説明

波エネルギー変換器の改良

波エネルギー変換器の改良は、水の表面下で波エネルギー変換器から吊り下げられるようになっている実質的に剛体のスカート(10)を含む。スカート(10)は、構造の表面上に水粒子のための流路を形成するように垂直方向に延びる長尺状の実質的に円筒状の構造(12)を含む。円筒状構造(12)は、垂直方向に離間した間隔で同心円状に配置される、実質的に等しい直径の一連のリング(14)を含む。リング(14)の円形断面によって形成される湾曲した表面は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成する。このようにして、波の円形水粒子運動から抽出される波エネルギーの垂直方向要素を最大化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋波エネルギーをより使用しやすい形態へ変換するための波エネルギー変換器、及びその改良に関する。
【背景技術】
【0002】
第三の千年紀の始めでは、至る所で人々の持続可能性への関心が増している。化石燃料が有限のエネルギー源であるということを人々が認識すると、再生可能でクリーンなエネルギー源を探索することが、より急を要するものとなってきた。地球温暖化及び気候変動によって、化石燃料に対する我々の依存を少なくする必要性に関心が向けられてきた。最も有望な再生可能エネルギー源の一つは、波エネルギーである。波エネルギーを動力として利用する願望は数百年もの間存在してきたが、過去の試みが経験した成功は限られたものであった。その成功は小規模なものであり、必要とされる数百メガワットではなく、数千キロワット台であった。
【0003】
過去における主要な困難の一つは、海洋の波が有する莫大な力に耐えるのに十分に頑丈なユニットを設計することであった。嵐の状況では、波エネルギーは巨大になることがあり、従来技術による陸地又は岸に基礎を置くシステムの多くに破壊が生じる。波エネルギーを抽出するための典型的な従来技術の方法は、タービン又は水圧システムを使用するものであった。直接駆動のリニア発電機とともに、直接駆動の回転発電機を用いる試みが幾つかあった。しかしながら、最も一般的な従来技術によるエネルギー抽出ユニットは、振動水柱及び水圧リンク回転発電機である。これらは、通常、岸近く又は岸への設置において使用される。これらの従来技術によるシステムの別の欠点は、それらが岸近くになければならないことであり、そこでは、海底による波の減衰のため、得られるエネルギーが低くなる。
【0004】
その内容を参照することにより本明細書に援用する、出願人が本願と共通する国際出願PCT/AU2007/00940号では、最大量の海洋波エネルギーを抽出するために岸近く或いは沖合で使用可能な張力係留システム及び波エネルギー変換器が開示される。
【0005】
(深層水における)波の内部の水粒子は円形軌道で運動するが、波が、非常に少ない損失で長い距離にわたってエネルギーを運ぶことができるのは、このメカニズムによる。水の表面における水粒子について、円形軌道の直径は、波の高さに等しい。しかしながら、水面下では、任意の所与の深さにおける水粒子運動の直径は指数関数的に減少し、波の波長の半分に等しい深さでは、円形軌道の直径は水面と比べて95%減少する。明らかに水面で最大のエネルギーが得られるのであるが、最大量のエネルギーが抽出されるのを容易にするため、このエネルギー勾配の全体からエネルギーを抽出するための手段を有することも必要である。
【0006】
本発明は、水面下のエネルギー勾配から抽出されるであろう波エネルギーを最大化するための構造を含む、波エネルギー変換装置に対する種々の改良を提供するという観点で生み出された。
【0007】
本明細書における従来技術の参照は、説明の目的のためのみに提供するものであり、そのような先行技術がオーストラリア又は他国における共通の一般的知識の一部である旨を自認したものとして理解すべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、波エネルギー変換器の改良が提供され、改良は、水の表面下で波エネルギー変換器から吊り下げられるようになっている実質的に剛体のスカートを含み、スカートは、長尺状の実質的に円筒状の構造を含み、構造は、該構造の表面上に水粒子のための流路を形成するように垂直方向に延び、構造の表面は、進行波の断面のエネルギー勾配からエネルギーの抽出を容易にするような形状とされている。
【0009】
好ましくは、円筒状構造の前記表面は、水平及び垂直両方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するような形状とされており、使用時には、水粒子から抽出される水平及び垂直方向の波エネルギーが最大になることができる。一実施形態において、円筒状構造の表面は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するように、一連の湾曲した表面を含む。有利なことに、実質的に円筒状の構造は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するように、垂直方向に離間した間隔で同心円状に配置される、実質的に等しい直径の一連のリングを含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、波エネルギー変換装置の複数点係留システムが提供され、装置は、没水部材を有する構造を有し、この部材は、平均水位下に、構造と接続されて設けられ、複数点係留システムは、
