説明

油水分離システム

【課題】油水分離槽内で分離した油分をバイオ製剤にて分解処理する油水分離システムにおいて、大雨などにより汚水量が増加した場合の油分解不足への改善を図る。
【解決手段】比重差を利用して汚水の油分と水分とを分離する分離室2を複数個設け、各分離室2内の貯留液の中間部に存在する水を順に次の分離室に移流させる構成の油水分離槽1と、バイオ製剤と栄養剤を注入されバイオ製剤にて槽内液中の油分の分解処理をする油分解槽6と、前記各分離室2の水面から浮遊している油分を含む汚水を取水して油分解槽内6に送る取水手段11とを備え、油分解槽6内の分解処理水を油水分離槽1の初段の分離室2にフィードバックするよう接続したものとし、前記終段の分離室2に油膜を中和処理する油処理剤を注入する油膜処理剤注入器15と、油水分離槽1近傍の降雨量を検知する降雨センサー18とを備え、この降雨センサー18からの降雨量信号が所定値を超えた場合に油膜処理剤注入器15に油処理剤を注入させるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水に対し、油と水との比重差を利用して油分と水分とを分離する油水分離室を複数個連設して油水分離槽を構成し、この油水分離槽内で分離した油分をバイオ製剤にて分解処理するものにおいて、大雨などにより汚水量が増加した場合の油分解不足への改善を図った油水分離システムに関するものである。
【技術背景】
【0002】
従来の油水分離槽は処理対象の汚水を貯留し軽い油分を浮遊物とし、重い固形分を沈殿物として分離する油水分離室を備え、分離室内では貯留液の中間部の水が比較的清浄であるので、分離室を複数個設け、分離室内の貯留液の中間部に存在する水を順に次の分離室に移流させることで油分及び固形分を取り除いた排水を得るものである。初段の分離室では水面の上面に一番多くの浮遊油分が、また底部には一番多くの沈殿固形分が溜まり、2段、3段〜と順次浮遊油分・沈殿固形分とも少なくなり、終段の分離室ではほぼ清浄な排水とするもので、例えば実開平7−12585号公報に示されている。
【0003】
また、本発明と趣旨は異なるが、洗車機から排出される排水を分離槽に貯留して油と水との比重差を利用して油分と水分とを分離し、この分離水を栄養源タンクを備えた生物処理槽と滅菌装置を備えた洗浄用水槽とから構成される処理槽に移して生物浄化と殺菌処理をし、この処理水を洗車機に給水する給水槽に送って洗車用水として利用するものであって、洗車機稼動時以外は処理槽で処理された処理水が、給水槽、分離槽、処理槽の各槽の順に循環できるように、給水槽と分離槽の間に接続及び送液手段を設けた排水リサイクル処理装置が特開平11−169878号公報に示されている。
【特許文献1】 実開平7−12585号公報
【特許文献2】 特開平11−169878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の欠点として、例えば実開平7−12585号公報などに示されている油水分離槽では、前述の如く各分離室では水面の上面に浮遊油分が蓄積されるが、浮遊油分が多くなるに従い、終段の分離室でも排水中に油分が残り油水分離槽から油分が排水されるようになるので、各分離室の浮遊油分を頻繁に除去する必要があった。又、廃車解体業、洗車場、各種工場などの建屋周囲の油含み汚水の処理用とする場合は、建屋周囲の雨水が加わり汚水が大量となり流速が大となるので、各分離室で浮遊油分を分離しても、終段の分離室でも排水中に油分が残り油水分離槽から油分が排水される危険性が大となる。
【0005】
また、特開平11−169878号公報に示されている処理装置も、各分離室の浮遊油分を頻繁に除去する必要がある点は同様である。分離槽を経た分離水を更に処理槽にて生物浄化と殺菌処理する分、終段の分離室で残る排水中の油分は少なくなるが、建屋周囲の雨水が加わり排水が大量となる場合は処理槽でも処理できず油分が排水される危険性は残る。
【0006】
