説明

治療効能のある変形核酸及びグアノシンを含有するオリゴヌクレオチド変形体

本発明は、治療効能のある変形核酸及びグアノシンを含有するオリゴヌクレオチド変形体を提供するが、より詳しくは、1つ以上の治療効能のある変形核酸(N)と豊富なグアノシン(G)が含まれた新規オリゴヌクレオチド変形体を合成し、前記オリゴヌクレオチド変形体が癌細胞の細胞死滅活性を持つことを確認し、新規なオリゴヌクレオチド変形体及び前記変形体又はその薬剤学的に許容可能な塩を有効性分として含有する癌予防及び治療用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療効能のある変形核酸及びグアノシンを含有するオリゴヌクレオチド変形体、及び前記変形体又はその薬剤学的に許容可能な塩を有効性分として含有する癌予防及び治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近来の医学的発展にもかかわらず、癌は全世界にわたって最も重要な死亡原因であり、老齢化するにつれて癌患者も毎年幾何級数的に増加しつつある。
通常、抗癌剤として用いている物質は相当な毒性を持っており、癌細胞のみ選択的に除去できないため、癌が発生した後、その治療だけでなく、癌の発生を予防するための毒性が少なく、効果的な抗癌剤の開発が切実に求められている。
【0003】
1980年代以後、自動化したDNA合成機が開発され、細胞内mRNAをターゲットにするアンチセンス、siRNAと、リボザイム及びタンパク質をターゲットにするアプタマー、CpG、デコイ核酸などのオリゴデオキシヌクレオチドを治療剤として開発するための研究が盛んであった[Gleave et al., Nat Rev Cancer. 2005 468-479; Castanotto et al., Nature 2008 426-433; Sullenger et al., Nature 2002 252-258; Kaur et al., Expert Opin Investig Drugs. 2008 43-60; Jurk M et al., BioDrugs. 2007 387-401; Tomita et al., Clin Exp Nephrol. 2007 7-17]。
【0004】
グアノシンに富んだオリゴヌクレオチドは、広範囲な癌細胞に対して細胞成長阻害効果を有すると知られており、癌細胞に処理する場合、細胞内の特定のタンパク質、例えばeEF1A、JNK、Ki−ras、ヌクレオリン(Nucleolin)、stat3、テロメラーゼ(telomerase)、トポイソメラーゼ(topoisomerase)タンパク質などの細胞の成長と死滅に重要なタンパク質と結合して細胞周期を調節する役割をし、このようなタンパク質は、正常細胞よりも癌細胞に過剰発現すると知られている[Christopher R. Ireson et al., Molecular cancer therapy 2006 2957-2962; Naijie Jing et al., Cancer Research 2004 6603-6609; Christophe Marchand et al., The journal of Biological Chemistry 2002 8906-8911]。
【0005】
このようなグアノシンに富んだオリゴヌクレオチドは、シトシンとの三重の水素結合以外にも特別な構造的な特徴を持っている。グアノシンに富んだオリゴヌクレオチドは、分子内結合又は分子間結合により4本の構造を有することになる。一般的なアデノシンとチアミン、グアノシンとシチジンの水素結合による二重螺旋構造を形成する代わりに、4つのグアノシンが1平面に位置してフーグステン(hoogsten)型の水素結合を形成してグアニン四重鎖(Quadruplex)を形成し、これが2つ以上連続して構成されて四重螺旋構造(tetrad helical structure)を有する。通常、オリゴヌクレオチドは、血液内の安定性及び細胞透過率が非常に低いため、薬品として開発し難かったが、このようなグアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、その構造的な特徴により安定した構造が得られ、比較的高い血液安定性及び細胞透過度を有すると知られている[Julian Leon Huppert, Chemical Society Reviews 2008, 37, 1375-1384; Paula J. Bates et al., Experimental and Molecular Pathology (2009) 151-164; Christopher R. Ireson et al., Molecular cancer therapy 2006 2957-2962]。
【0006】
米国特許第7312082号に記載したように、グアニン四重鎖(Quadruplex)の安定性は、1価の陽イオン、インターキレート剤、オリゴヌクレオチドの濃度などから影響を受ける[Haiyan Qi et al., Cancer Res 2006 11808-11816, Anna Arola et al., Current Topics in Medicinal Chemistry 2008 1405-1415]。
このようなグアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、米国特許第7314926、米国特許公開第2007−105805号に記載したように、癌細胞の表面にたくさん発現している特定のタンパク質と結合した後、エンドサイトーシスにより癌細胞に浸透し、細胞死滅に関連したタンパク質と結合して細胞成長を阻害すると知られており、細胞毒性効果(cytotoxic effect)よりも細胞成長静止効果(cytostatic effect)により細胞死滅を誘導すると報告されている[Paula J. Bates et al., The journal of Biological Chemistry 1999 26369-26377; Bruna et al., FEBS journal 2006 1350-1361]。
【0007】
