説明

油性組成物

【課題】 養殖魚類に必要量の水溶性ビタミンを正確に投与することができ、水溶性ビタミンの分解による減少が少なく、食用としての安全性が高く、生分解性で環境にやさしく、さらに当該油性組成物の製造にあたり作業者の労働安全に配慮した養殖魚類の飼料用油性組成物を提供する。
【解決手段】 本発明においては、特定の油性組成物を使用する。この特定の油性組成物は、(A)食用油脂;(B)水溶性ビタミン;並びに(C)食用微細セルロース又は食用澱粉を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性組成物、詳しくは、食用油脂と、水溶性ビタミンと、食用微細セルロース又は食用澱粉とを含有する養殖魚類の飼料用の新規油性組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ビタミンを単純に飼料に添加混合すると、飼料に含まれる水分、鉄・銅等の金属イオン、アミノ酸、酵素、そして空気中の酸素、包装形態によっては日光によって変質が起きることがある。したがって、水溶性ビタミンを飼料に予め添加混合する方法は好ましくない。そこで、水溶性ビタミンを変質或いは減少させることなく飼料に添加する方法がいくつか提案されている。
【0003】
水溶性ビタミン類を常温で液体又は流動性を示す油性成分と混合した後、飼料に添加することで、水溶性ビタミン類の劣化や分解を防ぐ方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
水溶性ビタミン類をゼラチン、アラビアガムで固体化した後、乳化剤を含む油相中に5μm以下の微粒子状態で分散させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
水溶性ビタミンの油性懸濁液の製造に際して、水溶性ビタミンを0.1から100μmの平均粒子サイズまで物理的に粉砕する方法が提案され、更に粉砕に関して、水溶性ビタミンを油中に分散させてから微粉砕する方法と、予め微粉砕してから油中に懸濁させる方法とが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
水溶性ビタミンを分散保持する混合液状物を得るにあたり、微粉二酸化ケイ素(無水ケイ酸)と微粉酸化アルミニウムの1種又は2種を添加することで液状油脂又は液状パラフィンの粘度を増粘させて、それにより水溶性ビタミンを均一分散し保持する方法が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−56255号公報
【特許文献2】特開平11−56256号公報
【特許文献3】特表2004−500392号公報
【特許文献4】特開2001−238607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の発明は、水溶性ビタミン類の表面を油性物(油性成分)で被覆することで飼料中での劣化や分解を抑えることを目的としているため、飼料に混合する前の油性液体混合物について、その懸濁安定性は特に必要とされない。
【0009】
特許文献2の発明では、水溶性ビタミン類は水溶液の微小ゲルとして油相中に分散しているので、水分と溶存酸素とゼラチン由来のアミノ酸による変質や、変色を防ぐことができない。
【0010】
特許文献3の方法は、油と微粒子の密度差に配慮することなく粒子サイズを小さくする手段だけで粒子の沈降速度を遅くしているため、数日から数十日程度で水溶性ビタミンの微粒子の沈殿が発生する。しかも、この場合には、水溶性ビタミンの親水部位が徐々に油を排除して微粒子同士の凝集が起きるために沈殿物の固化現象が発生して、再度混濁液の状態に戻すのが難しい。
【0011】
特許文献4の発明では、使用される微粉二酸化ケイ素の比重が軽いので、特許文献3の欠点である沈殿物の再懸濁性をある程度改善する効果が期待できる。しかしながら、微粉二酸化ケイ素は空中に浮遊して落下しないため、労働安全上その取り扱いには特別の防護が必要となる。また、効果を得るためには通常食用にしない二酸化ケイ素或いは酸化アルミニウムを、飼料添加物としての量の概念を大きく超えて多量に使用しなければならず、飼料の基本要件である安全性に疑念が生じる。
【0012】
ストークスの式によれば、粒子の沈降速度は溶媒と溶質の密度差に比例し、粒子の半径の2乗に比例し、溶媒の粘度に反比例することが示されている。粒子を微細化する方法(特許文献3)と溶媒の粘度を増加させる方法(特許文献4)は、公知の理論に従ったものであり、これによれば分散安定性という課題が解決されることは当業者であれば容易に到達することができる。しかしながら、特に安全性という課題を解決することができない。
【0013】
また、水溶性ビタミンのうち、ビタミンCには、還元型L−アスコルビン酸と酸化型のL−デヒドロアスコルビン酸が含まれる。酸化型のL−デヒドロアスコルビン酸は水と結合して2,3ジケトL−グロン酸を生成し、その後の脱炭酸反応によってL−キシロソンになって分解する。酸化型のL−デヒドロアスコルビン酸に関しては、酸素が無い場合でも、2−ケトL−グロン酸に変化し、脱水反応により2,3−ジケト4−デオキシヘキソン酸が生成した後、脱炭酸反応で3−デオキシL−ペントソンになり、フルフラールができる分解経路が知られている。このように、何れの経路でも脱炭酸反応が起きる。したがって、ビタミンCの含有量が多い組成物の場合は、発生する炭酸ガスの量を無視できず容器の膨化現象につながる危険性がある。
【0014】
したがって、ビタミンC等の水溶性ビタミンを主成分として多く含む組成物を商品化する場合には、水溶性ビタミンの分解過程で生成する中間化合物の性質と発生する炭酸ガスを考慮して、原材料だけではなく包装形態や流通と顧客段階での取り扱い方法までを総合的に判断して商品仕様を決めければならない。
【0015】
L−キシロソンと3一デオキシL−ペントソンはアミノ酸と容易に反応して褐変物質を形成するので、フィッシュミールなどの成分を含む養殖魚類用飼料は、その製造段階でビタミンCを入れると変色・異臭などの品質低下を起こす可能性がある。
【0016】
更に、液体成分よりも一般的に取り扱いが容易である粉体成分で構成され、液体成分で構成された油性組成物と同様の使い方ができる油性組成物(油性粉体組成物)によれば、顧客の多様な要望、具体的には需要環境の変化による給餌作業の多様化に伴う要望に応えることができ、給餌作業の労力軽減と時間の短縮も解決することができると考えられる。したがって、このような油性粉体組成物の開発も求められる。
