説明

法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置

【課題】法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置であって前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等がその配置状態を維持できるようにすることにより、前記植物生育用基盤を効果的に保持することができる保持装置を提供すること。
【解決手段】法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置は、前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等と、該網状部材等を前記法面に固定する複数の固定部材とを含み、各固定部材は、前記網状部材等を受け入れるフックを端部に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切土や盛土により形成された法面を緑化するため、該法面上に植物生育用基盤が形成される。
【0003】
従来、前記植物生育用基盤の形成に先立ち、該植物生育用基盤を保持する保持装置が前記法面に設けられる。前記保持装置は、前記法面に対して垂直に配置される網状部材と、該網状部材を前記法面上に支持する複数の棒鋼とを含む(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−64685号公報
【0004】
前記法面に対して垂直に配置された前記網状部材は、前記法面上に形成された前記植物生育用基盤が前記法面に対して滑って移動するのを阻止する。これにより前記保持装置は前記植物生育用基盤を前記法面上に保持する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記植物生育用基盤を前記法面上に形成するとき、前記植物生育用基盤の材料を、例えば圧縮空気により前記法面に吹付ける。このとき、前記植物生育用基盤の材料は、前記網状部材に勢いよく衝突して該網状部材を吹き飛ばすことがある。前記網状部材が吹き飛ばされたとき、該網状部材は前記法面に対して垂直な状態を維持することができないため、前記保持装置は前記植物生育用基盤を効果的に保持することができない。このため、前記網状部材が前記法面に対して垂直な状態を維持できるようにする必要がある。
【0006】
本発明の目的は、法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置であって前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材又は穿孔板(以下「網状部材等」という。)がその配置状態を維持できるようにすることにより、前記植物生育用基盤を効果的に保持することができる保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、前記網状部材等を前記法面に固定する複数の固定部材のそれぞれが端部にフックを備え、該フックは前記網状部材等を受け入れることができる。また、前記網状部材等を前記法面に固定する複数の固定手段のそれぞれが、棒状部材と、縦部及び前記棒状部材に固定された横部からなるほぼL字形の鉤状部材とを備え、該鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れることができる。また、前記固定手段が、棒状部材と、縦部及び前記棒状部材が挿入される貫通孔を有する横部からなるほぼL字形の鉤状部材とを備え、該鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れることができる。
【0008】
本発明に係る、法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置は、前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等と、該網状部材等を前記法面に固定する複数の固定部材とを含み、各固定部材は、前記網状部材等を受け入れるフックを端部に有する。
【0009】
前記網状部材等は前記法面に対してほぼ垂直に配置され、前記固定部材は、該固定部材の前記フックが前記網状部材等を受け入れて該網状部材等を前記法面に固定する。前記網状部材等は、前記固定部材の前記フックに受け入れられて前記法面に固定されるため、前記植物生育用基盤の材料の前記法面への吹付時に前記植物生育用基盤の材料が前記網状部材等に勢いよく衝突しても飛ばされることはない。したがって、前記網状部材等は前記法面に対してほぼ垂直な状態を維持することができる。
【0010】
本発明に係る、法面上に形成される植物生育用基盤を保持する他の保持装置は、前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等と、該網状部材等を前記法面に固定する複数の固定手段とを含み、各固定手段は、棒状部材と、縦部及び前記棒状部材に固定された横部からなるほぼL字形の鉤状部材とを有し、該鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れる。
【0011】
前記網状部材等は前記法面に対してほぼ垂直に配置され、前記固定手段は、前記鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れて該網状部材等を前記法面に固定する。前記網状部材等は、前記鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に受け入れられて前記法面に固定されるため、前記植物生育用基盤の材料の前記法面への吹付時に前記植物生育用基盤の材料が前記網状部材等に勢いよく衝突しても飛ばされることはない。したがって、前記網状部材等は前記法面に対してほぼ垂直な状態を維持することができる。
