説明

治療剤の細胞内送達のためのミセル

ポリマーミセルおよび会合したポリヌクレオチドを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年5月13日出願の米国仮出願No.61/052,908、2008年5月13日出願の米国仮出願No.61/052,914、2008年8月22日出願の米国仮出願No.61/091,294、2008年11月6日出願の米国仮出願No.61/112,048、2008年12月24日出願の米国仮出願No.61/140,774および、2009年4月21日出願の米国仮出願No.61/171,369、2008年12月24日出願のNo.61/140,779、2008年11月6日出願の米国仮出願No.61/112,054、2009年4月21日出願の米国仮出願No.61/171,358の優先権を主張し、その各々は引用により全体としてここに組み込まれる。
【0002】
ここに記載されるのは、ポリマーから形成されるミセルおよび前記ミセルの使用である。
【背景技術】
【0003】
ある場合において、治療剤、例えばポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)を生細胞に提供することが有利である。ある場合において、前記ポリヌクレオチドの生細胞への送達により治療的有用性が提供される。
【発明の概要】
【0004】
ここで提供されるのは、治療剤の細胞内送達のためのミセル(例えば、オリゴヌクレオチド、ペプチドなど)である。いくつかの実施形態において、前記細胞内送達はインビトロであり;別の実施形態において、前記細胞内送達はインビボである。
【0005】
いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセルは特に、患者における所望の部位の治療的介入のミセルの正味重量の標的送達のために設計される。したがってミセルは、好ましくは生理学的pHでの希釈に対して安定である。いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセルは生理学的条件下で安定であり、ミセルの望ましくない解離を防止する臨界ミセル濃度を有する。更なるまたは別の実施形態において、ここで記載されるミセルを含むブロックポリマーは生理学的条件下で増強されたミセルの完全性のために設計されたブロック割合、ブロックサイズおよび/または中心的性質および/または外殻特性を有する。更なるまたは別の実施形態において、生理学的環境でのミセルの完全性もまた、ミセルを含むブロックコポリマーの組成に依存する。したがってここで提供されるのは、最小の毒性および/またはミセルの正味重量の損失による治療剤の効率的な細胞内送達に適切なミセルを提供するために設計される特定のパラメータ(例えば、ミセルの外殻ブロックおよび中心ブロックにおけるブロックコポリマーの数平均分子量、ブロックコポリマーの荷電部分の数など)である。
【0006】
いくつかの実施形態において提供されるのは、ポリマーミセルおよびミセルに会合するポリヌクレオチドを含む組成物であり、ミセルは複数のブロックコポリマーを含み、各々のブロックコポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、複数のブロックコポリマーは、ミセルがほぼ中性pHの水性溶媒中で安定であるように会合し、
(a)ミセルはさらに以下から選択される2以上の特性を有する:
(i)ミセルが、ミセルあたり約10〜約100のブロックコポリマーを含む、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、約0.2μg/mL〜約20μg/mL
(iii)核酸の非存在下での自発的ミセル会合、
(iv)重量平均分子量約0.5×10〜約3.6×10ダルトン;
(v)粒径約5nm〜約500nm;および
(b)以下から選択される1以上の特性;
(i)疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比が1:1〜1:10、および
(ii)多分散性指数、約1.0〜約2.0。
【0007】
いくつかの実施形態において提供されるのは、ポリマーミセルおよびミセルと会合するポリヌクレオチドを含む組成物であり、各々のブロックコポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、複数のブロックコポリマーはほぼ中性pHの水系溶媒中でミセルが安定であるように会合し、
(a)ミセルは以下から選択される2以上の特性をさらに有する:
(i)ミセルが、ミセルあたり約10〜100のブロックコポリマーを含む、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、0.5 M NaCl中で約0.2μg/mL〜約20μg/mL;
(iii)核酸の非存在下での自発的ミセル会合、
(iv)重量平均分子量、約0.5×10〜約3.6×10ダルトン;および
(b)以下から選択される1以上の特性を有するブロックポリマー:
(i)疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1〜約1:10、および
(ii)多分散性指数、約1.0〜約2.0。
【0008】
いくつかの実施形態において提供されるのは、ポリマーミセルおよびミセルと会合するポリヌクレオチドを含む組成物であり、ミセルは複数のブロックコポリマーを含み、各々のブロックコポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、複数のブロックコポリマーがほぼ中性pHの水性溶媒中で安定であるように会合し、ミセルはさらに以下から選択される2以上の特性を有する:
(i)会合数、ミセルあたり約10〜100鎖、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、約0.2μg/mL〜約20μg/mL
(iii)粒径約5 nm〜約500 nm
いくつかの実施形態において提供されるのは、ポリマーミセルおよびミセルと会合したポリヌクレオチドを含む組成物であり、ミセルは複数のブロックコポリマーを含み、各々のブロックコポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、複数のブロックコポリマーは、ほぼ中性の水系溶媒中でミセルが安定であるように会合し、ブロックコポリマーは以下から選択される2以上の特性を有する:
(i)疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1〜約1:10、
(ii)多分散性指数、約1.0〜約2.0、および
(iii)重量平均分子量、約0.5×10〜約3.6×10 g/mol。
【0009】
ある実施形態において、副段落(i)(ii)(iii)(iv)および(v)の3つ以上の特性を有する。ある実施形態において、副段落(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)のすべての特性を有する。
【0010】
ある実施形態において組成物は副段落(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)のすべての特性を有するブロクコポリマーを含む。いくつかの実施形態においてブロックコポリマーは、疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1〜約1:10を有する。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1.5〜約1:6を有する。ある実施形態においてブロックコポリマーは疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:2〜約1:4を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、組成物はミセルあたり約10〜100のブロックコポリマーを含むミセルを含む。いくつかの実施形態において、ミセルはミセルあたり約20〜約60のブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ミセルはミセルあたり約30〜約50のブロックコポリマーを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において組成物は、約0.2μg/mL〜約20μg/mLの臨界ミセル濃度CMCを有するミセルを含む。いくつかの実施形態においてミセルは、約0.5μg/mL〜約10μg/mLの臨界ミセル濃度CMCを有する。いくつかの実施形態においてミセルは、約1μg/mL〜約5μg/mLの臨界ミセル濃度CMCを有する。
【0013】
いくつかの実施形態において組成物は、疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1.5〜約1:6を有するブロックコポリマーを含み;ミセルは
(i)ミセルあたり約25〜約60のブロックコポリマーを含み、および
(ii)約0.5μg/mL〜約10μg/mLの臨界ミセル濃度を有する。
【0014】
いくつかの実施形態においてブロックコポリマーは、疎水性ブロック対親水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:2〜約1:4を有し;ミセルは:
(i)ミセルあたり約30〜約50のブロックコポリマーを含み、および
(ii)約1μg/mL〜約5μg/mLの臨界ミセル濃度CMCを有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは約1.0〜約2.0の多分散性指数を有する。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、約1.0〜約1.7の多分散性指数を有する。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは約1.0〜約1.4の多分散性指数を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、ここで提供される組成物は約0.5×10〜約3.6×10の凝集分子量Mwを有するミセルを含む。いくつかの実施形態において、ミセルは約0.75×10〜2.0×10の凝集分子量Mwを有する。いくつかの実施形態において、ミセルは約1.0×10〜約1.5×10の凝集分子量Mwを有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、ミセルは約5nm〜約500nmの粒径を有する。いくつかの実施形態において、ミセルは約10nm〜約200nmの粒径を有する。いくつかの実施形態において、ミセルは約20nm〜約100nmの粒径を有する。
【0018】
ここで提供される組成物のいくつかの実施形態において、各々のミセルと会合するポリヌクレオチドの数は約1〜約10,000である。いくつかの実施形態において、各々のミセルと会合するポリヌクレオチドの数は約4〜約5,000である。いくつかの実施形態において、各々のミセルと会合するポリヌクレオチドの数は約15〜約3,000である。いくつかの実施形態において、各々のミセルと会合するポリヌクレオチドの数は約40〜約2,500である。
【0019】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、複数のカチオン性モノマー単位であり、親水性ブロックにおけるカチオン種はポリヌクレオチドとイオン会合している。いくつかの実施形態において、カチオン性モノマー単位はカチオン性モノマー、非荷電のブレンステッド塩基モノマー、またはその組合せの残基である。
【0020】
ここで提供される組成物のいくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドはRNAi作用物質またはsiRNAである。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドはミセルの中心には存在しない。
【0021】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、親水性ブロックおよび/または疎水性ブロックにおける複数のアニオン性モノマー単位を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、ミセルは複数の非荷電モノマー単位を親水性ブロックおよび/または疎水性ブロックに含むブロックコポリマーを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、ミセルは、親水性ブロックおよび/または疎水性ブロッに複数の両性イオンモノマー単位を含むブロックコポリマーを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、ミセルは疎水性ブロックに複数の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ミセルは疎水性ブロックに少なくとも20の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ミセルは疎水性ブロックに少なくとも15の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ミセルは疎水性ブロック中に少なくとも10の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ミセルは少なくとも5の荷電可能な残基を疎水性ブロックに含むブロックコポリマーを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、ここで記載される組成物は、共有結合的に1以上の複数のブロックポリマーに結合する1以上のポリヌクレオチドを含むポリマーバイオ結合体(bioconjugate)を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドはsiRNAである。
【0026】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、プロトン化し得るアニオン種および複数の疎水性種を有する複数のモノマー単位を含むブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、アニオン性モノマー単位はアニオン性モノマー、非荷電ブレンステッド酸モノマー、またはそれらの組合せの残基である。
【0027】
いくつかの実施形態において、ミセルは、疎水性種を有する重合可能なモノマー由来の複数のモノマー単位を含むブロックコポリマーを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、ブロックコポリマーを不安定化する膜である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の特徴および利点は、説明的な実施形態、ここで本発明の原理が利用されるが、ここで説明する以下の詳細な記載を参照することによってより良く理解され、その添付図面は以下である:
【図1】図1:組成物の説明的な例およびRAFT合成したポリマーの特性。
【図2】図2:[PEGMA]−[B−P−D]ポリマーの合成の説明的な例。
【図3】図3:組成物の説明的な例およびRAFT合成したポリマーの特性。
【図4】図4:組成物の説明的な例およびPEGMA−DMAEMAコポリマーの特性。
【図5】図5:[PEGMA−MAA(NHS)]−[B−P−D]ポリマーの合成の説明的な例。
【図6】図6:組成物の説明的な例およびRAFT合成したポリマーの特性。
【図7】図7:組成物の説明的な例およびRAFT合成したポリマーの特性。
【図8】図8:PDSMAの合成。
【図9】図9:siRNA結合のためのHPMA−PDSMAコポリマーの合成。
【図10】図10:ブロックコポリマーPRx0729v6のNMR分光法の説明的な例。
【図11】図11:有機溶媒中のポリマーPRx0729v6の粒子安定性の説明的な例。
【図12】図12:ポリマーPRx0729v6の説明的な透過電子顕微鏡(TEM)分析。
【図13】図13:ポリマー構造に対するpH効果の説明的な例。
【図14】図14:ポリマーPRx0729v6の臨界安定濃度(CSC)の説明的な例。
【図15】図15:siRNAと複合体を形成するポリマーPRx0729v6の粒径の動的光散乱(DLS)測定の説明的な例。
【図16】図16:異なる電荷比でのポリマーPRx0729v6/siRNA錯体のゲルシフト分析の説明的な例。
【図17】図17:哺乳類細胞において培養されたsiRNA−ミセル複合体のノックダウン活性の説明的な例。
【図18】図18:哺乳類細胞において培養されたsiRNA−ミセル複合体のノックダウン活性の説明的な例。
【図19】図19:ポリマーミセルの不安定化活性およびそれらのsiRNA錯体の説明的な実証。
【図20】図20:細胞取り込みおよびポリマー−siRNA複合体の細胞内分布の説明的な蛍光顕微鏡法。
【図21】図21:ガラクトース末端官能化ポリ[DMAEMA]−マクロCTAの説明的な例。
【図22】図22:ガラクトース官能化されたDMAEMA−MAA(NHS)またはPEGMA−MAA(NHS)ジブロックコポリマーの説明的な例。
【図23】図23:結合可能なsiRNAおよびピリジルジスルフィドアミンの構造の説明的な例。
【発明の詳細な説明】
【0030】
ここで、ある実施形態において提供されるのは、ポリマーミセルおよびミセルと会合したポリヌクレオチドを含む組成物である。一般に各々のブロックコポリマーは、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含む。ある実施形態において、ここで記載されるポリマーミセルは、水系溶媒中、例えば中性pHで安定となるような様式で会合する。
【0031】
いくつかの実施形態において、ミセルを含むブロックコポリマーは外殻ブロックおよび中心ブロックを含む。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは疎水性の中心および親水性の外殻を含む。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは自己会合する。いくつかの実施形態において、ミセルの形成はポリヌクレオチド非存在下で起こる。いくつかの実施形態において、ミセルの形成はポリヌクレオチドの存在下で起こる。特定の実施形態において、ここで記載されるミセルは自発的に自己会合する。
【0032】
ある実施形態において、ミセルの中心は複数の疎水性基を含む。いくつかの実施形態において、疎水性基はほぼ中性pHで疎水性である。さらに特定の実施形態において、疎水性基は弱酸性のpH(例えば、pH約6および/または約pH5)でより疎水性である。ある実施形態において、2、4、10、15、20以上の疎水性基が、ポリマーブロックに存在し、これは他の同様のポリマーブロックと共にミセルの中心を形成し得る。いくつかの実施形態において、疎水性基は約1以上のπ値を有する。化合物のπ値は、相対的な親水性−親油性値の尺度である(例えば、Cates, L.A.,“Calculation of Drug Solubilities by Pharmacy Students” Am.J.Pharm.Educ.45:11−13(1981)を参照のこと)。
【0033】
特定の実施形態において、外殻ブロックは親水性である(例えば、ほぼ中性のpHにおいて)。いくつかの実施形態において、ミセルは約4.7〜約6.8のpHで不安定化するか、または解離する。
【0034】
ある場合には、ここで提供されるのは生細胞への治療剤の送達のために適切なミセル組成物である(これは例えば、オリゴヌクレオチドまたはペプチドを含む)。いくつかの実施形態において、ミセルは複数のブロックコポリマーと、任意に少なくとも1つの治療剤を含む。ある実施形態において、ここで提供されるミセルは生体適合性があり、安定であり(これは化学的および/または物理的安定を含む)、および/または再現可能に合成される。さらに、いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセル会合は非毒性であり(例えば、低い毒性を示す)、治療剤(例えば、オリゴヌクレオチドまたはペプチド)の正味重量を分解から保護し、自然発生的プロセス(例えばエンドサイトーシス)を介して生細胞に入り、および/または細胞と接触した後、治療剤(例えばオリゴヌクレオチドまたはペプチド)の正味重量を生細胞の細胞質へと送達する。ある場合には、ポリヌクレオチド(例えばオリゴヌクレオチド)がsiRNAおよび/または他の「ヌクレオチドに基づく」薬剤であり、これは細胞中で少なくとも1つの遺伝子の発現を変更する。したがって、ある実施形態において、ここで提供されるミセルはsiRNAまたはペプチドの細胞への送達に有用である。ある場合には、細胞はインビトロであり、他の場合、細胞はインビボ(例えば、人間の対象)である。いくつかの実施形態において、治療に効果的な量のsiRNAまたはペプチドを含むミセルは、それを必要とする(例えば、ノックダウンされる遺伝子を必要とし、ここで投与されたsiRNAにより遺伝子をノックダウンし得る)個体に投与される。特定の場合、ここで記載されるミセル組成物は、個体の特異的標的細胞へのsiRNAまたはペプチドの送達に有用であるか、またはそのために特異的に設計されている。
【0035】
定義
この出願に関して、特に示さない限り、単数形の使用には複数形も含まれ、またその逆も同様である。即ち、「a」および「the」は、その語が何を修飾しようと1以上を指す。例えば「ポリマー」または「ヌクレオチド」は1のポリマーもしくはヌクレオチド、または複数のポリマーまたはヌクレオチドを指す。同様に、特に示さない限り、またはそのことが意図されないことが内容から明らかでない限り、「ポリマー」および「ヌクレオチド」は1のポリマーまたは1のヌクレオチド、および複数のポリマーまたはヌクレオチドを指す。
【0036】
ここで用いられる通り、いずれかの相互作用により保持される場合、2つの成分または化合物は「結合して(attached)」おり、これには1以上の共有結合、1以上の非共有相互作用(例えば、イオン結合、静電力、ファンデルワールス相互作用、それらの組み合わせなど)またはそれらの組合せが含まれる。
【0037】
脂肪族化合物または脂肪族基:「脂肪族化合物」または「脂肪族基」の語は、ここで用いられる通り、直鎖(即ち、非分枝)、分枝または環状(縮合、架橋およびスピロ縮合した多環を含む)であってよく、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含んでもよいが、芳香族ではない炭化水素部分を意味する。他に示さない限り、脂肪族基は1〜20の炭素原子を含む。
【0038】
アニオン性モノマー:ここで用いられる通り、「アニオン性モノマー」または「アニオン性モノマー単位」はモノマーまたはモノマー単位であり、これはアニオン性荷電状態または非荷電状態に存在する基を有するが、非荷電状態は、例えば求電子剤の除去(例えば、プロトン(H)、例えばpHに依存した方法で)により、アニオン性荷電状態になることができる。ある場合には、ほぼ生理学的pHで基は実質的にマイナスに荷電するが、弱酸性pHでプロトン化し、実質的に中性になる。前記基の非限定的な例は、カルボキシル基、バルビツール酸およびその誘導体、キサンチンおよびその誘導体、ボロン酸、ホスフィン酸、スルフィン酸、ホスフェート、ならびにスルホンアミドを含む。
【0039】
アニオン種:ここで用いられる通り、「アニオン種」は、アニオン性荷電または非荷電状態に存在する基、残基または分子であるが、非荷電状態は、求電子剤の除去により(例えば、プロトン(H)、例えばpHに依存した方法で)、アニオン性荷電状態になることができる。ある場合において、基、残基または分子は、ほぼ生理学的pHで実質的にマイナスに荷電するが、弱酸性pHでプロトン化を経て実質的に中性になる。
【0040】
アリールまたはアリール基:ここで用いられる通り、「アリール」または「アリール基」の語は、単環、二環および三環系を指し、これは5〜14の環の要素(member)を有し、ここで系において少なくとも1つの環は芳香族であり、系において各々の環は3〜7の環の要素を含む。
【0041】
ヘテロアルキル:「ヘテロアルキル」の語はアルキル基を意味し、ここで骨格の炭素原子の少なくとも1つはヘテロ原子に置換される。
【0042】
へテロアリール:「ヘテロアリール」の語はアリール基を意味し、ここで環の要素の少なくとも1つはヘテロ原子である。
【0043】
ヘテロ原子:「ヘテロ原子」の語は、水素または炭素以外の原子を意味し、例えば酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素、セレンまたはケイ素原子を意味する。
【0044】
ここで用いられる通り、ミセルは、安定なミセルと同一、実質的に同様または同様の様式で機能せず、および/または同一、実質的に同様または同様の物理的および/または化学的特性を持たない場合、「崩壊」している。ミセルの「崩壊」は、いずれかの適切な様式により決定し得る。ある場合、同じブロックコポリマーを含み、水系溶液中pH7.4で形成されるか、またはヒト血清中で形成されるミセルの流体力学的粒径の5倍、4倍、3倍、2倍、1、8倍、1.6倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍または1.1倍未満の流体力学的粒径を持たない場合、ミセルは「崩壊」している。ある場合において、同じブロックコポリマーを含み、水系溶液中pH7.4で形成されるか、またはヒト血清中で形成されるミセルの会合濃度の5倍、4倍、3倍、2倍、1.8倍、1.6倍、1.5倍、1.4倍1.3倍、1.2倍または1.1倍未満の会合濃度を持たない場合、ミセルは「崩壊」している。
【0045】
ここで用いられる通り、「荷電種」「荷電可能な基」または「荷電可能なモノマー単位」は荷電または非荷電状態のいずれかの状態にある種、基またはモノマー単位である。ある場合、「荷電可能なモノマー単位」は、求電子剤の付加または除去により(例えば、プロトン(H+)、例えばpHに依存する方法で)、荷電状態(アニオン性もしくはカチオン性荷電状態のいずれか)に変換され得るものである。「荷電可能な種」、「荷電可能な基」または「荷電可能なモノマー単位」の何れかの語の使用は、特に明記しない限り「荷電可能な種」、「荷電可能な基」または「荷電可能なモノマー単位」の他のいずれかの開示を含む。「アニオンに荷電した、または荷電可能な基」または「アニオン種に荷電した、または荷電可能な基」である「荷電可能な種」は種または基であり、これはアニオン荷電状態または非荷電状態のいずれかであるが、例えばプロトン(H+)などの求電子剤の除去により「非荷電状態」をアニオン荷電状態に変換することができる。特定の実施形態において、荷電可能な種は、ほぼ中性のpHでアニオンに荷電する種である。ポリマー上の荷電可能な種の全てが荷電可能な種のpKa(酸解離定数)に近いpHでアニオン性であるが、むしろアニオン性および非アニオン種の平衡が共存するであろうことは強調すべきである。「カチオンに荷電した、または荷電可能」または「カチオン種に荷電した、または荷電可能」である「荷電可能な種」は、カチオン荷電状態または非荷電状態のいずれかであるが、例えば、求電子剤、例えばプロトン(H+)などの付加により非荷電状態をカチオン荷電状態に変換することができる。特定の実施形態において、荷電可能な種は、ほぼ中性のpHでカチオンに荷電する種である。ポリマー上の荷電したカチオン種すべてが荷電したカチオン種のpKa(酸解離定数)の付近のpHで、カチオン性ではないがむしろカチオン種および非カチオン種の平衡が共存するであろうことは強調すべきである。ここで記載される「荷電可能なモノマー単位」は「荷電可能なモノマー残基」に代えて用いられる。
【0046】
ここで用いられる通り、「実質的に非荷電の」または「中性した荷電」は、±10〜±30 mVのゼータ電位、および/または、負電荷に荷電可能な荷電可能な種(例えば、脱プロトン化によりアニオン性になる酸性種)の第一数(z)および正電荷に荷電可能な荷電可能な種(プロトン化によりカチオン性になる塩基性種)の第二数(0.5z)の存在を含む。
【0047】
ここで用いられる通り、「連結部分」または「リンカー」は、化学的結合または多官能価の(例えば、二官能価の)残基であり、これはRNAi剤、例えばオリゴヌクレオチドおよび/または標的剤をブロックコポリマーへ連結するために用いられる。リンカー部分はアミド、エステル、エーテル、チオエーテル、カルバメート、尿素、アミンまたは他の結合、例えばアフィニティクロマトグラフィーでの生体分子の固定のために通常用いられる結合を形成し得る種々の化合物のいずれかを含む。いくつかの実施形態において、連結部分は開裂可能な結合を含み、これは例えば不安定であり、および/または特定の細胞内パラメータ(例えば、pHまたは酸化還元電位)の変化により開裂する結合である。いくつかの実施形態において、連結部分は開裂不可能である。特定の実施形態において、連結部分は1以上の共有結合によりRNAi剤または標的剤に結合する。いくつかの実施形態において、連結部分は1以上の共有結合によってポリマーを不安定化するpH依存性の膜に結合する。
【0048】
疎水性種:ここで用いられる通り「疎水性種」(ここで「疎水性増強部分」と交換可能に用いられる)の語は部分、例えば置換基、残基または基であり、これは分子、例えばモノマーまたはポリマーなどに共有結合的に結合する場合、分子の疎水性を増加するか、または疎水性増強部分として働く。「疎水性」の語は、化合物の非極性溶媒と水との間の化合物の転移の自由エネルギーにより測定される物理的特性を説明する専門用語である(Hydrophobicity regained. Karplus P.A., Protein Sci., 1997, 6: 1302-1307.)。化合物の疎水性は、そのlogP値、即ち分配係数(P)の対数により評価することができ、これは2つの不混和性の溶媒、例えばオクタノールと水の混合物の2つの相中の化合物の濃度の比として規定される。疎水性を決定する実験的方法、およびコンピュータ支援のlogP値の計算方法は、当業者に既知である。本発明の疎水性種は、脂肪族、ヘテロ脂肪族およびヘテロアリール基を含むがこれらに限定されない。
【0049】
ここで用いられる通り、「疎水性中心」は疎水性部分を含む。特性の場合において、「疎水性中心」は実質的に非荷電である(例えば、電荷は実質的に中性ではない)。
【0050】
ポリマーを不安定化する膜は、特許請求の範囲に明確に記載されていない理論にとらわれず、直接的または間接的に、細胞膜構造(例えばエンドソーム膜)における変化(例えば、浸透性の変化)を誘発することができ、それにより薬剤(ポリヌクレオチド)が、ミセル(またはその構成要素であるポリマー)と会合またはそれから独立し、前記膜構造を通過する、例えば、細胞に入るか、または細胞内小胞(例えば、エンドソーム)に出ることを可能にする。膜不安定化ポリマーは、(必ずしもそうではないが)膜破壊的なポリマーである。膜破壊的なポリマーは直接的または間接的に、細胞内小胞の溶解または細胞膜の破壊を誘発し得る(例えば、相当の割合の細胞膜の集合について観察される通り)。
【0051】
一般に、ポリマーまたはミセルの膜不安定化または膜破壊的性質は種々の手段により評価し得る。1つの非限定的なアプローチにおいて、細胞膜構造における変化は、前記膜の外側の環境での薬剤(例えばポリヌクレオチド)の細胞膜(例えばエンドソーム膜)からの放出を測定する分析における評価、例えば前記薬剤の存在もしくは非存在、または前記薬剤の活性の決定により観察することができる。別の非限定的なアプローチは、例えば興味の対象となる細胞膜の代理の分析として、赤血球の溶解(溶血)を測定することに関する。前記アッセイは、単一のpH値、またはpH値の範囲で行われてよい。
【0052】
ここで用いられる通り、「ミセル」は中心および親水性の殻を含む粒子を含み、当該中心が少なくとも部分的、大部分、または実質的に疎水性相互作用によってまとまっている。特定の場合において、ここで用いられる通り、「ミセル」は、少なくとも2つのドメイン、内側のドメインもしくは中心、および外側のドメインもしくは外殻を含む多成分ナノ粒子である。当該中心は少なくとも部分的、大部分または実質的に疎水性相互作用によってまとまっており、ミセルの中心に存在する。ここで用いられる通り、「ミセルの外殻」は、ミセルの中心ではない部分として定義される。
【0053】
「pH依存性の膜不安定化疎水性物質」は、少なくとも部分的、大部分または実質的に疎水性であり、且つpH依存性の様式で膜を不安定化する。特定の場合において、pH依存性の膜を不安定化する荷電可能な疎水性物質は、ブロックコポリマーの疎水性ポリマーセグメントであり、および/または複数の疎水性種を含み;複数のアニオン性の荷電可能な種を含む。いくつかの実施形態において、アニオン性の荷電可能な種は、ほぼ中性のpHでアニオン性である。更なるまたは別の実施形態において、アニオン性の荷電可能な種は、より低い、例えばエンドソームpHで非荷電である。いくつかの実施形態において、膜を不安定化する荷電可能な疎水性物質は、非ペプチド性および非脂質性ポリマー骨格を含む。
【0054】
ここで用いられる通り、通常の生理学的pHは、哺乳類の体の主要な液体、例えば血液、血清、通常の細胞のサイトソルなどのpHをいう。特定の場合において、通常の生理学的pHはほぼ中性pHであり、これは例えばpH約7.2〜約7.4を含む。いくつかの場合において、ほぼ中性のpHは、pH6.6〜7.6を含む。ここで用いられる通り、中性pH、生理学的および生理学的pHは同義であり、交換可能である。
【0055】
ここで用いられる通り、集合が生理学的条件を示す水溶液中、例えばpH7.4のリン酸緩衝食塩水で解離または不安定化しない場合、ミセルは「安定である」と記載される。ミセルの安定性は、臨界ミセル濃度(CMC)により定量的に定義され、これは疎水性プローブ分子の取り込みにより示される通り(例えば、動的光散乱測定により決定される通り)、不安定性が生じる場合のミセル濃度として規定される。特定の場合において、安定なミセルは、流体力学粒径を有するものであり、これはpH7.4の水溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水、pH7.4)の中で初めに形成された同じブロックコポリマーを含む流体力学粒径の約60%、50%、40%、30%、20%または10%である。いくつかの場合において、安定なミセルは形成/集合濃度を有するものであり、pH7.4の水溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水、pH7.4)中で初めに形成された同じブロックコポリマーを含むミセルの形成/集合濃度の約60%、50%、40%、30%、20%または10%以内である。
【0056】
ここで用いられる通り、安定なミセルと同一、実質的に類似または類似の様式で機能、および/または同一の、実質的に類似または類似の物理的および/または化学的特性を持たない場合、ミセルは「不安定化」している。ミセルのいずれかの「不安定化」がいずれかの方法で決定され得る。ある場合には、同じブロックコポリマーを含み、pH7.4の水溶液中で形成されるかまたはヒト血清中で形成されるミセルの流体力学的粒径の5倍、4倍、3倍、2倍、1.8倍、1.6倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍または1.1倍未満の流体力学的粒径を有さない場合、ミセルは「不安定化」している。ある場合には、同じブロックコポリマーを含み、pH7.4の水溶液中で形成されるかまたはヒト血清中で形成されるミセルの集合の5倍、4倍、3倍、2倍、1.8倍、1.6倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍または1.1倍未満の濃度の集合を有さない場合、ミセルは「不安定化」している。
【0057】
ナノ粒子:ここで用いられる通り、「ナノ粒子」の語は、1000ナノメートル(nm)未満の直径を有するいずれかの粒子をいう。一般に、ナノ粒子は真核細胞によりそれらの取り込みが可能なほど小さな寸法を有するべきである。典型的にナノ粒子は、200nm未満のもっとも長い一直線の寸法(例えば直径)を有する。より小さなナノ粒子は例えば、約100nm〜約200nm、約20nm〜約100nm、約10nm〜約50nm、または10nm〜30nmの直径を有し、これはいくつかの実施形態で用いられる。
【0058】
オリゴヌクレオチドノックダウン剤:ここで用いられる通り、「オリゴヌクレオチドノックダウン剤」は、配列特異的な方法で分子内の核酸を標的とし結合することにより遺伝子発現を抑制するオリゴヌクレオチド種である。オリゴヌクレオチドノックダウン剤の非限定的な例は、siRNA、miRNA、shRNA、dicerの基質、アンチセンスオリゴヌクレオチド、デコイDNAまたはRNA、抗原オリゴヌクレオチド、およびいずれかの類似帯およびその前駆体が含まれる。
【0059】
ここで用いられる通り、「ヌクレオチド」の語はそのもっとも広い意味では、ポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)鎖に結合する、または結合し得る化合物および/または物質をいう。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を介してポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)鎖に結合する、または結合し得る化合物および/または物質である。いくつかの実施形態において「ヌクレオチド」は、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)をいう。特定の実施形態において、「少なくとも1つのヌクレオチド」は、存在する1以上のヌクレオチドをいい;種々の実施形態において、1以上のヌクレオチドは個々のヌクレオチドであるか、非共有結合的に互いに結合するか、または共有結合的に互いに結合する。このように特定の場合には、「少なくとも1つのヌクレオチド」は1以上のポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)をいう。いくつかの例では、ポリヌクレオチドは少なくとも2つのヌクレオチドのモノマー単位を含むポリマーである。
【0060】