また、グアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、癌細胞の成長を阻害する効果以外にも米国特許第5567604号では抗ウイルス、米国特許第6994959号では免疫調節作用、米国特許公開第2007−105805号ではハンチントン病に治療効果があると発表され、生体内で様々な機能及び調節作用をすることが分かった[ Cheryl A. Stoddart et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy 1998 2113-2115; Michael Skogen et al., BMC Neuroscience, 2006 7:65]。
このようにグアニン四重鎖構造を形成するオリゴヌクレオチドが多様な疾患に対して効果的であるため、研究者らがこれに対する研究を行い、現在、抗癌剤として臨床試験中である[Paula J. Bates et al., Experimental and Molecular Pathology (2009) 151-164]。
臨床薬品のAS−1411は、グアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドとして癌細胞に過剰発現しているヌクレオリン(nucleolin)と結合することにより、優れた細胞成長阻害効果があると報告された。また、生体内で正常細胞に及ぼす影響を最小化し、薬剤耐性を有する癌細胞腫に対しても複合的に死滅率を増大させると判断されるため、新しい抗癌剤として期待されている[Christopher R. Ireson et al., Mol Cancer Ther. 2006 Dec;5(12) :2957-62]。
【0008】
しかし、グアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、主に細胞成長阻害効果による細胞死滅を誘導しなければならず、細胞死滅率が比較的高くないため、4日から7日ほどリンゲル注射による一定時間以上の持続的な処理が必要である。従って、必要以上の薬品を長時間投与するという問題があり、強い毒性の化学療法剤と併用して投与するという問題がある[Paula J. Bates et al., Experimental and Molecular Pathology (2009) 151-164; Christopher R. Ireson et al., Molecular cancer therapy 2006 2957-2962]。
【0009】
そのため、本発明者らはグアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドに細胞死滅効果を与える治療用変形核酸を導入して細胞死滅効果を増大しようとした。
代表的な治療用変形核酸は5−フルオロウラシル(5−fluorouracil、5−FU)が挙げられる。5−FUは、1950年代末に代謝拮抗物質系の抗癌剤として開発され、チミジル酸生成酵素(thymidylate synthase)を遮断して抗癌効果を現した[Piedo et al., J Clin Oncol 1988, 1953-1664]。また、5−フルオロデオキシウリジン(5−flurorodeoxyuridine、5−FdU)、5−フルオロデオキシシチジン(5−flurorodeoxycytidine、5−FdC)、5−フルオロウリジン(5−fluorouridine)のような5−フルオロピリミジン(5−fluoropyrimidine)系のヌクレオシド(nucleoside)形態のプロドラッグ(prodrug)が広範囲に大腸、乳房、頭頸部などに対して癌治療を目的として40年以上使用され、現在臨床で用いられている[Thomas et al., Clin Exp Pharmacol Physiol. 1998 887-895; Heidelberger et al., Nature 1957 179:663-666; Longley et al., Nat Rev Cancer 2003 330-338; Beumer et al., Cancer Chemother Pharmacol 2008 363-368; Song et al., Clinical cancer research. 1997, 901-909]。
このような5−フルオロデオキシウリジン(5−flurorodeoxyuridine)、5−フルオロデオキシシチジン(5−flurorodeoxycytidine)、5−フルオロウリジン(5−fluorouridine)ヌクレオシドがオリゴヌクレオチドに含まれるようにするホスホラミダイト(phosphoramidite)製剤が合成され、固相DNA合成機で治療的ヌクレオシドが含まれたオリゴヌクレオチドの合成が可能になった[Gmeiner et al., J. Org. Chem. 1994, 5779-5783; Schmidit et al., Nucleic Acids Research, 1992, 2421-2426; Stolarski et al., Biochemistry 1992, 31, 7027-7042]。
【0010】
このような治療的ヌクレオシドが含まれたオリゴヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼ(exonuclease)などにより分解されて5−FdUや5−FdCが遊離し、様々な酵素が関与して5−FdUMPのような最終活性型が生成されて細胞死滅を誘導し、同じ濃度の5−FdUよりも細胞毒性が強く、かつ薬剤耐性を有する癌腫に対しても効能があることが分かった[Gmeiner et al., Nucl. Nuct. 1995 243-253]。米国特許第5457187号では5−フルオロウラシルが含まれたホモポリ−FdUオリゴヌクレオチド、米国特許第5614505号ではFdUで構成されたオリゴヌクレオチドが細胞毒性を有すると報告されたことがある。しかし、このような5−フルオロウラシルが含まれたホモポリ−FdUオリゴヌクレオチドは、グアニン四重鎖を形成せず、血液安定性及び細胞透過性が顕著に劣るなど、全体的な構造及び薬効の作用面において薬品として開発し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、細胞成長静止効果(cytostatic effect)を有するグアノシンに富み、グアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドに、細胞毒性効果(cytotoxic effect)により細胞死滅を誘導する1つ以上の治療用変形核酸を導入することにより、血液安定性及び細胞透過性を増大させると共に、効果的に癌細胞の成長を抑制して死滅させることを目的とし、このような構造の新規なオリゴヌクレオチドを合成して細胞毒性を比較してみた結果、臨床薬品よりも癌細胞の死滅効果が画期的に増大したことを確認し、本発明を完成した。
