説明

治療用ペプチド及びその使用方法

【課題】感染症、特に敗血症、及び敗血症ショックの治療、又は敗血症-様状態の治療方法及び治療用組成物を提供する。
【解決手段】敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の症状を治療、改善、又は軽減する能力を特徴とする、TREM-1蛋白質のCDR2又はCDR3由来の1種以上の配列を含むポリペプチド、及びその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野に関する。より詳細に述べると、本発明は、炎症、並びに、疾
患、例えば敗血症及び敗血症ショックの治療におけるTREM-1蛋白質のある配列を含む蛋白
質及びペプチド(本願明細書においてTREM-1ペプチドと称される)並びにそれらの機能的
同等物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、集中治療の資源を著しく消費し、そのために集中治療室において問題が絶え
ず存在している。米国及び欧州の両方において、毎年40万〜50万人の患者が罹患している
と推定されている。支持療法及び抗菌療法の両者共改善されているにもかかわらず、罹患
率及び死亡率は依然高い。死亡率は、合併症を伴わない敗血症の40%から、敗血症ショッ
ク及び多臓器不全を罹患しているものの80%まで変動する。これらの状態の病理は、現在
より良く理解され始めている。免疫、炎症及び血液メディエーターの複雑なネットワーク
のより大きい理解は、理論的かつ新規の療法の開発を可能にしている。
【0003】
感染後、先天性及び認知性(cognitive)の免疫応答は、特異性及び複雑性を蓄積する
続発相で発達し、最終的には感染物質のクリアランス及び恒常性の回復をもたらす。先天
性の免疫応答は、防御の第一線として利用され、並びに様々な病原体-関連微生物パター
ン(PAMP)(3)による、トール様受容体(TLR)(1, 2)のようなパターン認識受容体の
活性化時に開始される。TLRの活性化は、TNF-α及びlL-1βのようなサイトカイン類の大
量放出の引き金をひき、これは、敗血症のような大規模な感染症の場合、組織損傷及び致
命的ショックを早める(4, 5)。この状況において、TNF-α及びlL-1βのアンタゴニスト
は、関心のある敗血症の治療的物質としての可能性が認められるが、残念ながらこれらの
臨床試験における効果は限定されたものである(6-8)。このことは、これらのサイトカ
インは、感染症のクリアランスに必要であるという事実、及びそれらの除去は致命的細菌
増殖を可能にする(9-11)という事実に起因しているであろう。
【0004】
とりわけ感染症に対する反応に関連している別の受容体である骨髄細胞-1に発現する誘
発性受容体(TREM-1)は、好中球及び単球サブセットの表面に発現される受容体の最近発
見されたファミリーであるTREMファミリーの一員である。TREM受容体は、アダプター分子
DAP12との会合を介して、骨髄細胞を活性化する。TREM-1の結合は、微生物の生成物質の
存在下で、前炎症性サイトカインの合成の引き金を引くことが報告されている。
【0005】
骨髄細胞に発現する誘発性受容体(TREM)-1は、ヒト及びマウスの多形核好中球及び成
熟単球の両方で同定された最近発見された細胞-表面分子である(12)。これは、免疫グ
ロブリンスーパーファミリーに属し、DAP12と称されるアダプター蛋白質の補助により下
流のシグナル伝達経路を活性化する(12-15)。Bouchonとその同僚は、TREM-1の発現は、
細胞培養物中及び感染症患者の組織試料中の両方において、緑膿菌(Pseudomonas aerugi
nosa)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のような細菌の存在下で、好中球
及び単球において大きくアップレギュレーションされることを示した(16)。TREM-1は、
免疫複合体により引き起こされた乾癬、潰瘍性大腸炎又は血管炎のような非-感染性炎症
疾患に罹患した患者から得た試料においてはアップレギュレーションされないことは特筆
すべき対比である(16)。更にTREM-1がそのリガンドに結合される場合、LPSの相乗作用
並びに前炎症性サイトカインTNF-α及びGM-CSFの増幅された合成が、lL-10生成の阻害と
共に存在する(17)。LPS-誘導した敗血症ショックのマウスモデルにおいて、TREM-1シグ
ナル伝達の遮断は、動物を死亡から保護し、更にはこの分子の決定的な役割を際だたせて
いる(13, 16)。
【0006】
最近の研究は、TREM-1が感染症に対する炎症反応において重要な役割を果たすことを示
している(BOUCHONらの論文、J. Immunol.、164:4991-4995(2000)参照)。TREM-1の発
現は、ヒトにおいて細菌及び真菌の両感染症に対し反応し、骨髄細胞上で増大する。同様
にマウスにおいて、リポ多糖(LPS)によるショックの誘導は、TREM-1の増大した発現に
関連している。更にマウスの「デコイ」受容体としての可溶性TREM-1/Ig融合蛋白質によ
る処置は、LPS又は大腸菌に起因した死亡からマウスを保護する。
【0007】
米国特許第6,420,526号、名称「186分泌蛋白質」は、ヒトTREM-1の少なくとも30個の連
続的なアミノ酸を含むTREM-1の特定されずかつ例証されない単離された断片について請求
している。このような断片に関する生物学的データは提供されていない。
米国特許出願公開第2003165875A号に説明されているように、ヒトIgG1定常領域と、マ
ウスTREM-1の細胞外ドメイン又はヒトTREM-1の細胞外ドメインとの間の融合蛋白質は、マ
ウスの内毒素血症に対する作用を示す。
【0008】
本発明者らは驚くべきことに、TREM-1蛋白質に由来したある種のペプチドは、TREM-1蛋
白質のアンタゴニストとして作用することが可能であり、その結果敗血症及び敗血症ショ
ックの治療に適応であることを発見した。更に本発明者らは、このペプチドは同じく、in
vivoにおいて、感染症により引き金を引かれた前炎症性カスケードを変化し、その結果
敗血症動物モデルにおける過剰反応及び死亡を阻害することを明らかにしている。
先に本発明者らは、TREM-1の可溶型(sTREM-1)を同定し、これを敗血症ショック患者
の血清試料中においては有意なレベルで認めたが、対照においては認めなかった。本願明
細書においても説明されたように、本発明者らは、敗血症時の炎症の変化におけるその推
定上の役割を調べた(Gibotらの論文、Ann. Intern. Med.、141(1):9-15(2004)、及
びGibotらの論文、N. Engl. J. Med.、350(5):451-8(2004))。
【0009】
本願明細書に説明されるように、本発明者らは、TREM-1の可溶型(sTREM-1)は、マウ
スにおける感染症攻撃時に末梢血中に放出されることを示している。本発明者らは同じく
、sTREMの主要な給源が単球であることを確認し、及びTREM-1の細胞外ドメインの一部を
模倣している合成ペプチドは、in vitroにおいて活性化された単球によるサイトカイン生
成を変化することができることを示している。
本発明者らは、sTREM-1は、LPSによりin vitroにおいて、更には敗血症ショックの実験
モデルに関連した動物の血清中に、活性化された単球により分泌されることを認めている
。In vitro及びin vivoの両方において、sTREM-1の短い高度に保存されたドメインを模倣
している合成ペプチドは、ヒト単球によるサイトカイン生成を減弱し、敗血症動物を過剰
反応及び死亡から保護する。これらのペプチドは、前炎症性サイトカインの有害な作用を
単に妨害することのみではなく、ダウンレギュレーションすることにおいても効率的であ
る。これらのデータは、TREM-1ペプチドによるTREM-1のin vivo変化は、感染症、例えば
敗血症もしくは敗血症ショックの治療、又は敗血症-様状態の治療のための価値のある治
療道具であることを明らかにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明は、感染性疾患、特に敗血症、及び敗血症ショックを治療するための、又
は敗血症-様状態を治療するための、方法及び組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願明細書に説明されたように、本発明者らは、「CDR2」及び「CDR3」からの配列を取
込んでいるTREM-1蛋白質の細胞外部分のいくつかのペプチド(表1参照)は、驚くべきこ
とに、先に説明されたIgG1定常領域及び敗血症モデルにおけるTREM-1の細胞外ドメインの
融合蛋白質に類似した活性を有していることを決定した。これらのペプチドは、特に製造
コストに関してこの蛋白質に勝る利点も有する。
従って本発明は、TREM-1蛋白質のCDR2又はCDR3由来の1種以上の配列を含むポリペプチ
ドを提供する。好ましくは、該ポリペプチドは、該TREM-1蛋白質の30個未満の連続的なア
ミノ酸を含む。
【0012】
表1に示されたように、このようなペプチド又はポリペプチドの例は、例えばTREM-1蛋
白質由来の15-25個のアミノ酸(「AA」)ペプチドを包含又は含み、並びにCDR-様ドメイ
ンの機能が失われない限りは長さが変動し得るその蛋白質由来の天然の配列が側方に位置
したこの受容体のCDRドメイン(3-6AA)の全て又は一部を包含するか又は含む。このよう
なペプチドは、例えば、表2(ヒト)及び表3(マウス)に示されたような、TREM-1受容体
蛋白質アミノ酸配列に由来している。
【0013】
表1は、マウスTREM-1「mPX」(NCBI参照配列(RefSeq)NP_067381)又はヒトTREM-1「h
PX」(NCBI参照配列(RefSeq)NP_061113)由来のペプチドを示している。下線を付けた
アミノ酸は、Radaevらの論文(Structure(Camb.)、11(12)1527-1535(2003))に記
された、ヒトTREM-1相補性決定領域(CDR)に広がっている。
表2は、ヒトTREM-1アミノ酸配列NP_061113を示している。下線を付けたアミノ酸は、Ra
daevらの論文(Structure(Camb.)、11(12)1527-1535(2003))に記された、ヒトTRE
M-1相補性決定領域(CDR)2(RPSKNS;[配列番号:20])及び3(QPPKE [配列番号:21])
に広がっている。
表3は、マウスTREM-1アミノ酸配列NP_067381を示している。下線を付けたアミノ酸は、
マウスTREM-1相補性決定領域(CDR)2(RPFTRP;[配列番号:22])及び3(HPPND;[配列
番号:23])に広がっている。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
【表3】

【0017】
従って本発明は、本願明細書に定義されたように、本質的にTREM-1蛋白質のCDR2もしく
はCDR3由来の1種以上の配列を含む又はからなる単離された又は組換えにより調製された
ポリペプチドもしくはペプチド、又はそのようなポリペプチドの断片、ホモログ、誘導体
、融合蛋白質もしくは変種を提供し、これらは本願明細書においては集合的に「本発明の
ポリペプチド又はペプチド」もしくは「TREM-1ペプチド又はTREM-1ポリペプチド」と称さ
れ、このような実体は、例えば表2又は表3に示されたようなTREM-1蛋白質の30個未満の連
続的なアミノ酸を含むことが好ましい。一般に本発明のポリペプチドもしくは蛋白質、又
はそれらの断片、ホモログ、誘導体、もしくは変種は、特定の種における使用(例えば治
療)が意図されており、TREM-1蛋白質のCDR2又はCDR3配列は、その種の、又はその配列が
不明である場合は類似種のTREM-1蛋白質アミノ酸配列から選択される。例えば、ヒトの疾
患、特に敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の治療のための本発明のポリペプチ
ド又は蛋白質は、ヒトTREM-1蛋白質からのCDR2又はCDR3の全て、又は一部を含む1種以上
の配列を含有するであろう。
【0018】
更に本発明は、配列番号:20、21、22、23のアミノ酸配列と少なくとも約60%、70%、
75%、80%、85%、90%、95%、もしくは98%同一であるアミノ酸配列を含む単離された
ポリペプチドもしくは蛋白質、又はそれらの断片、ホモログ、誘導体、もしくは変種を提
供する。本発明は、TREM-1蛋白質の少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、もしくは29個、又は
それよりも多い連続的なアミノ酸を含む又はからなるアミノ酸配列を含む単離されたペプ
チド、ポリペプチド又は蛋白質も提供し、その3個又はそれよりも多い連続的なアミノ酸
は、配列番号:20、21、22又は23の配列(別の表現をすると、TREM-1蛋白質のCDR2又はCD
R3の全て又は一部を表している配列は、そのペプチド、ポリペプチド又は蛋白質中に存在
する。)、又はそれらの断片、ホモログ、誘導体、もしくは変種に由来する。好ましい実
施態様において、このようなペプチド、ポリペプチドもしくは蛋白質、又はそれらの断片
、ホモログ、誘導体、もしくは変種は、TREM-1完全長蛋白質の生物学的活性、例えば抗原
性、免疫原性、前炎症性ケモカイン及びサイトカインの引き金、細胞質ゾルCa2+の移動、
蛋白質チロシン-リン酸化、メディエーター放出、並びに容易にアッセイ可能な他の活性
などを有する。一般にこのようなペプチド、ポリペプチドもしくは蛋白質、又はそれらの
断片、ホモログ、誘導体、もしくは変種は、敗血症、敗血症ショックもしくは敗血症-様
状態を治療することが可能であるか、又は例えば、TREM-1受容体の活性のアンタゴニスト
として作用することにより、敗血症、敗血症ショックもしくは敗血症-様状態の実験モデ
ルにおいて活性がある。このようなペプチド、ポリペプチドもしくは蛋白質、又はそれら
の断片、ホモログ、誘導体、もしくは変種は、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状
態の症状を治療、改善、又は軽減する能力により特徴付けられる。
【0019】
特に、本発明は、(i)CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸を含む未変性
のTREM-1蛋白質配列に相当する5〜29個、例えば15-25個のアミノ酸の連続的な配列;又は
、(ii)1個以上のアミノ酸が提供された別のアミノ酸により保存的に置換されているが
、CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸は置換されないような配列;又は、
(iii)そのN及びC末端の一方又は両方で、異種ポリペプチドに連結されている(i)又は
(ii)の配列からなる、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態に対する活性を有す
るTREM-1ポリペプチドを提供する。例えば、未変性のTREM-1蛋白質配列が[配列番号:1]
として同定されたヒト配列であるようなポリペプチドにおいて、CDR2及びCDR3配列は、各
々、RPSKNS及びQPPKEである。このようなポリペプチドにおいて、CDR2又はCDR3配列由来
の少なくとも3個のアミノ酸は、QPP、PPK、PKE、RPS、PSK、SKN、又はKNSである。このよ
うなポリペプチドは、配列QPPK、QPPKE、又はRPSKNSを含んでもよい。例えば、未変性のT
REM-1蛋白質配列が[配列番号:2]として同定されたマウス配列であるようなポリペプチド
において、CDR2及びCDR3配列は、各々、RPFTRP及びHPPNDである。このようなポリペプチ
ドにおいて、CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸は、HPP、PPN、PND、RPF
、PFT、FTR、又はTRPである。このようなポリペプチドは、配列HPP、HPPN、HPPND、又はR
PFTRPを含んでも良い。
【0020】
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、Gibotらの論文(J. Exp. Med., 200
, 1419-1426(2004))に明らかにされた配列番号7であるか又はこれを含む。
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号7でないか又はこれを含ま
ない。
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号:3、4、及び6から選択さ
れた配列であるか又はこれを含む。
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号:16、17、18、及び19から