ここで用いられる通り、「オリゴヌクレオチド」の語は7〜200ヌクレオチドのモノマー単位を含むポリマーをいう。いくつかの実施形態において「オリゴヌクレオチド」は、1本および/または2本鎖RNAおよび1本および/または2本鎖DNAを包含する。さらに「ヌクレオチド」、「核酸」、「DNA」、「RNA」の語および/または同様の語は、核酸類似体、すなわち修飾された骨格を有し、これはペプチド核酸(PNA)、ロックされた核酸(LNA)、ホスホノ−PNA、モルホリノ核酸または修飾されたリン酸基を有する核酸(例えば、ホスホロチオエート、ホスホネート、5’−N−ホスホラミダイト結合)を含むがこれらに限定されない。ヌクレオチドは、天然供給源から精製することができ、これは組換え発現系を用いて産生され、任意に精製、化学的に合成等される。ここで用いられる通り、「ヌクレオチド」は単糖および塩基を含む化合物を表す語である。単糖はペントースおよびヘキソース単糖を含むがこれらに限定されない。単糖はさらに、単糖模倣物およびハロゲン、メトキシ、水素もしくはアミノ基によりヒドロキシル基を置換すること、または更なるヒドロキシル基のエステル化により修飾される単糖も含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、天然のヌクレオシドホスフェート(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシンおよびデオキシシチジンリン酸)であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態において、塩基は、種々の核酸中で天然に生じるいずれかの塩基および前記天然に生じる塩基を模倣するかまたは似ている他の修飾を含む。修飾または誘導体化塩基の非限定的な例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−1−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケウオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−ア
デニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸、ワイブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロプル)ウラシル、2−アミノアデニン、ピロールピリミジン、2,6−ジアミノプリンを含む。
【0061】
ヌクレオチド塩基もまた、共通の核酸塩基、例えばジフルオロトリル、ニトロインドリル、ニトロピロリルまたはニトロイミダゾリルなどを含む。ヌクレオチドもまた、標識を保持し、または塩基、例えば脱塩、即ち塩基を含まないモノマーを含むヌクレオチドを含む。核酸配列は、特に示さない限り5’〜3’方向に提示される。ヌクレオチドは、配列特異的な方法によりワトソン−クリック塩基対を介して水素結合により他のヌクレオチドに結合し得る。前記塩基対は、互いに相補的であると考えられている。オリゴヌクレオチドは、1重らせん、2重らせんまたは3重らせんであってよい。
【0062】
RNAi剤:ここで用いられる通り、「RNAi剤」の語は、RNAi機構により遺伝子発言の阻害を仲介し、siRNA、ミクロRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、ダイサー基質およびそれらの前駆体を含むがこれらに限定されない。
【0063】
低分子干渉RNA(siRNA):ここで用いられる通り、「低分子干渉RNA」または「siRNA」の語は、長さ約15〜50塩基対であり、任意に0〜2の一重らせんオーバーハングをさらに含むヌクレオチド二本鎖をいう。siRNAの1つの鎖は、標的RNAと完全な様式でハイブリダイズする部分を含む。いくつかの実施形態において、siRNAおよび標的RNAの標的部分間での1以上のミスマッチが存在してもよい。いくつかの実施形態において、siRNAは標的転写の分解を生じることにより遺伝子発現の阻害を仲介する。
【0064】
ショートヘアピンRNA(shRNA):ショートヘアピンRNA(shRNA)は、ハイブリダイズするか、または互いにハイブリダイズし、2重らせん(2本鎖)構造および少なくとも1つの1重らせん部分を形成することができる少なくとも2つの相補的部分を有するオリゴヌクレオチドをいう。
【0065】
ダイサー基質:「ダイサー基質」は、約25塩基対よりも大きい、二本鎖RNAであり、これは細胞中のRNAIIIファミリーのメンバー、ダイサーの基質である。ダイサー基質は、切断され、約21塩基の二本鎖の低分子干渉RNA(siRNA)を生じ、これはRNA干渉効果を惹起し、mRNAノックダウンによる遺伝子サイレンシングを生じる。
【0066】
治療剤:ここで用いられる通り、「治療剤」のフレーズは、患者、器官、組織または細胞に投与されるとき、治療的効果を有し、および/または所望の生物学的および/または薬理学的効果を誘発するいずれかの薬剤をいい、これはポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、RNAi剤、ペプチドおよびタンパク質を含むがこれらに限定されない。
【0067】
治療学的に効果のある量:ここで用いられる通り、用語「治療学的に効果のある量」の治療剤は、障害、疾患および/または状態に罹患するか、または感受性のある患者に投与したとき、障害、疾患および/または状態の症状の発症を治療、診断、予防および/または遅らせるのに十分な量を意味する。
【0068】
ミセルの特性
診断剤および/または治療剤(例えば、オリゴヌクレオチド、ペプチドなど)の細胞内送達のためのミセルがここで提供される。いくつかの実施形態において、前記分子内送達はインビトロであり;他の実施形態において前記細胞内送達はインビボである。いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセルは、患者における治療的介入の所望の部位におけるミセルの正味重量の標的送達のために特異的に設計される。いくつかの実施形態において、ここで記載される通り、ミセルは特定の所望の性質を有する。例えば、ミセルは特定の環境(中性/生理学的pH)で安定であり、他の環境(より酸性のpH)でより不安定であるように所望されてもよい。したがって、ここで提供される材料は、前記所望のミセルの性質に寄与する特定のパラメータを開示する。
【0069】
いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセルは生理学的条件で安定であり、臨界ミセル濃度を有し、これはミセルの望ましくない解離を防止する。更なるまたは別の実施形態において、ミセルの完全性(例えば、生理学的環境において)はミセルを含むブロックコポリマーの組成にも依存する。したがって、ここで提供されるのは特定のパラメータ(例えば、外殻ブロック中のブロックコポリマーとミセルの中心ブロックとの数平均分子量比、ブロックコポリマー中の電荷部分の数など)であり、これは最小の毒性および/またはミセル正味重量の損失を有する治療剤の効果的な細胞内送達に適しているミセルを提供するために設計される。
【0070】
したがって、ここで記載されるのは、ミセルおよび当該ミセルと会合するポリヌクレオチドを含む組成物であり、当該ミセルは、当該ミセルがほぼ中性pHの水性溶媒中で安定であるように会合する複数のブロックコポリマーを含む。さらにここで記載されるミセルは、以下の特性のうちの少なくとも1つを有する:
(i)当該ミセルがミセルあたり約10〜約100のブロックコポリマーを有する、
(ii)臨界ミセル濃度CMC約0.2μg/mL〜約20μg/mL、
(iii)核酸の非存在下での自発的なミセル集合;
(iv)粒径約5nm〜約500nm;
(v)重量平均分子量、約0.5×10〜約3.6×10ダルトン。
【0071】
いくつかの実施形態において、ここで提供されるいずれかのミセルは、上記特性の少なくとも2つを有することにより特徴付けられる。いくつかの実施形態において、ここで提供されるいずれかのミセルは、上記特性の少なくとも3つを有することにより特徴付けられる。上記特性のすべてを有することにより特徴付けられる。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、周囲の溶媒(例えば0.5M NaCl)の高いイオン強度に対して安定であり;および/またはミセルは、有機溶媒の濃度の増加とともに増加する不安定性を有し、前記有機溶媒はジメチルホルミアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMA)およびジオキサンを含むがこれらに限定されない。
【0072】
ミセルの組成
ここで提供されるミセルは、ミセルあたり複数のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーはコポリマーである。更なる実施形態において、コポリマーはブロックコポリマーである。ブロックコポリマーはモノブロックポリマーまたはマルチブロックポリマー(例えばジブロックポリマー)である。ここで用いられる通り、「コポリマー」の語は、ポリマーが2以上の異なるモノマーの重合の結果であることを意味する。「モノブロックポリマー」は、単一のポリマー工程の合成の産物である。モノブロックポリマーの語は、コポリマー(即ち、1種類を超えるモノマーの重合の産物)およびホモポリマー(即ち1種類のモノマーの重合の産物)を含む。「ブロック」コポリマーは、構成単位またはモノマー単位の1以上の副結合を含む構造をいう。いくつかの実施形態において、ポリマー中に見出されるモノマー残基はさらに、修飾され、構成単位に到達する。いくつかの実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは、非脂質性構成単位またはモノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーはジブロックコポリマーである。ジブロックコポリマーは2つのブロックを含み;前記ポリマーの概略的な一般化は以下により示される:[A ・・・] − [X ・・・]、式中、各々の文字はモノマーまたはモノマー単位を表わし、モノマー単位の各々の下付き文字は、特定のブロック中のその単位のモル分率を示し、3つの点は各々のブロック中に更なる(2、3個であってよい)モノマー単位があってよいことを示し、mおよびnはジブロックコポリマー中の各々のブロックの分子量を示す。いくつかの場合において図に示唆される通り、各々のモノマー単位の数および性質は、各々のブロックについて個々に制御される。図は、各々のブロック中のモノマー単位の数または種々の種類のモノマー単位の数のいかなる関係を意味するものではなく、且つそのように解釈すべきでない。また、当該図は、特定のブロック内でいずれかの特定数のモノマー単位またはモノマー単位の配置を記載するものでもない。各々のブロックにおいてモノマー単位は特に示さない限り、純粋にランダムな、交互にランダムな、規則的に交互の、規則的なブロックの、またはランダムなブロックの配置で配置されてよい。純粋にランダムな配置、例えば、非限定的な形態:x−x−y−z−x−y−y−z−y−z−z−z…を有してよい。非限定的な、例となる交互にランダムの配置は、非限定的な形態:x−y−x−z−y−x−y−z−y−x−z・・・を有してよく、典型的な規則的に交互の配置は非限定的な形態:x−y−z−x−y−z−x−y−z・・・を有してよい。典型的な規則的なブロック配置は、以下の非限定的な配置:・・・x−x−x−y−y−y−z−z−z−x−x−x・・・を有してよく、一方、典型的なランダムなブロック配置は非限定的な配置:・・・x−x−x−z−z−x−x−y−y−y−y−z−z−z−x−x−z−z−z−・・・を有してよい。グラジエントポリマーにおいて、1以上のモノマー単位の含有率は、ポリマーのアルファ末端からオメガ末端へ勾配の様式で増加または減少する。先行する包括的ないずれの場合においても、個々のモノマー単位もしくはブロックの特定の並列、ブロック中のまたはモノマー単位の数またはブロックの数ではなく、またはそれらは、本発明のミセルを形成するブロックコポリマーの実際の構造に関係するか、またはそれを限定するいずれかの方法として解されるべきではない。
【0073】
ここで用いられる通り、モノマー単位を囲む括弧は、モノマー単位それら自体がブロックを形成することを意味するものではなく、それを意味するものと解されるべきではない。即ち、角括弧内でモノマー単位は、いずれかの方法で、即ち純粋にランダムな、交互にランダムな、規則的に交互の、規則的なブロックの、またはランダムなブロックの配置でブロック内の他のモノマー単位と組み合わされてもよい。ここで記載されるコポリマーは任意に、交互の、勾配の、またはランダムなコポリマーである。いくつかの場合において、コポリマーは本質的にランダムなコポリマーからなる。
【0074】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、ミセルあたり約10〜約500のブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、ミセルあたり約10〜約250のブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、ミセルあたり約10〜約100のブロックコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、ミセルあたり約30〜約50のブロックコポリマーを含む。
【0075】
ミセルの形成および安定性
いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセルは、ブロックコポリマーの自発的な自己会合により形成され、水混和性の溶媒(例えばエタノールであるがこれに限定されない)から水性溶媒(例えば、リン酸緩衝食塩水、pH7.4)への希釈により組織化された集合(例えば、ミセル)を形成する。いくつかの実施形態において、ミセルの形成は、水性溶媒中でポリマーの乾燥形態を直接的に溶解することにより生じる。いくつかの実施形態において自発的なミセル形成は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの非存在下で生じる。
【0076】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、水混和性の溶媒(例えばエタノールであるがこれに限定されない)からpH約7.4〜約5.5の水性溶媒への希釈に際して安定である。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、水混和性の溶媒(例えばエタノールであるがこれに限定されない)からpH約7.4〜約6.8の水性溶媒への希釈に際して安定である。ここで記載されるミセルは、水混和性の溶媒(例えばエタノールであるがこれに限定されない)からpH約7.4、約7.2、約7.0、約6.8、約6.4、約6.2、約6.0または約5.8の水性溶媒への希釈に際して安定である。ここで記載されるミセルは、水性溶媒中で安定である。特定の実施形態において、ここで提供されるミセルは選択されたpH、例えば、ほぼ生理学的pH(例えば、ヒト血漿を循環させるpH)の水性溶媒中で安定である。特定の実施形態においてここで提供されるミセルは中性pH(例えば、pH約7.4)の水性溶媒中で安定である。特定の実施形態において、水性溶媒は動物(例えば、ヒト)血清または動物(例えば、ヒト)血漿である。ミセルの安定性は、設定されたpHに限定されないが、少なくとも設定されたpHを含むpH値で安定であると理解されるべきである。特定の実施形態において、ここで記載されるミセルは実質的にほぼ中性のpHよりも酸性のpHで、より安定性が低い。更なる特定の実施形態において、ここで記載されるミセルはpH約7.4よりもpH約5.8で実施的により安定性が低い。
【0077】
特定の実施形態において、ここで記載されるミセルは、ほぼ中性pH、濃度約10μg/mL、約50μg/mL、約100μg/mL、約200μg/mL、または約250μg/mLで安定である。
【0078】
いくつかの実施形態において、ミセルは、水性溶液中の希釈に対して安定である。特定の実施形態においてミセルは、生理学的pH(例えば、ヒトにおいて血液を循環させるpH)、約100μg/mL〜約0.1μg/mL、約100μg/mL〜約1μg/mL、約50μg/mL〜約1μg/mL、約50μg/mL〜約10μg/mL)の臨界安定濃度(例えば、臨界ミセル濃度(CMC))で安定である。いくつかの実施形態において、生理学的pHでミセルのCMCは、100μg/mL未満、50μg/mL未満、10μg/mL未満、5μg/mL未満、または2μg/mL未満である。ここで用いられる通り、「ミセルの不安定化」は、ミセルを形成するポリマー鎖が、少なくとも部分的に脱凝集し、構造的に変化し(例えば、サイズの拡大および/または形状の変化)、および/または非結晶性超分子構造(例えば、非ミセル性超分子構造)を形成することを意味する。臨界安定濃度(CSC)、臨界ミセル濃度(CMC)および臨界会合濃度(CAC)の語は、ここで互換可能に用いられる。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、臨界安定濃度または臨界ミセル濃度(CMC)を構成する希釈に対して安定である。
【0079】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるいずれかのミセルの臨界安定濃度またはCMCは、中性pHで約100μg/mL〜約0.1μg/mLである。いくつかの実施形態においてここで記載されるCMCは、中性pHで、約80μg/mL〜約0.2μg/mL、約60μg/mL〜約0.2μg/mL、約40μg/mL〜約0.2μg/mL、約20μg/mL〜約0.2μg/mL、または約10μg/mL〜約0.2μg/mLである。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルのCMCは約100μg/mL、約90μg/mL、約80μg/mL、約70μg/mL、約60μg/mL、約50μg/mL、約40μg/mL、約30μg/mL、約20μg/mL、約10μg/mL、約5μg/mL、約1μg/mL、約0.5μg/mL、または約0.2μg/mLである。
【0080】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるいずれかの臨界ミセル濃度またはCMCは、エンドソーム溶解性pH(例えば約5)で、ほぼ中性pH(例えば、pH約7.4)でのミセルのCMCよりも約20倍高い。特定の実施形態において、ここで記載されるいずれかのミセルの臨界ミセル濃度またはCMCは、エンドソーム溶解性のpH(例えば、pH約5)で、ほぼ中性pH(例えば、pH約7.4)でのミセルのCMCの約10倍高い。いくつかの実施形態において、ここで記載されるいずれかのミセルの臨界ミセル濃度またはCMCは、エンドソーム溶解性のpH(例えば、pH約5)で、ほぼ中性pH(例えば、pH約7.4)でのミセルのCMCの約5倍または約2倍高い。
【0081】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるいずれかのミセルの臨界ミセル濃度またはCMCは、エンドソーム溶解性のpH(例えば、約pH5)で、約100μg/mL〜約0.5μg/mL、約80μg/mL〜約1μg/mL、約60μg/mL〜約1μg/mL、約40μg/mL〜約1μg/mL、約20μg/mL〜約1μg/mL、または約10μg/mL〜約1μg/mLである。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルのCMCは、エンドソーム溶解性のpHで、約100μg/mL、約90μg/mL、約80μg/mL、約70μg/mL、約60μg/mL、約50μg/mL、約40μg/mL、約30μg/mL、約20μg/mL、約10μg/mL、約5μg/mL、約1μg/mL、または約0.5μg/mLである。
【0082】
粒径
特定の実施形態において、ミセルはナノ粒子である。特定の実施形態において、ミセルは真のミセルである。更なる実施形態において、生理活性剤への結合の非存在下、ミセルは平均流体力学的粒子径、約10nm〜約200nm、約10nm〜約100nm、または約30〜80nmを有するナノ粒子またはミセルである。粒径は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、動的光散乱(DLS)、電子顕微鏡技術(例えば、TEM)によるもの、および他の方法を含むがこれらに限定されない何れかの方法により決定し得る。
【0083】
特定の実施形態において、ここで記載されるミセルは、(イオン的および/または共有結合的に)生理活性剤(例えば、ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)、診断剤および/または標的剤(例えば、抗体))へ会合するブロックコポリマーを含み、約500nm以下、約450nm以下、約400nm以下、約350nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約200nm以下、約150nm以下、約100nm以下、または約50nm以下の粒径を有する。
【0084】
ポリヌクレオチドの正味重量
いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは1〜約10,000のポリヌクレオチドと会合する(例えば、イオン的および/または共有結合的に)。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、約4〜約5000、約10〜約4000、約15〜約3000、または約30〜約2500のポリヌクレオチドと会合する。いくつかの実施形態において、ミセル対ポリヌクレオチドの電荷比は、約5:1〜約1:1である。いくつかの実施形態において、ミセル対ポリヌクレオチドの電荷比は、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。
【0085】
ポリマー構造および特性
ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含む。いくつかの実施形態において、前記ブロックのうちの少なくとも1つはグラジエントポリマーブロックである。更なる実施形態において、ここで用いられるブロックコポリマーは任意にグラジエントポリマーによりにより置換される(即ち、ミセル中で使用されるポリマーは、疎水性ブロックおよび親水性ブロックを有するグラジエントポリマーである。)
親水性ブロック
特性の実施形態において、親水性ブロックは外殻のブロックであり、例えば非荷電の、カチオン性の、ポリカチオン性の、アニオン性の、ポリアニオン性の、または両性イオン性のブロックである。特定の実施形態において、親水性ブロックは中性(非荷電)である。特定の実施形態において、親水性ブロックは、正味の正電荷を含む。特定の実施形態において、親水性ブロックは正味の負電荷を含む。特定の実施形態において、親水性ブロックは正味の中性電荷を含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、親水性のブロックは単一のモノマーを含むホモポリマーブロックである。他の実施形態において、親水性のブロックは複数の1以上の親水性のモノマー単位(例えば、1以上のDMAEMA、PEGMA、HPMA、オリゴエチレングリコールアクリレート、NIPAAMなど)を含む。ある実施形態において、親水性のモノマー単位は親水性基(例えばヒドロキシル基、チオール基、PEG基または他のポリオキシル化アルキル基など、またはそれらの組合せ)を含む。いくつかの実施形態において、親水性モノマー単位は実質的に荷電不可能であり、これは例えば、親水性モノマー単位が生理学的pH(例えば、7.2〜7.4などの中性pH)で実質的に非荷電であることを意味する。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、5より多い、10より多い、20より多い、50より多い、または100より多い親水性基または種を含む。
【0087】
ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは各々、(1)中性または非荷電の(例えば、実質的に非荷電の)親水性のブロック;および(2)中心を形成するポリマーセグメントの疎水性相互作用により安定化するミセルの疎水性中心を形成する疎水性ブロック(例えば中心のブロック)を有する。ある実施形態において、中性または非荷電の親水性ブロックは複数の中性モノマー残基、例えばPEGMAまたはHPMAなどを含む。
【0088】
ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは各々、(1)カチオン性またはポリカチオン性の荷電親水性ブロック;および(2)中心を形成するポリマーセグメントの疎水性相互作用により安定化するミセルの疎水性中心を形成する疎水性ブロック(例えば、中心のブロック)を有する。ある実施形態において、親水性ブロックは複数のカチオン性モノマー残基、例えばDMAEMAなどを含む。前記実施形態のうちのいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、親水性ブロック中のカチオン性種とイオン会合している。
【0089】
ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは各々、(1)アニオン性またはポリアニオン性の荷電した親水性ブロック;および(2)中心を形成するポリマーセグメントの疎水性相互作用によって安定化するミセルの疎水性中心を形成する疎水性ブロック(例えば、中心のブロック)を有する。ある実施形態において、アニオン性またはポリアニオン性の荷電した親水性ブロックは、複数のアニオン性のモノマー残基、例えば無水マレイン酸またはアクリル酸などを含む。
【0090】
ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは各々、(1)両性またはポリ両性の荷電した親水性ブロック;および(2)中心を形成するポリマーセグメントの疎水性相互作用により安定化されるミセルの疎水性中心を形成する疎水性ブロック(例えば、中心のブロック)を有する。
【0091】
疎水性ブロック
ある実施形態において、ここで記載されるいずれかのブロックコポリマーの疎水性ブロックは、複数の疎水性の基、部分、モノマー単位、種などを含む、ある実施形態において、ここで記載されるいずれかのブロックコポリマーの疎水性ブロックは、複数の疎水性の基、部分、モノマー単位、種など、および複数の荷電可能な構成単位またはモノマー単位を含む。
【0092】
ある実施形態において、ブロックコポリマーは、第1および第2構成単位を含む疎水性ブロックを含む。ある実施形態において、第1構成単位は、脱プロトン化によるアニオン種を含む。ある実施形態において、第1構成単位は、酸性pH(例えばエンドソームのpH、pH約6.5未満、pH約6.0未満、約pH5.8未満、約pH5.7未満など)において非荷電である。いくつかの実施形態において、ここで記載される通り、第1構成単位および第2構成単位はプロトン化によるカチオン性種である。特定の実施形態において、第2構成単位のpHは、約6〜約10、約6.5〜約9、約6.5〜約8、約6.5〜約7.5、または他の何れかの適切なpKaである。
【0093】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるいずれかのブロックコポリマーの疎水性ブロックは、疎水性の基、部分、モノマー単位、種などをさらに含む。いくつかの実施形態において、疎水性モノマー単位は、疎水性の基、例えばアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基などを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーはポリマー骨格に結合し、近接する荷電可能な構成単位(例えば、アニオン性部分(例えばカルボン酸基))を遮蔽し、それによりミセルの解離を低減させるかまたは防止する疎水性基を含む。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーの疎水性ブロックは、5より多い、10より多い、20より多い、50より多い、または100より多い疎水性基または種を含む。いくつかの実施形態において疎水性の種が、アニオン性の荷電可能なモノマー単位に存在する。いくつかの実施形態において、疎水性モノマー単位対アニオンに荷電可能な構成単位を含むモノマー単位の比は、中性pHで約1:6〜約1:1、約1:5〜約1:1、約1:4〜約1:1、約1:3〜約1:1、約1:2〜約1:1である。
【0094】
いくつかの実施形態において、疎水性モノマー単位は、非限定的な例として、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、スチレンなどがある。特定の実施形態において、ここで有用な疎水性モノマー単位は、(C−C)アルキルアクリル酸の(C−C)アルキルエステルに由来するモノマー単位である。
【0095】
さらに特定の実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーの疎水性ブロックは、複数のカチオン性モノマー単位および複数のアニオン性モノマー単位を含む。さらに特定の実施形態において、疎水性ブロックは実質的に同じ数のカチオン性およびアニオン種を含む(即ち、疎水性ブロックおよび/またはミセルの中心は実質的に正味の中性である)。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーの疎水性ブロック中の実質的に同じ数のカチオン性およびアニオン種の存在により、疎水性ブロックおよび/またはほぼ中性pHで実質的に正味の中性であるミセルの中心が提供される。
【0096】
アニオン性構成単位
いくつかの実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは、生理学的pHでアニオン性の複数のアニオン性の構成単位を含む。いくつかの実施形態において、アニオン性の構成単位はプロトン化可能なアニオン性の種を含む。特定の実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは、複数のアニオン性構成単位を含み、各々のアニオン性構成単位は、非荷電のブレンステッド酸モノマーの残基である(即ち、構成単位はブレンステッド酸の共役塩基である)。ここで記載される種々の実施形態において、ここで記載される生理学的pHでアニオン性または負に荷電した構成単位(これは例えば、特定の親水性構成単位を含む)は、1以上の酸基またはその共役塩基を含む。アニオン性の構成単位の非限定的な例は、カルボン酸、スルホンアミド、ボロン酸、スルホン酸、スルフィン酸、硫酸、リン酸、ホスフィン酸など、またはそれらの組合せを含むモノマー残基を含む。いくつかの実施形態において、ここで用いられる通常の生理学的pHでアニオン性または負に荷電した構成単位は、非限定的な例として、アクリル酸、C−Cアルキルアクリル酸モノマー(例えば、メチルアクリル酸、エチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸など)などのモノマー残基を含む。
【0097】
生理学的液体のpHがほぼアニオン種のpKaの場合、両方の形態における荷電可能な種の平衡分布が存在するだろう。アニオン種の場合、pHがアニオン種のpKaのとき、集団の約50%がアニオン性であり、約50%が非荷電だろう。更なるpHは荷電可能な種のpKaであり、より高いpH値でアニオン性形態が優勢であり、より低いpH値で非荷電形態が優勢であるように、この平衡中で対応するシフトが存在するだろう。ここで記載される実施形態は、いずれかのpH値でブロックコポリマーの形態を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、保護された種、例えばエステル、または遊離酸のいずれかとして存在し得る何れかの有機または無機酸が、本発明の意図の中にあるが、通常の生理学的pHでアニオン性の構成単位は、カルボン酸、例えば非限定的に、2−プロピルアクリル酸のモノマー残基などである(即ち、それに由来する構成単位、1−プロピルプロピオン酸、−CHC((CHCH)(COOH)− (PAA))。ここで記載されるアニオン性のモノマー残基または構成単位は、アニオンに荷電した、または荷電可能な種を含み、これはプロトン化可能なアニオン種である。特定の場合において、アニオン性モノマー残基はほぼ中性pHでアニオン性であってよい。
【0099】
モノマー、例えば無水マレイン酸(Scott M. Henry, Mohamed E. H. El-Sayed, Christopher M. Pirie, Allan S. Hoffman, and Patrick S. Stayton "pH-Responsive Poly(styrene-alt-maleic anhydride)Alkylamide Copolymers for Intracellular Drug Delivery" Biomacromolecules 7:2407-2414, 2006)が、疎水性ロックにアニオン種を導入するために用いられてもよい。前記実施形態において、負に荷電した構成単位は、無水マレイン酸モノマー残基に由来する。
【0100】
カチオン性構成単位
いくつかの実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは、生理学的pHでカチオン性であるかまたは正に荷電した、複数のカチオン性構成単位を含む。いくつかの実施形態において、カチオン性の構成単位は、脱プロトン化可能なカチオン性種を含む。ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは複数のカチオン性構成単位を含み、各々のカチオン性構成単位は非荷電のブレンステッド塩基モノマーの残基である(即ち、構成単位は、ブレンステッド塩基の共役酸である)。ブレンステッド塩基モノマーの非限定的な例は、ジアルキルアミノ基を含むモノマーを含む。いくつかの実施形態において、カチオン性の構成単位は、非環式アミン、非環式イミン、環式アミン、環式イミン、アミノ基、アルキルアミノ基、グアニジン基、イミダゾリル基、ピリジル基、トリアゾリル基など、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、ここで用いられる通常の生理学的pHでカチオン性である構成単位は、非限定的な例として、ジアルキルアミノアルキルメタクリレート(例えば、DMAEMA)を含む。
【0101】
生理学的液体のpHがカチオン種の約pKaである場合、両方の形態で荷電可能な種の平衡分布が存在するだろう。更なるpHが荷電可能な種のpKaの場合、この平衡において、より低いpHではカチオン形態が、より高いpHでは非荷電形態が優勢であるように対応するシフトが存在するだろう。ここで記載される実施形態は、何れかのpH値においてブロックコポリマーの形態を含む。
【0102】
中性および両性イオン性の構成単位
ここで記載される種々の実施形態において、生理学的pHで中性の構成単位は1以上の親水性基、例えばヒドロキシ、ポリオキシル化アルキル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオールなどを含む。いくつかの実施形態において、ここで用いられる通常の生理学的pHで中性の親水性の構成単位は、非限定的な例としてPEG化されたアクリル酸、PEG化されたメタクリル酸、ヒドロキシアルキルアクリル酸、ヒドロキシアルキルアルカクリル酸(例えば、HPMA)などを含む。
【0103】
ここで記載される種々の実施形態において、生理学的pHで両性イオン性である構成単位は、生理学的pHでアニオン性または負に荷電した基およびカチオン性または正に荷電した基を含む。いくつかの実施形態において、ここで用いられる通常の生理学的pHで両性イオン性である親水性の構成単位は、非限定的な例として生理学的pHでリン酸基およびアンモニウム基を含むモノマー残基を含み、例えばこれは引用によりその開示かここに組み込まれるUS 7,300,990において説明されている。
【0104】
ブロックコポリマーの組成
特定の実施形態において、第1構成単位は脱プロトン化によるアニオン種であり、第2構成単位はプロトン化によるカチオン種であり、アニオン種対カチオン種の比は、中性pHで約1:10〜約10:1、約1:6〜約6:1、約1:4〜約4:1、約1:2〜約2:1、約1:2〜約3:2、または約1:1である。いくつかの実施形態において、第1の荷電可能な構成単位対第2の荷電可能な構成単位の比は、約1:10〜約10:1、約1:6〜約6:1、約1:4〜約4:1、約1:2〜約2:1、約1:2〜約3:2、または約1:1である。
【0105】
いくつかの実施形態において、ブロックコポリマー中に存在するアニオン性の種、基またはモノマー単位に荷電可能な構成基またはモノマー単位は、ほぼ中性pH(例えば、pH約7.4)で少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも95%である種、基またはモノマー単位である。特定の実施形態において、これらは荷電可能な種、基またはモノマー単位はHの損失により荷電し、ほぼ中性pHでアニオン種になる。更なるまたは別の実施形態において、ポリマー中に存在するアニオン性の荷電可能な種、基またはモノマー単位に荷電することができる荷電可能な種、基またはモノマー単位は、弱酸性pH(例えば、pH約6.5未満;約6.2未満;約6未満;約5.9未満;約5.8未満;約5.7未満;約5.6未満;約5.5未満;約5.0未満;または約ほぼエンドソームpH)で、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも95%の中性または非荷電である。
【0106】
ここで記載されるブロックコポリマーの特定の実施形態において、各々の構成単位は種々のモノマー単位に存在する。いくつかの実施形態において、第1モノマー単位は、第1の荷電可能な種を含む。更なるまたは別の実施形態において、第2モノマー単位は、第2の荷電可能な種を含む。更なるまたは別の実施形態において、第3モノマー単位は、第3の荷電可能な種を含む。
【0107】
代表的な例
特定の実施形態において、ブロックコポリマー(例えば、膜不安定化ブロックコポリマー)は化学式Iを有する:
【化1】