この発明は廃車解体業、洗車場、各種工場などの建屋周囲の油含みの汚水処理をするもので、油水分離室を複数個連設して油水分離槽を構成し、分離した浮遊油分を回収処理すると共に、建屋周囲の雨水が加わり大量となっても汚水を浄化出来る油水分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は油と水との比重差を利用して処理対象汚水の油分と水分とを分離する分離室を複数個設け、各分離室内の貯留液の中間部に存在する水を順に次の分離室に移流させる構成の油水分離槽と、バイオ製剤と栄養剤を注入されバイオ製剤にて槽内液中の油分の分解処理をする油分解槽と、前記油水分離槽内各分離室の水面から浮遊している油分を含む汚水を取水して前記油分解槽内に送る取水手段とを備え、前記油分解槽内の分解処理水を前記油水分離槽の初段の分離室にフィードバックするよう接続したものとした。以上の構成により、各分離室にて汚水を油分と水分と分離し、各分離室の中間部に存在する油分の少ない水分を次の分離室に移流させ、分離され浮遊している油分を含む汚水を各分離室の水面から取水して油分解槽に送り、油分解槽内で取水された汚水中の油分をバイオ製剤にて分解処理し、菌類の栄養となる栄養剤にてバイオ製剤を繁殖させ、この油分解処理されると共にバイオ製剤を含んだ処理水を前記初段の分離室にフィードバックすることにより、初段を始め順次分離室の水面に浮遊している油分が減少すると共に、油分解槽からフィードバックされた処理水に含まれるバイオ製剤により油水分離槽の各分離室内でも油分が分解され、終段の分離室からより浄化された水が排水されると共に、各分離室の浮遊油分を除去する必要がなくなる。
【0008】
また、前記前記油水分離槽終段の分離室に油膜を中和処理する油処理剤を注入する油膜処理剤注入器と、同じく油水分離槽終段の分離室の水面における油膜面積を検知する油膜センサーとを備え、この油膜センサーからの油膜面積信号が所定値を超えた場合に油膜処理剤注入器に油処理剤を注入させるものとすると、前記油膜センサーが終段の分離室の水面における油膜面積が所定値(例えば10平方cm)を超えたと検知すると、前記油膜処理剤注入器は油水分離槽終段の分離室に油処理剤を注入させて油膜を中和処理するので、何らかのトラブルにより終段の分離室に浮遊油分が残った場合でもその油膜を中和処理することが出来る。
【0009】
また、前記油水分離槽終段の分離室に油膜を中和処理する油処理剤を注入する油膜処理剤注入器と、油水分離槽近傍の降雨量を検知する降雨センサーとを備え、この降雨センサーからの降雨量信号が所定値を超えた場合に油膜処理剤注入器に油処理剤を注入させるものとすると、前記降雨センサーが油水分離槽近傍の降雨量が所定値(例えば5mm/時)を超えたと検知すると、油膜処理剤注入器は油水分離槽終段の分離室に油処理剤を注入させて油膜を中和処理するので、大雨により建屋周囲の雨水が加わり油水分離槽に入る排水が大量となり、各分離室で浮遊油分を分離しても、終段の分離室の水面に油分が残った場合でもその油膜を中和処理することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上の構成としたので、請求項1では、油水分離槽にて油分と水分と分離し、分離した油分をバイオ製剤にて分解処理し、栄養剤にてバイオ製剤を繁殖させ、浄化されると共にバイオ製剤を含んだ処理水を前記初段の分離室にフィードバックするので、各分離室の水面に浮遊している油分が減少し、油分解槽からフィードバックされた処理水に含まれるバイオ製剤により油水分離槽の各分離室内でも油分が分解され、終段の分離室から十分に浄化されて排水されると共に、各分離室の浮遊油分を除去する必要がない油水分離システムが提供出来る。
【0011】
また、請求項2では、前記終段の分離室の水面における油膜面積が所定値を超えた場合に、前記油膜処理剤注入器に油処理剤を注入させて油膜を中和処理するので、何らかのトラブルにより終段の分離室に浮遊油分が残った場合でも、その油膜を中和処理し、排出口より油膜が放水されるのを防ぐ効果がある油水分離システムが提供出来る。
【0012】
