説明

泡放出用ポンプ機構および、泡放出用ポンプ機構を備えたポンプ式製品

【課題】ポンプ作動に最低限必要な構成要素からなり、泡生成機能なしの既存のポンプ機構にそのまま使用できるポンプコアユニットを泡放出用ポンプ機構にも転用することで、当該コアユニットの需要拡大を図り、それにともなう大量生産化,コストダウン化を図ることを目的とする。
【解決手段】ステム11,12,吐出弁13,吸込弁14,コイルスプリング15,汎用ハウジング16,筒状ブッシュ17およびディップチューブ18からなるポンプコアユニット11〜18を作成している。泡放出用ポンプ機構の製造に際しては、このポンプユニットに、ピストン21,22,空気流入出弁23および泡生成用ハウジング24からなる泡生成用の空気混入作用部を付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出操作時の容器内容物と空気との混合作用に基づく泡生成機能を備えていない既存のポンプ機構のポンプコアユニットに、泡生成用の空気混入作用部を付加した形の泡放出用ポンプ機構などに関する。
【0002】
すなわち、ステム,吸込弁,吐出弁,ハウジング,ステム付勢用弾性体および、(ハウジング上側開口部に取り付けられてステム,吐出弁などをハウジングに保持する)筒状保持部などからなって、泡生成機能なしの既存のポンプ機構の一部であるポンプコアユニットを、そのまま構成要素とした形の泡放出用ポンプ機構に関する。
【0003】
適用対象の液状内容物としては、例えば石けん,消毒剤,化粧品,乳液、シェービングフォーム,ヘアスタイリングフォーム,洗剤,染毛剤,シャンプー,リンス,殺虫剤など、後述のように各種のものがある。
【背景技術】
【0004】
ポンプ容器に収容された液状内容物の泡生成機能を持つ泡放出用ポンプ機構は、例えば下記の特許文献1で開示されている。
【0005】
ポンプ機能および泡生成機能を併せ備えたこの泡放出用ポンプ機構は少なくとも、当該機能自体のためにいわば必然的ともいえる、次の各構成要素を有している。
(a)容器内容物に対する吸込弁
(b)容器内容物に対する吐出弁
(c)吐出弁との弁作用により容器内容物が流入して外部空間に放出されるための内部通路を備え、かつ、内容物放出用操作部と連動するステム
(d)ステムと一体で、当該ステムの下流側通路および泡生成部として作用する筒状の内容物通過用部材
(e)ステム・内容物通過用部材,吸込弁および吐出弁のそれぞれを移動可能な形で保持して、当該ステムおよび当該吐出弁と、当該吸込弁との間に次回放出対象内容物の貯留空間域を画定するハウジング
(f)ステムを上方向に付勢するコイルスプリング
(g)内容物通過用部材の周面部分に形成された空気流入通路
(h)内容物通過用部材により内容物放出操作時は押下げられる、また、内容物放出操作解除時は押し上げられる形で、ハウジング内部に配設されて、内容物放出操作時に空気流入通路を開状態に設定する空気流入出弁
(i)ハウジングに取り付けられて、泡放出用ポンプ機構全体をいわばユニット化するためのネジキャップ
(j)内容物通過用部材に取り付けられたスパウト(内容物放出操作部)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−27636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来の泡放出用ポンプ機構のポンプ作動に直に関係する上記(a)〜(h)の構成要素の中、(a)吸込弁,(b)吐出弁,(c)ステム,(f)コイルスプリングおよび(g)内容物流入用チューブは、泡生成機能なしの通常のポンプ機構に対してもそのまま使える汎用構成要素といえる。
【0008】
なお、内容物流入用チューブを備えないタイプのポンプ機構の場合の汎用構成要素は、勿論、当該チューブを捨象した形の上記(a),(b),(c),(f)である。
【0009】
他方、(d)内容物通過用部材,(e)ハウジング,(g)空気流入通路および(h)空気流入出弁は、泡生成のための空気混入用構成要素といえる。なお、ハウジングは、空気流入出弁に対するシール部としても作用するので、当該空気混入用構成要素に分類される。
【0010】
本件出願は、泡放出用ポンプ機構がこのように、ポンプ作動のためのポンプ汎用構成要素と、泡生成のための空気混入用構成要素とを有している点に着目したものである。