【0108】
いくつかの実施形態において:
、A、A、AおよびAは、−C−、−C−C−、−C(O)(C)C(O)O−、 −O(C)C(O)−および−O(C)O−からなる群より選択され;式中、
aは1〜4であり;
bは2〜4であり:
は、水素、(1C−10C)アルキル、(3C−6C)シクロアルキル、O−(1C−10C)アルキル、−C(O)O(1C−10C)アルキル、C(O)NR(1C−10C)、(4C−10C)ヘテロアリール、および(6C−10C)アリールであり、これらのいずれかは任意に1以上のフッ素基により置換され;
、YおよびYは独立して、共有結合、(1C−10C)アルキル、−C(O)O(2C−10C)アルキル−、−OC(O)(1C−10C)アルキル−、−O(2C−10C)アルキル−および−S(2C−10C)アルキル−、−C(O)NR(2C−10C)アルキル−、−(4C−10C)ヘテロアリール−および−(6C−10C)アリール−からなる群より独立して選択され;
は−(1C−10C)アルキル−、−(4C−10C)ヘテロアリールおよび−(6C−10C)アリールであり;式中、
〜RおよびY〜Yにより完全には置換されていないA〜Aの四価の炭素原子は、適切な数の水素原子を備え;
、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素、−CN、アルキル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され、そのいずれかは任意に1以上のフッ素原子で置換されてよく;
は、生理学的pHで親水性の残基、および生理学的pHで少なくとも部分的に正に荷電した残基(例えば、アミノ、アルキルアミノ、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジン、イミダゾリル、ピリジル等);生理学的pHで少なくとも部分的に負に荷電するが、より低いpHでプロトン化を受ける残基(例えば、カルボキシル、スルホンアミド、ボロン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩等);生理学的pHで実質的に中性(または電荷を持たない)の残基(例えば、ヒドロキシ、ポリオキシル化アルキル、ポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、チオール等);生理学的pHで少なくとも部分的に両性イオン性の残基(例えば、生理学的pHでアンモニウム基およびリン酸基を含むモノマー残基);結合可能な(conjugatable)残基または官能化可能な(functionalizable)残基(例えば、反応性基(例えば、アジド、アルキン、スクシンイミドエステル、テトラフルオロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、p−ニトロフェニルエステル、ピリジルジスルフィド等)を含む残基);または水素からなる群より選択され;
は、生理学的pHで親水性の残基および生理学的pHで少なくとも部分的に正に荷電した残基(例えば、アミノ、アルキルアミノ、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジン、イミダゾリル、ピリジル等);生理学的pHで少なくとも部分的に負に荷電するが、より低いpHでプロトン化を受ける残基(例えば、カルボキシル、スルホンアミド、ボロン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩等);生理学的pHで実質的に中性の残基(例えば、ヒドロキシ、ポリオキシル化アルキル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオール等);または生理学的pHで少なくとも部分的に両性イオン性の残基(例えば、生理学的pHでアンモニウム基およびリン酸基を含む);
は、生理学的pHで正の電荷を有する残基であり、アミノ、アルキルアミノ、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジン、イミダゾリル、およびピリジルを含むがこれらに限定されない;
は、生理学的pHで負の電荷を有するが、より低いpHでプロトン化を受ける残基であり、カルボキシル、スルホンアミド、ボロン酸塩、ホスホン酸塩およびリン酸塩を含むがこれらに限定されない;
mは、約0〜1.0未満であり(例えば、0〜約0.49);
nは、0より大きく〜約1.0であり(例えば、約0.51〜約1.0);
ここで、m+n=1であり;
pは、約0.1〜約0.9であり(例えば、約0.2〜約0.5);
qは、約0.1〜約0.9であり(例えば、約0.2〜約0.5);
rは、0〜約0.8であり(例えば、0〜約0.6);
ここで、p+q+r=1であり;
vは、約1〜約25kDaまたは約5〜約25kDaであり;
wは、約1〜約50kDaまたは約5〜約50kDaである。
【0109】
いくつかの実施形態において、pおよびqで示されるモノマー残基の数または割合は、各々約30%、各々約20%、各々約10%などである。ある実施形態において、pは実質的にqと同じである。ある実施形態において、少なくとも部分的に荷電しているということは一般に、微量よりも多い量の荷電した種、例えば少なくとも20%の残基が荷電し、少なくとも30%の残基が荷電し、少なくとも40%の残基が荷電し、少なくとも50%の残基が荷電し、少なくとも60%の残基が荷電し、少なくとも70%の残基が荷電していることなどを含む。
【0110】
ある実施形態において、mは0であり、Qは生理学的pHで親水性且つ実質的に中性(または非荷電)の残基である。いくつかの実施形態において、実質的に非荷電であることは、例えば5%未満が荷電し、3%未満が荷電し、1%未満が荷電していることなどを含む。ある実施形態において、mは0であり、Qは生理学的pHで親水性且つ少なくとも部分的にカチオン性の残基である。ある実施形態において、mは>0であり、nは>0であり、QまたはQのうちの1つは、生理学的pHで親水性であり、少なくとも部分的にカチオン性の残基であり、他のQまたはQは生理学的pHで親水性であり、実質的に中性の残基である。特定の実施形態において、mは>0であり、nは>0であり、QまたはQのうちの1つは、生理学的pHで親水性であり、少なくとも部分的にアニオン性の残基であり、他のQまたはQは生理学的pHで親水性であり、実質的に中性の残基である。ある実施形態において、mは>0であり、nは>0であり、Qは生理学的pHで親水性であり、少なくとも部分的にカチオン性の残基であり、Qは結合可能または官能化可能な残基である。ある実施形態において、mは>0であり、nは>0であり、Qは生理学的pHで親水性であり、実質的に中性の残基であり、Qは結合可能または官能化可能な残基である。
【0111】
ある実施形態において、ここで記載されるミセルは式IIのブロックコポリマーを含む:
【化2】

【0112】
いくつかの実施形態において:
、A、A、AおよびAは−C−C−、−C(O)(C)C(O)O−、−O(C)C(O)−および−O(C)O−からなる群より選択され、式中、
aは1〜4であり;
bは2〜4であり;
およびYは、独立して、水素、(1C〜10C)アルキル、(3C〜6C)シクロアルキル、O−(1C〜10C)アルキル、−C(O)O(1C〜10C)アルキル、C(O)NR(1C〜10C)、(4C〜10C)ヘテロアリールおよび(6C〜10C)アリールからなる群より選択され;そのいずれかは、1以上のフッ素基で任意に置換され;
およびYは独立して、共有結合、(1C〜10C)アルキル−、−C(O)O(2C〜10C)アルキル−、−OC(O)(1C〜10C)アルキル−、−O(2C〜10C)アルキル−および−S(2C〜10C)アルキル−、−C(O)NR(2C〜10C)アルキル、(4C〜10C)へテロアリールおよび(6C〜10C)アリールからなる群より選択され;
は、共有結合、(1C〜10C)アルキル、−(4C〜10C)ヘテロアリール−および(6C〜10C)アリールからなる群より選択され;
〜RおよびY〜Yにより完全には置換されていないA〜Aの四価の炭素原子、適切な数の水素原子を備え;
、R、R、R、RおよびRは独立して、水素、−CN、アルキル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され、そのいずれかは1以上のフッ素原子で任意に置換されてよく;
およびQは、生理学的pHで正に荷電した残基であり、アミノ、アルキルアミノ、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジン、イミダゾリルおよびピリジルが含まれるがこれらに限定されない;
は、生理学的pHで負に荷電しているが、より低いpHでプロトン化を受ける残基であり、カルボキシル、スルホンアミド、ボロン酸塩、ホスホン酸塩、およびリン酸塩を含むがこれらに限定されない;
mは、0〜約0.49であり;
nは、約0.51〜約1.0であり;
ここで、m+n=1であり;
pは、約0.2〜約0.5であり;
qは、約0.2〜約0.5であり;
ここで、pは、実質的にqと同じであり;
rは、0〜約0.6であり;
ここで、p+q+r=1であり;
vは、約5〜約25kDaであり;
wは、約5〜約50kDaである。
【0113】
ある実施形態において、ここで記載されるミセルは(例えば、通常の生理学的pHで)、式IIIのブロックポリマーを含む:
【化3】

