説明

治療用抗体

【課題】宿主と異なるアミノ酸配列を有する可能性がある特定の治療用タンパク質に対する免疫応答を生ずる可能性を排除する手段を得ること。
【解決手段】治療標的に結合する抗体結合部位(antibody combining site )を含む治療用抗体を含んでなる修飾型治療用抗体であって、前記抗体が治療標的のミモトープであるペプチドで可逆的に修飾されてなり、前記ペプチドが抗体の抗体結合部位に可逆的に結合する、修飾型治療用抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、治療用抗体およびそれらの免疫原性を低減または排除する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外来の抗原または組織に対する寛容は、他の点では正常である、成熟した免疫系が、該抗原/組織に対し攻撃的な応答を特異的に行い得ず、それゆえ、該抗原/組織を正常な(罹患していない)体組織/成分のように扱う状態である。同時に、免疫系は、自己寛容の自然のプロセスもしくは治療的寛容誘導手段のいずれかにより特異的な寛容を有しない外来の、もしくは罹患した抗原/組織に攻撃的に応答する能力を有する。寛容に関する試験では、通常、寛容の個体が、同個体が無関係な抗原/組織に対して応答することが示されうる、より遅い時点で、1回または好ましくはそれ以上の免疫化を試みる場合に、特異的な抗原/組織に対し免疫でないことを示す必要がある。本明細書で使用されるように、寛容の誘導に対する言及はまた、完全な、および一部/不完全な寛容誘導の両方を包含することを意図する。完全な寛容誘導は寛容の誘導対象の抗原/組織に対する免疫応答の除去を含み、一方、一部の、もしくは不完全な寛容誘導は本免疫応答での有意な低減を含む。
【0003】
先行技術
治療での抗体の使用についての主要な問題の1つは、それらに対して誘導される免疫応答である。ヒトは自己の免疫グロブリンに対し元来寛容であるので、治療用抗体のヒト型を作製する多くの戦略が使用されている。当該戦略としては、例えば、ヒト化、ヒトライブラリー由来のファージディスプレイ、またはヒト免疫グロブリン遺伝子のレパートリーを保持するマウスの使用がある。有用ではあるが、これらの手段は、患者が治療用抗体の特有の特徴に対して全く反応しないことを保証しえない。当該特徴としては、例えば、定常領域におけるアロタイプ決定因子、および相補性決定領域(CDR)にコードされるイディオタイプ決定因子がある。
【0004】
チラー(Chiller )とワイグル(Weigle)(1970)PNAS 65:551 では、外来の免疫グロブリンに対する寛容が、それらの凝集物が潜在的に免疫原性である免疫グロブリンの非凝集性モノマーにより誘導されうることが齧歯類で示された。ベンジャミン(Benjamin)とワルドマン(Waldmann)ら(1986)J. Exp. Med. 163:1539 では、細胞結合性抗体がまた、非細胞結合性抗体と比較して免疫原性でありうることが示された。アイザックス(Isaacs)とワルドマン(1994)Therapeutic Immunology 1:363-312では、治療用抗体に対する体液性応答はCD4+T細胞依存であることが示された。治療用抗体が免疫原性でないことを保証するためには、宿主細胞が認識する可能性のある治療用抗体の全ての潜在的な免疫原性決定因子に対し、CD4 T細胞集団での寛容を誘導することが望ましいであろう。
【0005】
ギリランド(Gilliland )ら(1999)The Journal of Immunology 162:3663-3671 では、非細胞結合性抗体変異体の単量体標品で宿主を予備的に寛容化することによる、治療用抗体に対する免疫応答を防ぐ別の方法が記載されている。すなわち、この研究では、非細胞結合性である抗CD52抗体CAMPATH−1Hの変異体が免疫原性を失い、その結果、野性型結合性抗体に対する寛容が誘導されうることが示された。CAMPATH−1Hとは、CD52糖タンパク質抗原およびそれを認識する抗体のファミリーに与えられた一般名である。CAMPATHは登録商標である。補体媒介性溶解および細胞媒介性溶解の両方によりリンパ球を殺傷するCAMPATH−1H抗体の特有の能力は、リンパ腫の血清療法、骨髄および器官移植に対し、および自己免疫疾患の治療において、これらの抗体の広範な使用を可能にしている。治療用抗体に対する抗グロブリン応答を誘導する患者が存在するという観察は、免疫原性を排除することを目的とする研究を導いた。ギリランドらは、CAMPATH−1H抗体の細胞結合性型に対する抗グロブリン応答が、まず、非細胞結合性変異体による寛容化を行うことにより排除されうるということを、マウスモデルで示した。しかしながら、この方法を治療的に使用することは、2つの産物、非結合性寛容原と実際の治療用抗体の適用を必要とするであろう。これは、費用のかかる方法であり、変異体および治療用抗体は、2、3のアミノ酸残基が異なり、寛容が当該差にまで拡張されない可能性があるので、結果、抗グロブリン応答がやはり野性型(非変異型)抗体に対し生じうるであろうという不利な点を有する。それゆえ、全治療用抗体に対する寛容を保証する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、宿主と異なるアミノ酸配列を有する可能性がある特定の治療用タンパク質に対する免疫応答を生ずる可能性を排除する手段を見出すことは、免疫学において長期に渡る目標である。これは、癌から移植まで自己免疫疾患までの範囲に渡る治療場面の広範囲に渡り主要な意味を持つであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、
〔1〕治療標的に結合する抗体結合部位(antibody combining site )を含む治療用抗体を含んでなる修飾型治療用抗体であって、前記抗体が治療標的のミモトープであるペプチドで可逆的に修飾されてなり、前記ペプチドが抗体の抗体結合部位に可逆的に結合する、修飾型治療用抗体、
〔2〕抗体が抗CD52抗体であり、治療標的がCD52糖タンパク質抗原である、〔1〕記載の修飾型治療用抗体、
〔3〕該ペプチドが抗体にも連結されてなる〔1〕記載の修飾型治療用抗体、
〔4〕該ペプチドと結合した修飾型抗体の親和性が、非修飾型抗体の親和性より少なくとも4倍低い、〔1〕記載の修飾型治療用抗体、
〔5〕修飾型抗体が、標的に対する非修飾型抗体の親和性より少なくとも100倍低い、標的に対する親和性を有するものである、〔4〕記載の修飾型治療用抗体、
〔6〕抗体がアグリコシル化(aglycosylated )抗体である〔1〕記載の修飾型治療用抗体、
〔7〕抗体の鎖の1つのみが、抗体結合部位に結合する該鎖に連結されたペプチドを有してなる、〔3〕記載の修飾型治療用抗体、
〔8〕該ペプチドが、可逆的に抗体結合部位に結合されてなり、それにより、標的に結合する抗体の量が、該ペプチドが抗体結合部位から置換されるにつれて増加する、〔1〕記載の修飾型治療用抗体、
〔9〕抗体のFc部分がアグリコシル化されてなる〔1〕記載の修飾型治療用抗体、
〔10〕Fcレセプターへの抗体の結合が本質的に排除されてなる〔1〕記載の修飾型治療用抗体、
〔11〕抗体が非ヒト抗体である〔10〕記載の修飾型治療用抗体、
〔12〕抗体がキメラ抗体である〔10〕記載の修飾型治療用抗体、
〔13〕抗体が修飾型CAMPATH−1H抗体である〔2〕記載の修飾型治療用抗体、
〔14〕抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよび野生型ヒトIgG1定常領域を有するCampath−1H重鎖を含んでなる、〔13〕記載の修飾型治療用抗体、
〔15〕抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびアグリコシルヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、〔13〕記載の修飾型治療用抗体、
〔16〕抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびFcR−変異 ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、〔13〕記載の修飾型治療用抗体、
〔17〕抗体の軽鎖が、配列番号:1のアミノ酸配列または配列番号:2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでなる、〔14〕〜〔16〕いずれか記載の修飾型治療用抗体、
〔18〕〔1〕〜〔17〕いずれか記載の修飾型治療用抗体を含有してなる、医薬組成物、