【0011】
すなわち、このポンプ汎用構成要素の範囲を、泡放出用ポンプ機構に特化した態様での各構成要素単位の集合として把握せずに、泡生成機能なしのポンプ機構の構成要素単位で把握するものである。
【0012】
具体的には、吸込弁および吐出弁に対応した内容物貯留用空間域および空気流入出弁に対応した空気貯留用空間域をそれぞれ設定する単一のハウジングを、概念上、内容物貯留用空間域の設定部分からなって泡生成機能なしのポンプ機構にも転用できる汎用ハウジングと、空気貯留用空間域の設定部分からなる泡生成用ハウジングとの2つに分け、この汎用ハウジングをポンプ汎用構成要素のメンバーとする。
【0013】
そして、この汎用ハウジングに上記筒状保持部を取り付けることにより、上述のようにステム,吸込弁,吐出弁,ステム付勢用弾性体などが汎用ハウジングに保持された形のポンプコアユニットが、泡放出用ポンプ機構の構成ユニットとして生成される。
【0014】
このポンプコアユニットは、ステム,ステム付勢用の弾性体(コイルスプリングなど),吸込弁,吐出弁およびハウジングなどといった、ポンプ作動のために必要な最低限の構成要素を備えており、泡生成機能なしの通常のポンプ機構にもそのまま転用できる。
【0015】
このポンプコアユニット自体を所定のネジキャップにセットした状態で容器本体に取り付けることにより、泡生成機能なしのポンプ機構が生成される。
【0016】
本発明はこのように、泡放出用ポンプ機構の構成要素を、泡生成機能なしのポンプ機構に直に転用できるポンプコアユニットおよび、それに付加される形の泡生成作用部(空気混入作用部)などの単位で弁別する、といった発想に基づいている。
【0017】
すなわち、泡放出用ポンプ機構のポンプ作動に必要な構成要素からなるポンプコアユニットを、泡生成機能なしの既存のポンプ機構の場合にもそのまま使用できるいわば共通プラットフォームとしての位置付けで設定し、これにより当該ポンプコアユニット自体の需要拡大、およびこれにともなう大量生産化,コストダウン化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)放出操作時の容器内容物および空気の混合作用に基づく泡生成機能を備えていないポンプコアユニットに、泡生成用の空気混入作用部を付加した態様の泡放出用ポンプ機構であり、
前記ポンプコアユニットとして、
前記放出操作時の内容物通過用の内部通路(例えば後述の内容物放出通路Bの上流側)を有するステム(例えば後述の上側ステム部材11,下側ステム部材12)と、
前記容器内容物に対する吸込弁(例えば後述の吸込弁14)および吐出弁(例えば後述の吐出弁13)と、
当該ステム,当該吸込弁および当該吐出弁のそれぞれを移動可能な形で保持して、当該ステムおよび当該吐出弁と、当該吸込弁との間に次回放出対象内容物の貯留空間域(例えば後述の内容物貯留用空間域A)を画定する第1のハウジング(例えば後述の汎用ハウジング16)と、
当該第1のハウジングの内部に配設されて当該ステムを上方向に付勢する弾性部材(例えば後述のコイルスプリング15)と、
当該第1のハウジングの上側開口部に取り付けられて、内部を当該ステムが移動し、かつ、当該ステム,当該吸込弁,当該吐出弁および当該弾性部材が当該ハウジングから脱落するのを阻止するための筒状保持部(例えば後述の筒状ブッシュ17)と、
からなるものを用い、
前記泡生成用の空気混入作用部として、
前記ステムに取り付けられて、前記内部通路から続く下流側内容物通路(例えば後述の内容物放出通路Bの下流側)および当該下流側内容物通路への外気流入通路(例えば後述の溝状部22a,横孔部21b)を有し、かつ、内容物放出操作部(例えば後述のスパウト28)と連動するピストン(例えば後述の下側ステム延伸部材21,上側ステム延伸部材22)と、
内容物放出操作時に当該外気流入通路を開状態に設定する弁部材(例えば後述の空気流入出弁23)と、
前記第1のハウジングおよび容器本体(例えば後述の容器本体25)側に取り付けられて、当該弁部材との間で外気貯留空間域(例えば後述の空気貯留用空間域C)を画定する第2のハウジング(例えば後述の泡生成用ハウジング24)と、
を備えたものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記弁部材として、
前記ピストンの周りに設けられた環状部材あって、