バラスト手段に対して一端が取り付けられる複数の長尺状柔軟性部材を含み、各長尺状柔軟性部材は、没水部材からプーリ機構を介して吊り下げられるようになっているそれぞれの平衡おもり手段へ延びる。
【0011】
好ましくは、長尺状柔軟性部材は、波エネルギー変換装置がエネルギーを抽出することができる自由度を増すように、互いから離間している。有利なことに、複数点係留システムは、波エネルギー変換装置が全6つの自由度からエネルギーを抽出するのを可能とするように、互いから等距離に離間する3つの長尺状柔軟性部材を含む。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、波エネルギー変換器が提供され、波エネルギー変換器は、
部材を有する構造であって、部材は構造と接続されて設けられ、少なくとも部分的に平均水位下に没水する、構造と、
バラスト手段に対して一端が取り付けられる複数の長尺状柔軟性部材であって、各長尺状柔軟性部材は、少なくとも部分的に没水する部材からプーリ機構を介して吊り下げられるようになっているそれぞれの平衡おもり手段へ延びる、複数の長尺状柔軟性部材と、を含む。
【0013】
好ましくは、波エネルギー変換器は、少なくとも部分的に没水する部材と接続して設けられる実質的に剛体のスカートを更に含み、スカートは、長尺状の実質的に円筒状の構造を含み、円筒状構造は、円筒状構造の表面上に水粒子のための流路を形成するように垂直方向に延び、円筒状構造の表面は、進行波の断面のエネルギー勾配からエネルギーの抽出を容易にするような形状とされている。
【0014】
好ましくは、プーリ機構は複数のプーリを含み、各プーリは、プーリに巻回されるそれぞれの長尺状柔軟性部材を受けるようになっており、使用時には、長尺状部材の直線運動が、プーリによって、波エネルギー変換装置内のエネルギー変換手段を駆動するための回転トルクに変換されることが可能となる。
【0015】
本明細書を通じて、文脈が違う意味にとることを要求しない限り、「含む(comprise)」という用語、或いは、「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」等の変化形は、明示される整数又は整数群を含むが、任意の他の整数又は整数群を除外するものではない旨を意味すると理解されるであろう。同様に、「好ましくは(preferably)」という用語、或いは、「好まれる(preferred)」等の変化形は、明示される整数又は整数群が望ましいが、発明の機能にとって必須ではない旨を意味すると理解されるであろう。
【0016】
本発明の特質は、添付の図面を参照して、単に一例として与えられる、本発明の波エネルギー変換器の改良、複数点係留システム、及び改良されたプーリ機構の幾つかの特定の実施形態の以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係る波エネルギー変換器用のスカートの好ましい実施形態の側面図である。
【図2】単点エネルギー吸収器と、それに付着される図1のスカートの側面図である。
【図3】垂直方向に移動する水粒子から波エネルギーを抽出するようになっているスカートの表面上の水粒子の流路を概略的に示す。
【図4】水平方向に移動する水粒子から波エネルギーを抽出するようになっているスカートの表面上の水粒子の流路を概略的に示す。
【図5】本発明の第二の態様に係る波エネルギー変換器と、それに付着され或いは一体化される図1のスカートの実施形態の上面斜視図である。
【図6】本発明の第三の態様に係る平衡おもりシステムが視認される、図5の波エネルギー変換器用の複数点係留システムの第一実施形態の透過斜視図である。
【図7】図6の波エネルギー変換器用の平衡おもりシステムの拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から5に示す本発明による波エネルギー変換器の改良の好ましい実施形態は、水の表面下で波エネルギー変換器から吊り下げられるようになっている実質的に剛体のスカート10を含む。スカート10は、構造の表面上に水粒子のための流路を形成するように垂直方向に延びる長尺状の実質的に円筒状の構造12を含む。構造の表面は、進行波の断面のエネルギー勾配からエネルギーの抽出を容易にするような形状とされている。波エネルギーの大部分は水面で得られるのであるが、最大のエネルギー抽出を容易にするため、水面下のエネルギー勾配からエネルギーを抽出するのが望ましい。長尺状構造12を用いることによって、エネルギー勾配のより大きな割合について、進行波のエネルギーを抽出することが可能となる。
