説明

油脂風味を増強する調味料

【課題】油脂風味を増強する調味料及び油脂風味を増強する方法を提供する。
【解決手段】水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理しスプレードライヤーにて乾燥することにより得られる調味料を、食品固形分に対して0.1〜1.0重量%含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂風味を増強する調味料及び油脂風味を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、毎日の食習慣の積み重ねによって引き起こされる生活習慣病が注目されている。生活習慣病にはいくつかの原因が考えられ、例えば、人間は必要なカロリーを吸収する必要があるが、その摂取量が過剰となると、特に脂質は過剰に摂取すると脂肪細胞に蓄積しやすくなり、肥満の大きな原因になる事が知られている。
【0003】
そこで、これら肥満等を予防する目的で、味質を損なうことがなく、低カロリー化、脂肪代替組成物等が検討されてきた。
例えば、体脂肪の蓄積を抑制・防止するための、脂肪酸ショ糖エステルあるいは脂肪酸とエリストールとのエステル化合物(例えば特許文献1)、中鎖脂肪酸トリグリセライドあるいはその誘導体類(例えば特許文献2)、あるいは油脂代替としての、澱粉、ホエー蛋白質、動物性蛋白質、あるいは特定の粒子径、表面の疎水度をもつ炭酸カルシウム等の微細粒子等(例えば特許文献3)が、報告されている。
【0004】
又、特許文献4には、食用固形脂を用いた低カロリー化用調味料についても報告されており、この調味料は、香味油であった。
しかしながら、これら代替物等の効果は限定的であったり、あるいは原料として食用固形脂を使った調味料であったりすることから、脂を原料とせず、また味質を損なわない調味料の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3600186号、特開2003−253293号公報
【特許文献2】特開2004−156046号公報、特開2005−65645号公報、特開2005−171237号公報
【特許文献3】特開平6−113748号公報、特開平6−189699号公報、特開2001−218550号公報、特開2001−269143号公報、特開2005−192506号公報
【特許文献4】特開2007−259836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粉末調味料として食品に用いることができ、また一般的に汎用されている食用油脂を調理に用いながら、その調理品の油脂風味を増強することができる調味料及びその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究の結果、粉末調味料を用いながら油脂の風味を増強する方法を見いだし、本発明を完成した。すなわち本発明は、
(1)水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理することにより得られる調味料、
(2)水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理することにより得られる油脂風味を増強する調味料、
(3)上記1乃至2記載の調味料を食品固形分に対して0.1〜1.0重量%含有させることを特徴とする油脂風味の増強方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の調味料および方法は、粉末調味料として食品に用いることができ、また一般的に汎用されている食用油脂を用いながら、その油脂風味を増強することができる。またそのことにより、食品の油脂風味を落とさずに、カロリーを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス、グルタチオン含有酵母エキス、野菜エキス、及び単糖類を含有した水溶液又は水懸濁液を加熱処理するものである。
【0010】
本発明で用いられる5’−ヌクレオチド含有酵母エキスは、酵母を温熱水で抽出した抽出物、あるいは酵母にタンパク質分解酵素、細胞壁溶解酵素などを添加して得られた抽出物を、核酸分解酵素、必要に応じてアデニル酸分解酵素を作用させることにより得られる、5’−ヌクレオチド類、具体的には5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム、5’−ウリジル酸ナトリウム、5’−シチジル酸ナトリウム、5’−アデニル酸ナトリウム、を含有したもので、これら5’−ヌクレオチド類を合計で4重量%以上、好ましくは20重量%以上含有したものが望ましい。
【0011】
本発明で用いられるグルタチオン含有酵母エキスは、グルタチオン含有酵母を、温熱水で抽出する方法、タンパク質分解酵素、細胞壁溶解酵素などを添加して抽出する方法、酵母中の酵素を利用して自己消化により抽出する方法、等で得られる、グルタチオンを1重量%以上、好ましくは3重量%以上含有したものである。
【0012】
これら酵母エキスに用いられる酵母としては、食品あるいは食品添加物として用いられる酵母で、例えばパン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などを挙げることができ、中でもトルラ酵母が好ましい。
【0013】
本発明で用いられる野菜エキスは、野菜から得られたエキスで、例えば、キャベツエキス、オニオンエキス、にんじんエキス、セロリエキス、ほうれん草エキスあるいはこれらの混合物等を例示することができるが、中でもオニオンエキスが特に好ましい。
【0014】
本発明で用いられる単糖類としては、還元性単糖類が好ましく、例えばキシロース、リボース、グルコース、フルクトース、アラビノース等を例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を併せて用いてもよい。また、このような単糖類を含有する液糖を用いることもできる。
【0015】
調味料は、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス、グルタチオン含有酵母エキス、野菜エキス、単糖類を混合、溶解した水溶液又は水懸濁液を加熱することにより製造される。
本発明において、他の成分として、食塩等無機塩類やデキストリンも添加することもできる。
【0016】
加熱反応は、水に各成分を添加し、70〜150℃、好ましくは90〜120℃、10分から2時間程度で十分である。加熱反応は密封系で実施することが望ましい。
各成分の添加量は任意であるが、水100重量部に対して、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、単糖類0.05〜0.6重量部とする。単糖類がこれより多いと、肉様の風味が強くなり、油脂風味増強効果が低減する。
【0017】
加熱反応終了後、乾燥、例えばスプレードライヤー等で、粉末状として容易に取得することができる。なお、乾燥時に食塩、デキストリン等を添加して乾燥することができる。あるいはそのまま濃縮してペースト状とすることができる。
【0018】
本発明で得られる調味料は、広い分野に応用でき、スープ類、調味料類、ふりかけ類、インスタント食品やスナック食品類、缶詰食品類、その他広範な食品に用いることで、油脂風味を増強させる効果がある。
添加量については、特に制限はなく、食品の種類等によっても異なるが、概ね食品に対して0.1〜1.0重量%程度添加することが望ましい。
【実施例】
【0019】
以下、実施例で、本発明を具体的に説明する。
実施例1
5'−ヌクレオチド含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルド、5'−ヌクレオチド含有量36%)18重量部、グルタチオン含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルドU−15、グルタチオン含有量15%)7重量部、アスコルビン酸0.2重量部、キシロース0.2重量部、オニオンパウダー2重量部、ガーリックパウダー0.6重量部、食塩4重量部、デキストリン32重量部を水36重量部に溶解し、95℃、40分加熱反応した。反応終了後、反応液をスプレードライヤーにて乾燥し、調味料を得た。
【0020】
比較例1
5'−ヌクレオチド含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルド、5'−ヌクレオチド含有量36%)18重量部、グルタチオン含有酵母エキス(興人製、酵母エキスアロマイルドU−15、グルタチオン含有量15%)7重量部、アスコルビン酸0.2重量部、キシロース1.2重量部、オニオンパウダー2重量部、ガーリックパウダー0.6重量部、食塩4重量部、デキストリン32重量部を水35量部に溶解し、95℃、40分加熱反応した。反応終了後、反応液をスプレードライヤーにて乾燥し、調味料を得た。
【0021】
評価例1
表1に示す組成で、実施例1、比較例1、対照区のチャーハンの素をつくり、表1に示す具材とご飯を炒め、最後に各チャーハンの素を混ぜてチャーハンを作製した。実施例1、比較例1の調味料は、作製されたチャーハンに対し、0.1%含有されている。各チャーハンを一晩冷凍し、その後解凍の為に電子レンジ(500W)で1分間加熱し、官能試験を行った。
【0022】
【表1】