また、請求項3では、油膜処理制御部は油水分離槽近傍の降雨量が所定値を超えたという降雨センサーからの降雨量信号を受けると油膜処理剤注入器に油処理剤を注入させて油膜を中和処理するので、大雨などにより建屋周囲の雨水が加わり汚水が大量となり流速が大となって、各分離室で浮遊油分を十分分離出来ず、終段の分離室にも浮遊油分が残った場合でも、その油膜を中和処理し、排出口より放水されるのを防ぐ効果がある油水分離システムが提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明に係る実施形態を図により説明する。図1は本実施形態の油水分離システムの構成図であり、図2は同油水分離システムの油水分離槽の部分拡大断面略図である。図1、図2において、例えば廃車解体業、洗車場、各種工場などの建屋周囲の油含みの汚水処理をする油水分離システムとして、建屋周囲の排水溝などを経て汚水を受ける油水分離槽1は分離室2を初段、2段〜終段と複数個連設し、各分離室2間は所定水面位置に連通孔3aを備えた仕切板3で仕切られ、この仕切板3には前段の分離室2側の中間部から連通孔3aに連通する樋又筒状の流通路3bを形成している。初段の分離室2は上方に汚水の流入口4を備え、終段の分離室2は仕切板3と同じく水面位置に排出口5とこの排出口5に連通する流通路3bを備えている。
【0014】
油分解槽6は、油分の分解をするバイオ製剤を注入するバイオ製剤注入器7と、バイオ製剤の菌類の栄養となる栄養剤を注入する栄養剤注入器8と、固形分を分離する分離剤を注入する分離剤注入器9と、また終段以外の前記分離室2の水面に設置された取水器10を介して終段以外の各分離室2の水面に浮遊している油分を含む汚水を取水する取水ポンプ11と接続され、散気装置12により散気する散気管13を内蔵しており、内部の処理水を前記初段の分離室2にフィードバックするよう接続されている。制御盤14は前記油分解槽6内に取水された浮遊油分を分解処理するよう前記バイオ製剤注入器7、栄養剤注入器8、分離剤注入器9、取水ポンプ11、散気装置12などを制御するものである。
【0015】
油膜処理剤注入器15は油膜を中和処理する油処理剤を前記終段の分離室2に注入するものであり、油膜処理制御部16は前記終段の分離室2の水面における油膜面積を検知する油膜センサー17からの油膜信号及び油水分離槽1近傍の降雨量を検知する降雨センサー18からの降雨量信号を受けて、油膜面積又は降雨量が所定値を超えた場合に前記油膜処理剤注入器15に油処理剤を注入させるよう制御するものである。
【0016】
以下本実施形態の油水分離システムの作用を説明する。廃車解体業、洗車場、各種工場などの建屋周囲の油含みの汚水は建屋周囲の排水溝などを経て流入口4から油水分離槽1の初段の分離室2に流入し、この流入した汚水は連通孔3a高さに応じた所定水位まで貯留され、分離室2内で油と水との比重差により油分と水分とが分離されて水面に浮遊油分が、また底部には沈殿固形部分が溜まり、この初段の分離室2内の比較的清浄な中間部の貯留液が流通路3bをへて連通孔3aより2段の分離室2へ流入し、以下同様に分離しながら順次終段の分離室2へと送られ、終段の分離室2では中間部の貯留液が流通路3bをへて排出口5より油分が最も除去され浄化された排水として放水される。従来例同様に分離室2内では貯留液の中間部の水が比較的清浄であるので、分離室2内の貯留液の中間部に存在する水を順に次の分離室に移流させることで油分及び固形部分を取り除いた排水を得るものである。初段の分離室2では水面の上面に一番多くの浮遊油分が、また底部には一番多くの沈殿固形部分が溜まり、2段、3段〜と順次浮遊油分・沈殿固形部分とも少なくなり、終段の分離室2ではほぼ清浄な排水とするである。
【0017】