従って、本発明は、1つ以上の治療効能のある変形核酸と豊富なグアノシンが含まれた新規なオリゴヌクレオチド変形体を提供することにその目的がある。
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド変形体又はその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含有する癌予防及び治療用組成物を提供することに他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
下記式(1)又は式(2)で表される化合物を含んでグアニン四重鎖(G−quadruplex)構造を形成することを特徴とするオリゴヌクレオチド変形体に関する。
【化1】

【化2】

(式中、R1は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R2は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R3は水素、ハロゲン、C1-10のアルキル基、C1-10のハロアルキル基、C2-10のアルケニル基、C2-10のハロアルケニル基であり、ただし、R1、R2は同時にヒドロキシとなることはない。)
【0013】
また、本発明は、「GxHyNz」配列で表されるオリゴヌクレオチド変形体をその特徴とする。(配列において、Gはグアノシン又はグアノシン誘導体、Hはグアノシンでない核酸、Nはウリジン又はシチジン由来の治療的効能を有する変形核酸であり、G、H、Nは順列により無作為に配列され、xは1〜30の整数、yは0〜30の整数、zは1〜30の整数であり、ただし、x、y、zの和は60を超えない。)
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド変形体又はその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含有する癌予防及び治療用組成物を他の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による1つ以上の治療効能のある変形核酸及びグアノシンが含まれてグアニン四重鎖を形成する新規なオリゴヌクレオチド変形体は新規構造の化合物であって、優れた細胞死滅活性を有するため、癌予防及び治療剤として活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】代表的なグアノシン又はグアノシン誘導体を示す図である。
【図2】オリゴヌクレオチドの細胞成長阻害の程度を示す図である。
【図3】オリゴヌクレオチドのIC50数値及び細胞の形態を撮影した写真である。
【図4】オリゴヌクレオチドのK562 AML(急性白血病)細胞に対する細胞死滅効果(1μMにおける細胞成長%)を比較したグラフである。
【図5】オリゴヌクレオチドのMV−4−11 AML(急性白血病)細胞に対する細胞死滅効果(2μMμMにおける細胞成長%)を比較したグラフである。
【図6】陽性対照群のAPT−4001オリゴヌクレオチドのグアニン四重鎖構造を確認するために円偏光二色性(CD、circular dichroism)分光分析した結果を示すグラフである。
【図7】実施例1により製造されたAPT−2054オリゴヌクレオチドのグアニン四重鎖構造を確認するために円偏光二色性分光分析した結果を示すグラフである。
【図8】実施例1により製造されたAPT−2073オリゴヌクレオチドのグアニン四重鎖構造を確認するために円偏光二色性分光分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
このような本発明を詳細に説明する。
本発明は、グアノシンに富み、グアニン四重鎖(G−quardruplex)を形成するオリゴヌクレオチドが細胞毒性を有する変形核酸を含むように製造したオリゴヌクレオチドに関する。
本発明に用いられるグアニン四重鎖(G−quardruplex)は、グアノシン(G)として代表的に言及される2’−デオキシグアノシン(2−deoxy−guanosine)、グアノシン(guanosine)、2’−O−メチル−グアノシン(2’−O−methyl−guanosine)、2’−フルオロ−グアノシン(2’−F−guanosine)、LNA(Locked Nucleic Acid)−グアノシン、D−デオキシグアノシン、及びD−グアノシンから選択された1種又は2種以上(図1参照)などに富み、特定配列の場合、4つのグアノシンが1平面に位置してフーグステン(hoogsten)型の水素結合を形成して四重螺旋構造を有するオリゴヌクレオチドをいい、これに治療的効果を有する変形核酸を導入するように合成される。
グアノシンに富み、グアニン四重鎖(G−quardruplex)構造を形成するオリゴヌクレオチドは、癌細胞に選択的に結合し、細胞内で様々な機序により癌細胞の成長を阻害すると知らされている。
【0017】
このようなグアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドに変形核酸を1つ以上含んで癌細胞内に伝達した後、グアニン四重鎖が有する細胞成長阻害効果以外に、ヌクレアーゼ(Nuclease)により分解される場合、治療効果を有する変形核酸が直接的に細胞成長を阻害して複合的に癌細胞が死滅するようになる。グアニン四重鎖を形成するオリゴヌクレオチドは、単独使用する場合は細胞成長阻害効果しかないため、細胞死滅率が比較的高くなく、かつ一定時間以上の持続的な処理が必要である。しかし、本発明では治療効果を有する変形核酸が含まれることにより、細胞死滅効果が直接的に増大して細胞死滅率が急激に増加する可能性があることを確認した。
