説明

治療、診断およびクロマトグラフィーに使用するためのタンパク質複合体

本発明は、γ−クリスタリンまたはユビキチンに基づく少なくとも1つのポリペプチド分子と少なくとも1つの機能性成分との間の共有結合を含む複合体に関する。さらに、本発明は、前記複合体の調製のための方法、ならびに診断、治療およびクロマトグラフィーにおける前記複合体の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ−クリスタリンまたはユビキチンに基づく1以上のポリペプチド分子と1以上の機能性成分との間における共有結合を含む複合体に関する。さらに、本発明は、前記複合体の製造方法、ならびに、診断、治療およびクロマトグラフィーにおける前記複合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−II−クリスタリンは、β−γ−クリスタリンファミリーに属し、脊椎動物において、偏在的に分布する眼の水晶体の構造タンパク質である(非特許文献1)。前記β−γ−クリスタリンは、構造的に同一な2つのドメイン、および、主にβシート構造からなるという特徴を有する、高度に相同なタンパク質ファミリーを形成する(非特許文献2)。β−γ−クリスタリンの重ね合わせ構造のモチーフは、グリークキー形態と呼ばれる。それは、4つの逆平行のβ鎖からなり、その内の2つ(一方が他方に横たわる)が、クリスタリンの1つのドメインを形成する(非特許文献3)。
【0003】
クリスタリンの本来の機能は、860mg/mLに達する極めて高い局所タンパク質濃度により達成される、眼の水晶体における高屈折率の発生に基づいている(非特許文献4)。それらの空間構造により、クリスタリンは、高いプロテアーゼ耐性を有する、非常に安定した可溶性タンパク質である。さらに、眼の水晶体内における局在は、γ−クリスタリンがタンパク質ターンオーバーの影響を受けないという効果を有する。従って、β−γ−クリスタリンは、最も長い半減期を有するタンパク質として知られている(非特許文献5)。
【0004】
このタンパク質ファミリーの中で最も優れた特性を有するのが、ウシのγ−クリスタリンである。その空間構造は、異なる解像度で、野生型タンパク質および全範囲の点変異を決定できる(非特許文献6;非特許文献4;非特許文献7)。このことは、前記タンパク質が、2つのドメイン間の疎水性間隙を介して安定化されていることを示している。この間隙は、N末端ドメインにおける3残基およびC末端ドメインにおける形態的に同一の3残基からなる6つの疎水性残基の分子内相互作用により形成される(非特許文献8)。化学薬品に対する安定性は、主に、前記2つのドメインに結合する短いペプチドに大きく依存する(非特許文献9)。
【0005】
前記ウシγ−クリスタリンは、分子量約20kDaで、並外れた高い安定性により特徴付けられる。それは、中性pHで8M尿素に耐性を示す。pH1〜9の範囲において、天然状態で存在し(非特許文献10;非特許文献11)、75℃に達する温度でさえ、前記タンパク質は7M尿素に安定である(非特許文献12)。E.coliにおけるγ−クリスタリンの組換え細胞質発現は、非常に高収率で成功している(非特許文献9)。
【0006】
高い安定性、低分子量、高い細胞質発現率というタンパク質の化学的特性により、γ−クリスタリンのタンパク質クラスは、代替結合分子の発生のための有力な候補になり得る。
【0007】
ファージミドライブラリー(GCUC1)は、足場タンパク質としてのウシγ−II−クリスタリンに基づいてFiedler&Rudolphにより確立され、表面に露出した2、4、6、15、17、19、36および38部位(開始メチオニンを除く)の8つのアミノ酸が、DNAレベルでランダム化された。ファージディスプレイ法により数回の選択を行った後、μMの範囲でエストラジオールへの特異的な結合および親和性を有するバリエーションが検出された。これらの結果は、ウシγ−II−クリスタリンにおいて、新しく発生される前には存在しなかった結合特性を示しており、前記γ−クリスタリンは、前記代替結合分子の単離のための足場タンパク質として、一般的に適していることを示している(特許文献1参照)。
【0008】
後の研究において、新しいライブラリが、ヒトγ−II−クリスタリンに基づいて確立された。前記足場タンパク質としてのヒトγ−II−クリスタリンの選択、および、新しいライブラリの付随的構成は、重要な利点を有する。
1.ウシタンパク質と比較して、ヒトγ−II−クリスタリンは、変性作用に対して著しく高い安定性を有している。
2.ヒト由来タンパク質は、治療的応用において、各変異の免疫原生が非常に低いという結果をもたらす。そして、
3.より高度な複雑性を有する新しく構築されたライブラリは、さらに高い親和性を有する結合分子の単離を可能とするであろう(非特許文献13)。
前記GCUC1ライブラリと同様に、同じ8個のアミノ酸部位(開始メチオニンを除く、2、4、6、15、17、19、36および38部位)が、ランダム化のために選択された。新しいライブラリCR20は、それぞれ独立した理論上5×10通りの変異体を有するヒトγ−II−クリスタリンに基づき、特許文献1に記載された方法で確立され、前記ライブラリにおいて変異体は約130倍で表される。200以上の独立した変異体をシークエンスした後、全変異体の80%以上が、前記8箇所のランダム化部位においてのみ置換を有することがわかった。さらに、3番目のコドン部位を除く置換部位における変異の配列は、可能性のある全てのヌクレオチドと、ほとんど同一の分布を示した。このように、前記8箇所のランダム化部位における全32の可能性のあるコドンを有するこのライブラリは、質が高い。
【0009】
代替結合分子の生産に使用される第2の足場タンパク質は、ヒトユビキチンから作製される。ユビキチンは、小型、単量体、その配列で高く保存された細胞質タンパク質であり、原生動物から脊椎動物まで全ての公知真核生物の細胞において存在する。
【0010】
ユビキチンのペプチド鎖は、76個のアミノ酸からなり、非常にコンパクトなα/β構造に折りたたまれている(非特許文献14)。ポリペプチド鎖のほぼ87%が、水素結合を介した2次構造要素の形成に関与している。著名な2次構造として、3.5α−へリックスターン、および、5本鎖からなる逆平行βシートが、報告されている。これらの要素(逆平行βシートは、その裏面上においてタンパク質表面に露出し、αヘリックスは、その上部において垂直に横たわって詰め込まれる)の特性の変化は、一般的に、いわゆる、ユビキチン様折りたたみモチーフと考えられている。他の構造的特性は、α−へリックスとβシートとの間における前記タンパク質の内部の、著しい疎水性領域である。
【0011】
サイズが小さいために、ユビキチンの人工調製は、化学合成およびバイオテクノロジーの手段の両方により行うことができる。好ましい折りたたみ特性のために、ユビキチンは、例えば、E.coliのような微生物を用いた遺伝子工学により、細胞質または細胞膜周辺腔において比較的大量に生産できる。
【0012】
単純で効率的な微生物調製のため、ユビキチンは、その生産に問題がある他の外来タンパク質のための融合パートナーとして使用できる。ユビキチンに対する融合手段によって溶解度が改善し、それにより、改善した収量が達成される(非特許文献15)。
【0013】
コンピュータ分析を用いた結晶構造の利用可能なデータ(PDBデータベースエントリー1UBI)に基づくと、ユビキチン足場タンパク質におけるこれらのアミノ酸の部位は、表面、すなわち、溶媒または可能な結合パートナーに対して露出される側鎖に局在する。選択された部位は、第1アミノ末端βシート鎖のはじめ(2、4、6部位)、ループ(62、63部位)、および、カルボキシ末端βシート鎖のはじめ(64、65、66部位)において、それぞれ空間的に接近して局在化し、それらのアミノ酸側鎖によりユビキチン表面の接触領域が形成される。このようにして、表面が露出した高頻度可変領域が、まだ変化していないユビキチンのタンパク質構造上の分析領域において、ランダムなアミノ酸置換により発生した(国際特許出願/EP2004/005730号、未発行)。
【0014】
βシートタンパク質上での人工的な結合表面の発生は、従来の抗体に対する、新規で興味深い代替性を示す。γ−II−クリスタリンまたはユビキチン様のタンパク質表面における新規で人工的に発生させた結合部位が、結果として、機能性結合分子をもたらすことの証明が得られた(特許文献1)(国際特許出願/EP2004/005730号、未発行)。
【0015】
しかしながら、今まで、2つの成分のうちの1つの機能または両成分の機能の損失を受けることなく、診断、治療および分析応用に有用性を与える複合体を形成するために、他の成分に対してこれらのポリペプチド分子をカップリングすることは示唆がなかった。
【特許文献1】ドイツ公開特許第19932688A1号公報
【非特許文献1】Jaenicke, R., and Slingsby, C. (2001). Lens crystallins and their microbial homologs: structure, stability, and function. Crit Rev Biochem Mol Biol 36, 435-499.
【非特許文献2】Wistow, G. J., and Piatigorsky, J. (1988). Lens crystallins: the evolution and expression of proteins for a highly specialized tissue. Annu Rev Biochem 57, 479-504.
【非特許文献3】Blundell, T., Lindley, P., Miller, L., Moss, D., Slingsby, C., Tickle, I., Turnell, B., and Wistow, G. (1981). The molecular structure and stability of the eye lens: x-ray analysis of gamma-crystallin II. Nature 289, 771-777.
【非特許文献4】Kumaraswamy, V. S., Lindley, P. F., Slingsby, C., and Glover, I. D. (1996). An eye lens protein-water structure: 1.2 angstrom resolution structure of gamma B-crystallin at 150K. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 52, 611.
【非特許文献5】Jaenicke, R. (1996). Stability and folding of ultrastable proteins: eye lens crystallins and enzymes from thermophiles. Faseb J 10, 84-92.
【非特許文献6】Najmudin, S., Nalini, V., Driessen, H. P., Slingsby, C., Blundell, T., Moss, D., and Lindley, P. (1993). Structure of bovine gB (g II)-crystalline at 1.47 angstrom. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49, 223-233.
【非特許文献7】Norledge, B. V., Mayr, E. M., Glockshuber, R., Bateman, O. A., Slingsby, C., Jaenicke, R., and Driessen, H. P. (1996). The X-ray structures of two mutant crystallin domains shed light on the evolution of multi-domain proteins. Nat Struct Biol 3, 267-274.
【非特許文献8】Wistow, G., Turnell, B., Summers, L., Slingsby, C., Moss, D., Miller, L., Lindley, P., and Blundell, T. (1983). X-ray analysis of the eye lens protein gamma-II crystallin at 1.9 A resolution. J Mol Biol 170, 175-202.
【非特許文献9】Mayr, E. M., Jaenicke, R., and Glockshuber, R. (1994). Domain interactions and connecting peptides in lens crystallins. J Mol Biol 235, 84-88.
【非特許文献10】Rudolph, R., Siebendritt, R., Nesslauer, G., Sharma, A. K., and Jaenicke, R. (1990). Folding of an all-beta protein: independent domain folding in gamma II-crystallin from calf eye lens. Proc Natl Acad Sci U S A 87, 4625-4629.
【非特許文献11】Sharma, A. K., Minke-Gogl, V., Gohl, P., Siebendritt, R., Jaenicke, R., and Rudolph, R. (1990). Limited proteolysis of gamma II-crystallin from calf eye lens. Physicochemical studies on the N-terminal domain and the intact two-domain protein. Eur J Biochem 194, 603-609.
【非特許文献12】Jaenicke, R. (1994). Eye-lens proteins: structure, superstructure, stability, genetics. Naturwissenschaften 81, 423-429.
【非特許文献13】Ling, M. M. (2003). Large antibody display libraries for isolation of high-affinity antibodies. Comb Chem High Throughput Screen 6, 421-432.
【非特許文献14】Vijay-Kumar, S., Bugg, C. E., and Cook, W. J. (1987). Structure of ubiquitin refined at 1.8 A resolution. J Mol Biol 194, 531-544.
【非特許文献15】Butt, T. R., Jonnalagadda, S., Monia, B. P., Sternberg, E. J., Marsh, J. A., Stadel, J. M., Ecker, D. J. and Crooke, S. T. (1989) Ubiquitin fusion augments the yield of cloned gene products in Escherichia coli. PNAS 86, 2540-2544.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、γ−クリスタリンまたはユビキチンに基づくポリペプチドと機能性成分との複合体であって、それぞれのポリペプチド分子が、野性型ポリペプチドと比較して変化したリガンドに対する特異的結合のための結合特性を有し、互いに結合した後、前記複合体の両成分が、維持されたそれらの機能、または、このようなカップリングにより増強されたそれらの機能を有する。
【0017】
本発明の他の目的は、このような複合体が、同定され、調製され、および、その機能特性を試験できることによる方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的は、独立項の主題により達成される。好ましい実施形態は、従属項に見られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、例えば、タンパク質(発色団タンパク質(色素タンパク質)および酵素)、マトリクス(例えば、デキストラン、ポリメタクリル酸、アガロース、セファロース、ポリスチレン誘導体およびセルロース)および小分子(例えば、蛍光標識、ビオチン、ジゴキシゲニン、放射性同位元素および抗生物質)のような様々な分子に対する、γ−クリスタリンおよびユビキチンに基づく新規結合タンパク質の部位特異的および選択的な非方向性(undirected)のカップリングに関する。これらのいわゆるAffilin(商標)分子は、タンパク質のβシート構造における結合領域の新たな設計により特徴づけられる。このように、これらは、自然界において結合性タンパク質のもっとも著名な種類である抗体とは異なる。抗体の場合、結合領域は、タンパク質の可動性ループ領域(CDR’s)に局在する。Affilin(商標)と抗体との間における他の相違は、分子のサイズである。本発明の複合体の第1成分の基礎として使用される2つのポリペプチドは、それぞれ、分子量20kDa(γ−クリスタリン)および分子量10kDa(ユビキチン)である。一方、抗体は、150kDa(IgG)の分子量である。
【0020】
本発明は、これらのポリペプチドおよびそれぞれの結合パートナーからの複合体の調製方法、および、異なる応用におけるそれらの使用も含んでいる。また、驚いたことに、これらのカップリング手法は、前記カップリングパートナーの生物学的活性の損失だけでなく、リガンドに対するポリペプチドの結合特性の損失も起こらないという結果を示す。
【0021】
本発明の具体例として、BIACOREシステムにおけるデキストランマトリクス、蛍光染料Oyster(商標)556、色素タンパク質フィコエリスリン(PE)および西洋わさびペルオキシダーゼ酵素に対する前記ポリペプチド成分のカップリング、ならびに、アフィニティークロマトグラフィーに使用するための支持基材に対するポリペプチドの固定が、記載されている。本発明によれば、前記カップリングは、前記ポリペプチド、例えば、タンパク質の求核性側鎖に対して直接的に、または、C末端ペプチドリンカーに対するターゲット法により行われた。驚くことに、前記カップリング法は、両方の足場タンパク質に適応でき、これらの分子の結合特性の機能障害を起こさなかった。前記相対的に小さなポリペプチド分子(それぞれ、10および20kDa)が、それらの結合活性を維持したまま、大きなタンパク質、例えば、フィコエリスリン(240kDa)に対して、結合されたことは、特に期待されていなかった。
【0022】
驚いたことに、この方法において得られた複合体は、Affilin(商標)分子の結合能力を制限せず、対照的に、巨視解離定数(アビディティー効果)の増加が、ポリペプチド分子の他の利用可能性(例えば、治療)を与える、ある複合体で確認された。さらに、これらのポリペプチド分子は、水に不溶性のマトリクスにカップリングした後でも、結合活性を示し、尿素、グアニジウム、エタノール、水酸化ナトリウムまたは塩酸のような変性試薬で処置した後に、再生、例えば、前記結合特性が回復されることがわかった。
【0023】
γ−クリスタリンおよびユビキチンに基づく分子の構造データの詳細な分析は、リジン残基の特別なターゲティングにより、非特異的なカップリング選択を与える可能性を提供した。構造分析は、γ−クリスタリンにおいて、リジンがタンパク質のC末端ドメインに存在することを示しており、このため、カップリングに適している(図1)。ユビキチンにおいても、このようなリジン残基の同定は可能であった。しかしながら、これらのカップリングストラテジーを実行する前に、結合領域に別のリジンがないことを、確認しなければならない。
【0024】
本発明のために、IgG Fc(ヒト由来)またはproNGFに対して特異的に結合するポリペプチドが、ヒトγ−クリスタリンライブラリ(CR20)から選択され、NGF−結合ポリペプチドは、ヒトユビキチンライブラリ(UB10)から選択され、これらは続いて精製された。システインを含む規定の長さの特異的なC末端ペプチドリンカーの導入により、結合活性の機能障害なしに選択的なカップリングが得られる方法で、ペプチド分子の修飾が可能であった。効果的なカップリングのため、全ての残存する露出システインを除去する必要がある。ポリペプチド分子の非特異的なカップリング方法により、驚いたことに、前記ポリペプチドの結合活性を維持することが可能であり、さらに、アビディティー手段により親和性の向上が達成でき、そのため、診断および治療のための非常に魅力的なポリペプチドベースの分子複合体を調製することが可能となった。
【0025】
このような代替結合分子は、治療、診断およびクロマトグラフィーにおける多くの使用を見出す。様々なパートナーに対するポリペプチドのカップリングにより、使用の幅広い分野が、これらの新しい結合分子のために提供されるであろう。
【0026】
本発明は、特に下記の側面と実施形態を含む。第1の側面によれば、本発明は、下記の成分を含む複合体に関する。
ユビキチンまたはγ−クリスタリンに基づく1以上のポリペプチド(I)であって、対応する野生型ポリペプチドと比較して新たに発生または変化させた、リガンドに特異的に結合するための結合特性をそれぞれ有するポリペプチドと、
