説明

油水分離装置

【課題】油の分離回収と排水を高効率で行なう油水分離装置の提供。
【解決手段】油水分離タンク3内は流れの方向に前後に二分割し、その前段は、油と廃液を上下に分離する油水分離室4とし、油水分離室4には、上面を閉鎖する油水分離室天井壁面42aを設け、後段は、さらに流れの方向に並列に二分割し、一方を浮上した油が流入する浮上油回収室5とし、他方は浮上油を分離し残った廃液が流入する廃液排水室6とし、また浮上油回収室入口51は油水分離室4の油水分離室天井壁面42aと同じ高さに配置し、廃液排水室入口61は油水分離室4の下部に配置し、さらに浮上油回収室5内には装置外へ通ずる油回収口52を油水分離室天井壁面42aより高い位置に設け、廃液排水室6には装置外へ通ずる廃液排水口62を油水分離室天井壁面42aより高く、かつ油回収口52よりも低い位置に設けた構造とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や変電所またはガソリンスタンド等で発生する油分混合水の処理において、集水槽等から放流する際に、水質汚濁防止法の排水基準値を満たす油分に浄化する策として使用する油水分離装置、あるいは工場等で金属の切削や研磨等のクーラントの処理、または設備や工作物等に付着した油を洗浄した際に発生する比較的油分濃度の高い油分混合廃液を排水処理槽へ送水する前処理として油分を分離回収し、排水処理槽の負荷を低減する策として使用する油水分離装置に関する。
【0002】
例えば機械工場や鋳物工場等に浮遊するミスト状の油を除去する電気集塵装置において、油が付着した装置内を洗浄液で洗浄した際に発生する油分混合洗浄廃液中の油を分離する油水分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在、油分混合水の処理には、油と水の比重差を利用して油分を浮上分離させる油水分離装置が多数用いられている。この種の装置としては、下記特許文献1から3に示すものがある。
【0004】
特許文献1記載の分離装置は、水槽内に流体をさえぎる複数個の仕切部と、分離された比重の軽い流体(油)を分取口を通して貯留する複数個の貯留部と、分離促進のための傾斜流路部から構成され、確実に効率よく油分を分離回収することをねらった装置である。しかしこの装置では、水槽内の流路に対して直列に仕切部と油貯留部が複数配設されているので、仕切板の高さ調整が複雑であり、かつ装置が大型化している。
【0005】
さらに、仕切板の調整位置によっては、回収した油に水が混入し回収量の増加を伴う恐れがある。
【0006】
特許文献2記載の分離装置は、油を粗粒化フィルターと傾斜した複数の平行板装置で浮上させ、油吸着フィルターで除去する。しかしこの装置では、油吸着フィルターの交換が必要であり、メンテナンスの簡素化が十分に図れた装置とはまだまだ言えない。さらに、油分離後の液体は別の排水ポンプで排出する必要があり、排水ポンプの流量が変動するので、排出先が排水処理槽である場合には、排水処理槽への負荷が一定に保てない。
【0007】
特許文献3記載の分離装置は、処理対象液中に粒子状に分散している油を壁面に向けて供給し、付着あるいは滞留させて凝集することにより、油粒子を粗大化し浮上分離させる。しかしこの装置では、処理対象液を処理装置内に勢い良く、多流量で供給する必要があり、液体処理槽内を攪拌させてしまい、一旦分離した処理対象液と回収対象液を再び混合させる恐れがある。さらに、回収対象液は回収流路を介して液体分離装置に返送され、循環処理されることを基本とするため油の分離回収を待って排水動作する必要があり、処理時間が掛かり短時間で効率良く分離回収することには不向きである。
【特許文献1】特開平6−71106号公報
【特許文献2】特開2005−34752号公報