【0018】
治療効能を有する変形核酸としては、糖(Sugar)や塩基(Base)を変形させたアデノシン、グアノシン、チミジン、シチジン、ウリジンなどが挙げられる。
具体的に、本発明に用いられるウリジン又はシチジン由来の治療用変形核酸(N)は、次の式(1)のウリジン又は式(2)のシチジンのようなピリミジン系のヌクレオチドが好ましく、前記ヌクレオチドを通常の方法[Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach 1991 Fritz Eckstein et al., IRL Press: Oxford]によりホスホラミダイト形態に製造してもよく、ヌクレオチドホスホラミダイトを、グレンリサーチ(glenresearch)社、ベリー・アンド・アソシエイツ(Berry and Associates)社、オキノス(Okeanos Tech)社、ケムジーンズ(Chemgenes)社、プロリゴ(Proligo)社などから購入して既知の方法によりDNA合成機を用いた固相合成法によりグアノシンに富んだオリゴヌクレオチドに含まれるように生産してもよい。
【化3】

【化4】

(式中、R1は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R2は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R3は水素、ハロゲン、C1-10のアルキル基、C1-10のハロアルキル基、C2-10のアルケニル基、C2-10のハロアルケニル基であり、ただし、R1、R2は同時にヒドロキシとなることはない。)
【0019】
さらに好ましくは、前記ウリジン又はシチジン由来の変形核酸(N)として、5−フルオロデオキシウリジン(5−fluorodeoxyuridine)、5−フルオロウリジン(5−fluorouridine)、5−フルオロデオキシシチジン(5−fluorodeoxycytidine)、5−フルオロシチジン(5−fluorocytidine)、5−ヨードデオキシウリジン(5−iododeoxyuridine)、5−ヨードウリジン(5−iodouridine)、5−ヨードデオキシシチジン(5−iododeoxycytidine)、5−ヨードシチジン(5−iododeoxycytidine)、シトシンアラビノシド(Cytosine arabinoside/Ara−C)、2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(Gemcitabine)、カペシタビン(Capecitabine)、及びブロモビニル−デオキシウリジン(bromovinyl−deoxyuridine)などが挙げられ、前記変形核酸がホスホラミダイト形態に製造されたものをもって固相合成機により通常の方法でオリゴヌクレオチド変形体を製造することができる。
【0020】
すなわち、前記変形核酸ホスホラミダイトを無水アセトニトリルに溶かしてDNA合成機に投入して合成し、グレンリサーチ(glenresearch)社から提供された指針書及び米国特許第5457187号と第5614505号を参考にして通常の合成及び精製方法を用いてオリゴヌクレオチド変形体を合成する。具体的な一例として、合成されたオリゴヌクレオチド変形体の構造は次の式(3)の通りである。
【化5】

【0021】
また、上記のように変形核酸を用いて合成可能なオリゴヌクレオチド変形体の代表的な配列は、既に治療を目的に報告されたオリゴヌクレオチド配列[Paula J. Bates et al., The journal of Biological Chemistry 1999 26369-6377, Cheryl A Stoddart et al., Antimicrobial agents and chemotherapy 1998 2113-2115, Virna Dapic et al., Biochemistry 2002 3676-3685, Naijie Jing et al., Biochemistry 2002, 41, 5397-5403, Naijie Jing et al., Cancer research 2004 6603-6609, Haiyan Qi et al., Cancer research 2006 11808-11816, Yun Teng et al., Cancer Research 2007 10491-10500, Bruna Scaggiante et al., FEBS Journal 2006 1350-1361, Julie E. Reed et al., Journal of the American Chemical Society 2006 5992-5993, Jeffrey S. Bishop et al., The Journal of Biological Chemistry 1999 5698-5703, Christophe Marchand et al., The Journal of Biological Chemistry 2002 8906-8911, Jun-ichiro Suzuki et al., Journal of virology 2002 3015-3022, Virna Dapic et al., Nucleic Acids Research, 2003 2097-2107、Amber Goodchild et al., Nucleic acid research 2007 4562-4572、米国特許第6323185、米国特許第7314926、米国特許第6994959、米国特許第7157436、米国特許第7199228]又はグアニン四重鎖を形成して生理的活性を有する多様な配列に対して、少なくとも1つ以上の治療的効能のある変形核酸に置換して導入することで完成される。例えば、細胞成長阻害活性を有するTTTGGTGGTGGTGGTTGTGGTGGTGGTGG又はGGTGGTGGTGGTTGTGGTGGTGGTGGで表される配列は、少なくとも1つ以上の治療的効能がある変形核酸、例えば5−FdU(以下、「F」)又は2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン(Gemcitabine)、以下、「Z」)を置換して導入することにより、様々な新規なオリゴヌクレオチド変形体を完成することができる。