それに共有結合的に結合される1以上の機能性成分(II)とを含み、
前記(II)に対する前記(I)のカップリング後、全ての成分の機能性が維持されている、複合体。
【0027】
言い換えれば、本発明の複合体は、ユビキチンまたはγ−クリスタリンを野生型の形態では含まないが、特異的なリガンドに適応した形態でのみ含む。この特異的に適応した形態は、野生型の形態と比較して、変化させた(向上させた)または新たに発生させた、各リガンドに対する結合特性を提供する。γ−クリスタリンまたはユビキチンに基づくポリペプチドの共通の原理として、両方において、関心のあるリガンドに対する特異的な結合を可能にするため、βシート構造上に人工的な結合表面を発生させることが指摘されるだろう。そこで、人工的な結合表面を提供するための少なくとも1つのβシート構造の存在は、本発明の必須の特徴である。
【0028】
この状況において、複合体とは、翻訳後の、他の成分へのポリペプチド分子の共有結合を意味し、このため、例えば、遺伝子レベルにおけるポリペプチドの融合とは異なる。融合ポリペプチドは、いわゆる融合の結果である。
【0029】
本発明によれば、ユビキチンに基づく前記ポリペプチド分子は、ユビキチン様タンパク質のタンパク質スーパーファミリーのタンパク質、ユビキチン様折りたたみモチーフを有するタンパク質、ならびに、それらの断片または融合タンパク質からなる群から選択されることが好ましい。前記断片または融合タンパク質は、βシート領域の少なくとも1つのβシート鎖および任意に非βシート領域を含むタンパク質の少なくとも1つの表面露出領域における1以上のアミノ酸修飾による、ユビキチン様折りたたみモチーフを有する。前記タンパク質は、それぞれ、所定の結合パートナーまたはリガンドに対する結合親和性を有しており、前記結合親和性は、ユビキチン様折りたたみモチーフが保持されなければ、存在しない。
【0030】
従って、本発明は、それぞれユビキチン様折りたたみモチーフを有する、“ユビキチン様タンパク質”のタンパク質スーパーファミリーのタンパク質、ユビキチン様折りたたみモチーフを有するタンパク質、および、それらの断片または融合タンパク質からなる群から選択されたものが、置換、挿入、欠損、化学的修飾または結合により修飾されたタンパク質を含む。この修飾によって前記タンパク質は、以下の方法により得られる前には存在しなかった、所望の結合パートナーに関する結合親和性を示す:
a)修飾されたタンパク質の選択
b)結合パートナーの決定
c)βシート領域の少なくとも1つのβシート鎖および任意に非βシート領域を含むタンパク質の少なくとも1つの表面露出領域におけるアミノ酸の選択
d)ユビキチン様折りたたみモチーフが保持される間、置換、挿入、欠損および/または化学的な修飾により、選択されたアミノ酸の修飾
e)工程b)において決定された結合パートナーへの前記修飾タンパク質の接触
f)工程b)において決定された結合パートナーへの結合親和性を有するタンパク質の検出
【0031】
さらに、前述のユビキチンに基づく修飾タンパク質の製造およびこれらの修飾タンパク質の使用のための各方法が、記載されている。
【0032】
従って、本発明の複合体において、使用されるユビキチンに基づくポリペプチド分子(I)は、本出願において言及されるユビキチン様折りたたみモチーフをそれぞれ有するタンパク質またはポリペプチドの修飾により調製されることが好ましい。これらは、“ユビキチン様タンパク質”のタンパク質スーパーファミリーのタンパク質、ユビキチン様折りたたみモチーフを有する全てのタンパク質、ならびに、ユビキチン様モチーフを有していることを条件に、これらのタンパク質の断片または融合タンパク質を含む。これらの各タンパク質またはポリペプチドを基準として、本来のタンパク質またはポリペプチドにおける1つ以上のアミノ酸が修飾される。特に、前記修飾は、アミノ酸の置換だけでなく、少なくとも1つ以上のアミノ酸の挿入および欠損、ならびに、アミノ酸の化学的な修飾を含んでいる。これらの修飾は、タンパク質の少なくとも1つの表面露出領域において、修飾されることで行われる。少なくとも1つのアミノ酸の修飾は、βシート領域の少なくとも1つのβシート鎖を含む。前記βシート鎖は、前記結合パートナーまたはリガンドのそれぞれに接近(露出)するために、前記タンパク質の表面に局在しなければならず、決定され得る親和性により、前記修飾タンパク質に結合することが可能である。本発明の別の実施形態において、βシート領域のβシート鎖における前記変異に加えて、非βシート領域もまた、修飾される。好ましくは、影響を与えるため、特に、予定された結合パートナーに対する結合親和性を増加させ、これにより特異性を増強させるために、表面が露出されていることが好ましい。
【0033】
1つ以上のアミノ酸の修飾のため、本来公知の様々な技術が、当業者に利用可能である。これらは、下記において、より詳細に述べられるであろう。加えて、Ausuebel et al.,1994、Sambrook et al.,1989の刊行物を参照にすることが可能である。
【0034】
前記ユビキチンの非表面露出のコア領域のアミノ酸の修飾は、既に公知である(Finucane et al.,1999;Lazar et al.,1997)。ここでの変異は、溶媒や可能性のある結合パートナーに接近することができないため、疎水性コア内の局在に起因して、結合に関与しない部位を対象とする。
【0035】
“前には存在しなかった結合特性”、“新規に産出された人工的な結合部位”および“野生型タンパク質と比較して変化させたリガンドへの特異的な結合のための結合特性”という用語の意味は、それぞれ、本発明の文脈において、下記のように説明できる。これらの用語は、修飾された領域における修飾タンパク質が、予定された結合パートナーまたは前記ユビキチンの本来の結合パートナーに対する結合特性をこれまで示していないことを意味すると解される。
【0036】
リガンドとして定義できる前記結合パートナーは、本発明における前記修飾タンパク質に対する測定可能な親和性を有する。本発明によれば、形成された複合体の解離定数K=10−5M以下は、定量化できる結合特性の存在、すなわち、パートナーが結合される親和性の存在のための最小値として見なすことができる。応用に依存して、10−6M〜10−12Mの値が好ましく、より好ましくは、例えば、クロマトグラフィーへの応用には、10−7M〜10−11Mの値、または例えば、診断もしくは治療への応用には、10−9M〜10−12Mの値である。さらに好ましい結合親和性は、10−7M〜10−10Mの範囲、好ましくは、10−11Mまでである。前記結合親和性の決定方法は、本来公知であり、以下においてさらに述べられる。
【0037】
本発明における修飾は、アミノ酸の置換、挿入、欠損または化学的な修飾を意味することを意図している。
【0038】
本発明における修飾されたタンパク質として、“ユビキチン様タンパク質”のスーパーファミリーのタンパク質が使用できる。本発明によれば、このスーパーファミリーは、Murzinら(1995)においてリストアップされたサブグループを含む。これらは、例えば、前記“ユビキチン関連タンパク質”、“UBXドメイン”、“GABARAP様”、“RAS−結合ドメイン”等のタンパク質ファミリーを含んでいる。好ましくは、“ユビキチン関連タンパク質”のタンパク質ファミリーのタンパク質が使用される。本発明によれば、それらのタンパク質は、ユビキチン様折りたたみモチーフを有するタンパク質からなる。これらの例は、SUMO−1、FAU、NEDD−8、UBL−1およびGDXならびにRub1、APG8、ISG15、URM1、HUB1、エロンギンB、PLIC2(N−末端ドメイン)、ヒトのパーキン(N−末端ドメイン)である。
【0039】
本発明において、ユビキチン様タンパク質のスーパーファミリーから使用できるタンパク質は、高い範囲に特徴付けられる。参照の例でしかないが、下記のインターネットサイト、http://bip.weizmann.ac.il/scop/index.htmlに示されている。このサイトによれば、ユビキチン様タンパク質のファミリーは、前記ユビキチン関連タンパク質のファミリーが属するスーパーファミリーとして定義されている。このスーパーファミリーの全てのメンバーは、第1に、逆平行に配置しているβシートにより特徴付けられ、αおよびβセグメントに細分化される。その折りたたみは、β−Graspおよびユビキチン様として定義される。そのコア領域は、下記に定義されるβ(2)−α−β(2)であり、前記数字は、鎖の数を示し、鎖の全体がβシートを形成する。前記シートを左から右まで(底部のアミノ末端、頂部のカルボキシ末端)見ると、鎖の部位に関して、混合されたβシートは、2143通りもある。このように、ユビキチン様タンパク質のメンバーの特徴は、そのトップにおいて垂直に横たわってパックされているα−ヘリックスの背面上で、タンパク質の一表面に露出された逆平行βシートである。このユビキチン様折りたたみモチーフは、本発明において使用でき、また、修飾できるタンパク質の特徴であり、他のタンパク質からのファミリーメンバーを明確に区別できる。この定義の点において、PLIC―2のユビキチン様N末端ドメインおよび前記パーキンのユビキチン様ドメインは、本発明により含まれる。
【0040】
当業者は、配列比較、いわゆる、アライメントを用いることによって、または、構造の重ね合わせ法により、前記タンパク質が、ユビキチン様タンパク質のタンパク質スーパーファミリーのメンバーであるか否かを、予備的に判断できる。当然、最新の証拠は、たいてい、構造分析、例えば、X線結晶学または多次元的な核磁気共鳴分光法による構造分析によって提供される。近年、遺伝学的なアルゴリズムを用いる構造分析も、また、良好な予測を成し遂げてきている。
【0041】
ユビキチンスーパーファミリーに関するさらなる情報が、例えば、Larsenの2002年の刊行物において見いだされる。加えて、Buchberge et alの2001年の刊行物も参考になる。Buchbergerは、β−β−α−β−β−α−β構成、すなわち、21534配置における“混合シート”のフォームにおける5つのβ鎖の配置の2次構造を有するユビキチン様タンパク質の特性として、典型的なβ Graspフォールドを述べている。この点において、UBXが、例えば、ユビキチン(Buchberger et al.,2001)の1次配列において、有意な相同性を有さないにも関わらず、三次元構造が、例えば、ユビキチンと同一であるために、前記ユビキチン様タンパク質に分類されると指摘された。この点において、ユビキチンにおける、48番目および49番目のアミノ酸は、時々、別々のβ鎖として考えられる(非特許文献14)。この5番目の鎖は、前記ユビキチン構造において、前記へリックスの後方に局在し、前記21534配置における“混合シート”を提供するであろう。しかし、2つのアミノ酸のみからなる構成が、実際のところ、2つのアミノ酸のこの鎖が、βシート鎖と呼び得るか否かは疑わしい。Buchberger et al(2001)によれば、上記で説明した通り、21534の配置を有するタンパク質もまた、ユビキチン様タンパク質のスーパーファミリーに問題もなく分類され得た。本発明において、上記でより詳細に述べられた21543の定義が、ユビキチンにおける前記β鎖の配置に選択された。
【0042】
前述したファミリーおよびスーパーファミリーのタンパク質は、通常、高く保存されている。既知のデータによれば、前記ユビキチンは、例えば、全ての哺乳動物において、同一のアミノ酸配列を有している。酵母のユビキチンは、この配列と三つのアミノ酸が異なるのみである。ヒトのユビキチンまたは哺乳動物のユビキチンは、それぞれ76個のアミノ酸からなり、最初に述べた構造を有している。
【0043】
本発明において用いられる修飾タンパク質は、そのアミノ酸配列において、修飾される元のタンパク質、例えば、前記ヒトユビキチンに対して、少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40または50%、さらに好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の同一性を有しており、どのような場合でも、前記タンパク質は、上記で述べたユビキチン様折りたたみモチーフを有している。
【0044】
本発明によれば、修飾タンパク質の調製のために選択される前記タンパク質は、好ましくは、ヒトのユビキチンまたは異なる起源のユビキチン、例えば、異なる哺乳類のユビキチンである。前記哺乳類のユビキチンとして、特に、哺乳類の分野における、げっ歯類、家畜および農業用の動物のユビキチンが、用いられる。本発明によれば、前記調製したタンパク質の使用分野は公知であり、すなわち、前記修飾タンパク質が、例えば、ヒトの疾病の治療のために薬学的な組成として用いられる場合、ヒトのタンパク質が、修飾される元のタンパク質として用いられることが好ましい。同様の方法において、これは他の分野にも使用される。
【0045】
前記ヒトおよび哺乳類のユビキチンは、それぞれ、76個のアミノ酸を有している。PDBデータベース(http://www.rcsb.org/pdb/index.html)における1UBQの構造によれば、逆平行βシートの形成に寄与するβ鎖の4つのアミノ酸は、本発明によれば、下記のアミノ酸部位である。
【0046】
第1の鎖(N末端):2〜7番目;第2のβシート鎖:12〜16番目;第3の鎖:41〜45番目;第4の鎖(C末端):66〜71番目。前記シートを頂点(底面のアミノ末端、頂点のカルボキシ末端)から、または左から右に見た場合、前記鎖の部位は、第2、第1、第4、第3番の鎖であり、第1と第4の鎖の間において、ポリペプチド鎖は、αへリックスを形成する。
【0047】
修飾のための前記アミノ酸の選択および修飾
【0048】
例えば、無料で使用できるProtein Data Bank(商標)(Berman et al.,2000;http://www.rcsb.org/pdb)のような、対応する構造データに基づき、側鎖が表面に露出された、すなわち、溶媒または可能性のある結合パートナーに配向した、開始タンパク質(例えば、ユビキチン足場タンパク質)におけるアミノ酸を、コンピュータ分析手法により局在化できる。さらに、おそらく、ランダム置換が足場タンパク質の安定性にネガティブな影響を与えない、または、わずかの影響である、開始タンパク質(例えば、ユビキチン等)におけるこれらのアミノ酸を、コンピュータ分析により同定できる。
【0049】
この情報は、結合部位の要素として、各アミノ酸の適正に関する最初の指示を提供でき、それから、実際の試験を必要とする。本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、前記ヒトのユビキチンにおける2、4、6、62、63,64,65および66番目のアミノ酸が、それらの表面への露出、および、それらのランダムな置換のための構造全体の耐性のために、選択された。
【0050】
前述した部位は、第1のアミノ末端βシート鎖(2、4、6番目の部位)の開始部、および、前記ループ(62、63番目の部位)またはカルボキシ末端βシート鎖(64、65、66番目の部位)の開始部において、それぞれ互いに空間的に近接して局在し、アミノ酸側鎖により、前記ユビキチンの表面における近接領域を形成する(図1)。分析された領域におけるランダムなアミノ酸置換(ランダム化)の方法により、抗体の高原結合部位と類似する形態で、ユビキチンの他の無処理の構造上の超可変領域の表面露出領域が産出される。
【0051】
ProSAIIソフトウェア(“Protein Structure Analysis”;Proceryon Biosciences社、ザルツブルグ)を用いることで、例えば、ユビキチン(WT)と比較したタンパク質安定性が、10通りの変異について、また、“コントロールエピトープ”の残基(ランダム化部位24、28、31、32、35、37、38、39)が置換されたランダムに得られた同数の変異体サンプルについて、決定された。この場合、結合部位の領域においてランダムに置換された、in silicoで産生された変異体の約19%は、少なくともユビキチン(WT)の安定性と同じ程度の安定性を有している。一方、約90%は、“コントロールエピトープ”の安定性よりも安定である(図2)。このコンピュータに基づく結果は、適切なアミノ酸の選択のための基礎として用いられ得る。
【0052】
前記ヒトのユビキチンの利用可能な構造データをはじめとして、産出される結合部位の領域における8つのアミノ酸部位は、最初に選択されることが好ましい。この領域における1次配列のランダム変異(ランダム変異誘発)の方法、および、後の特異的な選択により、それらの変異が得られた。これらは、予定されたハプテンもしくは抗原、または、一般的に予定された結合パートナーの、それぞれに対する所望の結合活性を示した。この方法において、新規の結合特性は、結果として修飾されたタンパク質により与えられるが、その構造およびタンパク質の化学的な特性は、元のタンパク質と高い度合いで同一のままである。そのため、例えば、小型、高い安定性、コスト効率の調整、ならびに、前述のリガンドに対する高い親和性と特異性による互いの容易な修飾というような利点を発揮する。この観点において、人工的な結合タンパク質の産出のための足場構造としてのユビキチンの安定性は、1)ユビキチンが小型なために、多数のアミノ酸置換についての足場の耐久性は、予期できず、また、2)硬く、柔軟性がないと考えられるβシートを含む人工的な結合部位の機能性は、あらかじめ可能とは考えられなかったため、予期されなかった。
【0053】
代わって、本発明によれば、γ−クリスタリンに基づくポリペプチド分子が用いられる。
【0054】
初めに述べたように、脊椎動物のクリスタリンの1分類であるγ−クリスタリンは、約22kDaの分子量を有する単量体タンパク質である。γ−クリスタリンの主要な構造的なモチーフは、逆平行のβシートである(Hazes and Hol,1992,Richardson et al.,1992,Hemmingsen et al.,1994)。γ−クリスタリンは、2つの非常によく似た球状ドメインからなり、一方のN末端ドメインと他方のC末端ドメインとが互いにV型リンカーペプチドによって結合している。γ−クリスタリンの折りたたみパターン特性は(“グリークキー”モチーフ、Slingsby,1985,特許文献2)は、おそらく、十分な熱安定性、および、変性試薬に対する安定性(Mandal et al.,1987)の理由である。
【0055】
通常の折りたたまれた状態において、γ−II−クリスタリンは、どのような結合特性も示さない。βシート構造モチーフからなるこのタンパク質の、選択された溶媒に曝される領域の変異(変異誘発)は、驚いたことに、前記タンパク質の表面構造の変化および電荷(charge)パターンの変化をもたらし、このため、新しい結合特性を発生する。この場合、タンパク質の構造の維持には実質的には寄与しない領域またはアミノ酸部位のみが選択される。小型βシートタンパク質の変異誘発(Riddle et al.,1997)は、後の配列変異にかかわらず、タンパク質の高いパーセンテージが、βシートの元の構造を形成し得ることを示している。
【0056】
ここで述べた方法において、標的変異誘発は、βシートの硬い領域においてどのような結合特性も欠損しているタンパク質について行われる。このように、抗体分子と比較可能な、十分な安定性および特異的な結合特性を持つタンパク質が産出されている。
【0057】
前記ファージディスプレイシステムは、新しく産出された結合特性を有する変異誘発されたβシートタンパク質の単離に適したシステムとして働く。前記システムは、特異的な結合特性のためのタンパク質変異体の幅広いレパートリーを、非常に効果的にスクリーニングすることが可能である(Smith,1985)。この目的のために、各タンパク質変異体は、繊維状ファージの表面上に準備され、固相に固定された標的分子に作用できる。前記標的分子に結合するタンパク質は、前記ファージの溶出により得られる。ファージDNAの単離後、特異的に結合するタンパク質変異体のDNA配列を決定できる。前記ファージディスプレイシステムの他に、例えば、細菌ディスプレイ(Stahl and Uhlen,1997)、または、リボソームディスプレイ(Hanes et al.,1997)のような他の選択システムを用いても良い。
【0058】
前述の工程の方法により、驚いたことに、非結合タンパク質を特異的な結合特性を有するタンパク質に変異させるという方法で、例えば、βシートにおける標的部位特異的な変異誘発法により、非常に安定なβシートタンパク質γ−II−クリスタリンの変異が可能である。このように、8つのアミノ酸部位のランダム化により、最初に、タンパク質の相対的に硬い領域内で、足場分子に変異誘発が行われる。従って、特異的な結合特性に関して“抗体様”タンパク質種は、βシートタンパク質であるγ−II−クリスタリンから調製される。一般的に、γ−II−クリスタリン、または、他の小型で安定なβシートタンパク質は、新しい結合特性を設計するための新しい足場分子として、述べたられた方法とともに使用できる。モデル化された前記βシートタンパク質は、例えば、別の応用において、組換え抗体の代替となりうる。
【0059】
この点において、他のより詳細な情報は、それら全体における参照により本明細書中に取り込まれる国際公開WO01/04144号パンフレットにおいて確認できる。
【0060】
ここで定義される“リガンド”という用語は、γ−クリスタリンまたはユビキチンに基づくポリペプチド分子により、特異的に結合される物質に言及される。
【0061】