【0019】
図3に概略的に示すように、好ましくは、円筒状構造12の表面は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するような形状とされている。この実施形態では、円筒状構造の表面は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するように、一連の湾曲した表面を含む。有利なことに、実質的に円筒状の構造12は、垂直方向に離間した間隔で同心円状に配置される、実質的に等しい直径の一連のリング14を含む。リング14は、複数の長尺状の支持部材16によって離間した間隔で保持され、実質的に円筒状の構造12を形成するように配置される。エネルギー勾配のより大きな割合について最大のエネルギー抽出を容易にするため、垂直方向に降順又は昇順で、連続するリング14の直径、及び/又は、連続するリング14の断面の曲率半径を変えるのが有利であろう。
【0020】
図3で最も明確に分かるように、リング14の円形断面によって形成される湾曲した表面は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成する。波状流路は、垂直方向に移動する水粒子が、リング14の湾曲した表面の周りにそれることを強いて、それによって垂直方向エネルギーの幾らかがリング14へ移動される。このようにして、波の円形水粒子運動から抽出される波エネルギーの垂直方向要素を最大化することができる。
【0021】
同様に、図4で最も明確に分かるように、リング14の平面視円形形状によって形成される湾曲した表面は、水平方向に移動する水粒子のための湾曲流路を形成する。湾曲流路は、水平方向に移動する水粒子が、リング14の湾曲した表面の周りにそれることを強いて、それによって水平方向エネルギーの幾らかがリング14へ移動される。このようにして、波の円形水粒子運動から抽出される波エネルギーの水平方向要素もまた最大化することができる。
【0022】
スカート10によって抽出される波の円形水粒子運動の追加的な垂直及び水平両方向の波エネルギー要素は、支持部材16を介して波エネルギー変換器(WEC:wave energy converter)へ移動される。図3及び4は、どのようにしてスカート10の周りの流体の流れが、特定の力をスカートひいてはWECへ作用させるのであろうかということを示す。図3及び4では、流体の流れがスカート10の周りを移動するにつれて、流体の流れの中で、どのようにして、ある程度の境界層の剥離が生じるかが分かる。しかしながら、実際には、圧力抵抗の最大量は、境界層干渉のレイノルズ数に関連する。これを考慮に入れると、有利な設計の検討としては、スカートを、抵抗を最大限にするような大きさにすることである。
【0023】
スカート10を用いてエネルギー勾配のより大きな割合についてエネルギーを抽出することによって、どのようにしてWECによってエネルギーが抽出されるかという力学が変化する。スカート10は、進行波の断面のエネルギー勾配からのエネルギー抽出を容易にするために、ほとんど任意のWECに取り付けることができる。しかしながら、スカート10は、特に点吸収型又は点集中型(PA:Point Absorber)の波エネルギー変換器とうまく機能する。PAは、定在波がPAの風下舷に生じ、非干渉波がPAから海側方向に向かって送り出されるように、一組の干渉縞振動を生成することによってエネルギーを抽出する。これらの位相シフト振動が接近する波の振動に近く調和すればするほど、PAはより多くのエネルギーを抽出することができるであろう。波エネルギー変換分野における格言として、「良い波抽出器は良い波生成器である」というのがある。これは、PAを用いて波エネルギーを抽出する際に必要とされる力学を説明するのに役立つ。
【0024】
事実上全ての従来技術のPAによって用いられる波エネルギー抽出のメカニズムは、本来的に非常に非効率的であり、それが動作する振動数範囲による制限を受ける傾向がある。典型的に、PAは、その共振振動数でうまく機能するであろう。しかしながら、この共振ピークの外側の全振動数において、性能が急激に低下する。
【0025】
PAのこれらの動作上の制限を克服するため、力学を変え、エネルギー抽出性能を劇的に向上させるためにスカートを用いてもよい。図2に、好ましい実施形態に係るスカート10を有する球状の浮揚体20を含む単純なPA18を示し、スカート10は、浮揚体20から水面下に吊り下げられる。PA18にスカートを追加することによって、システムは、調和する反対波を生成することに依存する単純な共振振動システムから、図3及び4を参照して上述した、入射波エネルギーを吸収するために、物体の振動に加えて、強力な流体力学原理を用いるシステムへと変化する。
【0026】
