波形等化装置
【目的】 トランスバーサルフィルタを有する波形等化装置において、トランスバーサルフィルタのタップ数を増加することなく波形等化性能を向上する。
【構成】 この波形等化装置は、I軸、Q軸にそれぞれ従来と同じタップ数(128 タップ)で、従来よりもタップ間隔が広いT/2 −トランスバーサルフィルタ5、6と、複数のデータをT/10周期でサンプリングしてその中から一つのデータを出力するデータ選択回路7、8と、各I軸、Q軸よりの等化基準信号を5点差分してインパルス波の波高値を高めてピーク検出を行い、最適サンプル位相を求めるCPU15とを備えており、選択したデータをT/2 周期でT/2 −トランスバーサルフィルタ5、6に出力する。これにより、広範囲にゴーストが除去された多重データが得られる。
【構成】 この波形等化装置は、I軸、Q軸にそれぞれ従来と同じタップ数(128 タップ)で、従来よりもタップ間隔が広いT/2 −トランスバーサルフィルタ5、6と、複数のデータをT/10周期でサンプリングしてその中から一つのデータを出力するデータ選択回路7、8と、各I軸、Q軸よりの等化基準信号を5点差分してインパルス波の波高値を高めてピーク検出を行い、最適サンプル位相を求めるCPU15とを備えており、選択したデータをT/2 周期でT/2 −トランスバーサルフィルタ5、6に出力する。これにより、広範囲にゴーストが除去された多重データが得られる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば映像信号とシンボル周期T のディジタルデータ信号とが直交変調されて伝送されるテレビジョン信号などより、伝送時に生じるゴーストなどの線形歪を除去し所望のディジタルデータ信号を得る波形等化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、テレビジョン信号が両側波帯で伝送される帯域(1MHz以下)の部分に、ディジタル信号を直交軸に変調して映像信号に多重する試みがなされている。
【0003】このときのテレビジョン受信機の構成例を図7に示す。なお、この例は、文献1(特開昭2-156786号公報)に開示されている。
【0004】同図において、71はアンテナ、72はチューナ、73はナイキストフィルタ、74は音声検波回路、75は映像検波回路、76は帯域通過フィルタ(以下BPFと称す)であり、カットオフ周波数は750KHzである。77は搬送波再生回路、78、79は同期検波回路、80は波形等化装置である。
【0005】この場合、アンテナ71で受信されたテレビジョン信号は、チューナ72により検波されて、ナイキストフィルタ73およびBPF76にそれぞれ出力される。このチューナ72の出力(IF信号)は、同相(I)軸に変調された映像信号(V)と、直交(Q)軸に変調されたディジタル多重信号(M)とからなり、このうち、映像信号(V)は、従来のNTSC信号と同様、図8(a)に示すように、VSB変調された伝送帯域をもち、ナイキストフィルタ73により帯域整形された後、音声検波器74と映像検波器75とによってそれぞれ音声信号と映像信号とになる。
【0006】一方、ディジタル多重信号(M)は、図8(b)に示すように、0.716MHz(4fsc/(10 ×2)) でレベルが半分になり、0.75MHz でレベルが0 になる、いわゆるレイズドコサイン形状をなす帯域形状をしている。なおfsc とは、色副搬送波の周波数(3.579545MHz )である。
【0007】この帯域整形されたディジタル多重信号(M)は、 周期T =10/(4fsc) =0.698 μs (1)
で伝送される。そして、BPF76を通じて出力されるディジタル多重信号(M)は、図8(c)に示すように、送信側で予め逆ナイキスト特性になるように整形されたスペクトル(多重信号)となる。このスペクトルは、搬送波再生器77に出力されて、直交(Q)軸に変調されたディジタル多重信号(M)を復調するための搬送波−sin(ωIFt)と、同相(I)軸に変調された映像信号(V)を復調するための搬送波cos(ωIFt)とに分離される。同期検波器78、79は、それぞれの復調用搬送波を用いてディジタル多重信号(M)と映像信号(V)とに復調する。
【0008】ここで、図9を参照して遅延時間τ秒、強度gのゴーストが存在するときのディジタル多重信号(M)と映像信号(V)の位相関係について説明する。ディジタル多重信号(M)と映像信号(V)のゴースト成分(M′およびV′)とは、それぞれ振幅がg倍になる。これらの位相は、遅延時間τとRF搬送波周波数とで決まる位相θの分だけ主信号から回る。
【0009】例えば同期検波器79の出力信号は、 M+gMcosθ+gVsinθ (2)
となる。但し、この式の第1項(M)は所望のディジタル多重信号の主信号成分、第2項(gMcosθ)はディジタル多重信号のゴースト成分、第3項(gVsinθ)は映像信号の漏れ混みゴースト成分である。
【0010】ところで、一般のテレビジョン受像機において、受信妨害を少なくするためには、文献2(野田ほか、「現行NTSCテレビ放送のためのディジタル音声多重方式と両立性について」、テレビジョン学会誌、Vol.42,No.9,1988)に開示されているように、多重信号のレベルを映像信号のレベルよりも32dB程度下げる必要がある。したがって、ディジタル多重信号に重畳される映像信号の漏れ混みゴースト成分、この場合、式(2)の第3項は、ディジタル多重信号の主信号成分よりも大きくなる。
【0011】また、同期検波器78の出力信号は、 V+gVcosθ−gMsinθ (3)
となる。但し、第1項(V)は映像信号の主信号成分、第2項(gVcosθ)は映像信号のゴースト成分、第3項(−gMsinθ)はディジタル多重信号の漏れ混みゴースト成分である。
【0012】上記した式のうち、式(2)の第2項および第3項を除去して波形歪のないディジタル多重信号を再生するものが、図10に示すようなブロック構成をなす波形等化装置80であり、このブロック図を参照して従来の波形等化装置の動作について説明する。
【0013】同期検波器78よりの出力信号がLPF81に入力されると、LPF81はその信号を、図8(d)に示すように、750kHzでカットオフしてI軸の入力信号として8bitA/D変換器82に出力する。このときA/D変換器82には、クロックタイミング発生器83より周期T/10のクロックCK1が入力されるので、このクロックCK1によりこの信号はA/D変換される。
【0014】一方、同期検波器79よりの出力信号は、LPF81と同じ特性のLPF84に入力されて750kHzでカットオフされ、Q軸の入力信号としてA/D変換器85に出力されてI軸の信号同様にA/D変換される。
【0015】ここで、図11(a)および図11(b)を参照してクロックタイミング発生器83が発生するタイミング信号について説明する。このクロックタイミング発生器83は、映像検波器75の映像出力信号から波形等化装置80が必要とする等化基準信号を取り込むためのクロックタイミングを発生する。
【0016】例えば、同図(a)に示すように、映像信号の漏れ混み成分を除去するために必要な基準信号は、GCR(Ghost Cancell Reference )信号である。このGCR信号は既にテビジョン信号の第18ラインおよび第 281ラインにそれぞれ挿入されている。これについては、文献3(杉森、「放送局におけるEDTV技術」、テレビジョン学会誌、Vol.43,No.5,1989)などに詳細が説明されている。なお、このGCR信号を用いてゴースト除去を行うときのゴースト除去遅延時間は、前ゴーストと後ゴーストを合わせて44.7μs になる。また、同図(b)に示すように、ディジタル多重信号のゴースト成分を除去するために必要な基準信号はインパルス形状の基準信号である。
【0017】これらの基準信号は、テレビジョン信号に所定のシーケンスで挿入されており、このシーケンスを対応させることにより分離させることができる。この分離技術については、文献4(Kageyama et al."Waveform Equalization for EDTV Systems using QAM".IEEE Internatinal Conference on Consumer Electronics,DIGEST,WAM3.2 pp.34-5,June.1991)で開示されている。
