説明

波長分散測定方法および装置、並びに、光伝送システム

【課題】伝送路の波長分散特性の変化を高い精度で容易に測定可能にし、該測定結果に応じて可変分散補償器の分散補償量を最適化することで信号光を安定して受信できるようにする。
【解決手段】光伝送システムは、運用中の信号光とは波長の異なる複数のテスト光を、対向する端局間で一組の伝送路を介して周回させ、該各テスト光がシステム内を所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を各伝送路での波長分散量の変化に関する測定情報として各端局の補償量制御部に伝え、該測定情報を基に可変分散補償部の分散補償量の最適化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路の波長分散特性の変化を測定するための方法および装置、並びに、その測定結果を用いて可変分散補償器の最適化を行う光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを伝送される信号光は、波長の違いにより伝播速度が異なるという光ファイバの持つ波長分散特性の影響を受けて波形歪を起こすことが知られている。現在、40ギガビット毎秒(Gbps)以上の伝送速度による波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)方式の光伝送システムにおいては、各波長における波長分散量を調整するために、各波長に対応した光受信器の直前に可変分散補償器(TDC:Tunable Dispersion Compensator)が搭載されている。光ファイバを用いた伝送路の波長分散特性に応じてTDCの分散補償量を最適化するためには、例えば、下記の特許文献1に記載されているように、システムの起動時に、光受信器で受信される信号光のビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定し、該測定値を最適化のためのパラメータとして用いることにより、TDCの分散補償量を精度良く最適値に調整することが可能である。
【0003】
上記のようなBERをパラメータとする分散補償量の最適化をシステム運用中にも適用する場合、温度変化等の環境条件や経時劣化により伝送路の波長分散特性が変化することで、例えば図1に示すように、TDCの分散補償量に対するBERの関係を示す曲線が破線の状態から実線の状態に変化する可能性がある。この場合、変化前の分散補償量の最適点A1における変化後のBERの測定値B1’を基に、TDCの分散補償量を最適点A1から増加させるのが良いのか、それとも減少させるのが良いのかを判断することが困難になる。つまり、システムの運用中に伝送路の波長分散特性が変化したときに、BERを単に測定していただけでは分散補償量を最適化するための調整の方向を決めることができない。このような状況を避けるための一般的な技術としては、TDCの分散補償量を増加および減少の各方向に所要量変化させてBERを測定し、該測定値が相対的に小さくなる方向に分散補償量を調整するようにして最適化を図ることが知られている。
【0004】
上記TDCの分散補償量の最適化では、受信端で測定されるBERに基づいて当該波長の信号光に対する伝送路上での波長分散量を間接的に求めているが、伝送路上での波長分散量を測定するための技術に関しては、上記BERの利用以外にも様々な手法が知られている。例えば、下記の特許文献2,3には、波長の異なる複数の光パルスを伝送路の一端から送信して他端で折り返し、該伝送路を往復した各光パルスを検出して当該群遅延を基に波長分散量を測定する技術が開示されている。また、下記の特許文献4,5には、同一の伝送路を複数回往復させた光パルスの群遅延を基に波長分散量を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−208892号公報
【特許文献2】特開平11−72761号公報
【特許文献3】特開2000−329650号公報
【特許文献4】特開平6−3452号公報
【特許文献5】特開昭63−218837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したようにTDCの分散補償量を増減させることで最適化の方向を判断する場合、測定されるBERは光受信器で受信される信号光の品質に依存し、当該信号品質は主に伝送路上での光増幅時に発生する自然放出(ASE:Amplified Spontaneous Emission)光のレベルに左右される。受信端におけるASE光のレベルは、当該信号光の伝送距離や光中継数(スパン数)などの伝送状態によって変化する。