説明

油滴分散液の製造方法

【課題】油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである油滴分散液を、安定操作で、しかも高い生産性で製造することができる方法を提供する。
【解決手段】油滴分散液の製造方法は、粘度が10〜200mPa・sである高分子水溶液からなる流動する水性成分に、該水性成分で周囲が覆われるように液体の油性成分を合流させるステップと、上記水性成分及び上記油性成分の合流体をマイクロ流路22に流通させることにより油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである油滴分散液を得るステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油滴分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油滴の体積平均粒径が100μm以上である油滴分散液を化粧料等に用いる場合、油滴が視認されるために油滴径分布の単分散性が高いことが要求される。この要求を満足する油滴分散液の製造方法としてマイクロ流路を利用する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1及び2には、交差するように設けられた一対のマイクロ流路の一方に水性成分及び他方に油性成分をそれぞれ流通させ、それらの交差部において水性成分に油性成分を分散させる油滴分散液の製造方法が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、同心軸状に設けられた外側管及び内側管の前者に油性成分及び後者に水性成分をそれぞれ流通させると共にそれらを合流させ、それを特殊な方法で作製したPDMS(ポリジメチルシロキサン)製の装置のマイクロ流路(オリフィス)に流通させる水滴分散液の製造方法が開示されている。
【特許文献1】国際公開2002/068104号パンフレット
【特許文献2】特開2004−122107号公報
【非特許文献1】Shoji Takeuchi et al., Advanced Materials 2005, 17, No.8, 1067-1072
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された方法では、油性成分がマイクロ流路の壁面に接触した状態で油滴を生成するため、長時間継続して行うと壁面が油性成分で濡れやすくなり、その結果、油滴径の制御が困難になることがある。
【0006】
また、非特許文献1に開示された方法は、ヘキサデカンからなる油性成分で周囲が覆われるように水性成分を合流させたものであり、さらにこの油性成分の粘度が低いので、安定操作の観点から少流量で運転を行う必要があり、高い生産性を得ることができない。
【0007】
従って、安定操作と高い生産性とを両立するためには、マイクロ流路を多数並設しなければならず、この場合、装置コストの高さやメンテナンスの煩雑さといった問題が懸念される。
【0008】
本発明の目的は、油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである油滴分散液を、安定操作で、しかも高い生産性で製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の油滴分散液の製造方法は、
粘度が10〜200mPa・sである高分子水溶液からなる流動する水性成分に、該水性成分で周囲が覆われるように液体の油性成分を合流させるステップと、
上記水性成分及び上記油性成分の合流体をマイクロ流路に流通させることにより油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである油滴分散液を得るステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水性成分の粘度が10〜200mPa・sであるため、界面張力に基づく自発的な油滴生成が可能であると共に、油滴同士の衝突等による油滴の合一や対流渦の発生に起因する高剪断力が作用することによる油滴の微細化が抑制され、また、油性成分の周囲が水性成分で覆われた合流体をマイクロ流路に流通させるため、油性成分がマイクロ流路の壁面に接触しないので、流量が多くても安定した油滴の生成が可能である。つまり、油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである油滴分散液を、安定操作で、しかも高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施形態について説明する。
【0012】
(油滴分散液の製造システムA)
図1は、油滴分散液の製造システムAを示す。
【0013】
この油滴分散液の製造システムAは、マイクロミキサー100と液供給系等の付帯部とで構成されている。
【0014】
マイクロミキサー100は、一対の液流入部101及び単一の液流出部102を有する。
【0015】
一対の液流入部101の一方には、水性成分を貯蔵するための第1貯槽31aから延びた第1供給管32aが接続されている。第1供給管32aには、水性成分を流通させるための第1ポンプ33a、水性成分の流量を検知するための第1流量計34a及び水性成分の夾雑物を除去するための第1フィルタ35aが上流側から順に介設されており、第1流量計34aと第1フィルタ35aとの間の部分に水性成分の圧力を検知するための第1圧力計36aが取り付けられている。第1ポンプ33a、第1流量計34a及び第1圧力計36aのそれぞれは、流量コントローラ37に電気的に接続されている。