【0018】また、ディジタル多重信号は、GCR信号部分およびその前ライン部分を除いたテレビジョン信号の部分に多重されている。このようなテレビジョン信号の垂直帰線期間内における所定範囲の多重信号を遮断する技術については文献1に開示されている。
【0019】そして、各A/D変換器82、85の出力は、クロックCK1のタイミングでT/10−トランスバーサルフィルタ(以下、T/10−TFと称す)86、87にそれぞれ入力される。これらのT/10−TF86、87は、図12に示すように、タップ間隔が伝送周期T に対してT/10で 128個直列接続されたラッチ121と 128個の乗算器122と、それぞれの乗算器122の出力を加算する加算器123とを有する 128タップのTFである。
【0020】この場合、例えばI軸用のA/D変換器82の出力は、それぞれのラッチ121に加えられる。また、ラッチ121にはそれぞれ図示していないクロックCK1が加えられており、T/10秒毎に遅延した信号がそれぞれの乗算器122に加えられる。乗算器122には、それぞれcI,-6〜cI,121 のタップ係数が与えられており、乗算器122の 128個の出力信号は、加算器123でそれぞれ加算されて出力される。このT/10−TF86のタップ間隔T/10を時間で表記すると、T/10=1/(4fec)=0.07μs なので、cI,-6〜cI,121 のタップ係数をもつこのT/10−TF86は、−0.42〜8.47μs のゴースト除去遅延時間範囲をもつ。
【0021】一方、Q軸用のA/D変換器85の出力は、T/10−TF86と同様に構成されているタップ間隔T/10の 128タップのTF87に入力されてディジタル多重信号のゴースト成分が除去される。このときのT/10−TF87のタップ係数はcQ,-6〜cQ,121 と表わされ、このゴースト除去遅延時間範囲は上記同様−0.42〜8.47μs である。そして、T/10−TF86、87の各出力は加算器88で加算されてこの波形等化装置80の出力になる。
【0022】以下、図13のフローチャートを参照してこの波形等化装置の動作を説明する。 一方、テレビジョン受信機の電源投入あるいは選局切り換えなどが行われると、波形等化装置80のCPU89が動作を開始する。
【0023】まず、CPU89は、ROM90に予め格納されているプログラムを読み出し、RAM91を用いてタップ係数メモリ92および各入出力波形メモリ93、94、95、96などの初期設定を行う(ステップ131 )。例えば、次式に示すように、タップ係数メモリ92に格納されているタップ係数の初期化を実行する。
【0024】cI,i =0 、 i =-6,121cQ,0 =1cQ,i =0 、 i =-6,121、但し i≠0つまり、I軸等化用のT/10−TF86のタップ係数は全て0 にして、Q軸等化用のT/10−TF87のタップ係数は、主タップ係数cQ,0 のみ 1で他を全て 0にする。
【0025】次に、CPU89は、制御をクロックタイミング発生回路83に委ねて、I軸入力波形メモリ93およびI軸出力波形メモリ94とにそれぞれGCR信号{xI,i }{yI,i }を取り込む。I軸入力波形メモリ93には、A/D変換器82の出力からGCR信号を取り込み、I軸出力波形メモリ94には、加算器88の出力からGCR信号を取り込む(ステップ131 )。
【0026】次に、CPU89は、文献3などに明示されている8フィールドシーケンスのGCR計算を行い、得られたステップ状の基準波形に対して1点差分を行い入力インパルス波形{xI,i }と、出力インパルス波形{yI,i }とを計算により生成する(ステップ132 )。
【0027】そして、CPU89は、次式に示すように相関演算を行い(ステップ133 )、 dI,i = 0ΣxI,k yI,i+k 、 但し i=-6,121 (4)
さらに、次式に示すように、タップ係数計算演算を行う(ステップ134 )。
【0028】
cI,i,new =cI,i,old −αdI,i 但し i=-6,121 (5)
ここで、αは正の微小値である。
【0029】続いて、CPU89は、制御をクロックタイミング発生回路83に委ねて、Q軸入力波形メモリ95とQ軸出力波形メモリ96とに、それぞれディジタル多重信号{xQ,i }{yQ,i }を取り込む。Q軸入力波形メモリ95には、A/D変換器85の出力のディジタル多重信号を取り込み、Q軸出力波形メモリ96には、T/10−TF87の出力のディジタル多重信号を取り込む(ステップ135 )。
【0030】続いて、CPU89は、出力波形のピーク検出を行い(ステップ136 )、次式に示すように、誤差波形計算を行う(ステップ137 )。
【0031】
eQ,i =yQ,i −r(yQ,i ) (6)
但し、r(yQ,i )は送信側で挿入しているインパルス状の基準波形列である。続いて、CPU89は、次式に示すように相関計算を行い(ステップ138 )、 dQ,i = kΣxQ,k *eQ,i+k 但し i=-6,121 (7)
RAM91とタップ係数メモリ92を用いて、次式に示すように、タップ係数計算演算を行う(ステップ139 )。
【0032】
cQ,i,new =cQ,i,old −αdQ,i 但し i=-6,121 (8)
ここで、αは正の微小値である。
【0033】最後にCPU89は、タップ係数の修正回数を見て(ステップ140 )、この修正回数が所定回数に満たない場合は、I軸の波形取り込みに戻る。また、修正回数が一致したときは、タップ係数の修正が完了したとして、タップ係数の修正動作を停止する。
【0034】このような波形等化技術は、従来のNTSC用(映像用)ゴーストキャンセラ技術をそのまま流用しているので、4.2MHz程度までの波形等化を行うことができる。
【0035】一方、本来等化すべき多重信号の周波数帯域は、高々0.8MHz以下であることからナイキスト条件を考慮するとTFのタップ間隔はさらに広げることが可能である。このような点では従来用いられているT/10−TFはタップ間隔が狭く、遅延時間が短いといえる。TFのタップ間隔を広げることによってタップ数を増加することなくゴースト除去範囲を拡大することができるので、例えばT/2 −TFなどを用いることが想定される。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のT/10−TFをT/2 −TFに変更するだけでは、信号の伝送周期と、信号を取り込むときのサンプル周期との位相差が生じてしまい、タイミングよく信号(データ)の取り込みができないという問題があった。
【0037】本発明は、少なくともI軸にタップ間隔の広いTFを用いることによってTFの規模を増加することなくゴースト除去範囲を拡大し、この結果、波形等化性能の優れた波形等化装置を提供することを目的とする。
【0038】
【課題を解決するための手段】本発明の波形等化装置は上記した目的を達成するために、I軸およびQ軸にそれぞれ分離され、少なくとも前記I軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有するトランスバーサルフィルタと、前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記トランスバーサルフィルタに出力するデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記等化基準信号を m点差分してインパルス波を求める手段と、前記インパルス波のピーク位置を検出することにより前記トランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相を算出する手段と、前記データ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するよう指示する手段とを具備している。