内容物放出操作時、先ず当該ピストンが当該弁部材に対して移動することにより前記外気流入通路をそれまでの閉状態から開状態に変化させ、続いて当該ピストンとの連動により前記外気貯留空間域の空気を当該外気流入通路に流入させる作用を呈する弁部材である、
ものを用いる。
【0019】
本発明は、以上の構成からなる泡放出用ポンプ機構および当該泡放出用ポンプ機構を備えたポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明はこのように、泡放出用ポンプ機構のポンプ作動にいわば最低限必要な構成要素からなるポンプコアユニットを、泡生成機能なしの既存のポンプ機構の場合に対してもそのまま使用できるいわば共通プラットフォームの形に位置付けているので、当該ポンプコアユニット自体の需要拡大、およびこれにともなう大量生産化,コストダウン化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】泡放出用ポンプ機構の静止モードを示す説明図である。
【図2】泡放出用ポンプ機構の作動モードを示す説明図である。
【図3】図2の作動モードに続くステム下死点状態を示す説明図である。
【図4】図3のステム下死点状態から静止モードへ復帰する際の内容物吸上(吸込)状態を示す説明図である。
【図5】泡放出用ポンプ機構の組立作業手順を示す説明図(その1)である。
【図6】泡放出用ポンプ機構の組立作業手順を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図6を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0023】
以上の図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば縦溝状部11a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば上側ステム部材11)の一部であることを示している。
【0024】
図1〜図6のポンプコアユニットに関して、
11は後述の下側ステム延伸部材21嵌合している筒状の上側ステム部材,
11aは後述の下側ステム部材12との嵌合部分に形成された内容物通過用の縦溝状部,
11bは内容物放出操作時に後述の吐出弁13の上内側逆スカート部13bの上端部と当接して当該吐出弁を下方に移動させる環状段部,
12は上側ステム部材11と嵌合している鞘状の下側ステム部材,
12aは下端側に形成されて後述の汎用ハウジング16の内周面に当接しながら上下動するスカート部,
12bは当該スカート部の下端側外周面に形成された内容物通過用の下縦溝状部,
12cは後述の吐出弁13(弁作用部13a)の弁座としての環状受け部,
12dは当該環状受け部の直上側外周面に形成された内容物通過用の上縦溝状部,
13は上側ステム部材11と下側ステム部材12との間に配設された、内容物に対する環状の吐出弁,
13aは当該吐出弁の内筒下端側であって、下側ステム部材12の環状受け部12cとの間の開閉作用を呈する弁作用部,
13bは当該弁作用部から上方に続く部分であって、上側ステム部材11の下側内周面に密接しながら相対的に上下動する上内側逆スカート部,
13cは後述の汎用ハウジング16の内周面に密接しながら上下方向に移動する上外側逆スカート部,
13dは後述の汎用ハウジング16の内周面に密接しながら上下方向に移動する下外側スカート部,
14は内容物に対する吸込弁(ボール弁),
15は後述の汎用ハウジング16の内部に配設されて、下側ステム部材12およびこれと一体の上側ステム部材11を上方向に付勢するコイルスプリング,
16は上側ステム部材11,下側ステム部材12,吐出弁13,吸込弁14およびコイルスプリング15などを収容し、かつ、泡生成機能なしのポンプ機構を用いる場合の容器本体に取り付けられる筒状の汎用ハウジング,
16aは吸込弁14に対する環状の弁座,
16bは当該弁座の直上流側に形成された下側筒状部,
16cは当該弁座の略直下流側に形成されて、コイルスプリング15の下側部分を保持するともに後述のヘッド部(上側ステム部材11,下側ステム部材12など)の下死点位置を画定する縦リブ状部,
16dは作動モードが終了して静止モードへ復帰する際、容器本体内部の負圧化防止のために作用する外気入力用の周知の横孔部,
