説明

法面用仮設足場及びその設置方法

【課題】 工事現場や山等の法面での作業における作業員の負担を比較的手軽にかつ低コストにて軽減することの可能な法面用仮設足場及びその設置方法を提供する。
【解決手段】 平行に配した一対の傾斜支柱2を横架材3にて連結して本体フレーム4と成し、この本体フレーム4には床板5の一端を回動自在に軸着し、かつこの床板5を傾斜支柱2に対して任意の角度にて支持する支持手段7を備える。また、前記本体フレーム4の前端部には法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の索状体Aを係止させる係止片15を備える一方、本体フレーム4の前後端部には本体フレーム4を法面に固定支持させる固定手段16を備える。上記構成としたことにより、構造も簡単で取り扱いやすく、比較的手軽にかつ低コストにて作業員の負担軽減に有用な法面用仮設足場1を設置することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場や山等の法面における作業、例えば、宅地の造成や高速道路の施工、治山事業工事等を行う際に、作業工具や資材等の仮置き場等として用いる法面用の仮設足場及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山等を切り拓いて宅地の造成や高速道路等を施工する際に形成される法面において土木作業者等が作業を行うにあたり、例えば、法面上方より適宜長さのワイヤーロープ等で前記作業者を吊り下げて支持し、作業者はその状態でワイヤーロープを伝って、或いはウインチ等でワイヤーロープを繰り出し・引き上げ操作等して法面に沿って所望位置まで移動して各種作業を行う場合があるが、何れにしてもこのような法面での作業は足場が不安定なため危険を伴うものであると共に、作業に用いる資材や機材等を一時的に預け置くような場所も確保しづらくて作業効率が悪く、作業者に大きな負担を強いるものであった。
【0003】
一方、このような作業者の負担を軽減するために、例えば、特許文献1(特開平9−72087号公報)には、法面に沿って枠体や足場板等を組み上げて構築する法面作業用の仮設足場が開示されている。このような仮設足場からの作業であれば、作業者は安定した足場を確保できて比較的安全に作業できると共に、休憩場所等としても使用できる上、資材や機材等も一時的に預け置くことができて作業効率面でも優れ、作業者の負担を軽減することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−72087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような仮設足場を法面に設置する場合、不安定な足下での作業を強いられる上、多数の枠体や足場板等を法面の下端部側より順次組み上げたり解体する必要があるため、それなりの手間やコストを要すると思われ、例えば比較的小規模の作業を行うような場合には採用しづらい場合もあると予想される。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、工事現場や山等の法面での作業における作業員の負担を比較的手軽にかつ低コストにて軽減することの可能な法面用仮設足場及びその設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の法面用仮設足場では、工事現場や山等の法面に設置する法面用仮設足場であって、平行に配した一対の傾斜支柱を横架材にて連結して本体フレームと成し、該本体フレームには床板の一端を回動自在に軸着し、かつ該床板を傾斜支柱に対して任意の角度にて支持する支持手段を備えると共に、前記本体フレームの前端部には法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の索状体を係止させる係止片を備える一方、本体フレームの前後端部には本体フレームを法面に固定させる固定手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の法面用仮設足場では、前記固定手段は、本体フレームの前後端部に固定アンカー挿通用の挿通孔を備え、該挿通孔を介して法面に固定アンカーを打ち込むことにより固定可能なように構成して成ることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3記載の法面用仮設足場では、前記固定手段は、本体フレームの前後端部に係止金具を備え、法面上に設置した鋼管に前記係止金具を係止させることにより固定可能なように構成して成ることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4記載の法面用仮設足場の設置方法では、工事現場や山等の法面に設置する法面用仮設足場の設置