説明

油揚げ風食品用の衣組成物及び惣菜用材料セット

【課題】薄片状の畜肉を用いた新規な油揚げ風食品を得ることができる油揚げ風食品用の衣組成物を提供する。また、該衣組成物で形成される油揚げ風食品に具材及び調味料を混ぜ合わせることで惣菜を得ることができる惣菜用材料セットを提供する。
【解決手段】畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成する油揚げ風食品用の衣組成物であって、パン粉と澱粉とを含み、パン粉の含有量は、7質量%以上43質量%以下であり、澱粉の含有量は、42質量%以上79質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油揚げ風食品用の衣組成物及び惣菜用材料セットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康への関心から油脂の摂取を控える傾向が強まっている。また、揚げ物を調理する際には、調理中の温度調整が難しいことや、調理後の油の廃棄の手間を省くなどの観点から、油で揚げずに油揚げ風の食品を得たいという需要が高まっている。
【0003】
そこで、油で揚げることなく、油揚げ風食品を得ることができるブレッダーミックス(衣材用ミックス)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなブレッダーミックスを鶏肉や豚肉等にまぶし、その鶏肉や豚肉等を加熱調理することで、油で揚げたようなカラッとした衣をまとった油揚げ風の食品を得ることができる。
【0004】
ところで、上述したようなブレッダーミックスは、角切りにした豚肉等に用いられ、一口大の油揚げ風食品が得られる。しかし、角切りにした豚肉よりも、豚小間肉など薄片状の豚肉は比較的安価で入手が容易であるので、これを用いた新規な油揚げ風食品を製造することができる衣材が望まれている。
【0005】
また、酢豚などの惣菜は、一口大の豚角切り肉の唐揚げを用意するだけでなく、種々の具材と、味付け用の調味料を組み合わせて得られる。豚小間肉などと比べて価格が高く、買い置きされていることも少ない角切り肉を用意し、油揚げ調理を行い、さらに他の具材と甘酢などの調味料を用意するには、大変な手間がかかる。このような理由から、比較的安価な豚小間肉等の畜肉を用いることができ、かつ、油で揚げる手間をかけずに酢豚などの惣菜を作ることができる材料セットが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、薄片状の畜肉を用いた新規な油揚げ風食品を得ることができる油揚げ風食品用の衣組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該衣組成物で形成される油揚げ風食品に具材及び調味料を組み合わせることで惣菜を得ることができる惣菜用材料セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、薄片状の畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成する油揚げ風食品用の衣組成物であって、パン粉と澱粉とを含み、前記パン粉の含有量は、7質量%以上43質量%以下であり、前記澱粉の含有量は、42質量%以上79質量%以下であることを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物にある。
【0009】
かかる第1の態様では、該衣組成物を薄片状の畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成することができる。衣組成物のパン粉と澱粉とを上述した配合にすることで、澱粉の結着作用と、パン粉による衣のゴツゴツとした立体感とのバランスがとれた油揚げ風食品を得ることができる。さらに、薄片状の畜肉を団子状にすることにより、一塊の畜肉よりも噛み切り易く食べ易い油揚げ風食品を得ることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、前記パン粉の含有量は、14質量%以上43質量%以下であり、前記澱粉の含有量は、42質量%以上72質量%以下であることを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物にある。
【0011】
かかる第2の態様では、より一層、澱粉の結着作用と、パン粉による衣のゴツゴツとした立体感とのバランスがとれた油揚げ風食品を得ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、水分含量は、6.0質量%以上11.5質量%以下であることを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物にある。
【0013】