【特許文献3】特開2005−262165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はより簡単な構成で装置全体をコンパクト化し、しかもメンテナンスの簡素化が図れ、油の分離回収と排水を高効率で同時に行ない、かつ排水を低流量、定濃度で行うことで、排水処理槽への負荷低減を図った油水分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明は、油分混合廃液中の油を、比重差を利用して分離回収する油水分離タンクを備えた油水分離装置において、任意流量の廃液を順次油水分離タンクへ送水する定量送水手段を備え、油水分離タンク内を流れの方向に前段と後段に二分割し、前段は、油と廃液を上下に分離する油水分離室とし、油水分離タンクには、上面を閉鎖する天井壁面を設け、後段は、さらに流れの方向に水平方向に二分割し、一方を浮上した油が流入する浮上油回収室とし、他方は浮上油を分離し残った廃液が流入する廃液排水室とし、また、浮上油回収室の入口は油水分離室の天井壁面と同じ高さに配置し、廃液排水室の入口は油水分離室の下部に配置し、さらに浮上油回収室内には装置外へ通ずる油回収口を油水分離室の天井壁面より高い位置に設け、廃液排水室には装置外へ通ずる廃液排水口を油水分離室天井壁面より高く、かつ油回収口よりも低い位置に設けたことを特徴とするものである。
【0010】
この手段により、定量送水器具の運転のみで油の分離回収と排水を一度にかつ同時に行えるので、装置のコンパクト化、省メンテナンス化を図ることができる。また、油水分離室上部と油回収室間に段差がなく、浮上油が壁面を伝い進入しやすくなるので、回収する油分量が多くなり分離性能を高めることができ、低油分濃度で排水できるので排水処理槽への負荷低減を図ることができる。また回収油中に廃液が混入せず廃棄物量を削減できるので廃棄物処理費を低減できる。
【0011】
また、他の手段は、定量送水器具の上流側に油分混合廃液貯留槽を設け、定量送水手段への排出口を底面または側面の下部に設けたことを特徴とするものである。
【0012】
この手段により、洗浄廃液回収タンク内で浮上分離した油をかき混ぜることなく、低濃度から随時高濃度の油を油水分離タンクへ送水することができるので、油水分離タンク内での分離効率を高めることができる。
【0013】
また、他の手段は、浮上油回収室の水平断面積は、廃液排水室の水平断面積よりも小さくしたことを特徴とするものである。
【0014】
この手段により、浮上油分離室内に流入した浮上油層の厚みが増し、廃液との水位差が大きくなるので分離性能を高めることができる。
【0015】
また、他の手段は、浮上油回収室に設けた前記油回収口を浮上油回収室の水平断面中央に設け、且つ上向きに開口し、浮上油液面が開口高さを超えた場合に、前記排出管内へ下向きに溢水するように配置したことを特徴とするものである。
【0016】
この手段により、浮上油液面の上層のみを排出することができるので、回収する油分濃度が高くなり分離性能を高めることができる。
【0017】
また、他の手段は、廃液排水室に設けた廃液排水口の水平断面形状を廃液排水室の水平断面形状の略相似形としたことを特徴とするものである。
【0018】
この手段により、廃液排水室壁面と廃液排水口の距離を一定にでき、壁面に付着する浮上油を排水し難くできるため、排水される油分濃度は低くなり、排水処理槽への負荷低減を図ることができる。
【0019】
また、他の手段は、前記油水分離室天井を分離し、取外し可能な蓋構造にしたことを特徴とする特徴とするものである。
【0020】
この手段により、油水分離室内の清掃、点検等のメンテナンス性が高まる。さらに油水分離室内に傾斜板などの分離促進装置を設置することができる。
【0021】
また、他の手段は、油水分離室の天井は、浮上油回収室に近づくにつれて上り勾配となる形状にしたことを特徴とするものである。
【0022】
この手段により、油水分離室上部に溜った浮上油が油回収室に進入しやすくなるので、回収する油分量が多くなり分離性能を高めることができる。
【0023】
また、他の手段は、油水分離室天井壁面に、浮上した油分を浮上油回収室の入口へ導くガイドを設けたことを特徴とするものである。
【0024】
この手段により、油水分離室上部に残留する浮上油が少なくなり、回収する油分量が多くなり分離性能を高めることができる。
【0025】
また、他の手段は、油水分離タンクの油分混合廃液注水口を浮上油回収室入口と対向する油水分離室側面の下部または側面近傍の底面に設けたことを特徴とするものである。