【0017】
一方、このような油性組成物は、一般に、所定の飼料ペレット表面に均一に付着させて使用される。飼料業界の既成概念では、粉体成分で構成された組成物は一時的に飼料ペレット表面に均一に付着させることはできても、水、特に海水に触れると水溶性ビタミンがすぐに飼料ペレット表面から離れて散逸し、水中に溶解して失われてしまうので商品形態として不適当なものとされている。したがって、油性粉体組成物、特に食用油脂と、水溶性ビタミンと、食用微細セルロース又は食用澱粉とを含有する油性粉体組成物等についての記載は見当たらない。
【0018】
本発明の一視点において、本発明は、固形飼料内に含浸させるか固形飼料表面に展着ないし被覆させることで養殖魚類に必要量の水溶性ビタミンを正確に投与することができ、水溶性ビタミンの分解による減少が少なく、食用としての安全性が高く、生分解性で環境にやさしく、さらに当該油性組成物の製造にあたり作業者の労働安全に配慮した養殖魚類の飼料用油性組成物(水溶性ビタミン含有油性組成物)、特に水溶性ビタミンの均一懸濁液である油性液体組成物を提供することを目的とする。また、他の一視点において、前記油性液体組成物と同様、水溶性ビタミンを含有し、その保存安定性に優れ、顧客の多様な要望、具体的には需要環境の変化による給餌作業の多様化に伴う要望に対応することができ、更には労力軽減と作業時間の短縮をあわせ達成できる水溶性ビタミンを均一に含有する粉体組成物(油性粉体組成物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一視点においては、特定の成分を含有する油性組成物を用いる。この油性組成物は、食用油脂と、水溶性ビタミンと、食用微細セルロース又は食用澱粉とを含有する。このような組成により、水溶性ビタミンの経時での変質が少なくなり、水溶性ビタミンを食用油脂に均一に分散させた状態が長期間保持され、水溶性ビタミンの良好な分散性及び再分散性が得られる。また、その組成は、無機物ではなく、動物が一般的に食用とする生分解性の天然物であるので、このような組成により、食品(特に養殖魚類用の食品)としての安全性と環境における安全性が実現され、更に製造時に超微粒子を取り扱うことを鑑みれば、労働上の安全性も実現される。本発明において、水溶性ビタミンとしてビタミンCが含まれる場合であっても、ビタミンCは食用油脂で被覆されており、ほとんど水分が含まれないため、2,3ジケトL−グロン酸の生成が抑えられ、直射日光を避けて冷暗所で保管することで2−ケトL−グロン酸の生成が抑えられるので、容器が膨化することはない。なお、前記油性組成物は、水溶性ビタミンの補給のため、養殖魚類の飼料に混ぜて使用される。
【0020】
また、本発明の他の一視点では、養殖魚類の飼料用油性液体組成物を提供すべく、前記食用油脂として、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂を使用し、前記食用微細セルロース又は食用澱粉として、非晶領域を形成する部位からなり、30μm以下(大きくとも30μm)、好ましくは10μm以下の平均粒径を有する食用微細セルロースから選択されるものを使用することができる。本発明では、前記食用微細セルロース又は食用澱粉については、木材由来のセルロースを高度に精製した食用セルロース(食物繊維)のうち特定の部位(非晶領域を形成する部位)を微細化したものであって、30μm以下、好ましくは10μm以下の平均粒径を有するものに限定して使用しているが、このような食用微細セルロースには、水溶性ビタミンと食用油脂の両方に化学的親和性があり、溶媒である食用油脂と溶質である水溶性ビタミンをつなぎ留める機能がある。したがって、本発明によれば、油性液体組成物において、更に、水溶性ビタミンの均一な懸濁状態が維持されうる。
【0021】
更に、本発明のさらに他の一視点では、養殖魚類の飼料用油性粉体組成物を提供すべく、前記食用油脂として、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂又は0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有しない食用油脂を使用し、前記食用微細セルロース又は食用澱粉として、α化されたアミロペクチンを使用することができる。本発明では、前記食用微細セルロース又は食用澱粉については、食用澱粉のうちアミロペクチン100%からなる澱粉であってそれをアルファ化して乾燥したものに限定して使用しているが、この特定の食用澱粉には、吸水して食用油脂で被覆された水溶性ビタミンを瞬時にゲル状に固形化する能力がある。したがって、本発明によれば、前記油性粉体組成物は、前記特定の食用澱粉を含んでいるため、水に触れると食用油脂と水溶性ビタミンを含んだまま瞬時に粘着物(粘着性を有するゲル)を形成するので、水溶性ビタミンが水に触れて瞬時に飼料ペレット表面から離れて散逸し、海水中に溶解して失われることが抑制される。なお、食用澱粉の加水分解物のうちDE10以下、好ましくは5以下のものと、特定の増粘物質(特定の粘結剤及び特定の賦形物質から選択されるもの)との混合物にも前記α化されたアミロペクチンと同様の機能があり、前記油性粉体組成物が前記α化されたアミロペクチンに替えて、前記澱粉加水分解物と前記増粘物質とを含有する場合にも、同様に、水溶性ビタミンが水に触れて瞬時にペレット表面から離れて散逸し、海水中に溶解して失われることが抑制される。
【0022】
即ち、本発明の一形態において、下記成分(A)〜(C):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;並びに
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉
を含有することに特徴を有する養殖魚類の飼料用油性組成物(以下、「本発明の油性組成物」とも称する。)を提供することができる。
【0023】
本発明の一形態において、前記油脂組成物は、養殖魚類の飼料に混ぜて使用することができる。
【0024】
本発明において、別の形態として、下記成分(A)〜(C):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;並びに
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉
を含有し、前記食用油脂が、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂であり、前記食用微細セルロース又は食用澱粉が、非晶領域を形成する部位からなり、30μm以下(大きくとも30μm)、好ましくは10μm以下の平均粒径を有する食用微細セルロースから選択されることに特徴を有する養殖魚類の飼料用油性液体組成物(以下、「本発明の油性液体組成物」とも称する。)を提供することができる。
【0025】
本発明では、前記食用油脂を、大豆油、菜種油から選択することができる。
【0026】
本発明において、更に別の形態として、下記成分(A)〜(C):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;並びに
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉
を含有し、前記食用油脂が、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂又は0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有しない食用油脂であり、前記食用微細セルロース又は食用澱粉が、α化されたアミロペクチンであることに特徴を有する養殖魚類の飼料用油性粉体組成物、或いは
下記成分(A)〜(D):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉;並びに
(D)飼料添加物に指定されている粘結剤及び飼料プレミックス製造の際に指定されている賦形物質から選択される少なくとも1種
を含有し、前記食用油脂が、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂又は0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有しない食用油脂であり、前記食用微細セルロース又は食用澱粉が、DE値10以下、好ましくは5以下の澱粉加水分解物であることを特徴とする養殖魚類の飼料用油性粉体組成物(以下、「本発明の油性粉体組成物」とも称する。)を提供することができる。
【0027】
本発明では、前記粘結剤は、好ましくはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリアクリル酸ナトリウムであり、前記賦形物質は、好ましくはアラビアゴム、カラゲーナン、キサンタンガム、グアーガム、グルテン、タマリンド種子多糖類、トラガントガム、プルラン、ペクチン、及びローカストビーンガムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一視点では、水溶性ビタミンの変質を最小限に抑えることができ、かつ経時的に安定した懸濁状態を保つことができる養殖魚類の飼料用の油性液体組成物を提供することができる。この油性液体組成物は、生分解性の原材料で構成され、食の安全性に優れ、環境にやさしく、製造時の安全性に配慮したものである。
【0029】
また、本発明の他の視点では、前記油性液体組成物と同様、水溶性ビタミンを含有し、その保存安定性に優れた、需要環境の変化に伴う給餌作業の多様化に対応することができ、更には労力軽減と作業時間の短縮をあわせ達成できる養殖魚類の飼料用の油性粉体組成物を提供することができる。
【0030】
更に、前記油性組成物を使用して、特に魚類の養殖を、容易かつ簡便に実施することができる。したがって、本発明は特に水産業分野において、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、食用油脂と、水溶性ビタミンと、食用微細セルロース又は食用澱粉とを含有する養殖魚類の飼料用の油性組成物、すなわち本発明の油性組成物、並びに本発明の油性液体組成物及び本発明の油性粉体組成物を中心に、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、これらに限定されることはない。
【0032】
なお、本発明において、平均粒径(平均二次粒径を含む)については、公知の方法である篩分け法や散乱式粒度分布計により容易に測定することができるが、本発明で規定する場合、粒径は、篩分け法により測定されたものとする。
【0033】
(本発明の油性組成物)
本発明の油性組成物は、(A)食用油脂;(B)水溶性ビタミン;並びに(C)食用微細セルロース又は食用澱粉を含有する。本発明の油性組成物については、一般には、これを給餌直前に、養殖魚類用飼料に添加して合理ないし展着させて用いられる。したがって、本発明によれば、養殖魚類に、必要量の水溶性ビタミン(例えばビタミンC)を正確に投与することもできる。
【0034】
本発明において使用する食用油脂は、一般的に食用に使われる品質のものであればよく、養殖魚類の商品性を考慮して、任意に選択することができる。このような油脂として、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、椰子油等が挙げられる。
【0035】
前記食用油脂の含有量(使用量)は、好ましくは10〜80重量%程度が選択される。
【0036】
本発明において使用する水溶性ビタミンは、飼料添加物として使用される品質規格のものであればよい。例えば、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6、パントテン酸カルシウム等が挙げられる。なお、本発明においてはこれらを単独で、又は任意の組み合わせの混合物で使用してもよい。
【0037】
なお、ビタミンCとは、特に酸化防止剤としての機能を利用する場合、一般には還元型L−アスコルビン酸のことを指す。本発明において、水溶性ビタミンは、栄養素として使用され、栄養素としての生理活性は、酸化型のL−デヒドロアスコルビン酸にもあるので必ずしも還元型から酸化型への変質を重要視する必要はない。したがって、本発明においては、還元型L−アスコルビン酸及び酸化型のL−デヒドロアスコルビン酸の何れも使用することができる。
【0038】
本発明において、前記水溶性ビタミンの種類及び含有量(使用量)は、対象(養殖魚類)の種類に応じて適宜選択される。通常、その含有量は、ビタミンCの場合では、2〜10重量%程度、その他の水溶性ビタミンの場合では、0.1〜3重量%程度の範囲で使用される。