〔19〕治療における使用のための、〔1〕〜〔17〕いずれか記載の修飾型治療用抗体、
〔20〕癌、慢性関節リウマチ等の慢性炎症性疾患、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、全身性狼瘡等の自己免疫疾患、喘息等のアレルギー性疾患、心筋梗塞等の心血管性疾患、脳卒中および感染性疾患からなる群より選択される疾患の治療における使用のための〔1〕〜〔17〕いずれか記載の修飾型治療用抗体、
〔21〕癌、慢性関節リウマチ等の慢性炎症性疾患、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、全身性狼瘡等の自己免疫疾患、喘息等のアレルギー性疾患、心筋梗塞等の心血管性疾患、脳卒中および感染性疾患からなる群より選択される疾患の治療用医薬の製造のための、〔1〕〜〔17〕いずれか記載の修飾型治療用抗体の使用、
〔22〕治療標的に結合する抗体結合部位を含む治療用抗体を修飾する方法であって、該方法は、治療標的のミモトープであるペプチドで該治療用抗体を可逆的に修飾する工程を含み、該ペプチドが抗体の抗体結合部位に可逆的に結合する、方法、
〔23〕抗体が抗CD52抗体であり、治療標的がCD52糖タンパク質抗原である〔22〕記載の方法、
〔24〕抗体がCAMPATH−1Hである〔23〕記載の方法、
〔25〕抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよび野生型ヒトIgG1定常領域を有するCampath−1H重鎖を含んでなる、〔24〕記載の方法、
〔26〕抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびアグリコシルヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、〔24〕記載の方法、
〔27〕抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびFcR−変異 ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、〔24〕記載の方法、
〔28〕抗体の軽鎖が、配列番号:1のアミノ酸配列または配列番号:2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでなる、〔25〕〜〔27〕いずれか記載の方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、宿主と異なるアミノ酸配列を有する可能性がある特定の治療用タンパク質に対する免疫応答を生ずる可能性を排除する手段が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の開示
本発明の1つの局面によれば、非修飾型抗体と比較して、その標的抗原に対する、低減された結合性を有する修飾型治療用抗体が提供される。低減された結合性とは、標的に対する抗体の結合が経時的に増加するということである。
【0010】
1つの局面によれば、本発明は、特異的な治療効果を有する治療用抗体を含んでなる治療用寛容化抗体に関する。該抗体は、その元来の標的に対する抗体の結合を低減する、その抗体結合部位の一時的な障害に曝されており、かつ宿主への投与後、該抗体は、充分な治療用抗体の機能的活性型(functionally-competent form )を再生し、前記治療効果を発揮しえ、よって、その元来の標的に対する抗体の結合の低減は修飾型抗体をそれ自身に対して、およびその機能的活性型に対して寛容原性にする。これに関し、寛容原性とは、抗体に対する免疫原性免疫応答(抗体応答)が、阻害され、顕著に低減され、および/または本質的に排除されることを意味する。
【0011】
この抗体を使用することで、細胞結合性抗体の免疫原性は低減され、もしくは回避される可能性があり、それゆえ、抗体治療がその全能力をもって使用されうる。
【0012】
それ自身を寛容化しえ、所望の治療効果をもたらす唯一の産物が使用される。これは、以前使用された2つの産物の必要性を排除する。抗体の抗体結合部位(ACS)の一時的なブロックは、宿主免疫系内で寛容を誘導するのに充分な時間、すなわち、抗体に対する免疫原性免疫応答を阻害するが、一旦これが達成されれば、治療標的に結合する抗体の量を増加させることにより、該抗体が該標的と相互作用しうる型に戻るか、または該型を再生すべきである充分な時間でなければならない。このように、免疫学的に外来の抗体が、それらに対する宿主免疫原性免疫応答が低減され、および/または本質的に排除されると共に、所望の治療効果をもたらすことになろう。よって、治療用抗体に対する抗体の発生が低減され、および/または本質的に排除される。
【0013】
このように、本発明のある局面によれば、治療標的に対する抗体結合部位(ACS)を含み、治療標的に対する治療用抗体の結合を阻害する化合物で修飾されている治療用抗体の形で医薬が提供される。
【0014】
そのような1つの態様では、抗体の抗体結合部位に可逆的に結合する化合物を含むように修飾された治療用抗体が、該抗体の投与の際にACSへの結合に関し該化合物と競合する標的抗原と共に提供され、それにより、標的への抗体の結合が阻害される。この様式では、投与後の初期に標的抗原に結合するようになる修飾型抗体の量は、その非修飾型で投与された場合に結合するようになるであろう量より少ない。化合物が、競合的結合の結果、ACSから置換されると、標的抗原に結合するようになる抗体の量が増加する。抗体の結合を阻害することにより、標的に結合する抗体の量が経時的に増加するにつれ、修飾型抗体が、該抗体に対する抗体応答を低減しえ、および/または本質的に排除しえ、また、所望の治療効果を達成しうる。
【0015】
1つの態様では、修飾型抗体は、非修飾型抗体の標的に対する親和力よりも低い標的に対する親和力を有する。親和力は、治療用抗体に対する抗体応答を低減し、および/または排除する一方、治療標的への結合により所望の治療効果をもたらすのに有効な量で低減される。
【0016】
本明細書で使用する用語「治療または治療用(therapeutic )」は、存在する疾患、症状または障害を治療すること、および疾患、症状または障害の脅威を予防および/または低減することの両方を包含する。
【0017】
治療標的は、抗体が結合する、組織または細胞上に存在するか、もしくは存在しなくてもよい抗原である。標的への結合を阻害するために治療用抗体と結合される化合物は、ACSへの結合による結合、および/または、例えば、立体障害により、ACSへの接触を結合もしくはブロックすることにより、阻害する。
【0018】
該化合物は、抗体に該化合物を連結することにより、および/または該化合物をACSに結合することにより、抗体と結合することができる。1つの態様では、該化合物は、抗体に連結され、または繋がれ、また、ACSに結合する。他の態様では、該化合物はACSに結合することなく抗体に連結され、例えば、立体障害により、ACSへの接触を阻害することにより、標的への抗体の結合を阻害する。1つの非限定的な態様では、化合物は抗体の鎖の1つのみに連結される。
【0019】
治療用抗体はヒトの治療用として使用されてよく、また、非ヒト抗体、例えば、齧歯類に生じた抗体であってもよい。
【0020】
キメラかつヒト化、例えば、CDR移植された、抗体が、本発明に従って使用されてもよい。これらの抗体は対応する齧歯類抗体よりも免疫原性が低く、よって、本発明によるかかる抗体の一時的なACSブロックはさらに免疫原性を低減し、寛容原性を高める可能性がある。
【0021】
該化合物は、標的への抗体の結合を阻害するように機能し、それにより、投与直後に、化合物の非存在下に結合するであろう抗体の量に比べて、標的へ結合する抗体の量を減少させる。標的へ結合するようになる抗体の量は経時的に増加し、それにより、実質的に、標的へ結合する抗体の量を阻害するACSの一時的なブロックが生ずる。
【0022】
ACSの一時的なブロック(初期に標的へ結合する抗体の量を減少させ、経時的にかかる量を増加させるブロック)は以下により行われうる;
(i)インビトロでのプレインキュベーションによる、しだいにインビボで解離するであろう、所定の抗原もしくはそのドメイン、低親和性抗原性ペプチドまたはミモトープ(mimotopes )などの分子による一時的な占有、その結果、「障害性」因子と比較して結合定数および解離定数が有利であれば、抗体はしだいに細胞に結合した抗原、または他の「標的」抗原上に蓄積するであろう;または
(ii)フレキシブルリンカーを結合してよい、所定の抗原もしくはそのドメイン、低親和性抗原性ペプチドまたはミモトープなどの分子による一時的な占有。一旦、生体に(in vivo )投与されると、「障害性」因子と比較して結合定数および解離定数が有利であれば、抗体はしだいに細胞に結合した抗原、または他の「標的」抗原上に蓄積するであろう;または