かかる第3の態様では、より一層、澱粉の結着作用と、パン粉による衣のゴツゴツとした立体感とのバランスがとれた油揚げ風食品を得ることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか一つの態様に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、水分含量は、7質量%以上10質量%以下であることを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物にある。
【0015】
かかる第4の態様では、より一層サクッとした食感のある衣を有し、ボリューム感のある団子状の油揚げ風食品を得ることができる。また、より一層、澱粉による結着性が良好なものとなり、畜肉がほぐれずに、まとまり感がある油揚げ風食品を得ることができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか一つの態様に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、前記澱粉は、馬鈴薯澱粉であることを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物にある。
【0017】
かかる第5の態様では、スライス肉(薄片状の畜肉)の良好な結着性と衣のクリスピー感、ゴツゴツとした衣を形成することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか一つの態様に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、当該油揚げ風食品用の衣組成物を収容する包装には、当該油揚げ風食品用の衣組成物を薄片状の畜肉に混合し、該畜肉を団子状に成形し、団子状に成形した畜肉を炒める旨が表示されていることを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物にある。
【0019】
かかる第6の態様では、該衣組成物を収容した包装容器などに、薄片状の畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成することができる旨が表示された衣組成物を提供できる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第1容器に収容された第1〜第6の何れか一つの態様に記載する油揚げ風食品用の衣組成物と、第2容器に収容され、前記油揚げ風食品に組み合わされる具材及び調味料とを含むことを特徴とする惣菜用材料セットにある。
【0021】
かかる第7の態様では、薄片状の畜肉を用意し、惣菜用材料セットの衣組成物を用いて団子状の油揚げ風食品を作り、その後、惣菜用材料セットの具材及び調味料と組み合わせるだけで、手軽に惣菜を作ることができる。「組み合わせる」とは、例えば、油揚げ風食品に具材及び調味料をかけることや、これらを混ぜることなどをいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、薄片状の畜肉を用いた新規な油揚げ風食品を得ることができる油揚げ風食品用の衣組成物が提供される。また、本発明によれば、該衣組成物で形成される油揚げ風食品に具材及び調味料を組み合わせることで惣菜を得ることができる惣菜用材料セットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る油揚げ風食品用の衣組成物(以下、単に衣組成物とも言う)は、パン粉と澱粉とを含み、パン粉の含有量は、7質量%以上43質量%以下であり、澱粉の含有量は、42質量%以上79質量%以下である。
【0024】
本発明に係る衣組成物は、豚小間肉のような薄片状の畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成する。このような衣組成物によれば、油で揚げたようなサクッとした衣に覆われ、団子状にまとまった形状を保ち、さらに、角切りにした畜肉よりも噛み切り易く食べ易い油揚げ風食品を得ることができる。
【0025】
本発明でいう薄片状の畜肉とは、豚肉、牛肉、鶏肉などの畜肉を切削したものをいう。大きさに特に限定はなく、また、厚さとしては、例えば、0.1mm〜数mm程度である。具体的には、一般に小間肉、スライス肉、又は切り落としとして売られている畜肉などが該当する。
【0026】
本発明に係る衣組成物は、原材料としてパン粉と澱粉とを含むものである。
【0027】
本発明で用いられるパン粉は、乾燥パン粉など、パンをくずして小片状にしたものである。パン粉は、団子状にした畜肉の肉汁を保持するとともに、ゴツゴツとした立体感のある外観を有し、サクッとした食感の衣を形成する。
【0028】
本発明で用いられる澱粉は、例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を使用することができる。これらの澱粉は未加工の生澱粉でも、リン酸架橋、アセチル化などのエステル化やヒドロキシプロピル化などのエーテル化、湿熱処理、温水処理、α化、酸化等の加工した澱粉でも使用できる。また、これらの澱粉を1種のみを用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