17は汎用ハウジング16の上側開口部に嵌合する形で取り付けられて吐出弁13の上動限界位置を設定する機能を備えた筒状ブッシュ,
18は汎用ハウジング16の下側筒状部16bに取り付けられた内容物流入用のディップチューブ,
Aは静止モードにおいて、汎用ハウジング16内部の、吐出弁13(および下側ステム部材12)と吸込弁14との間に、閉じた形で設定される内容物貯留用空間域,
をそれぞれ示している。
【0025】
なお、図示のディップチューブありのポンプ式製品の場合、「上側ステム部材11〜ディップチューブ18」の各構成要素を組み立てた状態のユニットが、上述の「泡生成機能なしのポンプ機構に直に転用できるポンプコアユニット」に相当する。
【0026】
また、泡生成用の空気混入作用部などに関して、
21は上側ステム部材11と嵌合している筒状の下側ステム延伸部材,
21aは後述の空気流入出弁23のいわば弁座としての機能を有し、作動モードにおいて、上側ステム部材11の直下流側内容物通路へ流入する空気の入口部分を構成する環状受け部,
21bは当該直下流側内容物通路への空気流入用の横孔部,
22は下側ステム延伸部材21と嵌合している筒状の上側ステム延伸部材,
22aは下側ステム延伸部材21と嵌合する環凹状内面部分に形成されて、横孔部21bへと通じる空気流入用の断面「コの字状」溝状部,
22bは下面部分に形成されて、後述の空気流入出弁23(環凸状部23e)との間で開閉作用を呈する環凹状部,
23は下側ステム延伸部材21と上側ステム延伸部材22との間に配設された泡生成用の環状の空気流入出弁,
23aは下側ステム延伸部材21の外周面部分との間に空気通過域が設定される中央筒状部,
23bは当該中央筒状部の下端側に形成されて、下側ステム延伸部材21の環状受け部21aとの間で開閉作用を呈する環状弁作用部,
23cは当該中央筒状部の上側に形成されて、上側ステム延伸部材22の下側内周面に密接しながら相対的に上下動する上内側逆スカート部,
23dは外気流入用の縦孔部,
23eは当該縦孔部の外側上面に形成されて上側ステム延伸部材22(環凹状部22b)との間で開閉作用を呈する環凸状部,
23fは後述の泡生成用ハウジング24の内周面に密接しながら上下方向に移動する上外側逆スカート部,
23gは後述の泡生成用ハウジング24の内周面に密接しながら上下方向に移動する下外側スカート部,
24は汎用ハウジング16を嵌合保持し、下側ステム延伸部材21および空気流入出弁23などを収容し、かつ、後述のネジキャップ26に嵌合して、当該ネジキャップと容器本体25との間に挟持される有底筒状の泡生成用ハウジング,
24aは外気流入用の横孔部,
24bは上端側外周面に形成された環状の鍔部分,
25は後述の放出対象の各種液状内容物が収納された容器本体,
26は容器本体25に螺合態様で取り付けられたネジキャップ,
27は容器本体25とネジキャップ26との間のシール作用を呈する環状パッキン,
28は上側ステム延伸部材22に嵌合されているスパウト(内容物放出操作部),
28aは内容物通路,
29は下側ステム延伸部材21の上端開口部(内容物流出側開口部)に設けられた泡生成用の上流側メッシュ部材,
30は上側ステム延伸部材22の上端開口部(内容物流出側開口部)に設けられた泡生成用の下流側メッシュ部材,
31はネジキャップ26の上側筒状部に着脱自在な形で取り付けられて、スパウト28の下方向への移動(=作動モードへの移動)を阻止する、すなわち当該スパウトの誤操作によって作動モードに移行しないようにする周知のストッパ部材,
Bは上側ステム部材11,下側ステム延伸部材21,上側ステム延伸部材22およびスパウト28の各内部空間からなる内容物放出通路,
Cは静止モードにおいて、泡生成用ハウジング24内部の、空気流入出弁23(および下側ステム延伸部材21)と筒状ブッシュ17との間に、外部空間域と連通する形で、設定される空気貯留用空間域,
をそれぞれ示している。
【0027】
ここで、上側ステム部材11,下側ステム部材12,吐出弁13,汎用ハウジング16,筒状ブッシュ17,ディップチューブ18,下側ステム延伸部材21,上側ステム延伸部材22,空気流入出弁23,泡生成用ハウジング24,容器本体25,ネジキャップ26,スパウト28およびストッパ部材31はそれぞれ、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0028】