(iii )ACSに非共有結合的に結合し、インビボで解離しうる可能性がある化学薬物;または
(iv)ACSを一時的に障害する可能性がある他の変形。
【0023】
かかる修飾は、限定された期間、標的抗原上への抗体蓄積を妨害するであろう。それは、投与された治療用抗体が寛容化効果(少なくとも一部の寛容化効果)を有するのを保証するのに充分である一方、抗体が、所望の治療効果、すなわち、かかる効果をもたらす量で標的抗原上に蓄積するのを達成するのに充分なその機能的活性型に戻るまたは該活性型を再生するのを可能にするであろう。
【0024】
修飾の除去は、pH変化、宿主内での酵素的切断、細胞に結合した宿主抗原との自然な競合などの宿主自身の生理学的および生化学的プロセスによっても生ずる可能性がある。例えば、ペプチドミモトープは、インビボで、例えば白血球エラスターゼなどの宿主酵素で切断可能な酵素分解性モチーフを保持するリンカーにより抗体HまたはL鎖に連結されうるであろう。
【0025】
本発明の1つの特に有利な態様によれば、リンカーは、治療用抗体の所望の作用部位でのみ、または該部位で優先的に、酵素により切断され、それにより、所望の作用部位への治療用抗体の選択的送達を提供する。例えば、白血球エラスターゼにより切断されるリンカーは、意図される作用部位が継ぎ目である抗体に好適であろう。他方、可溶性抗原またはミモトープは、腫瘍の部位内において低pHでより容易に解離する可能性があり、これはまた、所望の作用部位への抗体の選択的送達をも提供する可能性があろう。他方、内部リンカーを結合した低親和性ミモトープは、自然にインビボで解離する可能性があり、再結合は宿主細胞上の天然の抗原と相互作用するACSにより防止されるかもしれない。
【0026】
好ましくは、天然の抗原、そのドメイン、およびペプチドフラグメントまたはミモトープを用い、ACSを修飾する。後者は、人工的に調製した、または生物学的に調製したいずれかのペプチドライブラリーから調製することができる。非共有結合性化学物質を、抗体がその抗原または代用均等物へ結合するのを阻害する能力について、天然もしくは人工のライブラリーから、または他の入手可能な産物からスクリーニングすることができる。使用されうるリンカーは好ましくはフレキシブルなものであるが、所定の時間内で体により酵素的に切断可能および/または分解可能でありうるであろう。
【0027】
本発明はまた、補体系および免疫グロブリンのFc領域についての分化した細胞レセプター(FcRレセプター)との相互作用を低減するように設計されたFc領域をさらに含んでなる、前記の抗体に関する。細胞結合性抗体の免疫原性の部分は、補体系およびFcRレセプターを通じて結合する他の細胞を生物学的に活性化するそれらの能力に由来する可能性がある。抗体のFc領域での生物学的エフェクター機能の除去は、非修飾型抗体と比較して免疫原性を低減させ、よって、寛容原性を高める可能性がある。これは、ブロッキング抗体またはアゴニスト抗体など、細胞溶解が必須でない多くの抗体にとって有用であろう。従って、Fc領域における変異と共にACSにおいて変異を付加することは、細胞機能をブロックまたは高めるように設計されたFc変異抗体に対する寛容にとって最も効果的である可能性がある。
【0028】
さらなる局面によれば、本発明は治療に使用するための前記抗体を提供する。
【0029】
さらに別の局面によれば、本発明は、前記治療効果を達成するために、哺乳動物の治療において使用するための医薬の製造における前記抗体の使用を提供する。治療は、所望の治療効果を達成するのに充分な用量で医薬を投与することを含む。治療は抗体の繰り返し投与を含んでもよい。
【0030】
さらなる局面によれば、本発明は、所望の治療効果を達成し、かつ治療用抗体への抗体応答を低減および/または排除するのに充分な用量の上記抗体の投与を含む、ヒトの治療法を提供する。治療効果は、癌、慢性関節リウマチ等の慢性炎症性疾患、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、全身性狼蒼等の自己免疫疾患、喘息等のアレルギー性疾患、心筋梗塞等の心血管性疾患、並びにその他、脳卒中および感染性疾患を含みうる疾患の軽減または予防でありうる。実際、治療用抗体の連続投与または繰り返し投与が意図される任意の疾患である。
【0031】
上記のタイプの一時的修飾はまた、その活性が一過的にブロックされうる生物学的活性部位に依存し、および当該部位の活性が免疫原性を決定する抗体以外の治療用タンパク質に適用可能でありうる。かかる治療用タンパク質の例としては、ホルモン、酵素、凝固因子、サイトカイン、ケモカイン、免疫グロブリンに基づく融合タンパク質が挙げられる。
【0032】
抗体に化合物を共有結合的に連結させる場合、1つの態様では、化合物は、好ましくは抗体の2つのアームの一方のみに連結する。
【0033】
本明細書中で使用される用語「抗体」としては、組換え抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、モノクローナル抗体等の全ての形態の抗体を含む。本発明はまた、治療標的に結合しうる抗体断片に適用可能である。
【0034】
1つの態様では、化合物(抗体のACS に結合しうるペプチドまたは他の分子でありうる)は、ヒトへの投与対象の抗体の抗体結合(binding またはcombining )部位に可逆的に結合される。前記化合物は、抗原に対する抗体の結合部位を占有し、それにより抗原への抗体の結合を阻害する。前記化合物は、抗体結合部位に可逆的に結合されるので、抗体は、抗体が指向する抗原に結合しうる。
【0035】
1つの態様では、抗体の抗体結合部位への結合について選択される化合物は、化合物に対する抗体親和性が抗原に対する抗体親和性よりも低い化合物である。この様式において、抗体が最初に投与される場合、化合物の非存在下において生じうる結合と比べて、抗原への抗体の結合を低減させるであろう(かかる結合は時間経過とともに増大する)。
【0036】
出願人は、抗体の投与にすぐに続く期間において、抗原に結合する抗体の量が減少する(かかる量は時間経過とともに減少した量から増大する)との条件で、治療用抗体への抗体応答の減少が、所望の治療効果を生じるための、抗原に効率的に結合しうる抗体を投与することにより達成されうることを見出した。
【0037】
従って、従来技術とは異なり、本発明に従って、その治療機能を発揮しうる抗体はまた、治療用抗体結合の量の増大が続く抗原への治療用抗体結合の量を最初に減少させることにより該抗体に対する免疫原性免疫応答を減少する。
【0038】
抗原への抗体結合の量を最初に減少させる様式で抗体結合部位への結合のために使用される化合物は、ペプチドでありうる。ペプチドは、治療用抗体が結合する抗原の対応するペプチド部分と同一であってもよいし異なっていてもよい。抗体のための適切なペプチドは、抗体およびその抗原に関する結合アッセイの阻害においてペプチドのパネルを試験することにより選択されうる。これらのおよび他の手順は、本明細書中の教示に基づいて当業者に公知であるはずである。
【0039】
1つの態様では、前記化合物と結合した抗体は、標的抗原に対する非修飾型抗体の親和性よりも低い標的抗原に対する親和性を有する。修飾型抗体および非修飾型抗体の相対的な親和性は、終点として50%結合阻害を用いる結合アッセイの阻害により決定されうる。標的抗原への標識された非修飾型抗体の結合の50%阻害を生じるのに必要な非修飾型抗体の量と比べて修飾型抗体の量において増大が存在する場合、修飾型抗体は、減少した親和性を有する。
【0040】
修飾型抗体の親和性(avidity )は、抗体に対する抗体応答を低減させるか、本質的に排除するのに効果的である量に減少され、修飾型抗体は所望の治療効果を生じるのに効果的である標的に対する親和性を有する。
【0041】
非限定的な例によって、非修飾型抗体と比較して修飾型抗体は、少なくとも4倍低い標的抗原に対する親和性を有しており、多くの場合、標的抗原に対する非修飾型抗体の親和性よりも少なくとも50倍低いか、または少なくとも100 倍低い。
【0042】
1つの非限定的な態様では、前記化合物は、非修飾型抗体と比べて標的抗原に対して減少した親和性を有する修飾型抗体を提供することにより修飾型抗体の結合を阻害しうる。1つの非限定的な態様では、修飾型抗体は、非修飾型抗体の親和性よりも少なくとも2倍または少なくとも5倍低い、結合対象の抗原に対する親和性を有しうる。
【0043】
多くの場合、修飾型抗体は、非修飾型抗体よりも少なくとも10倍低いかまたは少なくとも20倍低いかまたは少なくとも100 倍低い親和性を有しうる。