【0039】
本発明において使用する食用微細セルロース又は食用澱粉は、食品規格のもの又は飼料添加物規格のものであればよい。
【0040】
前記食用澱粉の含有量は、好ましくは60〜80重量%程度が選択され、前記食用微細セルロースの含有量は、好ましくは10〜25重量%程度が選択される。
【0041】
なお、本発明の油性組成物には、上記水溶性ビタミンの他に、本発明に於ける効果(分散性やゲル形成等)を損わない範囲で、必要に応じて、ビタミンB2、葉酸等の難水溶性成分、又はビタミンE、或いはアスタキサンチン等の油性の成分を適宜配合することができる。
【0042】
更に、本発明の油性組成物には、上記成分の他に、水溶性ビタミンの成分に影響がなければ、通常の飼料に従来から配合される成分、例えばタウリン等のアミノ酸、飼料添加物として認められている乳化剤等を適宜配合することができる。
【0043】
本発明の油性組成物の調製には特に困難はない。前記成分を単純に混合するだけで本発明の油性組成物を調製することができる。
【0044】
本発明の油性組成物において、飼料ペレットに付着させる量は、飼料ペレットの水分量や、養殖魚類に投与する場合には魚種と魚の年齢等の要因によって、0.1〜0.5重量%程度の範囲で加減される。
【0045】
(本発明の油性液体組成物)
本発明の油性液体組成物は、(A)食用油脂として0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂を含み;(B)水溶性ビタミン;並びに(C)食用微細セルロース又は食用澱粉として非晶領域を形成する部位からなり、30μm以下、好ましくは10μm以下の平均粒径を有する食用微細セルロースから選択されるものを含む。
【0046】
本発明において使用する食用油脂は、使用者(特に養殖魚類生産者)が本発明の油性液体組成物を扱う0℃〜30℃の年間環境温度において容器から自然に流れ出る流動性を有し、食用に使われる品質で一般的な保存性を有するものであればよく、原料の種類と透明性は問わない。このような油脂としては、大豆油、菜種油等の植物油が挙げられ、好ましくは大豆油、菜種油から選択される。
【0047】
前記食用油脂の含有量(使用量)は、好ましくは60〜80重量%程度、より好ましくは65〜75重量%程度が選択される。
【0048】
本発明において使用する水溶性ビタミンについては、前記本発明の油性組成物において記載したとおりである。
【0049】
本発明において使用する食用微細セルロース又は食用澱粉としては、セルロース繊維の分子構造のうち非晶領域を形成する部位を分離精製して微細化したものであって、平均粒径が30μm以下、好ましくは10μm以下のものから選択される。
【0050】
セルロースは植物細胞の細胞壁を形成する多糖類の1種で、グルコースがβ1・4結合で2000〜30000個結合した側鎖のない繊維状の構造をしている。天然セルロースは、一部が規則正しく配列した結晶領域とその間に存在する非晶領域で構成されている。本発明では、前記したように、油性液体組成物において、食用微細セルロースとして、非晶領域を精製して微細化したセルロースを選択(使用)し、しかもその平均粒径(平均二次粒径を含む)を30μm以下、好ましくは10μm以下に限定し、これを含有させることで所期の目的が達成される。
【0051】
作用機序について考察してみるならば、本発明において使用する食用微細セルロース(非晶セルロース)では、セルロース分子の主鎖が持つ適度の疎水性が脂肪酸トリグリセライド(食用油脂)のメチレン鎖部位と親和し、セルロースの主鎖において分散して存在する水酸基が水溶性ビタミンの極性基部位と親和して溶媒と溶質をつなぎ留める役割をし、さらに非晶セルロース特有の複雑にからみ合ったミセル構造が水溶性ビタミンとゆるやかな複合体を形成する。これによって本発明の油性液体組成物において安定な分散状態が得られるだけでなく、形成された複合体には軽い振動或いは攪拌等の簡単な物理操作で容易に初期の均一な分散状態に戻る性質(再分散性)があり、長期保管で商品力が損なわれることがない。
【0052】
本発明においては、食用微細セルロースとして、非晶領域から得られたセルロースであってその平均粒径が30μm以下、好ましくは10μm以下のものを選択すれば目的を達成できる。通常、微細化セルロースは、酵素分解、酸分解、磨枠等の方法を単独で又は組み合わせて得られるが、本発明では微細化方法を特定する必要はなく、前記食用微細セルロースを容易に得ることができる。
【0053】
前記食用微細セルロースについては、上記のように公知の方法により製造したものを使用することができるが、また、市販品を購入することで容易に入手することができる。例えば、日本製紙ケミカル(株)の製品「KCフロックW250G」(平均粒径32μm)、KCフロックW300G(平均粒径28μm)、「NPファイバーW10MG2」(平均粒径10μm)、「NPファイバーW06MG」(平均粒径6μm)、レッテンマイヤージャパン(株)の製品「ピタセルL10」(平均粒径18μm)レッテンマイヤージャパン(株)の製品「UFC」(平均二次粒径4μm)等が上市されている。
【0054】
なお、分子が規則正しく配列した結晶領域を形成する部位からなる結晶セルロースは、水溶性ビタミンとゆるやかな複合体を形成し難いため、本発明の目的を達成することができない。したがって、結晶領域を精製して得られる結晶セルロース(市販品として、例えば旭化成ケミカルズ(株)の製品「セオラス」)では、本発明の目的を達成することができない。したがって、本発明において、食用微細セルロースは、非晶領域を形成する部位からなる食用微細セルロース(非晶セルロース)のみで構成される。
【0055】
前記食用微細セルロースの含有量は、好ましくは10〜25重量%程度が選択される。
【0056】
本発明においては、食用油脂と水溶性ビタミンと食用微細セルロースとの配合比率(重量)に関して、好ましくは70〜80:10〜15:10〜15、より好ましくは70:15:15が選択される。
【0057】
なお、本発明の油性液体組成物には、上記水溶性ビタミンの他に、本発明に於ける効果(分散性やゲル形成等)を損わない範囲で、必要に応じて、ビタミンB2、葉酸等の難水溶性成分、又はビタミンE、或いはアスタキサンチン等の油性の成分を適宜配合することができる。
【0058】
更に、本発明の油性液体組成物には、上記成分の他に、水溶性ビタミンの成分に影響がなければ、通常の飼料に従来から配合される成分、例えばタウリン等のアミノ酸、飼料添加物として認められている乳化剤等を適宜配合することができる。
