している。
【0025】
シリンダ11は車体側取付部材14を備える。車体側取付部材14はシリンダ11の一端閉塞部を形成していて実質的にシリンダ11の一部を構成している。車体側取付部材14は取付カラー15(ゴムカラー15Aと金属ブッシュ15Bからなる)が着脱可能に設けられる取付孔16を有し、取付カラー15に挿着される不図示の取付ピンを介して車体側に枢支される。
【0026】
ピストンロッド12は車軸側取付部材17を備える。車軸側取付部材17はピストンロッド12のシリンダ11から突き出ている端部に取着され、取付カラー15と同様の取付カラー18が設けられる取付孔19を有し、取付カラー18に挿着される不図示の取付ピンを介して車軸側に枢支される。
【0027】
油圧緩衝器10は、図3、図4に示す如く、シリンダ11の外周にばね荷重調整装置20を有する。ばね荷重調整装置20は、シリンダ11の一部を構成している車体側取付部材14の縮径筒状部14Aを固定部材21とし、この固定部材21の外周に筒部材22を回り止め、かつ軸方向にはスライド可能な状態で被着し、筒部材22の外周の周方向の2カ所にストッパ23を設けている。筒部材22は車体側取付部材14の縮径筒状部14A(固定部材21)の外周に着脱可能に設けられる。そして、筒部材22を外周に回転可能に嵌着されるばね支持体24の上面の周方向2領域に各ストッパ23に選択的に係合する複数の係合部24Aを備える。複数の係合部24Aはそれらの高さを順に異ならせたカム状をなす。ばね支持体24は下面の平坦面上にワッシャ25、ばね受26を備える。
【0028】
油圧緩衝器10は、ピストンロッド12に設けた車軸側取付部材17にばね受27を設けてある。これにより、ばね荷重調整装置20のばね受26とばね受27の間に懸架スプリング13が介装される。ばね支持体24を筒部材22に対して回転し、筒部材22のストッパ23に係合するばね支持体24の係合部24Aを替え、選択された係合部24Aの高さに応じた懸架スプリング13のばね荷重を得る。懸架スプリング13のばね力により、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0029】
油圧緩衝器10は、図2に示す如く、ピストンロッド12が貫通するロッドガイド31をシリンダ11の他端開口部に備える。ロッドガイド31はオイルシール32等を備える内径部にピストンロッド12を液密に摺動自在にしている。尚、ピストンロッド12は、ロッドガイド31の外側に圧側バンパ33を備え、最圧縮時に、ピストンロッド12が備えるバンパストッパ34にこの圧側バンパ33を衝合して最圧縮ストロークを規制する。また、シリンダ11は、ロッドガイド31の内側に伸側バンプラバー35を備えている。
【0030】
油圧緩衝器10は、ピストンバルブ装置40を有している。油圧緩衝器10は、ピストンバルブ装置40が発生する減衰力により、懸架スプリング13による衝撃力の吸収に伴うシリンダ11とピストンロッド12の伸縮振動を抑制する。
【0031】
ピストンバルブ装置40は、シリンダ11に挿入されたピストンロッド12の端部にピストン41を固定してある。ピストン41は、シリンダ11の内部をピストン側油室42Aとピストンロッド側油室42Bに区画している。ピストン41は、ピストン側油室42Aとピストンロッド側油室42Bを連絡する圧側流路43と伸側流路44(不図示)を有し、圧側流路43に圧側バルブ43Aを備え、伸側流路44に伸側バルブ44Aを備える。
【0032】
尚、ピストンバルブ装置40は、シリンダ11の内部におけるピストン側油室42Aの上部に空気室45(ガス室)を備える。空気室45は、加圧空気(窒素ガス等の他のガスでも可)を封入されて空気ばね(気体ばね)を形成するとともに、シリンダ11に進入、退出するピストンロッド12の容積を補償する。ピストン側油室42Aと空気室45の間には、フリーピストン、ブラダ等の隔壁部材が介装されても良い。
【0033】
従って、油圧緩衝器10は以下の如くに減衰作用を行なう。
(圧縮時)
ピストン側油室42Aの油が圧側流路43を通ってロッド側油室42Bに流れ、この油が圧側バルブ43Aを撓み変形させて圧側の減衰力を得る。同時に、シリンダ11に進入したピストンロッド12の進入容積分の油が空気室45を圧縮する。
【0034】
(伸長時)
ロッド側油室42Bの油が伸側流路44を通り、伸側バルブ44Aを撓み変形させてピストン側油室42Aへ流れ、伸側の減衰力を得る。このとき、シリンダ11から退出するピストンロッド12の退出容積分の油が空気室45を拡張する。