具体的には、FFFGGFGGFGGFGGFFGFGGFGGFGGFGG、FFFGGTGGTGGTGGTTGTGGTGGTGGTGG、GGFGGFGGFGGFFGFGGFGGFGGFGG、GGFGGFGGFGGFFFFGGFGGFGGFGG、GGFGGFGGFGGTTGTGGFGGFGGFGG、GGFGGFGGTGGTTGTGGTGGFGGFGG、GGFGGTGGTGGTTGTGGTGGTGGFG、GGTGGTGGTGGFFFFGGTGGTGGTGG、GGTGGTGGTGGFFGFGGTGGTGGTGG、GGZGGZGGZGGZZGZGGZGGZGGZGG、GGTGGTGGTGGTTZTGGTGGTGGTGG、GGTGGTGGTGGTZZTGGTGGTGGTGG、GGTGGTGGTGGTZGTGGTGGTGGTGG、GGTGGTGGTGGTTGZGGTGGTGGTGG、GGTGGTGGTGGTZGZGGTGGTGGTGG、GGZGGTGGTGGTTGTGGTGGTGGZGG、GGTGGZGGTGGTTGTGGTGGZGGTGGなどであり、適切な位置に変形核酸を置換して導入することにより、様々な新規なオリゴヌクレオチドとして完成でき、これらは優れた細胞死滅効果を奏すると確認された。従って、既に治療を目的に報告されたオリゴヌクレオチドの配列又はグアニン四重鎖を形成して生理活性を有するオリゴヌクレオチドの配列に本発明の変形核酸を置換して導入することにより、新規なヌクレオチド変形体を完成することができる。新規なヌクレオチドの配列及び変形核酸の置換位置は、グアニン四重鎖を形成する標的タンパク質に対する結合力又は特異性などに影響を与えることがある。従って、新規なヌクレオチドの配列及び変形核酸の置換位置は、グアニン四重鎖を形成する標的タンパク質に対する結合力又は特異性などに応じて決定され、本発明により完成されたヌクレオチド変形体の有用性は標的タンパク質に対する結合力又は特異性などの決定要因による生理的活性効果に応じて決定される。
【0022】
上記のような方法を用いて適用可能な新規なオリゴヌクレオチド変形体の配列は次の通りである。
本発明は、「GxHyNz」配列で表されるオリゴヌクレオチド変形体をその特徴とする。(配列において、Gはグアノシン又はグアノシン誘導体、Hはグアノシンでない核酸、Nはウリジン又はシチジン由来の治療的効能を有する変形核酸であり、G、H、Nは順列により無作為に配列され、xは1〜30の整数、yは0〜30の整数、zは1〜30の整数であり、ただし、x、y、zの和は60を超えない。)
【0023】
前記治療的効能を有する変形核酸(N)は、下記式(4)又は式(5)で表される化合物であって、オリゴヌクレオチド変形体内に存在する。
【化6】

【化7】

【0024】
(式中、R1は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R2は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R3は水素、ハロゲン、C1-10のアルキル基、C1-10のハロアルキル基、C2-10のアルケニル基、C2-10のハロアルケニル基であり、ただし、R1、R2は同時にヒドロキシとなることはなく、X及びYはそれぞれ水素又は隣接核酸のリン酸残基のリン原子である。)
【0025】
前記Hは、アデノシン、シチジン、ウリジン又はチミジンがさらに好ましく、前記x、y、zの和は5〜60、さらに好ましくは14〜26の範囲にあることが良い。
前記Gはグアノシンであり、好ましくは2’−デオキシグアノシン(2−deoxy−guanosine)、グアノシン(guanosine)、2’−O−メチル−グアノシン(2’−O−methyl−guanosine)、2’−フルオロ−グアノシン(2’−F−guanosine)、LNA(Locked Nucleic Acid)−グアノシン、D−デオキシグアノシン、D−グアノシンから選択された1種又は2種以上であり、Nはシチジン又はウリジン由来の変形核酸であって、好ましくは5−フルオロデオキシウリジン(5−fluorodeoxyuridine)、5−フルオロウリジン(5−fluorouridine)、5−フルオロデオキシシチジン(5−fluorodeoxycytidine)、5−フルオロシチジン(5−fluorocytidine)、5−ヨードデオキシウリジン(5−iododeoxyuridine)、5−ヨードウリジン(5−iodouridine)、5−ヨードデオキシシチジン(5−iododeoxycytidine)、5−ヨードシチジン(5−iododeoxycytidine)、シトシンアラビノシド(Cytosine arabinoside/Ara−C)、2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(Gemcitabine)、カペシタビン(Capecitabine)、及びブロモビニル−デオキシウリジン(bromovinyl−deoxyuridine)から選択された1種又は2種以上であり、これと類似の構造を有する変形核酸を含んでもよい。
【0026】
従来の治療効果を有するヌクレオシド含有治療剤は、全身毒性、薬剤耐性などの副作用があり、多くの癌細胞がこのような治療用ヌクレオシド抗癌剤に耐性を有する場合が多いため、他の薬剤を選択しなければならない場合も発生する。このような治療効果を有するヌクレオシドが癌細胞に選択性を有するグアニン四重鎖オリゴヌクレオチドに含まれる場合、生体内で正常細胞に及ぼす影響を最小化することができ、また、薬剤耐性を有する癌細胞腫に対しても複合的に死滅率を増大させることができる。
【0027】