【0114】
ある実施形態において、示される通り置換されたA、A、A、AおよびAは、式IIIのポリマーの構成単位を含む(これはここで「モノマー単位」および「モノマー残基」と交換可能に用いられる)。特定の実施形態において、式IIIのA基を構成するモノマー単位は、適切な条件下、重合可能な適合性がある。ある場合において、エチレン骨格または構造単位である−(C−C−)−ポリマー(各々のCは、Hおよび/または他の適切な基で2置換される)は、炭素−炭素二重結合>C=C<を含むモノマーを用いて重合される。ある実施形態において、A基は各々(例えば、A、A、A、AおよびAの各々)、−C−C−(すなわち、エチレンモノマー単位またはポリマー骨格)、−C(O)(C)C(O)O−(すなわち、ポリ無水物モノマー単位またはポリマー骨格)、−O(C)C(O)−(すなわち、ポリエステルモノマー単位またはポリマー骨格)、または−O(C)O−(すなわち、ポリアルキレングリコールモノマー単位またはポリマー骨格)等である(ここで、Cは各々、Hおよび/またはここに記載する通りいずれかの他の適切な基(上記のR12および/またはR13を含む)で2置換される)。特定の実施形態において、「a」は整数1〜4であり、「b」は整数2〜4である。ある実施形態において、式IIIの骨格に結合する「Y」および「R」基は各々(すなわち、Y、Y、Y、Y、Y、R、R、R、R、Rのいずれか1つ)は、特定のモノマー単位のいずれかの「C」(いずれかの(C)または(C)を含む)に結合する。特定の実施形態において、特定のモノマー単位のYおよびRの両方が、同じ「C」に結合する。ある特定の実施形態において、特定のモノマー単位のYおよびRの両方が、同じ「C」に結合し、存在する場合、「C」はモノマー単位のカルボニル基に対してアルファである。
【0115】
特定の実施形態において、R〜R11は独立して、水素、アルキル(例えば、1C〜5Cアルキル)、シクロアルキル(例えば、3C〜6Cシクロアルキル)、またはフェニルから選択され、R〜R11のいずれかは、フッ素、シクロアルキル、またはフェニルにより任意に置換され、これは1以上のアルキル基で任意に置換されてよい。
【0116】
ある特定の実施形態において、YおよびYは独立して、水素、アルキル(例えば、1C〜10Cアルキル)、シクロアルキル(例えば、3C〜6Cシクロアルキル)、O−アルキル(例えば、O−(2C〜10C)アルキル、−C(O)O−アルキル(例えば、−C(O)O−(2C〜10C)アルキル)、またはフェニルから選択され、その各々は1以上のフッ素で任意に置換される。
【0117】
いくつかの実施形態において、YおよびYは独立して、共有結合、アルキル、好ましくは(1C〜10C)アルキル、−C(O)O−アルキル、好ましくは−C(O)O−(2C〜10C)アルキル、−OC(O)アルキル、好ましくは−OC(O)−(2C〜10C)アルキル、O−アルキル、好ましくは−O(2C〜10C)アルキル、および−S−アルキル、好ましくは−S−(2C〜10C)アルキルからなる群より選択される。ある実施形態において、Yは、共有結合、アルキル(好ましくは(1C〜5C)アルキル)およびフェニルからなる群より選択される。
【0118】
いくつかの実施形態において、Zは存在するか、または存在しない。ある実施形態において、Rおよび/またはRは水素であり、Z−はOH−である。ある実施形態において、Zはいずれかの対イオン(例えば、1以上の対イオン)であり、非限定的な例として、クロリド、無機もしくは有機のホスフェート、スルフェート、スルホネート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、カプロエート、カプリレート、カプレート、ラウレート、ミリステート、パルメート(palmate)、ステアレート、パルミトレート、オレエート、リノレート(linolate)、アラキデート(arachidate)、ガドレエート(gadoleate)、ワクチネート(vaccinate)、ラクテート、グリコラート、サリチレート、デスアミノフェニルアラニン(desamionphenylalanine)、デスアミノセリン(desaminoserine)、デスアミノスレオニン(desaminothreonine)ε−ヒドロキシカプロエート、3−ヒドロキシブチレート、4−ヒドロキシブチレートまたは3−ヒドロキシバレレートである。いくつかの実施形態において、Y、Rおよび任意のフッ素の各々が選択された骨格の炭素に共有結合した場合、完全には置換されていないいずれかの炭素は、適切な数の水素原子を備える。数m、n、p、qおよびrは、ブロック中で各構造単位のモル分率を意味し、vおよびwは、各ブロックの分子量を意味する。
【0119】
ある実施形態において、A、A、A、AおよびAは、−C−、−C−C−、−C(O)(CR1213C(O)O−、−O(CR1213C(O)−およびO(CR1213Oからなる群より選択され;ここで、
aは1〜4であり;
bは2〜4であり;
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は独立して、水素、(1C〜5C)アルキル、(3C〜6C)シクロアルキル、(5C〜10C)アリール、および(4C〜10C)ヘテロアリールからなる群より選択され、そのいずれかは1以上のフッ素原子で任意に置換されてよく;
およびYは独立して、水素、(1C〜10C)アルキル、(3C〜6C)シクロアルキル、O−(1C〜10C)アルキル、−C(O)O(1C〜10C)アルキルおよびフェニルからなる群より選択され、そのいずれかは1以上のフッ素基で任意に置換され;
およびYは独立して、共有結合、(1C〜10C)アルキル−、−C(O)O(2C〜10C)アルキル−、−OC(O)(1C〜10C)アルキル−、−O(2C〜10C)アルキル−および−S(2C〜10C)アルキル−からなる群より選択され;
は、共有結合、(1C〜5C)アルキルおよびフェニルからなる群より選択され;R〜RおよびY〜Yにより完全には置換されていないA〜Aの四価の炭素原子は、適切な数の水素原子を備え;
Zは、1以上の生理学的に許容可能な対イオンであり;
mは、0〜約0.49であり;
nは、約0.51〜約1.0であり;
ここでm+n=1であり;
pは、約0.2〜約0.5であり;
qは、約0.2〜約0.5であり;
ここでpは、実質的にqと同じであり;
rは、0〜約0.6であり;
ここでp+q+r=1であり;
vは、約1〜約25kDaであるか、または約5〜約25kDaであり;
wは、約1〜約50kDaであるか、または約5〜約50kDaである。
【0120】
特定の実施形態において、A、A、A、AおよびAは、独立して、−C−C−、−C(O)(C)C(O)O−、−O(C)C(O)−および−O(C)O−からなる群より選択され;ここで
aは、1〜4であり;
bは、2〜4であり;
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は独立して、水素、(1C〜5C)アルキル、(3C〜6C)シクロアルキルおよびフェニルからなる群より選択され、そのいずれかは1以上のフッ素原子で任意に置換されてよく;
およびYは独立して、水素、(1C〜10C)アルキル、(3C〜6C)シクロアルキル、O−(1C〜10C)アルキル、−C(O)O(1C〜10C)アルキルおよびフェニルからなる群より選択され、そのいずれかは1以上のフッ素基で任意に置換され;
およびYは独立して、共有結合、(1C〜10C)アルキル−、−C(O)O(2C〜10C)アルキル−、−OC(O)(1C〜10C)アルキル−、−O(2C〜10C)アルキル−および−S(2C〜10C)アルキル−からなる群より選択され;
は、共有結合、(1C〜5C)アルキルおよびフェニルからなる群より選択され;
〜RおよびY〜Yにより完全には置換されていないA〜Aの四価の炭素原子は、適切な数の水素原子を備え;
Zは、生理学的に許容可能な対イオンであり;
mは、0〜約0.49であり;
nは、約0.51〜約1.0であり;
ここでm+n=1であり;
pは、約0.2〜約0.5であり;
qは、約0.2〜約0.5であり;
ここでpは、実質的にqと同じであり;
rは、0〜約0.6であり;
ここでp+q+r=1であり;
vは、約5〜約25kDaであり;
wは、約5〜約25kDaである。
【0121】
いくつかの実施形態において、
は、−C−C−であり;
は、−C(O)OCHCH−であり;
は、水素であり;
およびRは、それぞれ−CHであり;
は、−CHである。
【0122】
いくつかの実施形態において、
は、−C−C−であり;
は、−C(O)OCHCH−であり;
は、水素であり;
10およびR11は各々、−CHであり;
は、−CHである。
【0123】
いくつかの実施形態において、
は、−C−C−であり;
は、CHCHCH−であり;
は、共有結合であり;
は、生理学的に許容可能なアニオンである。
【0124】
いくつかの実施形態において、
は、−C−C−であり;
は、水素および−CHからなる群より選択され;
は、−C(O)O(CH)CHである。
【0125】
いくつかの実施形態において、
は、C−C−であり;
は、水素および(1C〜3C)アルキルからなる群より選択され;
は、−C(O)O(1C〜3C)アルキルからなる群より選択される。
【0126】
いくつかの実施形態において、mは0である。
いくつかの実施形態において、rは0である。
いくつかの実施形態において、mおよびrはともに0である。
【0127】
ある実施形態において、ブロックコポリマーはジブロックコポリマーであり、式IV1の化学式を有する(通常の生理学的pHまたはほぼ中性pHにおいて):
【化4】

【0128】
ある場合において、化合物IV1構成単位は、左の角括弧および右の丸括弧の中に示される通りであり、それらは以下のモノマーに由来する:
【化5】

【0129】
文字p、qおよびrは、ブロック内の各々の構成単位のモル分率を示す。文字vおよびwは、ジブロックコポリマー中の各々のブロックの分子量(数平均)を示す。
【0130】
いくつかの実施形態において、ここで提供される化合物は以下の構造を有する:
【化6】

【0131】
上述の通り、文字p、qおよびrはブロック内の各々の構成単位のモル分率を示す。文字vおよびwは、ジブロックコポリマー中の各々のブロックの分子量(数平均)を示す。
【0132】
いくつかの実施形態において、ここで提供されるのは以下のポリマーである:
[DMAEMA]−[B−/−P−/−D] IV3
[PEGMA]−[Bp−/−Pq−/−Dr] IV4
[PEGMA−/−DMAEMA−[B−/−P−/−D IV5
[PEGMA−/−MAA(NHS)−[B−/−P−/−D IV6
[DMAEMA−/−MAA(NHS)−[B−/−P−/−D IV7
[HPMA−/−PDSM−[B−/−P−/−D IV8
[PEGMA−/−PDSM]−[B−/−Pq−/−D IV9
いくつかの実施形態において、Bはブチルメタクリレート残基であり;Pはプロピルアクリル酸残基であり;DおよびDMAEMAおよびジメチルアミノエチルメタクリレート残基であり;PEGAはポリエチレングリコールメタクリレート残基(例えば、1〜20エチレンオキシド単位、例えば化合物IV2に示されるものなど、4〜5のエチレンオキシド単位、または7〜8のエチレンオキシド単位を有する)であり;MAA(NHS)は、メチルアクリル酸−N−ヒドロキシスクシンアミド残基であり;HPMAは、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド残基であり;PDSMは、ピリジルジスルフィドメタクリレート残基である。ある実施形態において、m、n、p、q、r、wおよびvは、上述した通りである。特定の実施形態において、wは、約0.1x〜約5x、または約1x〜約5x vである。
【0133】
式IV1〜IV9の化合物は、ここで提供される化合物ポリマーの例であり、ポリマーの第1ブロックを作る種々の構造単位を含む。いくつかの実施形態において、第1ブロックの構造単位は、ポリマーを作るために変化させるか、または化学的に処理され、第1のブロックは、中性(例えばPEGMA)、カチオン性(例えばDMAEMA)、アニオン性(例えば、NHSが加水分解されて酸になるPEGMA−NHS、もしくはアクリル酸)、両性電解質(例えば、NHSが加水分解されて酸になるDMAEMA−NHS)、または両性イオン性(例えばポリ[2−メタクリロイルオキシ−2‘トリメチルアンモニウムエチルホスフェート])であるか、またはこれらを含む。いくつかの実施形態において、第1のブロックにピリジルジスルフィド官能基を含むポリマー(例えば[PEGMA−PDSM]−[B−P−D])は、チオール化siRNAと任意に反応し、ポリマー−siRNA結合体を形成する。
【0134】
特定の実施形態において、式IV3の化合物は、ここに記載する通り、P7クラスのポリマーであり、以下表1に示す分子量、多分散性およびモノマー組成を有する。
【表1】