【0044】
本発明の1つの態様では、投与される修飾型抗体の量は、投与後の最初の24時間において、標的抗原に結合する修飾型抗体の量が、標的抗原に結合しない修飾型抗体の量よりも少ないように治療標的への修飾型抗体の結合の阻害と協調し、かかる相対量は、治療用抗体に対する抗体応答を低減または排除するのに有効である。
【0045】
多くの場合、本発明を限定することなく、修飾型抗体は、投与後の最初の24時間において、またはいくつかの場合には最初の48または72時間において、治療標的に結合する抗体に対する標的に結合しない抗体の比が、少なくとも10:1であり、多くの場合、少なくとも50:1または少なくとも100:1 であるような量で標的抗原に結合する。
【0046】
修飾型抗体は、所望の治療効果を生じさせるため、および抗体に対する低減された免疫応答を誘導するための両方に有効である量で使用される。一般に、本発明を限定することなく、修飾型抗体は、抗体が最初に投与される場合、初めの24時間の期間に、投与される抗体の量が少なくとも50mgおよび一般に少なくとも100mg およびより一般的には少なくとも200mg であるような量で投与される。多くの場合には、修飾型治療用抗体は、所望の治療効果を達成するために必要とされる非修飾型形態の量よりも多い量で使用され、かかる増大した量は、標的抗原に結合しない修飾型治療用抗体の量を提供するのに使用され、レシピエントにおける抗体に対する免疫応答を低減させるか、および/または本質的に排除するのに有効である。
【0047】
従って、本発明の局面に従って、抗体が減少した量(かかる量は時間経過とともに増大する)でその抗原にインビボにおいて結合するような様式で抗体を修飾することにより治療用抗体に対して低減した免疫応答が存在する。出願人は、抗体のその抗原への結合がその投与後すぐに阻害されるかまたは減少される(結合は時間経過とともに増大する)との条件で、修飾型治療用抗体が、インビボで抗体に対して低減した免疫原性免疫応答を誘導しながらその治療機能をインビボで遂行することができることを見出した。
【0048】
治療用抗体は、薬学的に許容されうる担体と組み合わせて使用されうる。適切な担体の使用は、本明細書中の教示から当該分野の技術範囲内にあると考えられる。
【0049】
本発明はまた、特異的な治療効果を有するタンパク質を含む治療用寛容化タンパク質に関し、ここで前記タンパク質は、その天然の標的に対するタンパク質の結合を減少させる一時的な障害に供されている生物学的活性部位を有し、かつ宿主への投与後、該タンパク質は、前記治療効果を達成するのに充分な治療用タンパク質の機能的活性型を再生し得、それによってその天然の標的に対するタンパク質の結合の減少は、修飾型タンパク質をそれ自身に対しておよびその機能的活性型に対して寛容原性にする。
【0050】
本発明はまた、遊離モノマーとして長期間存在することにより半減期が伸びるように治療用抗体または他のタンパク質の薬物動態学を修飾する方法に関する。これは、所望の治療効果を達成するために必要とされる治療用タンパク質の累積的な用量および投与の頻度の面から「緩徐な放出貯蔵所」の形態として有利である。さらに、これは、より良好な腫瘍貫通を可能にし、抗体投与に続く副作用のいくつかを最小化(minimises )し、該効果は標的細胞における抗体の即時かつ大量の蓄積から生じる。
【0051】
以下の実施例は本発明を説明する。添付図面では以下の通り。
【実施例】
【0052】
実施例
材料および方法
ヒト化抗CD-52 抗体CAMPATH-1Hを以下の実験に用いた。CAMPATH-1H抗体および以下の方法論を用いて種々の構築物を作製した。
【0053】
CAMPATH-1Hの非結合性バリアントの作製:
Gilliland ら(1999) The Journal of Immunology 162:33363-3671 に記載のようにして、ヒトCD52抗原に特異的なヒト化抗体CAMPATH-1HのV 領域のクローニングを行なった。方法論は、Orlandi ら、1989, PNAS 86:3833に基づき、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) を用いる。野生型ヒト化CAMPATH-1 軽鎖をベクターpGEM9 (Promega)にクローン化し、部位特異的変異誘発に対するPCR 鋳型として用いた。
【0054】
オリゴヌクレオチドプライマーPUCSE2およびLink L-3' +Link-L-5' およびPUCSE REV を用いて、CAMPATH-1Hリーダー配列とCAMPATH-1H VL 配列との間の軽鎖のアミノ末端側にフレキシブル(flexible)リンカー(Gly4Ser×2)を付加した。得られた断片を、プライマーPUCSE2+PUCSE REV を用いてPCR により組み立て、HindIII/HindIII 断片として発現ベクターにクローン化されうる全長Linker-CP-1H軽鎖を得た。
【0055】
次に、Linker-CP-1H軽鎖構築物をPCR 鋳型として用い、CD52 MimotopeQTSSPSADおよびP61 SLLPAIVEL ペプチド構築物を作製した。プライマーPUCSE2およびMIM-3'+CD52Mim-5'およびPUCSE REV を用いて、Mimotope-CP-1H軽鎖構築物を得た。プライマーPUCSE2およびP61-3'+HuP61-5'およびPUCSE REV を用いて、P61-CP-1H 軽鎖構築物を得た。
【0056】
Linker-CP-1H、Mimotope-CP-1H、P61-CP-1H 変異体を、ネオマイシン選択を含有するpNH316哺乳動物発現ベクターの誘導体であるpBAN-2 (Pageら、1991 Biotechnology 9:64-68) および選択のためのグルタミンシンテターゼ遺伝子を含有する哺乳動物発現ベクターであるPEE12 Bebbingtonら、1992 Biotechnology 10:169-175 に転移した。
【0057】
サブコンフルーエント(subconfluent)dhfr- チャイニーズハムスター卵巣細胞(Page ら、1991 Biotechnology 9:64-68) またはNSO マウス骨髄腫細胞(ECACC cat no 8511503, Meth Enzymol 1981, 73B,3)を、軽鎖変異体と、野生型ヒトIgG1定常領域、アグリコシル(aglycosyl) ヒトIgG1定常領域および非FcR 結合ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH-1H重鎖構築物とを用いて、同時トランスフェクトした。
【0058】
dhfr選択マーカー(Page ら、1991 Biotechnology 9:64-68) を有するpLD9哺乳動物発現ベクターのバリアントであるpRDN-1およびPEE12 において、CAMPATH-1H重鎖構築物を発現させた。
【0059】
LipofectAMINE PLUS試薬(Life Technologies) を用いて、製造業者の推奨に従って、トランスフェクションを行なった。
【0060】
ヒトIgG1定常部は、Takahashi ら、1982 Cell 29, 671-679 に記載された野生型G1m(1,17) 遺伝子に由来した。297 位におけるアスパラギン残基からアラニン残基へのアグリコシル変異。Asn-297 のオリゴ糖は、全ての正常ヒトIgG 抗体の特徴的な特色である(Kabatら、免疫学的対象(immunological interest)のタンパク質の配列 米国保健福祉省出版)。アラニンでのアスパラギンの置換は、抗体のグリコシル化を妨げる(RoutledgeおよびWaldman 、Transplantation, 1995, 60)。235 位におけるロイシンからアラニンへのおよび237 位におけるグリシンからアラニンへの非FcR 結合変異、Xuら、1993 J Immunology 150:152A。235 位および237 位におけるロイシンおよびグリシンの置換は、補体固定および活性化を妨げる。
【0061】
1mg のG418+ 5%(v/v) の透析されたウシ胎仔血清とを含むヒポキサンチン非含有IMDM中で、重鎖および軽鎖のトランスフェクタントを選択した。ELISA により抗体産生について、ならびにヒトT 細胞クローンHUT78(Gootenberg JE ら、1981 J. Exp. Med. 154: 1403-1418) およびCD52トランスジェニックマウスへの抗体結合について、得られた選択細胞をスクリーニングした。
【0062】
抗体産生細胞を限界希釈によりクローニングし、次にローラーボトル培養法に拡大した。各細胞株に由来する組織培養上清約15リットルから免疫グロブリンを、プロテインAで精製し、PBS に対して透析し、定量した。