図5に、水面下に部分的に没水するスカート10を有する、本発明の別の態様による改良したWEC30の好ましい実施形態を示す。進行波の断面のエネルギー勾配からエネルギーの抽出の向上を容易にするため、WEC30に付着されるスカート10を有するこのWEC30に、同じ流体力学原理が適用される。WEC30の構造及び作用を、図6及び7を参照して以下でより詳細に説明する。
【0027】
説明する実施形態では、スカート10を、適切な大きさを有する一連のリング14として示すが、同じ基本原理を利用する他の様々な形状及び構成のスカートを使用することもできる。これら代替構成の幾つかの例としては、以下が含まれる。
・滑らかな円筒状構造、中実又は中空;
・波形円筒、中実又は中空;
・半径方向の穴を有する円筒状構造、中実又は中空;
・円筒状メッシュを形成する一連の相互接続される水平円筒状リング及び垂直円筒;
・円筒状構造の代わりに多角柱構造を用いてもよい。
【0028】
図5及び6のWEC30は、本発明の別の特徴による好適な実施形態である複数点係留システム32を図示したものである。国際出願PCT/AU2007/00940号に開示されている従来技術のWEC用の張力係留システムでは、WECは、没水部材を有する構造を有し、この部材は平均水位下で、構造と接続されて設けられる。国際出願PCT/AU2007/00940号の係留システムは、バラスト手段から、プーリ機構を介して没水部材から吊り下げられるようになっている平衡おもり手段へと延びる単一の長尺状柔軟性部材を含む。
【0029】
図5及び6のWEC30は、部材34を有する構造を有し、この部材が構造と接続されて設けられ、平均水位下に部分的に没水するという点で類似している。複数点係留システム32は、複数の長尺状柔軟性部材36を含む。長尺状柔軟性部材36の各々は、バラスト手段38に一端が取り付けられ、平衡おもり40の各へ延びている。平衡おもり40は、プーリ機構50を介して、部分的に没水する部材34から吊り下げられるようになっている。図6及び7は、WEC30の部分的に没水する部材34の内部に収容されている図5の複数点係留システム32の一部を図示したものである。
【0030】
図5から7に示す複数点係留システム32の実施形態では、ケーブル群36a、36b及び36cで構成される3つの長尺状柔軟性部材が設けられ、これらの全ては、通常は海底に置かれるおもり塊38に一端が固定される。それぞれの平衡おもり40a、40b及び40cは、それぞれのケーブル群36a、36b及び36cの他端に取り付けられる。この実施形態では、ケーブル群36は、それぞれ4本のケーブルを含む。好ましくは、平衡おもり40の各々に、それを貫通して延びる4つの穴42が設けられ、それらを通って、それぞれのケーブル群36の4本のケーブルが、それらのおもり塊38への戻り経路上で、摺動可能に収納される(図7参照)。
【0031】
各ケーブル36はプーリ52に巻回され、それによって、使用時に、ケーブル36の直線運動をプーリ52によって、波エネルギー変換装置30のエネルギー変換手段を駆動するための回転トルクに変換することができる。図7に示すように、プーリ52は、通常のマルチ−ケーブル・プーリであり、プーリに掛けられる(或いは巻回される)ケーブル群36aの4本のケーブルを有する。結果として、ケーブル群36のケーブルは、プーリと約180°に亘って接触する。ケーブル群36の使用によって、プーリ52とケーブル群36のケーブルとの間のより良いグリップにより発電機(図示せず)等に対して所望の回転トルクを伝達することが容易となる。
【0032】
各平衡おもり40は、ガイドレール58に沿って、上下に移動する。ガイドレール58は、安全機能として、平衡おもり40が浮揚部から離れて移動するのを防止するように設計されている。またガイドレール58は、平衡おもり40が浮揚部の保護筺体の内部に収まるように、平衡おもり40の移動を制限する。これによって更なる安全機能が得られ、海洋生物又は人間がWEC30の動作中に負傷するのを防止するのに役立つ。
【0033】
有利なことに、ケーブル群36はお互いに所定の距離で離間しており、波エネルギー変換装置30が波エネルギーを抽出することができる自由度を増すようになっている。2つ以上のケーブル群36を有することの別の利点は、システムに対する負荷が、全て1本のケーブルによって支えられるのではなく、ケーブル群36の各々に分配されることである。更に別の利点は、1本のケーブルがそれ自体もつれてしまうという可能性が回避されることである。各平衡おもり40は、常に、WEC30自体と海底上の係留具との距離が最小となるように、WEC30を戻そうとする。ゆえに、厳しい左右揺れ(yaw)があり、ケーブル群36が互いにねじれてしまった場合には、平衡おもり40によって加えられる力が、ケーブル36のねじりを戻そうとするように働き、従ってもつれを元に戻す。上記に加えて、スカート10に、ケーブル群36が通過可能なそれぞれのガイド(図示せず)を取り付けることで、ケーブルのもつれの可能性を事実上なくすことが可能である。
【0034】