この結合パートナー、いわゆる、リガンドとしては、生化学的、生物工学的、診断的および治療的に関係する分子全てが用いられる。可能性のあるリガンドのリストは、ポリペプチドおよびタンパク質(例えば、免疫グロブリン、免疫グロブリン誘導体、血漿から得られるタンパク質、血液凝固因子および阻害剤、成長因子、インターロイキン、サイトカイン、受容体タンパク質、ウイルスタンパク質、および、CD14、CD25およびCD34のような細胞表層マーカー)、ペプチド(例えば、S−タグ、T7−タグ、His−タグ、Strep−タグ、Myc−タグ、FLAG−タグのようなアフィニティタグ、および、ウイルス由来のペプチド)、低分子量物質(例えば、ステロイド、コレステロールおよびハロゲン化炭化水素のような有毒物質)、脂質(例えば、細菌のリポポリサッカライド、リポソームおよびリポタンパク質)、糖(例えば、Lewis Yのような細胞表層マーカー)、核酸(DNA,RNA)、有機および無機ポリマー、ならびに、これらの物質の誘導体を含んでいる。この点において、下記で述べた好ましい実施形態を参照する。
【0062】
ここで用いられる“機能性成分”という用語は、前記γ−クリスタリンまたは前記ユビキチンに基づいたポリペプチド分子に共有結合的に結合する複合体の第2の成分と定義する。“機能性”という用語は、診断、治療、クロマトグラフィーおよび分析における使用に適した成分、あるいは、すでに知られている成分を意味すると解される。一般的に、“機能性成分”は、例えば、酵素活性、分光学的に測定可能な特性または毒性等の測定可能な特性を有するあらゆる成分として定義される。それとは別に、本複合体における機能性成分の構造および機能は、制限されない。唯一必要なのは、前記ポリペプチド分子と前記機能性成分との共有結合後、全ての成分の機能性が維持されていることである。前記ポリペプチド分子の場合、この機能性は、特異的なリガンドへの結合能力であり、前記機能性成分の場合、例えば、染料としてのその効果である。
【0063】
本発明によれば、1以上、例えば、2つの機能性成分がポリペプチド分子に結合することができる(上記で規定)。前記ポリペプチド分子に対して前記成分が特異的な結合を達成するために、例えば、成分の一方は、リジン残基に対して特異的に結合するように形成され、他方は、前記ポリペプチド分子におけるシステイン残基に対して特異的に結合するように形成される。このタイプの2つの成分の例は、蛍光染料であり、一方が、蛍光供与体として働き、もう一方が、蛍光受容体として働く。
【0064】
前記成分の結合特性、および、好ましく用いられる前記結合成分の詳細は、以下に述べられている。
【0065】
リガンドに対するポリペプチド分子の結合活性、および、カップリングパートナー(機能性成分)の活性の検出は、上記で述べた通り、重要な特徴である。リガンドへに対する結合活性の検出は、異なる方法によって行うこともできる。ELISA技術において、結合は、抗体−ペルオキシダーゼ複合体の手段により検出されるのに対して、前記Biacoreシステムは、検出のために、表面プラズモン共鳴現象を利用する。蛍光滴定、蛍光偏光法または蛍光相関分光法(FCS)のような他の技術は、Affilin(商標)のフルオロフォアの特性に基づいている。カップリングパートナー、いわゆる、機能性成分の活性の検出のために、それらの公知の特性は重要である。このように、蛍光染料もしくはフィコエリスリンのような発色団またはフルオロファア分子は、それらのスペクトル特性の手段により分析される。ペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼのような酵素は、モデル物質のターンオーバーにより検査される。毒素のような他の分子は、細胞培養実験において、直接的に生物学的活性を試験できる。放射性同位元素の場合、その放射能は、適切なカウンターを用いて測定できる。糖および核酸のような様々な他の分子のために、商用的に利用可能な検出試薬がある。
【0066】
一実施形態において、上述の通り、野生型ポリペプチドと比較して、新しく産出されたまたは変化させた結合特性は、前記ポリペプチド分子(I)のβシートの表面露出領域における1つ以上のアミノ酸置換に基づく。この目的のために、前記ポリペプチド分子(I)当たり約6〜10、好ましくは8つのアミノ酸が置換される。このことは、ユビキチンおよびγ−クリスタリンに基づく前記ポリペプチド分子(I)に等しく適用する。
【0067】
前記(I)の(II)へのカップリングは、リガンドに対する特異的な結合を対象とするポリペプチド分子(I)のβシートの表面露出領域の外側領域において、行われることが好ましいことを指摘できる。このように、本発明の複合体に対する重要な必要性が、すなわち、全成分の機能の維持が達成されることがわかる。
【0068】
ここでは、リガンドに対する結合表面の外側、より正確には、denリガンドへの結合に関与するβシートの外側に局在するユビキチンの29、33番目のリジン(29、33番目のリジンは、αへリックスに局在する)へのカップリングを一例として示す。リガンドに対する結合部位から離れて位置する、このアミノ酸残基側鎖を介するカップリングは、複合体の成分の機能的障害を導かない。
【0069】
この点において、特に、リガンドに対する特異的なカップリングのための新しく産出された、または、変化された結合特性を有する前記ポリペプチド分子(I)のβシートの外側領域において、前記(I)の(II)への結合が行われることが好ましい。前述の場合、この領域は、例えば、ユビキチン分子のαへリックスであり、または、γ−クリスタリンに関して、βシートの他(すなわち、前記βシートは、リガンドへの結合に関与しない)である。特に、クリスタリンのN末端ドメイン(βシート)は、リガンドに対する新たに産出された結合表面を有していることが、図1から明らかであり、リジン残基は、C末端部位(ハイライト)は、機能性成分(II)とのカップリングに適している。
【0070】
一実施形態によれば、前記(I)の(II)に対するカップリングまたは連結は、それぞれ、(I)のアミン酸残基を介して生じる。言い換えれば、前記カップリングは、前記ポリペプチド分子(I)自体に存在するアミノ酸残基を介してなし遂げられる。
【0071】
この場合、前記カップリングは、前記(I)のシステインまたはリジン残基鎖を介して、部位特異的または選択的に非配向性(非方向性)の方法で、行われる。ここで、“部位特異的に”という用語は、正確に規定された部位を定義するために、前記分子(I)における的確に規定された部位に、システインまたはリジンが存在または導入されることを意味する。“選択的に、非配向性(非方向性)の方法”とは、このような残基が数個存在し、選択的に起こるけれども、これらの残基に結合する数が、あるランダムファクターに支配されていることを意味する。
【0072】
本発明の複合体の2つの成分のカップリング、すなわち、それらの共有結合に関して、下記の説明が与えられる。
【0073】
タンパク質は、多数の官能基を含んでおり、それにより、他の分子へのカップリングが達成できる。これらの明確な例示は、下記で述べる。例えば、適切な架橋結合試薬を介したパートナーとの共有結合により、1つの分子において、異なる活性を組み合わせることが可能である。一例として、抗体について述べる。前記抗体は、染料分子に結合し、このように、後に診断に使用できる、容易に検出可能な検出試薬の提供が見出されている。
【0074】
類似の方法において、抗体は、他のタンパク質、好ましくは、アルカリフォスファターゼまたはペルオキシダーゼのようないわゆるレポーター酵素と結合される。これらのレポーター酵素は、基質を変換し、それによって、吸光、蛍光または発光により検出されるシグナルを得ることができる。
【0075】
適切な架橋結合試薬の選択により、タンパク質、すなわち、本発明のポリペプチド分子を、多くの他の基質クラス由来の他の機能性成分に結合させることができる。有機および無機ポリマー、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、糖ならびに低分子量物質の多数もまた、この目的のために使用できる。前記ポリマーの分類からの好ましいカップリングパートナーは、例えば、デキストラン、ポリメタクリル酸、セファロース、アガロース、ポリスチレン、ポリビニル、シリカゲル、セルロースまたはポリエチレングリコール(PEG)である。後者の修飾は、例えば、生物学的治療薬(biotherapeutics)の薬物動態学的特性の調節のために用いられる。適切かつカップリングのための予め活性化された官能基を有するPEG誘導体の多くは、商用的に入手できる(ネクタール Therapeutics社)。先で述べた前記他のポリマー材料は、多くの生化学的、生物工学的および治療方法において、キャリア物質として働く。特に、ここでは、例えば、クロマトグラフィーへの応用、特に、親和性クロマトグラフィーについて述べる。これらのポリマー物質は、ゲルマトリクスとして用いられる。この目的のために、適切な化学基を有するポリマービーズの表面は、機能化され、例えば、所望の活性でタンパク質のカップリングが可能となるように活性化されている。この方法において、特定のリガンドに対する特異性を有する結合タンパク質もまた、固定される。その結果、ゲルマトリクスは、複雑な基質混合物からのリガンドを有効かつ迅速に濃縮するために使用できる。この濃縮は、カラムクロマトグラフィーまたはフィルター表面によっても行うことができる。さらに、磁力特性を有し、混合物から効率的に分離できるポリマービーズ(磁力ビーズ)も、親和性向上のために、有利に用いられる。
【0076】
重要な一例は、マトリクス結合タンパク質A(抗体分子に対して固有親和性を有する細菌タンパク質)に対するアフィニティークロマトグラフィーにより、真核細胞の上清から、治療目的のために抗体をラージスケールで精製する例である。
【0077】
前述の抗体−レポーター酵素融合体の他に、2つのタンパク質成分のカップリングの例は、多数ある。従って、最も簡単なケースの一例として、ホモ2量体またはホモ多量体が、2以上の同一タンパク質分子のカップリングにより産出できる。
【0078】
前記結合タンパク質の場合、アビディティー効果は、多量化により達成できる。すなわち、標的物質に対する多量体の親和性は、単量体の結合タンパク質の親和性と比較して、著しく増加する。また一方、異なる標的物質に対する特異性を有する2つの結合タンパク質のカップリングにより、例えば、互いに空間的に近接で、各ターゲット物質を運ぶアダプターとして使用できる、いわゆる2特異性結合分子が得られる。
【0079】
生細胞に対して毒性を有するタンパク質、いわゆる、毒素(例えば、ヒマ毒、コレラ毒素、シュードモナス属の菌体外毒素等)もまた、抗体または他の結合分子に対する興味深いカップリングパートナーになる。カップリングに続いて、この2機能複合体は、例えば、ガン細胞の表面において、前記結合タンパク質を介して、特異的なターゲット物質と選択的に結合でき、その後、ターゲット細胞は、細胞毒活性により破壊される。
【0080】
タンパク質の性質に関連する他のカップリングパートナーは、例えば、GFPおよびその誘導体のようなタンパク質発色団、または、フィコエリスリンのような色素含有タンパク質である。十分に検出可能なレポーター物質があると、結果的に得られる発色団または蛍光カップリング産物自体が、研究または診断の有用なツールとなる。
【0081】
一方、既に前述したが、色素または蛍光タンパク質複合体もまた、低分子量染料分子のカップリングにより入手できる。架橋結合基を有する適切な染料分子の多くは、商用的に、例えば、Invitrogen社から入手できる。診断および治療で使用するための、タンパク質複合体を得る他の低分子量カップリングパートナーは、例えば、ビオチン、ジゴキシジニン、重金属誘導体、キレート試薬、放射性同位元素、細胞毒物質または抗生物質である。
【0082】
本発明において、タンパク質およびポリペプチド分子、ならびに、主にカップリングに適した機能性成分に含まれる官能基は、アミノ基、カルボキシ基、水酸基およびスルフヒドリル基である。また、チロシンのフェノール基も官能基であり、芳香環系は、カップリング試薬の攻撃のための部位として働き得る。カップリングに適したアミノ酸残基は、特異的な性質により特徴付けられる。一方では、前記カップリング試薬に露出可能な反応性側鎖を有する必要がある。理想的なケースでは、この官能基は、タンパク質表面に局在し、溶媒に曝される。さらに、この残基の修飾は、タンパク質の機能を妨げない。好ましくは、本発明において、修飾される残基は、酵素の活性部位またはポリペプチドの結合表面から著しく離れている。さらに、これらの領域は、同型のアミノ酸残基の空隙でもあり、修飾されるとタンパク質の機能を損ない得る。従って、利点は、それぞれのタンパク質のまれなアミノ酸残基でもある。
【0083】
前述のように、ユビキチンに基づくポリペプチド分子(I)にとって、ユビキチン分子の29番目および33番目のリジン残基を介したカップリングが、好ましいと考えられる。より好ましくは、前記29番目および33番目の残基より、リガンドに対する結合表面にさらに短い距離で局在している11番目および48番目のリジン残基を介したカップリングが可能である。
【0084】
前記γ−クリスタリンに基づくポリペプチド分子(I)の場合、野生型ポリペプチドと比較して、新たに産出または変化されたリガンドに対する特異的な結合のための結合特性を有するペプチドドメインは、N末端ドメインであり、前記(II)対する(I)のカップリングは、C末端ドメインを介して行われる。これは、好ましくは、システインを含むC末端ペプチド融合の可能性に適用し、また、C末端ドメインに存在し、且つ、前記機能性成分に対するカップリングのために利用可能なリジンのようなアミノ酸側鎖にも適用できる。前記γ−クリスタリンの91番目および163番目の残基が使用されることが好ましい(図1参照。)。
【0085】
非タンパク質構成(proteinogenic)アミノ酸の中で、まず、側鎖にε−アミノ基を有するリジン、および、スルフヒドリル機能を有するシステインについて指摘する。特に、これらの官能基は、反応性があるため、本発明において、機能性分子に対するポリペプチド分子の特異的なカップリングのためのパートナーとして非常に適している。このため、スルフヒドリル基のみと特異的に反応する試薬、ひいては、例えば、マレインイミド、ヨード酢酸、ヒドロキシメルクリ安息香酸、Ellmann’s試薬等の本発明において使用できる試薬が、文献に開示されている。さらに、他の例も、Voet&Voet(1995)およびLottspeich&Zorbas(1998)のような各文献において記載されている。
【0086】
例えば、酸無水物(本発明でも使用できる無水酢酸、N−ヒドロキシスクシンイミド等)のようなリジン特異的側鎖試薬も、多数述べられている。それらの反応性に加えて、リジンは、カップリングのための他の有利な特性を有している。その側鎖は荷電しているため、ほとんどが、タンパク質の表面に局在している、すなわち、生物系において、溶媒(主に水)に露出することができる。この露出度も、前記カップリング試薬に必要であり、このため不可欠である。
【0087】
タンパク質において、表面に露出した遊離システインは、相対的にまれであり、細胞外タンパク質において、これらのシステインのほとんどは、2量体の相互作用を安定化するジスルフィド結合に関与する。しかしながら、含まれるシステインが修飾を受け易い状態になるために、ジスルフィド結合は、還元によって切断され得る。本発明におけるポリペプチド分子が、カップリング試薬に露出可能なシステインを含まない場合、変異誘発により、適切な部位にこのような残基を導入することができる。この点において、カップリングに適した表面に露出されたアミノ酸部位の予測を促進することから、タンパク質の空間的構造の知見は、有利な知見である。また一方、数個のシステイン残基が、部位特異的カップリングを生じるタンパク質に存在する場合(定義されたシステイン残基、上記参照)、部位直接的変異誘発法により、これらを除去するのは不可能である。この場合、システイン残基と類似の性質を有するセリン残基による置換が、好ましい。
【0088】
また、対象のタンパク質配列における変異誘発により、カップリングに適切なアミノ酸残基を得ることは、しばしば不可能である。タンパク質が、アミノ酸残基の挿入、または、カップリングに適したアミノ酸残基を含むN−末端もしくはC−末端のペプチド配列での融合を許容する場合、遺伝学的なレベルでこれらの部位に導入され得る。
【0089】
従って、他の実施形態において、前記(II)に対する(I)のカップリングは、(I)に対する付加的な末端ペプチド融合におけるアミノ酸残基を介して行われる。
【0090】
これらの末端ペプチド融合の露出度の試験は、例えば、発色特性を有する側鎖特異的なカップリング試薬、例えば、システイン用のEllmann’s試薬の使用により行うことができる(前記例示参照)。他にも、前記末端ペプチド融合の露出度は、それらの長さにより制御することができる。ペプチド融合の場合、例えば、結合用のアミノ酸側鎖とタンパク質との間へのいわゆるスペーサーの挿入により、結合用のアミノ酸側鎖の露出度の増加が可能である。ペプチド融合の場合、これらは、付加的で不活性なアミノ酸残基ある。サイズが小さく、非常に柔軟な構造であると想定できるため、特に、グリシンおよびセリン残基が適している。
【0091】
カップリング試薬に対して露出可能であるタンパク質の官能基の数に依存して、カップリングの特異性が異なるタイプに区別できる。例えば、システイン特異的カップリング試薬を使用した場合、システイン残基のみが選択的に反応するが、例えば、数個のシステイン残基が存在する場合、カップリングの正確な部位は、決定できない。これは、選択的であるが、非配向性(非方向性;undirected)のカップリングと呼ばれる。しかしながら、カップリング試薬に対して露出されるシステインが1つだけ存在する場合、カップリングは、部位特異的に生じる。
【0092】
適切なカップリング試薬の多くは、商用的に入手できる(例えば、Pierce社)。本発明において、使用できるカップリング試薬の特異的な形態は、架橋剤または単にリンカーと呼ばれる(Herrmann&Morse,1973;Takamiya et al.,1975;Reichlin,1980)。
【0093】
リンカーは、共有結合により2つ(またはそれ以上)の分子を結合する物質として定義される。リンカーは、2つ(またはそれ以上)の反応性(活性化された)官能基を含み、その空間的距離は、それらに結合する化学基によってさらに制御できる。異なる官能基を有するヘテロ−2官能性リンカーと対象的に、同一の官能基を有するリンカーは、ホモ−2官能性と呼ばれる。そのため、リンカー物質の適切な選択により、完全に異なる物質類を互いに結合することも可能である。
【0094】
本発明において、使用できるリンカーの一例として、SPC1−A7_CysのC末端部位を参照できる(表2参照)。
【0095】
しかしながら、例えば、タンパク質の二量化におけるジスルフィド結合の形成のような、タンパク質のカップリングの特異的なケースは、活性化されたリンカーを必要としない。酸化的条件下、スルフヒドリル残基は、ジスルフィドを形成するため、すなわち、2つの硫黄原子の間の共有結合のために、十分に高い反応性を有している。
【0096】
本発明において、カップリング反応は、1工程反応として、または、複数工程においても、行うことができる。2つの同一分子の単なる二量体化の場合、それぞれが1つの反応性残基のみを有していれば、定義された複合体を得るためのホモ−2官能性リンカーを用いて、カップリング成分とインキュベートするだけで充分である。異なる反応基を有する異なるカップリングパートナーの場合も、前記1工程反応は、適したヘテロ−2官能性リンカーを用いてのみ可能である。
【0097】
代わりに、同一の反応基を持つ異なる結合パートナー(反応体)の間でのカップリングもまた、複数工程において行うことができる。この目的のため、ほとんどの場合、まず、一方のカップリングパートナーのみを過剰なリンカーとインキュベートし、結果として得られた一価の反応体−リンカー複合体を単離し、その後に、リンカーの残存する遊離官能基を介して、第2の反応体に結合させる。生化学および生物工学において使用を見出された化学物質の多くは、いわゆる、活性化形態、すなわち、すでに反応性リンカーに結合した状態で、商用的に入手できる(Pierce社、Invitrogen社)。
【0098】
カップリングの度合い、すなわち、前記複合体における個々の成分の相対比は、2以上の反応基が存在する場合、使用する反応体の化学量論により、ある範囲に制御できる。異なるカップリングパートナーを有する定義された複数のカップリングは、逐次的なカップリングにより、または、異なるカップリング化学の使用により、例えば、機能性成分2が、各ポリペプチドのリジンに結合するのと同時に、第1の機能性成分がシステインにカップリングすることにより、可能である。典型的な例が、FRET測定のための蛍光供与体/受容体対への結合である。この目的に適した染料分子の組合せは、Invitrogen社から入手できる。
【0099】
本発明において、複合体をもたらす選択されたカップリングメカニズムには非依存的に、本複合体の機能性能力が予想されるものではなく、驚くべきものであったことを、改めて指摘する。従って、ここで説明されたことを参照することが可能である。
【0100】
さらに、本発明において開示された複合体が産生でき、さらに、個々の成分の全機能が保持され、または、増強されることも、当業者にとって予想できなかったことであることを述べておく。
【0101】