次に、前記取水ポンプ11は制御盤14により制御されて、取水器10を介して終段以外の分離室2の水面に浮遊している油分を含む汚水を取水し、前記油分解槽6に送る。油分解槽6はバイオ製剤注入器7よりバイオ製剤を、栄養剤注入器8から栄養剤を、分離剤注入器9から分離剤を注入され、また散気装置12により内蔵散気管13から散気することにより、前記取水ポンプ11に取水し送られた汚水中の油分をバイオ製剤にて分解をし、菌類の栄養となる栄養剤にてバイオ製剤を繁殖させ、固形分を分離剤にて分離し、この浄化されると共にバイオ製剤を含んだ処理水を前記初段の分離室2にフィードバックする。この作用により、初段を始め順次終段以外の前記分離室2の水面に浮遊している油分が減少すると共に、前記油分解槽6からフィードバックされた処理水に含まれるバイオ製剤により油水分離槽1の各分離室2内でも油分が分解される。従って、終段の分離室2からより浄化された水が排水されると共に、各分離室2の浮遊油分を除去する必要がなくなる。
【0018】
更に、前記油膜処理制御部16は前記終段の分離室2の水面における油膜面積が所定値(例えば10平方cm)を超えたという油膜センサー17からの信号を受けると、前記油膜処理剤注入器15に油処理剤を注入させて油膜を中和処理するよう制御するので、何らかのトラブルにより終段の分離室2に浮遊油分が残った場合でも油膜を中和処理し、浮遊油分が排出口5より放水されるのを防ぐ効果がある。
【0019】
また、油膜処理制御部16は油水分離槽1近傍の降雨量が所定値(例えば5mm/時)を超えたという降雨センサー18からの降雨量信号を受けると同じく油膜処理剤注入器15に油処理剤を注入させて油膜を中和処理するよう制御するので、大雨などにより建屋周囲の雨水が加わり汚水が大量となり流速が大となって、各分離室2で浮遊油分を分離しても、終段の分離室2でも排水中に油分が残るような場合にも、油膜を中和処理し、浮遊油分が排出口5より放水されるのを防ぐ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本実施形態の油水分離システムの構成図である。
【図2】 同油水分離システムの油水分離槽の部分拡大断面略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 油水分離槽
2 分離室
6 油分解槽
7 バイオ製剤注入器
8 栄養剤注入器
10 取水器
11 取水ポンプ
15 油膜処理剤注入器
17 油膜センサー
18 降雨センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油と水との比重差を利用して処理対象汚水の油分と水分とを分離する分離室を複数個設け、各分離室内の貯留液の中間部に存在する水を順に次の分離室に移流させる構成の油水分離槽と、バイオ製剤と栄養剤を注入されバイオ製剤にて槽内液中の油分の分解処理をする油分解槽と、前記油水分離槽内各分離室の水面から浮遊している油分を含む汚水を取水して前記油分解槽内に送る取水手段とを備え、前記油分解槽内の分解処理水を前記油水分離槽の初段の分離室にフィードバックするよう接続したものとしたことを特徴とする油水分離システム。
【請求項2】
前記油水分離槽終段の分離室に油膜を中和処理する油処理剤を注入する油膜処理剤注入器と、同じく油水分離槽終段の分離室の水面における油膜面積を検知する油膜センサーとを備え、この油膜センサーからの油膜面積信号が所定値を超えた場合に油膜処理剤注入器に油処理剤を注入させるものとした請求項1記載の油水分離システム。
【請求項3】
前記油水分離槽終段の分離室に油膜を中和処理する油処理剤を注入する油膜処理剤注入器と、油水分離槽近傍の降雨量を検知する降雨センサーとを備え、この降雨センサーからの降雨量信号が所定値を超えた場合に油膜処理剤注入器に油処理剤を注入させるものとした請求項1又は2記載の油水分離システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−175682(P2007−175682A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381243(P2005−381243)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(500427121)富山物産株式会社 (1)
【Fターム(参考)】