説明

油圧駆動減速装置

【課題】3K型不思議遊星歯車減速機構において、遊星歯車の回転軸がラジアル方向及びスラスト方向への傾きを抑制することで動力損失の低減を実現した油圧駆動減速装置を提供する。
【解決手段】油圧駆動減速装置10は油圧モータ部11、減速機部12で構成される減速機部12はケーシング13の外周面14A及び14Bに固着されたベアリング15A及び15Bにより回転自在に取り付けられている。遊星歯車19は太陽歯車17を中心として複数個配置されて、太陽歯車17と内歯歯車21との双方に噛み合い、かつ太陽歯車17と内歯歯車24との双方に噛み合うように配置されている。太陽歯車17及び遊星歯車19の両端面に設けられたスラストプレート25A及び25Bは、中心及び円周上に複数個等配に配置された穴が遊星歯車の個数と同一数、同一ピッチで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型で大きな減速比となる3K型不思議遊星歯車機構を利用した油圧駆動減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として特許文献1がある。特許文献1は、太陽歯車と遊星歯車の各歯車回転軸にローラを使用し、太陽歯車と遊星歯車との中心距離が近寄らないようにすることで、3K型不思議遊星歯車機構における動力損失の低減を図った減速装置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−255517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3K型不思議遊星歯車機構は、従来の一般的遊星歯車機構に比べ、高減速比が得られるのでより高出力トルクとすることができるが、動力損失が大きい問題がある。特許文献1では、太陽歯車と遊星歯車の各歯車回転軸にローラを使用し、太陽歯車と遊星歯車との中心距離が近寄らないようにすることで、3K型不思議遊星歯車機構における動力損失の低減を図った減速装置としている。つまり、遊星歯車回転軸のラジアル方向への動きを規制することで、遊星歯車回転軸がラジアル方向に傾くことで発生する動力損失が低減される構造となっている。しかし、遊星歯車回転軸のスラスト方向への動きは規制されていないため、遊星歯車回転軸がスラスト方向に傾くことで発生する動力損失は低減することができない。
【0005】
本発明は、係る課題を解決するためになされたもので、遊星歯車回転軸がラジアル方向及びスラスト方向への動きを規制することで、遊星歯車回転軸がラジアル方向及びスラスト方向に傾くことで発生する動力損失の低減を可能にした、3K型不思議遊星歯車機構を利用した油圧駆動減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために請求項1記載の発明は、
油圧モータ部と、
前記油圧モータ部のケーシングにベアリングを介して回転自在に支持され油圧モータ部のシャフトに結合した3K型不思議遊星歯車減速機構の減速機部と、
を備えた油圧駆動減速装置において、
前記減速機部は前記油圧モータ部の出力軸により駆動される太陽歯車と、
前記太陽歯車を中心として複数個配置され該太陽歯車及び前記ケーシングに一体になった内歯歯車部の双方に噛み合うように配置され、かつ前記太陽歯車と前記減速機部の本体に一体になっている内歯歯車との双方に噛み合う遊星歯車と、
前記太陽歯車及び前記遊星歯車の両端面に設けられ、該太陽歯車及び該遊星歯車が回転軸方向へ変位した際、これらの太陽歯車及び遊星歯車の端面と摺動するように配置されたスラストプレートと、
を設け、