澱粉は、薄片状の畜肉を結着させる作用を有する。この澱粉の作用により、本発明の衣組成物により得られる油揚げ風食品がほぐれて団子が崩れることを防止することができる。すなわち、澱粉の結着作用により、団子状にした畜肉を、その形状を保ったまま油揚げ風食品とすることができる。
【0030】
衣組成物に含まれるパン粉の含有量は、7質量%以上43質量%以下であることが好ましく、14質量%以上43質量%以下であることがより好ましい。また、衣組成物に含まれる澱粉の含有量は、42質量%以上79質量%以下であることが好ましく、42質量%以上72質量%以下であることがより好ましい。ここでいうパン粉及び澱粉の含有量は、水分を含んだものである。一般に、乾燥パン粉の水分含量は14質量%以下であり、澱粉の水分含量は5〜20質量%程度である。
【0031】
パン粉の含有量を7質量%以上43質量%以下とし、澱粉の含有量を42質量%以上79質量%以下とすることで、パン粉によるゴツゴツとして、花咲きのある外観を有し、サクッとした食感の衣を形成することができる。また、団子状にした畜肉の間にはパン粉と澱粉とが介在することになるが、上述したような配合とすることで、澱粉を畜肉表面に十分付着させることができ、団子状にした油揚げ風食品の形状を保つことができる。
【0032】
さらに、パン粉の含有量を14質量%以上43質量%以下とし、澱粉の含有量を42質量%以上72質量%以下とすることで、パン粉によるゴツゴツとして、花咲きのある外観を有し、より一層、サクッとした食感の衣を形成することができる。また、このような配合とすることで、より確実に、澱粉を畜肉表面に十分付着させることができ、団子状にした油揚げ風食品の形状を保つことができる。
【0033】
なお、パン粉の含有量が43質量%を超え、澱粉の含有量が42質量%を下回る場合、団子状にした畜肉の表面全体に衣組成物が行き渡らず、衣が部分的に焦げやすくなったり、衣の一体感が失われたりする。また、澱粉よりも相対的に粒径が大きいパン粉が畜肉の間に入りすぎてしまうため、畜肉の結着性が低下してしまう虞がある。このため、肉汁が流出してジューシーさが失われる虞がある。さらに、油揚げ風食品内部にパン粉が残り、粉っぽい味と食感となる虞がある。
【0034】
また、パン粉の含有量が7質量%未満であり、澱粉の含有量が79質量%を超える場合、衣全体に厚みがなく、平坦な外観となり、また、サクッとしたクリスピーな食感が得られない仕上がりとなる。
【0035】
本発明に係る衣組成物の全体の水分含量は、6.0質量%以上11.5質量%以下とすることが好ましく、7.0質量%以上10.0質量%以下とすることがより好ましい。
【0036】
ここでいう水分含量は、衣組成物全体に含まれる水分である。すなわち、パン粉や澱粉に含まれる水分を含めた水分量である。衣組成物の最終的な水分量が上述した範囲であればよい。例えば、パン粉及び澱粉の合計水分量が上述した範囲よりも少ない、又は多いならば、水分含量の異なる他のパン粉、澱粉を添加するか、若しくは後述する副原料等を添加するか、又は水分を蒸発させて乾燥させてもよい。
【0037】
衣組成物の全体の水分含量を、6.0質量%以上11.5質量%以下とすることで、澱粉による結着性が良好なものとなる。すなわち、団子状にした畜肉を加熱してもその形状を良好に保つことができる。また、衣組成物の全体の水分含量を、7.0質量%以上10.0質量%以下とすることで、澱粉による結着性がより一層、良好なものとなり、団子状にした畜肉を加熱してもその形状をより確実に保ち、一体感のある仕上がりとすることができる。
【0038】
なお、衣組成物の全体の水分含量を、6.0質量%未満とすると、澱粉による結着性が不十分となる。団子状にした畜肉が加熱中にほぐれて団子形状が崩れたり、畜肉が一部現れた外観となり、一体感のある仕上がりとはなりにくい。一方、衣組成物の全体の水分含量を、11.5質量%よりも多くすると、澱粉が湿り、結着性が低下する。加熱中に団子状の畜肉が崩れてしまい、また食感も悪い。さらに、衣組成物を容器に充填する際に容器入口部分(溶着する部分)に付着するなどして製造工程上に難がある。
【0039】
本発明に係る衣組成物には、風味付けなどを目的として、必要に応じて、植物性蛋白、粉乳、卵粉、食塩、調味料、香辛料、膨張剤、乳化剤、色素、油脂、着色料などの副原料を配合することができる。着色料については粉末醤油だけでも十分揚げ色をつけることは可能であるが着色料を使用する事により、補強度を増しさらに唐揚げのような色調に近づけることが出来る。着色料としては、パプリカ、アナトー、トウガラシ、クチナシ、コチニール、ラック、赤キャベツ、赤大根、紫トウモロコシ、ブドウ果汁、シソ、ムラサキイモ、カカオ、ベニバナ、ウコン、ビートレッド、紅麹又はカラメル色素等を挙げることができる。
【0040】
特に、本発明に係る衣組成物に粉末醤油を配合することが好ましい。粉末醤油により油揚げ風食品に十分な揚げ色をつけることができる。なお、粉末醤油とは、醤油に賦形剤を添加し、噴霧乾燥や凍結乾燥により製造した粉末状の醤油である。
【0041】