【0059】
本発明の油性液体組成物の調製には特に困難はない。前記成分を単純に混合するだけで本発明の油性組成物を調製することができる。
【0060】
本発明の油性液体組成物は、一般には、これを給餌直前に、対象(養殖魚類)の飼料に添加して合理ないし展着させて用いられる。したがって、本発明によれば、対象となる動物に、必要量のビタミンCを正確に投与することもできる。
【0061】
本発明の油性液体組成物の投与ないし使用方法については、特に困難はない。例えば、養殖魚類に投与する場合には、通常、投与は混合機に飼料を投入し、次いで、粉末アミノ酸栄養剤等の任意成分を投入してから、予め魚油と本発明の液体油性組成物とを混ぜて得られたものを投入する。それにより、水溶性ビタミンを含む本発明の液体油性組成物と、粉末アミノ酸栄養剤等の任意成分と、魚油とを均一に飼料ペレットの表面に展着させることができる。得られた展着ペレットによれば、これに含まれる水溶性ビタミンと粉末アミノ酸栄養剤等の任意成分が海水に溶解して失われることがない。
【0062】
本発明の油性液体組成物において、飼料ペレットに付着させる量は、飼料ペレットの水分量や、養殖魚類に投与する場合には魚種と魚の年齢等の要因によって、0.1〜0.5重量%程度の範囲で加減される。
【0063】
(本発明の油性粉体組成物)
本発明の油性液体組成物は、(A)食用油脂として0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂又は0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有しない食用油脂を含み;(B)水溶性ビタミン;並びに(C)食用微細セルロース又は食用澱粉としてα化されたアミロペクチンを含むか、或いは(A)食用油脂として0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂又は0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有しない食用油脂を含み;(B)水溶性ビタミン;(C)食用微細セルロース又は食用澱粉としてDE値10以下、好ましくは5以下の澱粉加水分解物;並びに(D)飼料添加物に指定されている粘結剤及び飼料プレミックス製造の際に指定されている賦形物質から選択される少なくとも1種を含む。
【0064】
本発明の油性粉体組成物は、以下の条件を満たすように構成されている:
(1)当該油性粉体組成物において、前記本発明の液体油性組成物と同様の保存安定性を有するように、水溶性ビタミンが食用油脂で被覆されていること;
(2)当該油性粉体組成物は、取り出し、計量、散布に支障のない程度の流動性を有すること;並びに
(3)当該油性粉体組成物が、飼料ペレット表面に付着し易く、かつ水に投入された衝撃で飼料ペレットの表面から散逸することがなく、さらに水溶性ビタミンの溶解が遅いこと。
【0065】
前記条件のうち、(3)の条件を満たすことが、最も達成困難であった。本発明では、飼料ペレット表面への付着量を食用油脂による湿潤の度合いで調整することとし、食用微細セルロース又は食用澱粉としてα化されたアミロペクチンを選択(使用)し、これを含有させて油性粉体組成物とすることでこれを達成した。すなわち、このような構成により、当該油性粉体組成物は、水(例えば海水)に触れたときに食用油脂と水溶性ビタミンを含んだまま瞬時に粘着物に変化し、その結果水溶性ビタミンは、飼料ペレット表面から散逸せず、またその溶解も遅くなる。
【0066】
また、本発明の油性粉体組成物を飼料ペレットに付着させる際、前記油性粉体組成物の量は、一般に飼料ペレットの水分量や、養殖魚類に投与する場合には魚種と魚の年齢等の要因によって0.1〜0.5重量%の範囲で加減できる。すなわち、本発明の油性粉体組成物は、その少なくとも0.5重量%のものが飼料ペレットの表面に付着する性能を有し、さらに飼料ペレットが水に投入された時の衝撃でも、これが脱落することなく付着している。しかも、10%を超える食用油脂を含む場合でも、その取り扱いに不都合が生じない粉体物性を保ちながら粘着する性質を有している。
【0067】
本発明において使用する水溶性ビタミンについては、前記本発明の油性組成物において記載したとおりである。
【0068】
前記食用油脂は、必ずしも流動性を有する必要はなく、一般的に食用に使われる品質のものであれば、対象となる動物(特に魚類)の商品性を考慮して、任意に選択することができる。このような油脂として、大豆油、菜種油、パーム油、椰子油等が挙げられ、好ましくは大豆油、菜種油、パーム油、及び椰子油から選択される。
【0069】
前記食用油脂の含有量(使用量)は、好ましくは10〜15重量%程度が選択される。
【0070】
前記したように、本発明において使用する食用微細セルロース又は食用澱粉としては、穀物由来の食用澱粉のうちアミロペクチン100%からなる澱粉をアルファ化して乾燥したもの、すなわちα化されたアミロペクチンが選択される。
【0071】
澱粉は、植物がエネルギーを貯蔵するために生合成される多糖類で2種類の構造のグルカンからなっている。その一つはアミロースであり、これは、グルコースがα1・4結合で直鎖状に連結された構造を有している。もう一つはアミロペクチンであり、これは、20個程度のグルコースからなる一定の鎖長のアミロースがα1・6結合で結合した枝分かれ構造をとっている。アミロペクチンは、直鎖状高分子の間にα1・6結合が入って架橋構造が形成されているので加熱により吸水し膨潤したときに特有の粘りと弾力を示す。本発明によれば、この特定の食用澱粉を含有させて油性粉体組成物としているので、前記油性粉体組成物は、水に触れると瞬時にゲル状の塊を形成し、その中に油脂と水溶性ビタミンを含んでいるにもかかわらず粘着性を失わない。
【0072】
本発明において使用するα化されたアミロペクチンは、餅種の穀類から分別して得られる澱粉を加熱しアルファ化した後乾燥することで得ることができる。
【0073】
前記α化されたアミロペクチンについては、上記のように公知の方法により製造したものを使用することができるが、また、市販品を購入することで容易に入手することができる。例えば、日本古来の「寒梅粉」、松谷化学(株)の製品「マツノリンA」、日澱化学(株)の製品「アミコールW」等が上市されている。
【0074】