本発明において、一方のポリペプチド分子と、他方の機能性成分との間におけるサイズ比は、非常に異なっている。例えば、フィコエリスリンに前記分子を結合させた場合、時々、前記ポリペプチド分子の10〜20倍になるが、蛍光染料Oyster(商標)のように小さい場合もある。驚いたことに、特に、非常に大きな分子との結合において、前記ポリペプチド分子の構造およびリガンドへの結合親和性は、両方とも維持されている。このことは、この方法において、予期され得なかった。
【0102】
上述の説明のように、機能性成分に対するカップリングのための側鎖は、リガンドへの結合の機能性が損なわれないために、リガンドに対する(I)の結合表面の外側に局在されることが好ましい。
【0103】
別の好ましい実施形態によれば、前述のように、(I)に対する前記末端ペプチド融合は、1以上のシステイン残基または1以上のリジン残基を含んでおり、これらのアミノ酸残基は、リガンドとの(I)の相互作用に関与していないことが好ましい。
【0104】
前記機能性成分(II)は、ポリペプチドおよびタンパク質、有機および無機ポリマー、核酸、脂質、糖、低分子量物質、ペプチドならびにこれらの物質の誘導体からなる群から選択されることが好ましい。結合の原理およびカップリング試薬に関しては、上記の説明を参照。
【0105】
好ましい実施形態によれば、前記機能性成分(II)は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、好ましくは、発色タンパク質、酵素、免疫グロブリン、免疫グロブリン誘導体、毒素またはI由来のポリペプチドである。
【0106】
前記機能性成分(II)がポリマーの場合、デキストラン、ポリメタクリル酸、セファロース、アガロース、ポリビニル、ポリスチレン、シリカゲル、セルロースもしくはポリエチレングリコール、または、ポリマー誘導体から選択されることが好ましい。
【0107】
前記機能性成分(II)が低分子量物質の場合、染料、ビオチン、ジゴキシジニン、重金属、キレート試薬、放射性同位元素、抗生物質または細胞毒物質であることが好ましい。
【0108】
好ましい実施形態によれば、成分(I)に特異的に結合するリガンドは、ポリペプチド、ペプチド、低分子量物質、脂質、糖、核酸、有機および無機ポリマー、ペプチドならびにこれらの物質の誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0109】
このリガンドがポリペプチドまたはタンパク質の場合、免疫グロブリンおよび免疫グロブリン誘導体、血漿から得られるタンパク質、血液凝固因子および阻害剤、成長因子、インターロイキン、サイトカイン、受容体タンパク質、糖化タンパク質、ウイルスタンパク質ならびに細胞表層マーカー、好ましくは、CD14、CD25およびCD34が、用いられることが好ましい。
【0110】
前記リガンドがペプチドの場合、アフィニティタグ、好ましくは、S−タグ、T7−タグ、His−タグ、Strep−タグ、Myc−タグもしくはFLAG−タグ、または、ウイルス由来ペプチドであることが好ましい。
【0111】
前記リガンドは、低分子量物質、好ましくは、ステロイド、コレステロールおよび、例えば、ハロゲン化炭化水素のような有毒物質、または、脂質もしくは脂質誘導体、好ましくは、細菌のリポポリサッカライド、リポソームおよびリポタンパク質であっても良い。
【0112】
好ましい実施形態によれば、本発明の複合体の成分(II)は、γ−クリスタリンまたはユビキチンに基づく1以上のポリペプチドであり、それと共有結合することにより、(I)のリガンドに対する親和性の向上が、アビディティー効果によって達成される。詳細な説明は上記の記述を参照。
【0113】
さらに、前記成分(II)は、複数の方法において、(I)のリガンドへの前記親和性の向上が、アビディティー効果により達成されることにより、前記(I)が共有結合的に結合されるポリペプチド、タンパク質またはポリマーであることが好ましい。前記に代えて、成分(II)は、成分(I)に共有結合後に、(I)のリガンドへの前記親和性の向上が、アビディティー効果により達成されることにより、同型の別の複合体に共有結合的または非共有結合的な結合を受けるポリペプチドまたはポリマーである。
【0114】
好ましい実施形態によれば、成分(I)は、SPC1−A1(Seq.ID NO:2)、SPC1−A7(Seq.ID NO:3)、SPU11−3−A1(SEQ ID NO:12および13)、SPC1−G3(Seq.ID NO:4)、およびSPC7−E9(SEQ ID NO:8)の分子の1つである。
【0115】
しかしながら、本発明は、正確な核酸配列のみではなく、それらの変異体をも含む。本発明における“変異体”は、特に、SEQ ID NO.で規定された核酸と比較して、1以上の置換、挿入および/または欠損が存在する核酸のことを言う。これらの変異体において、少なくとも1つ、または、2、3、4つ以上のヌクレオチドが、核酸の片方の末端または両方の末端、または、核酸の内側の部分において、欠損し、または、別のヌクレオチドにより置換されることが好ましい。
【0116】
このように、本発明の前記核酸は、それぞれのSEQ ID NO.の核酸に実質的に対応する配列を有する核酸も含んでいる。本発明における前記核酸は、例えば、前記SEQ ID NO.の核酸に対して、少なくとも約80%、典型的に少なくとも約90%または95%の配列相同性を有してもよい。
【0117】
前記“核酸配列”という用語は、ヌクレオチドのヘテロポリマー、または、これらのヌクレオチドの配列に関する。ここで用いられる前記“核酸”という用語は、RNAと、cDNAを含むDNA、ゲノムDNAおよび合成塩基(例えば、化学的合成)、PNAのように他のポリマーに結合した塩基も含んでいる。
【0118】
本発明は、適度にストリンジェントな条件において、本発明の前記核酸に対してハイブリダイズする変異体も含んでいる。
【0119】
一般的に、ストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、オリゴヌクレオチドと所望の標的分子との間における二本鎖分子(完全なハイブリッド)のみが形成される、または、所望の標的有機体のみが検出される、反応条件を参照する。特に、この観点におけるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、65℃で、0.2×SSC(0.03M NaCl、0.003Mクエン酸ナトリウム、pH7)のことである。短い断片、例えば、20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドの場合、前記ハイブリダイゼーション温度は65℃以下、例えば、55℃より高く、好ましくは、60℃より高い。どのような場合でも65℃以下である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション温度は、ヌクレオチドのサイズまたは長さ、および、ヌクレオチドの組成のそれぞれに依存し、マニュアル化された実験により、当業者により決定できる。適度にストリンジェントな条件とは、例えば、42℃、および、42℃で0.2×SSC/0.1%SDSで洗浄することにより達成できる。
【0120】
前記それぞれの温度条件は、選択した実験的条件に依存して異なり、また、試験する核酸サンプルに依存する。この場合、適切に調節する必要がある。前記ハイブリダイゼーション産物の検出は、例えば、放射ラベルされた分子の場合、オートラジオグラフィーにより、または、蛍光標識された分子が使用された場合は、蛍光定量法により行われ得る。
【0121】
当業者は、実際に適度にストリンジェントな条件を達成し、特異的な検出方法が可能になる、それ自体公知の方法において、選択された実験方法に対する条件を適応できる。適度にストリンジェントな条件は、例えば、参考となるハイブリダイゼーションの方法により決定できる。適した核酸またはオリゴヌクレオチド濃度で使用する必要がある。前記ハイブリダイゼーションは、適した温度(より高い温度にすれば、ハイブリッドの結合は弱まる)で行う必要がある。
【0122】
第2の側面において、本発明は、既知の配列の成分(I)で開始される前述で定義した複合体の調製方法に関し、下記工程を含む。
タンパク質の空間構造の分析による、カップリングに適したアミノ酸残基、好ましくは、リガンドとの(I)の相互作用の表面の外側のアミノ酸残基の同定;
適したカップリング試薬によるカップリングパートナーの活性化;
カップリング反応の実行;
複合体の単離;および
複合体の両成分の機能性の検出
【0123】
カップリングに適したアミノ酸残基が同定されていない既知配列の成分(I)から開始される本発明の複合体の調製のための改良された方法であり、下記工程を含む。
置換、挿入または融合によるカップリングに適したアミノ酸残基、好ましくは、リガンドとの(I)の相互作用の表面の外側表面に曝されるアミノ酸残基の導入;
導入されたアミノ酸残基の露出度の検出;
この方法により変化させた成分(I)の機能性の検出;
適したカップリング試薬によるカップリングパートナーの活性化;
カップリング反応の実行;
複合体の単離;および
複合体の両成分の機能性の検出
【0124】
カップリング方法等のより詳細な説明は、上記を参照。
【0125】
第3の側面によれば、本発明は、前述の方法により調製される複合体を提供する。
【0126】
さらに、本発明は、上記で規定した複合体を含む診断キットを含む。
【0127】
本発明の他の側面は、本発明の複合体および薬学的に許容されるキャリアを含む薬学組成物である。
【0128】
前記薬学組成物において、複合体は、疾病の治療または少なくとも緩和のための投与において、適切なキャリアまたはキャリア物質と混合される。このタイプの組成は、(前記活性剤および前記キャリアに加えて、)賦形剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、および、技術分野で周知の他の物質を含んでもよい。前記“薬学的に許容される”という用語は、活性成分または活性薬のそれぞれの生物学的活性の有効性を損なわない無毒な物質と規定する。前記キャリアの選択は、投与経路に依存する。
【0129】
前記薬学的組成物は、付加的に、前記活性剤の活性を強める、もしくは、活性を補う別の成分を含んでもよく、または、治療において、それらを用いても良い。このような付加的な要因および/または物質は、前記薬学的組成物に、相乗的な効果を達成するため、または、副作用もしくは有害作用のそれぞれを最小化するために含まれてもよい。
【0130】
本出願の複合体の形成、調製、および、投与のための技術は、それぞれ、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,Mack Publishing Co.,Easton,PA,(最新版)において見出される。さらに、治療に効果的な量は、症状の改善、例えば、処置、治療、予防またはこのような状態の改善等を達成するのに十分な化合物量に関する。適切な投与経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜または腸管投与ならびに筋肉内、皮下、髄内注射、および、くも膜下腔内、直接的な脳室内、静脈内、腹腔内もしくは鼻腔内注射を含む非経口投与を含む。中でも、患者への静脈内投与が、好ましい。
【0131】
他の側面によれば、本発明は、ここで規定した複合体の使用、診断、治療および親和性クロマトグラフィーにおけるキットまたは組成の使用に関する。
【0132】
カップリング方法が提示され、それに加えて、親和性クロマトグラフィーにおける複合体の使用を含む複合体の種々の応用を可能にするデータも得られた。この使用のための例は、アフィニティークロマトグラフィーによる抗体精製および血漿タンパク質、成長因子またはインフルエンザワクチンの精製、ならびに、遺伝子工学により調製されたアフィニティータグを有するタンパク質の精製のため、ならびに、エンドトキシンおよびアルブミンのそれぞれの減少のための、プロテインAの交換である。さらに、マトリクスに対するカップリングにより、血液血漿交換またはバイオレメデーションへの使用が考察できる。
【0133】
使用の他分野は、診断である。この点において、細菌またはウイルス感染のための血液バンクのスクリーニング、もしくは、ELISAのような古典的な検出技術、または、Luminexシステムのような新規技術開発においての使用が、考案できる。治療だけでなく診断において、このような複合体は細胞分離に使用可能である。
【0134】
治療において、本発明の複合体の使用が可能であり、特に、輸送分子として一般的に使用できる。治療における他の応用は、本発明のポリペプチド分子による方向性ターゲティングにおける遺伝子治療、遺伝子輸送の系のためのカップリングである。方向性のあるターゲティングや細菌毒性に対するカップリングにより、治療における免疫毒性としての使用が、良好に得られるであろう。
【0135】
下記において、本発明は、複数の図および付随の例示に関して説明されているが、これらの図および例示は、単に本発明を図示するだけであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0136】
ヒトγ−II−クリスタリンライブラリからの、IgG FcおよびproNGFに結合するAffilin(商標)変異体の選択、発現および精製
【0137】
ヒトγ−クリスタリンライブラリCR20から始まり、選択工程は、ファージディスプレイシステム法により行った。最初の1ラウンドで、単一ファージELISAにおいて、IgG Fcに対する特異的な結合を示す複数のAffilin(商標)変異体を選択および単離できた。ここで用いられる“Affilin(商標)”という用語は、本発明の複合体におけるポリペプチド分子成分に相当し、ユビキチンまたはγ−クリスタリンに基づき、且つ、野生型と比較してリガンドに対する特異的な結合のための変化された結合特性を有する。pET20b発現ベクター(Novagen社)への遺伝子のクローニングに続き、E.coli(BL21(DE3)、Stratagene社)において、Affilin(商標)変異体を組換え法により過剰発現させ、続いて、2種類のクロマトグラフィー工程(IMACおよびゲルろ過)により精製した。タンパク質濃度依存ELISAおよびBiacore検査で、nM範囲において解離定数を有するIgG Fcに対する特異的な結合を決定できた。
【0138】
IgG Fcに結合するAffilin(商標)変異体を選択するため、1mLのCR20ライブラリ(6.5×1010cfu)を、1Lの2×YT培地(2%グルコースおよび100μg/mLアンピシリンを含有)において、37℃、220rpmで、OD600が0.4の吸光度に達するまで培養した。その後、前記細菌培養液に、感染用ヘルパーファージM13KO7(Invitrogen社、カールスルーエ、ドイツ)を10倍量過剰量添加して、1時間、37℃、100rpmで培養した。それから、前記細菌の懸濁液を、20分間、1000×gで遠心し、そのペレットを、1Lの2×YT培地(8mM GSH、100μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLカナマイシンを含有)に再度懸濁させた。
【0139】
ファージの産出またはファージの放出を、それぞれ、30℃、200rpmで一晩行った。前記ファージの単離には、Kay,Winter&McCafferty(1996)に記載されたプロトコールを使用した。
【0140】
1mLの単離ファージ(1.4×1014cfu)を、1mLの6%BSA(PBS中)を用いて、1時間、室温(RT)でブロッキングした。一方、マイクロタイタープレート(NUNC社)の10ウェルを、10μg/mL(PBS中)モノクローナルIgG Fc(Roche社)溶液100μLを用いて、常温で一晩コートし、PBS(0.1%Tween20含有)を用いて3回洗浄した。その後、各ウェルにおける未結合部位を、300μLのPBS(3%BSA、0.5%Tween20含有)を用いて、2時間、常温でブロッキングした。続いて、PBS(0.1%Tween20含有)を用いて3回ウェルを洗浄した。ウェル当たりブロッキングされた前記ファージを100μL添加した後、1時間、常温、20rpmでインキュベートした。未結合または弱い結合のファージを、それぞれ、2×PBSを用いて2回、2×PBS(3%BSA含有)を用いて2回、最後に、2×PBSを用いて2回、洗浄することにより除去した。残った結合ファージを、ウェル当たり100μLの100mMトリエチルアミンを添加し、10分間、室温でインキュベートすることにより溶出した。基本培地に溶出された前記ファージの中和ため、これに(計1mL)に500μLの1M Tris/HCl(pH7.4)に添加した。引き続いて、前記ウェルをPBSを用いて3回洗浄した。
【0141】
トリエチルアミンを用いた溶出にもかかわらず、マイクロタイタープレートに強固に結合したファージを、再感染のために、直接、XL1−blueの対数増殖期の細菌培養液(OD600=0.4)100μLを用いて、30分間、37℃でインキュベートした。基本培地中に溶出された前記ファージを用いたXL1−blueの再感染のために、750μLの中和溶出液を、9mLのOD600=0.4のXL1−blueと共に、30分間、37℃でインキュベートした。その後、基本培地に溶出したファージに再感染した菌体と、強固にファージが結合した再感染菌体とを混合し、SOBAG培地(アンピシリン含有)を含む16×16cmのプレートに蒔き、37℃で一晩培養した。パニング工程の後、約2000のクローンが得られた。これらを、約12.5mLの2×YT培地(20%グリセロール含有)から採取し、−80℃で保存した。
【0142】
単一のファージを培養するために、パニングの第1ラウンドで得られた細胞プールを、選択培地(SOBAG)に蒔き、37℃で一晩培養した。前記SOBAGプレートから、92個の単一のクローンを、ウェル当たり2mLの2×YT培地(2%グルコースおよび100μg/mLのアンピシリン含有)を含む24×5mLディープウェルプレートに移し、37℃、180rpmで一晩培養した。加えて、プレートあたり、ファージミドベクター内にヒト野生型γ−クリスタリン遺伝子を含む1つの単一のコロニー(XL1−blue)を、コントロールとして用いた。ウェル当たり2.5mLの2×YT培地(2%グルコースおよび100μg/mLのアンピシリン含有)を含む滅菌24×5mLディープウェルプレートを、それぞれ、一晩培養した培養液の種菌1%と共にインキュベートし、細菌培養液を37℃、180rpmで、OD600が約0.4に達するまで培養した。その後、前記培養液を、ウェル当たり2.5μLのヘルパーファージM13KO7(1013cfu/mL)を用いて感染させ、1時間、37℃、100rpmでインキュベートした。それから、細菌を遠心によりペレット化し、上清を除き、前記ペレットを、ウェル当たり2.5mLの2×YT培地(8mMグルタチオン、100μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLカナマイシン含有)に再懸濁し、30℃、200rpmで一晩培養した。ファージが含まれる上清を得るために、プレートの遠心を、4600rpmで行った。前記ファージの沈殿およびペレット化を、Kay,Winter&McCaffertyに記載の方法で行った。そして、前記ファージペレットを、約200μLのPBS(3%BSA含有、pH7.4)に再懸濁した。この手順により、前記ファージを濃縮し、その後、ELISAに用いた。
【0143】
この目的のために、NUNCプレートのウェルを、100μL抗原溶液(それぞれ、10μg/mLヒトのモノクローナルIgG FcまたはBSA)を用いて、4℃で一晩コーティングした。翌日、ELISAプレートを、ブロッキングバッファー(PBS、3%BSA、0.5%Tween20、pH7.4)を用いて、2時間、室温でインベートした。洗浄バッファー(PBS、0.1%Tween20、pH7.4)を用いて前記ウェルを洗浄した後、前記ブロッキングしたファージ調製液100μLを、それぞれ前記ウェルに加え、1時間、室温でインキュベートした。洗浄バッファー(PBS、0.1%Tween20、pH7.4)を用いて、前記ウェルを洗浄した後、モノクローナル抗M13抗体(POD複合体;MoBiTec社、ゲーチンゲン)を、PBS(pH7.4(100μL/ウェル))で1:5000に希釈して添加し、再度、1時間、室温でインキュベートした。その後、前記ウェルを、洗浄バッファー(PBS、0.1%Tween20、pH7.4)を用いて3回、および、PBSを用いて3回洗浄し、TMB Plus(Kementec社、デンマーク)を用いて呈色反応を開始した(100μL/ウェル)。20分後、前記呈色反応を、0.2M硫酸の添加により停止した。得られた黄色を450nm(参照波長:620nm)で測定し、記録した。
【0144】
モノクローナルIgG Fcへの結合に関し、明らかなシグナルを示し、かつ、BSAに対する検出可能な結合をほとんど示さないファージ調製液から、γ−II−クリスタリン変異体遺伝子を、プライマーpCAN700を用いて配列決定した。結果として、その中から3つのクローンSPC1−A1、SPC1−A7およびSPC1−G3を、pET20b発現ベクター中に、NcoIおよびBstEIIの制限酵素部位を用いてサブクローニングし、発現株BL21(DE3)、pUBS520(Stratagene社)に導入した。
【0145】