【0026】
この手段により、浮上油分離距離が長くなり、廃液排水室に浮上油が進入しにくくなるので、排水される油分濃度が低くなり、排水処理槽への負荷低減を図ることができる。
【0027】
また、他の手段は、定量送水器具と油水分離タンク間に配管を接続し、その先端に送気手段を設け、油分混合廃液貯留槽から油水分離タンクへ油分混合廃液を送水完了後、送気手段により油水分離タンクへ空気を送ることを特徴とするものである。
【0028】
この手段により、浮上油の水位が空気の流入によって上昇し、油水分離タンク内の油をさらに回収することができるので、分離タンク内の残留油量を低減させることができる。
【0029】
また、他の手段は、油分混合廃液貯留槽から油水分離タンクへ油分混合廃液を送水完了後、油分混合廃液貯留槽に洗浄水を注水する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【0030】
この手段により、油分混合廃液貯留槽底部と配管内に残留する油分混合廃液中の油を除去することができ、分離性能の向上が図れ、かつ残留油が除去できれば、嫌気性の細菌が繁殖して悪臭を発生する原因を取り除くことができる。
【0031】
また、他の手段は、油分混合廃液貯留槽への洗浄水注水は、複数回行うことを特徴とするものである。
【0032】
この手段により、油分混合廃液貯留槽底部と配管内に残留する油分混合廃液中の油の除去量をさらに多くすることができ、分離性能の向上が図れ、かつ残留油が除去できれば、嫌気性の細菌が繁殖して悪臭を発生する原因を取り除くことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の油水分離装置によれば、油分混合廃液中の油を、比重差を利用して分離回収する油水分離タンクを備えた油水分離装置において、任意流量の廃液を順次油水分離タンクへ送水する定量送水手段を備え、油水分離タンク内を流れの方向に前段と後段に二分割し、前段は、油と廃液を上下に分離する油水分離室とし、油水分離タンクには、上面を閉鎖する天井壁面を設け、後段は、さらに流れの方向に水平方向に二分割し、一方を浮上した油が流入する浮上油回収室とし、他方は浮上油を分離し残った廃液が流入する廃液排水室とし、また、浮上油回収室の入口は油水分離室の天井壁面と同じ高さに配置し、廃液排水室の入口は油水分離室の下部に配置し、さらに浮上油回収室内には装置外へ通ずる油回収口を油水分離室の天井壁面より高い位置に設け、廃液排水室には装置外へ通ずる廃液排水口を油水分離室天井壁面より高く、かつ油回収口よりも低い位置に設けた構造としたことにより、定量送水器具の運転のみで油の分離回収と排水を一度にかつ同時に行えるので、装置のコンパクト化、省メンテナンス化を図ることができる。また、油水分離室上部と油回収室間に段差がなく、浮上油が壁面を伝い進入しやすくなるので、回収する油分量が多くなり分離性能を高めることができ、低油分濃度で排水できるので排水処理槽への負荷低減を図ることができる。また回収油中に廃液が混入せず廃棄物量を削減できるので廃棄物処理費を低減できる油水分離装置を提供することができる。
【0034】
また、定量送水器具の上流側に油分混合廃液貯留槽を設け、定量送水手段への排出口を底面または側面の下部に設けたことにより、洗浄廃液回収タンク内で浮上分離した油をかき混ぜることなく、低濃度から随時高濃度の油を油水分離タンクへ送水することができるので、油水分離タンク内での分離効率を高めることができる油水分離装置を提供することができる。
【0035】
また、浮上油回収室の水平断面積は、廃液排水室の水平断面積よりも小さくしたことにより、浮上油分離室内に流入した浮上油層の厚みが増し、廃液との水位差が大きくなるので分離性能を高めることができる油水分離装置を提供することができる。
【0036】
また、浮上油回収室に設けた前記油回収口を浮上油回収室の水平断面中央に設け、且つ上向きに開口し、浮上油液面が開口高さを超えた場合に、前記排出管内へ下向きに溢水するように配置したことにより、浮上油液面の上層のみを排出することができるので、回収する油分濃度が高くなり分離性能を高めることができる油水分離装置を提供することができる。