選択された配列であるか又はこれを含む。
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、CDR2由来の配列を含む。
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、CDR3由来の配列を含む。
【0021】
本発明のポリペプチド又はペプチドは、療法、特に敗血症、敗血症ショック及び敗血症
-様状態の治療における使用のために、並びに敗血症、敗血症ショック及び敗血症-様状態
の治療のための医薬品の製造における使用のために提供される。更に、本発明のポリペプ
チド又はペプチドを含有する組成物及び医薬組成物、並びに本発明のポリペプチド又はペ
プチドを使用する敗血症、敗血症ショック及び敗血症-様状態の治療法が提供される。加
えて、本発明のポリペプチド又はペプチドは、敗血症、敗血症ショック及び敗血症-様状
態における血行動態パラメータを回復するための療法において使用するために、並びに敗
血症、敗血症ショック及び敗血症-様状態における異常な血行動態パラメータの治療のた
めの医薬品製造において使用するために提供される。
【0022】
用語「骨髄細胞に発現する誘発性受容体」又は「TREM」は、マスト細胞、単球、マクロ
ファージ、樹状細胞(DC)、及び好中球などの様々な種類の骨髄細胞上で選択的に発現さ
れ、並びに免疫応答及び炎症反応において支配的な役割を有することがある、活性化する
受容体の群を意味する。TREMは主に、細胞外ドメインにおいてIg-型フォールドを伴う膜
貫通糖蛋白質であり、従ってIg-SFに属する。これらの受容体は、短い細胞内ドメインを
含むが、しかしシグナル伝達メディエーターのドッキングモチーフを欠いており、細胞活
性化のためにアダプター蛋白質、例えばDAP12を必要とする。
本願明細書において使用される用語「骨髄細胞」は、顆粒球(好中球、好酸球、及び好
塩基球)、単球、マクロファージ、及びマスト細胞を含む一連の骨髄-由来の細胞系統を
意味する。更に骨髄起源の末梢血樹状細胞、並びに適当な培養条件下in vitroにおいて単
球由来の樹状細胞及びマクロファージも含まれる。
【0023】
本願明細書において定義された用語「敗血症、敗血症ショック」又は「敗血症又は敗血
症ショック」は、全身性炎症反応症候群(SIRS)の亜群を意味する。用語「敗血症」は一
般に、感染症が疑わしい場合又は証明される場合のSIRSに限定される。生理学的変量のパ
ターンは、外傷、火傷、膵炎及び感染症を含む幅のある傷害に対する反応における重大な
疾患の患者において示される。これらは、炎症反応、白血球増加症又は重度の白血球減少
症、高体温又は低体温、頻脈及び頻呼吸を含み、並びに集合的に全身性炎症反応症候群(
SIRS)と称される。この定義は、感染症の存在とは無関係のこれらの状態における炎症プ
ロセスの重要性を強調している。更に敗血症は、臓器の低灌流の証拠が存在する場合に重
度の敗血症に階層化され、低酸素血症、尿量過少症、乳酸アシドーシス、又は変更された
脳機能などの、臓器機能不全の徴候により明らかにされる。「敗血症ショック」とは、通
常ヒトにおいて適切な輸液蘇生法にも関わらず収縮期血圧が90mmHg未満と定義される低血
圧が合併した重度の敗血症である。敗血症及びSIRSは、不調な臓器灌流及び酸素療法のた
めに、2種又はそれよりも多い臓器の機能不全が合併することがあり、これは多臓器不全
(MOF)と称される。膵炎及び火傷のような重度の炎症状態において、感染症の全身作用
に加え、全身性炎症反応が生じることがある。外傷性傷害に続く炎症反応の徴候の出現は
、余り良く定義されていない。集中治療室においては、グラム陰性菌が敗血症症例の50〜
60%に関与し、グラム陽性菌が症例の更に35〜40%を占める。残りの症例は、余り一般的
でない真菌、ウイルス及び原虫が原因である。
【0024】
本願明細書において使用される用語「敗血症-様状態」は、患者が、敗血症又は敗血症
ショックに類似した症状を示すが、感染性物質が敗血症の症例において認められるのと同
様の炎症メディエーターのカスケード及び/又は血行動態パラメータの変化の主要又は最
初の原因ではないような状態を意味し、例えば急性又は慢性肝不全患者(Wasmuth HEらの
論文、J. Hepatol.、2005年2月;42(2):195-201参照)、心停止後の救急蘇生後の疾患
症例(Adrie Cらの論文、Curr. Opin. Crit. Care.、2004年6月;10(3):208-12参照)
、癌化学療法後の敗血症-様症状の治療(Tsuji Eらの論文、Int J Cancer.、2003年11月;
107(2):303-8参照)、組換えTNF-αによる高体温の孤立された四肢(isolated limb)
の灌流もしくは同様の治療を受けている患者(Zwaveling JHらの論文、Crit Care Med.、
1996年5月;24(5):765-70参照)、又は新生児の敗血症-様疾患(Griffin MPらの論文
、Pediatr Res.、2003年6月;53(6):920-6参照)がある。
【0025】
本願明細書において使用される用語「敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態に対
する活性」は、分子、例えばペプチド、ポリペプチド又は操作された抗体の、敗血症、敗
血症ショック又は敗血症-様状態を治療する能力、もしくは例えばTREM-1受容体の活性の
アンタゴニストとして作用することにより、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態
の実験モデルにおいて、活性があることを意味する。
典型的には本発明のポリペプチドの適応は、敗血症又は敗血症ショックである。
【0026】
用語「実質的配列同一性」は、ペプチド/アミノ酸配列と組合せて使用される場合は、
配列が実質的に同一又は類似し、コンホメーションの相同性を生じ、その結果生物学的活
性が類似しているペプチド/アミノ酸配列を意味する。この用語は、それらの配列の共通
の進化を意味することは意図されない。
典型的には、「実質的配列同一性」を有するペプチド/アミノ酸配列は、少なくとも所
望の活性に関与していることがわかっている領域にわたり、少なくとも50%、より好まし
くは少なくとも80%配列が同一である配列である。最も好ましくは、末端でない、5個を
超えない残基が異なる。好ましくは少なくとも前述の領域における配列の多様性は、「保
存的修飾」の形である。
【0027】
ふたつのペプチド/アミノ酸配列の又はふたつの核酸配列の%配列同一性を決定するた
めに、これらの配列は、最適な比較目的のために並置される(例えば、最適なアラインメ
ントのために、第一又は第二のアミノ酸又は核酸配列の一方又は両方にギャップが導入さ
れ、並びに非相同配列は、比較のためには無視することができる。)。例えば、比較のた
めに並置された参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なく
とも40%、より好ましくは少なくとも50%、更により好ましくは少なくとも60%、及びよ
り更に好ましくは少なくとも70%、80%、又は90%である(例えば、第二の配列を、例え
ば100個のアミノ酸残基を有する第一のアミノ酸配列と並置する場合、少なくとも30個、
好ましくは少なくとも40個、より好ましくは少なくとも50個、更により好ましくは少なく
とも60個、及びより更に好ましくは少なくとも70、80又は90個のアミノ酸残基が並置され
る。)。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置でのアミノ酸残基又はヌクレ
オチドが比較される。第一の配列の位置が、第二の配列の対応する位置と同じアミノ酸残
基又はヌクレオチドで占拠される場合、これらの分子は、その位置で同一である(本願明
細書において使用されるアミノ酸又は核酸「同一性」は、アミノ酸又は核酸「相同性」と
同等である。)。ふたつの配列間の%同一性は、ふたつの配列の最適なアラインメントを
導入するために必要である、ギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、これらの
配列により共有される同一の位置の数の関数である。ふたつの配列間の配列の比較及び%
同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。ひとつの実施態様
において、ふたつのアミノ酸配列間の%同一性は、Blossom 62行列又はPAM250行列のいず
れか、並びにギャップ重み16、14、12、10、8、6、又は4、及び長さ重み1、2、3、4、5、
又は6で用い、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http://www.gcg.comで入
手可能)に組込まれたNeedleman及びWunsch(J. Mol. Biol.、(48):444-453(1970)
)アルゴリズムを用い、決定される。別の実施態様において、ふたつのヌクレオチド配列
間の%同一性は、NWSgapdna.CMP行列及びギャップ重み40、50、60、70、又は80、及び長
さ重み1、2、3、4、5、又は6を用いる、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(
http://www.gcg.comで入手可能)を用いて決定される。別の実施態様において、ふたつ
のアミノ酸又はヌクレオチド配列間の%同一性は、PAM120重み残基テーブル(weight res
idue table)、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用する、ALIGNプ
ログラム(バージョン2.0)に組込まれている、E. Meyers及びW. Miller(CABIOS, 4:11
-17(1989))のアルゴリズムを用いて決定される。本発明の核酸及び蛋白質配列は更に
、例えば、他のファミリーメンバーの配列又は関連配列を同定するために、公のデータベ
ースに対し検索を行う「クエリー配列」として使用することができる。このような検索は
、Altschulらの論文(J. Mol. Biol.、215:403-10(1990))のNBLAST及びXBLASTプログ
ラム(バージョン2.0)を用い、実行することができる。BLASTヌクレオチド検索は、本発
明のNIP2b、NIP2cL、及びNIP2cS核酸分子と相同であるヌクレオチド配列を得るために、N
BLASTプログラムを用い、スコア=100、ワードレングス=12で実行することができる。BL
AST蛋白質検索は、本発明のNIP2b、NIP2cL、及びNIP2cS蛋白質分子と相同であるアミノ酸
配列を得るために、XBLASTプログラムを用い、スコア=50、ワードレングス=3で実行す
ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、Gapped BLASTを
、Altschulらの論文(Nucleic Acids Res.、25(17):3389-3402(1997))に記された
ように利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プ
ログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用することができ
る。http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照。
【0028】
用語「蛋白質」及び「ポリペプチド」は、本願明細書において互換的に使用される。用
語「ペプチド」は、ペプチド(-NHCO-)結合により連結された連続的なアミノ酸を伴う、
2個又はそれよりも多いアミノ酸又はアミノ酸アナログ(非天然のアミノ酸を含む)の鎖
を意味するように本願明細書において使用される。従って本発明のペプチドは、オリゴペ
プチド、ポリペプチド、蛋白質、ミメトープ及びペプチド擬態を含む。ミメトープ及びペ
プチド擬態を調製する方法は、当該技術分野において公知である。
【0029】
用語「ミメトープ」及び「ペプチド擬態」は、本願明細書において互換的に使用される
。化合物Xの「ミメトープ」は、Xの機能活性に必要なXの化学構造が、Xのコンホメーショ
ンを模倣している別の化学構造により交換されているような化合物を意味する。ペプチド
擬態の例は、そのペプチド骨格が1個以上のベンゾジアゼピン分子により置換されている
ペプチド化合物(例えば、James, G.L.らの論文、Science、260:1937-1942(1993)参照
)及び「retro-inverso」ペプチド(Sistoの米国特許第4,522,752号参照)を含む。用語
「ミメトープ」及び「ペプチド擬態」は、ペプチドの機能を有意な程度有害に妨害するこ
とのないペプチド-含有化合物の特定のアミノ酸との置換としてコンホメーション的及び
機能的に利用される天然のアミノ酸以外の部分も意味する。アミノ酸擬態の例は、D-アミ
ノ酸を含む。1個以上のD-アミノ酸で置換されたペプチドは、周知のペプチド合成法を用
い作成することができる。追加の置換は、官能基を伴う変種側鎖を有するアミノ酸アナロ
グを含み、例えば、b-シアノアラニン、カナバニン、ジェンコール酸、ノルロイシン、3-
ホスホセリン、ホモセリン、ジヒドロキシフェニルアラニン、5-ヒドロキシトリプトファ
ン、1-メチルヒスチジン、又は3-メチルヒスチジンがある。
【0030】
本願明細書において使用される化合物Xの「アナログ」は、Xの機能活性に必要なXの化
学構造を保持するが、依然Xとは異なるある種の化学構造を含むような化合物を意味する
。天然のペプチドアナログの例は、1種以上の非-天然のアミノ酸を含むペプチドである。
用語「アナログ」も、修飾されたミメトープ及び/又はペプチド擬態、修飾されたペプチ
ド及びポリペプチド、並びにペプチド及びポリペプチドのアレル変種を含むことが意図さ
れている。従ってペプチドのアナログは、当初のペプチドと、実質的にホモログであるか
、別の表現をすると実質的配列同一性を有するような、ペプチドアナログを生じるであろ
う。用語「アミノ酸」は、その技術分野において認められた意味を含み、広範には式Iの
化合物を包含している:
【0031】
【化1】

【0032】
好ましいアミノ酸は、天然のアミノ酸に加え、合成誘導体、及び蛋白質、例えば、カゼ
インのような蛋白質由来のアミノ酸、すなわちカザアミノ酸、又は例えば、酵母、動物製
品の酵素的もしくは化学的消化物、例えばミートダイジェスト、又は植物製品の、例えば
ダイズ蛋白質、綿実蛋白質、もしくはトウモロコシスティープリカーなどの消化物を含む
(例えば、Traders' Guide to Fermentation Media, Traders Protein, Memphis, TN(19
88), Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology, Sinauer Associates,
Sunderland, MA(1989)、及びProduct Data Sheet for Corn Steep Liquor, Grain Proc
essing Corp., IOを参照のこと。)。
【0033】
用語「天然のアミノ酸」は、生体システムのほとんどのポリペプチドを通常構成する、
20種のアミノ酸残基、線維性蛋白質で認められる稀なアミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプ
ロリン、5-ヒドロキシリシン、-N-メチルリシン、3-メチルヒスチジン、デスモシン、イ
ソデスモシン)、並びに蛋白質において認められない天然のアミノ酸(例えば、-アラニ
ン、-アミノ酪酸、ホモシステイン、ホモセリン、シトルリン、オルニチン、カナバニン
、ジェンコール酸、及び-シアノアラニン)のいずれかを含む。
【0034】
用語「天然のアミノ酸の側鎖」は、式IにおいてRで表されるような、天然のアミノ酸の
側鎖を含むことが意図される。当業者は、式Iの構造は、側鎖が環式又はヘテロ環式構造
であるプロリンのようなアミノ酸を包含する(すなわち、プロリンにおいて、R基及びア
ミノ基は、5員ヘテロ環式環を形成する。)ことが意図されていることを理解するであろ
う。同様に前記式Iの化合物は、式Iにおいて、例えばR3及びR4はヘテロ環式環を形成する
プロリンのようなアミノ酸を包含することが意図されている。
本願明細書において使用される用語「ホモログ」は、抗原性/免疫原性及び炎症調節活
性を含む、共通の生物学的活性、及び/又は構造ドメインを有する、並びに本願明細書に
おいて定義された十分なアミノ酸を有する、多くの一連のペプチド又はポリペプチドを意
味する。このようなホモログは、同じ又は異なる動物種のいずれかに由来することができ
る。
【0035】
本願明細書において使用される用語「変種」は、所定のペプチドの天然のアレル変異、
又は1種もしくは複数種のアミノ酸残基が、アミノ酸の置換、付加、もしくは欠失により