受信端でのASE光のレベルが高い、すなわち、光信号対雑音比(OSNR:Optical Signal to Noise Ratio)が低い場合、前述の図1に示した分散補償量に対するBERの関係は、図2に例示するように分散補償量の最適点でのBERの値が上昇する。これにより、TDCの分散補償量を調整できる範囲(例えば、図2中の太線部分)が狭くなるため、最適点を求めるための自由度が減ることになる。具体的には、最適化の方向を判断するために分散補償量を増加または減少させたときに、光受信器のFEC(Forward Error Correction)回路でエラー訂正できる限界(図2の例では破線で示すBER=1×10−3)を超える信号品質の劣化が生じる可能性がある。このような信号品質の劣化が生じた場合、該信号光のBERを測定できなくなるため、BERに基づく分散補償量の最適化が困難になってしまう。
【0007】
また、BERの測定に代えて、前述したような伝送路を往復させた光パルスの群遅延を基に波長分散量を測定する従来技術を適用し、TDCの分散補償量の最適化を図る場合を考えると、一般的な光伝送システムは伝送路上に光アンプを備えており、該光アンプには、通常、入出力部分に光アイソレータが設けられている。該光アイソレータは、伝送路の一端から送信され他端に向けて伝送される光パルスを通過させるが、該伝送路の他端で折り返された戻り光を遮断する。このため、同一の伝送路上で光パルスを往復させて波長分散量を測定する手法は、一般的な光伝送システムにおけるTDCの分散補償量の最適化に適用することは困難である。さらに、伝送路上に光アンプを備えていない光伝送システムを想定した場合、光パルスが同一の伝送路を往復することで、該光パルスのパワーは伝送路の損失により低下する。この光パルスのパワー低下は、伝送路の往復回数が増える程顕著になる。光パルスの検出可能レベルには限界があるので往復回数は制限され、往復回数が減ると所要の精度で波長分散量を測定することが困難になる。仮に、往復回数を多くできたとしても、往復回数の増加に伴って波長分散の影響による光パルスの波形歪みが生じて正確なタイミング検出が難しくなるため、波長分散量の測定精度低下は避けられない。
【0008】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、光伝送システムにおける伝送路の波長分散特性の変化を高い精度で容易に測定可能な波長分散測定方法および装置を実現することを目的とする。また、当該測定技術を用いてシステム運用中における伝送路での波長分散量の変化に応じた可変分散補償器の制御を行うことで、各波長の信号光を安定して受信できる光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明による波長分散測定方法の一態様は、第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムについて、前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する方法を提供する。この方法は、前記第1および第2端局間で運用される信号光とは波長の異なる複数のテスト光を前記第1端局で生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信する。そして、該第1伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第2端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第2端局から前記第2伝送路に送信する。さらに、該第2伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第1端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信する。これにより前記各テスト光を前記光伝送システム内で周回させる。そして、前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を基に前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化を測定する。
【0010】