国際出願PCT/AU2007/00940号では、単一係留点を有するWECは、WECが、可能性のある6つの自由度のうち5つからエネルギーを抽出することを可能とする。しかしながら、3つ又はそれ以上の係留ケーブルを有する複数点係留システムであれば、6つの自由度の全てからエネルギーを抽出することが可能となるだろう。6つの自由度の全てからエネルギーを抽出する能力は、複数点係留システムを有するWECであれば、全方向性となり、その接近の方向にかかわらず波からエネルギーを抽出することが可能となることを意味する。これが意味するのは、このWECであれば、支配的な波の方向に対してその方向又は進路を変更する必要がなく、従って、一様でない海においても常に最大の動力を生成するであろう。
【0035】
波の方向にかかわらずエネルギー抽出を成し遂げることができるWECは現在のところ他にないので、複数点係留システムを設けることは、WECの開発において非常に重要なステップである。この構成の結果によって、WECの動作を著しく向上させ、最終的には、その出力、その一貫性、その信頼性を増し、生成される動力のコストを下げるのに役立つだろう。
【0036】
図示した実施形態では、プーリ・システム50は、プーリ52の各々を介して、別個の発電機を直接に駆動するので、3ケーブル複数点係留システムであれば、各WEC30に、3つの別個の発電機(又は他のエネルギー変換手段)が存在するだろう。別の実施形態では、適切なプーリ駆動のギア装置を用いて、エネルギー変換手段を駆動する前に機械効率を得ることが可能である。有利なことに、スカートの円筒状構造12もまた、平衡おもり40の運動に対するガイド58及び安全保護具として働くことが可能である。
【0037】
ここまで、波エネルギー変換器(WEC)の改良の好ましい実施形態について詳細に説明してきたが、スカート付きの改良したWECによれば、以下を含む、従来技術に対する多数の効果が得られることは明らかであろう。
【0038】
(i)スカートは、水面下で、進行波の断面のエネルギー勾配からのエネルギー抽出を容易にする。
【0039】
(ii)それは、点吸収器(Point Absorber)によって抽出されるエネルギーを劇的に向上させ、その原動力を、単純で非効率な振動システムから、入射波エネルギーを吸収するために、振動に加えて強力な流体力学原理を用いるシステムへと変化させる。
【0040】
(iii)複数点係留システムは、WECが、エネルギーが抽出可能となる前に、それ自身の方向を変える必要なく、任意の方向から現れる進行波からエネルギーを抽出することができるように、全方向性となるのを可能とする。
【0041】
(iv)改良したWECのプーリ機構は、実質的にもつれをなくし、確実に、ケーブルの直線運動を、WECのエネルギー変換手段を駆動するための回転トルクに変換することができるようにする。
【0042】
関連する技術分野の知識を有する者にとって、本発明の基本的な発明概念から逸脱することなく、既に説明したものに加えて、前述の実施形態に対して種々の変更及び改良を行い得ることは、直ちに明らかとなろう。例えば、説明した実施形態の各々では、WECの没水する部材は、実質的に円筒状の構成を有する。しかしながら、これは決して必須ではなく、任意の適切な形状又は構成を有することができる。それゆえ、本発明の範囲は、説明した特定の実施形態に限定されないことが理解されるだろう。
【0043】
本発明を規定する特許請求の範囲は、以下のとおりである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良された波エネルギー変換器の改良型であって、
少なくとも部分的に水の表面下で波エネルギー変換器から吊り下げられる実質的に剛体のスカートを備え、
前記スカートは、長尺状の略円筒状の構造を含み、前記構造は、前記構造の表面上に水粒子のための流路を形成するように垂直方向に延び、前記構造の前記表面は、進行波の断面のエネルギー勾配からエネルギーの抽出を容易にするように形成されていることを特徴とする波エネルギー変換器。
【請求項2】
略円筒状の前記構造の前記表面は、水平及び垂直両方向に移動する水粒子のための波状流路を形成する形状であり、使用時に、前記水粒子から抽出される水平及び垂直方向の波エネルギーが最大になることを特徴とする請求項1に記載の波エネルギー変換器。
【請求項3】
略円筒状の前記構造の前記表面は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するように、一連の湾曲した表面を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の波エネルギー変換器。
【請求項4】
略円筒状の前記構造は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するように、垂直方向に離間して同軸上に配置され且つ直径が略等しい一連のリングを含むことを特徴とする請求項3に記載の波エネルギー変換器。
【請求項5】
波エネルギー変換装置の複数点係留システムであって、前記装置は、部材を有する構造を有し、前記部材は前記構造と接続されて設けられ、少なくとも部分的に平均水位下に没水し、前記複数点係留システムは、