上述したパン粉及び澱粉、さらに必要に応じて上述した副原料を混合することで、本発明に係る衣組成物となる。本発明の衣組成物によれば、該衣組成物を薄片状の畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成することができる。衣組成物のパン粉と澱粉とを上述した配合にすることで、澱粉の結着作用と、パン粉による衣のゴツゴツとした立体感とのバランスがとれ、これにより、サクッとした食感のある衣を有し、ボリューム感のある団子状の油揚げ風食品を得ることができる。また、衣組成物全体に含まれる水分を上述した水分量とすることで、澱粉による結着性が良好なものとなり、畜肉がほぐれずに、まとまり感がある油揚げ風食品を得ることができる。さらに、薄片状の畜肉を団子状にしたので、一塊の畜肉よりも噛み切り易く食べ易い油揚げ風食品を得ることができる。
【0042】
本発明に係る衣組成物は、パン粉と澱粉とを混ぜ、必要に応じて、上述した副原料を混ぜることで製造することができる。混ぜ合わせの順序は特に限定されない。衣組成物に含まれる水分量は、パン粉及び澱粉に含まれる水分量に基づいて、衣組成物の水分含量が上述したように6.0質量%以上11.5質量%以下となるようにする。また、副材料を混ぜた場合には、副材料に含まれる水分を含めて、衣組成物全体の水分含量が6.0質量%以上11.5質量%以下となるようにする。
【0043】
なお、パン粉や澱粉の水分含量の測定方法は、例えば、減圧乾燥法や、減圧加熱乾燥法(「食品衛生検査指針」厚生労働省監修、社団法人日本食品衛生協会、2005年3月31日発行)により行うことができる。減圧加熱乾燥法は、測定サンプルが分解しない温度において減圧下で加熱することにより減少した質量(水分含量)を測定する方法である。
【0044】
このような衣組成物の製造方法によれば、薄片状の畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成することができる油揚げ風食品用の衣組成物が提供される。
【0045】
本発明に係る衣組成物の使用方法について説明する。まず、容器に薄片状の畜肉と、衣組成物とを入れ、混ぜ合わせる。畜肉全体に衣組成物が混ざったあと、該畜肉を一口大の大きさに丸めて団子状とする。そして、フライパンに油をひいて加熱し、団子状にした畜肉を全体に焼き色が付くまで炒めることで、油揚げ風食品が得られる。
【0046】
油揚げ風食品は、そのまま食することもできるし、他の具材や調味料を組み合わせて惣菜とすることもできる。惣菜としては特に限定はないが、油揚げ風食品に、きくらげや赤ピーマンなどの具材及び甘酢あんを組み合わせた酢豚風の料理を挙げることができる。
【0047】
平袋など(第1容器)に、本発明に係る衣組成物を封入し、それとは別の平袋など(第2容器)に、上述のようなきくらげや赤ピーマンなどの具材及び甘酢あんなどの調味料を封入したものをセットにして、惣菜用材料セットとしてもよい。
【0048】
消費者は、豚小間肉などを用意し、惣菜用材料セットの衣組成物を用いて団子状の油揚げ風食品を作り、その後、惣菜用材料セットの具材及び調味料と組み合わせるだけで、手軽に惣菜を作ることができる。すなわち、安価な肉を使用しながらも角切り肉のような一体感のある団子状の油揚げ風食品を含む惣菜を手軽に得ることができる。さらに、油で揚げる作業や後始末も不要となり、消費者のニーズに合う惣菜用材料セットを提供することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
[実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−5]
本発明に係るパン粉として、宇佐パン粉有限会社製ドライパン粉(水分含有率5.91%)を用いた。また、本発明に係る澱粉として、市販の片栗粉(馬鈴薯澱粉、水分含有率16.57%)を用いた。さらに、副材料として、粉末醤油(キッコーマン食品株式会社製)と、市販の食塩を用いた。
【0050】
パン粉、片栗粉、食塩、粉末醤油を混和し、各実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−5に係る衣組成物をそれぞれ70gずつ製造した。表1に各実施例、比較例の各材料の配合量を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
パン粉含有量及び片栗粉含有量は、衣組成物に含まれるパン粉及び片栗粉のそれぞれの割合(質量%)を表している。パン粉含有量の乾燥質量及び片栗粉含有量の乾燥質量は、パン粉及び片栗粉から水分を除去したものの衣組成物に含まれる割合(質量%)を表したものである。乾燥質量は、60℃、3時間の条件下における減圧乾燥法で測定したものである。この乾燥質量の測定には、ヤマト科学株式会社製の「Vacuum Drying Oven DP32」を用いた。
【0053】
[試験例1]
(1)薄片状の畜肉として豚小間肉125gを用い、実施例1−1〜1−4、比較例1−1〜1−5に係る衣組成物をそれぞれ10gまぶし、該豚小間肉を丸めて団子を作製した。