また、本発明による光伝送システムの一態様は、第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムを提供する。この光伝送システムは、前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する波長分散測定装置を備える。また、前記第1および第2端局は、それぞれ、前記第1および第2端局間で運用される信号光、並びに、該信号光とは波長の異なる複数のテスト光を生成可能であり、前記信号光および前記各テスト光を合波して前記第1および第2伝送路の一方に送信する光送信部と、前記第1および第2伝送路の他方を伝播した光が与えられ、該光の波長分散を可変補償する可変分散補償部と、前記可変分散補償部における分散補償量を制御する補償量制御部と、前記可変分散補償部で分散補償された光を受信する光受信部と、前記光受信部で前記各テスト光を受信したとき、該各テスト光を変換した電気信号を同じ端局内の前記光送信部に伝達することにより、該各電気信号を再変換した前記各テスト光が前記光送信部で生成されるようにする信号経路と、を有する。さらに、前記波長分散測定装置は、前記第1および第2端局の間を前記第1および第2伝送路を介して周回する前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を、前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化に関する測定情報として前記第1および第2端局の前記補償量制御部に伝える。そして、前記補償量制御部は、前記波長分散測定装置からの測定情報を基に、前記可変分散補償部における分散補償量の制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
上記のような波長分散測定方法によれば、波長の異なる複数のテスト光が、第1および第2端局の間で第1および第2伝送路を介して周回されるようにしたことで、伝送路上の光アンプ等に接続された光アイソレータでテスト光が遮断されることが回避され、また、各テスト光は各端局で受信されると電気信号に変換された後に再変換されて伝送路に送信されるので、周回数が増えても各テスト光パワーの低下が生じることはない。このため、各テスト光がシステム内を所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を正確に計測することができる。これにより、テスト光の波長間における伝播時間の差をパラメータとして、第1および第2伝送路での波長分散量の変化を高い精度で容易に測定することが可能になる。そして、当該測定結果を基に第1および第2端局の可変分散補償部における分散補償量の制御を行うことにより、システム運用中に第1および第2伝送路での波長分散量に変化が生じても、運用中の信号光を安定して受信できる光伝送システムを実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】伝送路の波長分散特性の変化によりTDCの分散補償量に対するBERの関係が変化する様子を示す図である。
【図2】OSNRに応じて分散補償量の最適点でのBERが変化する様子を示す図である。
【図3】本発明による光伝送システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】図3の端局Aの具体的な構成例を示すブロック図である。
【図5】図3の端局Bの具体的な構成例を示すブロック図である。
【図6】波長分散測定装置による波長分散量の変化の測定方法を示すフローチャートである。
【図7】各波長のテスト光の伝播時間差を説明する概念図である。
【図8】伝送路での波長分散量の変化の仕方を説明するための図である。
【図9】上記実施形態に関連した変形例を示すブロック図である。
【図10】上記実施形態に関連する中継局を備えた他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明による光伝送システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
図3において、本実施形態の光伝送システムは、例えば、対向する端局Aおよび端局Bの間を一組の伝送路P1,P2により接続し、波長の異なる複数の信号光が合波されたWDM光を各端局A,B間で双方向に伝送する。
【0014】
端局Aは、端局Bに送るWDM光を生成する光送信部1Aと、光送信部1Aで生成されたWDM光を所要のレベルまで一括増幅して伝送路P1に送信する送信側光増幅部2Aとを備える。光送信部1Aは、波長分散量の変化を測定するためのテスト光を、WDM光の各チャネルとは波長の相違する光またはWDM光の未使用チャネルを利用して生成する機能を持つ。なお、テスト光の詳細については後述する。
【0015】
また、端局Aは、端局Bから送信され伝送路P2を伝播したWDM光を所要のレベルまで一括増幅すると共に、伝送路P2で生じた波長分散を一括補償することが可能な受信側光増幅部3Aと、受信側光増幅部3Aで補償されずに残留する波長分散を波長毎に補償する可変分散補償部4Aと、可変分散補償部4Aにおける各波長に対応した分散補償量を制御する補償量制御部5Aと、可変分散補償部4Aから出力される各波長の信号光若しくはテスト光を受信処理する光受信部6Aとを備える。さらに、端局Aは、光受信部6Aおよび光送信部1Aの間を接続する信号線路7Aを有する。信号線路7Aは、光受信部6Aにおいてテスト光が受信されたとき、当該受信信号を光受信部6Aから光送信部1Aに伝達する。