バラスト手段に対して一端が取り付けられる複数の長尺状柔軟性部材を含み、各長尺状柔軟性部材は、前記少なくとも部分的に没水する部材からプーリ機構を介して吊り下げられるそれぞれの平衡おもり手段へ延びることを特徴とする複数点係留システム。
【請求項6】
前記長尺状柔軟性部材は、前記波エネルギー変換装置がエネルギーを抽出することができる自由度を増すように、相互に離間していることを特徴とする請求項5に記載の複数点係留システム。
【請求項7】
前記複数点係留システムは、前記波エネルギー変換装置が6つの自由度の全てからエネルギーを抽出するのを可能とするように、互いから等距離に離間する3つの長尺状柔軟性部材を含むことを特徴とする請求項6に記載の複数点係留システム。
【請求項8】
各長尺状柔軟性部材は、複数のケーブルを有するケーブル群を含むことを特徴とする請求項5から7の何れか一つに記載の複数点係留システム。
【請求項9】
波エネルギー変換器であって、
部材を有する構造であって、前記部材は、前記構造と接続されて設けられ、少なくとも部分的に平均水位下に没水する、前記構造と、
バラスト手段に対して一端が取り付けられる複数の長尺状柔軟性部材であって、各長尺状柔軟性部材は、前記少なくとも部分的に没水する部材からプーリ機構を介して吊り下げられるそれぞれの平衡おもり手段へ延びる、前記複数の長尺状柔軟性部材とを含むことを特徴とする波エネルギー変換器。
【請求項10】
少なくとも部分的に没水する前記部材と接続して設けられる実質的に剛体のスカートを更に含み、前記スカートは、長尺状の略円筒状の構造を含み、前記略円筒状構造は、前記略円筒状構造の表面上に水粒子のための流路を形成するように垂直方向に延び、前記略円筒状構造の前記表面は、進行波の断面のエネルギー勾配からエネルギーの抽出を容易にするように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の波エネルギー変換器。
【請求項11】
前記略円筒状構造の前記表面は、水平及び垂直両方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するような形状であり、使用時に、前記水粒子から抽出される水平及び垂直方向の波エネルギーが最大になることを特徴とする請求項10に記載の波エネルギー変換器。
【請求項12】
前記略円筒状構造の前記表面は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するように、一連の湾曲した表面を含むことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の波エネルギー変換器。
【請求項13】
前記略円筒状の構造は、垂直方向に移動する水粒子のための波状流路を形成するように、垂直方向に離間して同軸上に配置され且つ直径が略等しい一連のリングを含むことを特徴とする請求項12に記載の波エネルギー変換器。
【請求項14】
前記プーリ機構は複数のプーリを含み、各プーリは、前記プーリに巻回される各長尺状柔軟性部材を支持し、使用時に、前記長尺状柔軟性部材の直線運動が、前記プーリによって、前記波エネルギー変換装置内のエネルギー変換手段を駆動するための回転トルクに変換されることを特徴とする請求項9乃至13の何れか一つに記載の波エネルギー変換器。
【請求項15】
各長尺状柔軟性部材はケーブル群を含み、各プーリは、前記プーリに掛けられる前記ケーブル群のケーブルを有するマルチ−ケーブル・プーリを含み、ケーブル群の使用によって、前記プーリと前記ケーブルとのグリップを促進し、所望の回転トルクを前記エネルギー変換手段に伝達することを特徴とする請求項14に記載の波エネルギー変換器。
【請求項16】
各平衡おもり手段のためのガイドレールを更に含み、前記平衡おもり手段の運動が安全限界内に制限されることを特徴とする請求項9乃至13の何れか一つに記載の波エネルギー変換器。
【請求項17】
実質的に、添付図面の任意の一つ又はそれ以上を参照して本明細書で説明され、図示される波エネルギー変換器の改良型。
【請求項18】
実質的に、添付図面の任意の一つ又はそれ以上を参照して本明細書で説明され、図示される波エネルギー変換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−506815(P2011−506815A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537211(P2010−537211)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001806
【国際公開番号】WO2009/073915
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510165552)プロティーン パワー プロプライアタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】