【0012】
本発明に係る、法面上に形成される植物生育用基盤を保持するさらに他の保持装置は、前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等と、該網状部材等を前記法面に固定する複数の固定手段とを含み、各固定手段は、棒状部材と、縦部及び前記棒状部材が挿入される貫通孔を有する横部からなるほぼL字形の鉤状部材とを有し、該鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れる。
【0013】
前記固定手段は、前記鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れて該網状部材等を前記法面に固定する。このため、前記植物生育用基盤の材料の前記法面への吹付時に前記植物生育用基盤の材料が前記網状部材等に勢いよく衝突しても飛ばされることはない。したがって、前記網状部材等は前記法面に対してほぼ垂直な状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定部材のフックが網状部材等を受け入れることができるため、又は固定手段が鉤状部材の縦部と棒状部材との間に網状部材等を受け入れることができるため、植物生育用基盤の材料の法面への吹付時に前記植物生育用基盤の材料が前記網状部材等に勢いよく衝突しても該網状部材等が飛ばされることはない。このため、前記網状部材等はその配置状態、すなわち前記法面に対してほぼ垂直な状態を維持することができる。これにより前記植物生育用基盤を効果的に前記法面上に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1、2に示すように、法面10上に形成される植物生育用基盤12を保持する複数の保持装置14が法面10に間隔を置いて設けられている。法面10を緑化し、また該法面を保護するため、植物生育用基盤12で植物(図示せず)を生育させる。
【0016】
各保持装置14は、法面10に対してほぼ垂直に配置される網状部材等16と、該網状部材等を法面10に固定する複数の固定部材18とを含む。
【0017】
網状部材等16は、エキスパンデッドメタル若しくは金網のような網状部材又はパンチングメタルのような穿孔板からなる。網状部材等16は、金属製である上記の例に代え、プラスチック製又は木製でもよい。網状部材等16は、植物生育用基盤12が法面10に対して滑って移動するのを阻止するのに必要な剛性を有する。網状部材等16は、法面10に対してほぼ垂直に配置され、水平に伸びる。網状部材等16の幅寸法、すなわち法面10に対して垂直な方向における長さ寸法は、植物生育用基盤12の厚さ寸法より小さい(図2)。図示の例では、植物生育用基盤12の厚さ寸法は約7cmであり、網状部材等16の幅寸法は約5cmである。
【0018】
各固定部材18は、棒鋼からなり、その端部にフック20を有する。固定部材18は法面10に間隔を置いて打込まれる。固定部材18の打込み深さは法面10の性状に応じて決めることができる。固定部材18のフック20は、網状部材等16に対応した側面形状を有し、網状部材等16をほぼ隙間なく受け入れている(図2)。固定部材18は、棒状である図示の例に代え、板状であってもよい。
【0019】
網状部材等16を固定部材18により法面10に固定するとき、まず、網状部材等16を法面10に対してほぼ垂直に配置し、その後、各固定部材18を、該固定部材のフック20が網状部材等16を受け入れるように法面10に打込む。これにより網状部材等16は法面10に固定される。網状部材等16の法面10への固定後、圧縮空気、ベルトコンベヤー等により植物生育用基盤12の材料を法面10に吹き付けて法面10上に植物生育用基盤12を形成する。
【0020】
法面10に対してほぼ垂直な網状部材等16は、植物生育用基盤12が法面10に対して滑って移動するのを阻止する。これにより保持装置14は植物生育用基盤12を法面10上に保持する。また、網状部材等16は、植物生育用基盤12の内部を水分が流れるのを妨げない。このため、植物生育用基盤12中の余分な水分は植物生育用基盤12から速やかに排出される。
【0021】
ところで、植物生育用基盤12の材料の法面10への吹付時、植物生育用基盤12の材料は網状部材等16に勢いよく衝突する。網状部材等16がフック20に受け入れられて法面10に固定されているため、植物生育用基盤12の材料が網状部材等16に衝突して該網状部材等が飛ばされることはない。このため、網状部材等16は法面10に対してほぼ垂直な状態を維持することができる。これにより保持装置14は植物生育用基盤12を法面10上に保持することができる。
【0022】
図3ないし5に示す例では、網状部材等16は、固定部材18により固定されている図1、2に示した例に代え、固定手段22により固定されている。固定手段22は、棒状部材24と、縦部26及び棒状部材24が挿入される貫通孔28を有する横部30からなるほぼL字形の鉤状部材32とを有する。
【0023】
棒状部材24は、棒鋼からなり、法面10に打込まれている。鉤状部材32は、鋼板を折り曲げたものからなり、法面10上に配置されている。なお、鉤状部材32はほぼL字形であればよく、前記鋼板の折り曲げ角度は90度に限定されない。鉤状部材32の貫通孔28は棒状部材24を受け入れ、鉤状部材32の横部30は法面10に接しており、鉤状部材32の縦部26は棒状部材24の上方に位置する。固定手段22は、鉤状部材32の縦部26と棒状部材24との間に網状部材等16を受け入れている。鉤状部材32の縦部26と棒状部材24との間の間隔は網状部材等16の厚さ寸法とほぼ同じである。鉤状部材32の縦部26の法面10に対して垂直な方向における長さ寸法は、網状部材等16の幅寸法より大きく、植物生育用基盤12の厚さ寸法と同じである。