【0016】
一対の液流入部101の他方には、油性成分を貯蔵するための第2貯槽31bから延びた第2供給管32bが接続されている。第2供給管32bには、油性成分を流通させるための第2ポンプ33b、油性成分の流量を検知するための第2流量計34b及び油性成分の夾雑物を除去するための第2フィルタ35bが上流側から順に介設されており、第2流量計34bと第2フィルタ35bとの間の部分に油性成分の圧力を検知するための第2圧力計36bが取り付けられている。第2ポンプ33b、第2流量計34b及び第2圧力計36bのそれぞれは、流量コントローラ37に電気的に接続されている。
【0017】
流量コントローラ37は、水性成分の設定流量及び設定圧力の入力が可能に構成されていると共に演算素子が組み込まれており、水性成分の設定流量情報、第1流量計34aで検知された流量情報及び第1圧力計36aで検知された圧力情報に基づいて第1ポンプ33aを運転制御するように構成されている。同様に、流量コントローラ37は、油性成分の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、油性成分の設定流量情報、第2流量計34bで検知された流量情報及び第2圧力計36bで検知された圧力情報に基づいて第2ポンプ33bを運転制御するように構成されている。
【0018】
マイクロミキサー100の液流出部102は製品貯層38に繋がっている。製品貯層38には熱交換器や温調ジャケット等の冷却手段が設けられていてもよい。
【0019】
図2(a)〜(c)は、マイクロミキサー100の具体的構成の一例を示す。
【0020】
このマイクロミキサー100は、配管の一部分を構成するように設けられた液流通管10とその液流出側に連続して設けられた液合流分散部20とを備えている。
【0021】
液流通管10は、大径管12とそれに同心状に導入・挿通された1本の小径管13との二重管構造に構成されている。この液流通管10では、大径管12の内側で且つ小径管13の外側の部分の水性成分流路11aと小径管13の内側の部分の油性成分流路11bとの2つの液流路が管内部に相互に並行に延びて長さ方向に沿うように構成されている。そして、大径管12の流入部が一方の液流入部101に構成され、液流通管10の外部に露出した小径管13の流入部が他方の液流入部101に構成されている。二重管構造の液流通管10を有するこのようなマイクロミキサー100は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0022】
大径管12及び小径管13のそれぞれは、その流路断面形状が円形に形成されている。但し、特にこれに限定されるものでなく、例えば、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。大径管12は、内径D1が例えば3〜12mmであり、小径管13は、内径D2が例えば1〜5mmである。
【0023】
液合流分散部20は、液流通管10の液流出端に連続した内部領域を形成しており、この内部領域が液合流部21を構成している。液合流部21は、液流動方向の長さL1が例えば0.5〜5mmであり、容量が例えば0.001〜4mLである。
【0024】
液合流分散部20には、液合流部21に連続して設けられたマイクロ流路22が穿孔されており、また、マイクロ流路22に連続して流路拡大部23が設けられている。そして、この流路拡大部23が液流出部102に構成されている。ここで、本出願において「マイクロ流路」とは、流路の各箇所における水力相当直径dの最小値が0.05mm以上1mm以下である流路をいう。
【0025】
液合流部21におけるマイクロ流路22に連続する部分は、図3(a)に示すように流路径が不連続に縮小した構成であってもよく、また、図3(b)に示すように流路径がベンチュリ管状に連続的に縮小した構成であってもよい。後者の場合、その部分の長さL2は例えば1〜30mmである。
【0026】
マイクロ流路22は、その流路断面形状が円形に形成されている。但し、特にこれに限定されるものでなく、例えば、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。
【0027】
マイクロ流路22は、水力相当直径dが0.3〜1.0mm、或いは、流路面積sが0.05〜1.0mmであるのが好ましく、流路面積sが0.05〜0.6mmであるのが更に好ましい。また、マイクロ流路22は、流路長さlが0.6〜150mmであるのが好ましい。さらに、マイクロ流路22は、流路内で安定な層流を得ることができるという観点から、流路長さ/水力相当直径(l/d)が3〜500が好ましく、30〜300であることがさらに好ましい。
【0028】
マイクロ流路22は、その材質については、安定な油滴の生成を行う観点から、油性成分に濡れにくい物性を有するものが好ましい。具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンの共重合体)などのフッ素樹脂や、ステンレスやガラスなどの水との接触角が90°以下の材質が挙げられる。これらのうち、得られる液滴の粒径の単分散性の観点から、ガラスを用いることがさらに好ましい。
【0029】