【0037】
また、廃液排水室に設けた廃液排水口の水平断面形状を廃液排水室の水平断面形状の略相似形としたことにより、廃液排水室壁面と廃液排水口の距離を一定にでき、壁面に付着する浮上油を排水し難くできるため、排水される油分濃度を低くすることができる油水分離装置を提供することができる。
【0038】
また、油水分離室天井を分離し、取外し可能な蓋構造にしたことにより、油水分離室内の清掃、点検等のメンテナンス性が高まる。さらに油水分離室内に傾斜板などの分離促進装置を設置することができる油水分離装置を提供することができる。
【0039】
また、油水分離室の天井は、浮上油回収室に近づくにつれて上り勾配となる形状にしたことにより、油水分離室上部に溜った浮上油が油回収室に進入しやすくなるので、回収する油分量が多くなり分離性能を高めることができる油水分離装置を提供することができる。
【0040】
また、油水分離室天井壁面に、浮上した油分を浮上油回収室の入口へ導くガイドを設けたことにより、油水分離室上部に残留する浮上油が少なくなり、回収する油分量が多くなり分離性能の高い油水分離装置を提供することができる。
【0041】
また、油水分離タンクの油分混合廃液注水口を、浮上油回収室入口と対向する前記油水分離室側面の下部または側面近傍の底面に設けたことにより、浮上油分離距離が長くなり、廃液排水室に浮上油が進入しにくくなるので、排水される油分濃度を低くすることができる油水分離装置を提供することができる。
【0042】
また、定量送水器具と油水分離タンク間に配管を接続し、その先端に送気手段を設け、油分混合廃液貯留槽から油水分離タンクへ油分混合廃液を送水完了後、送気手段により油水分離タンクへ空気を送ることにより、浮上油の水位が空気の流入によって上昇し、油水分離タンク内の油をさらに回収することができるので、分離タンク内の残留油量を低減させることができる油水分離装置を提供することができる。
【0043】
また、油分混合廃液貯留槽から油水分離タンクへ油分混合廃液を送水完了後、油分混合廃液貯留槽に洗浄水を注水する制御手段を備えたことにより、油分混合廃液貯留槽底部と配管内に残留する油分混合廃液中の油を除去することができ、分離性能の向上が図れ、かつ残留油の除去により、嫌気性の細菌が繁殖して悪臭を発生する原因を取り除くことができる油水分離装置を提供することができる。
【0044】
また、油分混合廃液貯留槽への洗浄水注水は、複数回行うことにより、油分混合廃液貯留槽底部と配管内に残留する油分混合廃液中の油の除去量をさらに多くすることができ、分離性能の向上が図れ、かつ残留油が除去できるので、嫌気性の細菌が繁殖して悪臭を発生する原因を取り除くことができる油水分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
図1から図7を用いて本実施の形態1による油水分離装置について説明をおこなう。
【0047】
図1は本実施の形態の油水分離装置の構成を示す概略図であり、図2は同装置の油水分離タンクの構造を示す三面図、図3は同装置油水分離タンクの油水分離室天井と浮上油回収室及び廃液排水室の関係を表したA−A断面詳細図、図4は同装置油水分離タンクの浮上油回収室と油回収口及び廃液排水室と廃液排水口を示す平面図、図5は同装置油水分離タンクを縦断面し、油水分離室天井の形状を示した正面図、図6は同装置油水分離タンクの油水分離室天井壁面に設けたガイドを示す斜視図、図7は同装置の斜視図で定量送水手段と油水分離タンク間に接続した配管から、油水分離タンクへ空気を送る手段を示している。
【0048】
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施の形態の油水分離装置は、分離対象となる油分混合廃液を一旦貯留する油分混合廃液貯留槽1と、油分混合廃液(以降、廃液)を油分と水分とに分離する油水分離タンク3およびそれらを連通する送水配管21とで構成されている。送水配管21の途上には、廃液を送る定量送水器具2が備えられている。油分混合廃液貯留槽1の底面または側面の下部には、油分混合廃液排出口11が設けられ、送水配管21に接続されている。送水配管21は混合液体の粘性や目詰まりを考慮し、直径10mm以上を使用している。尚、油水分離タンク3の容量は対象混合液体の全量が注水される油分混合廃液貯留槽1の容量の1/8程度としている。さらに定量送水器具2の流量は、油分混合廃液貯留槽1に注水される対象の廃液の全量を2時間から24時間掛けて送水する流量に設定可能としている。