前記スラストプレートは、該スラストプレートの中心及び円周上に複数個等配に配置された穴を備え、複数個等配に配置された前記穴は遊星歯車の個数と同一数で同一ピッチとなっており、前記中心の穴に前記太陽歯車の中心軸を挿入し、複数個等配に配置された前記穴に前記遊星歯車端面に設けられている円筒凸部を挿入し、該遊星歯車のラジアル方向への動きを規制することにより、前記遊星歯車の回転軸がラジアル方向へ傾くことを抑制することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記スラストプレートは、前記遊星歯車回転軸方向に殆ど隙間無く配置し、該遊星歯車のスラスト方向への動きを規制することで、遊星歯車の回転軸がスラスト方向へ傾くことを抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は遊星歯車回転軸のラジアル方向だけでなく、スラスト方向への動きも規制することで、遊星歯車回転軸がラジアル方向及びスラスト方向に傾くことで発生する動力損失の低減を可能にした、3K型不思議遊星歯車機構を利用した油圧駆動減速装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る油圧駆動減速装置の概略構造を示す略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図1に基づき説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る3K型不思議遊星歯車機構を利用した油圧駆動減速装置10(以下、油圧駆動減速装置10と云う)の概略構造を示す略縦断面図である。
油圧駆動減速装置10は、固定されている斜板式アキシャルピストン型油圧モータ部11(以下、油圧モータ部11という)と、該油圧モータ部11と回転自在に結合した3K型不思議遊星歯車減速機構の減速機部12と、で構成されている。減速機部12は、油圧モータ部11のケーシング13の外周面14A及び14Bに固着されたベアリング15A及び15Bにより回転自在に支持され、軸方向に移動しないように取り付けられている。
【0011】
油圧モータ部11のシャフト16は、太陽歯車17とスプライン部18によって回転方向に結合されている。遊星歯車19は太陽歯車17を中心として円周上に複数個等配に配置されており(図1では2個のみ表示)、太陽歯車17とケーシング13に複数個配置されているピン20(図1では2個のみ表示)により結合されている内歯歯車(第1の内歯歯車)21との双方に噛み合うように配置され、かつ太陽歯車17と本体22に複数個配置されているピン23(図1では2個のみ表示)により締結されている内歯歯車(第2の内歯歯車)24との双方に噛み合うように配置されている。
【0012】
スラストプレート25A及び25Bは、中心に穴部26A及び26Bを有し、その穴部26A及び26Bを中心として円周上に複数個等配に配置された穴部28A及び28Bを有している。
スラストプレート25A及び25Bに円周上に複数個等配に配置された穴部28A及び28Bは、遊星歯車19の個数と同一数で、同一ピッチとなっている。
【0013】
スラストプレート25Aは、スプライン部18の外径より若干大きな穴部26Aにシャフト16のスプライン部18が挿入されており、かつ遊星歯車19の端面にある円筒凸部27Aの外径より若干大きな穴部28Aに円筒凸部27Aが挿入されている。
同様にスラストプレート25Bは、スプライン部18の外径より若干大きな穴部26Bにシャフト16のスプライン部18が挿入されており、かつ遊星歯車19の端面にある円筒凸部27Bの外径より若干大きな穴部28Bに円筒凸部27Bが挿入されている。
また、遊星歯車19、スラストプレート25A及び25Bは、カバー29とケーシング13の間に殆ど隙間無く配置されている。
【0014】
内歯歯車21と内歯歯車24との歯数は異なっているが、太陽歯車17、遊星歯車19、前記内歯歯車21及び前記内歯歯車24は転移歯車となっているので、遊星歯車19の中心軸に対する、内歯歯車21の中心軸との距離と、内歯歯車24の中心軸との距離とが一致しており、内歯歯車21と内歯歯車24は遊星歯車19に対してそれぞれ厳密に噛み合って不思議歯車機構を構成する。
また、減速機部12は遊星歯車機構の入力軸、出力軸及び固定軸の3軸の基本要素がそれぞれ太陽歯車17、内歯歯車21及び内歯歯車24の3つの歯車により、3K型不思議遊星歯車機構となっている(遊星歯車機構の基本要素でKは歯車の意味である)。
かかる構成により、遊星歯車19の回転軸19aのラジアル方向及びスラスト方向への動きを規制し、遊星歯車19の回転軸19aがラジアル方向及びスラスト方向への傾きを抑制することで、動力損失の低減を可能とした油圧駆動減速装置となる。
【0015】