【0039】また、この波形等化装置はI軸およびQ軸にそれぞれ分離され、前記I軸およびQ軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記I軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2以上の整数)のタップ間隔を有する第1のトランスバーサルフィルタと、前記Q軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有する第2のトランスバーサルフィルタと、前記I軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第1のトランスバーサルフィルタに出力する第1のデータ選択手段と、前記Q軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第2のトランスバーサルフィルタに出力する第2のデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記I軸およびQ軸それぞれの前記等化基準信号を m点差分してそれぞれのインパルス波を求める手段と、前記各インパルス波のピーク位置を検出することにより前記第1および第2のトランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相をそれぞれ算出する手段と、前記第1および第2のデータ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するようそれぞれに指示する手段とを具備している。
【0040】
【作用】この発明では、少なくともI軸の等化基準信号をm 点差分(m は2 以上の整数)して波高値を高めたインパルス波をピーク検出に用いることによって、より正確にインパルス波のピーク位置を算出し、このピーク位置からトランスバーサルフィルタのタップ間隔に同期する最適な位相を求めて、データ選択手段に対してこの位相でサンプリングしたディジタル多重信号を出力するよう指示するので、タップ間隔の広い(周期T/n のm 倍)トランスバーサルフィルタにもそのタップ間隔に同期してディジタル多重信号が出力される。
【0041】すなわち、トランスバーサルフィルタの規模(タップ数など)を増加しなくともタップ間隔を拡大することによりディジタル多重信号に含まれている線形歪を広い範囲で等化し、データ誤り率の向上されたディジタル多重信号を得ることができる。
【0042】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0043】図1は本発明に係る一実施例の波形等化装置の構成を示すブロック図である。なお、従来と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0044】同図において、1はクロックタイミング回路であり、伝送データのシンボル周期(伝送周期)T に対して所定周期T/n 、( nは2 以上の偶数)例えば n=10とすると、周期T/10のクロックCK1を発生する。2は分周器であり、クロックCK1(周期T/10)を1/m (m は2 以上の整数)分周、例えば1/5 分周してm 倍、この場合、5 倍の周期T/2 のクロックCK2を発生する。3、4はラッチよりなるゲートであり、クロックCK2の立ち上がりに同期するようデータ取り込み信号の発生時期を決定する。5、6はトランスバーサルフィルタ(以下TFと称す)であり、クロックCK2の周期T/2 と同じタップ間隔、例えばT/2 をもつ。なお、これらのTF5、6を用いることにより、従来のT/10−TFを用いたときよりも等化能力のサンプリング位相依存性が低減される。7、8はデータ選択回路であり、それぞれラッチ回路9、10、バッファ11、12およびセレクタ13、14で構成されており、各ラッチ回路9、10はそれぞれ5 個のラッチ群9a〜9e、10a〜10eからなっている。これらの各ラッチ9a〜9e、10a〜10eには、クロックCK1が共通に供給される。このデータ選択回路7、8は、I軸およびQ軸それぞれのディジタル多重信号データをサンプリングし、バッファ11、12に一時記憶し、セレクタ13、14が最適サンプル位相となるラッチ回路9、10の出力を選択し、それぞれのTF5、6に送出する。15はCPUであり、各メモリを制御すると共に8 フィールドシーケンスGCR計算、インパルス位相演算およびタップ演算などを行う。
【0045】図2に示すように、TF5、6は直列接続された 128個のラッチ21と、各ラッチ21にそれぞれ接続された乗算器22と、各乗算器22の出力が加算される加算器23とから構成されている。
【0046】これらのTF5、6はタップ間隔が広いことから、データサンプリング時にサンプル点の間引きが必要になる。これを図1のCPU15とデータ選択回路7、8とにより実現している。
【0047】以下、図3のフローチャートを参照してこの波形等化装置の動作を説明する。始めにI軸に対する等化動作について説明する。
【0048】まず、テレビジョン受信機の電源投入あるいは選局切り換えなどによってCPU15は動作を開始し、ROM90に予め格納されているプログラムを読み出し、RAM91を用いてタップ係数メモリ92および各入出力波形メモリ93、95、94、96などの初期設定を行う(ステップ301 )。これは従来と同じ動作である。
【0049】CPU15は、初期設定後、データ取り込みのタイミング制御をクロックタイミング発生回路1に委ね、ゲート回路3より発生するデータ取り込み信号に基づきA/D変換器82の出力からI軸入力波形メモリ93に、また、加算器88の出力からI軸出力波形メモリ94にそれぞれ等化基準信号としてのGCR信号{xI,i }、{yI,i }を取り込む(ステップ302 )。
【0050】続いて、CPU15は作業用RAM91を用いて8フィールドシーケンスGCR計算を行い、得られたステップ状の基準信号を、m点差分、例えば5点差分して入力信号および出力信号のインパルス波を求める(ステップ303 )。これは、従来の一点差分を、例えば図4(b)に示すようなフィルタをかけたものとすると、この実施例の場合は、図4(a)に示すようなフィルタをかけたのと同じことになる。
【0051】これら2 つのフィルタの周波数特性を図5に示す。
【0052】同図において、Saは1点差分を行ったときの周波数特性であり、Sbは5点差分を行ったときの周波数特性である。また、ScはI軸の入力信号であり、図8(d)と同じ周波数特性のLPF81を通過しているため従来の1点差分では、図6(a)に示すように、インパルス波Iaの波高値が低くなり、後のピーク検出が雑音などによって正常に行えなくなることがあるが、本実施例の5点差分では、図6(b)に示すように、インパルス波Ibの波高値を高くする(制御ゲインを上げる)ことができるのでピーク検出する際に雑音の影響を受けにくくなる。
【0053】したがって、CPU15がインパルス波Ibのピーク検出を行うと、そのピーク位置pI,k (kはデータ番号)が正確に求められる(ステップ304 )。
【0054】次に、CPU15は、このインパルス波Ibのピーク位置pI,k がどのサンプル系列{xI,5k}、{xI,5k+1}〜{xI,5k+4}から得られたのもなのかを次式(9)に従って判定する(ステップ304 )。なお、サンプル系列{xI,5k}は、データ取り込み信号に同期したサンプル系列であり、サンプル系列{xI,5k+1}〜{xI,5k+4}は、サンプル系列{xI,5k}よりもT/10毎に遅延してサンプリングされたサンプル系列である。
【0055】
φI =mod(k) (9)
ここで、mod(x)は、xを 5で割った余り( 0〜 4)であり、CPU15の判定として、例えばφI = 0のときは、サンプル系列{xI,5k}が選択すべきデータ系列となり、φI = 1のときは、サンプル系列{xI,5k+1}が選択すべきデータ系列となる。
【0056】このようにφI の値に応じてCPU15はデータ系列を選択し(ステップ305)、セレクタ13にクロック選択信号を出力し、サンプル周期がT/2 になるようにサンプル点の間引きを行う(ステップ306 )。例えばラッチ回路9の各ラッチ9a〜9eの出力は、バッファ11に一時記憶され、クロック選択信号の極性に応じてセレクタ13によってその中の一つが選択される。そして、CPU15はその一つのデータを用いて相関計算を行う(ステップ307 )。その後は、従来例と同様にI軸のタップ係数計算を行う(ステップ308 )。
【0057】次に、Q軸に対する等化動作について説明する。
【0058】Q軸もI軸と同様にゲート回路4のデータ取り込み信号に基づき出力波形を取り込み(ステップ309 )、従来と同様にピーク検出を行う(ステップ310 )。そして、CPU15はI軸と同様、φQ を求めピーク位置pQ,k を含むようにサンプル位相を選択し、(ステップ311 )、セレクタ14を用いて入出力信号のサンプル周期がT/2 になるようにサンプル点の間引きを行う(ステップ312 )。例えばラッチ回路10の各ラッチ10a〜10eの出力は、バッファ12に一時記憶され、クロック選択信号S1の極性に応じてセレクタ14によってその中の一つが選択される。