【0063】

【0064】
ブロッキングリガンド(blocking ligand) は、抗体ペプチドミモトープの公開された配列(Hale G 1995 Immunotechnology 1, 175-187) に基づき、抗体軽鎖にペプチド産物を結合させるための一般的なリンカー配列を有するcDNA配列として野生型CAMPATH-1H抗体に操作したので、抗体結合部位に結合したそのリガンドとともに抗体が分泌され得た。類似の抗体がまた、297 位のグリコシル化部位を除去するように変異されたそのFc領域を有した。
【0065】
産生された構築物/細胞株
TF CHO/CP-1H IgG1/MIM およびTF NSO/CP-1H IgG1/MIM (MIM IgG1)
フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH-1H軽鎖V領域につなぎとめたCD52 MimotopeQTSSPSAD+野生型ヒトIgG1定常領域を有するCampath-1H重鎖。 NSO産生抗体についてはCelltech発現ベクターPEE12 にならびに CHO産生抗体についてはWellcome pRDN-1 およびpBAN-2発現ベクターにクローン化した。
【0066】
TF NSO/CP-1H AG IgG1/MIM(AG MIM IgG1)
フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH-1H軽鎖V領域につなぎとめたCD52 Mimotope QTSSPSAD+CAMPATH-1H重鎖アグリコシルヒトIgG1定常領域。 NSO産生抗体についてはCelltech発現ベクターPEE12 にクローン化した。
【0067】
TF NSO/CP-1H FCR IgG1/MIM(FcRmutMIM IgG1)
フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH-1H軽鎖V領域につなぎとめたCD52 Mimotope QTSSPSAD+CAMPATH-1H重鎖FcR-MUTATED ヒトIgG1定常領域。 NSO産生抗体についてはCelltech発現ベクターPEE12 にクローン化した。
【0068】
TF CHO/CP-1H IgG1/Link(Linker)
CAMPATH-1H軽鎖V 領域上にフレキシブルグリシン4セリン×2リンカーのみ+野生型ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH-1H重鎖。CHO 産生抗体についてはWellcome発現ベクターpRDN-1およびpBAN-2にクローン化した。
【0069】
TF CHO/CP-1H IgG1/P61 (P61-IgG1)
フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH-1H軽鎖V 領域につなぎとめたHLA P61 結合ペプチドSLLPAIVEL(Huntら、Science 1992 255 1261-1263) +野生型ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH-1H重鎖。CHO 産生抗体についてはWellcome発現ベクターpRDN-1およびpBANにクローン化した。
【0070】
TF NSO/CP-1H AG IgG1/P61 (AGP61 IgG1)
フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH-1H軽鎖V 領域につなぎとめたHLA P61 結合ペプチドSLLPAIVEL +アグリコシルヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH-1H重鎖。NSO 産生抗体についてはCelltech発現ベクターPEE12 にクローン化した。
【0071】
TF NSO/CP-1H FCR IgG1/P61 (FcRmutP61IgG1)
フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH-1H軽鎖V 領域につなぎとめたHLA P61 結合ペプチドSLLPAIVEL +FCR ヒトIgG1定常領域が無いCAMPATH-1H重鎖。NSO 産生抗体についてはCelltech発現ベクターPEE12 にクローン化した。
【0072】
TF CHO/CO-1H IgG1 (CAMPATH-1H)
野生型CAMPATH-1H軽鎖V 領域+野生型ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH-1H重鎖。CHO 産生抗体についてはWellcome発現ベクターpRDN-1およびpBAN-2にクローン化した。
【0073】
TF NSO/CP-1H IgG1 (AG-IgG1)
野生型Campath01H軽鎖V 領域+アグリコシルヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH-1H重鎖。 NSO産生抗体についてはCelltech発現ベクターPEE12 にクローン化した。
【0074】
結果
高用量の精製した分泌産物(CAMPATH-1H 、MIM-IgG1、AG.MIM-IgG1)を、ヒトCD52について遺伝子組換えを行なったマウス(Gillilandら) に注射した。1週間後、3群全てにおいて、抗体が細胞に結合していることが見出され得たが、リンパ球枯渇はCAMPATH-1H群およびMIM-IgG1群において見出されうるのみであった。
【0075】
次に、複数の場合において野生型抗体を用いてマウスをチャレンジし、わずかな異種体液性応答のみを惹起し得た。これは、寛容原を受けなかったマウスまたは代わりに始めから野生型CAMPATH-1H抗体で処置されたマウスとは異なっていた。MIM-IgG1のアグリコシル化型(AG.MIM-IgG1) を用いて寛容化したマウスは、治療用CAMPATH-1H抗体の10チャレンジ投薬後でさえ、異種応答を完全に惹起し得なかった。
【0076】
図1は、CD52産生HUT 細胞への種々の抗体構築物の結合能力を示す。CAMPATH-1Hは、MIM-IgG1より約2000倍、CAMPATH-1H-p61(P61-IgG1 およびAG.P61-IgG1 の両方) より5倍、ならびにAG.MIM-IgG1 より10,000倍高い有効性で結合する。
【0077】
図2は、3時間前に腹腔内(IP)に種々の抗体構築物(0.5mg) を与えた CP-1-トランスジェニックマウスのリンパ球上のCAMPATH-1H抗体の結合を試験する蛍光標示式細胞分取器(FACS)ドットプロットを示す。抗ヒトIgG1を用いて、末梢血液および脾臓リンパ球を、その表面上の蓄積した抗体が見えるまで染色した。図2Aでは、末梢血液リンパ球を試験した。CAMPATH-1H型および AG-MIM-IgG1型で処置したマウスは、非常に鮮やかに染色され、事実、抗体で飽和されていた。実際に、両方の構築物を用いてこの段階で血液からのT 細胞のいくらかの枯渇が見られる(リンパ球の4 %および32%がCD3+である) 。p61-IgG1構築物および AG-p61-IgG1構築物もまた強く染色し、この時にいくらかの枯渇を達成する(血液リンパ球の13.5%および23%がCD3+である) 。Mim-IgG1は、血液中のT 細胞を染色したが、上記構築物よりも有効性が低く、この段階で非常にわずかな枯渇が見られた(リンパ球の65.7%がCD3+である) 。最後に、AG-MIM-IgG1 は、血液リンパ球に非常に弱く結合し、この弱い結合は、この段階におけるT 細胞枯渇に関連しない。図2Bに、脾臓リンパ球上の比較可能なデータを示す。ここで、MIM-IgG1およびAG-MIM-IgG1 の両方が、この段階までに、約50%の枯渇を達成する他の構築物とは異なって、結合および枯渇に極めて効果がないことが見出されうる。
【0078】
図3は、たとえMIM-IgG1抗体およびAG.MIM-IgG1 抗体が、インビトロで抗原にほとんど結合しなくても、それらがインビボでCD52+細胞(CP-1 トランスジェニックマウス中) に良好に結合することを示す。各抗体の500 μg の投与の7日後、脾臓および血液リンパ球をフローサイトメトリーにより解析した。図は、AG.MIM-IgG1 が動物のCD3+細胞に結合していることを示す。MIM-IgG1は同様に行なっているが、動物におけるCD3+の割合がより少ないので、明らかにいくつかの枯渇が生じている(脾臓における1.7 %対AG.MIM-IgG1 に関する36.6%;血液における16.1%対AG.MIM-IgG1 に関する78.9%)。