(2)フライパンに植物油大さじ1杯をひいて熱し、団子状の豚肉の表面に焼き色がつくまで転がしながら炒め、蓋をして弱火で3分間蒸し焼きにして火をとおし、油揚げ風食品とした。
【0054】
作製した油揚げ風食品をそのままの状態と、甘酢あんをかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価で適用した評価項目と評価基準を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
4つの評価項目について、評価基準を設け、熟練した7名のパネリストにより、それぞれ5段階で点数を付けることとした。例えば、評価項目(1)については、油揚げ風食品が「ゴツゴツとした花咲きがあり、揚げたような外観」であれば最高の5点とし、「衣が平坦で薄付き」であれば最低の1点とした。油揚げ風食品が、最高・最低の間の評価であれば段階的に2〜4点とした。
官能評価の結果を表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
実施例1−1〜1−3に係る衣組成物により作製された油揚げ風食品は、そのまま食しても、甘酢あんをかけても、(1)〜(4)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。また、実施例1−4に係る衣組成物により作成された油揚げ風食品は、そのまま食しても、甘酢あんをかけても、(1)〜(4)の評価項目において何れも評価がよいものであった(3以上)。
【0059】
一方、比較例1−1〜1−5に係る衣組成物により作製された油揚げ風食品は、そのまま食した場合や甘酢あんをかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ風食品が得られなかった。
【0060】
なお、実施例1−4、比較例1−3との比較においては、(1)〜(4)の評価項目で拮抗している。しかし、実施例1−4は、比較例1−3よりも肉のジューシーさが維持されており、また、比較例1−3は、パン粉の焦げ付きが目立っていた。
【0061】
以上に示したように、実施例1−1〜1−4に係る衣組成物に含まれるパン粉の含有量は、7質量%以上43質量%以下(乾燥質量でいえば、6質量%以上41質量%以下)であり、澱粉の含有量は、42質量%以上79質量%以下(乾燥質量でいえば、35質量%以上66質量%以下)である。このような配合比であれば、衣の外観・食感、油揚げ風食品の食感に優れたものが得られた。特に、実施例1−1〜1−3に係る衣組成物のように、パン粉の含有量が14質量%以上43質量%以下(乾燥質量でいえば、13質量%以上41質量%以下)であり、澱粉の含有量が42質量%以上72質量%以下(乾燥質量でいえば、35質量%以上60質量%以下)である場合、(1)〜(4)の評価項目のうち4以上の点数を有する評価項目もあり、衣の外観・食感、油揚げ風食品自体の食感に非常に優れたものが得られた。
【0062】
[実施例2−1〜実施例2−5、比較例2−1〜2−3]
本発明に係る乾燥パン粉として、宇佐パン粉有限会社製ドライパン粉を用いた。また、衣組成物に含まれる水分量を様々な量とするために、水分含量が異なる各種の澱粉を用いた。具体的には、本発明に係る澱粉として、市販の馬鈴薯澱粉(水分含有率16.57質量%、以下、「澱粉A」と表記する。)、JA清里町 清里澱粉工場製馬鈴薯澱粉を水分含有率3.69質量%まで乾燥させた澱粉(以下、「澱粉B」と表記する。)、市販の馬鈴薯澱粉を一晩大気中に放置して加湿させた澱粉(水分含有率17.94質量%、以下、「澱粉C」と表記する。)を用いた。さらに、副材料として、粉末醤油(キッコーマン食品株式会社製)と、市販の食塩を用いた。
【0063】
澱粉A〜Cは単独、あるいは混合して用い、これに乾燥パン粉、食塩、粉末醤油を容器内で混和して衣組成物をそれぞれ70gずつ製造した。表4に各実施例、比較例の各原材料の配合量を示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4に示す水分(質量%)は、各実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−3に係る衣組成物全体に含まれる水分の割合である。パン粉含有量及び澱粉含有量は、衣組成物に含まれるパン粉及び澱粉(澱粉A〜Cの合計量)のそれぞれの割合(質量%)を表している。パン粉含有量の乾燥質量及び澱粉含有量の乾燥質量は、パン粉及び澱粉から水分を除去したものの衣組成物に含まれる割合(質量%)を表したものである。乾燥質量は、60℃、3時間の条件下における減圧乾燥法で測定したものである。
【0066】
[試験例2]
(1)薄片状の畜肉として豚小間肉125gを用い、実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−3に係る衣組成物をそれぞれ10gまぶし、該豚小間肉を丸めて6個の団子を作製した。
(2)フライパンに植物油大さじ1杯をひいて熱し、団子状の豚肉の表面に焼き色がつくまで転がしながら炒め、蓋をして弱火で3分間蒸し焼きにして火をとおし、油揚げ風食品とした。