【0024】
網状部材等16を固定手段22により法面10に固定するとき、まず、棒状部材24を法面10にこれに対してほぼ垂直に打込み、次に、鉤状部材32を、該鉤状部材の貫通孔28が棒状部材24を受け入れるように法面10上に配置する。その後、網状部材等16を、鉤状部材32の縦部26と棒状部材24との間に受け入れられるように法面10に対してほぼ垂直に配置する。これにより網状部材等16は法面10に固定される。
【0025】
網状部材等16の法面10への固定後、植物生育用基盤12の材料を、鉤状部材32の縦部26が埋まるまで法面10に吹付けて植物生育用基盤12を法面10上に形成する。鉤状部材32の縦部26の法面10に対して垂直な方向における長さ寸法が植物生育用基盤12の厚さ寸法と同じであるため、植物生育用基盤12の材料を、鉤状部材32の縦部26が埋まるまで法面10に吹付けることにより、予め定められた厚さを有する植物生育用基盤12を法面10上に形成することができる。
【0026】
網状部材等16が鉤状部材32の縦部26と棒状部材24との間に受け入れられて法面10に固定されているため、植物生育用基盤12の材料が網状部材等16に衝突して該網状部材等が飛ばされることはない。このため、網状部材等16は法面10に対してほぼ垂直な状態を維持することができ、保持装置14は植物生育用基盤12を法面10上に保持することができる。
【0027】
棒状部材24は、鉤状部材32の貫通孔28に挿入されているため、棒状部材24の法面10への打込み深さを変えて鉤状部材32に対して移動させることができる。これにより、鉤状部材32の縦部26と棒状部材24との間の隙間の大きさを変えることができるため、固定手段22は、大きさが異なる網状部材等を鉤状部材32の縦部26と棒状部材24との間に受け入れることができる。
【0028】
鉤状部材32は、該鉤状部材の貫通孔28が棒状部材24を受け入れるため、鉤状部材32の法面10上への配置時に棒状部材24に対してその周方向に回転させることができる。このため、法面10に打込まれた棒状部材24の周方向の向きに左右されることなく、鉤状部材32を、該鉤状部材の縦部26が棒状部材24の上方に位置するように法面10上に配置することができる。よって、棒状部材24の法面10への打込み時に棒状部材24の周方向の向きを決める必要がないため、棒状部材24の法面10への打込み作業を効率よく行うことができる。
【0029】
鉤状部材32の横部30は、棒状部材24が挿入される貫通孔28を有する図5に示した例に代え、棒状部材24に固定されていてもよい。この場合においても、図5に示した例と同様に、網状部材等16が鉤状部材32の縦部26と棒状部材24との間に受け入れられて法面10に固定されるため、植物生育用基盤12の材料が網状部材等16に衝突して該網状部材等が飛ばされることはない。このため、網状部材等16は法面10に対してほぼ垂直な状態を維持することができ、保持装置14は植物生育用基盤12を法面10上に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施例に係る保持装置の正面図。
【図2】図1の線2における縦断面図。
【図3】本発明の第2実施例に保持装置の正面図。
【図4】図3の線4における拡大図。
【図5】図4の線5における縦断面図。
【符号の説明】
【0031】
10 法面
12 植物生育用基盤
14 保持装置
16 網状部材等
18 固定部材
20 フック
22 固定手段
24 棒状部材
26 縦部
28 貫通孔
30 横部
32 鉤状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置であって、前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等と、該網状部材等を前記法面に固定する複数の固定部材とを含み、各固定部材は、前記網状部材等を受け入れるフックを端部に有する、保持装置。
【請求項2】
法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置であって、前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等と、該網状部材等を前記法面に固定する複数の固定手段とを含み、各固定手段は、棒状部材と、縦部及び前記棒状部材に固定された横部からなるほぼL字形の鉤状部材とを有し、該鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れる、保持装置。
【請求項3】
法面上に形成される植物生育用基盤を保持する保持装置であって、前記法面に対してほぼ垂直に配置される網状部材等と、該網状部材等を前記法面に固定する複数の固定手段とを含み、各固定手段は、棒状部材と、縦部及び前記棒状部材が挿入される貫通孔を有する横部からなるほぼL字形の鉤状部材とを有し、該鉤状部材の前記縦部と前記棒状部材との間に前記網状部材等を受け入れる、保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−248573(P2008−248573A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91371(P2007−91371)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(502281127)株式会社ファテック (83)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】