修飾されているような所定のペプチドもしくは蛋白質の組換えにより調製された変異のい
ずれかを意味する。
本願明細書において使用される用語「誘導体」は、別の方法で修飾された、すなわち非
-天然のアミノ酸を含むペプチド又は蛋白質への、好ましくは生体活性を有する、いずれ
かの種類の分子の共有結合による、所定のペプチド又は蛋白質の変異を意味する。
好ましくは、このようなホモログ、変種、及び誘導体は、例えばTREM-1受容体の活性の
アンタゴニストとして作用することにより、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態
を治療するか、もしくは、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の実験モデルにお
いて活性があることが可能である。
【0036】
「単離された」又は「精製された」ペプチド又は蛋白質は、実質的に細胞性物質を又は
その蛋白質が由来した細胞もしくは組織給源由来の他の夾雑蛋白質を含まないか、又は化
学的に合成された場合は化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。
語句「細胞物質を実質的に含まない」は、ポリペプチド/蛋白質が、そこから単離され
た又は組換えにより作出された細胞の細胞成分から分離されているポリペプチド/蛋白質
の調製物を含む。従って細胞物質を実質的に含まないポリペプチド/蛋白質は、夾雑蛋白
質を約30%、20%、10%、5%、2.5%、又は1%(乾量について)未満有するポリペプチ
ド/蛋白質の調製物を含む。ポリペプチド/蛋白質が組換えにより作出される場合は、同じ
く培養培地を実質的に含まないことが好ましく、すなわち培養培地は、蛋白質調製物容量
の約20%、10%、又は5%未満である。ポリペプチド/蛋白質が化学合成により生成される
場合は、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まないことが好ましく、すなわち、そ
の蛋白質の合成に関連する化学前駆体又は他の化学物質から分離されている。従って、ポ
リペプチド/蛋白質のそのような調製物は、関心のあるポリペプチド/蛋白質断片以外の化
学前駆体又は化学物質を約30%、20%、10%、5%(乾量について)未満有する。好まし
い本発明の実施態様において、ポリペプチド/蛋白質は、単離又は精製されている。
【0037】
前述のポリペプチドに加え、本発明のポリペプチドは、共通の生物学的活性及び/又は
構造ドメインを有し、並びにここに定義されたような十分なアミノ酸同一性(ホモログ)
を有するポリペプチドを包含している。これらのホモログは、同じ又は異なるいずれかの
動物種、好ましくは哺乳類、より好ましくはマウス及びラットなどの齧歯類、及び最も好
ましくはヒトに由来することができる。好ましくは、これらは、TREM-1の少なくとも1種
の構造的及び/又は機能的特徴を示し、好ましくは例えば、TREM-1受容体活性のアンタゴ
ニストとして作用することにより、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を治療す
ることが可能である。このような修飾は、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を含む
。アミノ酸修飾は、当該技術分野においていずれか公知の方法により行うことができ、及
び様々な方法が利用可能でありかつ当業者には慣習的なものである。
【0038】
加えて、アミノ酸置換の作成において、一般に置換されるアミノ酸残基は、保存的アミ
ノ酸置換(すなわち、「保存的に置換される」)であることができ、例えば、極性残基は
、極性残基と、親水性残基は親水性残基と、疎水性残基は疎水性残基と、正帯電した残基
は正帯電した残基と、又は負帯電した残基は負帯電した残基と置換される。更に一般に、
修飾されるアミノ酸残基は、種を超えて高度にもしくは完全には保存されず、並びに/又
はそれが由来したペプチド及び/もしくは蛋白質の生物学的活性を維持するために重要で
ある。
【0039】
本発明のペプチドは、簡便な方法で直接合成され得る。一般に存在する反応基(例えば
、アミノ、チオール及び/又はカルボキシル)は、全体の合成時には保護されるであろう
。本発明のペプチドのある割合、すなわち含まれたアミノ酸が遺伝的にコードされたアミ
ノ酸であるものは、当業者に周知の発現システムにより原核宿主及び真核宿主において発
現されることが可能であろう。例えば微生物により発現されたペプチドの単離及び精製の
方法も、周知である。本発明のこれらのペプチドをコードしているポリヌクレオチドは、
本発明の更なる態様を構成する。本願明細書において使用される「ポリヌクレオチド」は
、個別の断片の形の、又は例えばプラスミドなどの発現ベクターのようなより大きい構築
物の成分としての、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのポリマーを意味す
る。本発明のポリヌクレオチド配列は、DNA、RNA及びcDNA配列を含む。遺伝暗号の縮重の
ために、当然1種よりも多いポリヌクレオチドが、本発明の特定のペプチドをコードする
ことが可能である。細菌宿主がペプチド発現のために選択される場合、宿主を発現された
抗-菌性ペプチドから保護する工程が必要である。このような技術は、当該技術分野にお
いて公知であり、及び発現される特定のペプチドに抵抗性である細菌株の使用又は本発明
のペプチドの抗生物質活性を無効にする一方又は両方の末端での切片(sections)との融
合ペプチドの発現を含む。後者の場合、ペプチドは、収集後に切断され、活性ペプチドを
作成することができる。ペプチドが化学修飾を取込むならば、その後発現されたペプチド
の活性/安定性は低く、合成後化学修飾によって変化されるのみである。
【0040】
更に本発明は、本発明のポリペプチドの誘導体も包含している。例えば、限定するもの
ではないが、誘導体は、例えばグリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化
、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、蛋白質分解性切断、細胞リガンドもしくは
他の蛋白質への連結などにより、修飾されたペプチド又は蛋白質を含んでよい。多くの化
学修飾のいずれかを含むが、これらに限定されるものではない、特異的化学切断、アセチ
ル化、ホルミル化などの公知の技法により行ってもよい。加えて誘導体は、1種以上の非-
古典的アミノ酸を含んでもよい。当業者は、効力を増大、活性を持続及び/又は半減期を
延長するために、ペプチドを修飾する様々な方法を知っているであろう。ひとつの例にお
いて(国際公開公報第0210195号)、修飾は、ペプチドのN-末端、ペプチドのC-末端、又
はペプチド鎖に沿った遊離アミノ基もしくはカルボキシル基のいずれかでの、少なくとも
1種のコンホメーション上剛性な置換基とのアミド結合によるカップリングを介して行わ
れる。同様の作用を有するペプチド修飾の他の例は、例えば、国際公開公報第2004029081
号、第03086444号、第03049684号、第0145746号、第0103723号及び第9101743号に説明さ
れている。
【0041】
本発明は更に、本発明のペプチドもしくはポリペプチドを含む抗体、又は本発明のペプ
チドもしくはポリペプチドの活性を模倣する抗体を提供する。このような抗体は、ポリク
ローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト
化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab')2断片、ジスルフィド結合Fvs、及び
本発明のポリペプチドに特異的に結合するVL又はVHドメインのいずれか、更には相補性決
定領域(CDR)を含む断片を含むが、これらに限定されるものではない。別の実施態様に
おいて、抗体は、当該技術分野において公知である様々なファージディスプレイ法を用い
作成することもできる。Fab、Fab'及びF(ab')2断片を組換えにより作成する技法は同じ
く、PCT国際公開公報第92/22324号;Mullinaxらの論文、Biotechniques、12(6):864-8
69(1992);及び、Sawaiらの論文、AJRI、34:26-34(1995);及び、Betterらの論文、
Science、240:1041-1043(1988)(これらは各々全体が本願明細書に参照として組入れ
られている。)に明らかにされた方法のような、当該技術分野において公知の方法を用い
、利用することができる。単鎖Fvs及び抗体を作成するために使用することができる技法
の例は、米国特許第4,946,778号及び第5,258,498号;Hustonらの論文、Methods in Enzym
ology、203:46-88(1991);Shuらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:7995-799
9(1993);及び、Skerraらの論文、Science、240:1038-1040(1988)に明らかにされて
いる。ヒトにおける抗体のin vivo使用及びin vitro検出アッセイを含むいくつかの用途
のために、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体を使用することが好ましい。キメラ抗
体は、マウスのモノクローナル抗体由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン由来の定常領
域を有する抗体のような、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメ
ラ抗体の作出法は、当該技術分野において公知である。例えば、Morrison、Science、229
:1202(1985);Oiらの論文、Biotechniques、4:214(1986);Gilliesらの論文、J. I
mmunol. Methods、125:191-202(1989);米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;及
び、第4,816,397号を参照し;これらは全体が本願明細書に参照として組入れられている
。ヒト化抗体は、非-ヒト種由来の1個以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブ
リン分子由来のフレームワーク領域、又は本発明の場合はTREM-1蛋白質由来の1個以上のC
DRを有する、所望の抗原に結合する非-ヒト種由来の抗体分子である。当該技術分野にお
いて公知であるように、ヒトフレームワーク領域内のフレームワーク残基は、CDRドナー
抗体由来の対応する残基により置換することができ、抗原結合を変更、好ましくは改善す
る。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野において周知の方法、例えばCDR及び
フレームワーク残基の相互作用のモデリングにより同定され、抗原結合、及び配列比較に
重要なフレームワーク残基を同定し、特定位置での普通でないフレームワーク残基を同定
する。例えば、Queenらの米国特許第5,585,089号;Riechmannらの論文、Nature、332:32
3(1988)を参照し、これらは全体が本願明細書に参照として組入れられている。抗体は
、例えば、CDR-移植片(grafting)(欧州特許第EP239,400号;PCT国際公開公報第91/099
67号;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号及び第5,585,089号)、薄板化(veneering
)又は再表面作成(resurfacing)(欧州特許第EP 592,106号;第EP 519,596号;Padlan
の論文、Molecular Immunology、28(4/5):489-498(1991);Studnickaらの論文、Pro
tein Engineering、7(6):805-814(1994);Roguskaらの論文、Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA、91:969-973(1994)、並びに鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含
む、当該技術分野において公知の様々な技法を使用し、ヒト化することができ、これらは
その全体が本願明細書に参照として組入れられている。
【0042】
完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置にとって特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免
疫グロブリン配列に由来した抗体ライブラリーを用い、先に説明されたファージディスプ
レイ法を含む、当該技術分野において公知の様々な方法により作成することができる。米
国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;及び、PCT国際公開公報第98/46645号;第98/50
433号;第98/24893号;第98/16654号;第96/34096号;第96/33735号;及び、第91/10741
号を参照し、これらはその全体が本願明細書に参照として組入れられている。ヒト抗体は
、トランスジェニックマウスを用い作出することもできる(Lonberg及びHuszar、Int. Re
v. Immunol.、13:65-93(1995)参照)。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を作出す
る技術及びそのような抗体を作出するプロトコールに関する詳細な考察については、例え
ばPCT国際公開公報第98/24893号;第92/01047号;第96/34096号;第96/33735号;欧州特
許第EP0 598 877号;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,
825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;第5,885,793号;第5,916,771号
;及び、第5,939,598号を参照し;これらは全体が本願明細書に参照として組入れられて
いる。加えて、Abgenix社(フリーモント、CA)、Medarex社(NJ)及びGenpharm社(サン
ディエゴ、CA)などの会社は、先に説明された技術に類似した技術を用い、選択された抗
原に対するヒト抗体を提供することを保証している。選択されたエピトープを認識する完
全なヒト抗体は、「ガイド付き選択」と称される技法を用い作成される。この方法におい
て、選択された非-ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体は、同じエピトープを認
識する完全なヒト抗体の選択のガイドとして使用される(Jespersらの論文、Bio/technol
ogy、12:899-903(1988))。異種ポリペプチドに融合又は複合された抗体は、当該技術
分野において周知の、in vitroイムノアッセイ及び精製法(例えばアフィニティークロマ
トグラフィー)において使用されてもよい。例えば、PCT国際公開公報第93/21232号;欧
州特許第EP 439,095号;Naramuraらの論文、Immunol. Lett.、39:91-99(1994);米国
特許第5,474,981号;Gilliesらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:1428-1432(1
992);及び、Fellらの論文、J. Immunol.、146:2446-2452(1991)を参照し、これらは
本願明細書に参照として組入れられている。
【0043】
別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドに結合又はその活性を変化する化
合物又はリガンドを同定する方法を提供する。このような方法は、被験化合物の存在又は
非存在下におけるポリペプチドの生物学的活性を測定すること、ポリペプチドの生物学的
活性を変更(増加又は減少)する被験化合物を同定することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ひとつの実施態様において、本発明は、生体活性分子及び本発明のポリペプチド又はそ
れらの断片の1種以上のドメインを含む融合蛋白質を提供する。特に本発明は、本発明の
ポリペプチド又はそれらの断片の1種以上のドメインへ、組換えにより融合された又は化
学的に複合された(共有的及び非-共有的複合の両方を含む)生体活性分子を含む融合蛋
白質を提供する。
本発明は更に、融合蛋白質を作成するために、本発明のポリペプチド又はそれらの断片