【0016】
端局Bは、端局Aに送るWDM光を生成する光送信部1Bと、光送信部1Bで生成されたWDM光を所要のレベルまで一括増幅して伝送路P2に送信する送信側光増幅部2Bとを備える。光送信部1Bも、端局Aの光送信部1Aと同様に、WDM光の各チャネルとは波長の相違する光またはWDM光の未使用チャネル等を利用してテスト光を生成する機能を持つ。
【0017】
また、端局Bは、端局Aから送信され伝送路P1を伝播したWDM光を所要のレベルまで一括増幅すると共に、伝送路P1で生じた波長分散を一括補償することが可能な受信側光増幅部3Bと、受信側光増幅部3Bで補償されずに残留する波長分散を波長毎に補償する可変分散補償部4Bと、可変分散補償部4Bにおける各波長に対応した分散補償量を制御する補償量制御部5Bと、可変分散補償部4Bから出力される各波長の信号光若しくはテスト光を受信処理する光受信部6Bとを備える。さらに、端局Bは、光受信部6Bおよび光送信部1Bの間を接続する信号線路7Bを有する。該信号線路7Bは、光受信部6Bにおいてテスト光が受信されたとき、当該受信信号を光受信部6Bから光送信部1Bに伝達する。
【0018】
加えて、端局Bは、光受信部6Bでのテスト光の受信結果に基づいて、伝送路P1,P2での波長分散量の変化を測定する波長分散測定装置8を有する。波長分散測定装置8は、波長の異なる複数のテスト光について、各テスト光がシステム内を所定の周回数Mだけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、波長間における伝播時間の差に基づいて伝送路P1,P2での波長分散量の変化を測定する。波長分散測定装置8の測定結果は、補償量制御部5Bに伝えられると共に、光送信部1Bから伝送路P2を利用して端局Aの補償量制御部5Aにも伝えられる。
【0019】
図4は、上記端局Aの具体的な構成例を示すブロック図である。
図4の構成例では、端局Aの送信側について、N台の光送信器(TX)11,11,…,11が設けられている。各光送信器11〜11は、互いに波長の異なる信号光若しくはテスト光を出力することが可能である。各光送信器11〜11からの出力光は、合波器12により1つに合波された後にポストアンプ21で一括増幅されて伝送路P1に送信される。ポストアンプ21の入出力ポートには光アイソレータ22,23が接続されている。送信光制御回路13は、端局Bに送信するWDM光の運用チャネルの設定および波長分散量の測定タイミングに応じて、各光送信器11〜11で生成する光(信号光またはテスト光)を制御する。
【0020】
また、端局Aの受信側については、伝送路P2を伝播したWDM光が、プリアンプ31に与えられる。このプリアンプ31には、分散補償ファイバ(DCF:Dispersion Compensating Fiber)32が接続されており、伝送路P2を伝播した各波長の信号光およびテスト光に対する損失と波長分散の補償が全ての波長ついて一括して行われる。プリアンプ31の入出力ポートにも、上記ポストアンプ21と同様に光アイソレータ33,34が接続されている。プリアンプ31からの出力光は、分波器61で波長毎に分離された後に、各々の波長に対応した可変分散補償器(TDC)41,41,…,41に入力される。各TDC41〜41では、補償量制御回路52からの出力信号に従って制御された分散補償量により、入力光に残留する波長分散の補償が行われる。各TDC41〜41からの出力光は、各々に対応した光受信器(RX)62,62,…,62で受信処理される。
【0021】
端局Aの光受信器62〜62のいずれかにおいてテスト光が受信されると、当該受信信号が信号線路7Bを通って波長の対応する光送信器11〜11に伝達される。また、光受信器62〜62のいずれかにおいて、端局Bの波長分散測定装置8での測定情報を示す信号光が受信されると、当該受信信号が測定情報受信回路63に出力されて上記測定情報が取得され、該測定情報が補償量演算回路51に伝えられる。補償量演算回路51では、測定情報受信回路63からの測定情報を基に、各TDC41〜41における分散補償量の最適値が演算され、該演算結果が補償量制御回路52に伝えられる。補償量制御回路52では、補償量演算回路51の演算結果に従って、各TDC41〜41の分散補償量を最適値にする制御が行われる。
【0022】
図5は、上記端局Bの具体的な構成例を示すブロック図である。なお、図5の構成例において、上記図4に示した端局Aの構成例に対応する要素には同一の符号が付してある。端局Aの構成例に対して、端局Bの構成例が異なっている点は、伝送路P1,P2に対する送信側および受信側の関係が逆になっている点と、端局Aの測定情報受信回路63に代えて、波長分散測定装置8としてのカウント回路81および伝播時間差算出回路82が設けられている点である。