吸込弁14,コイルスプリング15,上流側メッシュ部材29および下流側メッシュ部材30は金属製や合成樹脂製のものである。また、環状パッキン27はゴム製や合成樹脂製のものである。
【0029】
図示のポンプ機構における基本的特徴は、
(11)泡生成機能を備えていないポンプコアユニットが、
・上側ステム部材11,下側ステム部材12
・吐出弁13および吸込弁14
・コイルスプリング15
・内容物貯留用空間域Aを画定するための汎用ハウジング16
・汎用ハウジング16の上側開口部に取り付けられる筒状ブッシュ17
・ディップチューブ18
からなり、
(12)このポンプコアユニットに付加される泡生成用の空気混入作用部が、
・スパウト28と連動する下側ステム延伸部材21,上側ステム延伸部材22
・空気流入出弁23
・汎用ハウジング16に取り付けられて、空気貯留用空間域Bを画定するための泡生成用ハウジング24
からなり、
(13)そして、このポンプコアユニットは既存の泡生成機能なしのポンプ機構に対するユニットとしても用いられる、
ことである。
【0030】
上記(11)のポンプコアユニットに操作部(例えばスパウト)およびネジキャップを取り付けることにより、泡生成機能なしのポンプ機構が生成される。
【0031】
すなわち、このポンプコアユニットは、これに操作部およびネジキャップを取り付けた形の泡生成機能なしのポンプ機構と、これに上記(12)の空気混入作用部および操作部,ネジキャップを取り付けた形の泡放出用ポンプ機構と、に利用できる。
【0032】
図1の静止モードにおいては、スパウト28などのヘッド部(スパウト28およびこれと一体の上側ステム延伸部材22,下側ステム延伸部材21,上側ステム部材11,下側ステム部材12)がコイルスプリング15の弾性作用によって上方向に移動している。
【0033】
このヘッド部の上動により、
(21)吐出弁13は、その弁作用部13aが下側ステム部材12の環状受け部12cと密接し、
(22)空気流入出弁23は、その環状弁作用部23bが下側ステム延伸部材21の環状受け部21aと密接し、その環凸状部23eが上側ステム延伸部材22の環凹状部22bから離間し、かつ、その上外側逆スカート部23fおよび下外側スカート部23gが泡生成用ハウジング24の横孔部24aをシールする、状態に設定される。
【0034】
吐出弁13の上記(21)の作用により、内容物貯留用空間域Aと、上側ステム部材11,下側ステム延伸部材21,上側ステム延伸部材22およびスパウト28の各内部空間からなる内容物放出通路Bと、が遮断される。
【0035】
また、空気流入出弁23の上記(22)の作用により、空気貯留用空間域Cは内容物放出通路Bから遮断される一方、外部空間域と連通し、かつ、容器本体25内部は外部空間域から遮断される。
【0036】
すなわち、閉空間状態の内容物貯留用空間域Aには放出対象内容物が収納され、外部空間域と連通して内容物放出通路Bから遮断された状態の空気貯留用空間域Cには泡生成用の空気が収納されている。なお、これら放出対象内容物および空気の収納処理はそれぞれ、図4に示すように、直前の作動モード設定操作の解除にともなうヘッド部の静止モードへの復帰動作の際に実行される。
【0037】
かつ、泡生成用ハウジング24の横孔部24aは空気流入出弁23でシールされているので、ポンプ式製品が倒れた場合にも当該横孔部から容器内容物が外部に洩れるようなことはない。
【0038】
図2に示すように、利用者のスパウト28に対する押圧操作により、静止モードのヘッド部(スパウト28およびこれと一体の上側ステム延伸部材22,下側ステム延伸部材21,上側ステム部材11,下側ステム部材12)がコイルスプリング15に抗する形で押し下げられると、吐出弁13および空気流入出弁23はそれぞれ放出状態(作動モード)に遷移する。なお、押圧操作に先立って、勿論、ストッパ部材30をネジキャップ26から取り外すことが必要である。
【0039】
この遷移過程(図2)では、当該ヘッド部が下動するのにともない内容物貯留用空間域Aの容積が小さくなってそこでの内容物圧力が大きくなるため、吐出弁13は下側ステム部材12との関係で相対的に上昇してその弁作用部13aと当該下側ステム部材の環状受け部12cとのそれまでの閉状態が開状態へと変化し、かつ吸込弁14は閉状態を維持する。