前記食用澱粉の含有量は、好ましくは60〜80重量%程度、より好ましくは65〜70重量%程度が選択される。
【0075】
なお、前記特定の食用澱粉(α化されたアミロペクチン)に替えて、澱粉加水分解物を選択(使用)し、更にそのうち特定の規格のものに限定し、これと飼料添加物に指定されている粘結剤及び飼料プレミックス製造の賦形物質から選択される少なくとも1種とを使用(併用)した場合にも、前記特定の食用澱粉を使用した場合と同様の効果が得られる。
【0076】
本発明において使用する澱粉加水分解物は、DE値10以下、好ましくは5以下のものから選択される。
【0077】
前記澱粉加水分解物は、一般にデキストリンと呼ばれるものであるが、餅種以外の穀類から得られる澱粉を酸又は酵素で加水分解して冷水に溶解する性質に変化させたものである。
【0078】
前記澱粉加水分解物は、加水分解の程度により溶解性、粘度、老化性、吸湿性当の性状が段階的に変化するため、還元末端の数を直接還元糖(グルコースで表示)の量に換算してDE値(Dextrose Equivalent)で表示される。このDE値は下記式によって求めることができる。また、DE値が小さい澱粉加水分解物ほど分子量が大きく、分子量の大きいものほど粘性が高くなり、水への溶解が遅くなる。
DE値=(直接還元糖÷固形分)×100
【0079】
前記澱粉加水分解物については、公知の方法により製造したものを使用することができるが、また、市販品を購入することで容易に入手することができる。例えば、松谷化学工業(株)の製品「マックス1000」(DE値8.75)、「パインデックス#100」(DE値3.97)、日澱化学(株)の製品「アミコールNo.7H」(DE値5以下)、「赤玉デキストリンNo.102M」(DE値5以下)等が上市されている。
【0080】
前記澱粉加水分解物の含有量は、好ましくは60〜80重量%程度が選択される。
【0081】
本発明において、前記澱粉加水分解物は、飼料添加物に指定されている粘結剤及び飼料プレミックス製造の際に指定されている賦形物質から選択される少なくとも1種と併用されるが、当該粘結剤及び当該賦形物質は、何れも「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」に基づく規格基準を満たすものであれば良い。
【0082】
前記粘結剤は、好ましくは、飼料添加物の品質低下を防ぐ粘結剤として使用が認められている5種類の物質に包含されるアルギン酸ナトリウム、カルポキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムの3種類から選択され、より好ましくはアルギン酸ナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムから選択される。
【0083】
前記賦形物質は、好ましくは、飼料プレミックス製造の際に使用できる物質として指定されている賦形物質97種類に包含され、吸水して増粘性を示すアラビアゴム、カラゲーナン、キサンタンガム、グアーガム、グルテン、タマリンド種子多糖類、トラガントガム、プルラン、ペクチン、及びローカストビーンガムの10種類の増粘物質から選択され、より好ましくはキサンタンガム、トラガントガム、プルラン、及びペクチンから選択される。
【0084】
当該粘結剤及び当該賦形物質の配合割合は、選択される当該粘結剤及び当該賦形物質の種類と油性粉体組成物に占める澱粉加水分解物の配合割合に応じて適宜決定されるが、好ましくは、油性粉体組成物中、合計5〜20重量%程度の範囲が選択される。
【0085】
本発明においては、食用油脂と水溶性ビタミンと食用澱粉との配合比率(重量)に関して、好ましくは10〜15:10〜12:73〜80、より好ましくは15:12:73が選択される。
【0086】
なお、本発明の油性粉体組成物には、上記水溶性ビタミンの他に、本発明に於ける効果(分散性やゲル形成等)を損わない範囲で、必要に応じて、ビタミンB2、葉酸等の難水溶性成分、又はビタミンE、或いはアスタキサンチン等の油性の成分を適宜配合することができる。
【0087】
更に、本発明の油性粉体組成物には、上記成分の他に、水溶性ビタミンの成分に影響がなければ、通常の飼料に従来から配合される成分、例えばタウリン等のアミノ酸、飼料添加物として認められている乳化剤等を適宜配合することができる。
【0088】
本発明の油性粉体組成物の調製には特に困難はない。前記成分を単純に混合するだけで本発明の油性粉体組成物を調製することができる。
【0089】
本発明の油性粉体組成物の使用には、特に困難はない。例えば、養殖魚類に投与する場合には、魚油を投入してアミノ酸栄養剤等の任意成分を飼料ペレットの表面に展着させてから油性粉体組成物を振り入れるだけで、前記油性液体組成物とほぼ同じ作業手順で展着ペレットの調製を行うことができる。得られた展着ペレットは、何れも水溶性ビタミンとアミノ酸栄養剤等の任意成分が海水に溶解して失われることがなく、養殖魚類に必要量を正確に与えることができる。
【実施例1】
【0090】
(油性液体組成物の製造)
菜種油707gに平均粒径28μmの食用微細セルロース(日本製紙ケミカル(株)の製品「KCフロックW300G」)180gを加えて混合し、均一に分散させた。次に、ビタミンC 100g、ビタミンB1 3g、パントテン酸カルシウム 10gからなる113gの粉体混合物を入れて全体が均一になるまで攪拌混合して養殖魚類用の油性液体組成物1000gを得た。なお、得られた油性液体組成物は、製造時に飛散して空中に浮遊することがなく、0℃から30℃の環境温度で自然流下する流動性があり、室温で一ヶ月静置保管して生じた表面の透明な油層は密栓状態の容器を数回軽く振ることで消失して均一な分散状態に戻った。
【実施例2】
【0091】
(油性液体組成物の製造)
平均粒径28μmの食用微細セルロース(日本製紙ケミカル(株)の製品「KCフロックW300G」)に替えて、平均粒径18μmの食用微細セルロース(レッテンマイヤージャパン(株)の製品「ピタセルL10」)180gを使用すること以外は、実施例1と同様の方法で油性液体組成物1000gを製造した。なお、得られた油性液体組成物は、製造時に飛散して空中に浮遊することがなく、0℃から30℃の環境温度で自然流下する流動性があり、室温で一ヶ月静置保管して生じた表面の透明な油層が実施例1で得られたものよりも少なく、密栓状態の容器を数回軽く振ることで消失して均一な分散状態に戻った。