【0135】
いくつかの実施形態において、式IV3のポリマーは表2に従うP7クラスのポリマーである。
【表2】

【0136】
いくつかの特定の実施形態において式IV3のポリマーは、P7v6と呼ばれるP7クラスのポリマーである。PRx0729v6は、P7v6と本願および種々の優先権出願において交換可能に用いられる。
【0137】
膜不安定化ブロックコポリマー
ある実施形態において、ここで提供されるミセルまたはその成分部分は、膜を不安定化する(例えば、膜不安定化ブロック、基、部分などを含む)。更なるまたは別の実施形態において、複数のブロックコポリマーはミセルの外殻および中心を形成する。特定の実施形態において、ミセルは親水性および/または荷電した外殻を含む。更なるまたは別の実施形態においてミセルは実質的に疎水性の中心(例えば、疎水性の基、モノマー単位、部分、ブロックなどを含む中心)を含む。特定の実施形態において、1以上のブロックコポリマーは各々、(1)ミセルの外殻を形成する親水性の荷電ブロック;および(2)ミセルの中心を形成する実質的に疎水性のブロックを含む。いくつかの実施形態において、1以上のブロックコポリマーは複数の第1の荷電可能な種および複数の疎水性促進剤を含む。特定の実施形態において、第1の荷電可能な種は、アニオン性の荷電可能な種である(例えば特定のpHで荷電しているか、または荷電する)。更なる実施形態において、1以上のブロックコポリマーは第2の荷電可能な種を含む(即ち、親水性ブロックは1より多くの種々のタイプのアニオン種を有してよい)。ある実施形態において、ミセルは少なくとも1つのポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)を含む。特定の実施形態において、ポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)はミセルの中心にはない。
【0138】
いくつかの実施形態において、膜不安定化ブロックコポリマーは(i)複数の疎水性モノマー残基、(ii)荷電可能な種を有する複数のアニオン性モノマー残基、当該荷電可能な種は生理学的pHでアニオン性であり、エンドソームpHで実質的に中性または非荷電である、および(iii)複数のカチオン性モノマー残基を任意に含む。いくつかの実施形態において、共に作用する膜崩壊の2つのメカニズムの組合せ、(a)ポリカチオン(例えばDMAEMAなど)および(b)疎水化したポリアニオン(例えばプロポリアクリル酸)はポリマーにより与えられた膜不安定化の効力に対して追加的または相乗的な作用を与える。
【0139】
いくつかの実施形態において、ブロックコポリマー中のアニオン種対カチオン種の比の変更により、ここにおいて記載されるミセルの膜不安定化活性が変更される。前記実施形態において、ブロックコポリマー中のアニオン種:カチオン種の比は、生理学的pHで約4:1〜約1:4である。前記実施形態のうちのいくつかにおいて、ブロックコポリマーの疎水性ブロック中のアニオン種対カチオン種の比の変更により、ここにおいて記載されるミセルの膜不安定化活性が変更される。前記実施形態のうちのいくつかにおいて、ここに記載されるブロックコポリマーの疎水性ブロックにおけるアニオン種:カチオン種の比は、生理学的pHで、約1:2〜約3:1、または約1:1〜約2:1である。
【0140】
ある実施形態において、ここで提供されるミセル中の膜不安定化ブロックコポリマーは、中心のセクション(例えば、中心のブロック)を含み、これは複数の疎水性基を含む。更なる特定の実施形態において中心のセクション(例えば、中心のブロック)は、複数の疎水性基および複数の第1の荷電可能な種または基を含む。さらに特定の実施形態において、前記第1の荷電可能な種または基は、負に荷電し、および/または負に荷電した種もしくは基に荷電可能である(例えば、ほぼ中性pH、またはpH約7.4で)。いくつかの特定の実施形態において、中心のセクション(例えば、中心のブロック)は複数の疎水性基、複数の第1の荷電可能な種または基、ならびに複数の第2の荷電可能な種または基を含む。さらに特定の実施形態において、第1の荷電可能な種もしくは基は、負に荷電し、および/または負に荷電した種もしくは基に荷電可能であり、第2の荷電可能な種もしくは基は正に荷電し、および/または正に荷電した種もしくは基に荷電可能である(例えば、ほぼ中性pHまたはpH約7.4で)。
【0141】
親水性ブロック対疎水性ブロックの比
ある実施形態において、ここで提供されるミセルはさらに、または代わりに他の基準:(1)個々のブロックの分子量およびそれらの相対長さ比は、形成されるミセルのサイズおよびその相対的安定性を決定するために増減され、(2)アニオン性治療剤(例えば、オリゴヌクレオチド剤)との効果的な複合体の形成および/またはその電荷中和を行うため、ポリマーの親水性ブロックのサイズを変化させる(例えばカチオンモノマーの数を変化させることによって)。
【0142】
いくつかの実施形態において、親水性ブロック対疎水性ブロックの数平均分量(Mn)のブロック比は約1:1〜約1:10である。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、親水性ブロック対疎水性ブロックの数平均分子量(Mn)のブロック比、約1:1〜約5:1または約1:1〜約2.5:1のコポリマーを含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、親水性ブロック対疎水性ブロックの数平均分量(Mn)のブロック比は約1:1〜約1:10である。いくつかの実施形態において、ここで記載されるミセルは、親水性ブロック対疎水性ブロックの数平均分子量(Mn)のブロック比、約1:1〜約5:1または約1:1〜約2.5:1のコポリマーを含む。
【0144】
ポリマー構造
特定の実施形態において、ここで提供されるのは以下の構造のブロックコポリマーである:
α−[D−X]−[B−P−D]−ω [構造1]
α−[B−P−D]−[D−X]−ω [構造2]
式中、x、y、z、sおよびtは、ポリマーブロック中の個々のモノマー単位D(DMAEMA)、B(BMA,P(PAA)および親水性の中性モノマー(X)のモル%組成(一般に0〜50%)であり、aおよびbはブロックの分子量であり、[D−X]は、親水性ブロックであり、αおよびωはポリマーの反対の端を示す。ある実施形態において、xは50%、yは25%、zは25%である。ある実施形態において、xは60%、yは20%、zは20%である。ある実施形態において、xが70%、yは15%、zは15%である。ある実施形態において、xが50%、yは25%、zは25%である。ある実施形態において、xが33%、yは33%、zは33%である。ある実施形態において、xが50%、yは20%、zは30%である。ある実施形態において、xが20%、yは40%、zは40%である。ある実施形態において、xが30%、yは40%、zは30%である。
【0145】
いくつかの実施形態において、ここで記載されるブロックポリマーは、約2,000kDa〜約3,000kDa、約5,000kDa〜約20,000kDa、または約7,000kDa〜約15,000kDaの親水性ブロックを含む。特定の実施形態において、親水性ブロックは、約7,000kDa、約8,000kDa、約9,000kDa、約10,000kDa、約11,000kDa、約12,000kDa、約13,000kDa、約14,000kDaまたは約15,000kDaである。ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマーは、約10,000KDa〜約100,000KDa、約15,000KDa〜約35,000KDa、または約20,000KDa〜約30,000KDaの疎水性ブロックを含む。いくつかの特定の実施形態において、12,500KDaの親水性ブロックおよび25,000KDaの疎水性ブロックを含む(1:2の長さ比)を含むブロックコポリマーはミセルを形成する。いくつかの特定の実施形態において、10,000KDaの親水性ブロックおよび30,000KDaの疎水性ブロックを含む(1:3の長さ比)ブロックコポリマーはミセルを形成する。
【0146】
いくつかの実施形態において、10,000KDaの親水性ブロックおよび25,000Kdaの疎水性ブロックを含む(長さ比1:2.5)ブロックコポリマーは約45nm(動的光散乱測定または電子顕微鏡法により決定される通り)のミセルを形成する。いくつかの特定の実施形態において、ミセルは80または130nm(動的光散乱測定または電子顕微鏡法により決定される通り)である。典型的に、ミセルの外殻を形成する[D−X]の分子量(または長さ)が中心を形成する疎水性ブロック−[B−P−D]に比較して増加する場合、ミセルのサイズは増加する。いくつかの場合、外殻を形成するポリマーのカチオン性のブロックのサイズ([D−X]は、オリゴヌクレオチド薬剤により複合体形成/電荷中和を提供するために重要である。例えばある場合において、約20塩基対(即ち、40のアニオン性電荷)のsiRNAについてカチオン性ブロックは効果的な結合を提供するために適切な長さ、例えば40のカチオン性電荷を有する。7.4のpKa値を有する80のDMAEMAモノマー(MW=11,680)を含む外殻ブロックについては、当該ブロックはpH7.4で40のカチオン性電荷を有する。いくつかの場合において、安定なポリマー−siRNA結合体(例えば、複合体)を、同数の反対の電荷間での静電相互作用により形成する。ある場合において、多くの過剰正電荷の回避により、有意なインビトロおよびインビボの毒性を予防する。
【0147】
多分散性
いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセルに用いられるブロックコポリマーは、低い多分散性指数(PDI)または鎖の長さの差を有する。多分散性指数(PDI)は何れかの適切な方法、例えばポリマー鎖の重量平均分子量をそれらの数平均分子量で割ることにより決定する。数平均分子量は、鎖の数で割った個々の鎖の分子量の合計である。重量平均分子量は、その分子量の分子数で割った分子量の二乗に比例する。重量平均分子量は常に数平均分子量よりも大きいため、多分散性は常に1以上である。数が同じものに近づくにつれ、即ち、多分散性が1の値に近づくにつれ、ポリマーが単分散に近づき、ここにおいてはいずれの鎖も正確に同じ数のモノマー単位を有する。1に近づく多分散性の値は、強烈なラジカル重合化を用いることにより達成可能である。多分散性を決定する方法は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱、マトリクス支援レーザー脱離イオン化クロマトグラフィー、およびエレクトロスプレー質量クロマトグラフィーなどであるが、これらに限定されず、当該分野で周知である。いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセル集合のブロックコポリマーは、0.2未満、1.5未満、1.4未満、または1.3未満、または1.2未満の多分散性指数(PDI)を有する。
【0148】
合成
ある実施形態において、ブロックコポリマーはエチレン不飽和モノマーを含む。「エチレン不飽和モノマー」の語はここで、少なくとも1つの炭素2重または3重結合を有する化合物として定義される。エチレン不飽和モノマーの非限定的な例は:アルキル(アルキル)アクリレート、メタクリレート、アクリレート、アルキルアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド、スチレン、アリルアミン、アリルアンモニウム、ジアリルアミン、ジアリルアンモニウム、N−ビニルホルムアミド、ビニルエーテル、ビヌルスルホナート、アクリル酸、スルボベタイン、カルボキシベタイン、ホスフォベタインまたは無水マレイン酸である。
【0149】
いくつかの実施形態において、ここで提供されるブロックコポリマーの製造における使用に適するモノマーは、非限定的な例として以下のモノマーのうちの1以上を含む:メチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート(全ての異性体)、ブチルメタクリレート(全ての異性体)、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全ての異性体)、ブチルアクリレート(全ての異性体)、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボロニルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレンおよびグリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全ての異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、オリゴエチレングリコールメタクリレート、イタコン酸無水物、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全ての異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、ビニル安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノスチレン(全ての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノα-メチルスチレン(全ての異性体)、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート、ビニルクロリド、ビニルフルオリド、ビニルブロミド、マレイン酸無水物、N−アリールマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アルキルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレン、プロピレン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、ビニルアルコール、ビニルアミン、N−アルキルビニルアミン、アリルアミン、N−アルキルアリルアミン、ジアリルアミン、N−アルキルジアリルアミン、アルキルエニミン、アクリル酸、アルキルアクリレート、アクリルアミド、メタクリル酸、アルキルメタクリレート、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、スチレン、N−イソプロピルアクリルアミド、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、エチルビニルベンゼン、アミノスチレン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルビフェニル、ビニルアニソール、ビニルイミダゾリル、ビニルピリジニル、ビニルポリエチレングリコール、ジメチルアミノメチルスチレン、トリメチルアンモニウム、エチルメタクリレート、トリメチルアンモニウムエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、トリメチルアンモニウムエチルアクリレート、トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート、トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、またはオクタデシルメタクリレートモノマーから選択されるアクリレートおよびスチレン、またはこれらの組合せ。
【0150】
いくつかの実施形態において、これらのモノマーの官能化された種類が任意に用いられる。ここで用いられる通り、官能化されたモノマーは、マスクされた、またはマスクされていない官能基、例えば重合化後に他の部分が結合可能な基を含むモノマーである。前記基の非限定的な例は、第1級アミノ基、カルボキシル、チオール、ヒドロキシル、アジドおよびシアノ基である。いくつかの適切なマスキング基(masking group)が利用可能である(例えば、その開示が引用によりここに組み込まれるT.W. Greene & P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis (2nd edition) J. Wiley & Sons, 1991 and P. J. Kocienski, Protecting Groups, Georg Thieme Verlag, 1994を参照のこと)。
【0151】
ここで記載されるポリマーは、いずれかの適切な方法で調製される。ここで提供されるポリマーを製造するために用いられる適切な合成方法は、非限定的な例として、カチオン性、アニオン性および遊離ラジカル重合化を含む。いくつかの実施形態において、カチオン性の方法が用いられる場合、モノマーは触媒により処理され、重合化を開始する。任意に、1以上のモノマーを用い、コポリマーを形成する。いくつかの実施形態において、前記触媒はイニシエータであり、これは例えば、プロトン酸(ブレンステッド酸)またはルイス酸を含み、ルイス酸を用いる場合、いくつかのプロモータ、例えば水またはアルコールなども任意に用いられる。いくつかの実施形態において触媒は、非限定的な例として、ヨウ化水素、過塩素酸、硫酸、リン酸、フッ化水素、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、三塩化アルミニウム、アルキルアルミニウムクロリド、三フッ化ホウ素複合体、四塩化スズ、五塩化アンチモン、塩化スズ、四塩化チタン、五塩化リン、オキシ塩化リン、またはオキシ塩化クロムである。ある実施形態において、ポリマー合成は、純粋であるか(neat)、またはいずれかの適切な溶媒中で行われる。適切な溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムまたはジメチルホルムアミド(DMF)を含むがこれらに限定されない。ある実施形態において、ポリマー合成は、いずれかの適切な反応温度で行われ、これは例えば約−50℃〜約100℃、または約0℃〜約70℃を含む。
【0152】
ある実施形態において、ブロックコポリマーはフリーラジカル重合化により調製される。フリーラジカル重合化方法が用いられる場合、(i)モノマー、(ii)任意にコポリマー、および(iii)フリーラジカルの任意の供給源が提供され、フリーラジカル重合化方法を開始する。いくつかの実施形態において、いくつかのモノマーが高温での加熱により自己開始するため、フリーラジカルの供給源は任意である。ある場合において、重合化混合物を形成した後、混合物を重合化反応に供する。重合化条件は、ここで述べる通り、少なくとも1つのモノマーを生じ、少なくとも1つのポリマーを形成する条件である。前記条件はいずれかの適切なレベルに任意に変化し、非限定的な例として温度、圧力、環境、重合化混合物において用いられる出発成分の比率、および反応時間を含む。重合化はいずれかの適切な方法により行われ、これは例えば、水溶液中、分散系、懸濁液、エマルションまたはバルク(bulk)を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、イニシエータは反応混合物中に存在する。ここで記載される重合化反応に有用な場合、いずれかの適切なイニシエータが任意に用いられる。前記イニシエータは、非限定的な例として、1以上のアルキルペルオキシド、置換されたアルキルペルオキシド、アリールペルオキシド、置換されたアリールペルオキシド、アシルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、置換されたアルキルヒドロペルオキシド、アリールヒドロペルオキシド、置換されたアリールヒドロペルオキシド、ヘテロアルキルヒドロペルオキシド、置換されたヘテロアルキルヒドロペルオキシド、ヘテロアルキルヒドロペルオキシド、置換されたヘテロアルキルヒドロペルオキシド、ヘテロアリールペルオキシド、置換されたヘテロアリールペルオキシド、ヘテロアリールヒドロペルオキシド、置換されたヘテロアリールヒドロペルオキシド、アルキル過酸エステル、置換されたアルキル過酸エステル、アリール過酸エステル、置換されたアリール過酸エステル、またはアゾ化合物を含む。特定の実施形態において、ベンゾイルペルオキシド(BPO)および/またはAIBNがイニシエータとして用いられる。
【0154】
いくつかの実施形態において、重合化反応はいずれかの方法によりリビングモード(living mode)で行われ、これは例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)、窒素酸化物介在リビングフリーラジカル重合(NMP)、開環重合(ROP)、変性移動(DT)または可逆付加開裂移動(RAFT)であるがこれらに限定されない。慣習的なおよび/またはリビング/制御重合方法を用いて、種々のポリマー構造が製造されてよく、例えばブロック、グラフト、星形、およびグラジエントポリマーなどがあるがこれらに限定されず、それによってモノマー単位は統計的にまたは鎖に亘る勾配の様式で分布するか、またはブロック配列またはペンダントグラフトで同種重合する。他の実施形態において、ポリマーはキサントゲン酸塩(MADIX)の可逆的付加−開裂連鎖移動によるマクロ分子設計によって合成される(Direct Synthesis of Double Hydrophilic Statistical Di- and Triblock Copolymers Comprised of Acrylamide and Acrylic Acid Units via the MADIX Process", Daniel Taton, et al., Macromolecular Rapid Communications, 22, No. 18, 1497-1503 (2001).)。
【0155】
ある実施形態において、可逆付加開裂連鎖移動またはRAFTが本発明のエチレン骨格ポリマーの合成に用いられる。RAFTはリビング重合反応である。RAFTはフリーラジカル変性連鎖移動反応を含む。いくつかの実施形態において、ここに記載されるポリマーを調製するためのRAFTの手法は、チオカルボニルチオ化合物、例えばチジオエステルチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボネートおよびキサンテートを使用するがこれらに限定するものではなく、可逆連鎖移動のメカニズムにより重合を媒介する。ある実施形態において、前記化合物のうちのいずれかのC=S基を有するポリマーラジカルの反応により、安定化されたラジカル中間体が形成される。典型的には、これらの安定化されたラジカル中間体は、標準的なラジカル重合に特有の末端反応を受けないが、むしろ再開始またはモノマーによる生長反応をさせることができるラジカルを再導入し、これは当該反応においてC=S結合を再形成する。ほとんどの場合、このC=S結合への付加のサイクルは、後に次のラジカルの開裂が起こるが、すべてのモノマーが消費されるかまたは反応がクエンチされるまで続く。一般に、いずれかの特定の時間で、低い濃度の活性化ラジカルは通常の末端反応を制限する。
【0156】
ここで記載する重合プロセスは、いずれかの適切な溶媒またはそれらの組合せ中、任意に起こる。適切な溶媒は、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール)、テトラヒドロフラン(THF)ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホルアミド、酢酸、ギ酸、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、メチレンクロリド、エーテル(例えば、ジエチルエーテル)、クロロホルム、およびエチルアセテートを含む。1つの側面において、溶媒は、水、ならびに水および水混和性有機溶媒、例えばDMFとの混合物を含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、結合可能な基(例えば、アジドまたはピリジルジスルフィド基)を含む鎖移動試薬の存在下、ポリマーを調製することにより、結合可能な基がここで提供されるポリマーのα末端に導入され、ここで結合可能な基は、重合プロセスの条件に適合する。前記鎖移動試薬の非限定的な例が、引用により開示がここに組み込まれるHeredia, K. L et al (see Chem. Commun., 2008, 28, 3245-3247に記載される。いくつかの実施形態において、鎖移動試薬は、結合可能な基を含み、アンマスキング反応(unmasking reaction)の後でこれはsiRNA試薬または標的薬剤に結合する。いくつかの実施形態において、標的薬剤、これは例えば低分子標的薬剤(例えば、ビオチン残基または単糖類)などであるがこれらに限定されず、これが鎖移動試薬の存在下ポリマーを調製することによりここで提供されるα末端に結合し、連鎖移動試薬は標的薬剤を含む。
【0158】
いくつかの場合において、ブロックポリマーは結合可能なモノマー(例えば、結合可能な基を有するモノマー)を含み、これは化学分野において既知の、例えば「クリック」化学(例えば「クリック」反応、引用により組み込まれるWu, P.; Fokin, V. V. Catalytic Azide-Alkyne Cycloaddition: Reactivity and Applications. Aldrichim. Acta, 2007, 40, 7-17を参照のこと)を介して、重合後の付加的官能性(例えば、低分子標的薬剤)の導入に用いられる。いくつかの実施形態において、前記結合可能な基を含むモノマーは疎水性モノマーおよびアニオン種に荷電可能なものを含むモノマーと共重合する。いくつかの場合において、アクリル酸またはアルキルアクリル酸のN−ヒドロキシスクシニドエステルは、他のモノマーと共重合し、アミノ官能化した分子、例えば標的リガンドまたはPEGのアミノ誘導体と反応するコポリマーを形成する。いくつかの実施形態において、結合可能な基を含むモノマーはピリジルジスルフィドアクリレート(PDSA)である。
【0159】
ある実施形態において、ブロックコポリマーはPEG置換されたモノマー単位(例えば、PEGは側鎖であり、ポリヌクレオチドキャリアブロックの骨格を含まない)を含む。いくつかの場合において、ここで記載される1以上のポリマーはポリエチレングリコール(PEG)鎖、または約1,000〜約30,000の分子量を有するブロックを含む。いくつかの実施形態においてPEGは、ここで提供されるポリマーキャリアのポリマーに存在するポリマー末端基、または1以上のペンダント修飾可能な基に結合可能である。いくつかの実施形態においてPEG残基は、ここで提供されるポリマーキャリアのポリマー(例えば、ブロックコポリマー)の親水性セグメントまたはブロック内で修飾可能な基に結合する。ある実施形態において、2〜20のエチレンオキシド単位を含むPEG残基は共重合し、ここで提供されるポリマーキャリアを形成するポリマーの親水性部分を形成する。
【0160】
ミセルの正味重量:ポリヌクレオチド
ここで提供されるのは診断剤および/または治療剤(これは例えば、オリゴヌクレオチドを含む)を生細胞に送達するミセルである。いくつかの実施形態において、ミセルは複数のブロックコポリマーと任意に少なくとも1つの治療剤(ポリヌクレオチド、例えばsiRNA)を含む。ここで提供されるミセルは、生体適合性があり、安定(化学的および/または物理的安定を含む)であり、および/または再生可能に合成される。好ましくは、ここで提供されるミセルは、非毒性であり(例えば、低い毒性を示し)、治療剤(例えば、オリゴヌクレオチド)の正味重量を分解から保護し、自然発生的なプロセスを介して(例えば、エンドサイトーシスにより)生細胞に入り、および/または治療剤(例えば、オリゴヌクレオチド)の正味重量を細胞に接触した後、生細胞の細胞質に送達する。
【0161】
ある場合において、ポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)はsiRNAおよび/または別の「ヌクレオチドに基づく」薬剤であり、これは細胞中で少なくとも1つの遺伝子の発現を変更する。したがってある実施形態において、ここで提供されるミセルは細胞にsiRNAを送達するために有用である。ある場合において、細胞はインビトロであり、他の場合、細胞はインビボである(例えばマウスまたはヒト)。いくつかの実施形態において、治療効果のあるsiRNAを含むミセルは、必要な場合に個体に投与される(例えば、遺伝子ノックダウンを必要とし、当該遺伝子が投与されたsiRNAによりノックダウンすることができる場合)。特定の場合、ミセルは個体の特異的な標的細胞へのsiRNAの送達のために有用であるか、または特異的に設計される。
【0162】
いくつかの実施形態において、ここで提供されるミセルはそれを必要とする個体にRNAi剤(例えば、siRNA)を送達する。ここで提供される前記実施形態うちのある特定の実施形態において、ミセルは、ポリマーバイオ結合体、例えばブロックコポリマーと結合した(イオン的または共有結合的に)RNAi剤を含んでいる。更に特定の実施形態において、RNAi剤はブロックコポリマーのアルファ末端に結合し、他の特定の実施形態において、RNAi剤はブロックコポリマーのオメガ末端に結合する。いくつかの実施形態において、siRNAは1以上のポリマーのモノマー単位のペンダント側鎖に共有結合的に結合する。
【0163】
いくつかの実施形態において、RNAi分子はポリヌクレオチドである。ある実施形態において、ポリヌクレオチドはオリゴヌクレオチド遺伝子発現モジュレータである。更なる実施形態において、ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドノックダウン剤またはRNAi剤である。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドはダイサー基質またはsiRNAである。
【0164】
ある実施形態において、ポリヌクレオチドは5’および3’末端を含み、膜不安定化ポリマーにポリヌクレオチドの5’または3’末端のいずれかで結合する。種々の実施形態において、RNAi剤は、結合部分を介して共有結合的にブロックコポリマーに結合する。
【0165】
いくつかの実施形態において、結合部分は親和結合対を含む。ある実施形態において、ポリヌクレオチドおよび/またはpH依存性の膜不安定化ポリマーの末端のうちの1つは、ポリヌクレオチドを提供する化学的部分および/または互いに親和性を有するポリマー、例えばアリールボロン酸−サリチルヒドロキサム酸、ロイシンジッパーもしくは他のペプチドモチーフまたは他の種類の化学的親和結合により修飾される。
【0166】
ここで記載されるミセルのブロックコポリマーとRNAi剤との結合部分(例えば、共有結合)は、任意に開裂不可能であるか、または開裂可能である。ある実施形態において、RNAi剤の前駆体(例えば、ダイサー基質)は、開裂不可能な結合部分によりポリマー(例えば、ポリマーのアルファまたはオメガ末端の結合可能な基)に結合する。いくつかの実施形態において、RNAi剤は開裂可能な結合部分を介して結合する。いくつかの場合、ここで提供されるミセルのポリマーとRNAiとの結合部分は開裂可能な結合を含む。他の場合、ここで提供されるミセルのRNAi剤とポリマーとの間の結合部分は開裂不可能である。ある実施形態において、ここで記載されるミセルで用いられる開裂可能な結合は、非限定的な例としてジスルフィド結合(例えば、細胞質の還元環境中で解離するジスルフィド結合)を含む。いくつかの実施形態において、結合部分は開裂可能であり、および/またはエンドソーム条件で開裂可能な結合を含む。いくつかの実施形態において、結合部分は開裂可能であり、および/または特異的酵素(例えば、ホスファターゼまたはプロテアーゼ)により開裂可能な結合を含む。いくつかの実施形態において、結合部分は開裂可能であり、および/または細胞内パラメータ(例えばpH、還元電位)の変化により開裂可能な結合を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー(例えば、ポリマーのアルファまたはオメガ末端の結合可能な基)とRNAi剤(例えば、オリゴヌクレオチドまたはsiRNA)との間の共有結合は、いずれかの適切な化学的結合方法により達成され、これはアミン−カルボキシルリンカー、アミン−スルフヒドリルリンカー、アミン−糖リンカー、アミン−ヒドロキシルリンカー、アミン−アミンリンカー、カルボキシル−スルフヒドリルリンカー、カルボキシル−糖リンカー、カルボキシル−ヒドロキシルリンカー、カルボキシル−カルボキシルリンカー、スルフヒドリル−糖リンカー、スルフヒドリル−ヒドロキシルリンカー、スルフヒドリル−スルフヒドリルリンカー、糖−ヒドロキシルリンカー、糖−糖リンカー、およびヒドロキシル−ヒドロキシルリンカーを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、2官能化架橋試薬を用い、RNAiの適切な結合可能な基とブロックコポリマーとの共有結合を達成する。いくつかの実施形態において、結合はまたpH感受性の結合およびリンカーにより行われ、これはヒドラゾンおよびアセタール結合を含むがこれらに限定されない。ある実施形態において、RNAi(例えばリボオリゴヌクレオチド)分子は、ポリマーのアルファまたはオメガ末端に、RNAi剤の末端のリボース残基の2’および3’−ヒドロキシルによるボロン酸エステルの形成を介して結合されるボロン酸官能基(例えば、フェニルボロン酸残基)に共有結合的に結合する。他のいずれかの適切な結合方法が同様に、任意に用いられてもよく、例えば多種多様の結合化学が利用可能である(例えば、Bioconjugation, Aslam and Dent, Eds, Macmillan, 1998およびここにおける章を参照のこと)。
【0167】
ある実施形態において、ここで記載されるブロックコポリマー(例えば、ポリマーのアルファまたはオメガ末端の結合可能な基)を有するポリヌクレオチドのポリマーバイオ結合体(例えばsiRNA、オリゴヌクレオチド)は、以下の2つの工程を含む方法に従って調製される:(1)オリゴヌクレオチドの修飾可能な末端基(例えば、5’−もしくは3’−ヒドロキシルまたはアミノ基)を、何れかの適切な活性化試薬を用いて活性化すること、これは例えば1−エチル−3,3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDAC)、イミダゾール、N−ヒドロスクシニミド(NHS)およびジシクロヘキシルジカルボジイミド(DCC)、HOBt(1−ヒドロキベンゾトリアゾール)、p−ニトロフェニルクロロホルメート、カルボニルジイミダゾール(CDI)およびN,N’−ジスクシニミジルカルボネート(DSC)などであるがこれらに限定されない;および(2)ポリマー(例えば、ポリマーのアルファまたはオメガ末端)をオリゴヌクレオチドの末端に共有結合させること。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの5’−または3’−末端の修飾可能な基は、ポリマーへの結合の前に他の官能基により置換される。例えば、ヒドロキシル基(--OH)はスルフヒドリル基(--SH)、カルボキシ基(--COOH)またはアミン基(--NH)を有するリンカーにより任意に置換される。
【0168】
さらに別の実施形態において、1以上の塩基(例えば、5−アミノアルキルピリミジン)に導入される官能基を含むオリゴヌクレオチドは、いずれかの適切な順序に従って活性化剤または反応性の2官能性リンカーを用いてここで提供されるミセルを含むコポリマーに結合する。種々の前記活性化剤および2官能性リンカーは、Sigma、Pierce、Invitrogenその他の供給者から商業的に入手可能である。
【0169】
いくつかの特定の実施形態において、ブロックコポリマーは、マスクされた結合可能な基を含む連鎖移動薬剤を用いてRAFT重合により調製される。特定の場合、CTAを含むピリジル−ジスルフィドを用いて、前記ポリマーを合成する。RNAi剤の共有結合的な末端結合は、チオール含有RNAi剤をポリマーにより処理することにより達成される。いくつかの場合、ポリマー濃度と比較して過剰なチオール含有RNAi剤が用いられ、結合を達成する。
【0170】
ある実施形態において、ここで記載されるミセルは生理活性剤(例えば、抗体、siRNAなど)の細胞内送達を促進する。ある実施形態において、ここで記載されるミセルは直接的なポリマー−RNA結合により連結されるsiRNAの細胞内送達を促進する。ある実施形態においてsiRNAの細胞内送達を増強するミセルは、水溶性および/または薬物動態特性を増強する第1のブロック(例えば、親水性モノマーを含む第1のブロック)、ならびにpH応答性の第2のブロックを含む。
【0171】
標的部分
ある実施形態において、ミセルの細胞取り込みの効率は、標的部分のミセルへの結合により増強される。「標的リガンド」(これは「標的部分」と互換可能である)は、細胞(例えば、選択細胞)の表面に結合する。いくつかの実施形態において、標的部分は特異的細胞表面抗原を認識するか、または標的細胞表面上のレセプターに結合する。適切な標的リガンドは、非限定的な例として、抗体、抗体様分子、またはペプチド、例えばRGD含有ペプチドなどのインテグリン結合ペプチド、またはビタミンなどの低分子、例えば葉酸、ラクトースおよびガラクトースなどの糖、または他の低分子を含む。細胞表面の抗原は、細胞表面分子、例えばタンパク質、糖、脂質または他の細胞表面上の抗原を含む。特定の実施形態において、細胞表面抗原は内在化する。ここで提供されるミセルの標的部分により標的化される細胞表面抗原の例は、トランスフェリンレセプタータイプ1および2、EGFレセプター、HER2/Neu、VEGFレセプター、インテグリン、NGF、CD2、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD33、CD43、CD38、CD56、CD69、およびアシアログリコプロテインレセプターが含まれる。標的リガンドもまた、人工的な親和性分子、例えばペプチド模倣薬またはアプタマーを含む。
【0172】
種々の実施形態において標的リガンドは、ミセルのポリマー(例えばブロックコポリマー)のいずれかの末端、またはモノマー単位の側鎖もしくはペンダント基に結合するか、ポリマーに組み込まれる。ある実施形態において、標的薬剤残基を含むモノマー(例えば、標的薬剤を含む重合可能なビニルモノマー)を共重合し、ここで提供されるミセルを形成するブロックコポリマーを形成する。ある実施形態において、1以上の標的リガンドが結合部分を介してここで提供されるミセルのブロックコポリマーに結合する。いくつかの実施形態において、標的リガンドをブロックコポリマーに結合する結合部分は、開裂可能な結合部分(例えば、開裂可能な結合を含む)である。いくつかの実施形態において、結合部分は開裂可能であり、および/またはエンドソーム条件で開裂可能な結合を含む。いくつかの実施形態において、結合部分は開裂可能であり、および/または特異的な酵素により開裂可能な結合(例えば、ホスファターゼまたはプロテアーゼ)を含む。いくつかの実施形態において、結合部分は開裂可能であり、および/または分子内パラメータ(例えば、pH、還元電位)の変化により開裂可能な結合を含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、標的薬剤はタンパク性の標的薬剤(例えば、ペプチド、抗体、抗体断片)である。ポリマーの標的部分への結合はいずれかの適切な方法、例えば結合の化学的アプローチのうちのいずれか1つにより達成され、これはアミン−カルボキシルリンカー、アミン−スルフヒドリルリンカー、アミン−糖リンカー、アミン−ヒドロキシルリンカー、アミン−アミンリンカー、カルボキシル−スルフヒドリルリンカー、カルボキシル−糖リンカー、カルボキシル−ヒドロキシルリンカー、カルボキシル−カルボキシルリンカー、スルフヒドリル−糖リンカー、スルフヒドリル−ヒドロキシルリンカー、スルフヒドリル−スルフヒドリルリンカー、糖−ヒドロキシルリンカー、糖−糖リンカー、およびヒドロキシル−ヒドロキシルリンカーを含むがこれらに限定されない。特定の実施形態において「クリック」化学が、標的リガンドをここで提供されるミセルのブロックコポリマーに結合するために用いられる(「クリック」反応の例についてはWu, P.; Fokin, V. V. Catalytic Azide-Alkyne Cycloaddition: Reactivity and Applications. Aldrichim. Acta 2007, 40, 7-17を参照のこと)。多種多様の結合化学が任意に用いられる(例えば、Bioconjugation, Aslam and Dent, Eds, Macmillan, 1998およびこの中の章を参照のこと)。いくつかの実施形態において、標的リガンドはモノマーに結合し、次に、結果として得られる化合物はここで記載されるミセル中で用いられるポリマー(例えばコポリマー)の重合合成で用いられる。いくつかの実施形態において標的リガンドは、ミセルのポリマーに結合するsiRNAのセンスまたはアンチセンス鎖に結合する。ある実施形態において、標的薬剤はセンスまたはアンチセンス鎖の5’または3’末端に結合する。
【0174】
特定の実施形態において、ここで提供されるミセルは生体適合性である。ここで用いられる通り、「生体適合性」は、化合物(例えば、ポリヌクレオチドと会合するミセル)の性質をいい、これはそれ自体またはそのインビボ分解産物により特徴付けられ、これは生組織に対して非障害性であるか、または少なくとも最小のおよび/または修復可能な障害性であり;および/または生組織中で免疫反応を生じないか、または少なくとも最小限および制御可能に生ずる。塩に関しては現在、何れかの両性イオン(例えば、カチオン性種またはアニオン種)が生体適合性であることが好ましい。ここで用いられる通り、「生理学的に許容可能な」とは、生体適合性と互換性がある。いくつかの例において、ここで用いられるミセルおよび/またはポリマー(例えば、コポリマー)は、カチオン性脂質と比べて低い毒性を呈する。
【0175】
細胞取り込み
いくつかの実施形態において、RNAi剤(例えば、オリゴヌクレオチドまたはsiRNA)を含むミセルは、エンドサイトーシスにより細胞に送達される。細胞内小胞およびエンドソームは本明細書にわたって互換可能に用いられる。RNAi剤(例えば、オリゴヌクレオチドまたはsiRNA)の細胞質への成功的な送達は一般に、エンドソームのエスケープ(endosomal escape)のメカニズムを有する。ある場合において、ここで提供されるRNAi剤(例えば、オリゴヌクレオチドまたはsiRNA)を含むミセルは、エンドサイトーシスに際して、エンドソームのコンパートメント中のより低いpHに感受性がある。ある場合において、エンドサイトーシスは、荷電可能なモノマー単位もしくはアニオン性単位(例えば、ブロピルアクリル酸単位)に荷電可能な種、またはここで提供されるポリマーおよび/またはミセルの種のプロトン化または電荷中和を誘発し、これによりポリマー中の構造変化が生じる。ある場合においてこの構造変化は、さらに疎水性の膜不安定化形態を生じ、これはエンドソームから細胞質への治療剤(例えば、オリゴヌクレオチドまたはsiRNA)の放出を媒介する。siRNAを含むこれらのミセルにおいて、siRNAの細胞質への送達は、そのmRNAのノックダウン効果を生じさせることができる。これらの他の種類のRNAi剤を含むポリマー結合体において、細胞質への送達によりそれらの所望の作用を生じさせることができる。
【0176】
さらにある実施形態において、ここにおいて提供されるミセルは選択的に疎水性の低分子、例えば疎水性の低分子化合物など(例えば、疎水性低分子薬剤)を選択的にミセルの疎水性中心に取り込む。特定の実施形態において、ここで提供されるミセルは疎水性の低分子、例えば疎水性の低分子化合物ピレリンなどをミセルの疎水性中心に取り込む。
【0177】