これらの圧側と伸側の減衰力により、油圧緩衝器10の伸縮振動が抑制される。
【0035】
しかるに、油圧緩衝器10にあっては、シリンダ11の内部の空気室45に加圧空気を封入するガス封入部50をシリンダ11、本実施例ではシリンダ11の一部である車体側取付部材14に設けてある。
【0036】
ガス封入部50は、車体側取付部材14におけるシリンダ11の中心軸上であって、車体側取付部材14における取付カラー15が着脱される取付孔16の直径上に、孔状のガス封入口51が穿設される。ガス封入口51は車体側取付部材14の外部から取付孔16を介してシリンダ11内の空気室45に向けて延在し、空気室45に臨む部分を大径孔状のゴム栓格納部52とし、このゴム栓格納部52にゴム栓53を装填している。図5に示す如く、車体側取付部材14の取付孔16に取付カラー15を設けない状態で、車体側取付部材14の外部からガス封入口51に挿入され、ひいてはゴム栓53に刺通されて空気室45に達する注射針54を介して加圧空気が封入される。注射針54には高圧空気源が接続される。
【0037】
ガス封入部50にあっては、ガス封入口51の外部に臨む開口部51A(本実施例ではガス封入口51の取付孔16に臨む開口部51A)にカバー部材55を設けている。カバー部材55はガス封入口51の上記開口部51Aを開く位置と閉じる位置に切換え設定できる。
【0038】
本実施例では、カバー部材55として、シリンダ11の車体側取付部材14に着脱可能に設けられる取付カラー15が兼用される。
【0039】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)シリンダ11に設けたガス封入口51に設けられるゴム栓53と、シリンダ11に設けられる、ガス封入口51の外部に臨む開口部51Aを開閉するカバー部材55により、ガス封入部50を構成できる。
【0040】
ガス封入部50のガス封入口51は閉じ位置に設定されるカバー部材55により外部に露出されない。
【0041】
シリンダ11に設けられるゴム栓53とカバー部材55により、ガス封入部50をシリンダ11に簡易に設けることができる。
【0042】
実使用段階で、カバー部材55をガス封入口51の開き位置に設定し、ガス封入口51に設けてあるゴム栓53に注射針54を刺通することができるから、そのガス封入口51を繰り返し利用してガス圧を調整できる。
【0043】
(b)シリンダ11の内部スペースに封入したガスが、高温高圧下でゴム栓53をガス封入口51の外方へ押出そうとしても、ゴム栓53は閉じ位置に設定されているカバー部材55により、完全に抜け止めされる。ゴム栓53がガス封入口51から小片等になって排出されることもなく、ガス封入口51を完全かつ安定的に気密に封止し続けることができる。
【0044】
(c)シリンダ11の車体側取付部材14に着脱可能に設けられる取付カラー15を、上述(a)、(b)のカバー部材55に兼用できる。即ち、取付カラー15を車体側取付部材14の取付孔16に取付けることにより、ガス封入口51の外部に臨む開口部51Aを閉じることができる。取付カラーをその取付孔16から取外すことにより、ガス封入口51の外部に臨む開口部51Aを開き、ガス封入口51に設けてあるゴム栓53に注射針54を刺通することができる。
【0045】
図6に示す油圧緩衝器10が、図1〜図4に示した油圧緩衝器10と異なる点は、ガス封入部50をガス封入部60に変更したことにある。
【0046】
即ち、図6の油圧緩衝器10に設けられるガス封入部60は、車体側取付部材14におけるシリンダ11の中心軸に直交する横軸上であって、ばね荷重調整装置20の筒部材22が着脱される外周を通る横軸上に、孔状のガス封入口61を穿設している。ガス封入口61は車体側取付部材14の外部からシリンダ11内の空気室45に向けて延在し、空気室45に臨む部分を大径孔状のゴム栓格納部62とし、このゴム栓格納部62にゴム栓63を装填している。図7に示す如く、車体側取付部材14の外周に筒部材22を設けない状態で、車体側取付部材14の外部からガス封入口61に挿入され、ひいてはゴム栓63に刺通されて空気室45に達する注射針64を介して加圧空気が封入される。
【0047】
ガス封入部60にあっては、ガス封入口61の外部に臨む開口部61Aにカバー部材65を設けている。カバー部材65はガス封入口61の上記開口部61Aを開く位置と閉じる位置に切換え設定できる。
【0048】
本実施例では、カバー部材65として、シリンダ11の外周に着脱可能に設けられるばね荷重調整装置20の筒部材22が兼用される。