【0023】
上記カウント回路81は、端局Aから送信され伝送路P1を伝播したテスト光が端局Bの光受信器62〜62で受信される回数を受信波長毎にそれぞれカウントし、該各受信波長に対応したカウント値を伝播時間差算出回路82に伝える。伝播時間差算出回路82は、カウント回路81でのカウント値に応じて、テスト光がシステム内を所定の周回数Mだけ伝播するのに要する時間をテスト光の波長毎に計測し、該計測結果を用いて各波長のテスト光の伝播時間の差を算出する。該テスト光の波長間における伝播時間差は、後で詳しく説明するように伝送路P1,P2での波長分散量の変化に対応しており、ここでは伝播時間差算出回路82で算出される伝播時間差の値が波長分散量の変化の測定情報として端局B内の補償量演算回路51および送信光制御回路13に出力される。
【0024】
次に、本実施形態の光伝送システムにおける動作について説明する。
上記のような構成の光伝送システムでは、まず、システムの起動時に、上述した従来のBERをパラメータとする分散補償量の最適化などの公知技術を適用することにより、各端局A,Bの受信側にそれぞれ配置されるTDC41〜41について、各々の分散補償量の初期設定が行われる。具体的には、端局A(端局B)の各光送信器11〜11で初期設定用の信号光が生成され、該各信号光が伝送路P1(伝送路P2)を伝播して端局B(端局A)の各光受信器62〜62で受信され、各受信信号のBERの測定値が所定の初期値以下となるように、各々に対応するTDC41〜41の分散補償量が初期設定される。
【0025】
なお、前述したように環境条件や経時劣化により伝送路P1,P2の波長分散特性は変化するが、該変化は数時間といった比較的長い期間で生じるため、システム起動時の初期設定中に伝送路P1,P2の波長分散特性が急激に変化することは実質的にない。このため、システム起動時の初期設定動作において、最適化の方向を判断するために分散補償量を増減させる必要はなく、BERをパラメータとしてTDCの分散補償量を初期設定することが可能である。
【0026】
システム起動時の初期設定動作が完了してシステムの運用が開始されると、端局B内に配置された波長分散測定装置8のカウント回路81および伝播時間差算出回路82によって、伝送路P1,P2での波長分散量の変化の測定が行われる。以下、波長分散測定装置8による波長分散量の変化の測定方法の一例を、図6のフローチャートを参照しながら具体的に説明する。
【0027】
システムの運用開始後、まず図6のステップ1(図中S1で示し、以下同様とする)において、端局Aの光送信部1Aで波長の異なる複数のテスト光が生成される。該テスト光の波長は、端局A,B間で伝送されるWDM光の信号帯域およびその近傍の範囲内で、運用中の信号光とは異なる波長に設定される。本実施形態では、光送信部1Aに具備されるN台の光送信器11〜11のうちで、WDM光の未使用チャネルに該当する少なくとも2つの光送信器が、テスト光の生成に利用される。各光送信器11〜11で生成する信号光およびテスト光の切り替えは、送信光制御回路13からの出力信号に従って制御される。
【0028】
なお、ここではWDM光の未使用チャネルを利用してテスト光を生成するようにしているが、各端局A,Bの光送信部1A,1B内に、テスト光を生成するための専用の光送信器を信号光用の光送信器とは別にそれぞれ用意しておくことも可能である。テスト光用の光送信器としては、WDM光の最短波長近傍のテスト光を生成可能な光送信器と、WDM光の最長波長近傍のテスト光を生成可能な光送信器とを少なくとも用意するか、或いは、出力波長が可変の光送信器を用意し、該出力波長を信号光とは異なる複数の波長に制御してテスト光を生成するようにしてもよい。また、上記テスト光用の光送信器に対応させて、各端局A,Bの受信側にテスト光用のTDCおよび光受信器をそれぞれ用意し、同じ端局内のテスト光用の光受信器および光送信器の間を信号線路で接続しておく。この場合、信号光用の光受信器および光送信器の間を接続する信号線路は省略可能である。
【0029】
上記テスト光の信号パターンは、対向局内の波長が対応する光受信器62〜62においてテスト光を受信したことだけが検出できればよいので、特にフレームを構成する必要はない。また、後述するようにテスト光の周回数も端局Bのカウント回路81でカウントされるので、テスト光の信号パターンはカウント値を含まない簡易的なパターンであればよい。具体的には、例えば、上記図3の中程に示したような疑似ランダムパターン(110010)などをテスト光に適用することが可能である。ただし、テスト光の信号パターンは上記の一例に限定されない。
【0030】