前記オリゴヌクレオチド変形体は、グアニン四重鎖構造を形成する既に報告されたオリゴヌクレオチドのように、円偏光二色性(CD、circular dichroism)分光分析時、240nm近くで最小ピークを持ち、260〜270nm近くで最大ピークを持つ。このような特徴的な結果は、本発明のオリゴヌクレオチド変形体がグアニン四重鎖構造を形成することを裏づけ、様々な文献(M. Lu、 Q. Guo, N. R. Kallenback, Biochemistry, 1992, 31, 2455; P. Balagurumoorthy, S. K. Brahmachari, Nucleic Acids Res., 1992, 20, 4061; Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 1994, 7658-7662; Biochemistry. 1997, 36, 12498; Biochemistry. 2002, 41, 3676)に関連内容が報告されている。
【0028】
このようなグアニン四重鎖(Quadruplex)構造はカリウムイオン(K+)などが存在する場合、さらに安定した形態を形成して血液内のような一般的な生理条件でも非常に長期間にわたって安定した構造を有する。従って、本発明では一定濃度(30〜70mM)のKCl溶液などを用いて治療効果を有する変形核酸が含まれたグアニン四重鎖オリゴヌクレオチドを安定化させて使用する。
本発明による新規なオリゴヌクレオチド変形体は、既存の治療効果を有するヌクレオシド含有治療剤に比べて、著しく向上した癌細胞の細胞死滅効果を有する。
【0029】
従って、本発明は、前記オリゴヌクレオチド変形体又はその薬剤学的に許容可能な塩を有効性分として含む癌予防及び治療用組成物を含む。前記薬学的に許容可能な塩は、例えば、金属塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩などがある。好ましい金属塩として、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩と、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩と、アルミニウム塩などがある。好ましい有機塩基との塩として、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩がある。好ましい無機酸との塩として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩がある。
好ましい有機酸との塩として、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩がある。
【0030】
好ましい塩基性アミノ酸との塩として、例えば、アルギニン、リシン、オルニチンなどとの塩がある。好ましい酸性アミノ酸との塩として、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩がある。特に好ましい塩としては、化合物が酸性官能基を有する場合であれば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩など)などのような無機塩、及びアンモニウム塩のような有機塩があり、化合物が塩基性官能基を有する場合であれば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などのような無機酸との塩、酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのような有機酸との塩がある。
【0031】
本発明のオリゴヌクレオチド変形体を含む癌予防及び治療用組成物は、有効性分以外に薬剤学的に許容可能な担体を含むことができる。前記薬剤学的に許容される担体は、注射剤の場合には保存剤、等張化剤、無痛化剤、乳化剤、緩衝剤、及び安定化剤などを混合して用いられ、経口投与時には乳化剤、結合剤、賦形剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素崩壊剤、滑沢剤、及び香料などが用いられ、局所投与時には基剤、賦形剤、潤滑剤、及び保存剤などが用いられる。
本発明の組成物の剤形は、薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造される。また、組成物の剤形は注射剤の場合は単位投薬アンプル又は多数回投薬形態に製造し、経口投与時には錠剤、エリキシル剤、カプセル、懸濁液、トローチ、ウエハー、及びシロップなどの形態に製造し、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、及び徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0032】
一方、製剤化に適する担体、賦形剤、及び希釈剤としては、微晶質セルロース、キシリトール、エリスリトール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、ラクトース、デキストロース、スクロース、ヒドロキシ安息香酸プロピル、セルロース、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ステアリン酸マグネシウム、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、又は鉱物油などが用いられる。
【0033】
本発明で「投与」とは、適切な方法で患者に対して所定の物質を導入することを意味し、前記有効性分の投与経路は薬品が目的組織に到達する限り、如何なる一般的な経路により投与してもよい。静脈内投与、皮下投与、経口投与、筋肉内投与、腹腔内投与、肺内投与、及び直腸内投与、局所投与、鼻内投与、皮内投与などが挙げられるが、これに制限されることはない。しかし、経口投与する時、オリゴヌクレオチドは消化されるため、経口用組成物は胃や腸での分解及び吸収が容易なものとして製造し、好ましくは注射剤の形態及び鼻腔内への投与が挙げられる。
【0034】
本発明による有効性分の製剤内の含有量は、体内の活性成分の吸収度、不活化率、排泄速度、使用者の年齢、性別及び状態などに応じて適切に選択することができる。本発明の有効性分は、1〜1000mg/kg、好ましくは3〜100mg/kgであり、1日1〜3回投与又は一定期間の間、点滴(infusion)投与することができる。
以下、本発明は、次の実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明がこれに限定されることはない。