前記菌体を、2×YT培地(100μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLカナマイシン含有)において、OD600が0.6〜0.8の吸光度になるまで、37℃、200rpmで培養し、その後、組換えタンパク質の発現を、IPTG(終濃度1mM)で誘導した。30℃、200rpm、4時間の培養後、細胞を遠心(6000×g、20分間、4℃)により回収した。細胞破砕を、NPI−10バッファー(Qiagen社)中、5mM β−メルカプトエタノールの存在下、リゾチーム(0.1mg/mL)法、および、超音波(6×15秒、氷を用いた冷却下)により行った。遠心(40,000×g、30分間、4℃)後、上清をIMACカラム(HiTrap Chelating HP、Amersham Bioscience社)に添加し、NPI−20(Qiagen社、+5mM β−メルカプトエタノール)を用いて洗浄した(カラムの20倍量)。溶出は、NPI−500(Qiagen社、+5mM β−メルカプトエタノール)を用いたリニアグラジエント(直線勾配)により行った(カラムの30倍量)。γ−II−クリスタリンを含む画分を、SDS−PAGE法により分析し、各画分をプールし、ゲルろ過カラム(1.6×60、Sephadex75、Amersham Bioscience社)に添加した。PBSを、流速0.75mL/分で、ランニングバッファーとして用いた。ゲルろ過分析は、SDS−PAGE法により行い、γ−II−クリスタリン含有画分を混合し、4℃で保存した。この精製工程の後、Affilin(商標)変異体は、95%以上の純度であった(SDS−PAGE)。
【0146】
前記精製タンパク質の結合特性を、前述の濃度依存ELISAにおいて、直ちに試験した。この目的のため、異なる濃度(100nM〜10μM)のAffilin(商標)変異体を用い、抗γ−II−クリスタリン抗体(PODとのモノクローナル抗体複合体)を、検出抗体として用いた。試験した全3種類のAffilin(商標)変異体は、ヒトIgG Fcに対する特異的結合を示し、BSAまたはマイクロタイタープレートへの非特異的な結合は、検出されないことがわかった。コントロールとして用いた前記ヒト野生型γ−II−クリスタリンは、IgG Fc、BSAまたはマイクロタイタープレートに対する結合を示さなかった。
【0147】
BIACORE試験において、前記3種類のAffilin(商標)変異体の解離定数を測定した。この目的のために、約180RUのヒトIgG Fc(50mMクエン酸ナトリウム中50μg/mL、pH5.0)を、CM5チップに固定化した。未結合部位を、最終的に1Mエタノールアミン(pH8.5)により不活性化した。
【0148】
それから、流速30μL/分で、6つの異なる濃度(166nM〜1μM)を、前記チップに180秒間通過させた。その後、前記チップを0.005%界面活性剤P20(Biacore社)を含むHBSを用いて、同じ流速で180秒間洗浄した。Biaevaluation Software(Biacore社、ウプサラ、スウェーデン)を用いて得られたセンサーグラムから、IgG Fcに対するAffilin(商標)変異体の解離定数を決定した(SPC1−A1:230nM、SPC1−A7:280nMおよびSPC1−G3:800nM)。競合実験において、IgG Fcに対する前記Affilin(商標)変異体の特異的結合は検出されたが、前記チップマトリックスに対する結合は検出されなかった(図2)。
【0149】
前記変異体SPC1−A1、SPC1−A7およびSPC1−G3の選択と類似の方法により、標的分子proNGFに対するAffilin(商標)変異体SPC7−E9を単離した。解離定数を、1〜6nMの範囲で、BIACORE−Mussungen法により決定することができた(図3)。
【実施例2】
【0150】
ヒトユビキチンライブラリ(UB10)からの、システインノットタンパク質に対するAffilin(商標)変異体の選択、発現および精製
【0151】
新たに生じた結合親和性を有する修飾タンパク質の選択のための合成ユビキチン遺伝子の提供
【0152】
例えば、Sambrook et al(1989)のように当業者に公知の標準プロトコールによって、遺伝子工学の研究を行った。
【0153】
人工結合タンパク質の調製の開始点として、置換Ile44Ala、Lys48Arg、Arg54Leu、Val70Ala、Arg72Leu、Gly75Ala、および、欠失Gly76を有する修飾ユビキチン足場タンパク質のDNA配列(Seq ID NO:2)を調製するために、下記工程を行った。遺伝子合成のため、PCR反応を50μLの容量で行った。これには、遺伝子の塩基対配列で表される6種類のオリゴデオキシヌクレオチド(それぞれ0.1μM SeqID NO:26、SeqID NO:27、SeqID NO:28、SeqID NO:29、SeqID NO:30、SeqID NO:31)各2.5μLを含み、合成される遺伝子が鋳型として存在する。使用した前記オリゴデオキシヌクレオチドの配列は、それぞれ、約15塩基対によりそれらの3’末端および5’末端が交互にオーバーラップする40〜50塩基対の長さの人工遺伝子の、翻訳DNA鎖ならびに非翻訳DNA鎖の領域に相当する。さらに、前記試料は、2.5μLの各フランキングプライマー(SeqID NO.32、SeqID NO.33;10μM)、5μLの10×Taqバッファー(100mM Tris/HCl pH9.0、500mM KCl、1%(v/v)TritonX−100)、3μLの25mM MgClおよび4μLのdNTP混合物(各2.5mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を含む。水を充填した後、前記反応試料を、変性のために、サーモサイクラーにより、2分間、94℃で加熱した。それから、2.5UのTaqポリメラーゼ(Promega社)を加熱中に添加(加熱開始)し、PCRプログラムを開始した。インキュベーションは、それぞれ、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1.5分間を、25サイクル行った。最後のインキュベーションを、72℃で5分間行った。
【0154】
所望のPCR産物を、分析アガロースゲル電気泳動法により同定し、MinElute Reaction Cleanupキット(Qaigen社)を用いて、前記試料から精製した。単離したDNA 1.0ngを2回目の増幅の鋳型として使用し、前記2回目の増幅を、Pfuポリメラーゼ(Promega社)を用いて、50μLの容量で行った。この目的のために、5μLの提供10×Pfuバッファー(200mM Tris/HCl pH8.8、20mM MgCl、100mM KCl、100mM(NHSO、1%(v/v)TritonX−100、1mg/mL BSA)および4μLのdNTP混合物を用い、水で充填した。さらに、前記試料は、適切な制限酵素部位の導入のためのフランキングプライマー(SeqID NO.32、SeqID NO.33;10μM)を含む。所望のPCR産物を、調製アガロースゲル電気泳動法により単離し、クローニングベクターpCR(商標)4Blunt−TOPO(商標)に、Zero Blunt(商標)TOPO(商標)PCRクローニングキット(Invitrogen社)を用いて、メーカーの説明書に従って挿入した。供給された化学的コンピテントセルを、対応する連結反応試料を用いて形質転換し、LB/amp/kan培地のアガープレート上にまいた。前記プレートを、16時間、37℃で培養し、生育したコロニーについて、所望の連結産物の分析を行った。この目的のため、プラスミドDNAを、Qaigen社のプラスミド単離キットを用いて、メーカーの説明書に従って、ミニスケールで調製し、前記フランキングプライマー法により前記PCR産物に導入された認識配列に対して、NdeIおよびXhoI DNAヌクレアーゼ(New England Biolabs社)を用いた制限消化を行った。期待された切断パターンを示すプラスミドを用いて、Taqポリメラーゼにより挿入された遺伝子カセット領域内のDNA配列分析を行った。この目的のために、メーカーの説明書に従って、CycleReader(商標)AutoDNA Sequencing kit(Fermentas社)、0.5μgプラスミドDNAおよび1.0pmol各蛍光標識プライマーを用いた。新たに合成されたDNA鎖を、ポリメラーゼ反応中に標識し、ジデオキシヌクレオチドの取り込みによる塩基特異的な方法により、統計的に終結させた。それから、結果的に得られた蛍光DNA断片を、ポリアクリルアミド−尿素ゲル電気泳動により、Liquorシークエンシング装置において分離し、隣接するレーンにおけるACGTのバンドパターンとして視覚化した。
【0155】
正確なDNA配列を有する遺伝子カセットを、調製用NdeI/XhoI制限消化により、クローニングベクターpCR(商標)4Blunt−TOPO(商標)から切り出し、調製用アガロースゲル電気泳動で単離した。ユビキチン変異体のライブラリ構築のため、修飾ユビキチン足場タンパク質の遺伝子の挿入を、対応するタンパク質産生用の発現ベクターpET20B(−)(Novagen社)、または、ファスミドベクターpMUBI−1に行った。
【0156】
ユビキチン変異体のライブラリの調製
【0157】
前記合成ユビキチン遺伝子のN末端およびC末端それぞれにおける8つのコドンのランダム部位特異的変異誘発のため、2つ連続的PCR反応を行った。第1回目の増幅工程は、Pfuポリメラーゼ(Promega社)を用いて、10×50μLの容量で行った。この目的のために、各試料当たり、供給10×Pfuバッファー5μLのおよびdNTP混合物4μLを使用し、水で充填した。さらに、各試料は、所望の塩基対置換の導入のため、フランキングプライマー(SeqID No.34、SeqID No.35;10μM)を各2.5μL含む。非変異ユビキチン遺伝子を保有するために、テンプレートとして1.0ngのpMUBI−1を用いた。Pfuポリメラーゼ(上記参照)2.5Uを添加後、インキュベーションを、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1.5分間を25サイクル行った。最後のインキュベーションを、72℃で5分間行った。使用したテンプレートDNAの選択的切断のため、反応試料当たり10UのDpnIを添加し、37℃で1時間インキュベートした。所望のPCR産物を、調製用アガロースゲル電気泳動法およびQIAquick gel extraction kit(Qiagen社)により単離した。
【0158】
第2回目の増幅工程は、1000μLの試料容量で行い、前記1回目のPCR反応で得られた産物約1.0ngおよびTaqポリメラーゼを用いた。前記反応試料を、ピペットで20倍容量に調節した。上記の詳細は、10×Taqバッファー、25mM MgCl、dNTP混合物、および、5’末端がビオチン化され且つSfiIエンドヌクレアーゼ用認識配列を保有する互いに共通しないフランキングプライマー(Seq ID No.36、Seq ID No.37;10μM)からなる。水で充填した後、2.5UのTaqポリメラーゼを加熱下で添加(上記参照)し、PCRプログラムを開始した。インキュベーションは、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1.5分間を、25サイクル行った。最後のインキュベーションは、72℃で5分間行った。
【0159】
得られた増幅産物の切断は、PCR反応試料において直接行った。この目的のため、総容量4000μLにおいて、完了したPCR反応溶液を、同量の供給10×bufferII(100mM Tris/HCl pH7.9、100mM MgCl、500mM NaCl、10mMジチオスレイトール含有)、10×BSA溶液および水と混合した。さらに、4000Uの制限酵素SfiI(New England Biolabs社)を添加し、16時間、50℃でインキュベートした。MinElute Reaction Cleanupキット(Qaigen社)を用いて、前記試料からDNAを単離し、400μLの滅菌水に懸濁した。SfiIに切断されなかった前記PCR産物の分離のため、前記単離DNAを、表面にストレプトアビジンが結合した磁力ビーズ(“Dynabeads Kilobase Binder”)1.0mg/mLを含む同量の“Binding Solution(Dynal社)と混合し、室温(RT)、4.5時間、ローラーミキサー上でインキュベートした。任意に存在するビオチン化DNAに結合した前記ビーズは、沈殿するが、SfiIにより完全に切断されたDNAは、ビオチン化末端を持たず、上清に残るはずであった。一晩沈殿させた。結果的に得られたSfiIにより切断され且つ所望の部位で変異誘発されたユビキチン遺伝子を、滅菌水に溶解し、QIAquick PCR Purification kit(Qiagen社)を用いて脱塩した。前記遺伝子は、最終的に水中で200fmoles/μLの濃度であった。
【0160】
レシピエントベクターの調製のため、前記プラスミドpMUBI−1を、メーカーの説明書に従ってSfiIにより切断し、長い方の(ベクターの)断片を、調製用アガロースゲル電気泳動法およびQIAquick Gel Extraction kit(Qiagen社)により単離した。分子内の連結を避けるために、5’末端を脱リン酸化した。この目的のため、0.5Uのエビ(Pandalus borealis)由来アルカリフォスファターゼおよび前記供給バッファーを、総容量200μLで使用した。前記混合物を、90分間、37℃でインキュベートし、DNAを、前記試料から、QIAquick PCR Purification kit(Qiagen社)を用いて単離し、QIAquick PCR Purification kitを用いて脱塩した。最終的に、前記ベクター断片のDNAは、水中で、50fmol/μLの濃度であった。
【0161】
連結のため、1.6pmolの前記PCR断片および8.0pmolのpMUBI−1のベクター断片を、2UのT4DNAリガーゼ(GibcoBRL社)の存在下、総容量1600μL(50mM Tris/HCl pH7.6、10mM MgCl、1mM ATP、1mM DTT、5%(w/v)PEG−8,000)において、3日間、16℃でインキュベートした。65℃で15分間、前記試料を加熱した後、前記DNAを沈殿させた。この目的のため、100μLの前記各反応溶液に、100μLのエタノールおよび10μLのNaAc(5M、pH3.0)を混合し、16時間、−20℃で保管した。続いて、遠心(60分間、12500×g)を行い、前記サンプルをエタノール(70%v/v、−20℃)で洗浄し、再度遠心し、最終的に沈殿したDNAを60μLの滅菌水に溶解した。
【0162】
エレクトロポレーションのために、Gene Pulser(商標)IIシステム(Biorad社)および1.0mmの電極間隔を有するキュベット(Biozym社)を、4℃の冷温室で使用した。前述の上記で得られた各溶液3.5μLを用いて、エレクトロコンピテントE.coli XL1Blue(Stratagene社)を、メーカーの説明書に従って形質転換した。得られた細胞懸濁液を、LB/クロラムフェニコール培地のアガープレート(20X20cm)5枚に蒔いた。これらのプレートを、16時間、37℃で培養し、生育したコロニーを計測した。それに伴い、構築したライブラリには、独立した2.8×10種類のクローンが含まれており、前記ライブラリにおいて通常の10,000倍である。それから、前記コロニーを、10%(v/v)グリセロール含有SOC培地(総量100mL)に採取し、そのうちの1.0mLを−80℃で保存した。得られたクローン(12のランダムに選択したクローン)から、Qiagen社より購入したDNA Miniprep kitを用いて、ファスミドベクターを単離し、DNA配列を、変異誘発されたユビキチン遺伝子の領域について分析した。これらのクローンの全てが、機能的な配列を示した。すなわち、挿入または欠損による読み枠シフトを示さず、変異誘発させた部位において、質的に完全に異なる置換を示した。変異誘発させた領域外におけるランダム置換は、存在しなかった。
【0163】
ヒトユビキチンに基づくこのライブラリの基礎において、選択は、実施例1と同様に、当業者に公知の前記ファージディスプレイシステム法により行った。小さな修飾は、単に、使用した抗生物質(アンピシリンの代わりにクロラムフェニコール)の選択に関して導入された。
【0164】
システインノットタンパク質のファミリー由来の成長因子を、標的として用いた。前記ユビキチンAffilin(商標)SPU11−3−A1は、ELISAにより決定されたように、nM範囲の解離定数を有し、前記BIACOREシステムにおけるカップリング研究に使用した。
【0165】
選択された変異体の1つであるSPU11−3−A1を、制限酵素部位NdeIおよびXhoIを用いて、pET20b発現ベクターにクローン化した。培養条件および精製工程は、実施例1において述べたSPC Affilin(商標)に用いたものと同様であった(IMAC、ゲルろ過)。結合特性の検出のために、濃度依存ELISAを行った。この目的のため、Affilin(商標)変異体を異なる濃度(10nM〜1μM)で、前記標的分子でコートしたマイクロタイタープレート(以下、MTP)に添加し、ポリクローナル抗ユビキチン抗血清(Sigma社)を1次検出試薬として用いた。室温でインキュベーション(1時間)後、前記MTPのウェルをPBSで3回洗浄し、2次工程において、PODを有するモノクローナル抗体複合体(抗IgG、Sigma社)を検出抗体として用いた。試験したAffilin(商標)変異体は、ヒトNGFに対する特異的な結合を示すこと、および、BSAまたは前記マイクロタイタープレートに対する非特異的な結合が検出されないことがわかった。コントロールとして用いたヒト野生型ユビキチンは、NGF、BSAまたは前記マイクロタイタープレートへの結合を示さなかった。
【実施例3】
【0166】
異なる分子に対する選択的なカップリングのためのシステイン含有ペプチドリンカーとの、Affilin(商標)のC末端融合
【0167】
IgG Fcに結合する前記Affilin(商標)変異体SPC1−A7が、C末端システインを介して異なる分子に選択的に結合できたことを、下記の実施例において説明する。
【0168】
7つのシステインが、前記タンパク質内部に局在することに加えて、使用したAffilin(商標)変異体SPC1−A7は、溶液−接近性(露出性)であり且つ遊離したシステインを可変性部位4において有している。まず、この部位を、QuickChage(商標)PCRを用いてセリンに置換した。この修飾Affilin(商標)(SPC1−A7BB)から開始して、2つのグリシンおよび1つのシステイン、ならびに、既に存在する6つのヒスチジンに加えて4つの別のヒスチジンを、QuickChage(商標)PCR法により、C末端に挿入した。10個のヒスチジンを伸張した親和性タグの目的は、改良された精製を可能にすることである。Ellmann’s試薬を用いた滴定試験は、前記導入されたシステインが、Affilin(商標)変異体に存在する他のシステインによるシステイン混合現象のため、カップリング実験に不適切であることを示していた。この理由のために、前記システインを、DNAレベルでセリンに置換し(TCT)、この構築物から開始して、新たなシステインをGly4Serリンカーの後に導入した。このことは、前記タンパク質におけるシステインからの前記挿入システインの距離を長くし、且つ、システイン混合を抑制する。最終的に、得られた構築物を配列決定し、Ellmann’s試薬を用いた滴定試験がカップリング試験に適していることを示した。
【0169】
前記Affilin(商標)変異体SPC1−A7の部位4におけるセリンによるシステインの置換のため、QuickChage(商標)PCR法(Stratagen社、ラジョラ、アメリカ)を、プライマーA7Cys4Ser_フォワードおよびA7Cys4Ser_リバースと共に用いた。PCR反応のため、5μLの10×反応バッファー(100mM KCl、100mM (NH)SO、200mM Tris−HCl、pH8.8、20mM MgSO、1%Triton(商標)X−100、1mg/mL BSA)、各125ngの2種類のプライマー、1μLのPfu Turbo DNAポリメラーゼ、1μL dNTP混合物および水を、総容量50μLで用いた。pET20bベクターのAffilin(商標)変異体SPC1−A7の遺伝子を、テンプレートDNAとして用いた。95℃で3分間の1回目の変性工程により反応を開始し、変性、プライマーアニーリングおよび合成を18サイクル繰り返した。95℃での変性を30秒間行い、前記プライマーアニーリングは、60℃で1分間行った。合成工程の時間を、68℃で5分間とした。PCRの最後に、68℃で5分間の最終合成を行った。増幅は、アガロースゲル電気泳動によりモニターした。増幅に成功した後、使用したテンプレートDNAの制限消化を、制限酵素DpnIにより行った。1μLの前記酵素(10U/μL)を前記PCR試料にピペットで加えて混合し、1時間、37℃でインキュベートした。それから、前記ベクターを、エレクトロポレーション法により、コンピテント株(XL1−blue、Stratagene社)に導入した。この目的のため、1μLのDpnI処理制限試料(氷中)を50μLのエレクトロコンピテントXL1−blue細胞にピペットで加えて混合し、氷冷したエレクトロポレーションキュベット(0.1mm)において、2.5kV,25μFおよび200Ωの条件でパルスした。細胞を1mLのSOC培地に再度懸濁し、60分間、500rpmの攪拌下、37℃で培養した。その後、細胞を選択培地(2×YT、100μg/mLアンピシリン)に蒔き、16時間、37℃で培養した。得られた12種類のクローンを、正しく挿入されているかを確認するために、pETTermプライマーを用いて、別々に配列決定した。前記正確なクローンのベクターを、C末端に2つのグリシンと1つのシステインと4つの付加的ヒスチジンを導入するために、次のQuickChage(商標)PCRのための鋳型DNAとして用いた。前述のように、2種類のプライマーA7Gly2Cys_フォワードおよびA7Gly2Cys_リバースを用いたQuickChage(商標)PCR後、DpnI消化およびエレクトロポレーション法によるXL1−blue株の形質転換を行った。正確な導入をコントロールするために、前記12種類のクローンのプラスミドを、再度配列決定した。前記正確なクローン(SPC−1A7JJ)のプラスミドを、プラスミドpUBS520を有するBL21発現株中に導入し、引き続いて、発現させた。さらに、前述のように(実施例1)、2回のクロマトグラフィー工程(Ni−NTAでの親和性クロマトグラフィーおよびSephadex 75でのゲルろ過)において、Affilin(商標)変異体SPC1−A7BBを精製した。