【0023】
官能試験はパネラー10名を用い、評価項目について対照区と比較して、それぞれ下記の5段階数値で答えさせ、その数値の平均値を表2に示した。
評価項目・・・(ア)油脂の風味、(イ)肉様の風味
+2:対照区よりかなり強く感じる
+1:対照区よりやや強く感じる
0:対照区とほぼ同等に感じる
−1:対照区よりやや弱く感じる
−2:対照区よりかなり弱く感じる
評価項目・・・(ウ)総合的な風味
+2:対照区よりかなり美味しく感じる
+1:対照区よりやや美味しく感じる
0:対照区とほぼ同等に感じる
−1:対照区よりやや美味しくないと感じる
−2:対照区よりかなり美味しくないと感じる
【0024】
【表2】

【0025】
表2に示したとおり、実施例1の調味料を用いて調理したチャーハンは、油脂の風味、特にラードで炒めたような風味が引き立ち、対照区と比べると明らかに油脂を多く使用したように感じられ、総合的な風味も美味しいものであった。一方、比較例1の調味料を用いて調理したチャーハンは、肉様の風味がやや強すぎ、実施例1のものと比べると油脂の風味は弱く感じられた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明してきたように、本発明の調味料は、粉末調味料として食品に用いることができ、また一般的に使用されている食用油脂を用いながら、その油脂風味を増強することができる。本発明で得られる調味料は、広い分野に応用でき、スープ類、調味料類、ふりかけ類、インスタント食品やスナック食品類、缶詰食品類、その他広範な食品に用いることで、少量の油脂でも満足感の得られる風味となる。そのため、ダイエット食品のようなカロリーを抑えた食品にも好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理することにより得られる調味料。
【請求項2】
水100重量部に、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス35〜100重量部、グルタチオン含有酵母エキス5〜30重量部、野菜エキス2〜20重量部、及び単糖類0.05〜0.6重量部を添加した水溶液又は水懸濁液を加熱処理することにより得られる、油脂風味を増強する調味料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の調味料を食品固形分に対して0.1〜1.0重量%含有させることを特徴とする、食品の油脂風味の増強方法。

【公開番号】特開2010−68725(P2010−68725A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237248(P2008−237248)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】