【実施例3】
【0092】
(油性液体組成物の製造)
大豆油735gにビタミンE20gを加えて溶解させた後、平均粒径6μmの食用微細セルロース(日本製紙ケミカル(株)の製品「NPファイバーW06MG」)130gを加えて混合し均一に分散させた。次に、得られた分散体に、ビタミンC1OOg、ビタミンB1 3g、ビタミンB2 2g、葉酸 0.4g、パントテン酸カルシウム 9.6gからなる混合粉体115gを加えて全体が均一になるまで攪拌混合して養殖魚類用の油性液体組成物1000gを得た。なお、得られた油性液体組成物は、製造時に飛散して空中に浮遊することがなく、0℃から30℃の環境温度で自然流下する流動性があり、室温で一ヶ月静置保管して生じた表面の透明な油層が実施例2で得られたものよりもさらに少なく、密栓状態の容器を数回軽く振ることで消失して均一な分散状態に戻った。
【実施例4】
【0093】
(油性液体組成物の製造)
大豆油735gに替えて、大豆油635gを、平均粒径6μmの食用微細セルロース(日本製紙ケミカル(株)の製品「NPファイバーW06MG」)130gに替えて、平均二次粒径4μmの食用微細セルロース(レッテンマイヤージャパン(株)の製品「UFC」)を230gをそれぞれ使用すること以外は、実施例3と同様の方法で油性液体組成物1000gを製造した。なお、得られた油性液体組成物は、製造時に飛散して空中に浮遊することがなく、0℃から30℃の環境温度で自然流下する流動性があり、室温で一ヶ月静置保管して生じた表面の透明な油層が実施例3で得られたものと同量であり、密栓状態の容器を数回軽く振ることで消失して均一な分散状態に戻った。
【比較例1】
【0094】
(油性液体組成物の製造)
平均粒径28μmの食用微細セルロース(日本製紙ケミカル(株)の製品「KCフロックW300G」)に替えて、平均粒径32μmの食用微細セルロース(日本製紙ケミカル(株)の製品「KCフロックW250G」180gを使用すること以外は、実施例1と同様の方法で油性液体組成物1000gを製造した。なお、得られた油性液体組成物は、製造時に飛散して空中に浮遊することがなく、0℃から30℃の環境温度で自然流下する流動性があった。しかし、室温で一ヶ月静置保管して生じた表面の透明な油層は実施例1で得られたものと同量であったが、密栓状態の容器を数回軽く振る程度の攪拌では十分に消失せず均一な分散状態に戻すには強く振る必要があった。
【比較例2】
【0095】
(油性液体組成物の製造)
菜種油707gに替えて、菜種油787gを、平均粒径28μmの食用微細セルロース(日本製紙ケミカル(株)の製品「KCフロックW300G」)180gに替えて、平均粒径200μmの食用微細セルロース(レッテンマイヤージャパン(株)の製品「アーボセルBWW40」100gをそれぞれ使用すること以外は、実施例1と同様の方法で油性液体組成物1000gを製造した。なお、得られた油性液体組成物は、製造時に飛散して空中に浮遊することがなく、0℃から30℃の環境温度で自然流下する流動性があった。しかし、室温で一週間静置保管して生じた表面の透明な油層が実施例2で得られたものよりも多く、密栓状態の容器を強く振る程度の攪拌では消失せず均一な分散状態に戻らなかった。
【実施例5】
【0096】
(油性粉体組成物の製造)
ビタミンC 100g、ビタミンB1 3g、ビタミンB2 2g、ビタミンB6 1g、パントテン酸カルシウム 10g、葉酸 0.4gを混合した後、ビタミンE 20gと大豆油 130gを加えて、スラリー状にした。得られたスラリーに、マツノリンA 673.6gを少しずつ加えて攪拌混合し、生分解性の食用原料で構成されたやや流動性に乏しい湿潤性の油性粉体組成物940gを得た。なお、得られた油性粉体組成物を、加湿した飼料ペレット表面に一定量付着させて、水の中へ投入したところ投入の衝撃で脱落することなく瞬時に強さと弾力のある粘着物(ゲル)を形成した。この粘着物は、3分経過後も溶解することなく飼料ペレットの表面に付着していた。
【実施例6】
【0097】
(油性粉体組成物の製造)
実施例5において得られた油性粉体組成物940gに、飼料プレミックス製造に指定されている賦形物質として無水ケイ酸60gを混合して、油性粉体組成物1000gを得た。なお、得られた油性粉体組成物では、流動性が改善され、取り出し、計量、散布に係る性質が向上していた。また、得られた油性粉体組成物を、加湿した飼料ペレット表面に一定量付着させて、水の中へ投入したところ投入の衝撃で脱落することなく瞬時に強さと弾力のある粘着物を形成した。この粘着物は、3分経過後も溶解することなく飼料ペレットの表面に付着していた。
【比較例3】
【0098】
(油性粉体組成物の製造)
マツノリンAに替えて、澱粉加水分解物であるパインデックス#100(DE値3.97)673.6gを使用すること以外は、実施例5と同様の方法で生分解性の食用原料で構成された湿潤性の油性液体組成物940gを製造した。なお、得られた粉体組成物を加湿した飼料ペレット表面に一定量付着させて、水の中へ投入したところ投入の衝撃で脱落することなく瞬時に柔らかい粘着物を形成したが、この粘着物は1分以内に溶解して飼料ペレットの表面から消失した。
【比較例4】
【0099】
(油性粉体組成物の製造)
マツノリンAに替えて、澱粉加水分解物であるアミコールNo.1(DE値18.0)673.6gを使用すること以外は、実施例5と同様の方法で生分解性の食用原料で構成された湿潤性の油性粉体組成物940gを得た。なお、得られた粉体組成物を、加湿した飼料ペレット表面に一定量付着させて、水の中へ投入したところ投入の衝撃で半分程度が脱落して散逸した。残りは飼料ペレット表面に残留して粘着物を形成したが、この粘着物は10秒程度で溶解して飼料ペレットの表面から消失した。
[実施例7〜19]
【0100】
[評価例1] 各種油性粉体組成物の比較評価
下記表1の組成に基づいて、下記製造方法により各種油性粉体組成物を製造した。得られた各種油性粉体組成物について、下記評価方法により評価した。結果を表2〜4に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
(各種油性粉体組成物の製造方法)