が、異種ポリペプチド(すなわち、無関係のポリペプチド又はそれらの一部、好ましくは
ポリペプチドの少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも
50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90又は少なくとも100個の
アミノ酸)へ、組換えにより融合された又は化学的に複合された(共有的及び非-共有的
の両方を含む)、融合蛋白質を包含している。この融合は、必ずしも直接である必要はな
く、リンカー配列を介して生じることができる。
【0045】
ひとつの例において、融合蛋白質は、本発明のポリペプチド又はそれらの断片が様々な
種類の免疫グロブリンに由来した配列に融合されている。例えば、本発明のポリペプチド
は、ヒトIgG1又はIgM分子の定常領域(例えば、ヒンジ、CH2、及びCH3ドメイン)に融合
され(例えばHudson及びSouriauso、Nature Medicine、9(1):129-134(2003)に説明
されたように)、その結果in vivoにおいてより可溶性及び安定性の融合ポリペプチド又
はそれらの断片を作成する。抗体断片の短い半減期は、「PEG化」、すなわちポリエチレ
ングリコールへの融合によっても延長することができる(Leong, S.R.らの論文、Cytokin
e、16:106-119(2001)参照)。このような融合の一例において、国際公開公報第018352
5号に開示されたように、Fcドメインは、生物学的活性ペプチドに融合される。医薬とし
て活性のある化合物は、Fcドメインの、選択されたペプチドの少なくとも1個のアミノ酸
への共有結合により作成される。ビヒクルへの結合は、そうでなければin vivoにおいて
迅速に分解されるペプチドの半減期を増大する。
【0046】
あるいは、非-古典的代替蛋白質スカフォールド(例えば、Nygren及びSkerra、 J Immu
nol Methods、290(1-2):3-28(2004)又は国際公開公報第03049684号参照)を用い、
例えば、TREM-1 CDR2又はCDR3由来のペプチド配列を蛋白質フレームワークへ挿入し、固
定された空間的配置において、CDR2又はCDR3と構造的/機能的類似性を有するコンホメー
ション上変動可能なループを支えることにより、本発明のペプチドを取込み、及びその特
性を複製することができる。
このような融合蛋白質又はスカフォールドベースの蛋白質は、本発明のポリペプチド又
はそれらの断片を認識する特異的抗体の作成のための免疫原として使用することができる
。別の好ましい実施態様において、リガンドとその受容体の間のin vivoにおける相互作
用を阻害するために、このような融合蛋白質又はスカフォールドベースの蛋白質を対象へ
投与することができる。このような相互作用の阻害は、敗血症及び敗血症ショックに関連
したある種の細胞反応をブロック又は抑制するであろう。
【0047】
ひとつの態様において、融合蛋白質は、そのN-末端で異種シグナル配列に融合された本
発明のポリペプチドを含む。様々なシグナル配列が市販されている。例えば、メリチン及
びヒト胎盤アルカリホスファターゼ(Stratagene社;ラホヤ、CA)の分泌配列は、真核細
胞異種シグナル配列として利用できる。原核細胞異種シグナル配列の例としての、phoA分
泌シグナル(Sambrookらの著書、前掲;及び、Current Protocols in Molecular Biology
、1992、Ausubelら編集、John Wiley & Sons社)及び蛋白質A分泌シグナル(Pharmacia B
iotech社;ピスカタウェイ、NJ)を挙げることができる。別の例は、バキュロウイルスエ
ンベロープ蛋白質のgp67分泌配列である(Current Protocols in Molecular Biology、19
92、Ausubelら編集、John Wiley & Sons社)。
【0048】
別の実施態様において、本発明のポリペプチドは、その多くは市販されているタグ配列
、中でも、例えばpQEベクター(QIAGEN社、9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)
において提供されたタグのような、ヘキサ-ヒスチジンペプチドに融合することができる
。Gentzらの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86:821-824(1989))に説明されるよ
うに、例えばヘキサ-ヒスチジンは、融合蛋白質の簡便な精製を提供する。ペプチドタグ
の別の例は、インフルエンザヘマグルチニン蛋白質に由来するエピトープに対応するヘマ
グルチニン「HA」タグ(Wilsonらの論文、Cell、37:767(1984))、及び「フラッグ」
タグ(Knappikらの論文、Biotechniques、17(4):754-761(1994))がある。これらの
タグは、組換えにより生成された本発明のポリペプチドの精製に特に有用である。
【0049】
融合蛋白質は、標準の組換えDNA技法又は蛋白質合成技法、例えばペプチド合成装置の
使用により作成することができる。例えば融合蛋白質をコードしている核酸分子は、自動
DNA合成装置を含む、従来の技法により合成することができる。あるいは、遺伝子断片のP
CR増幅は、ふたつの連続した遺伝子断片の間に相補的に突出したアンカープライマーを用
い実行し、これは引き続きアニーリング及び再増幅し、キメラ遺伝子配列を作成すること
ができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、1992、Ausubelら編集、J
ohn Wiley & Sons社参照)。融合蛋白質をコードしているヌクレオチド配列は、適当な発
現ベクター、すなわち、挿入された蛋白質のコード配列を転写及び翻訳するために必要な
エレメントを含むベクターへ挿入することができる。様々な宿主-ベクターシステム及び
選択システムが知られている。具体的実施態様において、融合蛋白質の発現は、構成性プ
ロモーターにより調節される。別の実施態様において、融合蛋白質の発現は、誘導性プロ
モーターにより調節される。これらの実施態様に従い、プロモーターは、組織-特異的プ
ロモーターであることができる。融合蛋白質をコードしている遺伝子の挿入断片を含む発
現ベクターは、以下の3種の一般的方法により同定することができる:(a)核酸ハイブリ
ダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在又は非存在、及び(c)挿入された
配列の発現。第一の方法において、発現ベクター中の融合蛋白質をコードしている遺伝子
の存在は、融合蛋白質をコードしている挿入された遺伝子に対しホモログである配列を含
むプローブを使用する核酸ハイブリダイゼーションにより検出することができる。第二の
方法において、組換えベクター/宿主システムは、ベクター内の融合蛋白質をコードして
いるヌクレオチド配列の挿入により引き起こされる、ある種の「マーカー」遺伝子機能(
例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにお
ける封入体形成など)の存在又は非存在を基に、同定及び選択することができる。例えば
、融合蛋白質をコードしているヌクレオチド配列が、ベクターのマーカー遺伝子配列内に
挿入される場合、融合蛋白質挿入断片をコードしている遺伝子を含む組換え体は、マーカ
ー遺伝子機能の非存在により同定することができる。第三の方法において、組換え発現ベ
クターは、組換えにより発現された遺伝子産物(すなわち、融合蛋白質)をアッセイする
ことにより同定することができる。このようなアッセイは、例えばin vitroアッセイシス
テムにおける融合蛋白質の生理的又は機能的特性、例えば、抗-融合蛋白質抗体への結合
などを基にすることができる。組換え蛋白質の長期にわたる高収率の生成のためには、安
定した発現が好ましい。例えば、融合蛋白質を安定して発現する細胞株を、操作すること
ができる。宿主細胞は、ウイルスの複製起点を含む発現ベクターの使用よりもむしろ、適
当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写終結因子、ポ
リアデニル化部位など)、並びに選択マーカーにより制御されたDNAで形質転換すること
ができる。外来DNAの導入後、操作された細胞は、強化培地において1〜2日間増殖され、
その後選択培地と交換される。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する抵抗
性をもたらし、細胞にプラスミドをそれらの染色体に安定して組込ませ、細胞増殖巣を形
成するまで増殖させ、次に細胞株へクローニングし及び増殖することができる。この方法
は有利なことに、異なるように発現された蛋白質又は経路遺伝子蛋白質を発現する細胞株
を操作するために使用することができる。このように操作された細胞株は、異なるように
発現される蛋白質又は経路遺伝子蛋白質の内因性活性に影響を及ぼす化合物のスクリーニ
ング及び評価において特に有用であることができる。一旦本発明の融合蛋白質が組換え発
現により作成されたならば、例えばクロマトグラフィー(例えばイオン交換クロマトグラ
フィー、特に特異的抗体に対するアフィニティーによる、アフィニティークロマトグラフ
ィー、サイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度、又はいずれか
他の蛋白質精製の標準技法などの、蛋白質の精製のための当該技術分野において公知の方
法のいずれかにより精製することができる。
【0050】
本発明は同じく、本発明のペプチド又はポリペプチドを投与することにより、敗血症、
敗血症ショック又は敗血症-様状態に罹患した対象を治療する方法も提供する。別の実施
態様において、このモジュレーターは、本発明のポリペプチドの活性を模倣する抗体であ
ることができる。特に本発明は、対象へ、先の請求項のいずれか1項記載のペプチド又は
ポリペプチドを治療有効量投与することを含む、対象において敗血症、敗血症ショック又
は敗血症-様状態を治療又は改善する方法を提供する。このような方法において、投与さ
れるペプチド又はポリペプチドは、配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19の配列と
実質的配列同一性を有することができるか、配列番号:3、4、6、7、16、17、18、もしく
は19であるか、又は配列番号:3、4、6、7、16、17、18、もしくは19の活性断片、アナロ
グもしくは誘導体であるか、又は配列番号:3、4、6、7、16、17、18、もしくは19と少な
くとも約80%の配列同一性を有する。
【0051】
ひとつの態様において、本発明は、本発明のペプチド又はポリペプチドを対象へ投与す
ることにより、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を予防する方法を提供する。
敗血症又は敗血症ショックのリスクのある対象は、例えば当該技術分野において公知の診
断アッセイ又は予防アッセイのいずれかにより同定することができる(特に診断に適した
方法については、国際公開公報第2004081233号、Gibotらの論文、Ann. Intern. Med.、14
1(1):9-15(2004)、及びGibotらの論文、N. Engl. J. Med.、350(5):451-8(2004
)参照)。本願明細書に説明された予防的物質は、例えば、先に考察されたような障害を
発症するリスクのある対象を治療するために使用することができる。本発明の方法は、哺
乳類、例えばヒト、非ヒト霊長類、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、イヌ、ネコ及び齧
歯類、例えばマウス及びラットに適用可能である。一般に、本発明の方法は、ヒト対象で
使用される。
【0052】
更に、本発明は、本発明のポリペプチド、又は本発明のポリペプチドを模倣するそれら
の抗体又は断片を含有する医薬組成物を提供する。本発明のペプチド、ポリペプチド及び
抗体(本願明細書において「活性化合物」とも称される)は、投与に適した医薬組成物に
混入することができる。このような組成物は典型的には、ペプチド、蛋白質、又は抗体及
び医薬として許容できる担体を含む。
本願明細書において使用される用語「医薬として許容できる希釈剤、担体又は賦形剤」
は、医薬投与に適合性のある、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張
化剤及び吸収遅延剤などのいずれか及び全てを含むことが意図されている。医薬として活
性のある物質のためのこのような媒体及び物質の使用は、当該技術分野において周知であ
る。従来の媒体又は物質がこの活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物中のそれ
らの使用が企図されている。補助的活性化合物も、この組成物に混入することができる。
【0053】
本発明は、本発明のペプチド又はポリペプチドを含有する医薬組成物を調製する方法を
含む。このような組成物は更に、追加の活性物質を含有することができる。従って本発明
は更に、本発明のペプチド又はポリペプチド及び1種以上の追加の活性化合物と共に医薬
として許容できる担体を製剤することによる、医薬組成物を調製する方法を含む。
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と適合性があるように製剤される。投
与経路の例は、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経皮(外用)、経粘膜、動脈内、腹
腔内、及び胸膜腔内、更には経口、吸入、及び経直腸投与がある。非経口、皮内、又は皮
下適用のために使用される溶液又は懸濁液は、下記の成分を含むことができる:滅菌希釈
剤、例えば注射用水、生理食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プ
ロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール、又はメチ
ルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤
、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩、
並びに張性調節剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、塩酸又は水酸化ナ
トリウムのような酸又は塩基により、調節することができる。非経口調製物は、ガラス又
はプラスチックで製造されたアンプル、ディスポーザブルシリンジ、又は反復投与用バイ
アル中に封入することができる。
【0054】
注射用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性である場合)又は分散剤及び滅菌
注射溶液又は分散液の用時調製のための滅菌散剤を含む。静脈内投与に関して、適当な担
体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF;パーシパニー、NJ)又はリン
酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、この組成物は、無菌でなければ
ならず、及び現存の注射器で容易に注射できる程度流動性でなければならない。これは、
製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、並びに細菌及び真菌のような微生物の混
入作用に対して保存されなければならない。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリ
オール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコー
ルなど)、及びそれらの適当な混合物を含む、溶媒又は分散媒であることができる。適当
な流動性を例えばレシチンのようなコーティングを使用することにより、分散剤の場合、
必要な粒子サイズを維持することにより、及び界面活性剤を使用することにより、維持す
ることができる。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノ
ール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤及び抗真菌剤により、実現する
ことができる。多くの場合、組成物中に、等張化物質、例えば、糖、マンニトール、ソル
ビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことは好ましいであろう。注射用
組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延する物質、例えばアルミニウムモノステア