マイクロ流路22は、水性成分流路11a及び油性成分流路11bの延びる方向と同一方向に延びるように形成されている。但し、特にこれに限定されるものでなく、それらの延びる方向と異なる方向に延びるように形成されていてもよい。マイクロ流路22は、横方向に延びるように形成されていてもよく、また、上下方向に延びるように形成されていてもよく、さらに、斜め方向に延びるように形成されていてもよい。なお、上下方向又は斜め方向に延びるように形成されたマイクロ流路22は、液流動の向きが上から下向きであってもよく、また、下から上向きであってもよい。
【0030】
流路拡大部23は、その流路断面形状が円形に形成されている。但し、特にこれに限定されるものでなく、例えば、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等であってもよい。流路拡大部23は、内径D3が例えば1.5〜12mmである、或いは、開放系である。
【0031】
流路拡大部23におけるマイクロ流路22から連続する部分は、図4(a)に示すように流路径が不連続に拡大した構成であってもよく、また、図4(b)に示すように流路径がベンチュリ管状に連続的に拡大した構成であってもよく、さらに、図4(c)に示すように鉛直下向きに延びるマイクロ流路22が開放された流路拡大部23に連続した構成であってもよい。図4(b)に示す構成の場合、その部分の長さL3は例えば20mm以下である。
【0032】
流路拡大部23には、製品貯層38に向かって延びる回収管が接続されていてもよく、また、その回収管にアルカリ添加手段が設けられていてもよい。
【0033】
なお、この例では、小径管13が1本である構成としたが、図5(a)及び(b)に示すように小径管13が複数本である構成であってもよい。
【0034】
(油滴分散液の製造方法)
次に、この油滴分散液の製造システムAを用いた油滴分散液の製造方法について説明する。
【0035】
この油滴分散液の製造方法は、粘度が10〜200mPa・sである高分子水溶液からなる流動する水性成分に、水性成分で周囲が覆われるように液体の油性成分を合流させ、その合流体をマイクロ流路22に流通させることにより油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである油滴分散液を得るものである。
【0036】
<水性成分及び油性成分>
水性成分は、粘度が10〜200mPa・sである、好ましくは20〜100mPa・sである高分子水溶液である。粘度は、B型粘度計を用いて回転数60r/mの条件で測定されるものである(参照 JIS Z8803、K7117−1等)。水性成分がこのような粘度範囲であることにより、界面張力に基づく自発的な油滴生成が可能であると共に、油滴同士の衝突等による油滴の合一や対流渦の発生に起因する高剪断力が作用することによる油滴の微細化が抑制され、安定した油滴の生成が可能となる。
【0037】
ここで、水性成分に含まれる水溶性高分子は、合成高分子であってもよく、また、天然高分子であってもよい。かかる水溶性高分子としては、水への溶解の容易さ、粘度調整の容易さ、及び必要に応じて製品の粘度を高める処理の施しやすさの観点から、カルボキシル基を有するものが好ましく、カルボキシル基を有するアクリル系高分子やアルギン酸ナトリウム、カルボキシルメチルセルロースなどの多糖類等が挙げられる。アクリル系高分子としては、例えば、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))共重合体(例えば、日光ケミカルズ社製 商品名:CARBOPOL)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN)、アクリル酸系共重合体(例えば、ローム&ハース社製 商品名:ACULYN)等が挙げられる。これらの中でも、得られる油滴分散液のpHを調整することにより容易に増粘安定化を図ることができるという観点からカルボキシル基を有するアクリル系高分子が好ましく、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN)が最も好ましい。水溶性高分子は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0038】
水溶性高分子の濃度は上記の水性成分の粘度が実現されるのであれば特に限定されないが、例えば0.02〜5質量%である。
【0039】
水は、例えば、イオン交換水、蒸留水等である。
【0040】
水性成分には、粘度や界面張力に悪影響を与えない範囲で、水との混和性のある有機溶剤、防腐剤、塩類、界面活性剤、その他有効成分が含まれていてもよい。
【0041】
油性成分は、水と混じりあわない液体である。なお、油性成分は、常温固体のものであってもよく、その場合、操作時に温度を融点以上とすることにより液体として扱う。
【0042】
油性成分は、水との界面張力が10mN/m以上であり、粘度が40mPa・s以下である物性を有するものが好ましい。かかる油性成分としては、具体的には、常温液体のものでは、ジメチコーン、環状シリコーン、スクワラン、植物油、エステル油等が挙げられ、常温固体のものでは、パーム油、牛脂、炭素数14〜22の高級アルコール、セレシンなどの鉱物油等が挙げられる。油性成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種の混合物で構成されていてもよい。
【0043】
油性成分には、その他に親油性界面活性剤や有機溶剤が含まれていてもよい。
【0044】
<油滴分散液の製造>