【0059】そして、CPU15は、その一つのデータを用いて誤差計算し(ステップ313)、相関計算を行う(ステップ314 )。その後は従来と同様にQ軸のタップ係数計算を行い(ステップ315 )、このタップ係数の修正回数を見る動作を実行する(ステップ316 )。
【0060】上記の結果、I、Q軸共に5 個のデータの中から選択された最適サンプル位相となるラッチ回路9、10の出力がTF5、6に出力される。
【0061】以下、TF5、6の各動作を説明する。
【0062】TF5に最適サンプル位相の出力(I軸用のA/D変換器82の出力)が入力されると、この出力は 128個直列接続されたラッチ21に加えられる。ラッチ21にはそれぞれ図示していないクロックCK2が加えられており、T/2 秒毎に遅延した信号がそれぞれ 128個の乗算器22に加えられる。これらの乗算器22には、上記したように算出されたタップ係数cI,-6〜cI,121 が加えられている。これらの乗算器22の 128個の出力信号は、加算器23で加算されてTF5の出力となる。
【0063】このTF5のタップ間隔 T/2を遅延時間で表すと、 T/2=5/(4fsc)= 0.349μs なので、cI,-6〜cI,121 のタップ係数をもつ 128タップのTF5では、ゴースト除去遅延時間の範囲が−2.1 〜42.3μs になる。つまり、このTF5は、従来と同じタップ数にもかかわらず広い範囲のゴースト除去を行うことができる。
【0064】一方、TF6にQ軸用のA/D変換器8の出力が入力されると、TF5と同様に、ディジタル多重信号のゴースト成分が除去される。ここで、TF6のタップ係数をcQ,-6〜cQ,121 と表記する。TF6のゴースト除去遅延時間の範囲も−2.1 〜42.3μs である。
【0065】そして、それぞれのTF5、6により広範囲にゴーストが除去され、この結果互いの各出力が加算器88で加算されたものが波形等化回路の多重データ出力となる。
【0066】このように本実施例の波形等化装置によれば、I軸、Q軸ともにT/2 −TF5、6を用いることにより、TF自体のタップ数を増加することなくゴースト除去を広範囲で行うことができるようになる。また、それに伴う補間動作の際、CPUはGCR信号を5点差分して、正確にサンプル位相を求め、この位相でラッチ回路の出力を選択して出力するようにデータ選択回路に指示するのでデータ選択回路よりT/2 −トランスバーサルフィルタには位相ずれのないディジタル多重信号が出力される。したがって、T/2 トランスバーサルフィルタでは、従来よりタップ間隔が広い分、広範囲にゴースト除去が行われる。
【0067】この結果、トランスバーサルフィルタからはデータ誤り率が向上されたディジタル多重信号を出力することができる。このデータ誤り率が向上するということはディジタル信号伝送において大変有効なことである。
【0068】なお、本発明において、Q軸の基準信号の形状に基づきQ軸の基準信号からそのピークを求めるときには、各種さまざまな手法があることは明らかである。また、Q軸にインパルス波となる基準信号が挿入されていない場合、ディジタルデータ自身の等化を行うことにより(公知の技術)、Q軸を等化することができる。この場合でも、本発明はI軸にステップ形状の基準信号(GCR)が挿入されていればI軸に対する等化手段として有効に適応できる。
【0069】
【発明の効果】以上説明したように本発明の波形等化装置によれば、少なくともI軸側のディジタル多重信号の等化基準信号を m点差分して、より正確にインパルス波のピーク位置を検出し、このピーク位置から最適サンプル位相を求めることによってサンプル周期T/n の m倍のタップ間隔を有するトランスバーサルフィルタに最適な位相でディジタル多重信号を出力し、このトランスバーサルフィルタがディジタル多重信号に含まれている線形歪を広範囲に等化するので波形等化装置の波形等化性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例の波形等化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の波形等化装置に用いられているTFの構成を示すブロック図である。
【図3】この実施例の波形等化装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】(a)は一点差分したとき(従来)の仮想フィルタを示す図である。(b)は5点差分したときの仮想フィルタを示す図である。
【図5】図4(a)および図4(b)のフィルタの各周波数特性を示す図である。
【図6】(a)は一点差分により求められたインパルス波Iaを示す図である。(b)は5点差分により求められたインパルス波Ibを示す図である。
【図7】従来のテレビジョン受信機の構成を示すブロック図である。
【図8】(a)は映像信号(V)の伝送帯域を示す図である。(b)はディジタル多重信号(M)の帯域形状を示す図である。(c)はディジタル多重信号(M)のスペクトルを示す図である。(d)は従来の同期検波器のカットオフ周波数を示す図である。
【図9】遅延時間τ秒、強度gのゴーストが存在するときのディジタル多重信号(M)と映像信号(V)の位相関係を示すベクトル図である。
【図10】従来の波形等化装置の構成を示す図である。
【図11】(a)はGCR信号を示す図である。(b)はインパルス形状の基準信号を示す図である。
【図12】従来の波形等化装置に用いられているT/10のトランスバーサルフィルタの構成を示す図である。
【図13】従来の波形等化装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1…クロックタイミング回路、2…分周器、3、4…ゲート、5、6…トランスバーサルフィルタ、7、8…データ選択回路、9、10…ラッチ回路、11、12…バッファ、13、14…セレクタ、15…CPU。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば映像信号とシンボル周期T のディジタルデータ信号とが直交変調されて伝送されるテレビジョン信号などより、伝送時に生じるゴーストなどの線形歪を除去し所望のディジタルデータ信号を得る波形等化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、テレビジョン信号が両側波帯で伝送される帯域(1MHz以下)の部分に、ディジタル信号を直交軸に変調して映像信号に多重する試みがなされている。
【0003】このときのテレビジョン受信機の構成例を図7に示す。なお、この例は、文献1(特開昭2-156786号公報)に開示されている。
【0004】同図において、71はアンテナ、72はチューナ、73はナイキストフィルタ、74は音声検波回路、75は映像検波回路、76は帯域通過フィルタ(以下BPFと称す)であり、カットオフ周波数は750KHzである。77は搬送波再生回路、78、79は同期検波回路、80は波形等化装置である。
【0005】この場合、アンテナ71で受信されたテレビジョン信号は、チューナ72により検波されて、ナイキストフィルタ73およびBPF76にそれぞれ出力される。このチューナ72の出力(IF信号)は、同相(I)軸に変調された映像信号(V)と、直交(Q)軸に変調されたディジタル多重信号(M)とからなり、このうち、映像信号(V)は、従来のNTSC信号と同様、図8(a)に示すように、VSB変調された伝送帯域をもち、ナイキストフィルタ73により帯域整形された後、音声検波器74と映像検波器75とによってそれぞれ音声信号と映像信号とになる。
【0006】一方、ディジタル多重信号(M)は、図8(b)に示すように、0.716MHz(4fsc/(10 ×2)) でレベルが半分になり、0.75MHz でレベルが0 になる、いわゆるレイズドコサイン形状をなす帯域形状をしている。なおfsc とは、色副搬送波の周波数(3.579545MHz )である。
【0007】この帯域整形されたディジタル多重信号(M)は、 周期T =10/(4fsc) =0.698 μs (1)
で伝送される。そして、BPF76を通じて出力されるディジタル多重信号(M)は、図8(c)に示すように、送信側で予め逆ナイキスト特性になるように整形されたスペクトル(多重信号)となる。このスペクトルは、搬送波再生器77に出力されて、直交(Q)軸に変調されたディジタル多重信号(M)を復調するための搬送波−sin(ωIFt)と、同相(I)軸に変調された映像信号(V)を復調するための搬送波cos(ωIFt)とに分離される。同期検波器78、79は、それぞれの復調用搬送波を用いてディジタル多重信号(M)と映像信号(V)とに復調する。