方法であって、平行に配した一対の傾斜支柱を横架材にて連結して本体フレームと成し、該本体フレームには床板の一端を回動自在に軸着し、かつ該床板を傾斜支柱に対して任意の角度にて支持可能に構成し、法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の索状体を前記本体フレームに係止させ、索状体の繰り出し、引き上げ操作に応じて本体フレームを法面に沿って昇降させた後、所望位置に昇降させた本体フレームを固定手段にて法面に固定させる一方、法面の斜度に応じて前記床板を回動させて略水平に支持させるようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1記載の法面用仮設足場によれば、工事現場や山等の法面に設置する法面用仮設足場であって、平行に配した一対の傾斜支柱を横架材にて連結して本体フレームと成し、該本体フレームには床板の一端を回動自在に軸着し、かつ該床板を傾斜支柱に対して任意の角度にて支持する支持手段を備えると共に、前記本体フレームの前端部には法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の索状体を係止させる係止片を備える一方、本体フレームの前後端部には本体フレームを法面に固定させる固定手段を備えたので、構造も簡単で取り扱いやすく、比較的手軽にかつ低コストにて作業員の負担軽減に有用な法面用の仮設足場を設置することが可能となる。
【0012】
また、請求項2記載の法面用仮設足場によれば、前記固定手段は、本体フレームの前後端部に固定アンカー挿通用の挿通孔を備え、該挿通孔を介して法面に固定アンカーを打ち込むことにより固定可能なように構成して成るので、構造も簡単で取り扱いやすく、比較的手軽にかつ低コストにて作業員の負担軽減に有用な法面用の仮設足場を設置することが可能となる。
【0013】
また、請求項3記載の法面用仮設足場によれば、前記固定手段は、本体フレームの前後端部に係止金具を備え、法面上に設置した鋼管に前記係止金具を係止させることにより固定可能なように構成して成るので、構造も簡単で取り扱いやすく、比較的手軽にかつ低コストにて作業員の負担軽減に有用な法面用の仮設足場を設置することが可能となる。
【0014】
また、請求項4記載の法面用仮設足場の設置方法によれば、工事現場や山等の法面に設置する法面用仮設足場の設置方法であって、平行に配した一対の傾斜支柱を横架材にて連結して本体フレームと成し、該本体フレームには床板の一端を回動自在に軸着し、かつ該床板を傾斜支柱に対して任意の角度にて支持可能に構成し、法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の索状体を前記本体フレームに係止させ、索状体の繰り出し、引き上げ操作に応じて本体フレームを法面に沿って昇降させた後、所望位置に昇降させた本体フレームを固定手段にて法面に固定させる一方、法面の斜度に応じて前記床板を回動させて略水平に支持させるようにしたので、構造も簡単で取り扱いやすく、比較的手軽にかつ低コストにて作業員の負担軽減に有用な法面用の仮設足場を設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る法面用仮設足場の一実施例の正面図である。
【図2】図1の一部切り欠き平面図である。
【図3】設置状態を示す法面用仮設足場の正面図である。
【図4】法面用仮設足場の設置例の説明斜視図である。
【図5】別の実施例の図3に相当する図である。
【図6】別の実施例の図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る法面用仮設足場によれば、平行に配した一対の傾斜支柱を横架材にて連結して本体フレームと成し、該本体フレームには床板の一端を回動自在に軸着し、かつ該床板を任意の角度にて支持可能とする支持手段を備えていると共に、本体フレームの前端部には法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の、例えばワイヤーロープ等の索状体を係止させる係止片を備えている一方、本体フレームの前後端部には本体フレームを法面に固定支持させる固定手段として、例えば固定アンカーを打ち込むための挿通孔を備えている。
【0017】
そして、工事現場や山等の法面に上記法面用仮設足場を設置するときには、先ず、法面の上方にワイヤーロープ等の索状体の一端部を固定する一方、該索状体の他端部を前記本体フレームの係止片に係止固定させる。次いで、その状態で本体フレームを法面上に配すると共に、索状体を手動、或いはウインチ等を用いて適宜繰り出し・引き上げ操作して、本体フレームを法面に沿って昇降させて所望位置に移動させる。そして、本体フレームの前後端部に設けた挿通孔を介して法面に対して固定アンカーを打ち込み、本体フレームを法面上に確実に固定させた後、法面の斜度に応じて前記床板を回動操作して略水平にした上で支持手段にて固定支持させ、必要に応じて床板周囲に手摺りを設置する等して法面用仮設足場の設置作業を完了する。