【0049】
また、図2、3に示すように、油水分離タンク3の内部は、流れの方向に前段と後段に二分割している。その前段は、油と廃液を上下に分離する油水分離室4とし、そして後段はさらに流れの方向に水平方向に二分割し、一方を浮上した油が流入する浮上油回収室5とし、他方は浮上油を分離し残った廃液が流入する廃液排水室6としている。油水分離室4は、油水分離室天井42で塞がれている。この油水分離室天井42の天井面(油水分離室天井壁面42a)と同じ高さに浮上油回収室5への入口(浮上油回収室入口51)が設けられている。一方、廃液排水室6の入口(廃液排水室入口61)は油水分離室4の下部に設けられている。さらに、浮上油回収室5の内部には装置外へ通ずる油回収口52を油水分離室天井壁面42aより高い位置に設けられている。また、廃液排水室6の内部には、同様に装置外へ通ずる廃液排水口62が油水分離室天井壁面42aより高く、かつ油回収口52よりも低い位置に設けられている。
【0050】
次に本実施の形態の上記構成による作用を説明する。
【0051】
廃液は、工場や変電所またはガソリンスタンド等で発生した油分と水分の混合した液体である。以下、油分と水分が混合した廃液として説明するが、比重差のある混合液体であれば同様の効果を得る。この廃液は、油分混合廃液貯留槽1に一旦貯留され、定量送水器具2を介して油分混合廃液排出口11から油水分離タンク3(油水分離室4)の洗浄廃液注水口41に送水配管21を通り送水される。油水分離室4では、下流側に流れるに従って比重の小さい油分が浮上油として上側に、比重の大きい水分が廃液として下側に分離されることになる。上側に分離した浮上油は、油水分離室天井壁面42a付近に滞留することになるが、その油水分離室天井壁面42aとほぼ同じ高さに設けた浮上油回収室入口51から浮上油回収室5に流入することになる。一方、下側に分離した廃液(水分を多く含むもの)は、廃液排水室入口61から廃液排水室6に流入する。続いて油水分離室4で分離した浮上油及び廃液は、各々の流入量に応じて、浮上油回収室5および廃液排水室6の水位(液面)を個別に上昇させ、油回収口52または廃液排水口62の高さを越えた場合に油排出管53、廃液排出管63に落下し油を回収または廃液を排水することになる。
【0052】
このように、比重差を利用して分離された油分と水分は、浮上油回収室5と廃液排水室6とに分離される。油水分離室4では、水面を油水分離室天井壁面42aでふさがれた状態になっていたが、分離された後に液面が開放されることになる。浮上油回収室5では、下側に設けた浮上油回収室入口51から浮上油が流入し、さらに浮上した部分だけが油回収口52から排出されることになるので、油分の割合の高い回収油となるのである。
【0053】
なお、廃液排水室6よりも浮上油回収室5の水平断面積を小さくすれば、浮上油回収室5内部の浮上油層の厚みが増し、洗浄廃液との水位差が大きくなり分離性能が高まる。
【0054】
また、ここでは、油水分離室4の後段に浮上油回収室5と廃液排水室6を各1室ずつ設けているが、更に後段に浮上油回収室5と廃液排水室6を複数連続して設け、最も後段の浮上油回収室5と廃液排水室6より油回収及び廃液排水をすれば、分離性能が高まる。
【0055】
さらにここでは、油回収口52は浮上油回収室5の水平断面中央に設け、且つ上向きに開口し、浮上油液面が開口高さを超えた場合に、油排出管53へ下向きに溢水するように配置しており、これにより浮上油液面の上層のみが排出可能になり、回収する油分濃度が高くなる。
【0056】
また、油水分離室4の洗浄廃液注水口41は、浮上油回収室入口51と対向する油水分離室4の側面下部または側面近傍の底面に設けている。これにより浮上油分離距離が長くなり、廃液排水室6に浮上油が流入しにくくなるため、排水される油分濃度が低くなる。