【0079】
図4は、CAMPATH-1H(MIM-IgG1)のミモトープ結合型が、血液リンパ球に対して溶解性であることを示す。最初の24時間後、血液中に限られた細胞枯渇のみがある。しかしながら、7日後、高用量のMIM-IgG1抗体が、有意な数の血液リンパ球を除去することが見られうる。1ヶ月までに、処置した宿主におけるリンパ球カウントは、高用量(250μg および 500μg ) の2つの型の抗体間で比較可能である。左のカラム(図4A)は、1μg から50μg の抗体で処置したマウスにおいて達成された血液リンパ球枯渇のレベルを示す。これらの用量では、ミモトープ結合型は枯渇せず、一方、CAMPATH-1H処置動物は、T細胞の用量依存性枯渇を示した。右のカラムでは(図4B)、CAMPATH-1HはT 細胞の迅速で有効な枯渇を示し、一方、結合したミモトープを有する型は、7日目にCAMPATH-1H処置ほど完全でないがより長い期間維持する、より遅い枯渇を達成した。hCD52+細胞の減少は、結果がCD4+細胞およびCD8+細胞の等量の減少により確かめられたように、注射した抗体を有する抗原の被覆のためではなかった。
【0080】
図5Aは、ミモトープ結合抗体(MIM-IgG1)がほとんど免疫原性でなく、CAMPATH-1Hミモトープのアグリコシル化型が全く免疫原性でないことを示す。CAMPATH-1Hで処置した動物は、高力価の抗CAMPATH-1H Absを有し、一方、MIMOTOPE結合型で処置したマウスの力価は、かなり低い。ミモトープ抗体のアグリコシル化型を受けた動物は枯渇が無く、検出可能な抗グロブリン応答が無かった。図5Bでは、AG-CAMPATH-1H が非常に免疫原性であることが判明したので、AG.MIM.IgG1 の免疫化に対する失敗は、単にFC領域のグリコシル化を除去する変異の結果ではないことがわかり得た。AG-p61-IgG1 もまた非常に免疫原性であったので、ミモトープに対する効果の特異性もまた明白に確立された。
【0081】
図6Aは、ミモトープ結合CAMPATH-1H抗体のアグリコシル化型(AG.MIM-IgG1) が、大いに寛容原性であることを示す。対照ペプチドに連結したCAMPATH-1Hを用いて0日に処置した動物、または処置を受けなかった動物もまた、高力価の抗グロブリンを有した。ミモトープ結合抗体(MIM-IgG1)で処置したマウスは、非常に低い力価の抗グロブリンを有し、一方、ミモトープ結合抗体のアグリコシル化型(AG.MIM-IgG1) を受けた動物は枯渇が無く、血清中に検出可能な抗グロブリンが無かった。
【0082】
図6Bは、ミモトープ結合CAMPATH-1Hのアグリコシル化型(AG.MIM-IgG1) が、大いに免疫原性であることをさらに確認する。図6Bの結果は、図6Aに類似し、0日にCAMPATH-1Hで処置した群、CAMPATH-1H-p61で処置した群または未処置群と、ミモトープ結合抗体で処置した群との間の抗グロブリン力価においてより大きな差異を有する。再度、アグリコシル型(AG.MIM-IgG1) で処置したマウスにおいて、検出可能な抗グロブリンは無かった。
【0083】
本明細書に記載された態様の多数の改変および変形が、本明細書の教示に基づいて可能である。したがって、本発明の範囲は、かかる態様に限定されない。
【0084】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]治療標的に結合する治療用タンパク質を含んでなる医薬であって、前記タンパク質が治療標的への該タンパク質の結合を阻害する化合物で修飾されてなり、前記修飾型タンパク質が該タンパク質に対する免疫応答を低減するのに効果的であり、かつ治療標的への結合により治療効果をもたらすのに効果的である、医薬。
[2]治療用タンパク質が、治療標的に結合する抗体結合部位(antibody combining site )を含む抗体である、[1]記載の医薬。
[3]化合物が抗体の抗体結合部位に結合されてなる[2]記載の医薬。
[4]化合物がさらに抗体に連結されてなる[3]記載の医薬。
[5]化合物がペプチドである[3]記載の医薬。
[6]ペプチドと結合した修飾型抗体の親和性が、非修飾型抗体の親和性より少なくとも4倍低い、[5]記載の医薬。
[7]抗体がアグリコシル化(aglycosylated )抗体である[6]記載の医薬。
[8]抗体の鎖の1つのみが、抗体結合部位に結合する、該鎖に連結されたペプチドを有してなる、[7]記載の医薬。
[9]修飾型抗体が、標的に対する非修飾型抗体の親和性より少なくとも100倍低い標的に対する親和性を有するものである、[8]記載の医薬。
[10]化合物が、可逆的に抗体結合部位に結合されてなり、それにより、標的に結合する抗体の量が、化合物が抗体結合部位から置換されるにつれて増加する、[3]記載の医薬。
[11]抗体結合部位に結合された化合物が、さらに抗体に連結されてなる、[10]記載の医薬。
[12]化合物がペプチドである[11]記載の医薬。
[13]抗体のFc部分がアグリコシル化されてなる[12]記載の医薬。
[14]Fcレセプターへの抗体の結合が本質的に排除されてなる[12]記載の医薬。
[15]抗体が非ヒト抗体である[11]記載の医薬。
[16]抗体がキメラ抗体である[11]記載の医薬。
[17]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[1]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[18]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[2]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[19]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[3]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[20]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[4]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[21]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[5]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[22]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[6]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[23]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[7]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[24]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[8]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[25]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[9]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[26]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[10]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[27]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[11]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[28]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[12]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[29]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[13]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[30]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[14]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[31]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[15]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[32]哺乳動物の治療、および医薬タンパク質に対する抗体応答の本質的な排除の両方のために充分な量で[16]に記載の医薬を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の治療方法。