ビタミンC 10.0重量部、ビタミンB1 0.3重量部、パントテン酸カルシウム 1.0重量部を混合した後、菜種油 15.0重量部を加えて、スラリー状にした。得られたスラリーに、飼料添加物に指定されている粘結剤として3種類の粘結剤(実施例7;アルギン酸ナトリウム、実施例8;カルボキシメチルセルロースナトリウム、実施例9;ポリアクリル酸ナトリウム)並びに飼料プレミックス製造の際に指定されている賦形物質として10種類の賦形物質(実施例10;アラビアガム、実施例11;カラゲーナン、実施例12;キサンタンガム、実施例13;グアーガム、実施例14;グルテン、実施例15;タマリンド種子多糖類、実施例16;トラガントガム、実施例17;プルラン、実施例18;ペクチン、実施例19;ローカストビーンガム)の何れかと澱粉加水分解物としてパインデックス#100(DE値3.97)8.0重量部とを少しずつ加えて攪拌混合し、油性粉体組成物を得た。
【0103】
(評価方法)
得られた油性粉体組成物を加湿したペレット表面に一定量付着させて水の中へ投入し、油性粉体組成物の状態の変化を観察して、下記評価項目及び評価基準に従い3段階で評価した。
【0104】
(評価項目及び評価基準)

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
上記表2〜4から明らかなように、本発明の油性粉体組成物は、粘結剤として、アルギン酸ナトリウムや、ポリアクリル酸ナトリウム、賦形物質として、キサンタンガムや、トラガントガム、プルラン、ペクチンを含有するように構成することが好ましい。
[実施例20及び21並びに比較例5及び6]
【0109】
[評価例2] 各種油性粉体組成物の比較評価
下記製造方法で得られた各種油性粉体組成物について、前記評価例1と同様の評価方法により評価した。結果を表5に示す。
【0110】
(各種油性粉体組成物の製造方法)
パインデックス#100(DE値3.97)に替えて、各種澱粉加水分解物(実施例20;松谷化学工業(株)の製品「パインデックス#100」(DE値3.97)、実施例21;松谷化学工業(株)の製品「マックス1000」(DE値8.75)、比較例5;日報化学(株)の製品「アミコールNo.1」(DE値18.0)、比較例6;日報化学(株)の製品「アミコールNo.3L」(DE値30.0))を、各種粘結剤及び各種賦形物質8.0重量部に替えて、飼料添加物に指定されている粘結剤として「スノーアルギンM」(富士化学工業(株)の製品)4.0重量部と飼料プレミックス製造の際に指定されている賦形物質として「ゲニューペクチンLM101AS」((株)富士商事の製品)4.0重量部とをそれぞれ使用すること以外は、実施例7〜19と同様の方法で油性粉体組成物を製造した。
【0111】
【表5】

【0112】
上記表5から明らかのように、本発明の油性粉体組成物、すなわち実施例20及び21で得られた油性粉体組成物は、澱粉加水分解物を、DE値10以下のものに限定しているため、比較例5及び6の油性粉体組成物と比較して、油性粉体組成物が水に触れることで形成する粘着物(粘着性を有するゲル)の付着性及び溶解性が改善されていた。したがって、本発明の油性粉体組成物は優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(C):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;並びに
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉
を含有し、前記食用油脂が、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂であり、前記食用微細セルロース又は食用澱粉が、非晶領域を形成する部位からなり、30μm以下の平均粒径を有する食用微細セルロースから選択されることを特徴とする養殖魚類の飼料用油性液体組成物。
【請求項2】
前記食用微細セルロースの平均粒径が、10μm以下である請求項1に記載の油性液体組成物。
【請求項3】
下記成分(A)〜(C):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;並びに
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉
を含有し、前記食用油脂が、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂又は0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有しない食用油脂であり、前記食用微細セルロース又は食用澱粉が、α化されたアミロペクチンであることを特徴とする養殖魚類の飼料用油性粉体組成物。
【請求項4】
下記成分(A)〜(D):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉;並びに
(D)飼料添加物に指定されている粘結剤及び飼料プレミックス製造の際に指定されている賦形物質から選択される少なくとも1種
を含有し、前記食用油脂が、0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有する食用油脂又は0℃〜30℃の温度範囲で自然流下する流動性を有しない食用油脂であり、前記食用微細セルロース又は食用澱粉が、DE値10以下の澱粉加水分解物であることを特徴とする養殖魚類の飼料用油性粉体組成物。
【請求項5】
前記澱粉加水分解物のDE値が、5以下である請求項4に記載の油性粉体組成物。
【請求項6】
前記粘結剤が、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリアクリル酸ナトリウムのうち少なくとも1種であり、前記賦形物質が、アラビアゴム、カラゲーナン、キサンタンガム、グアーガム、グルテン、タマリンド種子多糖類、トラガントガム、プルラン、ペクチン、及びローカストビーンガムのうち少なくとも1種である請求項4に記載の油性粉体組成物。
【請求項7】
下記成分(A)〜(C):
(A)食用油脂;
(B)水溶性ビタミン;並びに
(C)食用微細セルロース又は食用澱粉
を含有することを特徴とする養殖魚類の飼料用油性組成物。

【公開番号】特開2011−139665(P2011−139665A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1957(P2010−1957)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(592246381)株式会社ミズホケミカル (7)
【Fターム(参考)】