【0040】
なお、下側ステム部材12に対して上昇する吐出弁13は、その上内側逆スカート部13bの上端部が上側ステム部材11の環状段部11bに当接し、その後は上記ヘッド部とともに下方向に移動する。
【0041】
その結果、内容物貯留用空間域Aの内容物は、「下側ステム部材12の下縦溝状部12b−環状受け部12cと弁作用部13aとの間の開部分−下側ステム部材12の上縦溝状部12d−上側ステム部材11の縦溝状部11a−内容物放出通路B」を経て、外部空間域に放出される。
【0042】
一方、空気流入出弁23は、スパウト28の押圧操作により、その環凸状部23eが上側ステム延伸部材22の環凹状部22bと当接し、かつ、その環状弁作用部23bが下側ステム延伸部材21の環状受け部21aから離間した状態に移行する。そして、その後の空気流入出弁23は上記ヘッド部とともに下方向に移動する。
【0043】
空気流入出弁23の当該下方向への移動にともない、空気貯留用空間域Cの容積が小さくなってそこでの空気圧力が増大し、当該空気流入出弁に作用する上方向への力が大きくなるため、上述の環状弁作用部23bと環状受け部21aとの離間状態は維持される。
【0044】
そして、空気貯留用空間域Cの空気は、「環状弁作用部23bと環状受け部21aとの間の開部分−空気流入出弁23の中央筒状部23aと下側ステム延伸部材21の外周面との間の空隙部分−上側ステム延伸部材22の溝状部22a−下側ステム延伸部材21の横孔部21b」を経て内容物放出通路Bに送られる。
【0045】
このように内容物放出通路Bには、スパウト28の押圧操作にともなって内容物貯留用空間域Aの内容物と空気貯留用空間域Cの空気とが流入する。
【0046】
内容物放出通路Bに流入した内容物および空気は、先ず混合された段階で泡立ち状態となり、上流側メッシュ部材29および下流側メッシュ部材30を通過することにより内容物の泡が細分化し、また均質化する。
【0047】
図2の作動モードでは、空気流入出弁23の下方向への移動により泡生成用ハウジング24の横孔部24aが外部空間域と連通した状態、すなわち容器本体25の内部が外部空間域と連通した状態になっている。この連通状態は図3(ステム下死点位置)および図4(内容物吸上・吸込態様)の各モードでも継続される。
【0048】
なお、空気流入出弁23の下方向への移動により、当該空気流入出弁および上側ステム延伸部材22より上方のネジキャップ26の内部空間域の容積が大きくなるので、外気が、矢印で示すように当該内部空間域に流入する。
【0049】
このとき空気流入出弁23の環凸状部23eと上側ステム延伸部材22の環凹状部22bとの間は「閉」になっているので、外気が、空気貯留用空間域Cまで流入することはない。
【0050】
図3は、図2の作動モードの終了段階を示している。
すなわち、上記ヘッド部(スパウト28およびこれと一体の上側ステム延伸部材22,下側ステム延伸部材21,上側ステム部材11,下側ステム部材12)が最下点まで移動した状態である。
【0051】
この移動後の下側ステム部材12は、その下端部分が汎用ハウジング16の縦リブ状部16cの上端部分に当接して保持された、状態になっている。
【0052】
図3に作動モード終了段階において、
・上側ステム部材11,下側ステム部材12と吸込弁14との位置関係
・上側ステム延伸部材22,下側ステム延伸部材21と空気流入出弁23との位置関係
はともに、図2のそれぞれと同じである。また、泡生成用ハウジング24の横孔部24aも、図2と同じく外部空間域と連通している。
【0053】
図4は、利用者がスパウト28の押圧操作を解除することによって生じる静止モードへの復帰状態を示している。
【0054】
スパウト28の押圧操作が解除されると、上記ヘッド部(上側ステム延伸部材22,下側ステム延伸部材21,上側ステム部材11,下側ステム部材12)が、コイルスプリング15の弾性作用により上方向に移動する。
【0055】
このヘッド部の上動にともない、先ず、
(31)下側ステム部材12の環状受け部12cと吐出弁13の弁作用部13aとの、それまでの開状態が閉状態へと変化し、
(32)下側ステム延伸部材21の環状受け部21aと空気流入出弁23の環状弁作用部23bとの、それまでの開状態が閉状態へと変化し、
(33)上側ステム延伸部材22の環凹状部22bと空気流入出弁23の環凸状部23eとの、それまでの閉状態が開状態へと変化する。