本出願の明細書に亘って、種々の既知の頭字語および略語が用いられ、モノマーまたは前記モノマーの重合に由来するモノマー残基が記載される。特に示した場合を除き、限定することなく:「BMA」(または対応する簡単な表記としての文字「B」)は、ブチルメタクリレートまたはそれに由来するモノマー残基を示し;「DMAEMA」(または対応する簡単な表記としての文字「D」)は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはそれに由来するモノマー残基であり;「Gal」はガラクトースまたはガラクトース残基をいい、これは任意にヒドロキシル保護部分(例えば、アセチル)、またはそれに由来するpeg化した(pegylated)誘導体(以下に示す通り)を含む;HPMAは、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはそれに由来するモノマー残基を示す;「MAA」はメチルアクリル酸またはそれに由来するモノマー残基を示す;「MAA(NHS)」はメタクリル酸のN−ヒドロキシル−スクシニミドエステルまたはそれに由来するモノマー単位を示す;「PAA」(または対応する簡単な表記としての文字「P」)は、2−プロピルアクリル酸またはそれに由来するモノマー残基を示し、「PEGMA」とはpeg化したメタクリルモノマー、CHO(CHO)7−8OC(O)C(CH)CHまたはこれに由来するモノマー残基をいう。各々の場合において、いずれかの記号が、モノマー(全ての塩またはそのイオン化類似体を含む)、またはモノマーの重合に由来するモノマー残基(全ての塩またはそのイオン化類似体を含む)を示し、示された特定の形態は、当業者にとってその内容から明確である。
【0178】
例1:ジブロックポリマーおよびコポリマーの調製
以下の一般式のジブロックポリマーおよびコポリマーを調製する:
[A1−/−A2]−[B1−/−B2−/−B3]1−5n
式中、[A1−A2]は第1のブロックコポリマーであり、これはモノマーA1およびA2の残基から構成され、
[B1−B2−B3]は、第2のブロックコポリマーであり、これはモノマーB1、B2、B3の残基から構成され、
x、y、zはモノマー残基中のモル%のポリマー組成であり、
nは分子量である。
【0179】
代表的なジブロックコポリマーは:
[DMAEMA]−[B−/−P−/−D]
[PEGMA]−[B−/−P−/−D]
[PEGMA−DMAEMA]−[B−/−P−/−D]
[PEGMA−MAA(NHS)]−[B−/−P−/−D]
[DMAEMA−/−MAA(NHS)]−[B−/−P−/−D]
[HPMA−/−PDSM]−[B−/−P−/−D]
であり、式中:
Bはブチルメタクリレートであり、
Pはプロピルアクリル酸であり、
DはDMAEMA、ジメチルアミノエチルメタクリレートであり、
PEGはポリエチレングリコールメタクリレートであり、例えばw=4〜5または7〜8のエチレンオキシド単位であり)
MAA(NHS)はメチルアクリル酸−N−ヒドロキシスクシニミドであり、
HPMAはN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドであり、
PDSMはピリジルジスルフィドメタクリレートである。
【0180】
これらのポリマーは、ポリマーまたはコポリマーの第1ブロックの組成が変化するか、または化学的に処理されて第1のブロックが中性(例えばPEGMA)、カチオン性(DMAEMA)、アニオン性(PEGMA−NHS、ここでNHSは酸に加水分解される)、両性(DMAEMA−NHS、ここでNHSは酸に加水分解される)、または両性イオン性(例えば、ポリ[2−メタクリロイルオキシ−2’トリメチルアンモニウムエチルホスフェート])である場合、ポリマーが作られる。さらに、[PEGMA−PDSM]−[B−P−D]ポリマーは第1ブロック中にピリジルジスルフィド官能基を含み、これはチオール化siRNAと反応し、ポリマー−siRNA結合体を形成してよい。
【0181】
例1.1:RAFTによるブロックコポリマーの調製のための一般的合成手順
A.RAFT連鎖移動剤
連鎖移動剤(CTA)、4−シアノ−4−(エチルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸(ECT)、これは後のRAFT重合に用いられるがこの合成は、Moad et al., Polymer, 2005, 46(19): 8458-68による手順から採用された。手短に言えば、エタンチオール(4.72g、76mmol)を10分間に亘って、0℃で攪拌した水素化ナトリウムのジエチルエーテル(150ml)の懸濁液(油中60%)(3.15g、79mmol)に添加した。次に、二硫化炭素(6.0g、79mmol)の添加前に溶液を10分間に亘り攪拌した。粗製S−エチルトリチオカルボン酸ナトリウム(7.85g、0.049mol)を濾過により回収し、ジエチルエーテル(100mL)中に懸濁し、ヨウ素(6.3g、0.025mol)と反応させた。1時間後、溶液を濾過し、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。次に、粗製のビス(エチルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドをロータリーエバポレーションにより単離した。ビス−(エチルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド(1.37g、0.005mol)および4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)(2.10g、0.0075g)の酢酸エチル(50mL)溶液を18時間、還流下18時間加熱した。溶媒のロータリーエバポレーションの後、粗製の4−シアノ−4(エチルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸(ECT)を、固定相としてシリカゲル、溶出液として50:50酢酸エチルへキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより単離した。
【0182】
B.ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)マクロ連鎖移動剤(polyDMAEMAマクロCTA)
ECTおよび2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)(和光化学)をラジカルイニシエータとして用い、DMAEMAのRAFT重合を、窒素雰囲気下、18時間、DMF中30℃で行った。初期のモノマー対CTAの比([CTA]/[I]は、100%の変換での理論上のMnが10,000(g/ml)となるものであった。初期CTA対イニシエータの比([CTA]/[I])は、10:1であった。結果として得たポリDMAEMAマクロ連鎖移動剤を、50:50 v:v ジエチルエーテル/ペンタンの沈殿により単離した。結果として得たポリマーをアセトンに再溶解し、次にペンタン(x3)中に沈殿させ、真空中で一晩乾燥した。
【0183】
C.ポリ(DMAEMA)マクロCTAのDMAEMA、PAAおよびBMAのブロック重合
所望の化学量論的な量のDMAEMA、PAAおよびBMAを、N,N−ジメチルホルムアミド(溶媒に対して25重量%のモノマーおよびマクロCTA)にポリ(DMAEMA)マクロCTAを溶解した。全ての重合について[M]/[CTA]および[CTA]/[I]がそれぞれ、250:1および10:1であった。V79の添加の後、溶液を30分間窒素パージし、18時間、30℃で反応させた。結果として得たジブロックコポリマーを50:50 v:v ジエチルエーテル/ペンテン中に沈殿させることにより単離した。次に沈殿させたポリマーをアセトンに再溶解し、続いてペンタン(x3)に沈殿させ、真空中一晩乾燥した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、DMF中のポリ(DMAEMA)マクロCTAおよびジブロックポリマー試料の両方の分子量および多分散性をポリメチルメタクリレート基準について決定した(Viscotek GPCmax VE2001および屈折計VE3580 (Viscotek, Houston, TX)に直列に連結したSEC Tosoh TSK−GEL R−3000 および R−4000 カラム(Tosoh Bioscience,Montgomeryville,PA)。1.0重量%のLiBrを含むHPLC−グレードのDMFを移動相として使用した。RAFT合成したポリマーのいくつかの分子量および組成を図1にまとめる。
【0184】
例1.2 ポリ(PEGMA)マクロCTAからのDMAEMA、PAAおよびBMAの第2ブロック(B1−B2−B3)の共重合の調製
所望の化学量論的な量のDMAEMA、PAAおよびBMAを、N,N−ジメチルホルムアミド(溶媒に対して25重量%のモノマーおよびマクロCTA)に溶解したポリ(PEGMA)マクロCTAに添加した。全ての重合について、[M]o/[CTA]oおよび[CTA]o/[I]oはそれぞれ、150:1および10:1であった。AIBNの添加後、溶液を30分間、窒素パージされ、6〜12時間、68℃で反応させた(図2)。次に、結果として得たジブロックコポリマーをアセトンに再溶解し、続いてペンタン(x3)に沈殿させ、真空中で一晩乾燥した。Viscotek GPCmax VE2001および屈折計VE3580(Viscotek,Houston,TX)を用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用い、DMF中のポリ(PEGMA)マクロCTAおよびジブロックポリマー試料の両方の分子量および多分散性(PDI、Mw/Mn)を決定した。1.0重量%のLiBrを含むHPLC−グレードのDMFを移動相として使用した。CDCl中でNMR分光法
を使用してポリマー構造を確認し、第2のブロックの組成を算出した。[PEGMAw]−[B−P−D]ポリマー(w=7〜8)の合成については図2にまとめ、[PEGMAw]−[B−P−D]ポリマー(w=7〜8)の特性決定については図3A、3Bおよび3Cにまとめる。
【0185】
例1.3 PEGMA−DMAEMAコポリマーの調製および特性決定
例1.1および1.2に記載したのと同じ手順でポリマー合成を行った。第1ブロックにおけるPEGMおよびDMAEMAの比は、個々のモノマーの種々の供給比を用いることにより変化させ、図4に記載するコポリマーを作った。
【0186】
例1.4 PEGMA−MAA(NHS)コポリマーの調製および特性決定
第1ブロックコポリマーの所望の組成を得るモノマー供給比を用いて、例1.1および1.2に記載した(および図5にまとめた)のと同じ手順でポリマー合成を行った。[PEGMAw−MAA(NHS)]−[B−P−D]ポリマー(第1ブロック中のモノマーのコポリマー比は75:25)の合成および特性決定について図6A、6Bおよび6Cにまとめる。
【0187】
例1.5DMAEMA−MAA(NHS)コポリマーの調製および特性決定
第1ブロックコポリマーの所望の組成を得るモノマー供給比を用いて、例1.1および1.2に記載した(および図5にまとめた)のと同じ手順でポリマー合成を行った。DMAEMA−MAA(NHS)コポリマー(第1ブロック中のモノマーのコポリマー比は70:30)の合成および特性決定について図7A、7Bおよび7Cにまとめる。ポリマーを含むNHS
をpH7.4〜8.5、1〜4時間、室温または37℃、水性緩衝液(リン酸または重炭酸)中でインキュベートし、加水分解した(酸性の)形態を生じ得る。
【0188】
例2 siRNA薬剤送達のためのHPMA−PDS(RNA)コポリマー結合体の調製および特性決定
A.ピリジルジスルフィドメタクリレートモノマー(PDSMA)の合成
PDSMAの合成スキームを図8にまとめる。Aldrithiol−2(登録商標)(5g,22.59mmol)を40mlのメタノールおよび1.8mlのAcOHに30分間に亘り溶解した。反応を室温48で時間、N下、攪拌した。溶媒の蒸発後、残渣の油を40mlジエチルエーテルで2度洗浄した。粗製の化合物を10mlメタノールに溶解し、生成物を50mlジエチルエーテルに2度沈殿させ、淡黄色固体として所望の化合物1を得た。収率:95%。
【0189】
ピリジンジチオエチルアミン(1、6.7g、30.07mol)およびトリエチルアミン(4.23ml、30.37mmol)をDMF(25ml)およびピリジン(25ml)に溶解し、メタクリロリルクリリド(3.33ml、33.08mmol)をシリンジにより0℃で緩徐に添加した。反応混合物を2時間室温で攪拌した。反応後、反応をsat. NaHCO(350ml)により停止し、酢酸エチル(350ml)により抽出した。組み合わせた有機層をさらに、19% HCl(100ml、1回)および純粋(100ml、2回)によりさらに洗浄し、MaSOにより乾燥した。純粋な生成物をカラムクロマトグラフィー(EA/Hex:1/10〜2/1)により、黄色シロップとして精製した。Rf=0.28(EA/Hex=1/1)。収率:55%。
【0190】
B.HPMA−PDSMAコポリマー合成
フリラジカルイニシエータとして2,2’−アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)を用いて、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)およびピリジルジスルフィドメタクリレートのRAFT重合を(典型的には70:30のモノマー比で)DMF中、8時間、窒素環境下、68℃で行った(図9)。CTA対AIBNのモル比は10:1であり、モノマー対CTA比を、100%の変換の場合、分子量25,000g/molが達成されるように設定する。ポリ(HPMA−PDS)マクロCTAを、メタノールからジエチルエーテルへの沈殿を繰り返すことにより単離した。
【0191】
マクロCTAを真空下24時間乾燥し、次にジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、プロピルアクリル酸(PAA)およびブチルメタクリレート(BMA)のブロック重合に用いる。等モル量のDMAEMA、PAAおよびBMA([M]/[CTA]=250)を、N,N−ジメチルホルムアミド(溶媒に対して25重量%のモノマーおよびマクロCTA)に溶解したHPMA−PDSマクロCTAに添加する。ラジカルイニシエータAIBNをCTAとともにイニシエータに10:1の比で添加する。重合を窒素雰囲気下、68℃で8時間、続行する。その後、結果として得たジブロックポリマーを、50:50のジエチルエーテル/ペンタンに4回沈殿させることにより単離し、沈殿の間エタノール中に再溶解する。次に生成物をジエチルエーテルで1度洗浄し、真空中一晩乾燥する。
【0192】
C.HPMA−PDSMAコポリマーへのsiRNA結合
二本鎖RNAとしてジスルフィド修飾した5’−センス鎖とともにチオール化siRNA(Agilent,Boulder,CO)を商業的に入手した。結合のための遊離チオールは、凍結乾燥した化合物を水中に溶解することにより調製し、アガロースゲル内に固定したジスルフィド還元剤TCEPにより1時間処理する。次に還元したRNA(400μM)を5mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を含むリン酸緩衝液(pH7)中、ピリジルジスルフィド官能化したポリマーにより24時間処理した(図8)。
【0193】
RNAチオールとのピリジルジスルフィドポリマーの反応により、2−ピリジンチオンを精製し、これは分光学的に測定し、結合効率を測定することが出来る。さらにジスルフィド交換について確認するため、結合体をSDS−PAGE16.5%トリシンゲル上で泳動する。平衡して、結合反応のアリコート(aliquot)を、SDS−PGAEの前に固定化したTCEPにより処理し、還元環境でポリマーからRNAの放出を確認する。結合反応を、1、2および5のポリマー/RNA化学量論で行う。2−ピリジンエチオンの放出について343nmのUV分光測定を用いて、結合効率を測定する。
【0194】
例3:細胞標的剤によるポリマーの合成:葉酸プロパルギルによるアジド−末端ポリマーのクリック反応
制御されたラジカル重合とアジド−アルキンクリック化学との組合せを用い、興味の対象の特定の受容体(例えば、葉酸)を含む特定の組織/細胞の活性ターゲティングに対する可能性のある生物学的リガンド(例えば、葉酸)と結合したブロックコポリマーミセルを調製する。アジド連鎖移動剤(CTA)を用いることを除き、実施例1に示すような可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合によって、ブロックコポリマーを合成する。次に、ポリマーのアジド末端を標的剤(例えば、葉酸)のアルキン誘導体と反応させ、標的剤を含有するポリマーを生成する。
【0195】
RAFT剤の合成
RAFT連鎖移動剤(CTA)、2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチル-プロピオン酸 3−アジドプロピルエステル(C12−CTAN3)を以下のように調製する:
3−アジドプロパノールの合成。3−クロロ−1−プロパノール(5.0g,53mmol,1.0当量)およびアジ化ナトリウム(8.59g,132mmol,2.5当量)を、DMF(26.5mL)中、100℃で48時間反応させる。反応混合物を室温まで冷却し、エチルエーテル(200mL)に注ぎ、飽和NaCl水溶液(500mL)で抽出する。有機層を分離し、MgSOにより乾燥し、ろ過する。上清を濃縮し、生成物を得る(5.1g,95%の収率)。
【0196】
2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチルプロピオン酸塩化物(DMP−Cl)の合成。2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチル−プロピオン酸 (DMP,Noveon>95%)(1.0g,2.7mmol,1.0当量)を、50mL丸底フラスコ中の塩化メチレン(15mL)に溶解し、溶液を約0℃まで冷却する。塩化オキサリル(0.417g,3.3mmol,1.2当量)を窒素雰囲気下、緩徐に添加し、室温に到達させ、合計3時間撹拌する。結果として得られる溶液を減圧濃縮し、酸塩化物の生成物を得る(1.0g,99%の収率)。
【0197】
2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチルプロピオン酸 3−アジドプロピルエステルの合成。3−アジドプロパノール(265mg,2.62mmol,1.0当量)を、50mL丸底フラスコ中の塩化メチレン(5 mL)に溶解し、溶液を約0℃まで冷却する。塩化メチレン(5mL)中のトリエチルアミン(0.73 mL)溶液を10分間に亘って滴下する。塩化メチレン(5mL)中のDMP−Cl(1.0g,2.6mmol)溶液を滴下し、溶液を3時間撹拌しながら室温にする。溶液を減圧濃縮し、エチルエーテル(100mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(50mL)、水(50mL)、およびNaCl飽和溶液(50mL)で続けて洗浄する。有機層を分離し、MgSO4(1.0g)で乾燥し、ろ過する。上清を減圧濃縮し、残留油として生成物を得る(1.05g,90%の収率)。
【0198】
葉酸プロパルギルの合成
葉酸(1.0g,0.0022mol)をDMF(10mL)に溶解し、水/氷浴中で冷却する。N−ヒドロキシスクシニミド(260mg,0.0025mol)およびEDC(440mg,0.0025mol)を加え、結果として得られる混合物を氷浴中で30分間撹拌する。DMF(5.0mL)中のプロパルギルアミン(124mg,2.25mmol)溶液を添加し、結果として得られる溶液を室温まで温め、24時間撹拌する。反応混合物を水(100mL)に注ぎ、30分間撹拌し、沈殿を形成する。橙黄色の沈殿をろ過し、アセトンで洗浄し、6時間減圧乾燥し、1.01gの生成物を得る(93%の収率)。
【0199】
アジド末端ポリマーと葉酸プロパルギルとのクリック反応
アジド末端ポリマーを葉酸プロパルギルと以下の手順例により反応させる。DMF(7mL)中のN3−α−[D−X]−[B−P−D]−ω(0.0800mmol)溶液およびペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA,Aldrich,99%)、(8.7mg,0.050mmol)を60分間窒素パージし、窒素雰囲気下、CuBr(7.2mg,0.050mmol)および葉酸プロパルギル(42mg,0.088mmol)を含み、磁気性撹拌子を備えたバイアルにシリンジを用いて移す。反応混合物を、酸素非存在下、26℃で22時間撹拌する。反応混合物を空気に暴露し、中性アルミナのカラムに溶液を通過させる。DMFを減圧除去し、生成物をヘキサン中に沈殿させる。得られる葉酸末端ブロックコポリマー、葉酸−α−[D−X]−[B−P−D]−ωをTHFに溶解し、ろ過し、過剰な葉酸プロパルギルを除去する。THFを除去し、次にポリマーを脱イオン化(DI)水に溶解し、1000Daの分子量カットオフを有する分子膜を用いて6時間透析する。凍結乾燥によりポリマーを単離する。
【0200】
例4:ブロックコポリマーPRx0729v6のNMR分光法(図10)
NMR分光法を用いるこの例により、ポリマーPRx0719v6が水溶液中でミセル様構造を形成することが証明される。
【0201】
重水素化クロロホルム(CDCl)および重水(DO)中、25℃でH NMRスペクトルをBruker AV301に記録した。重水素ロック(CDCl,DO)を用い、化学シフトは、テトラメチルシラン(CDClについて)および3−(トリメチルシリル)プロピオン−2,2,3,3−d4酸、ナトリウム塩(DOについて)のppmで測定した。ポリマー濃度は6mg/mlであった。
【0202】
水性緩衝液中の合成ポリマーのNMR分光法は、ポリマーPRx0729v6を例として用い、本発明のジブロックポリマーが水溶液中でミセルを構成することを証明した。ミセルの形成により、保護された(shielded)粘性の内部中心が形成され、これは中心セグメントを形成するプロトンの動きを制限し、溶媒と中心のプロトンとの重水素交換を防止する。これは対応するプロトンのH NMRシグナルの有意な抑制または消失により反映される。我々は溶液NMRの固有の特性を用い、ミセルの中心の疎水性ブロックが効果的に保護されることを示した。ミセルが水性溶媒中で形成される場合、疎水性コポリマーブロックのプロトンのシグナルの消失するはずである。
【0203】
図10は、CDCl(有機溶媒)およびDO(水性溶媒)中のポリマーPRx0729v6のH NMR実験について示す。室温、CDCl中のH NMRスペクトル(図10A)は、全てのポリマープロトンに起因するシグナルを示し、これはポリマー鎖がCDCl中で分散し(非凝集)、それらの運動を保存し、それらのプロトンが溶媒と交換し得ることを示す。このことから、保護された中心を有する安定なミセルは有機溶媒中のPRx0729v6からは形成されないことが示される。図10BはDO中のPRx0729v6のH NMRスペクトルを示す。疎水性ブロック(BMA、PAA、DMAEMA)のプロトンを示すシグナルはスペクトルから消失している。このことから、保護された中心を有する安定なミセルは、水性溶媒中PRx0729v6から形成されることが示される。さらに、同じスペクトルにおいて、DMAEMA(2.28ppm)の2つのメチル基のプロトンの共鳴に起因するシグナルは有意に抑制され、このことは、外殻を構成する第1のポリDMAEMAブロック、即ち、主にDMAEMAの荷電基のみが水に露出していることを意味する。単純な計算により、疎水性ブロックのPAA、DMAEMAの積分した割合(2900)をCDCl(5600)中でのシグナルから減算することにより、この結論と矛盾しないDO(2811)中での同じシグナルの概略値を得る。
【0204】
まとめると、H NMRの結果は、ポリマーPRx0729v6が規則的な中心−外殻構造を有するミセルを形成し、ここで第1ブロックポリDMAEMAが、疎水性単位(BMA)および反対の電荷の静電安定単位(PAA,DMAEMA)を包囲する水和した外殻を有するミセルを形成する。
【0205】
例5:有機溶媒中でのポリマーPRx0729v6粒子の安定性(図11)
この例は、ポリマーPRx0729v6のミセル構造が有機溶媒中で解離することを示し、これは、ミセルの中心の疎水性とも矛盾しない。
【0206】
ポリマーPRx0729v6を、濃度1mg/mLで種々の溶媒に溶解し、粒径を動的光散乱により測定した。図11は、ジメチルホルムアミド(DMF)の濃度の増加により凝集鎖へのミセルの解離が生じることを示す。
【0207】
例6:ポリマーPRx0729v6の透過型電子顕微鏡(TEM)分析(図12)
この例により、電子顕微鏡を用いて、ポリマーPRx0729v6が球形のミセル様粒子を形成することが証明される。
【0208】
PBS中のポリマーPRx0729v6の0.5mg/mL溶液を、30分間、炭素を被覆した銅グリッドに適用する。グリッドをKarnovskyの溶液に固定し、カコジラート緩衝液中で1度洗浄し、次に水中で8回洗浄する。グリッドを酢酸ウラニルの6%溶液で15分染色した後、分析の時まで乾燥させた。JEOL顕微鏡について透過型電子顕微鏡法(TEM)を実施した。図12は、PRx0729v6の典型的な電子顕微鏡写真を示し、これは動的光散乱により溶液中で決定したものとほぼ同じ大きさの球形粒子を示す。
【0209】
例7:ポリマー構造に対するpHの影響(図13)
この例により、ポリマーPRx0729v6のミセル構造がpH7.4から4.7へ低下することにより解離することが示される。
【0210】
ポリマーPRx0729v6の粒径を、pH7.4で動的光散乱により測定し、0.5mg/mL〜0.004mg/mLの5倍の連続希釈法でPBS中、pH4.7までの一連の酸性pH値を下げる。図13Aにより、pH7.4でポリマーは4μg/mLまでの希釈に対して安定であり、ここでこれは凝集を生じる形態に解離し始める。図13Bは、pH4,7までの増加する酸性pH値において、ミセル構造からのポリマーの解離が増強され、即ち、より高い濃度で生じ、1〜8nmの大きさのポリマーモノマーのレベルが増加することを示す。
【0211】
例8:ポリマーPRx0729v6の臨界ミセル濃度(CMC)(図14)
以下の例により、ポリマーPRx0729v6により形成されるミセルが100倍希釈に対して安定であることが証明される。
【0212】
pH7.4のPBS中、1mg/mL±0.5M NaClの濃度のポリマーPRx0729v6の粒径。PBS±0.5M NaClによる1mg/mL〜1.6μg/mLの5倍の範囲に亘る連続希釈法で動的光散乱により、粒径を測定した。
【0213】
図14は、約45nmの粒径が、約10μg/mLの濃度まで安定であることを示す。ポリマーPRx0729v6は、約5μg/mL(CMC)未満で不安定であり、ここで個々のポリマー鎖は解離し、非特異性の凝集体を形成する。
【0214】
例9:異種性(混合)ポリマーミセルの調製
異種性(混合)ポリマーミセルは2以上の組成の異なるポリマーを含む。2以上の組成の異なるポリマーの各々(例えば、ポリマーAおよびポリマーB)は、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロックコポリマーであってよい。
【0215】
異種性ミセルは、第1変性溶媒中で第1ポリマーおよび第1ポリマーと組成の異なるおよび第2ポリマーを含み、第1ポリマーおよい第2ポリマーの異種性混合物を形成する。異種性混合物が第2水性溶媒に露出し、第1ポリマーの疎水性ブロックは水性溶媒中の第2ポリマーと会合し、集合して第1ポリマーおよび第2ポリマーを含む異種性ミセルを形成する。
【0216】
ポリヌクレオチドは少なくとも1つの第1ポリマー、第2ポリマーまたは異種性ミセルとともに会合し得る(イオン性または共有結合的に結合)。
【0217】
非限定的な例として、ブロックコポリマー#1を含む第1ポリマーは、例1に記載する通り、RAFT重合により調製される。ブロックコポリマー#2を含む第2ポリマーは同様に、異なる親水性ブロックと同じ疎水性ブロックにより調製される。例えば、(ポリDMAEMA)カチオン性親水性ブロックは代わりに、中性親水性ブロック、例えば、そのペンダント基に共有結合的に結合するポリエチレングリコールオリゴマーを有するモノマー単位を含むホモポリマーブロック(例えばPEGMA)を有するように調製される。別の例として、異種性ポリマーミセルは、代替の第2ポリマーを用いて調製することも可能であり、これは、100%エタノール中で等量の2つのポリマーを混合し、その後pH7.4のPBS中で20倍希釈またはpH7.4のPBSで透析することにより形成される50%DMAEMAおよび50%PEGMAのランダムコポリマーを含む。各々の場合、上記一般的手順に従い、異種性ミセルを形成し得る。
【0218】
例10:siRNA/ポリマー複合体の特性決定
アガロースゲル阻害による完全な、セラム安定なsiRNAの確認の後、siRNA/ポリマー複合体についてサイズ、ゼータ電位をZetaPALS検出器(Brookhaven Instruments Corporation, Holtsville, NY, 15 mW laser,入射ビーム= 676nm)を用いて特性を決定した。手短に言えば、ポリマーをリン酸緩衝塩(PBS、Gibco)中、0.1mg/mLで配合し、pH7.4で50%がプロトン化する正に荷電したDMAEMAおよび負に荷電したsiRNAに基づき理論上の所望の電荷比でGAPH siRNA(Ambion)にポリマーを添加することにより複合体を形成した。90°の散乱角度で相関関数を収集し、水中25℃の粘土および屈折率を用い、粒径を算出した。有効径として粒系を示し、これは対数正規分布を呈する。ZetaPALS電位分析ソフトを用いて25℃で平均電気泳動移動度を測定し、水性懸濁液についてSmoluchowskyモデルを用いてゼータ電位を算出した。
【0219】
例11:HeLa細胞培養
HeLa、ヒト子宮頸癌細胞(ATCC CCL−2)をL−グルタミン(Gibco)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco)および10%のウシ胎仔血清(FBS,Invitrogen)を含む最小必須培地(MEM)中、37℃、5%COで維持した。
【0220】
例12:キャリアおよびsiRNA/ポリマー複合体のpH依存性膜破壊
溶血を用いて、エンドソームの輸送を模倣するpHにおいて遊離ポリマーおよびsiRNA/ポリマー結合体の両方の可能性のあるエンドソーム溶解活性を測定した(細胞外pH=7.4、初期エンドソームpH=6.6、および終期エンドソームpH=5.8)。手短に言えば、EDTAを含む真空容器にヒト血液の全体を収集した。血液を遠心分離し、血漿を吸引し、150mM NaCl中で3度洗浄し、赤血球細胞(RBC)を単離した。RBCをpH7.4、pH6.6またはpH5.8のリン酸緩衝液(PB)に再懸濁した。次に、ポリマー(10μg/mL)またはポリマー/siRNA複合体を37℃で1時間、3つのpH値でRBCによりインキュベートした。次に、そのままのRBCを遠心分離し、上清へ放出されるヘモグロビンをpH依存性のRBC膜溶解の指標として541nmの吸収により測定した。
【0221】
例13:キャリア媒介性のsiRNAの取り込みの測定
siRNA/ポリマーの細胞内取り込みをフローサイトメトリー(Becton Dickinson LSR benchtop analyzer)を用いて測定した。Helasを15,000細胞/cm播種し、一晩付着させた。FAM(5−カルボキシフルオレシン)標識したsiRNA(Ambion)を理論上の電荷比4:1、室温で30分に亘りポリマーと複合体形成させ、次に培養したHeLasを最終siRNA濃度25nMに添加した。複合体により4時間インキュベーションした後、細胞をトリプシン処理し、0,5%BSAおよび0.01%トリパンブルーを含むPBSに再懸濁した。細胞外蛍光のクエンチおよび細胞により取り込まれた複合体の識別について前述した通り、トリパンブルーを用いた。10,000細胞をサンプルごとに分析し、処理を受けていないサンプルおよびFAM章式されたsiRNAにより錯体形成されていないポリマーを用いて蛍光ゲーティング(gating)について決定した。
【0222】
例14:siRNA/ポリマー複合体の細胞毒性
siRNA/ポリマー錯体の細胞毒性を、乳酸脱水素酵素(LDH)毒性検知キット(Roche)を用いて測定した。HeL細胞を96ウェルプレートにウェルあたり12,000細胞の密度で播種し、一晩付着させた。複合体をポリマー(0.1mg/mL原液)をGAPH siRNAに電荷比4:1で添加することにより形成し、25nM siRNA/ウェルの濃度で得た。複合体(電荷比=4:1)を三重にウェルに添加した。細胞をポリマー複合体により24時間インキュベートした後、培地を除去し、細胞をPBSで2度洗浄した。次に細胞を溶解緩衝液(100μL/ウェル,20mM トリス−HCl,pH7.5,150mM NaCl,1mM NaEDTA,1mM EGTA,1% Triton,2.5 mM ピロリン酸ナトリウム,1mM β−グリセロホスフェート,1mM オルソバナデートナトリウム)、4℃で1時間溶解した。ピペット操作により混合した後、20μLの細胞溶解産物をPBS中1:5に希釈し、100μLのLDH基質溶液と混合することにより乳酸脱水素酵素(LDH)を定量した。色素形成のための10〜20分のインキュベーションの後、650nmでのリファレンスセットにより吸収を490nmで測定した。
【0223】
例15:GAPDHタンパク質およびsiRNA/ポリマー複合体による遺伝子ノックダウンの評価
siRNA送達のための一連のポリマーの有効性についてGAPDH活性アッセイ(Ambion)を用いてスクリーニングした。HeLas(12,000細胞/cm)を96ウェルプレートに播種した。24時間後、10%血清の存在下、複合体(電荷比=4:1)を最終siRNA濃度25nMで細胞に添加した。48時間の形質移入後、siRNA媒介性GAPDHタンパク質還元の程度を評価した。ポジティブコントロールとして、製造元の条件に従いHiPerFect(Quiagen)を用いて並行したノックダウン実験を行った。残ったGAPDH活性を、製造元により記載される通り、動力学的蛍光増加法を用いて5分間測定し、以下の式に従って算出した:残存する発現%=Δ蛍光,GAPDH/Δ蛍光,未処理、式中、Δ蛍光= 蛍光5分−蛍光1分。siRNAの非標的配列を用いる場合、形質移入の手順はGAPDH発現に有意な影響を与えない。
【0224】
もっとも強いsiRNA媒介性GAPDHノックダウンを生じるキャリアを特定するための初期スクリーニングの後、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)を用いて直接的にsiRNAの送達を評価する。上記形成された複合体によりインキュベーションの48時間後、細胞をPBSでリンスした。Quiagen QiashredderおよびRNeasy mini kitを用いて全てのRNAを単離した。同じサンプル中のいずれかの残渣の遺伝子DNAを消化し(RNase−Free DNase Set,Qiagen)、製造元の説明書に従い、RiboGreenアッセイ(Molecular Probes)を用いてRNAを定量した。
【0225】
Omniscript RT kit(Qiagen)を用いて逆転写を行った。25ngの全RNAサンプルをcDNA合成に用い、予め設計したプライマーおよびプローブセット(Assays on Demand,Applied Biosystems)を用いたABI Sequence Detection System 7000を用いてPCRを行った。10μLの2X Taqman Universal PCR Mastermix、1μLのプライマー/プローブ、2μLのcDNAからなる反応(全部で20μl)を、ヌクレアーゼを含まない水(Ambion)により20μLにした。以下のPCRパラメータを用いた:95℃、90秒、その後95℃、30秒を45サイクル、55℃を60秒。サイクルの閾値(C)分析を用いて、GAPDHを定量し、β−アクチンに規格化し、未処理HeLasの発現と比較した。
【0226】
例16:siRNAと複合体形成したポリマーPRx0729v6の粒形の動的光散乱(DLS)測定(図15)
以下の例により、ポリマーPRx0729v6が、単独で大きさ45nmまたはsiRNAに結合した後に大きさ47nmの均一な粒子を形成することが証明された。
【0227】
ポリマー単独またはポリマー/siRNA複合体の粒径を、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いて動的光散乱(DLS)により測定した。凍結乾燥したポリマーを100%エタノールに10〜50mg/mLで溶解し、次にリン酸緩衝液、pH7.4で10倍に希釈した。
【0228】
リン酸緩衝食塩水、pH7.4(PBS)で、理論上の電荷比4:1、ポリマー上の正電荷
:siRNA上の負電荷、で1mg/mLでPRx0729v6単独または0.7mg/mLで1uM GAPDH−specific 21mer−siRNA (Ambion)と複合体形成したPRx0729v6ポリマーについて測定した。PRx0729v6単独(45nm)およびsiRNAと複合体形成したPRx0729v6(47nm)(図15)は、ほぼ一様な分布、PDI<0.1の同様の粒子径を示す。
【0229】
例17:種々の電荷比でのポリマーPRx0729v6/siRNA複合体のゲルシフト分析(図16)
以下の例により、ポリマーPRx0729v6がsiRNAに種々の電荷比で結合し、還元された電気泳動移動度を有する複合体を生じることが証明された。
【0230】
ポリマーsiRNA結合をゲル電気泳動で分析し(図16)、ポリマーへの完全なsiRNA結合が、ポリマー/siRNAの4:1およびそれより高い電荷比で生じることを立証した。
【0231】
例18:ミセルとsiRNAの結合
A.チオール含有ブロックコポリマーと二重鎖siRNAの結合
50mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.2または他のアミン緩衝液、例えば、NHSエステル修飾に適した範囲のpH(pH7〜9)のホウ酸塩、Hepes、重炭酸塩に、10mg/mLのアミノ−siRNAを溶解することによりsiRNA−ピリジルジスルフィドを調製した。SPDPを濃度6.2mg/mLでDMSO(20mM 原液)に溶解し、25ulのSPDP原液を修飾すべき1mlずつのアミノ−siRNAに添加した。溶液を混合し、少なくとも30分、室温で反応させた。より長い反応時間(一晩のものを含む)によっては、修飾は不利な影響を受けなかった。50mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、10mM EDTA、pH7.2を用いて修飾したRNA(ピリジルジスルフィド)を反応副生成物から透析(またはゲル透過)により精製した。ポリマーPRx0729v6(ω末端に遊離チオールを含む)により、pH7.2、PBS中10〜50mM EDTAの存在下、調製されたsiRNA−ピリジルジスルフィドを1:5のモル比で反応させた。ピリジン−2−チオンの放出およびゲル電気泳動により分光学的に反応の程度を測定した。
【0232】
B.第2鎖のアニーリング前のポリマーと1本鎖RNAの結合
1本鎖のアミノ修飾されたRNAにより開始する上記手順の例を用いて、1本鎖RNAピリジルジスルフィド結合体を調製した。ブロックコポリマーミセルとRNAピリジルジスルフィドのカップリング後、相補的なRNAストレン(strain)を反応混合物に添加し、2本鎖RNAのTmよりも低い約20℃の温度で1時間、2つの鎖をアニールさせる。
【0233】
例19:siRNAのノックダウン活性−培養した動物細胞中のミセル複合体(図17および図18)
PRx0729v6:siRNA複合体による24時間の処理の後、特異的な遺伝子発現を
siRNA/ポリマーPRx0729v6複合体のノックダウン(KD)活性を96ウェルフォーマットで分析した。ポリマーおよびGAPDH標的siRNAまたはネガティブコントロールsiRNA(Ambion)を25uL中で混合し、種々の電荷比および最終的な形質移入濃度の5倍の濃度を得て、30分間複合体形成し、19%FBSを含む100uLの標準培地中にHeLa細胞を添加する。最終siRNA濃度を100、50、25および12.5nMで評価した。ポリマーを4:1、2:1または1:1のいずれかの電荷比、または18、9、4.5および2.2μg/mLの固定ポリマー濃度で添加し、最も高いKD活性をもたらす条件を決定した。電荷比(図17A)、より高い濃度で複合体を調製し、30分間インキュベーションし、次に細胞の添加直前にグラフに示される濃度の5倍に連続希釈した。固定されたポリマー濃度(図17B)について、グラフに示される5倍の濃度でsiRNAおよびポリマーを複合体形成させ、30分インキュベーションし、次に示される最終濃度について細胞を添加した。図17Cはネガティブコントロールである。全てのRNAを処理の24時間後に単離し、定量的PCRを用いて2つのGAPDH発現を2つの内部標準遺伝子、RPL13AおよびHPRTと比較して測定した。図17A、17B、17Cおよび図18Aおよび図18Cは、9μg/mLおよびより高い濃度で、試験された全てのsiRNA濃度でPRx0729v6により得た>60%KD活性(影付き)を示す。この濃度は、粒径分析からの安定化ミセル形成と合致した。高いKD活性は、より低い濃度(4.5μg/mLの固定ポリマー濃度)での複合体形成と比較して複合体が高い濃度で調製され、連続希釈された場合(電荷比4:1)のみ、4.5μg/mL PRx0729v6/12.5nM siRNAで観察された。さらに、100nM siRNAおよび4.5μg/ml PRx0729v6は、高いKD活性を示す一方、より低いsiRNA濃度の場合はKD活性を示さなかった。まとめると、PRx0729v6ミセルは、10μg/mlまでの希釈に対して安定であり、5μg/ml未満でKD活性を失い、これは安定なミセルが良好なKD活性を必要とすることを示す。
【0234】
例20:培養哺乳動物細胞中のダイサー基質GAPDH siRNA−ポリマー複合体のノックダウン活性
GAPDH特異的ダイサー基質siRNA/ポリマー複合体のノックダウン(KD)活性は、ポリマー:GAPDH ダイサーsiRNA複合体で24時間処理した後のGAPDH遺伝子の発現を測定することにより、96ウェルフォーマットで分析する。GAPDHダイサーsiRNA配列は:
センス鎖:rGrGrUrCrArUrCrCrArUrGrArCrArArCrUrUrUrGrGrUrAdTdC、
アンチセンス鎖: rGrArUrArCrCrArArArGrUrUrGrUrCrArUrGrGrArUrGrArCrCrUrUである。ポリマーおよびGAPDHターゲティングsiRNAまたはネガティブコントロールsiRNA(IDT)を25uL中で混合し、種々の電荷比および最終的な形質移入濃度の5倍以上の濃度を得て、10%FBSを含有する100uL標準培地中にHeLa細胞を加える前に30分間複合体形成させた。最終的なsiRNA濃度は、100、50、25、および12.5nMで評価する。ポリマーを、4:1、2:1または1:1の電荷比または40、20、10、および5μg/mLの固定されたポリマー濃度のいずれかで加え、最高のKD活性を生じる条件を測定する。全てのRNAを処理の24時間後に単離し、GAPDH発現は、定量的PCRにより、2つの内部標準遺伝子、RPL13AおよびHPRTと比較して測定する。結果は、試験した全てのsiRNA濃度において、10μg/ml以上のポリマー濃度で、60%を超えるKD活性を示す。このポリマー濃度は、粒径分析による安定なミセル形成と一致する。
【0235】
例21:培養哺乳類細胞のApoB100 siRNA−ポリマー複合体のノックダウン活性
ポリマー:ApoB siRNA複合体による処理の24時間後、ApoB100特異的なsiRNAまたはポリマーに複合体形成したダイサー基質のノックダウン(KD)活性を、96ウェルフォーマットで分析した。ApoB100 siRNA配列は:
センス鎖:5'-rGrArArUrGrUrGrGrGrUrGrGrCrArArCrUrUrUrArG-3'、
アンチセンス鎖:5'-rArArArGrUrUrGrCrCrArCrCrCrArCrArUrUrCrArG-3'である。ApoB100ダイサー基質siRNA配列は:
センス鎖: 5'- rGrArArUrGrUrGrGrGrUrGrGrCrArArCrUrUrUrArArArGdGdA、
アンチセンス鎖:5'-rUrCrCrUrUrUrArArArGrUrUrGrCrCrArCrCrCrArCrArUrUrCrArG-3'である。ポリマーおよびApoB標的siRNAまたはネガティブコントロールsiRNA(IDT)を25uL中で混合し、種々の電荷比および最終的な形質移入濃度の5倍の濃度を得て、30分間、複合体形成し、10%FBSを含む100uL標準培地中でHepG2へ添加する。最終siRNA濃度を100、50、25および12.5nMで試験する。ポリマーを添加し、4:1、2:1または1:1の電荷比、または40、20、10および5μg/mLの固定濃度のいずれかで添加し、最高KD活性を生ずる条件を決定する。全てのRNAを処理の24時間後に単離し、定量的PCRによりApoB100発現を2つの内部標準遺伝子、RPL13AおよびHPRTと比較して測定した。結果は、試験した全てのsiRNA濃度において、10μg/mLおよびより高い濃度のポリマーにより得られた>60%のKD活性を示す。このポリマー濃度は、粒径分析による安定なミセル形成と一致する。
【0236】
例22:マウスモデルにおけるApoB100siRNA−ポリマー複合体のノックダウン活性
ApoB100特異的siRNA/ポリマー複合体のノックダウン活性を、マウスモデル中、肝臓細胞中のApoB100の発現およびコレステロールレベルを測定することにより測定した。尾静脈を介して、1:1、2:1または4:1の電荷比(ポリマー:siRNA)でポリマーと複合体形成した1、2、または5mg/kgのApoB特異的siRNAを、Balb/Cマウスに静脈内投与する。最後の投与の48時間後、マウスを屠殺し、血液および肝臓を単離する。コレステロールレベルを血清中で測定する。肝臓から全RNAを単離し、ApoB100発現を1つの内部標準遺伝子、HPRTおよびGAPDHと比較して、定量的PCRにより測定する。結果は、2mg/kg siRNA用量で肝臓中のApoB mRNAレベルが>60%減少することを示す。この減少は、5mg/kgのsiRNA用量が80%のKDを示し、その1mg/kgのsiRNA用量が〜50%のKDを示すため、用量依存的である。血清コレステロールレベルの減少も、用量依存的な様式で観察される(生理食塩水のコントロールに比較して〜30−50%の減少)。
【0237】
例23:培養哺乳細胞におけるApoBアンチセンスDNAオリゴヌクレオチド−ポリマー複合体のノックダウン活性
ポリマーと複合体形成したApoB100特異的アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドによるノックダウン(KD)の可能性は、ポリマー:ApoBアンチセンスDNAオリゴヌクレオチド複合体による処理の24時間後のApoB遺伝子発現を測定することにより分析した。マウスApoBに特異的な2つのApoB100アンチセンスオリゴヌクレオチドは:
5'-GTCCCTGAAGATGTCAATGC-3',コード領域の541位、および
5'-ATGTCAATGCCACATGTCCA-3',コード領域の531位である。
【0238】
ポリマーおよびApoB標的アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドまたはネガティブコントロールDNAオリゴヌクレオチド(スクランブル配列)を25uL中で混合し、種々の電荷比および最終的な形質移入濃度の5倍を超える濃度を得て、30分間複合体形成し、10%FBSを含む100uLの標準培地中にHepG2を添加する。最終的なオリゴヌクレオチド濃度を100、50、25、および12.5nMで試験する。ポリマーを4:1、2:1もしくは1:1の電荷比、または40、20、10および5μg/mLの固定ポリマー濃度のいずれかで添加し、最高KD活性を生じる条件を決定する。全てのRNAを処理の24時間後に単離し、ApoB100発現を2つの内部標準遺伝子、RPL13AおよびHPRTと比較して、定量的PCRにより測定する。
【0239】
例24:ミセルおよびそれらのsiRNA複合体の膜不安定化活性の証明(図19)
pH応答性の膜不安定化活性を、ポリマー単独またはPRx0729v6:siRNA複合体を、ヒト赤血球細胞(RBC)に滴定することにより分析し、ヘモグロビン放出により膜溶解活性を測定した(540nmでの吸収の読み取り)。3つの異なるpH条件を用い、エンドソームpH環境を模擬する(細胞外pH=7.4、初期エンドソーム=6.6、終期エンドソーム=5.8)。ヒト赤血球細胞(RBC)を遠心分離により、EDTAを含む真空容器に回収した全血液を単離する。RBCを生理食塩水で3度洗浄し、特定のpH(5.8、6.6または7.4)でPBS中、最終濃度2%のRBCにした。PRx0729v6単独またはPRx0729v6/siRNA複合体を、示す通り臨界安定濃度(CSC)より上および下の濃度で試験した(図19)。ポリマー/siRNA複合体について、25nM siRNAを1:1、2:1、4:1および8:1の電荷比(ポリマー単独の場合と同じ濃度)でPRx0729v6に添加した。ポリマー単独またはポリマー−siRNA複合体の溶液を20Xの最終分析濃度で30分間、形成し、各々のRBC配合物に希釈した。調製の日から4℃で保存された2つの異なるPRx0729v6ポリマー原液の配合物を、調製の9日および15日後に活性の安定化について比較した。ポリマーを単独で含むRBC(図19A)またはポリマー/siRNA複合体(図19B)を60分間、37℃でインキュベートし、無処置のRBCを除去した。上清をキュ別途に移動し、540nmで吸収を測定した。溶血の割合をA540サンプル/A5401%Triton X−100処理したRBCとして表わす(100%溶解のコントロール)。結果は、PRx0729v単独またはPRx0729v/siRNA複合体がpH7.4で非溶血性であり、エンドソームに関係するより低いpHおよびより高いポリマー濃度で次第に溶血性を増すことを示す。
【0240】
例25:ポリマー−siRNA複合体の細胞取り込みおよび細胞内分布の蛍光顕微鏡(図20)
この例は、ポリマーPRx0729v6が、脂質ベースの形質移入剤よりも、より効率的な蛍光標識siRNAの細胞取り込みおよびエンドソーム放出を媒介し得ることを証明する。
【0241】
HeLa細胞をLab−Tek IIチャンバーカバーガラス上に播種した。一晩のインキュベーションの後、100nM FAM−siRNA/リポフェクタミン2000または100nM FAM−siRNAのいずれかにより、ポリマー−siRNA4:1の電荷比で細胞を形質移入した。複合体をpH7.4のPBS中で30分間、5X濃度で形成し、最終1X濃度の細胞に添加し、一晩インキュベートした。10分間細胞を染色し、次に3.7%ホルムアルデヒド−1XPBS中に5分間固定し、PBSで洗浄した。Zeiss Axiovert蛍光顕微鏡でサンプルを撮像した。図20Bは、リポフェクタミンと比較したポリマー−siRNAの細胞取り込みおよび細胞内分布の蛍光顕微鏡を示す(図20A)。リポフェクタミン−siRNA複合体の粒状染色は、エンドソームの位置を示唆し、一方、ポリマー−siRNA複合体の広範細胞質製染色は、それらがエンドソームから細胞質へ放出されたことを示す。
【0242】
例23:ポリマーPRx0729v6ミセルへの疎水性低分子の取り込み
この例は、疎水性低分子が、主にポリマーPRx0729v6の疎水性ミセル中心により取り込まれることを証明する。siRNAを含むかまたは含まないポリマーミセルの形成は、ピレン(C1610、MW=202)を用いる蛍光プローブ技術により確認し、ここでピレンのミセル中心への分割を、ピレンのスペクトルの2つの発光極大の割合を用いて決定し得る。
【0243】
ポリマーミセル溶液中のピレンの蛍光発光スペクトルを、395nmの固定の励起波長を用いて、6×10-7 Mの一定ピレン濃度により、300〜360nmで測定する。100nM siRNAを含む場合と含まない場合について、0.001%〜20%(w/w)でポリマーを変化させた。Varian蛍光分光光度計を用いてスペクトルデータを得た。全ての蛍光実験は、25℃で行った。ポリマー濃度の関数として強度比I336/I333をプロットすることにより、臨界ミセル濃度(CMC)を決定した。
【0244】
同様に、モデル低分子薬、ジピリダモール(2−{[9−(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)−2,7−ビス(1−ピペリジル)−3,5,8,10−テトラザビシクロ[4.4.0]デカ−2,4,7,9,11−ペンタエン−4−イル]−(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エタノール;C2440,MW=505)を、以下に示す通り、PRx0729v6のミセル中心に組み込む。ポリマー(1.0mg)およびジピリダモール(DIP)(0.2mg)をTHF(0.5mL)に溶解する。脱イオン化水(10mL)を滴下し、溶液を50℃で6時間撹拌し、薬剤をミセルの疎水性コアに組み込む。溶液(2.5mL)を分取し、25℃および37℃で、紫外可視分光光度計により415nmのジピリダモール吸収を測定する。コントロールの測定は、コポリマーの非存在下、脱イオン化水中、ジピリダモール吸収の時間依存的減少を測定することにより行った。25℃および37℃の両方で、吸収を各時間点で測定し、その値を溶液において観察された値から減算する。
【0245】
例26:標的リガンドとポリヌクレオチドをコポリマーに結合する方法
以下の例は、標的リガンド(例えば、ガラクトース)またはポリヌクレオチド治療剤(例えばsiRNA)をジブロックコポリマーに結合する方法を示す。(1)可逆的付加開裂連鎖反応(RAFT)(Chiefari et al. Macromolecules. 1998;31(16):5559-5562)を用いてポリマーを調製し、R基置換基としてガラクトースを含む連鎖移動剤を用いてガラクトース末端が官能化されたジブロックコポリマーを形成する。(2)ジブロックコポリマーの第1ブロックをメチルアクリル酸−N−ヒドロキシスクシニミド(MAA(NHS))を含むポリマーとして調製し、ここでガラクトース−PEG−アミンをNHS基に結合するか、またはアミノ−ジスルフィドsiRNAをNHSに結合するか、またはピリジルジスルフィドアミンをNHS基と反応させ、次にチオール化RNAと反応してポリマーRNA結合体を形成するピリジルジスルフィドを形成する。
【0246】
例26.1:ガラクトース−PEG−アミンおよびガラクトース−CTAの調製
スキーム1は、ガラクトース−PEG−アミン(化合物3)およびガラクトース−CTA(連鎖移動剤)(化合物4)の合成スキームを図示する。
【0247】
化合物1:ペンタアセテートガラクトース(10g、25.6mmol)oおよび2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール(5.6mL,38.4mmol)を乾燥CHCl(64mL)に溶解し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。BF.OEt(9.5ml,76.8mmol)を氷浴中、1時間に亘って、前記混合物に滴下した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応後、30mLのCHClを添加し反応液を希釈した。飽和NaHCO3(aq)で有機層を中和し、塩水で洗浄し、次にMgSOにより乾燥した。CHClを減圧除去し、粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィーにより粗生成物を精製し、淡黄色の油として最終生成物1を得た。収率 :55%TLC(Iおよびp−アニスアルデヒド):EA/Hex:1/1(Rf:β= 0.33;α=0.32;未反応S.M0.30)。
【0248】
化合物2:化合物1(1.46g,2.9mmol)を乾燥DMF(35mL)に溶解し、NaN(1.5g,23.2mmol)を室温で混合物に加えた。反応混合物を85〜90℃で一晩加熱した。反応後、EA(15mL)を溶液に加え、水(50mL)を用い、有機層を5回洗浄した。有機層をMgSOにより乾燥し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色の油として化合物2を得た。収率:80%、TLC(Iおよびp−アニスアルデヒド):EA/Hex:1/1(Rf:0.33)。
【0249】
化合物3:化合物2(1.034g,2.05mmol)をMeOH(24mL)に溶解し、Nで10分間泡立たせ、次にPd/C(10%)(90mg)およびTFA(80uL)を前記溶液に添加した。再び反応混合物をHにより30分間泡立たせ、次に反応液をH下、室温でさらに3時間撹拌した。セライトによりPd/Cを除去し、MeOHを蒸発させ、粘着性のゲルとして化合物3を得た。化合物3は、さらに精製することなし使用することができる。収率:95%。TLC(p−アニスアルデヒド): MeOH/CHCl:1/4(Rf:0.05)。
【0250】
化合物4:ECT(0.5g,1.9mmol)、NHS(0.33g,2.85mmol)およびDCC(0.45g,2.19mmol)を0℃でCHCl(15mL)に溶解した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。CHCl(10mL)中の化合物3(1.13g,1.9mmol)およびTEA(0.28mL,2.00mmol)を、前記反応液に0℃で緩徐に加えた。反応混合物を室温で一晩、連続的に撹拌した。CHClを減圧除去し、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、黄色のゲルとして化合物4を得た。収率(35%)。TLC:MeOH/CHCl:1/9(Rf:0.75)。
【化7】