【0008】ここで、図9を参照して遅延時間τ秒、強度gのゴーストが存在するときのディジタル多重信号(M)と映像信号(V)の位相関係について説明する。ディジタル多重信号(M)と映像信号(V)のゴースト成分(M′およびV′)とは、それぞれ振幅がg倍になる。これらの位相は、遅延時間τとRF搬送波周波数とで決まる位相θの分だけ主信号から回る。
【0009】例えば同期検波器79の出力信号は、 M+gMcosθ+gVsinθ (2)
となる。但し、この式の第1項(M)は所望のディジタル多重信号の主信号成分、第2項(gMcosθ)はディジタル多重信号のゴースト成分、第3項(gVsinθ)は映像信号の漏れ混みゴースト成分である。
【0010】ところで、一般のテレビジョン受像機において、受信妨害を少なくするためには、文献2(野田ほか、「現行NTSCテレビ放送のためのディジタル音声多重方式と両立性について」、テレビジョン学会誌、Vol.42,No.9,1988)に開示されているように、多重信号のレベルを映像信号のレベルよりも32dB程度下げる必要がある。したがって、ディジタル多重信号に重畳される映像信号の漏れ混みゴースト成分、この場合、式(2)の第3項は、ディジタル多重信号の主信号成分よりも大きくなる。
【0011】また、同期検波器78の出力信号は、 V+gVcosθ−gMsinθ (3)
となる。但し、第1項(V)は映像信号の主信号成分、第2項(gVcosθ)は映像信号のゴースト成分、第3項(−gMsinθ)はディジタル多重信号の漏れ混みゴースト成分である。
【0012】上記した式のうち、式(2)の第2項および第3項を除去して波形歪のないディジタル多重信号を再生するものが、図10に示すようなブロック構成をなす波形等化装置80であり、このブロック図を参照して従来の波形等化装置の動作について説明する。
【0013】同期検波器78よりの出力信号がLPF81に入力されると、LPF81はその信号を、図8(d)に示すように、750kHzでカットオフしてI軸の入力信号として8bitA/D変換器82に出力する。このときA/D変換器82には、クロックタイミング発生器83より周期T/10のクロックCK1が入力されるので、このクロックCK1によりこの信号はA/D変換される。
【0014】一方、同期検波器79よりの出力信号は、LPF81と同じ特性のLPF84に入力されて750kHzでカットオフされ、Q軸の入力信号としてA/D変換器85に出力されてI軸の信号同様にA/D変換される。
【0015】ここで、図11(a)および図11(b)を参照してクロックタイミング発生器83が発生するタイミング信号について説明する。このクロックタイミング発生器83は、映像検波器75の映像出力信号から波形等化装置80が必要とする等化基準信号を取り込むためのクロックタイミングを発生する。
【0016】例えば、同図(a)に示すように、映像信号の漏れ混み成分を除去するために必要な基準信号は、GCR(Ghost Cancell Reference )信号である。このGCR信号は既にテビジョン信号の第18ラインおよび第 281ラインにそれぞれ挿入されている。これについては、文献3(杉森、「放送局におけるEDTV技術」、テレビジョン学会誌、Vol.43,No.5,1989)などに詳細が説明されている。なお、このGCR信号を用いてゴースト除去を行うときのゴースト除去遅延時間は、前ゴーストと後ゴーストを合わせて44.7μs になる。また、同図(b)に示すように、ディジタル多重信号のゴースト成分を除去するために必要な基準信号はインパルス形状の基準信号である。
【0017】これらの基準信号は、テレビジョン信号に所定のシーケンスで挿入されており、このシーケンスを対応させることにより分離させることができる。この分離技術については、文献4(Kageyama et al."Waveform Equalization for EDTV Systems using QAM".IEEE Internatinal Conference on Consumer Electronics,DIGEST,WAM3.2 pp.34-5,June.1991)で開示されている。
【0018】また、ディジタル多重信号は、GCR信号部分およびその前ライン部分を除いたテレビジョン信号の部分に多重されている。このようなテレビジョン信号の垂直帰線期間内における所定範囲の多重信号を遮断する技術については文献1に開示されている。
【0019】そして、各A/D変換器82、85の出力は、クロックCK1のタイミングでT/10−トランスバーサルフィルタ(以下、T/10−TFと称す)86、87にそれぞれ入力される。これらのT/10−TF86、87は、図12に示すように、タップ間隔が伝送周期T に対してT/10で 128個直列接続されたラッチ121と 128個の乗算器122と、それぞれの乗算器122の出力を加算する加算器123とを有する 128タップのTFである。
【0020】この場合、例えばI軸用のA/D変換器82の出力は、それぞれのラッチ121に加えられる。また、ラッチ121にはそれぞれ図示していないクロックCK1が加えられており、T/10秒毎に遅延した信号がそれぞれの乗算器122に加えられる。乗算器122には、それぞれcI,-6〜cI,121 のタップ係数が与えられており、乗算器122の 128個の出力信号は、加算器123でそれぞれ加算されて出力される。このT/10−TF86のタップ間隔T/10を時間で表記すると、T/10=1/(4fec)=0.07μs なので、cI,-6〜cI,121 のタップ係数をもつこのT/10−TF86は、−0.42〜8.47μs のゴースト除去遅延時間範囲をもつ。
【0021】一方、Q軸用のA/D変換器85の出力は、T/10−TF86と同様に構成されているタップ間隔T/10の 128タップのTF87に入力されてディジタル多重信号のゴースト成分が除去される。このときのT/10−TF87のタップ係数はcQ,-6〜cQ,121 と表わされ、このゴースト除去遅延時間範囲は上記同様−0.42〜8.47μs である。そして、T/10−TF86、87の各出力は加算器88で加算されてこの波形等化装置80の出力になる。
【0022】以下、図13のフローチャートを参照してこの波形等化装置の動作を説明する。 一方、テレビジョン受信機の電源投入あるいは選局切り換えなどが行われると、波形等化装置80のCPU89が動作を開始する。
【0023】まず、CPU89は、ROM90に予め格納されているプログラムを読み出し、RAM91を用いてタップ係数メモリ92および各入出力波形メモリ93、94、95、96などの初期設定を行う(ステップ131 )。例えば、次式に示すように、タップ係数メモリ92に格納されているタップ係数の初期化を実行する。
【0024】cI,i =0 、 i =-6,121cQ,0 =1cQ,i =0 、 i =-6,121、但し i≠0つまり、I軸等化用のT/10−TF86のタップ係数は全て0 にして、Q軸等化用のT/10−TF87のタップ係数は、主タップ係数cQ,0 のみ 1で他を全て 0にする。
【0025】次に、CPU89は、制御をクロックタイミング発生回路83に委ねて、I軸入力波形メモリ93およびI軸出力波形メモリ94とにそれぞれGCR信号{xI,i }{yI,i }を取り込む。I軸入力波形メモリ93には、A/D変換器82の出力からGCR信号を取り込み、I軸出力波形メモリ94には、加算器88の出力からGCR信号を取り込む(ステップ131 )。
【0026】次に、CPU89は、文献3などに明示されている8フィールドシーケンスのGCR計算を行い、得られたステップ状の基準波形に対して1点差分を行い入力インパルス波形{xI,i }と、出力インパルス波形{yI,i }とを計算により生成する(ステップ132 )。
【0027】そして、CPU89は、次式に示すように相関演算を行い(ステップ133 )、 dI,i = 0ΣxI,k yI,i+k 、 但し i=-6,121 (4)
さらに、次式に示すように、タップ係数計算演算を行う(ステップ134 )。
【0028】
cI,i,new =cI,i,old −αdI,i 但し i=-6,121 (5)
ここで、αは正の微小値である。