本発明の油圧駆動減速装置10は基本的には以上のように構成されており、次に動作を図1に基づき説明する。油圧モータ部11のシャフト16が時計回り(図1の矢印A方向、以下同じ)に回転すると、シャフト16と結合されている太陽歯車17は時計回りに回転する。太陽歯車17とケーシング13に結合されている内歯歯車21との双方に噛み合っている遊星歯車19は、太陽歯車17の中心軸(図示しない)に対して反時計回り(図1の矢印B方向、以下同じ)に回転しながら太陽歯車17を中心に時計回りに公転する(遊星運動)。
【0016】
遊星歯車19と噛み合っている内歯歯車24は、内歯歯車21と歯数が異なっているので、遊星歯車19が太陽歯車17を中心に公転すると、内歯歯車21に対し内歯歯車24の歯数の方が多い場合は時計回りに回転し、逆に内歯歯車部21に対し内歯歯車24の歯数の方が少ない場合は反時計回りに回転する。本体22は、内歯歯車24と結合しているので、内歯歯車24が時計回りに回転した場合は時計回りに回転し、逆に内歯歯車24が反時計回りに回転した場合は反時計回りに回転する。
【0017】
遊星歯車19は、スラストプレート25A及び25Bがスプライン部18の外径より若干大きな穴部26A及び26Bにシャフト16のスプライン部18が挿入されており、かつ遊星歯車19の端面にある円筒凸部27A及び27Bの外径より若干大きな穴部28A及び28Bに円筒凸部27A及び27Bが挿入されているため、遊星歯車19のラジアル方向への動きが規制されており、該遊星歯車19のラジアル方向への傾きが抑制されている。
また、遊星歯車19は、スラストプレート25A及び25Bを介してカバー29とケーシング13の間に殆ど隙間無く配置されているため、遊星歯車19のスラスト方向への動きを規制されており、該遊星歯車19のスラスト方向への傾きが抑制されている。
【符号の説明】
【0018】
10 油圧駆動減速装置 11 油圧モータ部
12 減速機部 13 ケーシング
14A、14B 外周面 15A、15B ベアリング
16 シャフト 17 太陽歯車
18 スプライン部 19 遊星歯車
20 ピン 21 内歯歯車(第1の内歯歯車)
22 本体 23 ピン
24 内歯歯車(第2の内歯歯車) 25A、25B スラストプレート
26A、26B 穴部 27A、27B 円筒凸部
28A、28B 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧モータ部と、
前記油圧モータ部のケーシングにベアリングを介して回転自在に支持され油圧モータ部のシャフトに結合した3K型不思議遊星歯車減速機構の減速機部と、
を備えた油圧駆動減速装置において、
前記減速機部は前記油圧モータ部の出力軸により駆動される太陽歯車と、
前記太陽歯車を中心として複数個配置され該太陽歯車及び前記ケーシングに一体になった内歯歯車部の双方に噛み合うように配置され、かつ前記太陽歯車と前記減速機部の本体に一体になっている内歯歯車との双方に噛み合う遊星歯車と、
前記太陽歯車及び前記遊星歯車の両端面に設けられ、該太陽歯車及び該遊星歯車が回転軸方向へ変位した際、これらの太陽歯車及び遊星歯車の端面と摺動するように配置されたスラストプレートと、
を設け、
前記スラストプレートは、該スラストプレートの中心及び円周上に複数個等配に配置された穴を備え、複数個等配に配置された前記穴は遊星歯車の個数と同一数で同一ピッチとなっており、前記中心の穴に前記太陽歯車の中心軸を挿入し、複数個等配に配置された前記穴に前記遊星歯車端面に設けられている円筒凸部を挿入し、該遊星歯車のラジアル方向への動きを規制することにより、前記遊星歯車の回転軸がラジアル方向へ傾くことを抑制することを特徴とする油圧駆動減速装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧駆動減速装置において、
請求項2記載の発明では、前記スラストプレートは、前記遊星歯車回転軸方向に殆ど隙間無く配置し、該遊星歯車のスラスト方向への動きを規制することで、遊星歯車の回転軸がスラスト方向へ傾くことを抑制することを特徴とする油圧駆動減速装置。

【図1】
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