(3)(1)〜(2)の工程を5回繰り返し、団子状にした豚肉が崩れた個数を測定した。
この測定結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
実施例2−1〜2−5に係る衣組成物により作製された油揚げ風食品は、豚肉が崩れた個数は6個以下であった。比較例2−1に係る衣組成物により作製された油揚げ風食品は、豚肉が崩れた個数は6個であった。また、比較例2−2、2−3に係る衣組成物により作製された油揚げ風食品は、豚肉が崩れた個数は9個以上であった。
【0069】
実施例2−1〜2−5は、衣組成物の水分含量が6.0質量%以上11.5質量%以下である(かつ、パン粉の含有量が7質量%以上43質量%以下、澱粉の含有量が42質量%以上79質量%以下である。)。このような配合比であれば、団子状にした豚肉を炒めてもほぐれる個数をほとんど無くすことができる。特に、実施例2−2〜2−4のように、衣組成物の水分含量が7質量%以上10質量%以下であると、ほぐれる個数は、4個以下であり、団子状にした豚肉を炒めてもほぐれる個数をより少なくすることができる。なお、比較例2−1に関しては、実施例2−5と同様に、豚肉が崩れた個数が6個であるが、試験例3で述べるように官能評価の衣の凹凸と、衣のクリスピー感の結果から、好ましいものではなかった。
【0070】
[試験例3]
試験例2で作製した油揚げ風食品をそのままの状態と、甘酢あんをかけた状態で食して官能評価を実施した。官能評価は熟練した3名のパネリストにより実施した。評価基準は、試験例1と同様とし(表2参照)、この官能評価の結果を表6に示す。
【0071】
【表6】

【0072】
実施例2−1〜2−5に係る衣組成物により作製された油揚げ風食品は、そのまま食しても、甘酢あんをかけても、(1)〜(4)の評価項目において何れも高評価(3以上)であった。一方、比較例2−1〜2−3に係る衣組成物により作製された油揚げ風食品は、そのまま食した場合や甘酢あんをかけた場合、一部の評価項目で3を超えることがあっても、他の項目で3未満となるなど、全体として、満足できる品質の油揚げ風食品が得られなかった。
【0073】
実施例2−1〜2−5は、衣組成物の水分含量が6質量%以上11.5質量%以下であるが、このような水分量であれば、衣の外観・食感、油揚げ風食品の食感に優れたものが得られた。特に、実施例2−2〜2−4のように、衣組成物に含まれる水分が7質量%以上10質量%以下であると、(1)〜(4)の全ての評価項目においてほとんど4以上の評価となり、衣の外観・食感、油揚げ風食品自体の食感に優れたものが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状の畜肉に混合し、団子状にした該畜肉を炒めることで油揚げ風食品を形成する油揚げ風食品用の衣組成物であって、
パン粉と澱粉とを含み、
前記パン粉の含有量は、7質量%以上43質量%以下であり、
前記澱粉の含有量は、42質量%以上79質量%以下である
ことを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物。
【請求項2】
請求項1に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、
前記パン粉の含有量は、14質量%以上43質量%以下であり、
前記澱粉の含有量は、42質量%以上72質量%以下である
ことを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、
水分含量は、6.0質量%以上11.5質量%以下である
ことを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、
水分含量は、7質量%以上10質量%以下である
ことを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、
前記澱粉は、馬鈴薯澱粉である
ことを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載する油揚げ風食品用の衣組成物において、
当該油揚げ風食品用の衣組成物を収容する包装には、当該油揚げ風食品用の衣組成物を薄片状の畜肉に混合し、該畜肉を団子状に成形し、団子状に成形した畜肉を炒める旨が表示されている
ことを特徴とする油揚げ風食品用の衣組成物。
【請求項7】
第1容器に収容された請求項1〜請求項6の何れか一項に記載する油揚げ風食品用の衣組成物と、
第2容器に収容され、前記油揚げ風食品に組み合わされる具材及び調味料とを含む
ことを特徴とする惣菜用材料セット。

【公開番号】特開2011−234732(P2011−234732A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−161686(P2011−161686)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】