レート及びゼラチンを含有することによりもたらされ得る。
【0055】
滅菌注射溶液は、活性化合物(例えば、ポリペプチド又は抗体)を必要量、単独で又は
必要に応じ先に列記した成分と組合せて、適当な溶媒中に混入し、引き続き滅菌濾過する
ことにより調製することができる。一般に分散剤は、活性化合物の、基本の分散媒及び先
に列記したものから必要なその他の成分を含有する滅菌溶剤への混入により調製される。
滅菌注射用溶液の調製のための滅菌散剤の場合、調製に好ましい方法は、予め濾過滅菌し
たそれらの溶液からの、活性成分に加えいずれか追加の所望の成分の散剤を生じる、真空
乾燥及び凍結乾燥である。
【0056】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤又は食用担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル
内に封入又は錠剤に圧縮することができる。経口治療用投与を目的として、活性化合物は
、賦形剤と混入することができ、及び錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形で使用され
る。医薬として適合性のある結合剤、及び/又はアジュバント材料は、この組成物の一部
として含有され得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、下記の成分、又は類
似の性質の化合物を含有することができる:結合剤、例えば微晶質セルロース、トラガカ
ントガム又はゼラチン;賦形剤、例えばデンプン又は乳糖;崩壊剤、例えばアルギン酸、
Primogel、又はコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はSterot
es;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばショ糖又はサッカリン
;もしくは、矯味矯臭剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ風味。
【0057】
吸入投与のために、この化合物は、例えば、二酸化炭素などの気体のような、適当な噴
射剤を含有した加圧された容器もしくはディスペンサー、又はネブライザーから、エアロ
ゾルスプレーの形で送達される。
全身投与は、経粘膜又は経皮手段によっても行うことができる。経粘膜又は経皮投与に
関して、浸透されるべき障壁に適した浸透剤が、製剤において使用される。このような浸
透剤は、一般に当該技術分野において公知であり、例えば経粘膜投与のためには、デター
ジェント、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔内スプレー又は
坐剤により実現することができる。経皮投与に関して、活性化合物は、当該技術分野にお
いて一般に公知である軟膏剤、塗り薬(salve)、ゲル剤又はクリーム剤に製剤される。
これらの化合物は、直腸送達のために、坐剤(例えば、通常の坐薬用基剤、例えばココア
バター及び他のグリセリドを伴う)又は持続性浣腸剤の形で調製することもできる。
【0058】
ひとつの実施態様において、これらの活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセ
ル送達システムを含む制御された放出製剤のような、迅速な体からの排泄に対し化合物を
保護する担体と共に調製される。酢酸ビニルエチレン、ポリアンヒドリド、ポリグリコー
ル酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような、生分解性で生体適合性
のポリマーを、使用することができる。このような製剤を調製する方法は、当業者には明
らかであろう。これらの材料は、Alza社及びNova Pharmaceuticals社から市販されてもい
る。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体による、感染細胞へ標
的化されたリポソームを含む)も、医薬として許容できる担体として使用することができ
る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に開示されているような、当業者に公知
の方法により調製することができる。
【0059】
投与の簡便さ及び用量の均一性のために単位剤形で経口又は非経口組成物を製剤するこ
とは、特に有利である。本願明細書において使用されるような単位剤形は、治療される対
象のための単一の用量として適している物理的に個別の単位を意味し;各単位は、所望の
治療的作用をもたらすように算出された予め定められた量の活性化合物を、必要な医薬担
体と共に含有する。本発明の単位剤形の規格は、活性化合物の独自の特性及び達成される
べき具体的治療的作用、並びに個体の治療のための活性化合物のような配合技術に固有の
制限により指示又は直接決定される。
【0060】
本願明細書に定義されたように、蛋白質又はポリペプチドの治療有効量(すなわち、有
効量)は、約0.001〜30 mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25 mg/kg体重、より好ましくは
約0.1〜20 mg/kg体重、及び更により好ましくは約1〜10 mg/kg、2〜9 mg/kg、3〜8 mg/kg
、4〜7 mg/kg、又は5〜6 mg/kg体重の範囲である。
抗体に関して、好ましい用量は、0.1 mg/kg〜100 mg/kg体重(一般に、10 mg/kg〜20 m
g/kg)である。抗体が脳に作用する場合は、用量50 mg/kg〜100 mg/kgが通常適している
。一般に、部分的ヒト抗体及び完全なヒト抗体は、ヒトの体内で他の抗体よりも長い半減
期を有する。従って、より低い用量及びより少ない投与回数が可能になることが多い。脂
質化のような修飾を用い、抗体を安定化させ、取込み及び組織浸透(例えば脳への)を促
進することができる。抗体の脂質化の方法は、Cruikshankらの論文(J. Acquired Immune
Deficiency Syndromes and Human Retrovirology、14:193(1997))に記載されている

【0061】
この医薬組成物は、容器、パック又はディスペンサー内に、投与に関する使用説明書と
共に、入れることができる。
本発明は更に、本発明の発明的ペプチドもしくはポリペプチド、又は本発明のポリペプ
チドを模倣するそれらの抗体もしくは断片を、好ましくは例えば敗血症、敗血症ショック
又は敗血症-様状態の治療における使用説明書と共に備えたキットを提供する。
【0062】
本発明は、本発明のポリペプチドを模倣するか、又は例えば本発明のポリペプチドの活
性の刺激作用もしくは阻害作用を有するモジュレーター、すなわち、候補物質又は被験化
合物もしくは物質(例えば、ペプチド、ペプチド擬態、小分子又は他の薬物)を同定(又
はスクリーニング)する方法を提供する。特に本発明は、敗血症、敗血症ショック又は敗
血症-様状態を治療するための、化合物又は組成物をスクリーニングする方法を提供し;
これは、TREM-1ペプチドを提供すること;盲腸結紮穿刺モデル(又は、本願明細書に説明
されたもしくは当該技術分野において公知の他のアッセイを使用し)において動物を、TR
EM-1ペプチドと接触すること;敗血症の変化が存在するかどうか決定することを含み、例
えば、生存の増加は、TREM-1ペプチドが敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の治
療に有用であり得ることを示す。
本発明は更に、前述のスクリーニングアッセイにより同定された新規物質及び本願明細
書に説明されたような治療のためのそれらの使用に関する。
【0063】
本願明細書に列記された、特許及び特許出願を含むが、これらに限定されるものではな
い全ての刊行物は、各々個々の刊行物が、完全に説明されるように本願明細書に参照とし
て組入れられていることが具体的かつ個別に示されるように、本願明細書に参照として組
入れられている。
本発明の各態様の好ましい特徴は、必要な変更を加え、互いの態様に適応される。
本発明は、ここで下記の限定的でない実施例を参照し、図面を基に説明される。
【実施例】
【0064】
(実施例1):TREM-1ペプチドはマウスを敗血症ショックによる死亡から保護する
下記基準に合致するTREM-1ペプチドを合成した:i)ヒト及びマウスTREM-1の間の最高
の相同性、並びにTREM-2との最低の相同性;ii)TREM-1の相補性決定領域(CDR)に広が
るペプチド。公表されたTREM-1の結晶構造、及び抗体との類似点に従い、これらの残基は
、おそらくコグネイトリガンド認識に関与しているであろう(Radaevらの論文、Structur
e(Camb)、Dec;11(12):1527-35(2003)、及びKelkerらの論文、J. Mol. Biol.、Sep
24;342(4):1237-48(2004))(図1参照)。1種のペプチド(P1)はCDR2領域で、3
種のペプチド(P2、P4及びP5)はCDR3領域でデザインした。第四のペプチド(P3)は、V-
型免疫グロブリン(Ig)-様ドメイン(Ig-V)を膜貫通ドメインに接続している首領域で
デザインした。TREM-1とTREM-2の間の高い配列相同性のために、CDR1領域ではペプチドを
デザインしなかった。
【0065】
従って下記TREM-1蛋白質ペプチドが、University of LausanneのInstitute of Biochem
istryのProtein and Peptide Chemistry Facilityにおいて配列され、合成及び精製され
た:
P1 (CDR2 67-89) LVVTQRPFTRPSEVHMGKFTLKH [配列番号:3]
P2 (CDR3 114-136) VIYHPPNDPVVLFHPVRLVVTKG [配列番号:4]
P3 (首領域168-184) TTTRSLPKPTAVVSSPG [配列番号:5]
P4 (CDR3 103-123) LQVTDSGLYRCVIYHPPNDPV [配列番号:6]
P5 (CDR3 103-119) LQVTDSGLYRCVIYHPP [配列番号:7]
P1sc* (P1スクランブル配列) LTPKHGQRSTHVTKFRVFEPVML [配列番号:8]
P5sc* (P5スクランブル配列) TDSRCVIGLYHPPLQVY [配列番号:9]
*これは、コントロールペプチドであり、実際保護しない。
【0066】
本実施例の実験において、ペプチドは、示された溶液モル濃度を容量200μlで投与した
。TREM-1ペプチドがマウスをLPSが誘導した内毒素血症から保護する能力を評価するため
に、本発明者らは、ペプチドP1、P2、P3、及びP5(300μM)を、致死量のリポ多糖(LPS
)の1時間前に投与した(図2)。死亡率を、経時的にモニタリングし、溶剤単独の対照注
射を受け取った動物と比較した。P5注射は、最大の保護をもたらし、コントロールマウス
の10%と比べ、動物の90%がLPS注射後更に7日間生存した(p<0.001)。コントロールマ
ウスの10%に対し、P1-処置したマウスの60%及びP2処置したマウスの50%が、内毒素血
症で生存した(各々、p<0.01及びp<0.05)。興味深いことに、P3-処置したマウスは全
て、LPS注射後4日以内に死亡した。これらの結果は、推定リガンド結合部位(CDR2及びCD
R3)に対応するTREM-1の細胞外部分の配列を含むペプチドは、マウスを致死性のショック
から保護することができることを示している。
【0067】
TREM-1ペプチド治療をLPS投与後まで遅らせることができるかどうかを調べるために、
本発明者らは、これらのペプチドをLPS注射後4時間で注射した。P1の場合のみ、この遅延
された治療は、致死量のLPSに対し有意な保護をもたらした(図3)。LPSの4時間後にP1注
射したマウスの80%が、内毒素血症で生存したのに対し、LPSの1時間前に処置したマウス
の60%及び溶剤単独で処置したマウスの10%が生存した(各々、p<0.001及びp<0.01)
。従って、P1は、例え内毒素血症の発生後の注射であっても、有効である。1週間にわた
り、遅れた死亡例は生じず、このことは、P1は単にLPS死亡の発生を遅延するのみではな
く、持続した保護を提供することを示している。P1投与は、600μM投与時に最大の保護(
80%)をもたらし(p<0.01)、及びこの保護レベルは、300μMで50%に下落し(p<0.05
)、更に150μMで30%に低下し、コントロールマウスでは20%であり、このことはP1の用
量依存性の作用を示している(図4)。次に本発明者らは、「CLP」モデル(盲腸結紮穿刺
は広範に使用される敗血症実験モデルである。)において、P1は敗血症ショックに対し保
護するかどうかを調べた。CLP後5及び24時間の時点で、2種のP1用量で処置されたマウス
は、対照で処置したマウスと比べ、死亡から保護された(p=0.0791)が、その差異には
統計学的有意性はなかった。CLP後5日目に、P1注射したマウスの40%は生存したのに対し
、P3ペプチドで処置したマウスでは5%であった。CLP後10日目に、これらの処置したマウ
スは依然生存しており、このことは、P1は単に死亡を遅延するのみではなく、持続性の保
護を提供することを示している(図5)。
【0068】
(実施例2):TREM-1ペプチドP1は可溶性マウスTREM-1/IgGのTREM-1リガンド陽性細胞へ
の結合を阻害する
CLPにおいて試験したTREM-1由来のペプチドの中で、ペプチドP1、P2、及びP5は、保護
活性を示している。可能性のある作用機序は、TREM-1由来のペプチドの、TREM-1/TREM-1
リガンド相互作用を妨害する能力であろう。この疑問に対処するために、本発明者らは、
競合実験をTREM-1リガンド陽性細胞:CLP処置したマウスから得たPEC(腹膜滲出細胞)に
ついて行った。
【0069】
盲腸結紮穿刺(CLP)が誘導した腹膜炎に罹患したマウスから得た腹膜滲出細胞(PEC)
又は末梢血細胞を、可溶性マウスTREM-1/IgG1キメラ、又は対照IgG1とインキュベーショ
ンした後、フローサイトメトリー分析を施した。その後結合を、FITC-染色した抗-ヒトIg
G1(Jackson Laboratory社、バーハーバー、USA)を用い明らかにした。細胞は、PE-複合
した抗-GR1又は抗-Ly-6G(BD Bioscience社、ミラノ、イタリア)で、二重染色した。TRE
M-1ペプチドとの競合を、mTREM-1-IgG1の添加前に、細胞を指示された濃度のペプチドと4
5分間、氷上でプレ-インキュベーションすることにより行った。感度を増大するために、
一部の染色は、下記のように作成した四量体化されたTREM-1/IgG1を用いても行った:各
染色試料に関して、8μg mTREM-1/IgG1又は対照IgG1を、Alexa 488-コンジュゲートプロ
テインA(Molecular Probes社、ブリュッセル、ベルギー)と共に、モル比4:1で、30分
間、PBS/BSAの0.5%緩衝液中、室温暗所において複合体化した。プロテインA抗体の非特
異的結合部位を完全にブロックするために、この溶液に、追加のヒトIgG1(10μg)を添
加した。
【0070】
図6に示されたように、mTREM-1のCDR2領域由来のP-1ペプチド、並びにCDR3領域に広が
るP2及びP5ペプチドは、TREM-1のそのリガンドとの相互作用を、用量依存的に阻害した。
対照的に、膜貫通ドメインにIgG様部分を接続しているTREM-1首領域に由来するP3ペプチ
ドは、無効であった。
【0071】
(実施例3):TREM-1ペプチドP5によるマウス敗血症における炎症反応の変化に関する追
加試験方法
(末梢血からの単球の調製)
末梢血試料10mLを、実験室スタッフ5名の健常志願者ドナーからEDTA-Kで採取した。RPM
I(Life Technologies社、グランドアイランド、NY)中に希釈(v/v)後、Ficoll勾配(A
mersham Pharmacia社、ウプスラ、スウェーデン)上、室温で30分間遠心し、PBMCを分離
した。勾配の上部に回収された細胞を、洗浄し、計測した。リンパ球浮遊液を涸渇するた
めに、次に細胞を、24-ウェル平底組織培養プレート(Corning社、コーニング、NY)に、
濃度5x106/mLで播種し、2時間かけて37℃で接着させた。得られるリンパ球浮遊液を廃棄
し、接着している単球細胞を、10%FCS(Invitrogen社、セルギー、フランス)を補充し
た完全培地(RPMI 1640、0.1mMピルビン酸ナトリウム、2mMペニシリン、50μg/mLストレ
プトマイシン;Life Technologies社)において、5%CO2恒温培養器中で37℃で維持した

【0072】
(TREM-1ペプチド)
Gen-BankのヒトTREM-1配列(寄託番号AF287008)及びマウスTREM-1配列(AF241219)を