【0170】
導入したシステイン残基の接触性を試験するため(Haber、1972)、全ての遊離SH基を、Ellmann’s試薬(DTNB溶液)法により滴定する。この目的のため、1mLのAffilin(商標)変異体SPC1−A7JJのタンパク質溶液(100mM Tris/HCl;pH8.0中に50〜350μgのタンパク質)に、30μLのDTNB溶液(100mM Tris/HCl;pH8.0中に4mg/mLのDTNB)を添加した。30μLのバッファー(100mM Tris/HCl;pH8.0)を加えた1mLのタンパク質溶液を、ブランク値1として用いた。30μLのDTNB溶液を加えた1mLのバッファー(100mM Tris/HCl;pH8.0)を、ブランク値2として用いた。前記試料を、15分間、室温でインキュベートし、410nmの吸光度を測定した。ブランク値1およびブランク値2の吸光度を、前記テストサンプルの吸光度から引き算した。得られた吸光度値から、遊離SH基のモル濃度を、DTNB−SHの吸光係数(ε410〔DTNB−SH〕=13,600M−1cm−1)を用いて計算し、使用したタンパク質濃度により割った。結果として、タンパク質分子当たりの遊離チオール基の数を得た。遊離システイン残基を、構築したAffilin(変異体)SPC1−A7JJ 3−4において、滴定できた。Affilin(商標)変異体SPC1−A7_Cys4Serを用いた滴定のコントロールにより証明されたように、前記タンパク質に存在するシステインが接触性でないため、1つの遊離システイン残基が予測された。このことは、C末端システインのシステイン混合が、タンパク質に埋められたシステインにより導入されたことを示し、そのため、タンパク質に導入されたシステインの距離が非常に短いことを示唆している。この理由のため、前記Affilin(商標)変異体SPC−1−A7JJのC末端システインを、QuickChage(商標)PCRにおいて、前述のプライマーA7Gly2Ser_フォワードおよびA7Gly2Ser_リバースを用いて、セリンに置換した。正確な導入の確認の後、この構築物を、システインに続いてGly4Serリンカーを導入するためのPCR用テンプレートとして用いた。プライマーGly4SerCys HindIIIおよびA7Cys4Ser Ndeを用いてPCRを行った。PCR反応のため、5μLの10×反応バッファー(100mM KCl、100mM (NH)SO、200mM Tris−HCl、pH8.8、20mM MgSO、1%Triton(商標)X−100、1mg/mL BSA)、各125ngの前記2種類のプライマー、1μLのPfu Turbo DNAポリメラーゼ、1μL dNTP混合物および水を、総容量50μLで用いた。さらに、前記プライマーの2次構造物を分離するために、2μLのDMSOを前記反応混合物に添加した。前述の手順と比較して、変性、プライマーアニーリングおよび合成の繰り返し工程を、プライマーアニーリング温度を58℃に代えて、25回行った。このAffilin(商標)変異体(SPC1−A7_Cys)のPCR産物の増幅を、アガロースゲル電気泳動法により確認した。表2は、ここで述べた構築物の概要である(表2)。プライマーA7Cys4Ser Ndeは、酵素NdeI用の組み込まれた制限酵素部位を含んでおり、プライマーGly4SerCys HindIIIは、酵素HindIII用の組み込まれた制限酵素部位を含んでいる。そのことにより、精製、NdeIおよびHindIIIで処理されるベクターpET20b内の前記2酵素による制限の後、前記PCR産物の連結が可能となる。前記2種類の酵素による制限は、ダブルダイジェストで同時に行われる。この目的のため、約1μgのAffilin(商標)変異体SPC1−A7_CysのPCR産物、または、1μgのベクターpET20bを、それぞれ、1μLの前記制限酵素NdeI(New England Biolabs社、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ、20U/μL)および1μLの制限酵素HindIII(New England Biolabs社、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ、20U/μL)ならびに10μLの10×反応バッファーであるNEBバッファー2(50mM NaCl、10mM Tris−HCl、pH7.9、10mM MgCl、1mM DTT)を用いて、総容量100μL、4時間、37℃でインキュベートした。得られた断片を、調製用アガロースゲル電気泳動を介して別々に精製した。前記連結のため、20ngの精製されNdeI/HindIII処理されたベクターpET20の断片、ならびに、120ngの同様に処理されたAffilin(商標)変異体SPC1−A7_Cysの断片、2μLの10×反応バッファー(300mM Tris−HCl、pH7.8、100mM MgCl、100mM DTT、10mM ATP)および0.5μLのT4 DNAリガーゼ(Promega社、マンハイム、ドイツ、1〜3U/μL)を、総容量20μLで使用した。前記反応試料を、16時間、16℃でインキュベートし、得られたベクターを、前述のように、XL−1 blue細胞にエレクトロポレーションにより導入した。遺伝子の正確な導入を、形質転換後に得られた12種類のクローンから、プライマーpETTermを用いた配列決定により検証した。引き続いて、E.coli菌体(BL21(DE3)、+pUBS520)を、正確な配列を有する前記Affilin(商標)変異体SPC1−A7_Cysのベクターを用いて形質転換した。前述のように、前記Affilin(商標)変異体SPC1−A7_Cysの発現および精製の後(実施例1)、前記遊離システイン残基を、Ellmann’s試薬の方法により、前記Affilin(商標)変異体SPC1−A7_Cysについて、再度滴定した。適切なパートナーに対する選択的なカップリングのため、タンパク質と十分な距離で、溶媒に接触可能なC末端システインの成功した導入の予測した確証として、1つのシステイン残基のみを検出することができた(表1)。この単一の接触可能なシステインの検出は、適切なカップリングパートナーおよびマトリクスに対するAffilin(商標)の選択的カップリングのための基礎となる。
【0171】
C末端システインを有するAffilin(商標)SPU11−3−A1を提供するために、SPU11−3−A1遺伝子を、NcoIおよびXhoIの制限酵素部位を介して、Affilin(商標)SPC1−A7(上記参照)のために修飾されたpET20bにクローン化した。Affilin(商標)SPU11−3−A1_Cysの発現および精製は、SPC1−A7_Cysのための手順と同様である。
【実施例4】
【0172】
ペプチドリンカー(C末端システイン)を有するAffilin(商標)変異体SPC1−A7_Cysの結合特性の分析
【0173】
実施例3において精製したAffilin(商標)変異体SPC1−A7_Cysの結合特性を、濃度依存ELISAで試験した。この目的のため、NUNCプレートのウェルを、100μLの抗原溶液(10μg/mL ヒトモノクローナルIgG Fc部位、Roche社)を用いて、4℃で一晩コートした。翌日、ELISAプレートを、PBS(3%BSA、0.5%Tween20)で、2時間、室温でブロッキングした。PBS(0.1%Tween20)を用いてウェルを洗浄した後、前記修飾されたAffilin(商標)を、濃度依存法(濃度範囲:10μM〜0μM)で、前記ウェルに添加し、1時間、室温でインキュベートした。PBS(0.1%Tween20)を用いて別のウェルを洗浄した後、モノクローナル抗ヒトGC抗体(POD−複合体;Biogenes社、ベルリン)を1:1000の希釈で添加し(50μL/ウェル)、再度、1時間、室温でインキュベートした。その後、前記ウェルをPBS(0.1%Tween20)で3回、およびPBSで3回洗浄し、TMB Plus(Kementec社、デンマーク)で呈色反応を開始した(50μL/ウェル)。室温で20分間のインキュベート後、前記呈色反応を0.2M硫酸50μL/ウェル)の添加により停止した。得られた黄色を450nm(参照波長:620nm)で検出し記録した(図4)。測定値の評価は、233nMの見かけK値が明らかにした。この値は、非修飾のAffilin(商標)SPC1−A7およびSPC1−A7BB(280nM)と、ほとんど同じである。従って、システインを含むペプチドリンカーを有するAffilin(商標)SPC1−A7のC末端修飾は、変異体の結合能力に影響しなかった。
【実施例5】
【0174】
フィコエリスリン(PE)に対するIgG結合Affilin(商標)SPC1−A7_Cysの選択的なカップリング
【0175】
IgGにするAffilin(商標)SPC1−A7_Cysの活性化PEに対するカップリングを、下記のように行った。1mg/mLのSPC1−A7_Cys(PBS中)を、10mMDTTを用いて、30分間、室温で還元した。還元段階の間、PD−10カラム(Amersham Biosciences社製)を、カラムの5倍量のPBSで洗浄した。前記還元を行った後、過剰なDTTを分離するために、前記反応混合物を平衡化したPD−10カラムに添加した。この方法により、還元されたSPC1−A7_Cysを、マレイミド活性化フィコエリスリン(Prozyme社)に、5:1のモル比で加え、ゆるやかな攪拌下、1時間、室温でインキュベートした。その後、未反応の前記Affilin(商標)の遊離スルフヒドリル基を、NEM(N−ethylmaleimid)添加により、20分間、室温でブロッキングした。引き続いて、前記反応混合物を、ゲルろ過(Sephadex S−200 HR)法により精製し、対応する画分を混合し、4℃で保存した。複合体の分析を分光学的に行った。この目的のため、250〜750nmの範囲における吸光スペクトルを測定し、PEおよびAffilin(商標)の濃度を、決定または提供された吸光係数法により測定した。前記得られたAffilin(商標)とPEとの複合体(SPC1−A7_Cys_PE)について、IgG Fcに対する結合特性を前記BIACOREで試験した。この目的のため、IgG Fcに結合させたCM5チップを、ランニングバッファーとしてHBS−EPと共に、連続的な流れ30μ/Lで用いた。SPC1−A7_Cys_PEを異なる濃度で、次々に前記チップを通過させ、得られたセンサーグラムを、前記BIACORE evaluation Softwareを用いて分析した。肉眼的解離定数でK=10−7Mから10−8Mに減少する結果となったカップリングにより、アビディティー効果が得られたことがわかった(図5)。
【実施例6】
【0176】
前記IgG結合Affilin(商標)SPC1−A7BBに対する蛍光染料Oyster(商標)556の非特異的なカップリング
【0177】
前記蛍光染料Oyster(商標)556(Molecular Probes社)を、前記IgG結合Affilin(商標)SPC1−A7BB(遊離システインを有さない)に結合させ、結合に関する試験を行った。
【0178】
カップリング工程を下記のように行った。10mMリン酸バッファー(pH8.5)中、1mg/mLのSPC1−A7BBを、前記蛍光染料Oyster(商標)556(20μLの無水DMFに溶解)に1:2のモル比で加え、30分間、室温でインキュベートした。前記カップリング反応を等量の10%グリセロール溶液の添加により停止し、前記試料をPD−10カラムと通して精製した。その後、カップリングの程度を分光学的に定量化した。この目的のために、複合体の濃度を280nmでの吸光法により決定し、提供された補正因子(Molecular Probes社)を用いて補正した。それから、カップリングの程度をOyster(商標)556および複合体の濃度の商(quotient)から求め、1分子Affilin(商標)/0.8分子Oyster(商標)であることを決定した。前記得られた複合体の結合能力の分析は、濃度依存ELISA(実施例1のように行った)およびBiacore測定により行った(図6)。Affilin(商標)SPC1−A7BBの結合能力が、前記蛍光染料Oyster(商標)へのカップリング後、影響されないことがわかった。
【実施例7】
【0179】
前記IgG結合Affilin(商標)SPC1−A7BBに対するホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素(POD)の非特異的なカップリング
【0180】
Affilin(商標)変異体SPC1−A7BBは、非特異的に前記POD酵素に結合された。結合試験は、Affilin(商標)の結合活性およびPODの酵素活性を保持することを示した。前記複合体を、下記のプロトコールにより調製した。
【0181】
5mgの凍結乾燥ホースラディッシュペルオキシダーゼ(POD、Shgma社)を250μLの純水に溶解し、37.5μLの0.1M過ヨウ素酸ナトリウム溶液を加え、10分間、20℃でインキュベートした。その後、25μLのエチレングリコールを加え、さらに5分間、20℃でインキュベートした。前記ペルオキシダーゼを、ゲルろ過(G25、NAP−5カラム)により純水で透析した。
【0182】
250μLの精製Affilin(商標)SPC1−A7BB(IMAC、ゲルろ過、4mg/mL PBS)を、100μLの0.1M炭酸バッファー(pH9.6)に加え、1mgの活性化ペルオキシダーゼ(Sigma社)を加えた(約100μL)。前記カップリング混合物を、攪拌下、2時間、20℃でインキュベートした。その後、カップリング混合液1mL当たり10μLの0.5M水素化ホウ素ナトリウムを加え、短時間で混合し、攪拌なしで、2時間、4℃でインキュベートした。前記反応試料を、G25カラムを用いて、PBSに緩衝した。0.1%チオメルサール(Roth)を保存のために添加した。ヒトIgGに対する複合体の結合活性の試験を、以下のように行った。
【0183】
前記標識化Affilin(商標)をPBS(0.5%BSA、0.05%Tween20、0.01%チオメルサール)で希釈し、前記溶液を、ヒトIgG(10μg/mL、100μg/mL)でコートしたマイクタイタープレートに添加した。インキュベーション時間を、室温で1時間とした。その後、各ウェルを、それぞれ、250μLのPBS(0.1%Tween20、0.01%チオメルサール)で3回洗浄し、100μLのTMBを用いて10〜20分間、室温で再度インキュベートした。反応は、100μLの0.5M硫酸の添加により停止させた。吸光(450nm、参照として620nm)をマイクロプレート測光器で測定した(図7)。POD活性は、前記反応試料1:10,000の希釈まで検出でき、これはSPC1−A7BBに対するPODの成功したカップリングを示す、コントロール測定により、シグナルを妨げる非結合PODを除外した。
【実施例8】
【0184】
マトリクスに対するγ−II―クリスタリンおよびユビキチンに基づくAffilin(商標)の特異的および非特異的なカップリング
【0185】
マトリクスに対するAffilin(商標)のカップリングが、下記の方法により得られた。
1.)デキストランマトリクスに対するC末端システインを介したAffilin(商標)SPU3−A1_Cysのカップリング、
2.)BIACOREシステムの前記デキストランマトリクスに対する第1級アミノ基を介したAffilin(商標)SPC7−E9のカップリング、および、
3.)EDC/NHSによるポリメタクリル酸マトリクスに対するAffilin(商標)SPC7−E9の非特異的なカップリング。
【0186】
1.)BIACOREシステムのデキストランマトリクスに対するSPU3−A1_Cysのカップリングを、導入したC末端システインを介して、選択的に行った。この目的のため、デキストランマトリクスのカルボキシル基を、NHS/EDCを用いて、接触時間2分間で活性化し、続いて、チオールカップリング試薬PDEA(0.1Mホウ酸バッファーpH8.5中に2−(2−ピリジニルジチオ)エタンアミン)を加えた。4分間の反応時間の後、精製されたSPU3−A1_Cys(20mMリン酸バッファー、pH6.0)を、この方法において修飾された前記デキストランチップに添加し、前記反応を7分間続けた。未反応PDEAの不活性化を、50mM L−システイン(1M NaCl)を用いて4分間行った。この方法により、350ユニット(RU)のSPU3−A1_Cysを前記チップ上に固定化でき、さらに反応速度分析に使用できた。反応速度測定の後、前記チップを、0.1グリシン(pH2.2)、6M Gua/HCl、6M尿素および20%エタノールを用いて再生した。この方法において、Affilin(商標)チップの結合活性は、20〜30回の再生サイクル後でさえ変化しなかった(図8)。
【0187】
2.)さらに、以下の方法により、SPC7−E9を、前記BIACOREデキストランマトリクスのカルボキシル基に対して、NHS/EDC法により、表面に露出したアミノ基(リジン)を介して、非特異的に結合することができた。前記CM5チップを、7分間、NHS/EDCを用いて活性化し、その後、精製SPC7−E9(20mMリン酸ナトリウムバッファー、pH6.0)を、さらに、7分間、前記チップに通過させた。カップリングを行った後、残留した反応性基を、1Mエタノールアミン(pH8.5)を用いて7分間不活性化した。解離定数の分析のため、標的proNGFを異なる濃度で前記チップに通過させ、結合をオンラインでモニターし(図9)、続いて、曲線を前記BiaEvaluation Softwareを用いて評価した。この方法において、K値を1.4nMと決定できた。反応速度測定の後、前記チップを0.1グリシン(pH2.2)、10mM HCl、10mM NaOH、6M Gua/HCl、6M尿素および20%エタノールを用いて再生した。この方法において、前記Affilin(商標)チップの結合活性は、複数回の再生サイクル後でさえ変化しなかった。
【0188】
3.)精製SPC7−Epタンパク質(4mg)を、PD−10カラム(Amersham社)に通して、0.1Mホウ酸バッファー(0.5M NaSO、pH9)に緩衝させ、Fractogel(商標)EMD Epoxy(M)に結合させた。この目的のため、前記ゲル(0.5g)を、0.1Mホウ酸バッファー(0.5M NaSO、pH9)において、2時間、室温でインキュベートし、その後、このバッファーを用いて数回洗浄した。カップリング反応を前記エポキシマトリクスへのSPC7−E9の添加により開始し、24時間、室温で連続的に攪拌を続けた。コントロールとして、SPC7−E9を有しない標準カラムを用い、同様の方法で処理した。1Mエタノールアミン(pH9.5)により、前記反応を、48時間、室温で停止し、前記ゲルマトリクスを、酢酸ナトリウムバッファー(0.1M、pH4.0)、1M NaClおよびPBSを用いて(それぞれカラムの50倍量ずつ)洗浄した。この方法により産出された前記Affilin(商標)SPC7−E9親和性マトリクスをCカラム(Amersham Biosciences社、1×10cm)に充填し、クロマトグラフィーシステム(Akta Exploer、Amersham Biosciences社)に連結した。全てのケースにおいて、PBS(0.5mM EDTA)を、ランニングバッファーとして、流速1mL/分で用いた。この方法において産出された前記Affilin(商標)カラムの結合能力を検査するために、精製proNGFを添加した。前記カラムを10〜20倍量のランニングバッファーで洗浄した後、結合したproNGFを、0.1Mグリシン(pH2.0)を用いて溶出した(図10)。さらに、BSAの基質混合物およびE.coliの粗抽出液から、proNGFを分離することが可能であった。この目的のため、1mLのBSA溶液(5mg/mL、Sigma社)を、0.5mLのproNGF(1.3mg/mL)に混合し、前記Affilin(商標)カラムに添加した。前記カラムを、カラムの20倍量のランニングバッファーで洗浄した後、結合したproNGFをグリシン(0.1M、pH2.2)で溶出した。カラムの10倍量の6M Gua/HClで、前記カラムを再生した後、さらに、1mLのE.coli粗抽出液(50mLのBl21の一晩培養液の菌体ペレットの細胞破壊(リゾチーム/ベンゾナーゼ/超音波)後の可溶化上清)と0.5mLのproNGF(1.3mg/m)との混合物を、前記Affilin(商標)カラムに添加した。前記カラムを、カラムの20倍量のランニングバッファーで洗浄した後、グリシン(0.1M、pH2.2)で、結合したproNGFを溶出した。続いて、前記カラムを、0.1Mグリシン(pH2.2)、10mM HCl、10mM NaOH、6M Gua/HCl、6M尿素および20%エタノールを用いて再生した。BSAおよびE.coli粗抽出液からのproNGFの分離からの前記溶出画分を、ゲル電気泳動法により分析した(図11)。10回のテストの後、前記SPC7−E9カラムに対するproNGFの未変化の結合が観測できた。