[33]治療標的に対する抗体結合部位を有する修飾型治療用抗体を含んでなる医薬であって、前記修飾型治療用抗体が抗体結合部位に可逆的に結合した化合物を有してなり、それにより、前記標的が、抗体結合部位について競合し、かつ抗体結合部位から該化合物と置換され、前記化合物が治療標的への抗体の結合を阻害するものであり、前記修飾型抗体が初期に非修飾型抗体より少ない量で標的に結合するものであり、抗体が標的に結合するようになるにつれ、化合物が抗体結合部位から置換された結果として、標的への前記結合が増加する、医薬。
[34]哺乳動物を治療するための産物の製造のための[1]〜[17]および[33]いずれかに記載の医薬の使用。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、CAMPATH-1Hの形態が、フレキシブルリンカーによって結合されるミモトープを伴って、リンカーのみを保持するCAMPATH-1Hの形態(リンカー)、同じ方法で連結させた無関係なペプチド(p61-IgG1)、ミモトープが結合したリンカー(MIM-IgG1)、および種々の抗体のアグリコシル化(aglycosylated )(H- 鎖の297 位でアスパラギンの除去)形態(AG等)と比べることにより、CD52を保持するヒトT- 細胞株HUT78 に結合し得ないことを示す結合研究の結果を示す。AG.MIM-IgG1 形態がまた非細胞結合であり、リンカー自身の単なる挿入は、CAMPATH-1Hの結合を約4倍減少させることに注目すべきである。
【図2】図2は、種々の抗体構築物を(0.5mg )腹腔内(IP)で3時間前に与えたCP-1- トランスジェニックマウスのリンパ球におけるCAMPATH-1H抗体の結合を調査する蛍光活性化細胞分取器(FACS)ドット- プロットを示す。末梢血および脾臓のリンパ球を抗ヒトIgG1で染色し、任意の蓄積した抗体をその表面に示した。図2Aでは、我々は、末梢血リンパ球を調査した。CAMPATH-1H形態およびAG-CAMPATH-1H 形態で処置したマウスを非常に明るく染色し、実際に抗体で飽和した。実際、血液からのT- 細胞のいくつかの枯渇が、両方の構築物を用いてこの段階で見られる(4%および32%のリンパ球がCD3+である)。p61-IgG1およびAG-p61-IgG1 構築物はまた、強力に染色し、このときいくつかの枯渇を達成する(13.5%および23%の血液リンパ球はCD3+である)。Mim-IgG1は、血液中のT- 細胞を染色するが、上記の構築物よりも効果的ではなく、非常にわずかな枯渇がこの段階で見られる(65.7%のリンパ球がCD3+である)。最後に、AG-MIM-IgG1 は血液リンパ球に非常に弱く結合し、その弱い結合はこの段階ではいかなるT- 細胞枯渇にも関連しない。図2Bでは、比較可能なデータが脾臓のリンパ球について示される。ここで、我々は、MIM-IgG1およびAG-MIM-IgG1 の両方が結合および枯渇に不充分であり、この段階で約50%の枯渇を達成している他の構築物とは異なることを認めうる。
【図3】図3は、MIM-IgG1およびAG.MIM-IgG1 抗体がインビトロで抗原に不充分に結合するとしても、それらがCD52+ 細胞(CP1 トランスジェニックマウスの)にインビボで結合することを示す。500 μg の各抗体の投与の7日後、脾臓および血液リンパ球をフローサイトメトリーにより解析した。この図は、AG.MIM-IgG1 が動物のCD3+細胞に結合しており、染色の強度が、図2におけるよりも高いことを示す。MIM-IgG1は、同様に行ったが、動物におけるCD3+細胞のパーセンテージが少ないので(脾臓において1.7 %対AG.MIM-IgG1 についての36.6%;および血液において16.1%対AG.MIM-IgG1 についての78.9%)、明らかないくつかの枯渇が起こった。
【図4】図4は、結合したミモトープを伴う(MIM-IgG1)か伴わない(CAMPATH-1H)種々の用量のCAMPATH-1HでCAMPATH-1 抗原についてトランスジェニックであるマウス(CP-1マウス)を処置したことの、末梢血リンパ球カウントにおける効果を示す。末梢血リンパ球(PBL )をフローサイトメトリーにより解析した。左のカラムは、1μg 〜50μg の抗体で処置したマウスの結果を示し、右カラムは、動物を0.1mg 〜0.5mg の抗体で処置した第2の実験の結果を示す。治療用抗体は、5μg/mlまでの低用量で24時間以内に宿主リンパ球を死滅しうるが、ミモトープが結合した抗体は、250 μg/mlまでの用量でそうはなり得ない。対照的に、21日目に250 μg および500 μg の用量の「ミモトープを伴う」で枯渇の明らかな効果があり、一方、治療用抗体CAMPATH-1Hリンパ球は血液を再び満たし(replenish )始めている。
【図5】図5は、CP-1トランスジェニックマウスにおける種々の抗体構築物の免疫原性を示す。血清を、種々の用量の試験抗体で治療したCP-1マウスから採取した。血清を、投与後21日目(expt.A)または28日目(expt.B)に収集し、ELISA により抗-CAMPATH-1HAbsの存在について評価した。血清サンプルをPBS 1 %BSA に1:20に希釈し、続いて2倍希釈した。治療用抗体CAMPATH-1Hの全ての用量は免疫原性であり、一方、全ての他の修飾型形態に対する応答は大いに低かった(p61-IgG1を含む)。顕著に、結合したミモトープを有する500 μg のアグリコシル化形態(AG.MIM-IgG1 )は、全く応答を生じなかった。図Bにおいて、AG-CAMPATH-1H が非常に免疫原性であることが証明されているので、AG.MIM.IgG1 が免疫化できないことが、単にFC領域のグリコシル化を除去する変異の結果ではないことが理解されうる。AG-p61-IgG1 はまた非常に免疫原性であるので、ミモトープに関する効果の特異性がまた明らかに確立された。
【図6】図6Aは、CP-1トランスジェニックマウスにおける種々の抗体構築物の寛容原性を調査し、50μg のCAMPATH-1Hの5回の日ごとの腹腔注射でのチャレンジの30日後に収集し、ELISA により抗-CAMPATH-1HAbsの存在について評価した、種々の用量のAbで0日目に処置したCP1 マウス由来の血清の結果を示す。血清サンプルを、1%BSA を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS )中に1:20に希釈し、引き続いて2倍希釈物において滴定した。左の図において、マウスをチャレンジCAMPATH-1H抗体を与える前に60日間放置し、一方、右の図では、それらを21日間放置した。左の図(図5a)は、100 、250 または500 μg のいずれかの用量のミモトープで前に処置した動物がCAMPATH-1Hに対する体液性応答を非常に損なったことを示す。これは、いくらかのレベルの寛容化を示す。しかし、右の図は、マウスがMIM-結合抗体のアグリコシル化形態で完全に寛容化されたが、無関係のペプチドを結合する抗体により部分的に損傷されたことを示す。 図6Bは、チャレンジ抗体CAMPATH-1Hで繰り返しブーストして構築物の寛容原性能力を調査する。これらは、図5Aで見られる同じ動物についての結果であり、以前の血清収集のときに5用量の50μg のCAMPATH-1H抗体でのさらなるチャレンジを与えた。次いで、これらの動物に由来する血清を、再チャレンジの30日後に収集し、図5に記載されるように解析した。結論は図6Aのものに類似する。
【図7】図7および8は、以下の実施例で使用される構築物MIM-IgG1についてそれぞれアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:1および配列番号:2を参照)。
【図8−1】図7および8は、以下の実施例で使用される構築物MIM-IgG1についてそれぞれアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:1および配列番号:2を参照)。