使用し、ペプチド「P5」(LQVTDSGLYRCVIYHPP;[配列番号:7])を、C-末端がアミド化さ
れたペプチドとして化学的に合成した(Pepscan Systems社、レーリスタッド、オランダ
)。正確なペプチドを、収率99%以上で得、これは計算した質量は1962Daであるのに対し
測定した質量は1961Daであり、分取精製後均質であることが、質量分析及び分析用逆相高
速液体クロマトグラフィーにより確認された。P5と同じアミノ酸を含むが配列の順番が異
なるペプチド「P5sc」(TDSRCVIGLYHPPLQVY;[配列番号:9])を、同様に合成し、「コン
トロールペプチド」として利用した。
【0073】
(単球のin vitro刺激)
活性化のために、単球を、大腸菌LPS(O111:B4、1μg/mL、Sigma-Aldrich社、ラベル
ピレール、フランス)の存在下で培養した。細胞生存力を、トリパンブルー排除及び乳酸
デヒドロゲナーゼ放出の測定により評価した。一部の実験において、この刺激は、TNF-α
(5〜100 ng/mL、R&D Systems社、リル、フランス)、lL-1β(5〜100 ng/mL、R&D Syste
ms社)、rIFN-γ(最大100 U/mL、R&D Systems社)、rlL-10(500 U/ml、R&D Systems社
)又はP5もしくはコントロールペプチド最大100 ng/mLを組合せて行った。単球をTREM-1
により活性化するために、抗-TREM-1アゴニストモノクローナル抗体(R&D Systems社)を
下記のように添加した:平底プレートを、1ウェルにつき抗-TREM-1 10μg/mLで予めコー
トした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した後、単球浮遊液を、先と同じ濃度で添
加した。一部の実験は、プロテアーゼインヒビター(PMSF及びプロテアーゼカクテルイン
ヒビター;Invitrogen社)の存在下で行った。細胞-非含有上清を、TNF-α及びlL-1βの
生成について、製造業者(BD Biosciences社、サンディエゴ、USA)の推奨に従いELISAに
よりアッセイした。単球のNF-kB活性に対するP5の作用を説明するために、ELISA-ベース
のアッセイを行った(BD Mercury(商標)Transfactor Kit、BD Biosciences社)。単球
を、大腸菌LPS(O111:B4、1μg/mL)、及び/又はアゴニスト抗-TREM-1モノクローナル
抗体(10μg/mL)、及び/又はP5(100 ng/mL)の存在下で、24時間培養した。次に全細
胞抽出物を調製し、NF-kB p50及びp65のレベルを、製造業者の推奨に従い決定した。全て
の実験は、3つ組で行い、データは平均(SEM)で表した。
【0074】
(sTREM-1放出の同定及び定量)
初代単球浮遊液を、前述のように培養した。これらの細胞を、大腸菌LPS(O111:B4、1
μg/mL)により37℃で24時間処理した。抗-TREM-1により認識された27kDa物質の存在を確
認するために、細胞-馴化培地に、抗-TREM-1モノクローナル抗体(R&D Systems社)を使
用するウェスタンブロットを行った。可溶性TREM-1レベルを、別所記載(18)のように、
反射型スキャナー及びQuantity One Quantitation Software(Bio-Rad社、セルギー、フ
ランス)によりイムノドット上のバンドの光学強度を評価することにより測定した。各試
料からの可溶性TREM-1濃度は、試料の光学濃度を、精製したTREM-1で作成された標準曲線
参照と比較することにより決定した。全ての測定は、3つ組で行った。この技術の感度は
、5 pg/mLと低いsTREM-1レベルの検出を可能にした。
【0075】
(TREM-1 RT-PCR)
総mRNAを、TRIzol試薬(Invitrogen社)を用いLPSの存在下で培養された初代単球から
抽出し、Superscript RT II(Invitrogen社)を用い逆転写し、cDNAを作成した。全ての
反応に使用したRT-PCR条件は、94℃、30秒/65℃、30秒/68℃、1分間を30サイクルであ
った。増幅は、2.5 mM MgCl2、0.2 mM dNTP、2.0 U Taqポリメラーゼ、並びに20 pM 5'及
び3'オリゴヌクレオチドプライマー(Proligos社、パリ、フランス)で行った。
【0076】
使用した5'及び3'プライマー対の配列は下記であった:
TREM-1(17)について
TTGTCTCAGAACTCCGAGCTGC;[配列番号:10]、及び
GAGACATCGGCAGTTGACTTGG;[配列番号:11]。
TREM-1sv(19)について
GGACGGAGAGATGCCCAAGACC;[配列番号:12]、及び
ACCAGCCAGGAGAATGACAATG;[配列番号:13]。
β-アクチン(ハウスキーピングアンプリコンとして使用)について
GGACGACATGGAGAAGATCTGG;[配列番号:14]、及び
ATAGTAATGTCACGCACGATTTCC;[配列番号:15]。
PCR産物は、アガロースゲル上を流し、臭化エチジウム染色により可視化した。
【0077】
(マウスのLPS-誘導した内毒素血症)
地域の倫理委員会が承認した後、雄のBalb/Cマウス(20〜23 g)を、無作為に群別し、
LPSチャレンジ前後のP5(通常の生理食塩水500μl中)又はコントロールベクターと組合
せ、大腸菌LPSで腹腔内(i.p.)処置した。一部の実験において、抗TREM-1モノクローナ
ル抗体5μgを、LPS注射後1時間でi.p.投与した。マウスの生存力を、毎時間試験するか、
又は動物を一定期間で屠殺した。血清試料を、心臓穿刺により採取し、TNF-α及びlL-1β
について、ELISA(BD Biosciences社)で、及びsTREM-1レベルについてイムノドットでア
ッセイした。
【0078】
(CLPの複数菌による敗血症モデル)
雄のBalb/Cマウス(7〜9週齢、20〜23 g)を、0.2 mL滅菌パイロジェン-非含有生理食
塩水中のケタミン及びキシラジンのi.p.投与により麻酔をかけた。1.0 cmの腹部正中切開
により盲腸を露出し、先端部の半分で(distal half)結紮し、その後G21針で2箇所に穿
孔した。少量の糞便を、穿孔から排出し、開通性を確認した。盲腸を腹腔に戻し、腹部切
開を二層縫合した。手術後、全てのマウスに、輸液蘇生のために、0.5 ml生理食塩水を注
射し、イミペネム1.25 mg(すなわち50μg/g)を12時間毎にs.c.注射した。これらの動物
を無作為に群別し、通常の生理食塩水(n=14)、コントロールペプチド(n=14、100μg
)又はP5(100μg)を、H0(n=18)、H+4(n=18)又はH+24(n=18)に単回注射する
ことにより処置した。最後の群のマウス(n=18)は、P5(100μg)を、H+4、H+8、及
びH+24に反復注射することにより処置した。全ての処置は、通常の生理食塩水500μlに
希釈し、i.p.投与した。本発明者らは次に、様々な用量のP5の作用を決定しようとした。
この目的のために、マウス(n=15/群)を、生理食塩水又はP5の10μg、20μg、50μg、1
00μgもしくは200μgのCLP 後H0での単回注射により処置し、生存をモニタリングした。1
群につき追加動物5匹を、CLPの24時間後に麻酔下で屠殺し、細菌数及びサイトカインレベ
ルを決定した。2 mL RPMI 1640(Life Technologies社)を用い腹膜洗浄液を得、心臓穿
刺により血液を収集した。血清中のTNF-α及びlL-1βの濃度を、ELISA(BD Biosciences
社)により決定した。細菌数の評価のために、血液及び腹膜洗浄液を、連続対数希釈し、
5%ヒツジ血液を補充したトリプシン処理したダイズ寒天プレートに播種した。播種後、
トリプシン処理したダイズ寒天プレートを、37℃で好気性に24時間、嫌気性に48時間イン
キュベーションした。結果は、血液についてのCFU/mL及び腹膜洗浄液についてのCFU/マウ
スとして表した。
【0079】
(統計解析)
血清sTREM-1及びサイトカインレベルを、平均(±SD)として表した。P5によるLPS死亡
率に対する保護は、Log-Rank検定を用い、生存曲線の比較により評価した。全ての統計解
析は、Statviewソフトウェア(Abacus Concepts社、バークレー、CA)により完了し、及
び両側P<0.05を有意とみなした。
【0080】
(結果)
(可溶型TREM-1は、大腸菌LPSによる刺激後、培養したヒト単球から放出される)
sTREM-1のin vitroにおける放出の可能性を確定するために、本発明者らは、ヒト単球
をLPSで刺激し、SDS-PAGEにより馴化培養培地を分析した。LPS刺激は、時間依存型で27-k
Da蛋白質の出現を誘導した(図7A)。ウェスタンブロット分析は、この蛋白質は、TREM-1
の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体により特異的に認識されたことを明らかに
した(図7A)。細胞生存力は、馴化培地中のsTREM-1の存在を誘導したLPS濃度では影響を
受けず、このことは、TREM-1放出は、細胞死に起因するものではないことを示している。
同様に、単球のプロテアーゼインヒビターによる処置は、TREM-1放出に影響を及ぼさなか
った(図7A)。TREM-1 mRNAレベルは、LPS処置時に増加した(図7B)のに対し、TREM-1sv
mRNAレベルは依然検出不能であった。このことは、TREM-1放出はおそらく、その遺伝子
の転写増大に関連し、TREM-1sv発現とは無関係であることを示している。TNF-α(5〜100
ng/mL)又はlL-1β(5〜100 ng/mL)による単球の16時間の刺激は、サイトカインの用量
に依存した方式で非常に少量のTREM-1放出を誘導した。IFN-γは、最大濃度100 U/mLであ
っても、TREM-1放出を誘導しなかった。
【0081】
(前炎症性サイトカインのLPS関連した放出はP5により減弱される)
有意なTNF-α及びlL-1β生成は、LPSと共に培養された単球の上清において観察された
。TNF-α及びlL-1β生成は、TREM-1 mAb及びLPSの両方と共に培養された細胞の方が、mAb
又はLPS単独と共に培養されたものと比べて、更により高かった(図8A)。前炎症性サイ
トカインの誘導性放出は、培地にP5又はlL-10が補充された場合、LPS刺激後有意に低下し
た。P5は、濃度依存した方式で、LPS又はLPS及びmAbと共に培養された細胞からのTNF-α
及びlL-1β生成を低下し、同時にLPSと共に培養した細胞からのsTREM-1放出を増加した。
コントロールペプチドは、サイトカイン又はsTREM-1放出に対する作用を示さなかった(
データは示さず)。際だって対照的なことに、lL-10はTREM-1及び炎症性サイトカインの
両方の放出を全般的に阻害した(図8A)。LPS及びTREM-1 mAbの両方は、単球NF-kB p50及
びp65の強力な活性化を誘導し、並びにLPS及びTREM-1 mAbの併用投与は、相乗作用につな
がっている。P5は、TREM-1の結合により誘導されたNF-kB活性化を阻害したが、LPSの作用
は変更しなかった(図8B)。
【0082】
(LPS-処置したマウスの血清sTREM-1レベルは増加する)
sTREM-1は、マウスにおいて内毒素血症時に全身放出されるかどうかを決定するために
、本発明者らは、LPS投与後の血清sTREM-1レベルを測定した。血清sTREM-1は、LPSのLD50
用量投与後1時間で容易に検出可能であり、LPS処置後4〜6時間はピークプラトーレベルに
維持された(図9)。
【0083】
(TREM-1ペプチド「P5」は内毒素血症マウスを死亡から保護する)
LPS致死量(LD100)投与の60分前にP5の単回用量により処置されたマウスは、用量依存
方式で死亡から保護された(図10A)。P5処置を、LPS投与後まで遅延できるかどうかを調
べるために、本発明者らは、LPS注射後4又は6時間でP5注射を開始した。この最大4時間遅
延された処置は、LD100用量のLPSに対する有意な保護をもたらした(図10B)。遅れた死
亡例は1週間にわたり生じず、このことは、P5は、LPS死亡の発生が単に遅延されるのみで
はなく、持続性の保護を提供することを示している。コントロールマウスは全て、死亡前
に嗜眠、起毛、及び下痢を生じた。対照的にP5-処置マウスは、よく毛繕いし活動的であ
り、下痢をせず、活発であった。P5がマウスをLPS死亡から保護する機序を明確にするた
めに、本発明者らは内毒素血症マウスの血清レベルのTNF-α、lL-1β、及びsTREM-1を、2
及び4時間で決定した。対照と比較して、P5 100μgによる前処置は、表4に示されるよう
に、サイトカインレベルを30%低下し、sTREM-1レベルを2倍に増加した:
【0084】
【表4】

【0085】
(TREM-1の結合はマウスを死亡する)
更にLPS-媒介した死亡におけるTREM-1結合の役割に注目するために、マウスを、LD50
量のLPS投与と組合せて、アゴニスト抗-TREM-1 mAbで処置した。これは、死亡率の50%か
ら100%への有意な増加を誘導した(図10C)。
【0086】
(P5はマウスをCLP-誘導した死亡から保護する)
敗血症ショックのより関連性のあるモデルにおけるP5の役割を調べるために、本発明者
らは、CLP実験を行った(図11A)。対照群は、通常の生理食塩水又はコントロールペプチ
ドが注射されたマウスで構成された。この複数菌による敗血症モデルにおいて、敗血症発
症後24時間と遅く投与された場合にも、P5は依然、死亡に対する有意な保護をもたらした
。興味深いことに、P5の反復注射は、生存により好ましい作用を有した(P<0.01)。P5
の生存(図11B)及びサイトカイン生成(表5)に対する用量反応作用があった。P5は、細
菌クリアランスには作用を有さなかった(図12)。
【0087】
【表5】

【0088】
敗血症は、重度の感染症に対する有害な又は損傷を及ぼす宿主反応から生じる複雑な臨
床症候群を例示している。敗血症は、全身への感染症に対する最初の適当な宿主反応が増
幅され始めた時に発症し、その後調節不全となる(4, 5)。例えばLPSに曝露された好中
球及び単球/マクロファージは、活性化され、TNF-α及びlL-1βなどの前炎症性サイトカ
インを放出する。これらのサイトカインの過剰な生成は、敗血症患者において認められる
多臓器不全に寄与すると広く考えられている(20-23)。
TREM-1は、単球活性化及び炎症反応に関連した最近同定された分子である(12, 14)。
これは、下流のシグナル伝達事象を活性化するNK細胞受容体に関連したファミリーに属す
る。TREM-1のPNN及び単球/マクロファージ上での発現は、LPSにより誘導されることが示
されている(16, 17)。
【0089】
本願明細書に説明されたように、本発明者らは、可溶型TREM-1は、大腸菌LPSによる刺
激後、培養されたヒト単球から放出されたことを明らかにしている。このような可溶型は
、LPSチャレンジ後1時間と早い時期に、内毒素血症マウスの血清中にも検出可能であった
。これは、感染症に対する先天免疫応答の極初期相におけるTREM-1の関与と一致している
(14, 15, 24)。sTREM-1が放出される機序は、明確には解明されていないが、TREM-1遺
伝子の増大した転写に関連しているように見える。しかしながら、プロテアーゼインヒビ
ターカクテルとのインキュベーションはsTREM-1放出を変更しないが、表面TREM-1の膜か
らの切断は、完全には排除することができない。興味深いことに、ヒト単球のTNF-α、lL
-1β又はIFN-γのような前炎症性サイトカインによる刺激は、LPSが共刺激として添加さ
れなくとも、非常に少量のsTREM-1放出を誘導した。代わりのmRNA TREM-1スプライシング
変種(TREM-1sv)の発現が、単球において検出され、これはウシ型マイバクテリア(Myco
bacterium bovis)BCGの細胞壁画分で刺激時に、可溶性受容体へ翻訳することができるが
(18)、LPSではできない(25)。このことは、本試験において、i)LPSは、単球におけ
るmRNA TREM-1svレベルを増加しなかったこと、及びii)27-kDa蛋白質のみが、LPS刺激時
に単球により放出され、17.5-kDa変種は放出されなかったことから確認された。
【0090】
その天然のリガンドは同定されていないが(13, 14)、単球上のTREM-1のアゴニストモ
ノクローナル抗体との結合は、前炎症性サイトカイン生成の更なる増強を生じたのに対し
、P5は、これらの合成を濃度-依存様式で減少し、lL-10はこれを完全に抑制した。
炎症性サイトカイン、及び特にTNF-αは、有害であると考えられるが、損なわれたTNF-
α反応を伴う動物における腹膜炎の致命的問題により示されるように(9-11)、これらは