【0056】
上記ヘッド部の、これら(31),(32),(33)の変化後のさらなる上動にともない、周知のごとく、
(41)内容物貯留用空間域Aは、その容積が増加して容器本体25内部に対し負圧になるので、吸込弁14が上昇して弁座16aから離間し、その結果、容器本体25の内容物が、図示矢印で示すように当該離間部分から内容物貯留用空間域Aに流入し、
(42)この内容物の流入に起因する容器本体25内部の負圧化を防止すべく、外気が、図示矢印で示すように泡生成用ハウジング24の横孔部24aから容器本体内部に流入し、
(43)また、空気貯留用空間域Cもその容積が増加して外部空間域に対し負圧になるので、外気が、図示矢印で示すように空気流入出弁23の縦孔部23dから当該空気貯留用空間域に流入する。
【0057】
そして周知のように、これらの内容物貯留用空間域Aへの内容物流入ならびに、容器本体25内部および空気貯留用空間域Cへの外気流入が終了して、図1の静止モードに復帰する。
【0058】
なお、内容物貯留用空間域Aへの内容物流入が終了するのは、吸込弁14が下方向に受ける内容物貯留用空間域Aからの内容物圧力および当該吸込弁の自重と、吸込弁14が上方向に受ける容器本体25からの内容物圧力と、がバランスしたときである。このとき、吸込弁14は落下して弁座16aに当接する。
【0059】
図5および図6は泡放出用ポンプ機構の組立作業の手順を示している。
【0060】
組立作業手順の内容は例えば次のようになっている。
(51)「上側ステム部材11,下側ステム部材12,吐出弁13,吸込弁14,コイルスプリング15,汎用ハウジング16,筒状ブッシュ17およびディップチューブ18」からなるポンプコアユニットを、泡生成用ハウジング24に嵌合させて取り付ける。
(52)環状パッキン27を、泡生成用ハウジング24の環状鍔部24bの下面部分に取り付ける。
(53)空気流入出弁23と、当該空気流入出弁を挟み込んだ形で嵌合している上側ステム延伸部材22および下側ステム延伸部材21と、からなる泡生成用ユニットの当該下側ステム延伸部材を、上側ステム部材11に嵌合させて取り付ける。
(54)ネジキャップ26を、泡生成用ハウジング24に嵌合させて取り付ける。
(55)スパウト28を、上側ステム延伸部材22に嵌合させて取り付ける。
(56)ストッパ部材31を、ネジキャップ26の上側筒状部に取り付ける。
【0061】
なお、ポンプコアユニットの組立作業手順の内容は例えば次のようになっている。
(61)吸込弁14を、汎用ハウジング16の弁座16aの部分に設定する。
(62)次に、コイルスプリング15を、汎用ハウジング16の縦リブ状部16cの間に設定する。
(63)次に、吐出弁13と、当該吐出弁を挟み込んだ形で嵌合している上側ステム部材11および下側ステム部材12と、からなるステムユニットを、汎用ハウジング16のコイルスプリング15に載せる形で設定する。
(64)次に、筒状ブッシュ17を、汎用ハウジング16の開口部に嵌合させて取り付ける。
(65)ディップチューブ18を、汎用ハウジング16の下側筒状部16bに取り付ける。
【0062】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり、
(71)汎用ハウジング16の下側筒状部16bをその下端部分が容器本体25の底面部分まで延びる形のものに設定して、ディップチューブ18を省略する、
(72)泡生成用ハウジング24を、汎用ハウジング16の横孔部16dよりも下側の筒状部分を設けない態様のハウジング形状にする、
(73)作動モード設定操作部として、ティルトタイプの回動部材を用いる、
ようにしてもよい。
【0063】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0064】