【0035】
実施例1:新規なオリゴヌクレオチド変形体の合成
DNA合成は、一般的なDNA固相合成機を用いて1μmoleスケールの合成を実施した。合成に用いられるホスホラミダイトは、グレンリサーチ(Glen research)社のデオキシグアノシン、チミジン、デオキシシチジン、5−フルオロ−デオキシウリジン、Ara−C、TMP−5−フルオロ−デオキシウリジンホスホラミダイトを乾燥したアセトニトリルを用いて0.067M濃度に溶かし、ポリジーン(Polygene)社のDNA固相合成機に装着する。次の表1に提示された配列により合成が行われ、一般的に3’→5’方向に進行するが、最初のヌクレオチドの3’水酸基を樹脂に付着し、1つの塩基が添加される間、大きく4段階の化学反応、すなわち、5’−末端の脱トリチル反応(detritylation)、新たな塩基の付加反応(coupling)、付加反応しないDNA鎖のキャッピング(capping)反応、リン酸基の酸化反応(oxidation)を繰り返し行った。反応が終了すると、保護装置を除去し、合成されたCPGレジンをアンモニア水に入れて55℃で5時間放置し、アンモニア水を乾燥して白色パウダーを得た。ウォーターズ(Waters)の陰イオン交換HPLCコラムを用いてHPLCシステムで1M NaCl溶液を5〜70%に増加して精製を実施した。メインピークを収集し、これに100%エタノールを入れてオリゴヌクレオチドを沈殿させて乾燥した。HPLCを用いた測定結果、純度85%以上のオリゴヌクレオチドが得られ、ESI−LC−MS(Q−TRAP 2000 ESI−MS)を用いて分子量を測定して合成が成功したか否かを把握した。
次の表1の配列以外に、既に治療を目的に報告されたオリゴヌクレオチド配列又はグアニン四重鎖を形成して生理的活性を有する様々な配列に対して上述した方法によりオリゴヌクレオチド変形体を製造することができる。
【0036】
【表1】









【0037】
実施例2:新規なオリゴヌクレオチド変形体製剤の製造
それぞれのオリゴヌクレオチドを10mM Tris−HCl(pH7.4)溶液に希釈して最終濃度を100μMにした。希釈した溶液を94℃で5分間放置し、氷にチューブを放置した。2M KCl溶液を添加して最終濃度を50mMのKCl溶液にした後、3時間の間60℃で放置し、室温までゆっくり冷やした。それぞれのオリゴヌクレオチドを10mM Tris−HCl(pH7.4)溶液に希釈して10μM濃度にした後、94℃で5分間放置し、氷にチューブを放置した溶液と2M KCl溶液を添加して最終濃度を50mMのKCl溶液にした後、3時間の間60℃で放置し、室温までゆっくり冷やした。
【0038】
実験例1:癌細胞での細胞死滅率の測定
実験前日、96ウェルプレートに1ml当たり103〜104個の前立腺癌細胞のPC−3細胞株が懸濁されている培養液190μlを接種した後、翌日、前記実施例1により製造されたオリゴヌクレオチド溶液10μlを添加して6日間培養した。接種6日後、一般的なXTT方法で細胞死滅を測定した[JBC 1999、26369参考]。
APT−2001、APT−2002、及びAPT−2003に対する細胞死滅率の測定結果、図2に示すように、陽性対照群のAPT−4001と陰性対照群のAPT−4002よりも本発明の新規なオリゴヌクレオチド変形体のAPT−2001、APT−2002、及びAPT−2003のIC50又はIC90が3〜10倍程度優れた細胞死滅効果を確認した(図2)。
【0039】
また、陽性対照群のAPT−4001に比べてAPT−2001、APT−2002、及びAPT−2003が少量であったが、細胞死滅効果が優れたことを確認することができた(図3)。
【0040】
本発明により合成した多くの新規なオリゴヌクレオチドにおいても、優れた細胞死滅効果を確認でき、PC3、MCF7、HCT116、A549、A498、K562、MV−4−11などの様々な癌細胞株に対して優れた細胞死滅効果を確認し、それによって広範囲な抗癌活性を有することを確認した。特に、薬品抵抗性細胞株のMCF7−DXに対しても優れた抗癌活性を有することを確認することができた。前記細胞死滅効果を確認した結果を下記表2〜7に示す。また、本発明のオリゴヌクレオチドのK562、MV−4−11AML(急性白血病)細胞に対する細胞死滅効果を確認し、図4及び5にそれぞれ示した。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
実験例2:グアニン四重鎖形成の確認実験
前記実施例1により製造されたオリゴヌクレオチドのグアニン四重鎖構造の形成を測定するために、CD(Circular dichroism)分析技術を用いた。
前記実施例1により製造されたオリゴヌクレオチド溶液を1μMにするために、リン酸カリウム緩衝剤に希釈して冷凍保管した。各オリゴヌクレオチドを100μMにするために、10mMリン酸カリウム緩衝剤に希釈して2mlの溶液を製造した後、円偏光二色性(CD、circular dichroism)分析に用いた。CDスペクトルはJARSCO J−810分光偏光計(spectropolarimeter)を用い、20℃で100nm/min走査速度(scan speed)、0.5s反応時間(response time)、2nm帯域幅(band width)、1cm経路長(path length)をもって320nm〜220nm波長まで観察した。
その結果、264nmで最大ピークを示しており、グアニン四重鎖を形成すると知られた対照物質(APT−4001)と同じCDスペクトルを有することを確認した。すなわち、このような結果は、グアニン四重鎖を形成することが文献(M. Lu, Q. Guo, N. R. Kallenback, Biochemistry, 1992, 31, 2455; P. Balagurumoorthy, S. K. Brahmachari, Nucleic Acids Res., 1992, 20, 4061; Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91, 1994, 7658-7662; Biochemistry. 1997, 36, 12498; Biochemistry. 2002, 41, 3676)に報告されており、本発明のオリゴヌクレオチド変形体は、グアニン四重鎖を形成することを確認することができた(図6〜8]。