【0189】
【表1】

【0190】
【表2】

【0191】
ヒトγ−II−クリスタリンライブラリのDNA配列
CR20 (SEQ ID NO:1)
ATGGGTNNKATCNNKTTCNNKGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTNNKTACNNKTGCNNKACCGACTGCCCGAACCTGCAGCCGTACTTCTCCCGTTGCAACTCCATCNNKGTTNNKTCCGGTTGCTGGATGATCTACGAACGTCCGAACTACCAGGGTCACCgtcaccagtacttcctgcggcgtggggagtaccccgactaccagcaatggatgggcctcagcgactccatccgctcctgctgcctcatccccccccactctggcgcttacagaatgaagatctacgacagagatgaattgaggggacaaatgtcagagctcacagacgactgtctctctgttcaggaccgcttccacctcactgaaatt

cactccctcaatgtgctggagggcagctggatcctctatgagatgcccaactacagggggaggcagtatctgctgaggccgggggagtacaggaggtttcttgattggggggctccaaatgccaaagttggctctcttagacgagtcatggatttgtacgcg
【0192】
γ−II−クリスタリンに基づくAffilin(商標)のDNA配列
SPC1-A1 (SEQ ID NO:2)
ATGGGTTTTATCTGGTTCATGGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTAGGTACGATTGCGGTACCGACTGCCCGAACCTGCAGCCGTACTTCTCCCGTTGCAACTCCATCAAGGTTAAGTCCGGTTGCTGGATGATCTACGAACGTCCGAACTACCAGGGTCACCgtcaccagtacttcctgcggcgtggggagtaccccgactaccagcaatggatgggcctcagcgactccatccgctcctgctgcctcatccccccccactctggcgcttacagaatgaagatctacgacagagatgaattgaggggacaaatgtcagagctcacagacgactgtctctctgttcaggaccgcttccacctcactgaaattcactccctcaatgtgctggagggcagctggatcctctatgagatgcccaactacagggggaggcagtatctgctgaggccgggggagtacaggaggtttcttgattggggggctccaaatgccaaagttggctctcttagacgagtcatggatttgtacgcg

SPC1-A7 (SEQ ID NO:3)
ATGGGTCTGATCTGTTTCTCTGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTAGGTACATGTGCCTGACCGACTGCCCGAACCTGCAGCCGTACTTCTCCCGTTGCAACTCCATCAATGTTTGGTCCGGTTGCTGGATGATCTACGAACGTCCGAACTACCAGGGTCACCgtcaccagtacttcctgcggcgtggggagtaccccgactaccagcaatggatgggcctcagcgactccatccgctcctgctgcctcatccccccccactctggcgcttacagaatgaagatctacgacagagatgaattgaggggacaaatgtcagagctcacagacgactgtctctctgttcaggaccgcttccacctcactgaaattcactccctcaatgtgctggagggcagctggatcctctatgagatgcccaactacagggggaggcagtatctgctgaggccgggggagtacaggaggtttcttgattggggggctccaaatgccaaagttggctctcttagacgagtcatggatttgtacgcg

SPC1-G3 (SEQ ID NO:4)
ATGGGTTCTATCATTTTCCTTGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTATTTACGGTTGCACTACCGACTGCCCGAACCTGCAGCCGTACTTCTCCCGTTGCAACTCCATCGTGGTTCAGTCCGGTTGCTGGATGATCTACGAACGTCCGAACTACCAGGGTCACCgtcaccagtacttcctgcggcgtggggagtaccccgactaccagcaatggatgggcctcagcgactccatccgctcctgctgcctcatccccccccactctggcgcttacagaatgaagatctacgacagagatgaattgaggggacaaatgtcagagctcacagacgactgtctctctgttcaggaccgcttccacctcactgaaattcactccctcaatgtgctggagggcagctggatcctctatgagatgcccaactacagggggaggcagtatctgctgaggccgggggagtacaggaggtttcttgattggggggctccaaatgccaaagttggctctcttagacgagtcatggatttgtacgcg

SPC1-A7BB (SEQ ID NO:5)
ATGGGTCTGATCTCTTTCTCTGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTAGGTACATGTgCCTGACCGACTGCCCGAaCCTGCAGCCGTACTTCTCCCGTTGCAACTCCATCAATGTTTGGTCCGGTTGCTGGATGATCTACGaACGTCCGAACTACCAGGGTCACCAGTACTTcCTGCGGCGTGGGGAGTACCCCGACTACCAGCAATGGATGGGCCTCAGCGACTCCATCCGCTCCTGCTGCCTCATCCCCCCCCACTCTGGCGCTTACAGAATGAAGATCTACGACAGAGATGAATTGAGGGGACAAATGTCAGAGCTCACAGACGACTGTCTCTCTGTTCAGGACCGCTTCCACCTCACTGAAATTCACTCCCTCAATGTGCTGGAGGGCAGCTGGATCCTCTATGAGATGCCCAACTACAGGGGGAGGCAGTATCTGCTGAGGCCGGGGGAGTACAGGAGGTTTCTTGATTGGGGGGCTCCAAATGCCAAAGTTGGCTCTCTTAGACGAGTCATGGATTTgTACCTCGAGCACCACCACCACCACCAC

SPC1-A7JJ (His10を含む) (SEQ ID NO:6)
ATGGGTCTGATCTCTTTCTCTGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTAGGTACATGTgCCTGACCGACTGCCCGAaCCTGCAGCCGTACTTCTCCCGTTGCAACTCCATCAATGTTTGGTCCGGTTGCTGGATGATCTACGaACGTCCGAACTACCAGGGTCACCAGTACTTcCTGCGGCGTGGGGAGTACCCCGACTACCAGCAATGGATGGGCCTCAGCGACTCCATCCGCTCCTGCTGCCTCATCCCCCCCCACTCTGGCGCTTACAGAATGAAGATCTACGACAGAGATGAATTGAGGGGACAAATGTCAGAGCTCACAGACGACTGTCTCTCTGTTCAGGACCGCTTCCACCTCACTGAAATTCACTCCCTCAATGTGCTGGAGGGCAGCTGGATCCTCTATGAGATGCCCAACTACAGGGGGAGGCAGTATCTGCTGAGGCCGGGGGAGTACAGGAGGTTTCTTGATTGGGGGGCTCCAAATGCCAAAGTTGGCTCTCTTAGACGAGTCATGGATTTgTACCTCGAGTgCGGCGGCCATCACCATCACCACCACCACCACCACCAC

SPC1-A7_Cys (His10を含む) (SEQ ID NO:7)
ATGGGtCTGATCTCTtTcTcTGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTAGGtAcAtgTGCCTgAcCGacTgCccGAACCTGCAGCCGTACTTcTcCCGTTGCAACTCCATCAATGTTTGGTCCGGTTGCTGGATGATCTACGAACGTCCGAACTACCAGGGTCACCAGTACTTcCTGCGGCGTGGGGAGTACCCCGAcTACCAGCAATGGATGGGCCTCAGCGACTCCATCCGCTCCtGCTGCCTCATCCCCCCCCACTCTGGCGCTTACAGAATGAAGATCTACGACAGAGATGAATTGAGGGGACAAATGTCAGAGCTCACAGACGACTGTCTCTCTGTTCAGGACCGCTTCCACCTCACTGAAATTCACTCCCTCAATGTGCTGGAGGGCAGCTGGATCCTCTATGAGATGCCCAACTACAGGGGGAGGCAGTATCTGCTGAGGCCGGGGGAGTACAGGAGGTTTCTTGATTGGGGGGCTCCAAATGCCAAAGTTGGCTCTCTTAGACGaGTCATgGATTTgTACCTCGAGTCCGGCGGCGGGGGGGGAGGaTCTTgCCATCACCATCACCACCaCCACCAcCACCAC

SPC7-E9 (His6を含む) (SEQ ID NO:8)
ATGGGTTTTATCTGTTTCTTGGAAGACCGTGCTTTCCAGGGTCGTTCTTACGCTTGCGATACTGACTGCCCGAACCTGCAGCCGTACTTCTCCCGTTGCAACTCCATCAGTGTTCTGTCCGGTTGCTGGATGATCTACGAACGTCCGAACTACCAGGGTCACCAGTACTTCCTGCGGCGTGGGGAGTACCCCGACTACCAGCAATGGATGGGCCTCAGCGACTCCATCCGCTCCTGCTGCCTCATCCCCCCCCACTCTGGCGCTTACAGAATGAAGATCTACGACAGAGATGAATTGAGGGGACAAATGTCAGAGCTCACAGACGACTGTCTCTCTGTTCAGGACCGCTTCCACCTCACTGAAATTCACTCCCTCAATGTGCTGGAGGGCAGCTGGATCCTCTATGAGATGCCCAACTACAGGGGGAGGCAGTATCTgCTGAGGCCGGGGGAGTACAGGAGGTTTCTTGATTGGGGGGCTCCAAATGCCAAAGTTGGCTCTCTTAGACGAGTCATGGATTTGTACCTCGAGCACCACCACCACCACCAC
【0193】
ヒトユビキチンライブラリのDNA配列
Ubiquitin wildtype (SEQ ID NO:9)
ATGCAGATCTTCGTGAAGACCCTGACCGGCAAGACCATCACTCTGGAGGTGGAGCCCAGTGACACCATCGAAAATGTGAAGGCCAAGATCCAAGATAAAGAAGGCATTCCCCCCGACCAGCAGAGGCTCATCTTTGCAGGCAAGCAGCTGGAAGATGGCCGCACTCTTTCTGACTACAACATCCAGAAAGAGTCGACCCTGCACCTGGTCCTCCGCCTGAGGGGCGGC

Modified ubiquitin (MUBI) (SEQ ID NO:10)
ATGCAAATCTTCGTTAAAACCCTGACGGGAAAGACTATCACCCTGGAGGTAGAACCGTCCGACACCATCGAAAATGTCAAAGCTAAAATCCAAGACAAAGAAGGAATTCCACCTGACCAGCAACGCCTAGCTTTCGCAGGACGACAACTAGAGGACGGGCTCACCCTGTCTGACTACAACATCCAAAAAGAATCCACCCTCCACCTGGCACTCCTCCTGCGGGCC

UB10 (library) (SEQ ID NO:11)
ATGNNKATCNNKGTTNNKACCCTGACGGGAAAGACTATCACCCTGGAGGTAGAACCGTCCGACACCATCGAAAATGTCAAAGCTAAAATCCAAGACAAAGAAGGAATTCCACCTGACCAGCAACGCCTAGCTTTCGCAGGACGACAACTAGAGGACGGGCTCACCCTGTCTGACTACAACATCNNKNNKNNKNNKNNKCTCCACCTGGCACTCCTCCTGCGGGCC
【0194】
ユビキチンに基づくAffilin(商標)のDNA配列
SPU11-3-A1 (His6を含む) (SEQ ID NO:12)
ATGCGGATCCGTGTTGCTACCCTGACGGGAAAGACTATCACCCTGGaGGTAGAACCGTCCGACACCATCGAAAATGTCAAAGCTAAAATCCAAGACAAAGAAGGAATTCCACCTGACCAGCAACGCCTAGCTTTCGCAGGACGACAACTAGAGGACGGGCTCACCCTGTCTGACTACGACATCCGTCATGGTACGTCGCTCCACCTGGcACTCCTCCTGCGGGCCCTCGAGCACCACCACCACCACCAC

SPU11-3-A1_Cys (His10を含む) (SEQ ID NO:13)
ATGCGGATCCGTGTTGCTACCCTGACGGGAAAGACTATCACCCTGGaGGTAGAACCGTCCGACACCATCGAAAATGTCAAAGCTAAAATCCAAGACAAAGAAGGAATTCCACCTGACCAGCAACGCCTAGCTTTCGCAGGACGACAACTAGAGGACGGGCTCACCCTGTCTGACTACGACATCCGTCATGGTACGTCGCTCCACCTGGcACTCCTCCTGCGGGCCCTCGAGTCCGGCGGCGGGGGGGGAGGATCTTGCCATCACCATCACCACCACCACCACCACCAC
【0195】
プライマー
pCAN700 (SEQ ID NO:14)
(5’-CCA TGA TTA CGC CAA GCT TTG GAG CC-3’)
A7Cys4Ser_for (SEQ ID NO:15)
(5’-CCA TGG GTC TGA TCT CTT TCT CTG AAG ACC G-3’)
A7Cys4Ser_rev (SEQ ID NO:16)
(5’-CGG TCT TCA GAG AAA GAG ATC AGA CCC ATG G-3’)
pETTerm (SEQ ID NO:17)
(5’-GCT AGT TAT TGC TCA GCG GTG GC-3’)
A7Gly2Cys_for (SEQ ID NO:18)
(5’-GGA TTT GTA CCT CGA GTG CGG CGG CCA TCA CCA TCA CCA CCA CCA CCA CCA CCA CTG AGA TCC GGC-3’)
A7Gly2Cys_rev (SEQ ID NO:19)
(5’-GCC GGA TCT CAG TGG TGG TGG TGG TGG TGG TGA TGG TGA TGG CCG CCG CAC TCG AGG TAC AAA TCC-3’)
A7Gly2Ser_for (SEQ ID NO:20)
(5’-GGA TTT GTA CCT CGA GTC CGG CGG CCA TCA CC-3’)
A7Gly2Ser rev (SEQ ID NO:21)
(5’-GGT GAT GGC CGC CGG ACT CGA GGT ACA AAT CC-3’)
A7Gly2Ser_rev (SEQ ID NO:22)
(5’-GGT GAT GGC CGC CGG ACT CGA GGT ACA AAT CC-3’)
Gly4SerCys_HindIII (SEQ ID NO:23)
(5’-GGG GGA AGC TTT TAT CAG TGG TGG TGG TGG TGG TGG TGA TGG TGA TGG CAA GAT-3’)
A7Cys4Ser_Nde (SEQ ID NO:24)
(5’-GGA GAT ATA CAAT ATG GGT CTG ATC TCT TTC TCT G-3’)
【0196】
SEQ ID NO: 25:
ATGAAATACC TATTGCCTAC GGCAGCCGCT GGATTGTTAT TACTCGCGGC CCAGCCGGCC 60
ATGGCCATGC AAATCTTCGT TAAAACCCTG ACGGGAAAGA CTATCACCCT GGAGGTAGAA 120
CCGTCCGACA CCATCGAAAA TGTCAAAGCT AAAATCCAAG ACAAAGAAGG AATTCCACCT 180
GACCAGCAAC GCCTAGCTTT CGCAGGACGA CAACTAGAGG ACGGGCTCAC CCTGTCTGAC 240
TACAACATCC AAAAAGAATC CACCCTCCAC CTGGCACTCC TCCTGCGGGC C 291
SEQ ID NO: 26
ATGCAAATCT TCGTTAAAAC CCTGACGGGA AAGACTATCA CCCTGGAGGT 50
SEQ ID NO: 27
GGATTTTAGC TTTGACATTT TCGATGGTGT CGGACGGTTC TACCTCCAGG GTG 53
SEQ ID NO: 28
GTCAAAGCTA AAATCCAAGA CAAAGAAGGA ATTCCACCTG ACCAGCAACG CCT 53
SEQ ID NO: 29
GGGTGAGCCC GTCCTCTAGT TGTCGTCCTG CGAAAGCTAG GCGTTGCTGG 50
SEQ ID NO: 30
GACGGGCTCA CCCTGTCTGA CTACAACATC CAAAAAGAAT CCACCCTCCA 50
SEQ ID NO: 31
GAGTGCTCGC AGCAGGAGTG CCAGGTGGAG GGTGGATTC 39
SEQ ID NO: 32
GATATACATA TGCAAATCTT CG 22
SEQ ID NO: 33
GTGGTGCTCG AGTGCTCG 18
SEQ ID NO: 34
CCAGCCGGCC ATGGCCATGN NKATCNNKGT TNNKACCCTG ACGGGAAAGA CTATC 55
SEQ ID NO: 35
CAGGAGGAGT GCCAGGTGGA GMNNMNNMNN MNNMNNGATG TTGTAGTCAG ACAGG 55
SEQ ID NO: 36
GTTATTACTC GCGGCCCAGC CGGCCATGGC CATG 34
SEQ ID NO: 37
GAGTTTTTGT TCGGCCTCGA GGGCCCGCAG GAGGAGTGCC AGGTGGAG 48
【0197】
参照文献
Ausuebel, F.M., Brent, R., Kinston, R.E., Moore, D.D., Seidmann, J.G., Smith, J.A. and Struhl, K. (1994): Current protocols in molecular biology. John Wiley & Sons, Inc.
Berman, H. M., Westbrook, J., Feng, Z., Gilliland, G., Bhat, T. N., Weissig, H., Shindyalov, I. N. und Bourne, P. E. (2000) The Protein Data Bank. Nucleic Acid Res., 28, 235-242.
Blundell, T., Lindley, P., Miller, L., Moss, D., Slingsby, C., Tickle, I., Turnell, B., and Wistow, G. (1981). The molecular structure and stability of the eye lens: x-ray analysis of gamma-crystallin II. Nature 289, 771-777.
Buchberger A, Howard MJ, Proctor M, Bycroft M, National Library of Medicine, J Mol Bil. 2001 Mr 16; 307(1); 17-24.
Butt, T. R., Jonnalagadda, S., Monia, B. P., Sternberg, E. J., Marsh, J. A., Stadel, J. M., Ecker, D. J. and Crooke, S. T. (1989) Ubiquitin fusion augments the yield of cloned gene products in Escherichia coli. PNAS 86, 2540-2544.