敗血症において有益な作用を有するとも考えられる(5)。更に臨床試験において、TNF-
αの阻害は死亡率を上昇した(8)。最後に、感染症のクリアランスにおけるTNF-αの役
割が、敗血症はTNF-αアンタゴニストで治療された関節リウマチ患者における頻出する合
併症であるという知見(26)により注目されている。
【0091】
P5がサイトカイン生成を変化する機序は、依然明らかではない。P5は、TREM-1の細胞外
ドメインの相補性決定領域(CDR)-3及び'F'β鎖を含む。後者は、二量体化を媒介するチ
ロシン残基を含む。Radaevらの論文は、TREM-1は、そのリガンドを、そのCDR-同等ループ
領域により捕獲する(27)ことを主張している。従ってP5は、TREM-1二量体化を損ない及
び/又はTREM-1の天然のリガンドと競合することができる。更に、P5により媒介された単
球からのsTREM-1放出の増加は、膜TREM-1の結合を防止し、TNF-αシステムにおけるよう
に、sTREM-1はデコイ受容体として機能する(28, 29)。転写因子NF-kBの活性化は、LPS
のような細菌刺激への曝露後の、単球炎症性サイトカイン生成において重要な工程である
(30, 31)。様々なNF-kB/Rel二量体の中で、p65/p50ヘテロ二量体は、単球におけるLPS-
誘導性NF-kBのプロトタイプ型である(32)。P5は、TREM-1の結合により誘導された、p65
/p50 NF-kBの過剰-活性化を廃止する。これはP5の、サイトカイン生成に対する作用、及
びLPS-誘導した敗血症ショックの前1時間又は最大4時間も後までにペプチドが注射された
場合に生じることがここで示された死亡からの保護に対する作用を、少なくとも部分的に
説明している。
【0092】
内毒素血症は、簡単に実験的に実現することができるが、ヒト敗血症を再現するために
は余り適しておらず、CLPにより誘導された複数菌敗血症は、より複雑であるがより良い
モデルである。従って後者が本試験において使用され、例え敗血症発症後24時間と遅れて
投与された場合であっても、P5により用量依存方式の保護が提供されることを確認した。
しかしP5の好ましい作用は、増強された細菌のクリアランスとは無関係であった。
【0093】
免疫調節療法の使用におけるひとつの難点は、敗血症の発症を予想することは不可能で
ある点であり、従ってこれらの治療を受ける患者は、既に十分敗血症が確立されているこ
とが多い(6)。P5は敗血症の発生後注射されたとしても有効であることが明らかである
ので、これは実際的な治療を構成することができる(24, 33)。
対照的に、TREM-1のアゴニスト抗-TREM-1モノクローナル抗体による結合は、LPS-チャ
レンジしたマウスにおける死亡率の劇的な増加を媒介し:これは更に、敗血症ショック時
のTREM-1結合の有害な作用を強調している。
【0094】
実験性敗血症ショックは、ヒト敗血症を一部のみ再現する。実際本発明者らのグループ
は最近、有意なレベルのsTREM-1が、敗血症に罹患した重症患者の血清中に放出され(34
)、最高レベルは生存患者において認められることを示した。これは、本発明者らの実験
の知見と一致し、sTREM-1放出のより大きい重要性、より好ましさが転帰であり、従って
持続性の、少なくとも理論的には可溶性TREMペプチドによる発症後の敗血症療法としての
可能性を示している。
【0095】
TREM-1は、感染症により誘発された即時型免疫応答における重要なプレーヤーであるよ
うに見える。感染の初期相において、好中球及び単球は、細菌産物によるパターン認識受
容体の結合に起因する炎症反応を開始する(3, 4)。同時に細菌産物は、sTREM-1のアッ
プレギュレーション及び放出を誘導する。未知のリガンドの認識時に、TREM-1は、特に単
球/マクロファージにおいて、これらの炎症反応を増幅するシグナル伝達経路を活性化す
る。TREM-1シグナル伝達の変化は、完全な阻害を伴わずに、サイトカイン生成を低下し、
並びに敗血症動物を過剰反応及び死亡から保護する。TREM-1結合のP5のようなペプチドに
よる変化は、特にこれは感染の攻撃に続く敗血症の発症後であっても活性があるように見
えるので、敗血症治療に適した治療道具である。
【0096】
(実施例4):P1及びP5により処置したLPS処置したラット及び敗血症ラットにおける血行
動態試験
敗血症ショックの更なるモデルにおけるTREM-1ペプチドの役割を、ラットにおいてLPS
及びCLP(盲腸結紮穿刺)実験を行うことにより調べた。
(材料及び方法)
(LPS-誘導した内毒素血症)
動物は、無作為に群別し(n=10〜20)、大腸菌LPS(O111:B4, Sigma-Aldrich社、リ
ヨン、フランス)の、TREM-1ペプチド又はスクランブルペプチドとの組合せのi.p.投与に
より処置した。
【0097】
(CLP複数菌による敗血症モデル)
この手法は、別所に詳細に説明されている(Mansart, A.らの論文、Shock、19:38-44
(2003)参照)。簡単に述べると、ラット(n=6〜10/群)を、ケタミン(150 mg/kg)の
i.p.投与により麻酔をかけた。3.0 cmの腹部正中切開により盲腸を露出し、先端部の半分
で結紮し、その後G21針で2箇所に穿孔した。少量の糞便を、穿孔から排出し、開通性を確
認した。盲腸を腹腔に戻し、腹部切開を二層縫合した。手術後、全てのマウスに、輸液蘇
生のために、50 ml/kgの通常の生理食塩水をs.c.注射した。TREM-1ペプチド又はスクラン
ブルペプチドを前述のように投与した。
【0098】
(ラットにおける血行動態測定)
LPS投与直後に加え、CLPの16時間後に、動脈血圧(BP)(収縮期、拡張期及び平均)、
心拍数、腹部動脈血流量、及び腸間膜血流量を、別所記載の方法を用い記録した(Mansar
t, A.らの論文、Shock、19:38-44(2003)参照)。簡単に述べると、左頚動脈及び左頚
静脈を、PE-50チューブでカニューレ挿管した。動脈BPを、圧変換器及び増幅器-記録シス
テム(IOX EMKA Technologies社、パリ、フランス)により連続モニタリングした。血管
周囲探子(Transonic Systems社、イタカ、NY)を、上腹部大動脈及び腸間膜動脈で包み
、それらの各流れを流量計(Transonic Systems社)により、モニタリングした。最後の
測定後(LPS実験時の4時間目、及びCLP時の24時間目)、動物を、過量のチオペンタール
ナトリウムのi.v.投与により屠殺した。
【0099】
(生物学的測定)
血液を、左頚動脈から逐次採取した。動脈血中乳酸濃度及び血液ガス分析を、自動血液
ガス分析装置(ABL 735、Radiometer社、コペンハーゲン、デンマーク)において行った
。血漿中のTNF-α及びlL-1β濃度を、ELISA試験(Biosource社、ニベル、ベルギー)によ
り製造業者の推奨に従い決定した。硝酸塩/亜硝酸塩の血漿濃度を、Griess反応(R&D Sys
tems社、アビンドン、英国)を用い測定した。
【0100】
(統計解析)
結果は、平均±SDとして表した。群間比較は、スチューデントt検定を用い行った。全
ての統計解析は、Statviewソフトウェア(Abacus Concepts, CA)を用いて完了し、及び
両側P<0.05を有意とみなした。
【0101】
(結果)
(内毒素血症モデル)
LPS投与後、動脈圧、大動脈及び腸管膜血流量は、コントロール動物(スクランブルペ
プチド処置したラット)において急激に低下したが、心拍数は変化しなかった(表6)。
動脈圧及び動脈血流量の低下は、TREM-1ペプチド処置した動物においては2時間目まで遅
延し、その時点までコントロール動物よりもより有意に高い値であった。P1とP5の処置群
間に差異はなかった。対照的に、これら2種のペプチドは、腸間膜血流量の減少に対する
作用を有さなかった(表6)。
【0102】
動脈pHは、LPS注射後4時間目まで経時的に一定であり続け、この時点でこれは対照群の
みで大きく低下した(表6)。3時間目でのコントロール動物に存在した有意な動脈血乳酸
レベル上昇は、TREM-1ペプチドにより排除された(表6)。P1とP5の間にpH、動脈血炭酸
塩及び乳酸濃度に関して差異は無かった。
予想されたように、TNF-α血漿濃度のピークは、注射後30分から1時間の間に、LPSによ
り誘導され、その後漸減した(図13A)。P-1ペプチド注射は、この生成に影響を示さなか
ったが、P5はTNF-α生成を〜30%減少した。
P1は、lL-1βピークをLPS注射後3時間目まで遅らせたが、減弱しなかった、対照的に、
P5は、lL-1β放出を強力に低下した(図13B)。
硝酸塩/亜硝酸塩濃度は、対照及びP1処置動物において、LPS投与後迅速に増加したが、
P5処置においては安定して続けた(図14)。
【0103】
【表6】

【0104】
(CLPモデル)
本発明者らのモデルの重症度は、CLPの完了後16〜20時間で最高であったので、本発明
者らは、16時間目まで(by)動物を調べることを選択した。重要なことは、この時点以前
には死亡例はなかったことである。全ての動物は輸液蘇生されたが、これらのペプチドの
役割を厳密に考慮するために抗生物質は受け取らなかった。
コントロール動物において経時的な動脈圧の劇的な低下があり、並びにH24までに、収
縮期、拡張期及び平均動脈圧は、各々、58±7mmHg、25±4mmHg、及び38±2mmHgであった
。この減少は、P1又はP5処置ではほぼ完全に失われ、H16及びH24の間で有意差はなかった
(図15)。P1及びP5処置ラットの間に差異はなかった。
【0105】
同じくTREM-1ペプチドは、コントロール動物において認められた動脈及び腸間膜血流量
の減少を防いだ(表7)。腸間膜血流量変化に対する保護作用は、P5処置下で更により高
かった。血流量の相対的な維持は、増加した心拍数とは関係がなく、その理由は後者はコ
ントロール動物においてむしろ遅くなったからである(表7)。
コントロールラットにおいて発症した進行性代謝アシドーシスは、P1ペプチドにより減
弱され、P5によりほぼ取り消された。同じ保護的傾向が、動脈血乳酸上昇において認めら
れ、P5の作用はより顕著であった(表7)。
【0106】
【表7】

【0107】
P1及びP5の両方は、TNF-α生成の減少を誘導し、再度P5の作用はより強力であった。H2
0までに、血漿TNF-αは、P5処置下でほぼ検出不能であったのに対し、これは他の動物群
においては上昇し続けた(図16)。
亜硝酸塩/硝酸塩濃度は、コントロール動物において増加したが、両方のTREM-1ペプチ
ド処置群においては低レベルであり続けた(図17)。
【0108】
従ってP5及びP1の両方の血行力学に対する保護的作用が、敗血症ラットにおいて認めら
れた。動脈圧及び血流量の両方が保存され、心拍数は独立していた。更に、TREM-1シグナ
ル伝達の変化は低下したが、完全にはサイトカイン生成は低下されず、及び敗血症動物は
過剰反応から保護された。サイトカイン生成は完全に阻害されなかったという事実は、重
要な点である。実際TNF-αのような炎症性サイトカインは、有害であると考えられるが、
これらは損なわれたTNF-α反応を伴う動物の腹膜炎モデルの致命的問題が基礎となる敗血
症においては有益な作用も示す。
【0109】
敗血症ショック時に認められたiNOSの活性化は、末梢血管障害(注目される血管拡張及
び高血圧)を部分的に説明する大量のNOの生成につながる。心筋それ自身に対しては、NO
の作用のほとんどは、細胞質ゾルカルシウムの収縮に対する作用を損なうcGMPの生成に寄
与する可溶性グアニレート-シクラーゼの活性化により媒介される。cGMPは、一部のホス
ホジエステラーゼの活性も刺激することができる。細胞内cAMPレベルのその後の減少は、
βアドレナリン作用性刺激の作用を減弱するNOの能力を説明することができる。従って動
脈圧の維持は、TREM-1ペプチド処置した動物における血漿亜硝酸塩/硝酸塩の濃度の低下
により反映されるように、NO生成の減少により一部説明することができる。
【0110】
炎症性サイトカイン生成の減少は、血流量に対する注目された作用を部分的に説明する
ことができる。実際、心筋機能低下の可能性のあるサイトカインメディエーターのリスト
は多いが、TNF-α及びlL-1βが良好な候補であることが示されている。これらのサイトカ
インは両方とも、in vitro又はex vivoにおいて心筋の収縮性を弱める。更にヒト敗血症
血清由来のTNF-α又はlL-1βの中和又は除去は、in vitro及びin vivoにおける心筋の抑
制性の作用を一部無効にする。P1及びP5は、内毒素血症時に血流量及び動脈圧に同一の作
用を有したが、それらのサイトカイン生成に対する作用は異なり、P1の血漿TNF-α及びlL
-1β濃度に対するわずかな作用のみであった。従ってTREM-1ペプチドの保護的役割は、サ
イトカイン放出に対するそれらの作用にわずかに部分的に関連するか、又は不必要な(re
dundant)経路に関与する。
【0111】
TREM-1経路の小さい合成ペプチドの使用による変化は、炎症性サイトカイン生成の減弱
と共に、ラットにおける実験的敗血症ショック時の血行動態パラメータに対する有益な作
用を有する。
まとめると、これらのデータは、TREM-1ペプチドは、1)対象動物を敗血症-関連した血
行力学の悪化から効率的に保護すること;2)乳酸アシドーシスの発生を減弱すること;3
)TNF-α及びlL-1βのような前炎症性サイトカインの生成を変化すること、及び4)一酸
化窒素の生成を減少することを示している。従ってTREM-1ペプチドは、敗血症、敗血症シ
ョック又は敗血症-様状態の患者の血行動態パラメータの回復に有用な可能性がある。
【0112】
(参考文献)
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【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1A】図1Aは、TREM-1及びTREM-2ファミリーメンバーの配列アラインメントを示している。CLUSTAL W.バージョン1.74を用い、ヒトTREM-1を、マウスTREM-1並びにヒト及びマウスTREM-2と並置している。二次構造の割当ては、公表されたヒトTREM-1構造に対応している(矢印はβ鎖を及び円筒はαヘリックスを)(Radaevらの論文、Structure(Camb)Dec;11(12):1527-35(2003))。ホモ-ヘテロ二量体形成に関連した残基は、黒色背景上に白色で示されている。V-型Igフォールドのために保存されたジスルフィド結合を形成するシステインは、太字で示されている。ギャップは、(-)で、同一残基は(*)で、類似残基は(:又は.)で印を付けた。ヒトとマウスのTREM-1配列の間の類似性の延長された領域は、灰色背景をつけた四角の中に記されている。本願明細書の実施例において使用したTREM-1ペプチド配列には下線をつけている。
【図1B】図1Bは、公表されたTREM-1ホモ二量体構造のリボン図を示している(Kelkerらの論文、J. Mol. Biol. Sep, 24;342(4):1237-48(2004))。相補性決定領域(CDR)と同等の抗体を含むと仮定された結合部位は赤色で記されている。
【図2】図2は、LPSの1時間前のTREM-1ペプチドの投与は、内毒素血症により誘導される死亡を減少することを示している。BALB/cマウス(1群10匹)に、LPS 200μgを腹腔内注射した。TREM-1ペプチドP1、P2、P3、又はP5(1匹のマウスにつき300μM溶液200μl)を、LPSの1時間前に腹腔内注射した。マウスの生存力を、7日間1日2回モニタリングした。統計解析は、Logrank検定により行った。コントロールマウスからのデータは、同一条件下で行われた2回の独立した実験からの累積した生存曲線を表している。
【0119】
【図3】図3は、TREM-1ペプチドP1を、LPSの4時間後に注射した場合、内毒素血症により誘導された死亡を効果的に低下することができることを示している。BALB/cマウス(1群10匹)に、200μg LPSを腹腔内注射した。1匹のマウスあたりTREM-1ペプチドP1の300μM溶液200μlを、LPSの1時間前又は4時間後に腹腔内注射した。マウスの生存力を、7日間1日2回モニタリングした。統計解析は、Logrank検定により行った。コントロールマウスからのデータは、同一条件下で行われた2回の独立した実験からの累積した生存曲線を表している。
【図4】図4は、LPSの4時間後のTREM-1ペプチドの投与は、内毒素血症により誘導された死亡を低下することを示している。BALB/cマウス(1群10匹)に、200μg LPSを腹腔内注射した。1匹のマウスあたりP1ペプチド150、300、及び600μM(丸)又はP3 600μM溶液200μl(黒四角)を、LPSの4時間後に腹腔内注射した。マウス生存力を、7日間1日2回モニタリングした。統計解析は、Logrank検定により行った。