端局Aの未使用チャネルに該当する光送信器で生成された各波長のテスト光は、合波器12により他の光送信器で生成された運用中の信号光と合波された後、ポストアンプ21で一括増幅されて伝送路P1に送信される。伝送路P1を伝播した各波長の信号光およびテスト光は、端局Bのプリアンプ31により伝送路P1での損失が一括補償されると共に、該プリアンプ31に接続されたDCF32により伝送路P1での波長分散が一括補償される。そして、分波器61で波長毎に分離された信号光およびテスト光は、各々に対応するTDC41〜41により、システム起動時に初期設定された分散補償量に従って、DCF32で補償されずに残留する波長分散が補償された後に、各光受信器62〜62でそれぞれ受信される。
【0031】
続いて、図6のステップ2では、端局Bの各光受信器62〜62における受信処理で、テスト光の信号パターンが検出されると、当該光受信器からカウント回路81にテスト光の受信を示す信号が出力される。つまり、カウント回路81は、波長の異なる少なくとも2つのテスト光に対応した各光受信器からの出力信号を受けることにより、端局Aから送信され伝送路P1を伝播した各波長のテスト光が端局Bの対応する光受信器で受信されたことを検出する。これにより、カウント回路81は、テスト光の波長に対応したカウント値(周回数)を0に設定する。カウント回路81の各波長に対応したカウント値は、随時、伝播時間差算出回路82に出力される。伝播時間差算出回路82は、カウント値が0になったタイミングより当該テスト光の伝播時間の計測を開始する。
【0032】
ステップ3では、端局Bのテスト光を受信した光受信器が、該テスト光を電気信号に変換した受信信号を信号線路71に出力する。これにより、同じ端局B内の対応する光送信器にテスト光の受信信号が伝達される。
【0033】
ステップ4では、テスト光の受信信号が伝達された光送信器において、該受信信号が光信号に変換されることにより、疑似ランダムパターン等のテスト光が生成される。該テスト光は、端局B内の合波器12により運用中の信号光と合波された後、ポストアンプ21で一括増幅されて伝送路P2に送信される。伝送路P2を伝播した各波長の信号光およびテスト光は、端局Aのプリアンプ31およびDCF32により伝送路P2での損失および波長分散が一括補償された後、分波器61により波長毎に分離される。そして、各波長の信号光およびテスト光は、各TDC41〜41により、システム起動時に初期設定された分散補償量に従って、DCF32で補償されずに残留する波長分散が補償された後に、各光受信器62〜62でそれぞれ受信される。
【0034】
ステップ5では、端局Aの各光受信器62〜62における受信処理で、テスト光の信号パターンが検出されると、当該光受信器が、テスト光を電気信号に変換した受信信号を信号線路71に出力することにより、同じ端局A内の対応する光送信器にテスト光の受信信号が伝達される。
【0035】
ステップ6では、テスト光の受信信号が伝達された光送信器において、該受信信号が光信号に変換されることによりテスト光が生成される。該テスト光は、端局B内の合波器12により運用中の信号光と合波された後、ポストアンプ21で一括増幅されて伝送路P1に送信される。
【0036】
ステップ7では、前述したステップ2と同様にして、端局Bの各光受信器62〜62における受信処理でテスト光の信号パターンが検出され、当該光受信器からカウント回路81にテスト光の受信を示す信号が出力されることにより、該テスト光の波長に対応したカウント値が1増やされる。
【0037】
ステップ8では、伝播時間差算出回路82において、各波長に対応したカウント値が、予め設定した周回数Mに達したか否かが判定される。カウント値が周回数Mに達していない波長については、前述したステップ3に戻り、カウント値が周回数Mに達するまでステップ3〜ステップ8の各動作が繰り返される。
【0038】
ステップ9では、カウント値が周回数Mに達した波長について、前述のステップ2で開始した伝播時間の計測が終了され、当該テスト光がシステム内をM周回するのに要した伝播時間が求められる。この伝播時間には、例えば、端局A,B間の距離(各伝送路P1,P2の長さ)が100kmのシステムにおいてテスト光を1000周回させた場合に、次の(a)〜(c)に示す時間が含まれることになる。
(a)100[km]×2(往復)×1.5(伝送路の屈折率)×1000(周回数)=300000[km]の光の伝播時間
(b)2(対向分)×1000(周回数)=2000回の光/電気の変換時間
(c)2(対向分)×1000(周回数)=2000回の電気/光の変換時間
【0039】