【0251】
例26.2:[DMAEMA]−[BMA−PAA−DMAEMA]の合成
A.DMAEMAマクロCTAの合成
重合:20mLガラスバイアル(隔壁キャップ(septa cap)を有する)に、33.5mgECT(RAFT CTA)、2.1mgAIBN(メタノールから2回再結晶させた)、3.0gDMAEMA(Aldrich,98%,使用する直前に小アルミナカラムを通過させ、阻害剤を除去する)、および3.0gDMF(阻害剤を含まず、高純度)を添加した。隔壁キャップでガラスバイアルを閉じ、乾燥窒素を30分間パージした(撹拌下、氷浴中で行った)。反応バイアルを、予め70℃に加熱した反応ブロック中に置いた。反応混合物を2時間40分撹拌した。隔壁キャップを開き、混合物を氷浴中のバイアルにおいて2〜3分間撹拌し、重合反応を停止させた。
【0252】
精製:3mLのアセトンを反応混合物に添加した。300mLビーカーに、240mLへキサンおよび60mLエーテル(80/20(v/v))を添加し、撹拌しながら反応混合物をビーカーに一滴ずつ加えた。初めに、濁った溶液を遠心沈降させることにより回収される油を生成する;収率=1.35g(45%)。アセトン溶液からヘキサン/エーテル(80/20(v/v))混合溶媒に、数回沈殿を行った(例えば6回)。最後に、ポリマーを室温で8時間、減圧乾燥した;収量≒1g。
【0253】
まとめ:(45%の変換で、Mn,理論=11,000g/mol)
【表3】