【0029】続いて、CPU89は、制御をクロックタイミング発生回路83に委ねて、Q軸入力波形メモリ95とQ軸出力波形メモリ96とに、それぞれディジタル多重信号{xQ,i }{yQ,i }を取り込む。Q軸入力波形メモリ95には、A/D変換器85の出力のディジタル多重信号を取り込み、Q軸出力波形メモリ96には、T/10−TF87の出力のディジタル多重信号を取り込む(ステップ135 )。
【0030】続いて、CPU89は、出力波形のピーク検出を行い(ステップ136 )、次式に示すように、誤差波形計算を行う(ステップ137 )。
【0031】
eQ,i =yQ,i −r(yQ,i ) (6)
但し、r(yQ,i )は送信側で挿入しているインパルス状の基準波形列である。続いて、CPU89は、次式に示すように相関計算を行い(ステップ138 )、 dQ,i = kΣxQ,k *eQ,i+k 但し i=-6,121 (7)
RAM91とタップ係数メモリ92を用いて、次式に示すように、タップ係数計算演算を行う(ステップ139 )。
【0032】
cQ,i,new =cQ,i,old −αdQ,i 但し i=-6,121 (8)
ここで、αは正の微小値である。
【0033】最後にCPU89は、タップ係数の修正回数を見て(ステップ140 )、この修正回数が所定回数に満たない場合は、I軸の波形取り込みに戻る。また、修正回数が一致したときは、タップ係数の修正が完了したとして、タップ係数の修正動作を停止する。
【0034】このような波形等化技術は、従来のNTSC用(映像用)ゴーストキャンセラ技術をそのまま流用しているので、4.2MHz程度までの波形等化を行うことができる。
【0035】一方、本来等化すべき多重信号の周波数帯域は、高々0.8MHz以下であることからナイキスト条件を考慮するとTFのタップ間隔はさらに広げることが可能である。このような点では従来用いられているT/10−TFはタップ間隔が狭く、遅延時間が短いといえる。TFのタップ間隔を広げることによってタップ数を増加することなくゴースト除去範囲を拡大することができるので、例えばT/2 −TFなどを用いることが想定される。
【0036】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のT/10−TFをT/2 −TFに変更するだけでは、信号の伝送周期と、信号を取り込むときのサンプル周期との位相差が生じてしまい、タイミングよく信号(データ)の取り込みができないという問題があった。
【0037】本発明は、少なくともI軸にタップ間隔の広いTFを用いることによってTFの規模を増加することなくゴースト除去範囲を拡大し、この結果、波形等化性能の優れた波形等化装置を提供することを目的とする。
【0038】
【課題を解決するための手段】本発明の波形等化装置は上記した目的を達成するために、I軸およびQ軸にそれぞれ分離され、少なくとも前記I軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有するトランスバーサルフィルタと、前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記トランスバーサルフィルタに出力するデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記等化基準信号を m点差分してインパルス波を求める手段と、前記インパルス波のピーク位置を検出することにより前記トランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相を算出する手段と、前記データ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するよう指示する手段とを具備している。
【0039】また、この波形等化装置はI軸およびQ軸にそれぞれ分離され、前記I軸およびQ軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記I軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2以上の整数)のタップ間隔を有する第1のトランスバーサルフィルタと、前記Q軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有する第2のトランスバーサルフィルタと、前記I軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第1のトランスバーサルフィルタに出力する第1のデータ選択手段と、前記Q軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第2のトランスバーサルフィルタに出力する第2のデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記I軸およびQ軸それぞれの前記等化基準信号を m点差分してそれぞれのインパルス波を求める手段と、前記各インパルス波のピーク位置を検出することにより前記第1および第2のトランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相をそれぞれ算出する手段と、前記第1および第2のデータ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するようそれぞれに指示する手段とを具備している。
【0040】
【作用】この発明では、少なくともI軸の等化基準信号をm 点差分(m は2 以上の整数)して波高値を高めたインパルス波をピーク検出に用いることによって、より正確にインパルス波のピーク位置を算出し、このピーク位置からトランスバーサルフィルタのタップ間隔に同期する最適な位相を求めて、データ選択手段に対してこの位相でサンプリングしたディジタル多重信号を出力するよう指示するので、タップ間隔の広い(周期T/n のm 倍)トランスバーサルフィルタにもそのタップ間隔に同期してディジタル多重信号が出力される。
【0041】すなわち、トランスバーサルフィルタの規模(タップ数など)を増加しなくともタップ間隔を拡大することによりディジタル多重信号に含まれている線形歪を広い範囲で等化し、データ誤り率の向上されたディジタル多重信号を得ることができる。
【0042】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0043】図1は本発明に係る一実施例の波形等化装置の構成を示すブロック図である。なお、従来と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0044】同図において、1はクロックタイミング回路であり、伝送データのシンボル周期(伝送周期)T に対して所定周期T/n 、( nは2 以上の偶数)例えば n=10とすると、周期T/10のクロックCK1を発生する。2は分周器であり、クロックCK1(周期T/10)を1/m (m は2 以上の整数)分周、例えば1/5 分周してm 倍、この場合、5 倍の周期T/2 のクロックCK2を発生する。3、4はラッチよりなるゲートであり、クロックCK2の立ち上がりに同期するようデータ取り込み信号の発生時期を決定する。5、6はトランスバーサルフィルタ(以下TFと称す)であり、クロックCK2の周期T/2 と同じタップ間隔、例えばT/2 をもつ。なお、これらのTF5、6を用いることにより、従来のT/10−TFを用いたときよりも等化能力のサンプリング位相依存性が低減される。7、8はデータ選択回路であり、それぞれラッチ回路9、10、バッファ11、12およびセレクタ13、14で構成されており、各ラッチ回路9、10はそれぞれ5 個のラッチ群9a〜9e、10a〜10eからなっている。これらの各ラッチ9a〜9e、10a〜10eには、クロックCK1が共通に供給される。このデータ選択回路7、8は、I軸およびQ軸それぞれのディジタル多重信号データをサンプリングし、バッファ11、12に一時記憶し、セレクタ13、14が最適サンプル位相となるラッチ回路9、10の出力を選択し、それぞれのTF5、6に送出する。15はCPUであり、各メモリを制御すると共に8 フィールドシーケンスGCR計算、インパルス位相演算およびタップ演算などを行う。
【0045】図2に示すように、TF5、6は直列接続された 128個のラッチ21と、各ラッチ21にそれぞれ接続された乗算器22と、各乗算器22の出力が加算される加算器23とから構成されている。