【0057】
また、図4に示すように、廃液排水室6に設けた廃液排水口62の水平断面形状を廃液排水室6の水平断面形状の略相似形にしているので、廃液排水室壁面64と廃液排水口62の距離を一定にでき、廃液排水室壁面64に付着する浮上油を排水し難くできるため、排水される油分濃度が低くなる。
【0058】
また、図5に示すように、油水分離室天井42は、浮上油回収室5に近づくにつれて上り勾配となる形状にしているので、油水分離室4の上部に溜った浮上油は油水分離室天井壁面42aを伝い、浮上油回収室5に進入しやすくなるため、回収する油分量が多くなり分離性能が高まる。
【0059】
尚、油水分離室天井42は油水分離室4から分離し、取外し可能な蓋構造にすれば、油水分離室4の内部の清掃、点検等のメンテナンス性が高まり、かつ油水分離室4の内部に傾斜板などの分離促進装置43を設置することができる。
【0060】
また、図6に示すように、油水分離室天井壁面42aに、浮上した油分を浮上油回収室5の入口(浮上油回収室入口51)へ導く浮上油回収ガイド42bを設ける。この浮上油回収ガイド42bは、油水分離室天井壁面42aに滞留する油分のとおる部分が浮上油回収室入口51に向けて徐々に狭くなる形状となっている。この浮上油回収ガイド42bにより、油水分離室4の上部に溜った浮上油がさらに浮上油回収室5に流入しやすくなり、回収する油分量が多くなり分離性能が高まることになる。
【0061】
また、図7に示すように、定量送水器具2と油水分離タンク3の間に、油水分離タンク3へ空気を送る送気装置7を設ければ、浮上油回収室5の内部に油分より比重の小さい空気が侵入するため、浮上油水位を押し上げ、油回収量が増加するので油水分離タンク3内部の残留油量を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の油水分離装置は、工場や変電所またはガソリンスタンド等で発生する油分混合水の処理において、集水槽等から放流する際に、水質汚濁防止法の排水基準値を満たす油分に浄化する策として使用する油水分離装置、あるいは工場等で金属の切削や研磨等のクーラントの処理、または設備や工作物等に付着した油を洗浄した際に発生する比較的油分濃度の高い油分混合洗浄廃水を排水処理槽へ送水する前処理として油分を分離回収し、排水処理槽の負荷を低減する策として使用する油水分離装置などにおいて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1による油水分離装置の構成を示す概略図
【図2】同装置の油水分離タンクの構造を示す三面図(a)正面図、(b)側面図、(c)平面図
【図3】同装置の油水分離タンクの油水分離室天井と浮上油回収室及び廃液排水室の関係を表したA−A断面詳細図
【図4】同装置の油水分離タンクの浮上油回収室と油回収口及び廃液排水室と廃液排水口を示す平面図
【図5】同装置の油水分離タンクを縦断面し、油水分離室天井の形状を示した正面図
【図6】同装置の油水分離タンクの油水分離室天井壁面に設けたガイドを示す斜視図
【図7】同装置の定量送水手段と油水分離タンク間に接続した配管から、油水分離タンクへ空気を送る手段を示す斜視図
【符号の説明】
【0064】
1 油分混合廃液貯留槽
2 定量送水器具
3 油水分離タンク
4 油水分離室
5 浮上油回収室
6 廃液排水室
7 送気装置
11 油分混合廃液排出口
21 送水配管
41 洗浄廃液注水口
42 油水分離室天井
42a 油水分離室天井壁面
42b 浮上油回収ガイド
43 分離促進装置
51 浮上油回収室入口
52 油回収口
53 油排出管
61 廃液排水室入口
62 廃液排水口
63 廃液排出管