【0254】
B.DMAEMAマクロCTAからの[BMA−PAA−DMAEMA]合成
全ての化学物質および試薬は、特に示さない限り、Sigma−Aldrich Companyから購入した。ブチルメタクリレート(BMA)(99%)、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)(98%)を、塩基性アルミナのカラム(150 メッシュ)に通し、重合阻害剤を除去した。阻害剤を含まない2−プロピルアクリル酸(PAA)(>99%)を購入し、そのまま使用した。アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(99%)をメタノールから再結晶し、真空下で乾燥した。上述した通り、DMAEMAマクロCTAを合成し、精製した(Mn〜10000;PDI〜1.3;>98%)。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(99.99%)(EMDから購入)は試薬グレードであり、そのまま使用した。ヘキサン、ペンタンおよびエーテルをEMDから購入し、それらはポリマー生成のため、そのままの状態で使用した。
【0255】
重合:BMA(2.1g,14.7mmoles)、PAA(0.8389g,7.5mmoles)、DMAEMA(1.156g,7.35mmoles)、マクロCTA(0.8g,0.0816mmoles)、AIBN(1.34mg,0.00816mmoles; CTA:AIBN10:1)およびDMF(5.34ml)を窒素下、封をしたバイアルに添加した。使用したCTA:モノマーの比は、1:360であった(50%の変換を想定)。モノマー濃度は3Mであった。混合物中で30分間窒素を泡立てることにより混合物を脱気し、次にヒーターブロック中に置いた(温度計:67℃;ディスプレイ:70〜71;撹拌スピード300〜400rpm)。6時間反応を続行し、バイアルを氷中に置き、次に混合物を空気に曝露することにより反応を停止させた。
【0256】
精製:ポリマー精製は、アセトン/DMF1:1からヘキサン/エーテル75/25中に行った(3回)。結果として得たポリマーを少なくとも18時間真空下、乾燥した。NMRスペクトルは、ポリマーが高純度であることを示した。ビニル基は観察されなかった。ポリマーをエタノールから2回脱イオン化水に対して4日間透析し、その後凍結乾燥した。以下の条件を用いて、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によりポリマーを分析した:溶媒:DMF/LiBr1%、流速:0.75ml/min、注入容積:100μl。
【0257】
カラム温度:60℃。ポリ(スチレン)を用いて検出器を校正した。結果として得たポリマーのGPC分析:Mn=40889g/mol。PDI=1.43。dn/dc=0.049967。
【0258】
例26.3.gal−[DMAEMA]−[BMA−PAA−DMAEMA]の合成
合成は、例20.2に記載した通り行った。まず、連鎖移動剤としてECTの代わりにガラクトース−CTA(例20.1,化合物4)を使用したことを除き、ガラクトース−DMAEMAマクロ−CTAを調製した(例20.2.A.)。これにより、末端がガラクトースで官能化されたポリDMAEMAを得た(図13)。その後、例20.2.Bに記載した通り、ガラクトース−[DMAEMA]−マクロ−CTAを使用し、第2ブロック[BMA−PAA−DMAEMA]を合成した。合成後、100mM炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8.5)中で2時間インキュベーションすることにより、ガラクトース上のアセチル保護基を除去した。NMR分光法を用いて、ポリマー上の脱保護されたガラクトースの存在を確認した。
【0259】
例26.4.[PEGMA−MAA(NHS)]−[B−P−D]およびDMAEMA−MMA(NHS)−[B−P−D]ジブロックコポリマーの調製および特性決定
例20.2に記載される通り(および図5にまとめる通り)、所望の組成の第1ブロックコポリマーを得るためのモノマー供給率を用いてポリマー合成を行った。図6に、第1ブロックのモノマーのコポリマー比70:30の[PEGMA−MAA(NHS)]−[B−P−D]ポリマーの合成および特性決定についてまとめる。
【0260】
例26.5.ガラクトース−PEG−アミンとPEGMA−MAA(NHS)の結合による[PEGMA−MAA(Gal)]−[B−P−D]ポリマーの作製
図22は、ガラクトース官能化されたDMAEMA−MAA(NHS)またはPEGMA−MAA(NHS)ジブロックコポリマーの調製について説明する。ポリマー[DMAEMA−MAA(NHS)]−[B−P−D]または[PEGMA−MAA(NHS)]−[B−P−D]を1〜20mg/mLの濃度でDMFに溶解した。例20.1(化合物3)で記載した通り調製したガラクトース−PEG−アミンを1〜2等量のトリエチルアミンにより中和し、アミン:ポリマー 5:1の比で反応混合物に添加した。反応を35℃で6〜12時間行い、その後、同じ量のアセトンを添加し、脱イオン水で1日透析し、凍結乾燥した。
【0261】
例26.6.siRNAとPEGMA−MAA(NHS)]−[B−P−D]の結合による [PEGMA−MAA(RNA)]−[B−P−D]ポリマーの作製
図23Aおよび図23Bは、NHS含有ポリマーに結合し得る2つの修飾されたsiRNAの構造を示す。siRNAは、Agilent(Boulder,CO)から得た。図23Cは、NHS含有ポリマーを誘導体化してチオール化RNA(図23B)の結合に対するジスルフィド反応基を提供するピリジルジスルフィドアミンの構造を示す(23B)。
【0262】
NHS含有ポリマーのアミノ−ジスルフィド−siRNAとの反応。この反応は、有機溶媒からなる標準的な条件下(例えば、DMFもしくはDMSO、または混合溶媒DMSO/緩衝液pH7.8。)、35℃で4〜8時間行い、等容量のアセトンを加え、脱イオン化水で1日透析し、凍結乾燥した。
【0263】
NHS含有ポリマーのピリジル−ジスルフィド−アミンおよびチオール化siRNAとの反応。ピリジルジスルフィドアミンとNHS含有ポリマーの反応を行う。続いて、凍結乾燥したポリマーをエタノール中に50mg/ml溶解し、pH8の炭酸水素ナトリウム緩衝液中に10倍に希釈する。チオール化siRNA(図23B)を、ポリマーNHS基に対して過剰な2〜5モル濃度で、35℃、4〜8時間反応させ、リン酸緩衝液(pH7.4)で透析する。
【0264】
例27.ミセル凝集数の決定(ミセルあたりのポリマー鎖)
ミセルの重量平均分子量(Mw)および凝集数(Naggr)は、デバイプロット(Debye plot)を用いて静的光散乱(SLS)測定により決定した。この方法は、以下の式に示す通り、粒子が生産する散乱光の強度が粒子の重量平均分子量および濃度に比例すると仮定する:
【数1】

【0265】
式中、Rはレイリー比(サンプルの散乱光対入射光の比);Mはサンプルの分子量;Aは第2ウイルス係数;Cは濃度;Kは
【数2】

【0266】
として定義される光学定数であり、ここでNはアボガドロ数;λはレーザー波長;nは溶媒屈折指数;dn/dcはミセル(0.2076ml/g)増加分の微分屈折係数である。
【0267】
ある角度における種々の濃度(C)のポリマーの散乱光の強度(K/CR)の測定は、Malvern Zetasizer Nano ZS機器を用いて行い、基準(即ち、トルエン)から生じた散乱と比較した。デバイプロットは、直線であり、ミセルの絶対分子量を決定し、これは濃度ゼロでプロットのy切片である(K/CR=1/Mw(ダルトン))。ミセルの分子量(デバイプロットから決定する)を1つのポリマー鎖(GPC−トリプル検出法により決定する)で割ることにより、凝集数を算出した。典型的な値の範囲は、ジブロックポリマーについて30〜50、例えば[D]10K−[B50−P25−D25]20−66Kである。
【0268】
本発明の好ましい実施形態がここで示され記載されるが、当業者にとって前記実施形態が例としてのみ提供されることは明らかだろう。当業者は、本発明から離れることなく、数の変動、変化および置換を想到するだろう。ここで記載される本発明の実施形態の種々の変更が本発明を実施するのに用いられてよいことは理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれと同等のものがそれに含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーミセルおよび当該ミセルと会合したポリヌクレオチドを含む組成物であって、当該ミセルが複数のブロックコポリマーを含み、各々のブロックコポリマーが親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、当該複数のブロックコポリマーは、ほぼ中性pHの水性溶媒中で当該ミセルが安定であるように会合し、
(a)当該ミセルが以下から選択される2以上の特徴をさらに有し:
(i)当該ミセルがミセルあたり約10〜約100のブロックコポリマーを有する、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、約0.2μg/mL〜約20μg/mL、
(iii)核酸の非存在下での自発的なミセル集合;
(iv)重量平均分子量、約0.5×10〜約3.6×10ダルトン;
(v)粒径、約5nm〜約500nm;
(b)当該ブロックコポリマーが以下から選択される1以上の特徴を有する組成物:
(i)当該親水性ブロック対当該疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1〜約1:10、
(ii)多分散性指数、約1.0〜約2.0。
【請求項2】
ポリマーミセルおよび当該ミセルと会合したポリヌクレオチドを含む組成物であって、当該ミセルが複数のブロックコポリマーを含み、各々のブロックコポリマーが親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、当該複数のブロックコポリマーは、ほぼ中性pHの水性溶媒中で当該ミセルが安定であるように会合し、
(a)当該ミセルが以下から選択される2以上の特徴をさらに有し、
(i)当該ミセルがミセルあたり約10〜約100のブロックコポリマーを有する、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、0.5M NaCl中、約0.2μg/mL〜約20μg/mL、
(iii)核酸の非存在下での自発的なミセル集合;
(iv)重量平均分子量、約0.5×10〜約3.6×10ダルトン;
(b)当該ブロックコポリマーが以下から選択される1以上の特徴を有する組成物:
(i)当該親水性ブロック対当該疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1〜約1:10、
(ii)多分散性指数、約1.0〜約2.0。
【請求項3】
ポリマーミセルおよび当該ミセルと会合したポリヌクレオチドを含む組成物であって、当該ミセルが複数のブロックコポリマーを含み、各々のブロックコポリマーが親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、当該複数のブロックコポリマーがほぼ中性pHの水性溶媒中で当該ミセルが安定であるように会合し、当該ミセルは以下から選択される2以上の特徴をさらに有する組成物:
(i)会合数、ミセルあたり約10〜約100の鎖、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、約0.2μg/mL〜約20μg/mL、
(iii)粒径、約5nm〜約500nm。
【請求項4】
ポリマーミセルおよび当該ミセルと会合したポリヌクレオチドを含む組成物であって、当該ミセルが複数のブロックコポリマーを含み、各々のブロックコポリマーが親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、当該複数のブロックコポリマーがほぼ中性pHの水性溶媒で当該ミセルが安定であるように会合し、当該ブロックコポリマーは以下から選択される2以上の特徴をさらに有する組成物:
(i)当該親水性ブロック対当該疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1〜約1:10、
(ii)多分散性指数、約1.0〜約2.0、
(iii)重量平均分子量、約0.5×10〜約3.6×10ダルトン。
【請求項5】
当該ミセルが副段落(i)、(ii)、(iii)および(iv)の特徴のうち3つ以上を有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
当該ミセルが副段落(i)、(ii)、(iii)および(iv)の全ての特徴を持つ請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
当該ブロックコポリマーが副段落(i)、(ii)および(iii)の全ての特徴を有する請求項1または3に記載の組成物。
【請求項8】
当該ブロックコポリマーが、当該親水性ブロック対当該疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1〜約1:10を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
当該ブロックコポリマーが、当該親水性ブロック対当該疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1.5〜約1:6を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
当該ブロックコポリマーが、当該親水性ブロック対当該疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:2〜約1:4を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
当該ミセルが、ミセルあたり約10〜約100のブロックコポリマーを含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
当該ミセルが、ミセルあたり約20〜約60のブロックコポリマーを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
当該ミセルが、ミセルあたり約30〜約50のブロックコポリマーを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
当該ミセルが臨界ミセル濃度CMC、約0.2μg/mL〜約20μg/mLを有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
当該ミセルが臨界ミセル濃度CMC、約0.5μg/mL〜約10μg/mLを有する請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
当該ミセルが臨界ミセル濃度CMC、約1μg/mL〜約5μg/mLを有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
当該ブロックコポリマーが、当該親水性ブロック対当該疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:1.5〜約1:6を有し、当該ミセルが、
(i)ミセルあたり約20〜約60のブロックコポリマーを含み、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、約0.5μg/mL〜約10μg/mLを有する
請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
当該ブロックコポリマーが、当該親水性ブロック対疎水性ブロックの数平均分子量Mn比、約1:2〜約1:4を有し、当該ミセルが、
(i)ミセルあたり約30〜約50のブロックコポリマーを含み、
(ii)臨界ミセル濃度CMC、約1μg/mL〜約5μg/mLを有する
請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
当該ブロックコポリマーが多分散性指数、約1.0〜約2.0を有する請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
当該ブロックコポリマーが多分散性指数、約1.0〜約1.7を有する請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
当該ブロックコポリマーが多分散性指数、約1.0〜約1.4を有する請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
当該ミセルが凝集分子量Mw、約0.5×10〜約3.6×10を有する請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
当該ミセルが凝集分子量Mw、約0.75×10〜約2.0×10を有する請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
当該ミセルが凝集分子量Mw、約1.0×10〜約1.5×10を有する請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
当該ミセルが粒径、約5nm〜約500nmを有する請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
当該ミセルが粒径、約10nm〜約200nmを有する請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
当該ミセルが粒径、約20nm〜約100nmを有する請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
各々のミセルと会合しているポリヌクレオチドの数が、約1〜約10000である請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
各々のミセルと会合しているポリヌクレオチドの数が、約4〜約5000である請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
各々のミセルと会合しているポリヌクレオチドの数が、約15〜約3000である請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
各々のミセルと会合しているポリヌクレオチドの数が、約30〜約2500である請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
当該ミセルが、複数のカチオン性モノマー単位を含むブロックコポリマーを含み、当該親水性ブロック中の当該カチオン種が当該ポリヌクレオチドとイオン会合している請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
当該カチオン性モノマー単位がカチオン性モノマー、非電荷ブレンステッド塩基モノマーまたはそれらの組み合わせの残基である請求項34に記載の組成物。
【請求項34】
当該ポリヌクレオチドがaRNAi剤またはsiRNAである請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
当該ポリヌクレオチドが当該ミセルの中心にない請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
当該ミセルが、当該親水性ブロックおよび/または当該疎水性ブロック中に複数のアニオン性モノマー単位を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
当該ミセルが、当該親水性ブロックおよび/または当該疎水性ブロック中に複数の非電荷モノマー単位を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
当該ミセルが、当該親水性ブロックおよび/または当該疎水性ブロック中に複数の両性イオンモノマー単位を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
当該ミセルが、当該疎水性ブロック中に複数の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
当該ミセルが、当該疎水性ブロック中に少なくとも20の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
当該ミセルが、当該疎水性ブロック中に少なくとも15の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
当該ミセルが、当該疎水性ブロック中に少なくとも10の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
当該ミセルが、当該疎水性ブロック中に少なくとも5の荷電可能な残基を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
1以上の当該複数のブロクックコポリマーに共有結合的に結合した1以上のポリヌクレオチドを含むポリマーバイオ結合体(polymer bioconjugate)を含む、請求項1〜43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
当該ポリヌクレオチドがsiRNAである請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
当該ミセルが、プロトン化可能なアニオン種および複数の疎水性種を有する複数のモノマー単位を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
当該アニオン性モノマー単位が、アニオン性モノマー、非荷電ブレンステッド酸モノマーまたはそれらの組み合わせの残基である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
当該ミセルが、疎水性種を有する重合可能なモノマーに由来する複数のモノマー単位を含むブロックコポリマーを含む、請求項1〜47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
当該1以上のブロックコポリマーが膜不安定化ブロックコポリマーである請求項1〜48のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2011−520901(P2011−520901A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509673(P2011−509673)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043853
【国際公開番号】WO2009/140432
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【出願人】(510302870)フェイズアールエックス,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】