【0048】
実験例3:毒性試験
本発明の有効性分に対して毒性実験を次の通り行った。
APT−2001、APT−2002、及びAPT−2003をそれぞれジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)に溶解して水で希釈し、これをマウス(1群当たり10匹)にそれぞれ1g/kgを投与し、7日間観察したが、死亡したマウスはいなかった。
【0049】
製造例1:注射液剤の製造
APT−2001 10mgを含有する注射液剤は次のような方法で製造した。
APT−2001 1g、塩化ナトリウム0.6g、及びアスコルビン酸0.1gを蒸溜水に溶解して100mlを作った。この溶液を容器に入れて20℃で30分間加熱して滅菌させた。
前記注射液剤の構成成分は次の通りである。
有効性分 1g
塩化ナトリウム 0.6g
アスコルビン酸 0.1g
蒸溜水 適量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は式(2)で表される化合物を含んでグアニン四重鎖構造を形成することを特徴とするオリゴヌクレオチド変形体。
【化1】

【化2】

(式中、R1は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R2は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R3は水素、ハロゲン、C1-10のアルキル基、C1-10のハロアルキル基、C2-10のアルケニル基、C2-10のハロアルケニル基であり、ただし、R1、R2は同時にヒドロキシとなることはない。)
【請求項2】
5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウリジン、5−フルオロデオキシシチジン、5−フルオロシチジン、5−ヨードデオキシウリジン、5−ヨードウリジン、5−ヨードデオキシシチジン、5−ヨードシチジン、シトシンアラビノシド(Ara−C)、2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)、カペシタビン、及びブロモビニル−デオキシウリジンから選択された1種又は2種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のオリゴヌクレオチド変形体。
【請求項3】
「GxHyNz」配列で表されることを特徴とするオリゴヌクレオチド変形体。
(配列において、Gはグアノシン又はグアノシン誘導体、Hはグアノシンでない核酸、Nはウリジン又はシチジン由来の治療的効能を有する変形核酸であり、G、H、Nは順列により無作為に配列され、xは1〜30の整数、yは0〜30の整数、zは1〜30の整数であり、ただし、x、y、zの和は60を超えない。)
【請求項4】
前記グアノシン又はグアノシン誘導体は、2’−デオキシグアノシン、グアノシン、2’−O−メチル−グアノシン、2’−フルオロ−グアノシン、LNA−グアノシン、D−デオキシグアノシン、及びD−グアノシンから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のオリゴヌクレオチド変形体。
【請求項5】
前記変形核酸(N)は、下記式(4)又は式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載のオリゴヌクレオチド変形体。
【化3】

【化4】

(式中、R1は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R2は水素、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R3は水素、ハロゲン、C1-10のアルキル基、C1-10のハロアルキル基、C2-10のアルケニル基、C2-10のハロアルケニル基であり、ただし、R1、R2は同時にヒドロキシとなることはなく、X及びYは水素又は隣接する核酸のリン酸残基のリン原子である。)
【請求項6】
前記変形核酸(N)は、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロウリジン、5−フルオロデオキシシチジン、5−フルオロシチジン、5−ヨードウリジン、5−ヨードデオキシウリジン、5−ヨードデオキシシチジン、5−ヨードシチジン、シトシンアラビノシド(Ara−C)、2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)、カペシタビン、及びブロモビニル−デオキシウリジンから選択された1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5に記載のオリゴヌクレオチド変形体。
【請求項7】
x+y+zの値が14〜26であることを特徴とする請求項3に記載のオリゴヌクレオチド変形体。
【請求項8】
配列番号1〜47で表されることを特徴とする請求項3に記載のオリゴヌクレオチド変形体。
【請求項9】
グアニン四重鎖構造を形成することを特徴とする請求項3から8の何れか1項に記載のオリゴヌクレオチド変形体。
【請求項10】
請求項3から8の何れか1項に記載のオリゴヌクレオチド変形体又はその薬学的に許容可能な塩を有効性分として含有することを特徴とする癌予防及び治療用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−532123(P2012−532123A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518491(P2012−518491)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004202
【国際公開番号】WO2011/002200
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(512002208)アプタバイオ セラピュティックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】