【0046】これらのTF5、6はタップ間隔が広いことから、データサンプリング時にサンプル点の間引きが必要になる。これを図1のCPU15とデータ選択回路7、8とにより実現している。
【0047】以下、図3のフローチャートを参照してこの波形等化装置の動作を説明する。始めにI軸に対する等化動作について説明する。
【0048】まず、テレビジョン受信機の電源投入あるいは選局切り換えなどによってCPU15は動作を開始し、ROM90に予め格納されているプログラムを読み出し、RAM91を用いてタップ係数メモリ92および各入出力波形メモリ93、95、94、96などの初期設定を行う(ステップ301 )。これは従来と同じ動作である。
【0049】CPU15は、初期設定後、データ取り込みのタイミング制御をクロックタイミング発生回路1に委ね、ゲート回路3より発生するデータ取り込み信号に基づきA/D変換器82の出力からI軸入力波形メモリ93に、また、加算器88の出力からI軸出力波形メモリ94にそれぞれ等化基準信号としてのGCR信号{xI,i }、{yI,i }を取り込む(ステップ302 )。
【0050】続いて、CPU15は作業用RAM91を用いて8フィールドシーケンスGCR計算を行い、得られたステップ状の基準信号を、m点差分、例えば5点差分して入力信号および出力信号のインパルス波を求める(ステップ303 )。これは、従来の一点差分を、例えば図4(b)に示すようなフィルタをかけたものとすると、この実施例の場合は、図4(a)に示すようなフィルタをかけたのと同じことになる。
【0051】これら2 つのフィルタの周波数特性を図5に示す。
【0052】同図において、Saは1点差分を行ったときの周波数特性であり、Sbは5点差分を行ったときの周波数特性である。また、ScはI軸の入力信号であり、図8(d)と同じ周波数特性のLPF81を通過しているため従来の1点差分では、図6(a)に示すように、インパルス波Iaの波高値が低くなり、後のピーク検出が雑音などによって正常に行えなくなることがあるが、本実施例の5点差分では、図6(b)に示すように、インパルス波Ibの波高値を高くする(制御ゲインを上げる)ことができるのでピーク検出する際に雑音の影響を受けにくくなる。
【0053】したがって、CPU15がインパルス波Ibのピーク検出を行うと、そのピーク位置pI,k (kはデータ番号)が正確に求められる(ステップ304 )。
【0054】次に、CPU15は、このインパルス波Ibのピーク位置pI,k がどのサンプル系列{xI,5k}、{xI,5k+1}〜{xI,5k+4}から得られたのもなのかを次式(9)に従って判定する(ステップ304 )。なお、サンプル系列{xI,5k}は、データ取り込み信号に同期したサンプル系列であり、サンプル系列{xI,5k+1}〜{xI,5k+4}は、サンプル系列{xI,5k}よりもT/10毎に遅延してサンプリングされたサンプル系列である。
【0055】
φI =mod(k) (9)
ここで、mod(x)は、xを 5で割った余り( 0〜 4)であり、CPU15の判定として、例えばφI = 0のときは、サンプル系列{xI,5k}が選択すべきデータ系列となり、φI = 1のときは、サンプル系列{xI,5k+1}が選択すべきデータ系列となる。
【0056】このようにφI の値に応じてCPU15はデータ系列を選択し(ステップ305)、セレクタ13にクロック選択信号を出力し、サンプル周期がT/2 になるようにサンプル点の間引きを行う(ステップ306 )。例えばラッチ回路9の各ラッチ9a〜9eの出力は、バッファ11に一時記憶され、クロック選択信号の極性に応じてセレクタ13によってその中の一つが選択される。そして、CPU15はその一つのデータを用いて相関計算を行う(ステップ307 )。その後は、従来例と同様にI軸のタップ係数計算を行う(ステップ308 )。
【0057】次に、Q軸に対する等化動作について説明する。
【0058】Q軸もI軸と同様にゲート回路4のデータ取り込み信号に基づき出力波形を取り込み(ステップ309 )、従来と同様にピーク検出を行う(ステップ310 )。そして、CPU15はI軸と同様、φQ を求めピーク位置pQ,k を含むようにサンプル位相を選択し、(ステップ311 )、セレクタ14を用いて入出力信号のサンプル周期がT/2 になるようにサンプル点の間引きを行う(ステップ312 )。例えばラッチ回路10の各ラッチ10a〜10eの出力は、バッファ12に一時記憶され、クロック選択信号S1の極性に応じてセレクタ14によってその中の一つが選択される。
【0059】そして、CPU15は、その一つのデータを用いて誤差計算し(ステップ313)、相関計算を行う(ステップ314 )。その後は従来と同様にQ軸のタップ係数計算を行い(ステップ315 )、このタップ係数の修正回数を見る動作を実行する(ステップ316 )。
【0060】上記の結果、I、Q軸共に5 個のデータの中から選択された最適サンプル位相となるラッチ回路9、10の出力がTF5、6に出力される。
【0061】以下、TF5、6の各動作を説明する。
【0062】TF5に最適サンプル位相の出力(I軸用のA/D変換器82の出力)が入力されると、この出力は 128個直列接続されたラッチ21に加えられる。ラッチ21にはそれぞれ図示していないクロックCK2が加えられており、T/2 秒毎に遅延した信号がそれぞれ 128個の乗算器22に加えられる。これらの乗算器22には、上記したように算出されたタップ係数cI,-6〜cI,121 が加えられている。これらの乗算器22の 128個の出力信号は、加算器23で加算されてTF5の出力となる。
【0063】このTF5のタップ間隔 T/2を遅延時間で表すと、 T/2=5/(4fsc)= 0.349μs なので、cI,-6〜cI,121 のタップ係数をもつ 128タップのTF5では、ゴースト除去遅延時間の範囲が−2.1 〜42.3μs になる。つまり、このTF5は、従来と同じタップ数にもかかわらず広い範囲のゴースト除去を行うことができる。
【0064】一方、TF6にQ軸用のA/D変換器8の出力が入力されると、TF5と同様に、ディジタル多重信号のゴースト成分が除去される。ここで、TF6のタップ係数をcQ,-6〜cQ,121 と表記する。TF6のゴースト除去遅延時間の範囲も−2.1 〜42.3μs である。
【0065】そして、それぞれのTF5、6により広範囲にゴーストが除去され、この結果互いの各出力が加算器88で加算されたものが波形等化回路の多重データ出力となる。
【0066】このように本実施例の波形等化装置によれば、I軸、Q軸ともにT/2 −TF5、6を用いることにより、TF自体のタップ数を増加することなくゴースト除去を広範囲で行うことができるようになる。また、それに伴う補間動作の際、CPUはGCR信号を5点差分して、正確にサンプル位相を求め、この位相でラッチ回路の出力を選択して出力するようにデータ選択回路に指示するのでデータ選択回路よりT/2 −トランスバーサルフィルタには位相ずれのないディジタル多重信号が出力される。したがって、T/2 トランスバーサルフィルタでは、従来よりタップ間隔が広い分、広範囲にゴースト除去が行われる。
【0067】この結果、トランスバーサルフィルタからはデータ誤り率が向上されたディジタル多重信号を出力することができる。このデータ誤り率が向上するということはディジタル信号伝送において大変有効なことである。
【0068】なお、本発明において、Q軸の基準信号の形状に基づきQ軸の基準信号からそのピークを求めるときには、各種さまざまな手法があることは明らかである。また、Q軸にインパルス波となる基準信号が挿入されていない場合、ディジタルデータ自身の等化を行うことにより(公知の技術)、Q軸を等化することができる。この場合でも、本発明はI軸にステップ形状の基準信号(GCR)が挿入されていればI軸に対する等化手段として有効に適応できる。
【0069】
【発明の効果】以上説明したように本発明の波形等化装置によれば、少なくともI軸側のディジタル多重信号の等化基準信号を m点差分して、より正確にインパルス波のピーク位置を検出し、このピーク位置から最適サンプル位相を求めることによってサンプル周期T/n の m倍のタップ間隔を有するトランスバーサルフィルタに最適な位相でディジタル多重信号を出力し、このトランスバーサルフィルタがディジタル多重信号に含まれている線形歪を広範囲に等化するので波形等化装置の波形等化性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例の波形等化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の波形等化装置に用いられているTFの構成を示すブロック図である。