容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0065】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0066】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0067】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0068】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0069】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0070】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0071】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
11:上側ステム部材
11a:縦溝状部
11b:環状段部
12:下側ステム部材
12a:スカート部
12b:下縦溝状部
12c:環状受け部
12d:上縦溝状部
13:吐出弁
13a:弁作用部
13b:上内側逆スカート部
13c:上外側逆スカート部
13d:下外側スカート部
14:吸込弁(ボール弁)
15:コイルスプリング
16:汎用ハウジング
16a:弁座
16b:下側筒状部
16c:縦リブ状部
16d:横孔部
17:筒状ブッシュ
18:ディップチューブ
21:下側ステム延伸部材
21a:環状受け部
21b:横孔部
22:上側ステム延伸部材
22a:断面「コの字状」溝状部
22b:環凹状部
23:空気流入出弁
23a:中央筒状部
23b:環状弁作用部
23c:上内側逆スカート部
23d:縦孔部
23e:環凸状部
23f:上外側逆スカート部
23g:下外側スカート部
24:泡生成用ハウジング
24a:横孔部
24b:鍔部分
25:容器本体
26:ネジキャップ
27:環状パッキン
28:スパウト(内容物放出操作部)
28a:内容物通路
29:上流側メッシュ部材
30:下流側メッシュ部材
31:ストッパ部材
A:内容物貯留用空間域
B:内容物放出通路
C:空気貯留用空間域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出操作時の容器内容物および空気の混合作用に基づく泡生成機能を備えていないポンプコアユニットに、泡生成用の空気混入作用部を付加した態様の泡放出用ポンプ機構であって、
前記ポンプコアユニットは、
前記放出操作時の内容物通過用の内部通路を有するステムと、
前記容器内容物に対する吸込弁および吐出弁と、
当該ステム,当該吸込弁および当該吐出弁のそれぞれを移動可能な形で保持して、当該ステムおよび当該吐出弁と、当該吸込弁との間に次回放出対象内容物の貯留空間域を画定する第1のハウジングと、
当該第1のハウジングの内部に配設されて当該ステムを上方向に付勢する弾性部材と、
当該第1のハウジングの上側開口部に取り付けられて、内部を当該ステムが移動し、かつ、当該ステム,当該吸込弁,当該吐出弁および当該弾性部材が当該ハウジングから脱落するのを阻止するための筒状保持部と、
からなり、
前記泡生成用の空気混入作用部は、
前記ステムに取り付けられて、前記内部通路から続く下流側内容物通路および当該下流側内容物通路への外気流入通路を有し、かつ、内容物放出操作部と連動するピストンと、
内容物放出操作時に当該外気流入通路を開状態に設定する弁部材と、
前記第1のハウジングおよび容器本体側に取り付けられて、当該弁部材との間で外気貯留空間域を画定する第2のハウジングと、
からなる、
ことを特徴とする泡放出用ポンプ機構。
【請求項2】
前記弁部材は、
前記ピストンの周りに設けられた環状部材あって、
内容物放出操作時、先ず当該ピストンが当該弁部材に対して移動することにより前記外気流入通路をそれまでの閉状態から開状態に変化させ、続いて当該ピストンとの連動により前記外気貯留空間域の空気を当該外気流入通路に流入させる作用を呈する弁部材である、
ことを特徴とする請求項1記載の泡放出用ポンプ機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の泡放出用ポンプ機構を備え、かつ、放出対象の液状内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265009(P2010−265009A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118715(P2009−118715)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】