上記の油滴分散液の製造システムAを稼働させると、第1ポンプ33aは、水性成分を、第1貯槽31aから第1供給管32aを介し、第1流量計34a及び第1フィルタ35aを順に経由させてマイクロミキサー100の一方の液流入部101に継続的に供給する。第1流量計34aは、検知した水性成分の流量情報を流量コントローラ37に送る。また、第1圧力計36aは、検知した第1圧力計36aの圧力情報を流量コントローラ37に送る。
【0045】
第2ポンプ33bは、油性成分を、第2貯槽31bから第2供給管32bを介し、第2流量計34b及び第2フィルタ35bを順に経由させてマイクロミキサー100の一方の液流入部101に継続的に供給する。第2流量計34bは、検知した油性成分の流量情報を流量コントローラ37に送る。また、第2圧力計36bは、検知した第2圧力計36bの圧力情報を流量コントローラ37に送る。
【0046】
続いて、流量コントローラ37は、水性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第1流量計34aで検知された流量情報及び第1圧力計36aで検知された圧力情報に基づいて、水性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第1ポンプ33aを運転制御する。それと共に、流量コントローラ37は、油性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第2流量計34bで検知された流量情報及び第2圧力計36bで検知された圧力情報に基づいて、油性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第2ポンプ33bを運転制御する。
【0047】
マイクロミキサー100では、水性成分流路11aを流通した水性成分と油性成分流路11bを流通した油性成分とが、液合流部21において、水性成分で周囲が覆われるように油性成分が合流した後、それらの合流体がマイクロ流路22に流入し、そして、マイクロ流路22において、その合流体が層流状態に流通して流路拡大部23に流出する。
【0048】
ここで、水性成分の温度については、例えば5〜95℃とすることが好ましい。油性成分の温度については、油性成分が液体状態となる温度であって、例えば5〜95℃とすることが好ましい。このとき、必要に応じて油滴分散液の製造システムA全体を加温してもよい。
【0049】
水性成分及び油性成分のそれぞれの圧力設定については、送液の圧力が例えば0.005〜0.5MPaとなるようにすることが好ましい。
【0050】
水性成分及び油性成分のそれぞれの流量設定については、生産性及び流動安定性の観点から、マイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量を0.2〜20L/hとすることが好ましく、0.3〜8L/hとすることがより好ましい。また、水性成分に対する油性成分の体積比については、好ましい油滴の体積平均粒径及び粒径分布を得ることができるという観点から、油性成分/水性成分=1/99〜40/60とすることが好ましく、3/97〜20/80とすることがより好ましい。
【0051】
そして、マイクロミキサー100の液流出部102である流路拡大部23からは油滴の体積平均粒径が100〜1000μm(好ましくは100〜600μm)である油滴分散液が流出し、それが製品貯層38に回収される。
【0052】
このとき、必要に応じて液流出部102から流出した油滴分散液を冷却してもよい。また、得られた油滴分散液の分散安定性を高めるために油滴分散液を増粘させてもよい。かかる粘度調製操作は、例えば、流路拡大部23から製品貯層38に向かって延びる回収管或いは製品貯層38において、水性成分に含まれる水溶性高分子としてカルボキシル基を有するアクリル系高分子を用いた場合には、水酸化ナトリウム水溶液などを添加してpH調整を行うことにより、また、水溶性高分子としてアルギン酸ナトリウムを用いた場合には、炭酸亜鉛水溶液などの多価金属塩を添加することにより行うことができる。
【実施例】
【0053】
以下に、各種構成の油滴分散液を製造して行った試験評価について説明する。なお、その概要を表1にも示す。
【0054】
【表1】

【0055】
(油滴分散液の製造)
<実施例1>
図6(a)に示すような二重管構造を有するSUS316製のマイクロミキサー100を備えた図1に示すのと同様の構成の油滴分散液の製造システムAを用いた。なお、第1及び第2ポンプ33a、33bとして、ギアポンプ(Zenith社製)を用いた。
【0056】
マイクロミキサー100は、液流通管10において、大径管12の内径D1が4.4mmであり、小径管13の外径が3.2mm及び内径D2が1.6mmである。マイクロミキサー100は、液合流分散部20において、液合流部21におけるマイクロ流路22に連続する部分が、流路径が不連続に縮小した構成を有し、また、流路拡大部23におけるマイクロ流路22から連続する部分も、流路径が不連続に拡大した構成を有する。マイクロ流路22は、流路断面形状が円形に形成されており、内径dが0.5mm(流路面積sが0.20mm)、流路長さlが30mm、流路長さ/内径(l/d)が60である。また、流路拡大部23は、流路断面形状が円形に形成されており、内径D3が4.4mmである。
【0057】
第1貯槽31aに、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN TR-2)の0.11質量%高分子水溶液を水性成分として調製準備した。この高分子水溶液は、B型粘度計を用いて回転数60r/mの条件で測定した粘度が40mPa・sであった。また、第2貯槽31bに、スクワランを油性成分として準備した。このとき、水性成分及び油性成分をそれぞれ20℃に調温した。