【0018】
そうして、作業者は法面に固定支持された法面用仮設足場の水平な床板上に乗って安全を確保しながら各種作業を行ったり、作業の合間には休憩場所として使用したり、或いは嵩張る資材や機材等を一時的に預け置く場所等として有効に活用する。
【0019】
また、作業の進行等に応じて前記法面用仮設足場の設置場所を変更したり、或いは工事の終了に伴い、法面から取り外して回収するような場合には、索状体によって本体フレームを吊下支持しつつ固定アンカーを抜き取って固定を解除した後、索状体を適宜繰り出し・引き上げ操作して本体フレームを法面に沿って昇降させ、次作業場所まで移動させてから固定アンカーを再び打ち込んで法面に固定支持させて再設置したり、或いは法面の上端部、若しくは下端部まで昇降移動させて回収を行う。
【0020】
このように、装置構造が簡単で設置・除去作業も容易で取り扱いやすく、比較的手軽にかつ低コストにて運用でき、小規模な作業現場等においても無理なく採用できて、法面における作業員の負担を効果的に軽減することが可能となる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図中の1は、工事現場や山等の法面に設置する法面用仮設足場であって、平行に配した一対の傾斜支柱2を横架材3にて連結して本体フレーム4と成していると共に、該本体フレーム4には床板5の前端部を軸体6にて回動自在に軸着し、かつ該床板5を傾斜支柱2に対して任意の角度にて支持可能とする支持手段7を備えている。
【0023】
前記床板5は方形状の板材であって、例えば作業員がそこに乗って作業を行ったり、或いは作業に要する各種資材や機材等を一時的に預け置くことが可能な程度の適宜広さに形成しており、法面への設置時には法面の斜度等に応じて回動して水平となるように調整した後に支持手段7にて固定支持させる一方、運搬・収納時には本体フレーム4側に折り畳んで本体フレーム4と密着させるようにして嵩張らないようにしている。
【0024】
前記支持手段7は、その形態として様々なものが想定できるが、例えば本実施例においては、傾斜支柱2の側面に長手方向に沿って角度調整用の長孔8を穿設していると共に、該長孔8と同一形状の長孔に所定間隔にて丸形の透孔を穿設したボルト固定板9を前記長孔8に重ね合わせて固着し、締結用ボルト10の太径部11を嵌め入れる窪み12を長孔8に沿って複数形成している。
【0025】
また、床板5の底面部には床板5を傾斜支柱2へ支持させるための支持材13の一端を軸体14にて回動自在に軸着している一方、前記支持材13の他端を前記長孔8に挿入した締結用ボルト10に螺着しており、該締結用ボルト10を締緩操作し、締結用ボルト10の太径部11を嵌め入れる窪み12を適宜変更操作することにより、床板5を傾斜支柱2に対して容易に任意の角度に調整できるようにしている。
【0026】
前記本体フレーム4の前端部には本体フレーム昇降用の、例えばワイヤーロープ等の索状体Aを係止させる係止片15を備えている一方、本体フレーム4の前後端部の四隅には本体フレーム4を法面に対して安定して固定支持させる固定手段16を備えている。
【0027】
前記固定手段16としては、例えば、図1〜図4に示すように、本体フレーム4の四隅部分の側方へ支持片17を突設し、該支持片17の略中央部には固定アンカー挿通用の挿通孔18を穿設して、該挿通孔18を介して法面に固定アンカーBを打ち込むことにより、本体フレーム4を法面へ強固に固定支持可能なように構成している。
【0028】
なお、図5〜図6は固定手段16の別の実施例を採用したものであって、本体フレーム4の傾斜支柱2両端部にクランプ等の係止金具19を備える一方、法面上に所定間隔にて設置した鋼管Cに前記係止金具19を係止させることにより、本体フレーム4を法面へ強固にかつ容易に固定支持可能なように構成している。
【0029】
また、前記床板5の周囲には手摺材20を着脱自在に立設しており、作業員の安全確保を図っている。また、前記本体フレーム4を構成する傾斜支柱2や横架材3、床板5、手摺材20等の主要部をアルミ製としており、人力にて容易に持ち運べ、かつ法面での昇降作業も容易に行えるように軽量化を図っている。
【0030】
そして、上記構成の法面用仮設足場1を工事現場や山等の法面に設置するときには、先ず、法面の上方にワイヤーロープ等の索状体Aの一端部を固定する一方、該索状体Aの他端部に固着した係止フック等を本体フレーム4前端部の係止片15に係止させて固定させる。次いで、その状態で本体フレーム4を法面上に配し、索状体Aを人力にて、或いはウインチ等を用いて適宜繰り出し・引き上げ操作して、本体フレーム4を法面に沿って昇降させて所望位置に移動させる。そして、本体フレーム4の前後端部に備えた固定手段16である、支持片17の挿通孔18にそれぞれ固定アンカーBを打ち込んで、本体フレーム4を法面上に確実に固定支持させた後、法面の斜度や起伏等に応じて前記床板5を回動操作して略水平に調整した上で支持手段7にて固定支持させる。そして、必要に応じて床板5周囲に手摺材20を立設し、法面用仮設足場1の設置作業を完了する。