【図8−2】図7および8は、以下の実施例で使用される構築物MIM-IgG1についてそれぞれアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:1および配列番号:2を参照)。
【図9−1】図9および10は、以下の実施例で使用されるリンカーについてそれぞれヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:3および配列番号:4を参照)。
【図9−2】図9および10は、以下の実施例で使用されるリンカーについてそれぞれヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:3および配列番号:4を参照)。
【図10】図9および10は、以下の実施例で使用されるリンカーについてそれぞれヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:3および配列番号:4を参照)。
【図11−1】図11および12は、以下の実施例で使用されるP61-IgG1についてそれぞれヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:5および配列番号:6を参照)。
【図11−2】図11および12は、以下の実施例で使用されるP61-IgG1についてそれぞれヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:5および配列番号:6を参照)。
【図12】図11および12は、以下の実施例で使用されるP61-IgG1についてそれぞれヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す(また、注釈を有さない同一の配列を示す配列番号:5および配列番号:6を参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療標的に結合する抗体結合部位(antibody combining site )を含む治療用抗体を含んでなる修飾型治療用抗体であって、前記抗体が治療標的のミモトープであるペプチドで可逆的に修飾されてなり、前記ペプチドが抗体の抗体結合部位に可逆的に結合する、修飾型治療用抗体。
【請求項2】
抗体が抗CD52抗体であり、治療標的がCD52糖タンパク質抗原である、請求項1記載の修飾型治療用抗体。
【請求項3】
該ペプチドが抗体に連結されてもいる請求項1記載の修飾型治療用抗体。
【請求項4】
該ペプチドと結合した修飾型抗体の親和性が、非修飾型抗体の親和性より少なくとも4倍低い、請求項1記載の修飾型治療用抗体。
【請求項5】
修飾型抗体が、標的に対する非修飾型抗体の親和性より少なくとも100倍低い、標的に対する親和性を有するものである、請求項4記載の修飾型治療用抗体。
【請求項6】
抗体がアグリコシル化(aglycosylated )抗体である請求項1記載の修飾型治療用抗体。
【請求項7】
抗体の鎖の1つのみが、抗体結合部位に結合する該鎖に連結されたペプチドを有してなる、請求項3記載の修飾型治療用抗体。
【請求項8】
該ペプチドが、可逆的に抗体結合部位に結合されてなり、それにより、標的に結合する抗体の量が、該ペプチドが抗体結合部位から置換されるにつれて増加する、請求項1記載の修飾型治療用抗体。
【請求項9】
抗体のFc部分がアグリコシル化されてなる請求項1記載の修飾型治療用抗体。
【請求項10】
Fcレセプターへの抗体の結合が本質的に排除されてなる請求項1記載の修飾型治療用抗体。
【請求項11】
抗体が非ヒト抗体である請求項10記載の修飾型治療用抗体。
【請求項12】
抗体がキメラ抗体である請求項10記載の修飾型治療用抗体。
【請求項13】
抗体が修飾型CAMPATH−1H抗体である請求項2記載の修飾型治療用抗体。
【請求項14】
抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよび野生型ヒトIgG1定常領域を有するCampath−1H重鎖を含んでなる、請求項13記載の修飾型治療用抗体。
【請求項15】
抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびアグリコシルヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、請求項13記載の修飾型治療用抗体。
【請求項16】
抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびFcR−変異 ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、請求項13記載の修飾型治療用抗体。
【請求項17】
抗体の軽鎖が、配列番号:1のアミノ酸配列または配列番号:2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでなる、請求項14〜16いずれか記載の修飾型治療用抗体。
【請求項18】
請求項1〜17いずれか記載の修飾型治療用抗体を含有してなる、医薬組成物。
【請求項19】
治療における使用のための、請求項1〜17いずれか記載の修飾型治療用抗体。
【請求項20】
癌、慢性関節リウマチ等の慢性炎症性疾患、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、全身性狼瘡等の自己免疫疾患、喘息等のアレルギー性疾患、心筋梗塞等の心血管性疾患、脳卒中および感染性疾患からなる群より選択される疾患の治療における使用のための請求項1〜17いずれか記載の修飾型治療用抗体。
【請求項21】
癌、慢性関節リウマチ等の慢性炎症性疾患、糖尿病、乾癬、多発性硬化症、全身性狼瘡等の自己免疫疾患、喘息等のアレルギー性疾患、心筋梗塞等の心血管性疾患、脳卒中および感染性疾患からなる群より選択される疾患の治療用医薬の製造のための、請求項1〜17いずれか記載の修飾型治療用抗体の使用。
【請求項22】
治療標的に結合する抗体結合部位を含む治療用抗体を修飾する方法であって、該方法は、治療標的のミモトープであるペプチドで該治療用抗体を可逆的に修飾する工程を含み、該ペプチドが抗体の抗体結合部位に可逆的に結合する、方法。
【請求項23】
抗体が抗CD52抗体であり、治療標的がCD52糖タンパク質抗原である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
抗体がCAMPATH−1Hである請求項23記載の方法。
【請求項25】
抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよび野生型ヒトIgG1定常領域を有するCampath−1H重鎖を含んでなる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびアグリコシルヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、請求項24記載の方法。
【請求項27】
抗体が、フレキシブルグリシン4セリン×2リンカーによりCAMPATH−1H軽鎖V領域につなぎとめたアミノ酸配列QTSSPSADを有するCD52ミモトープおよびFcR−変異 ヒトIgG1定常領域を有するCAMPATH−1H重鎖を含んでなる、請求項24記載の方法。
【請求項28】
抗体の軽鎖が、配列番号:1のアミノ酸配列または配列番号:2のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含んでなる、請求項25〜27いずれか記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9−1】
image rotate

【図9−2】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11−1】
image rotate

【図11−2】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−108093(P2009−108093A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315168(P2008−315168)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【分割の表示】特願2002−533899(P2002−533899)の分割
【原出願日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【出願人】(500205220)アイシス イノヴェイション リミテッド (10)
【Fターム(参考)】