【0058】
そして、20℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記水性成分及び油性成分を、体積割合(油性成分/水性成分)=12/88並びにマイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が2.0L/hとなるように供給した。
【0059】
マイクロミキサー100から回収された油滴分散液をサンプル瓶に採取した後、これに0.5M水酸化カリウムを滴下してpH7.0に調製することにより増粘安定化させた油滴分散液を実施例1とした。
【0060】
<実施例2>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22の流路長さlが100mm、及び流路長さ/内径(l/d)が200である点を除いて実施例1と同様にして得られた油滴分散液を実施例2とした。
【0061】
<実施例3>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22が流路断面形状が円形に形成されており、その内径dが0.5mm(流路面積sが0.20mm)、流路長さlが2mm、及び流路長さ/内径(l/d)が4である図6(b)に示すようなオリフィス状に形成されている点、並びにマイクロミキサー100に対し、上記水性成分及び油性成分を、マイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が3.0L/hとなるように供給した点を除いて実施例1と同様にして得られた油滴分散液を実施例3とした。
【0062】
<実施例4>
マイクロミキサー100に対し、上記水性成分及び油性成分を、マイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が6.0L/hとなるように供給した点を除いて実施例3と同様にして得られた油滴分散液を実施例4とした。
【0063】
<実施例5>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22がガラス製であって、その流路拡大部23の内径D3が6.0mmである点を除いて実施例1と同様にして得られた油滴分散液を実施例5とした。なお、流路拡大部23は、マイクロ流路22に続いて接続された透明ビニールホースにより構成した。
【0064】
<実施例6>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22の流路長さlが100mm、及び流路長さ/内径(l/d)が200である点を除いて実施例5と同様にして得られた油滴分散液を実施例6とした。
【0065】
<実施例7>
マイクロミキサー100に対し、上記水性成分及び油性成分を、マイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が3.0L/hとなるように供給した点を除いて実施例6と同様にして得られた油滴分散液を実施例7とした。
【0066】
<実施例8>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22が図6(c)に示すように鉛直下向きに延びて解放された流路拡大部23に連続した構成である点を除いて実施例7と同様にして得られた油滴分散液を実施例8とした。
【0067】
<実施例9>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22の最細部の内径が0.34mmである図6(d)に示すようなベンチュリ管状に形成され(液合流部21におけるマイクロ流路22に連続的に流路が縮小する部分の長さL2が24mm、マイクロ流路22の長さが40mm、及び流路拡大部23におけるマイクロ流路22から連続的に流路が拡大する部分の長さL3が16mm)、そして、流路拡大部23の内径D3が4.0mmである点を除いて実施例7と同様にして得られた油滴分散液を実施例9とした。
【0068】
<実施例10>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製である点を除いて実施例2と同様にして得られた油滴分散液を実施例10とした。
【0069】
<実施例11>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22の内径dが0.8mm(流路面積sが0.50mm)、流路長さlが50mm、及び流路長さ/内径(l/d)が62.5である点、水性成分として、アクリル酸系共重合体(ローム&ハース社製 商品名:ACULYN 22)の0.6質量%高分子水溶液に0.5M水酸化カリウムを滴下してpH6.4に調製したものであって、粘度が27mPa・sのものを用いた点、並びにマイクロミキサー100に対し、上記水性成分及び油性成分を、体積割合(油性成分/水性成分)=6/94並びにマイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が0.5L/hとなるように供給した点を除いて実施例1と同様にして得られた油滴分散液を実施例11とした。
【0070】
<実施例12>