【0031】
一方、工事作業の進行等に応じて前記法面用仮設足場1の設置場所を移したり、或いは工事終了に伴って法面用仮設足場1を法面から取り外して回収するような場合には、法面上方から吊下する索状体Aにて本体フレーム4を吊下支持しつつ、本体フレーム4の前後端部の挿通孔18に打ち込んだ固定アンカーBを一旦抜き取って法面への固定を解除した後、前記同様に索状体Aを適宜繰り出し・引き上げ操作して本体フレーム4を法面に沿って昇降させて所望の場所へ移動させた後、挿通孔18へ固定アンカーBを再び打ち込んで法面に固定支持させたり、或いは法面の上端部、若しくは下端部まで昇降移動させた後、手摺材20を取り外すと共に床板5を折り畳んで回収する。
【0032】
このように、本発明に係る法面用仮設足場1は、その装置構造が簡単かつ軽量なものであり、人力でも持ち運べ、設置・除去作業等も容易で取り扱いやすく、比較的手軽にかつ低コストにて運用でき、例えば小規模な作業現場や、簡単なメンテナンス程度の作業等を行う場合においても無理なく採用することができる。そして、法面への設置時には、作業者は法面用仮設足場1の水平に調整した床板5上に乗って安全を確保しながら作業を行ったり、作業の合間等には休憩場所として使用したり、或いは作業に要する資材や機材等を一時的に預け置く場所等として有効に活用でき、法面における現場作業員の負担を効果的に軽減することが可能となる。
【0033】
なお、本実施例においては、法面に対して法面用仮設足場1を一基単独で設置する例をあげたが、例えば、二基またはそれ以上の法面用仮設足場1を法面の水平方向へ連設し、広い作業スペースを確保して作業用ステージとして利用するようにしたり、法面の幅方向への移動用の仮設通路等として利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…法面用仮設足場 2…傾斜支柱
3…横架材 4…本体フレーム
5…床板 7…支持手段
15…係止片 16…固定手段
18…挿通孔
A…索状体 B…固定アンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場や山等の法面に設置する法面用仮設足場であって、平行に配した一対の傾斜支柱を横架材にて連結して本体フレームと成し、該本体フレームには床板の一端を回動自在に軸着し、かつ該床板を傾斜支柱に対して任意の角度にて支持する支持手段を備えると共に、前記本体フレームの前端部には法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の索状体を係止させる係止片を備える一方、本体フレームの前後端部には本体フレームを法面に固定させる固定手段を備えたことを特徴とする法面用仮設足場。
【請求項2】
前記固定手段は、本体フレームの前後端部に固定アンカー挿通用の挿通孔を備え、該挿通孔を介して法面に固定アンカーを打ち込むことにより固定可能なように構成して成ることを特徴とする請求項1記載の法面用仮設足場。
【請求項3】
前記固定手段は、本体フレームの前後端部に係止金具を備え、法面上に設置した鋼管に前記係止金具を係止させることにより固定可能なように構成して成ることを特徴とする請求項1記載の法面用仮設足場。
【請求項4】
工事現場や山等の法面に設置する法面用仮設足場の設置方法であって、平行に配した一対の傾斜支柱を横架材にて連結して本体フレームと成し、該本体フレームには床板の一端を回動自在に軸着し、かつ該床板を傾斜支柱に対して任意の角度にて支持可能に構成し、法面上方より吊下した本体フレーム昇降用の索状体を前記本体フレームに係止させ、索状体の繰り出し、引き上げ操作に応じて本体フレームを法面に沿って昇降させた後、所望位置に昇降させた本体フレームを固定手段にて法面に固定させる一方、法面の斜度に応じて前記床板を回動させて略水平に支持させるようにしたことを特徴とする法面用仮設足場の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−2030(P2012−2030A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140225(P2010−140225)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【出願人】(598104436)日工セック株式会社 (18)
【Fターム(参考)】