Finucane, M. D., Tuna, M., Lees, J. H., and Woolfson, D. N. (1999). Core-directed protein design. I. An experimental method for selecting stable proteins from combinatorial libraries. Biochemistry 38, 11604-11612.
Finucane, M. D., and Woolfson, D. N. (1999). Core-directed protein design. II. Rescue of a multiply mutated and destabilized variant of ubiquitin. Biochemistry 38, 11613-11623.
Haber, A. F. S. A. (1972). Reaction of protein sulfhydryl groups with Ellman´s reagent. In Methods Enzymology, C. H. Hirs, and S. N. Timasheff, eds., pp. 457-464.
Hanes, J. et al. (1997): In vitro selection and evolution of functional proteins by using ribosome display. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 94, 4937-42.
Hazes, B. and Hol, W. G. J. (1992): Comparison of the hemocyanin β-barrel with other greek key b-barrels: possible importance of the β-zipper in protein structure and folding. Proteins: Struct., Funct. Gen. 12, 278-298.
Hemmingsen, J. M., Gernert, K. M., Richardson, J. S. and Richardson, D. C. (1994): The tyrosine corner: a feature of most greek key b-barrel proteins. Prot. Science 3, 1927-1937.
Herrmann, J. E., and Morse, S. A. (1973) Coupling of peroxidase to poliovirus antibody: Characteristics of the conjugates and their use in virus detection. Infection and Immunity, 645-649.
Jaenicke, R. (1994). Eye-lens proteins: structure, superstructure, stability, genetics. Naturwissenschaften 81, 423-429.
Jaenicke, R. (1996). Stability and folding of ultrastable proteins: eye lens crystallins and enzymes from thermophiles. Faseb J 10, 84-92.
Jaenicke, R., and Slingsby, C. (2001). Lens crystallins and their microbial homologs: structure, stability, and function. Crit Rev Biochem Mol Biol 36, 435-499.
Kumaraswamy, V. S., Lindley, P. F., Slingsby, C., and Glover, I. D. (1996). An eye lens protein-water structure: 1.2 angstrom resolution structure of gamma B-crystallin at 150K. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 52, 611.
Larsen CN, Wang H., National Library of Medicine ; J Proteome Res. 2002 Sep-Oct; 1(5): 411-9.
Lazar, G. A., Desjarlais, J. R., and Handel, T. M. (1997). De novo design of the hydrophobic core of ubiquitin. Protein Sci 6, 1167-1178.
Ling, M. M. (2003). Large antibody display libraries for isolation of high-affinity antibodies. Comb Chem High Throughput Screen 6, 421-432.
Lottspeich, F., and Zorbas, H. (1998). Bioanalytik (Heidelberg, Spektrum Akademischer Verlag).
Mandal, K., Chakrabart, B., Thomson, J. and Siezen, R. J. (1987): Structure and stability of β-crystallins. Denaturation and proteolysis behaviour. J. Biol. Chem. 262, 8096-8102.
Mayr, E. M., Jaenicke, R., and Glockshuber, R. (1994). Domain interactions and connecting peptides in lens crystallins. J Mol Biol 235, 84-88.
Murzin A. G., Brenner S. E., Hubbard T. und Chothia C. (1995). SCOP: a structural classification of proteins database for the investigation of sequences and structures. J. Mol. Biol. 247, 536-540.
Najmudin, S., Nalini, V., Driessen, H. P., Slingsby, C., Blundell, T., Moss, D., and Lindley, P. (1993). Structure of bovine gB (g II)-crystalline at 1.47 angstrom. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49, 223-233.
Norledge, B. V., Mayr, E. M., Glockshuber, R., Bateman, O. A., Slingsby, C., Jaenicke, R., and Driessen, H. P. (1996). The X-ray structures of two mutant crystallin domains shed light on the evolution of multi-domain proteins. Nat Struct Biol 3, 267-274.
Reichlin, M. (1980) Use of glutaraldehyde as a coupling agent for proteins and peptides. Methods Enzymol 70, 159-165.
Richardson, J. S., Richardson, D. C., Tweedy, N. B., Gernert, K. M., Quinn, T. P., Hecht, M. H., Erickson, B. W., Yan, Y., McClain, R. D., Donlan, M. E. and Surles, M. C. (1992): Looking at proteins: representations, folding, packing and design. Biophys. J. 63, 1186-1209.
Riddle, D. S., Santiago, J. V., Bray-Hall, S. T., Doshi, N., Grantcharova, Q. Y and Baker, D. (1997): Functional rapidly folding proteins from simplified amino acid sequences. Nature structural biology 4, 805-809.
Rudolph, R., Siebendritt, R., Nesslauer, G., Sharma, A. K., and Jaenicke, R. (1990). Folding of an all-beta protein: independent domain folding in gamma II-crystallin from calf eye lens. Proc Natl Acad Sci U S A 87, 4625-4629.
Sambrook, J., Maniatis, T. and Fritsch, E.F. (1989): Molecular Cloning: A laboratory manual. Cold spring Harbor. Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York.
Sharma, A. K., Minke-Gogl, V., Gohl, P., Siebendritt, R., Jaenicke, R., and Rudolph, R. (1990). Limited proteolysis of gamma II-crystallin from calf eye lens. Physicochemical studies on the N-terminal domain and the intact two-domain protein. Eur J Biochem 194, 603-609.
Slingsby, C.(1985): Structural variation in lens crystallins. TIBS 10, 281-284.
Smith, G. P (1985): Filamentous Fusion Phage: Novel expression vectors that display cloned antigens on the virion surface. Science 228, 1315-1317.
Stahl, S. and Uhlen, M. (1997): Bacterial surface display: trends and progress. TIBTECH 15, 185-192.
Takamiya, H., Shimizu, F., and Vogt, A. (1975) A two-stage method for cross-linking antibody globulin to ferritin by glutaraldehyde.III. Size and antibody activity of the conjugates. J Immunol Methods 8(4), 301-306.
Vijay-Kumar, S., Bugg, C. E., and Cook, W. J. (1987). Structure of ubiquitin refined at 1.8 A resolution. J Mol Biol 194, 531-544.
Voet, D., and Voet, J. G. (1995). Biochemistry, Second Edition edn (New York, John Wiley & Sons, Inc.).
Wistow, G., Turnell, B., Summers, L., Slingsby, C., Moss, D., Miller, L., Lindley, P., and Blundell, T. (1983). X-ray analysis of the eye lens protein gamma-II crystallin at 1.9 A resolution. J Mol Biol 170, 175-202.
Wistow, G. J., and Piatigorsky, J. (1988). Lens crystallins: the evolution and expression of proteins for a highly specialized tissue. Annu Rev Biochem 57, 479-504.
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】γ−II−クリスタリンの空間的構造。N末端ドメインにおいて、新規に産出した結合表面を黄色で示す。前記結合表面の外側に局在したリジン残基のC末端部位を、赤の球により強調する。
【図2】固定化されたIgG Fcを有するCM5チップに対するAffilin(商標)変異体SPC1−A1(A)、SPC1−A7(B)およびSPC1−G3(C)の結合を競合させるための、Biacore試験のセンサーグラム。前記試験のため、180RUのポリクローナルIgG Fcを固定化した。結合競合のため、表示された濃度の変異体およびIgG Fcを用いた。HBS−EPを、流速30μL/分で、ランニングバッファーとして用いた。
【図3】proNGFに対するSPC7−E9の結合の検出のための濃度依存ELISA。マイクロタイタープレートを10μg/mLのproNGFでコートした。1::1000の希釈で抗ヒトのγ−II−クリスタリン抗体−POD複合体を、検出抗体として用いた。示された吸光度は、2つの同時測定の平均値である。200nMの見かけ上のK値が計算された。
【図4】ヒトのIgG Fcに対するSPC1−A7_Cysの結合を検出するための濃度依存ELISA。マイクロタイタープレートを10μg/mLのIgG Fcでコートした。1:1000の希釈で抗ヒトγ−II−クリスタリン抗体―POD複合体を、検出抗体として用いた。示された吸光度は、2つの同時測定の平均値である。233nMの見かけ上のK値が計算された。
【図5】固定化されたIgG Fcを有するCM5チップに対するSPC1−A7BB−PE複合体の結合のためのBiacore試験のセンサーグラム。3000RUのIgG Fcを固定化し、121nM(赤)、75nM(緑)、6nM(青)濃度のSPC1−A7BB−PE複合体を、前記チップに通過させた。結合段階を1分間、続けて、解離段階を3分間とした。HBS−EPを、流速30μL/分で、ランニングバッファーとして用いた。曲線から、肉眼でのK値15nMが計算された。
【図6】固定化されたIgG Fcを有するCM5チップに対するSPC1−A7Oyster556の結合を試験するためのBiacore試験のセンサーグラム。1000RUのIgG Fcを前記チップ上に固定化し、1μM(青)および5μM(赤)濃度のSPC1−A7Oyster556を、前記チップに通過させた。結合および解離段階をどちらも3分間とした。HBS−EPを、流速30μL/分で、ランニングバッファーとして用いた。
【図7】ELISAによるIgGに対するAffilin(商標)−POD複合体の結合の検出。10μg/mLのヒトIgGをマイクロタイタープレート上に固定化した。PBS中のAffilin(商標)―POD複合体の別の希釈液をマイクロタイタープレート上で1時間インキュベートした。洗浄工程の後、結合したPODの活性をTMB基質溶液により検出した。
【図8】NGFに対するSPU11−3−A1_Cysの結合のためのBiacore試験のセンサーグラム。200RUのSPU11−3−A1_Cysを、PDEA法によりCM5チップに結合させ、異なる濃度のNGFを、前記チップに通過させた。結合および解離段階をどちらも3分間とした。PBS(1mM EDTA、0.005%界面活性剤P20含有)を、流速30μL/分で、ランニングバッファーとして用いた。曲線から、K値46nMが計算された。
【図9】proNGFを有するCM5チップに対するSPC7−E9の結合のためのBiacore試験のセンサーグラム。280RUのproNGFを、固定化し、異なる濃度のproNGFを、前記チップに通過させた。HBS−EPを、流速30μL/分で、ランニングバッファーとして用いた。曲線から、K値1.4nMが計算された。
【図10】SPC7−E9親和性カラムからのproNGFの溶出。400μgの精製されたproNGFを添加し(時間0、ピンクの点線)、後の洗浄を、カラム体積の20倍量のランニングバッファーにより行った。前記溶出を、0.1MグリシンpH2.2(緑線)により行った。前記作業を、1mL/分の流速で行った。タンパク質の検出を、280nm(青線)により行った。
【図11】BSA溶液およびE.coliの粗抽出液からのproNGF分離のSDS−PAGE。(左から右に向かって)レーン1:マーカータンパク質、レーン2:BSA標準、レーン3:proNGF標準、レーン4:BSAおよびproNGF標準の混合物(開始)、レーン5:フロースルー、レーン6:0.2Mグリシン(pH2.2)による溶出液、レーン7:なし、レーン8:E.coliの粗抽出液(Bl21)およびproNGF標準、レーン9:フロースルー、レーン10:0.2Mグリシン(pH2.2)による溶出液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分を含む複合体であり、
ユビキチンまたはγ−クリスタリンに基づく1以上のポリペプチド(I)であって、対応する野生型ポリペプチドと比較して新たに発生または変化させたリガンドに対する特異的結合の結合特性を、それぞれ有する前記ポリペプチドと、
それに共有結合的に結合される1以上の機能性成分(II)とを含み、
前記(II)に対する前記(I)のカップリング後、全ての成分の機能性が維持されている、複合体。
【請求項2】
前記野生型ポリペプチドと比較して新たに発生または変化させた前記結合特性が、前記ポリペプチド分子(I)のβシートの表面露出領域における1以上のアミノ酸置換に基づく、請求項1記載の複合体。
【請求項3】
前記(II)に対する前記(I)のカップリングが、リガンドに特異的に結合するための前記ポリペプチド分子(I)のβシートの表面露出領域の外部領域において行われる、請求項1または2記載の複合体。
【請求項4】
前記(II)に対する前記(I)のカップリングが、リガンドに対する特異的結合の新たに発生または変化させた結合特性を有する前記ポリペプチド分子(I)のβシートの外部領域において行われる、請求項3記載の複合体。
【請求項5】
前記(II)に対する前記(I)のカップリングが、前記(I)のアミノ酸残基を介して行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
前記(II)に対する前記(I)のカップリングが、(I)への付加的な末端ペプチド融合におけるアミノ酸残基を介して行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
前記カップリングが、前記(I)におけるシステインまたはリジン側鎖を介して、未方向性(未配向性)の形式で、部位特異的または選択的に行われる、請求項5記載の複合体。
【請求項8】
前記リガンドに対する前記(I)の結合表面の外部側鎖が、カップリングに関与する、請求項5または7記載の複合体。
【請求項9】
前記ユビキチンに基づくポリペプチド分子(I)において、前記カップリングが、前記ユビキチン分子のリジン残基29および33を介して行われる、請求項7または8記載の複合体。
【請求項10】
前記γ−クリスタリンに基づくポリペプチド分子(I)において、リガンドに対する特異的結合の新たに発生または変化させた結合特性を有するペプチドドメインが、N末端ドメインであり、且つ、前記(II)に対する(I)のカップリングが、C末端ドメインを介して行われる、請求項7または8記載の複合体。
【請求項11】
前記(I)に対する付加的な末端ペプチド融合が、1以上のシステイン残基または1以上のリジン残基を含み、好ましくは、これらのアミノ酸残基は、リガンドとの(I)の相互作用に関与しない、請求項6記載の複合体。
【請求項12】
前記機能性成分(II)が、ポリペプチドおよびタンパク質、有機ポリマーおよび無機ポリマー、核酸、脂質、糖、低分子量物質、ペプチドならびにこれらの物質の誘導体からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項13】
前記機能性成分(II)が、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、好ましくは、タンパク質発色団、酵素、免疫グロブリン、免疫グロブリン誘導体、毒素または(I)のポリペプチドである、請求項12記載の複合体。
【請求項14】
前記機能性成分(II)が、ポリマー、好ましくは、デキストラン、ポリメタクリル酸、セファロース、アガロース、ポリビニル、ポリスチレン、シリカゲル、セルロースもしくはポリエチレングリコール、またはポリマー誘導体である、請求項12記載の複合体。
【請求項15】
前記機能性成分(II)が、低分子量物質、好ましくは、染料、ビオチン、ジオキシゲニン、重金属、キレート剤、放射性同位元素、抗生物質または細胞毒物質である、請求項12記載の複合体。
【請求項16】
前記成分(I)が、ポリペプチド、ペプチド、低分子量物質、脂質、糖、核酸、有機ポリマーおよび無機ポリマー、ならびに、これらの物質の誘導体からなる群から選択されたリガンドに対する新たに発生または変化された特異的結合の結合特性を示す、請求項1から15のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項17】
前記成分(I)が、ポリペプチドまたはタンパク質、好ましくは、免疫グロブリンおよび免疫グロブリン誘導体、血漿から得られるタンパク質、血液凝固因子および阻害剤、成長因子、インターロイキン、サイトカイン、受容体タンパク質、糖化タンパク質、ウイルスタンパク質ならびに細胞表層マーカーであり、好ましくは、CD14、CD25およびCD34であるリガンドに対する新たに発生または変化された特異的結合の結合特性を示す、請求項1から16のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項18】
前記成分(I)が、ペプチド、好ましくは、アフィニティタグ、好ましくは、S−タグ、T7−タグ、His−タグ、Strep−タグ、Myc−タグもしくはFLAG−タグ、または、ウイルス由来ペプチドであるリガンドに対する新たに発生または変化された特異的結合の結合特性を示す、請求項1から17のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項19】
前記成分(I)が、低分子量物質、好ましくは、ステロイド、コレステロールおよび、例えば、ハロゲン化炭化水素のような有毒物質であるリガンドに対する新たに発生または変化された特異的結合の結合特性を示す、請求項1から18のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項20】
前記成分(I)が、脂質または脂質誘導体、好ましくは、細菌のリポポリサッカライド、リポソームおよびリポタンパク質であるリガンドに対する新たに発生または変化された特異的結合の結合特性を示す、請求項1から19のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項21】
前記成分(II)が、前記(I)と同一の、γ−クリスタリンまたはユビキチンに基づく1以上のポリペプチドであり、それに共有結合されることによって、(I)のリガンドに対する親和性の向上が、アビディティー効果により達成される、請求項1から20のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項22】
前記成分(II)が、成分(I)が数回共有結合する、ポリペプチド、タンパク質またはポリマーであり、
これによって、前記(I)のリガンドに対する親和性の向上が、アビディティー効果により達成される、請求項1から21のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項23】
前記成分(II)が、ポリペプチドまたはポリマーであり、前記成分(I)に対する共有結合の後、同型の他の複合体に対する共有結合または非共有結合を受け、
これによって、前記(I)のリガンドに対する親和性の向上が、アビディティー効果により達成される、請求項1から22のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項24】
前記成分(I)が、SPC1−A1(Seq.ID NO.2)、SPC1−A7(Seq.ID NO.3)、SPC1−G3(Seq.ID NO.4)、SPU11−3−A1(SEQ ID NO.12および13)およびSPC7−E9(SEQ ID NO.8)の分子のうちの1つである、請求項1から23のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項に記載の複合体を製造する方法であって、既知配列の成分(I)から開始され、下記工程を含む方法。
タンパク質の空間構造の分析による、カップリングに適したアミノ酸残基、好ましくは、リガンドとの(I)の相互作用の表面の外部残基の同定;
適したカップリング試薬によるカップリングパートナーの活性化;
カップリング反応の実行;
複合体の単離;および
複合体の両成分の機能性の検出
【請求項26】
請求項1から24のいずれか一項に記載の複合体を製造する方法であって、カップリングに適したアミノ酸残基が同定されていない既知配列の成分(I)から開始され、下記工程を含む方法。
置換、挿入または融合によるカップリングに適したアミノ酸残基、好ましくは、リガンドとの(I)の相互作用表面の外部表面に露出される残基の導入;
導入されたアミノ酸残基の露出度の検出;
この方法により変化させた成分(I)の機能性の検出;
適したカップリング試薬によるカップリングパートナーの活性化;
カップリング反応の実行;
複合体の単離;および
複合体の両成分の機能性の検出
【請求項27】
請求項25または26記載の方法により製造される前記複合体。
【請求項28】
請求項1から24または27のいずれか一項に記載の複合体を含む診断キット。
【請求項29】
請求項1から24または27のいずれか一項に記載の複合体、および、薬学的に許容されるキャリアを含む、薬学組成物。
【請求項30】
前記機能性成分が、膜、ポリマービーズまたはクロマトグラフィー支持材である、請求項1から24または27のいずれか一項に記載の複合体を含む親和性向上のための組成物。
【請求項31】
診断、治療およびアフィニティークロマトグラフィーに使用するための、請求項1から24のいずれか一項に記載の複合体、請求項27記載の複合体、または、請求項28、29もしくは30記載のキットもしくは組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2008−516210(P2008−516210A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535119(P2007−535119)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010932
【国際公開番号】WO2006/040129
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(501139870)シル プロテインズ ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Scil Proteins GmbH
【住所又は居所原語表記】Heinrich−Damerow−Str. 01, D−06120, Halle, Germany
【Fターム(参考)】