水性成分として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN TR-2)の0.15質量%高分子水溶液であって、粘度が92mPa・sのものを用いた点、並びにマイクロミキサー100に対し、上記水性成分及び油性成分を、マイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が2.0L/hとなるように供給した点を除いて実施例11と同様にして得られた油滴分散液を実施例12とした。
【0071】
<実施例13>
マイクロミキサー100のマイクロ流路22が流路断面形状が円形に形成されており、その内径dが0.3mm(流路面積sが0.07mm)、流路長さlが1mm、及び流路長さ/内径(l/d)が3.3である図6(b)に示すようなオリフィス状に形成されており、その流路拡大部23の内径D3が1.6mmである点、並びにマイクロミキサー100に対し、上記水性成分及び油性成分を、マイクロ流路22を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が0.5L/hとなるように供給した点を除いて実施例12と同様にして得られた油滴分散液を実施例13とした。
【0072】
<比較例1>
水性成分として粘度1mPa・sの水を用い、サンプル瓶への採取の後にpH調製を行わなかった点を除いて実施例6の場合と同様の操作を行ったところ、サンプル瓶に採取するまでに既にほとんどの油滴が合一し、サンプル瓶への採取後には油水分離した。
【0073】
<比較例2>
水性成分として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN TR-2)の0.11質量%高分子水溶液に0.5M水酸化カリウムを滴下して粘度が300mPa・sとなるように調整したものを用いたことを除いて比較例1と同様の操作を行ったところ、大部分の油性成分は液滴とならずに油水分離した状態であった。
【0074】
(試験評価方法)
<油滴の体積平均粒径>
実施例1〜13のそれぞれについて、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所社製 LA−910)を用いて油滴の体積平均粒径、および面積平均粒径を求めた。
【0075】
<分散度>
実施例1〜13のそれぞれについて、体積平均粒径と面積平均粒径の比(体積平均粒径÷面積平均粒径)を計算することにより分散度を求めた。
【0076】
(試験評価結果)
表1に試験結果を示す。
【0077】
油滴の体積平均粒径は、実施例1が387μm、実施例2が368μm、実施例3が313μm、実施例4が131μm、実施例5が433μm、実施例6が405μm、実施例7が349μm、実施例8が390μm、実施例9が169μm、実施例10が399μm、実施例11が162μm、実施例12が252μm、実施例13が282μmであった。
【0078】
分散度は、実施例1が1.59、実施例2が1.58、実施例3が1.66、実施例4が2.12、実施例5が1.33、実施例6が1.21、実施例7が1.32、実施例8が1.17、実施例9が1.61、実施例10が1.46、実施例11が1.33、実施例12が1.37、実施例13が1.42であった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、化粧料等に使用される油滴分散液の製造方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】油滴分散液の製造システムの構成を示す図である。
【図2】マイクロミキサーを示す(a)縦断面図、(b)図2(a)におけるIIB-IIB横断面図及び(c)図2(a)におけるIIC-IIC横断面図である。
【図3】(a)及び(b)は液合流部の上流側部分の縦断面図である。
【図4】(a)〜(c)は液合流部の下流側部分の縦断面図である。
【図5】マイクロミキサーの変形例を示す(a)縦断面図及び(b)図5(a)におけるVB-VB横断面図である。
【図6】(a)〜(d)は実施例で用いたマイクロミキサーの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
22 マイクロ流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が10〜200mPa・sである高分子水溶液からなる流動する水性成分に、該水性成分で周囲が覆われるように液体の油性成分を合流させるステップと、
上記水性成分及び上記油性成分の合流体をマイクロ流路に流通させることにより油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである油滴分散液を得るステップと、
を備えた油滴分散液の製造方法。
【請求項2】
上記マイクロ流路の流路面積は0.05〜1mmであり、且つ該マイクロ流路を流通する上記水性成分及び上記油性成分の合計流量を0.2〜20L/hとする請求項1に記載された油滴分散液の製造方法。
【請求項3】
上記高分子水溶液に含まれる高分子がカルボキシル基を有する請求項1又は2に記載された油滴分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−142725(P2010−142725A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322237(P2008−322237)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】