64 廃液排水室壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分混合廃液中の油を、比重差を利用して分離回収する油水分離タンクを備えた油水分離装置において、任意流量の廃液を順次油水分離タンクへ送水する定量送水手段を備え、前記油水分離タンク内を流れの方向に前段と後段に二分割し、前段は、油と廃液を上下に分離する油水分離室とし、前記油水分離タンクには、上面を閉鎖する天井壁面を設け、後段は、さらに流れの方向に水平方向に二分割し、一方を浮上した油が流入する浮上油回収室とし、他方は浮上油を分離し残った廃液が流入する廃液排水室とし、また、前記浮上油回収室の入口は前記油水分離室の天井壁面と同じ高さに配置し、前記廃液排水室の入口は前記油水分離室の下部に配置し、さらに前記浮上油回収室内には、装置外へ通ずる油回収口を前記油水分離室の天井壁面より高い位置に設け、前記廃液排水室には、装置外へ通ずる廃液排水口を前記油水分離室天井壁面より高く、かつ前記油回収口よりも低い位置に設けたことを特徴とする油水分離装置。
【請求項2】
前記定量送水器具の上流側に油分混合廃液貯留槽を設け、前記油分混合廃液貯留槽の底面または側面の下部に、前記定量送水手段への排出口を設けたことを特徴とする請求項1記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記浮上油回収室の水平断面積は、前記廃液排水室の水平断面積よりも小さくしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記浮上油回収室に設けた前記油回収口は、前記浮上油回収室の水平断面中央に設けられ、且つ上向きに開口し、浮上油液面が開口高さを超えた場合に、前記排出管内へ下向きに溢水するように配置したことを特徴とする請求項1〜3いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記廃液排水室に設けた前記廃液排水口の水平断面形状は、前記廃液排水室の水平断面形状の略相似形としたことを特徴とする請求項1〜4いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項6】
前記油水分離室の天井は、取外し可能な蓋構造にしたことを特徴とする請求項1〜5いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項7】
前記油水分離室の天井は、前記浮上油回収室に近づくにつれて上り勾配となる形状にしたことを特徴とする請求項1〜6いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項8】
前記油水分離室天井壁面に、浮上した油分を前記浮上油回収室の入口へ導くガイドを設けたことを特徴とする請求項1〜7いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項9】
前記油水分離タンクの油分混合廃液注水口を、前記浮上油回収室入口と対向する前記油水分離室側面の下部または前記側面近傍の底面に設けたことを特徴とする請求項1〜8いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項10】
前記定量送水器具と前記油水分離タンク間に配管を接続し、その先端に送気手段を設け、前記油分混合廃液貯留槽から前記油水分離タンクへ油分混合廃液を送水完了後、前記送気手段により前記油水分離タンクへ空気を送ることを特徴とする請求項1〜9いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項11】
前記油分混合貯留槽から前記油水分離タンクへ油分混合廃液を送水完了後、前記油分混合廃液貯留槽に洗浄水を注水する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜10いずれかひとつに記載の油水分離装置。
【請求項12】
前記油分混合廃液貯留槽への洗浄水注水は、複数回行うことを特徴とした請求項11記載の油水分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−131516(P2010−131516A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309400(P2008−309400)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】