【図3】この実施例の波形等化装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】(a)は一点差分したとき(従来)の仮想フィルタを示す図である。(b)は5点差分したときの仮想フィルタを示す図である。
【図5】図4(a)および図4(b)のフィルタの各周波数特性を示す図である。
【図6】(a)は一点差分により求められたインパルス波Iaを示す図である。(b)は5点差分により求められたインパルス波Ibを示す図である。
【図7】従来のテレビジョン受信機の構成を示すブロック図である。
【図8】(a)は映像信号(V)の伝送帯域を示す図である。(b)はディジタル多重信号(M)の帯域形状を示す図である。(c)はディジタル多重信号(M)のスペクトルを示す図である。(d)は従来の同期検波器のカットオフ周波数を示す図である。
【図9】遅延時間τ秒、強度gのゴーストが存在するときのディジタル多重信号(M)と映像信号(V)の位相関係を示すベクトル図である。
【図10】従来の波形等化装置の構成を示す図である。
【図11】(a)はGCR信号を示す図である。(b)はインパルス形状の基準信号を示す図である。
【図12】従来の波形等化装置に用いられているT/10のトランスバーサルフィルタの構成を示す図である。
【図13】従来の波形等化装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1…クロックタイミング回路、2…分周器、3、4…ゲート、5、6…トランスバーサルフィルタ、7、8…データ選択回路、9、10…ラッチ回路、11、12…バッファ、13、14…セレクタ、15…CPU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 I軸およびQ軸にそれぞれ分離され、少なくとも前記I軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有するトランスバーサルフィルタと、前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記トランスバーサルフィルタに出力するデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記等化基準信号を m点差分してインパルス波を求める手段と、前記インパルス波のピーク位置を検出することにより前記トランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相を算出する手段と、前記データ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するよう指示する手段とを具備することを特徴とする波形等化装置。
【請求項2】 I軸およびQ軸にそれぞれ分離され、前記I軸およびQ軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記I軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有する第1のトランスバーサルフィルタと、前記Q軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有する第2のトランスバーサルフィルタと、前記I軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第1のトランスバーサルフィルタに出力する第1のデータ選択手段と、前記Q軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第2のトランスバーサルフィルタに出力する第2のデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記I軸およびQ軸それぞれの前記等化基準信号を m点差分してそれぞれのインパルス波を求める手段と、前記各インパルス波のピーク位置を検出することにより前記第1および第2のトランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相をそれぞれ算出する手段と、前記第1および第2のデータ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するようそれぞれに指示する手段とを具備することを特徴とする波形等化装置。
【請求項1】 I軸およびQ軸にそれぞれ分離され、少なくとも前記I軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有するトランスバーサルフィルタと、前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記トランスバーサルフィルタに出力するデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記等化基準信号を m点差分してインパルス波を求める手段と、前記インパルス波のピーク位置を検出することにより前記トランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相を算出する手段と、前記データ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するよう指示する手段とを具備することを特徴とする波形等化装置。
【請求項2】 I軸およびQ軸にそれぞれ分離され、前記I軸およびQ軸に等化基準信号を有しQ軸において所定の伝送周期T で伝送されるディジタル多重信号を他の周期T/n (n は 2以上の偶数)でサンプリングして線形歪を等化する波形等化装置において、前記I軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有する第1のトランスバーサルフィルタと、前記Q軸に対して前記周期T/n のm 倍(m は2 以上の整数)のタップ間隔を有する第2のトランスバーサルフィルタと、前記I軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第1のトランスバーサルフィルタに出力する第1のデータ選択手段と、前記Q軸の前記ディジタル多重信号より前記周期T/n で複数のディジタルデータをサンプリングし、その中の一つを選択して前記第2のトランスバーサルフィルタに出力する第2のデータ選択手段と、前記周期T/n でサンプリングされた前記I軸およびQ軸それぞれの前記等化基準信号を m点差分してそれぞれのインパルス波を求める手段と、前記各インパルス波のピーク位置を検出することにより前記第1および第2のトランスバーサルフィルタのタップ間隔に対してデータ入力タイミングを同期させるための位相をそれぞれ算出する手段と、前記第1および第2のデータ選択手段に対して前記位相でディジタルデータを出力するようそれぞれに指示する手段とを具備することを特徴とする波形等化装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図3】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
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【図13】
【公開番号】特開平5−284062
【公開日】平成5年(1993)10月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−80011
【出願日】平成4年(1992)4月1日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【公開日】平成5年(1993)10月29日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)4月1日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
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