【図5】図5は、TREM-1ペプチドP1は、盲腸結紮穿刺(CLP)に対し保護することを示している。CLPは、「材料及び方法」に記したように、C57BL/6マウス(1群15匹)において誘導した。P-1ペプチド(白丸)又はP3ペプチド(黒四角)(1匹のマウスにつき600μM溶液200μl)を、CLP誘導後5及び24時間に腹腔内注射した。マウス生存力を、10日間1日2回モニタリングした。統計解析は、Logrank検定により行った。
【0120】
【図6】図6は、P1、P2、及びP5ペプチドは、可溶性TREM-1/IgG1のTREM-1リガンド陽性腹膜滲出細胞への結合を阻害するが、P3ペプチドはそうではないことを示している。1匹のマウスにつき500μM溶液200μl(細い線)、1匹のマウスにつき100μM溶液200μl(点線)存在下、又はペプチド非存在下(太い線)でのマウスTREM-1/hIgG1の200 ngによる、腹膜滲出細胞の細胞蛍光測定分析が示されている。灰色ヒストグラムは、対照としてのヒトIgG1による免疫染色を表している。
【図7A】図7Aは、プロテアーゼインヒビターを伴う又は伴わない、LPSによる刺激後、培養した単球からのsTREM-1の放出を示している。LPS刺激は、抗-TREM-1 mAbにより特異的に認識された27-kD蛋白質の出現を誘導した(差し込み図)。馴化培養培地におけるsTREM-1レベルは、イムノドットの反射により測定した。データは、平均±SD(n=3)で示した。
【図7B】図7Bは、単球におけるTREM-1 mRNA発現を示している。培養した単球は、LPS(1μg/mL)で、指定されたように0、1及び16時間で刺激した。LPSは、1時間以内に、TREM-1 mRNA産生を誘導した。
【図8A】図8Aは、培養した単球からのサイトカイン及びsTREM-1の放出を示している。細胞活性化について、初代単球は、24-ウェル平底組織培養プレートにおいて、LPS(1μg/mL)の存在下で培養した。一部の実験において、この刺激は、P5(10〜100 ng/mL)、コントロールペプチド(10〜100 ng/mL)又はrlL-10(500 U/mL)との組合せにおいて提供された。TREM-1により単球を活性化するために、アゴニスト抗-TREM-1 mAb(10μg/mL)を示したように添加した。細胞-非含有上清を、TNF-α、lL-1β及びsTREM-1の産生について、ELISA又は免疫ブロットにより分析した。全ての実験は、3つ組で行い、データは平均(SEM)として表した。a:培地,b:P5 10 ng/mL,c:抗-TREM-1,d:LPS,e:LPS+抗-TREM-1,f:LPS+P5 10 ng/mL,g:LPS+P5 50 ng/mL,h:LPS+P5 100 ng/mL,i:LPS+IL10;
【図8B】図8Bは、P5のNFkB活性化に対する作用を示している。単球は、示したように大腸菌 LPS(O111:B4, 1μg/mL)、抗-TREM-1 mAb(10μg/mL)及び/又はP5(100 ng/mL)の存在下で、24時間培養し、NFkB p50及びp65のレベルを、ELISA-ベースのアッセイを用いて決定した。実験は、3つ組で行い、光学濃度平均(SEM)として表した。
【0121】
【図9】図9は、LPS-処置したマウス血清中のsTREM-1の蓄積を示している。雄Balb/Cマウス(20〜23 g)を、LPS(LD50、腹腔内)で処置した。血清を、イムノドットによりsTREM-1について、アッセイした。血清sTREM-1はLPS投与後1時間で容易に検出可能であり、及び4〜6時間、プラトーレベルで維持された。
【図10A】図10Aは、P5による前処置は、マウスをLPSによる死亡から保護することを示している。雄のBalb/Cマウス(20〜23 g)を、無作為に群別し(1群に10匹のマウス)、及びLD100のLPSで処置した。P5(50μg又は100μg)又はコントロールベクターを、LPSの60分前に投与した。
【図10B】図10Bは、P5の遅れた投与は、マウスにおけるLPSによる死亡を防ぐことを示している。雄のBalb/Cマウス(20〜23 g)を、無作為に群別し(1群8匹のマウス)、LPSのLD100で処置した。P5(75μg)又はコントロールベクターを、示されたようにLPSの4又は6時間後に投与した。
【図10C】図10Cは、アゴニストTREM-1 mAb投与は、マウスに対して致命的であることを示している。雄のBalb/Cマウス(20〜23 g)を、無作為に群別し(1群に8匹のマウス)、示したようにLD50のLPS+コントロールベクター、LD50のLPS+抗-TREM-1 mAb(5μg)、又はLD100のLPS+コントロールベクターの併用で処置した。コントロールベクター及び抗-TREM-1 mAbは、LPS注射後1時間で投与した。
【図11A】図11Aは、P5は、マウスをCLP-誘導した致死性から部分的に保護することを示している。雄のBalb/Cマウス(20〜23 g)を無作為に群別し、通常の生理食塩水(n=14)又はコントロールペプチド(n=14, 100μg)、又はP5(100μg)により、H0(n=18)、H+4(n=18)又はH+24(n=18)での単回感染(infection)により処置した。最後の群のマウス(n=18)は、P5(100μg)のH+4、H+8、及びH+24での反復注射により処置した。
【図11B】図11Bは、P5の生存に対する用量作用を示している。マウス(1群n=15)は、通常の生理食塩水又は10μg、20μg、50μg、100μgもしくは200μgのP5の、CLP後H0での単回注射により処置し、生存をモニタリングした。
【0122】
【図12】図12は、P5は、CLP時の細菌数に影響を及ぼさないことを示している。マウス(1群5匹)を、CLP後24時間で、麻酔下で屠殺した。腹膜洗浄液及び血液中の細菌数を決定し、結果をCFU/mL血液及びCFU/腹膜洗浄したマウス1匹として表した。
【図13】図13は、ラットにおけるLPS(15 mg/kg)投与後のTNF-α及びlL-1β血漿濃度の展開を示している。*p<0.05 P5-処置動物:コントロール動物,§p<0.05 P5-処置動物:P1-処置動物;
【図14】図14は、ラットにおけるLPS(15 mg/kg)投与後の亜硝酸塩/硝酸塩濃度の展開を示している。*p<0.05 P5-処置:コントロール及びP1-処置動物;
【図15】図15は、ラットにおける盲腸結紮穿刺-誘導した腹膜炎の期間の平均動脈圧の展開を示している。*p<0.05:コントロール動物;
【図16】図16は、ラットにおける盲腸結紮穿刺-誘導した腹膜炎の期間のTNF-α血漿濃度を示している。*p<0.05 P5-処置動物:コントロール動物,§p<0.05 P1-処置動物:コントロール動物,$p<0.05 P5:P1-処置動物;
【図17】図17は、ラットにおける盲腸結紮穿刺が誘導した腹膜炎の期間の亜硝酸塩/硝酸塩濃度の展開を示している。*p<0.05 P5及びP1-処置動物:コントロール動物;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の症状を、治療、改善、又は軽減する能力
を特徴とする、TREM-1蛋白質のCDR2又はCDR3由来の1種以上の配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、該TREM-1蛋白質の30個よりも少ない連続的なアミノ酸を含む、請
求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
(i)CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸を含む未変性のTREM-1蛋白質配
列に対応する15-25個のアミノ酸の連続的な配列;又は、(ii)1個以上のアミノ酸が提供
された別のアミノ酸により保存的に置換されているが、CDR2又はCDR3配列由来の少なくと
も3個のアミノ酸は置換されていない配列;又は、(iii)そのN及びC末端の一方又は両方
で異種ポリペプチドに連結された(i)もしくは(ii)の配列からなる、抗-敗血症又は抗
-敗血症ショック活性を有するTREM-1ポリペプチド。
【請求項4】
該未変性のTREM-1蛋白質配列が、配列番号1として特定されたヒト配列であり、並びにC
DR2及びCDR3配列は、各々RPSKNS及びQPPKEである、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、QPPである、請求項4記載のポリ
ペプチド。
【請求項6】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、QPPKである、請求項4記載のポリ
ペプチド。
【請求項7】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、QPPKEである、請求項4記載のポ
リペプチド。
【請求項8】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、RPSKNSである、請求項4記載のポ
リペプチド。
【請求項9】
該未変性のTREM-1蛋白質配列は、配列番号:2として特定されたマウス配列であり、並
びにCDR2及びCDR3配列は、各々RPFTRP及びHPPNDである、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項10】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、HPPである、請求項9記載のポリ
ペプチド。
【請求項11】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、HPPNである、請求項9記載のポリ
ペプチド。
【請求項12】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、HPPNDである、請求項9記載のポ
リペプチド。
【請求項13】
CDR2又はCDR3配列由来の少なくとも3個のアミノ酸が、RPFTRPである、請求項9記載のポ
リペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の症状を、治療、改
善、又は軽減する能力を特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19のいずれかひとつの配列と実質的配列同一
性を有し、かつ敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の症状を、治療、改善、又は
軽減する能力を特徴とする、ポリペプチド。
【請求項16】
配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19の配列のポリペプチド、その活性断片、ア
ナログ、及び誘導体で、並びに敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の症状を、治
療、改善、又は軽減する能力を特徴とするポリペプチド。
【請求項17】
配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19の配列と少なくとも80%の配列同一性を有
し、かつ敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を治療する能力を特徴とし、かつTRE
M-1蛋白質のCDR2又はCDR3由来の少なくとも2個の連続したアミノ酸を有する、ポリペプチ
ド。
【請求項18】
配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19の配列と少なくとも80%の配列同一性を有
し、かつ敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を治療する能力を特徴とするポリペ
プチドであり、ここでペプチドは、TREM-1蛋白質のCDR2又はCDR3由来の少なくとも3個の
連続したアミノ酸を有する、ポリペプチド。
【請求項19】
配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19の配列と実質的配列同一性を有し、かつ敗
血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を治療する能力を特徴とするポリペプチドをコ
ードし得る単離されたポリヌクレオチド。
【請求項20】
配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19の配列と少なくとも80%の配列同一性を有
し、かつ敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を治療する能力を特徴とするポリペ
プチドをコードし得るポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項21】
前記ポリペプチドは、未変性のTREM-1蛋白質の30個未満の連続的なアミノ酸を含む、請
求項15〜20のいずれか1項記載のポリペプチド。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項記載のペプチド、又はポリペプチドを含む組成物。
【請求項23】
療法における使用のための、請求項1〜22のいずれか1項記載のペプチド、又はポリペプ
チド。
【請求項24】
敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の治療における療法において使用するため
の、請求項1〜23のいずれか1項記載のペプチド、又はポリペプチド。
【請求項25】
敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態の治療のための医薬品の製造における、請
求項1〜24のいずれか1項記載のペプチド、又はポリペプチドの使用。
【請求項26】
対象へ、請求項1〜25のいずれか1項記載のペプチド、又はポリペプチドを治療有効量投
与することを含む、対象における敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を、治療、
又は改善する方法。
【請求項27】
前記ペプチド又はポリペプチドが、配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19の配列
と実質的配列同一性を有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチド又はポリペプチドが、配列番号:3、4、6、7、16、17、18、もしくは19、
又は配列番号:3、4、6、7、16、17、18、もしくは19の活性断片、アナログもしくは誘導
体である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチド、又はポリペプチドが、配列番号:3、4、6、7、16、17、18、又は19と少
なくとも約80%の配列同一性を有する、請求項26記載の方法。
【請求項30】
敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態を治療するために、化合物、又は組成物を
スクリーニングする方法であり:
TREM-1ペプチド又はTREM-1ポリペプチドを提供する工程;
TREM-1ペプチドを盲腸結紮穿刺モデルの動物と接触する工程;
敗血症の変化が存在するかどうか決定する工程を含み、
ここで生存率の増加が、TREM-1ペプチドが、敗血症、敗血症ショック又は敗血症-様状態
の治療に有用であることを示している、方法。
【請求項31】
適用が、敗血症、又は敗血症ショックである、請求項1〜30のいずれか1項記載の、ポリ
ペプチド、ベクターの使用、方法、又は組成物。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図17】
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【図1A】
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【図1B】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−82206(P2012−82206A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261103(P2011−261103)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2005−146848(P2005−146848)の分割
【原出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(510252818)
【出願人】(505186371)ユニベルシテ ヘンリ ポインカレ − ナンシー 1 (2)
【氏名又は名称原語表記】Universite Henri Poincare−Nancy 1
【Fターム(参考)】