【0049】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)シリンダ11に設けたガス封入口61に設けられるゴム栓63と、シリンダ11に設けられる、ガス封入口61の外部に臨む開口部61Aを開閉するカバー部材65により、ガス封入部60を構成できる。
【0050】
ガス封入部60のガス封入口61は閉じ位置に設定されるカバー部材65により外部に露出されない。
【0051】
シリンダ11に設けられるゴム栓63とカバー部材65により、ガス封入部60をシリンダ11に簡易に設けることができる。
【0052】
実使用段階で、カバー部材65をガス封入口61の開き位置に設定し、ガス封入口61に設けてあるゴム栓63に注射針64を刺通することができるから、そのガス封入口61を繰り返し利用してガス圧を調整できる。
【0053】
(b)シリンダ11の内部スペースに封入したガスが、高温高圧下でゴム栓63をガス封入口61の外方へ押出そうとしても、ゴム栓63は閉じ位置に設定されているカバー部材65により、完全に抜け止めされる。ゴム栓63がガス封入口61から小片等になって排出されることもなく、ガス封入口61を完全かつ安定的に気密に封止し続けることができる。
【0054】
(c)シリンダ11の外周に着脱可能に設けられるばね荷重調整装置20の筒部材22を、上述(a)、(b)のカバー部材65に兼用できる。即ち、ばね荷重調整装置20の筒部材22を取付けることにより、ガス封入口61の外部に臨む開口部61Aを閉じることができる。ばね荷重調整装置20の筒部材22を取外すことにより、ガス封入口61の外部に臨む開口部61Aを開き、ガス封入口61に設けてあるゴム栓63に注射針64を刺通することができる。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、シリンダにピストンロッドを摺動自在に挿入し、シリンダの内部スペースにガスを封入するガス封入部をシリンダ又はピストンロッドに設け、ガス封入部がシリンダ又はピストンロッドに設けたガス封入口にゴム栓を設け、このゴム栓に刺通される注射針を介してガスを封入可能にする油圧緩衝器のガス封入構造であって、ガス封入部を設けたシリンダ又はピストンロッドに、ガス封入口の外部に臨む開口部を開く位置と閉じる位置に切換え設定できるカバー部材を設けた。これにより、ガス封入部のガス封入口を外部に露出させない油圧緩衝器において、ガス封入部をシリンダ又はピストンロッドに簡易に設けることができ、しかも実使用段階でそのガス封入口を繰り返し利用してガス圧を調整可能にすることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 油圧緩衝器
11 シリンダ
12 ピストンロッド
14 車体側取付部材
15、18 取付カラー
16、19 取付孔
17 車軸側取付部材
20 ばね荷重調整装置
22 筒部材
50 ガス封入部
51 ガス封入口
51A 開口部
52 ゴム栓格納部
53 ゴム栓
54 注射針
55 カバー部材
60 ガス封入部
61 ガス封入口
61A 開口部
62 ゴム栓格納部
63 ゴム栓
64 注射針
65 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダにピストンロッドを摺動自在に挿入し、
シリンダの内部スペースにガスを封入するガス封入部をシリンダ又はピストンロッドに設け、
ガス封入部がシリンダ又はピストンロッドに設けたガス封入口にゴム栓を設け、このゴム栓に刺通される注射針を介してガスを封入可能にする油圧緩衝器のガス封入構造であって、
ガス封入部を設けたシリンダ又はピストンロッドに、ガス封入口の外部に臨む開口部を開く位置と閉じる位置に切換え設定できるカバー部材を設けてなる油圧緩衝器のガス封入構造。
【請求項2】
前記カバー部材が、シリンダの車体側もしくは車軸側取付部材に着脱可能に設けられる取付カラー、又はピストンロッドの車体側もしくは車軸側取付部材に着脱可能に設けられる取付カラーである請求項1に記載の油圧緩衝器のガス封入構造。
【請求項3】
前記カバー部材が、シリンダ又はピストンロッドの外周に着脱可能に設けられるばね荷重調整装置の筒部材である請求項1に記載の油圧緩衝器のガス封入構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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