具体的に、上記(a)の伝播時間は、光速が約300000[km/sec]であるので、300000[km]÷300000[km/sec]=1[sec]となる。また、上記(b)および(c)の変換時間の合計は、一般的な電気および光の変換時間は0.5[μsec]程度であるので、2000回×2×0.5[μsec]=2[msec]となる。なお、端局A,B間の距離および周回数は、上記の一例に限定されるものではない。周回数は、端局A,B間の距離および伝播時間の計測精度に応じて適宜設定することが可能である。
【0040】
ステップ10では、テスト光に設定された全ての波長について、伝播時間の計測が終了したか否かが判定される。伝播時間の計測が終了していない波長があれば前述したステップ7に戻り、当該テスト光の伝播時間の計測を継続する。
【0041】
ステップ11では、計測された各波長のテスト光の伝播時間について、波長間の伝播時間の差が算出される。温度変化等の環境条件や経時劣化により伝送路P1,P2での波長分散量が変化した場合、該変化が各波長のテスト光の伝播時間に及ぼす影響は、前述した(a)〜(c)の時間要素のうちの(a)の伝播時間だけに現れ、(b)および(c)の変換時間には現れない。このため、図7の概念図に示すように、テスト光の波長間における伝播時間差を算出することにより、伝送路P1,P2での波長分散量の変化をその方向も含めて測定することができる。なお、端局A,B間の距離が短いなどの理由により、2つの波長間で充分な伝播時間差が得られない場合には、周回数Mの設定を増やすことで対処すればよい。
【0042】
伝送路P1,P2での波長分散量の変化の仕方に関しては、例えば図8に示すように、波長に対する群遅延の関係が波長方向に平行シフトする場合だけでなく、分散係数(図8下段のグラフにおける直線の傾き)が変化する場合も考えられる。システムの運用開始後における伝送路P1,P2での波長分散量が、システム起動時の波長分散量から変化していなければ、システム起動時の初期設定により各波長に対応したTDCの分散補償量が最適化されているため、各波長のテスト光について計測される伝播時間に有意な差は生じない。一方、システムの運用開始後に、伝送路P1,P2での波長分散量が上記分散係数も含めて変化した場合、つまり、図8の例で、変化前(システム起動時)の波長λ,λにおける波長分散量D1(λ),D1(λ)が、変化後(システム運用中)に波長分散量D2(λ),D2(λ)となった場合には、当該変化に対応した伝播時間差がテスト光の波長間に生じる。したがって、運用開始後に、テスト光の波長間における伝播時間差を所要の測定周期でモニタし、該伝播時間差が予め設定した許容値を超えたときに、該伝播時間差が零に近づくように各TDCにおける分散補償量の補正を行うことによって、伝送路P1,P2での波長分散量の変化に応じて各TDCの分散補償量を最適化することが可能になる。なお、上記伝播時間差の許容値については、光受信器の波長分散トレランスに応じて適宜設定することが可能である。
【0043】
上記のようなステップ1〜ステップ11の一連の動作により、波長分散測定装置8の伝播時間差算出回路82においてテスト光の波長間における伝播時間差が算出されると、該算出値が波長分散量の変化の測定情報として端局B内の補償量演算回路51および送信光制御回路13に出力される。そして、補償量演算回路51では、伝播時間差算出回路82で算出された伝播時間差を基に、各波長に対応したTDC41〜41の分散補償量の補正値が演算され、該演算結果が補償量制御回路52に伝えられる。補償量制御回路52では、補償量演算回路51で演算された補正値に従って、各TDC41〜41の分散補償量の制御が行われる。
【0044】
また、端局B内の送信光制御回路13では、テスト光の生成に使用していた光送信器において、伝播時間差算出回路82からの測定情報を載せた信号光が生成されるように、該光送信器の制御が行われる。そして、上記測定情報を載せた信号光が、端局Bから伝送路P2に送信され、伝送路P2を伝播して端局Aの対応する光受信器で受信されると、当該受信信号が測定情報受信回路63に出力される。測定情報受信回路63では、受信信号より端局Bにおける測定情報が取得され、該測定情報が端局A内の補償量演算回路51に伝えられる。補償量演算回路51では、測定情報受信回路63で取得された測定情報が示す伝播時間差を基に、各波長に対応したTDC41〜41の分散補償量の補正値が演算され、該演算結果が補償量制御回路52に伝えられる。補償量制御回路52では、補償量演算回路51で演算された補正値に従って、各TDC41〜41の分散補償量の制御が行われる。
【0045】
なお、システム運用中に実施する各TDCの分散補償量の最適化制御の周期に関しては、前述したように環境条件や経時劣化による伝送路P1,P2の波長分散特性の変化は数時間といった比較的長い期間で生じるため、短い周期で行う必要は特になく、数時間に1回程度の頻度としてもよい。この点を考慮すれば、テスト光の周回数を増やし時間をかけて伝播時間の計測を行うようにして精度向上を図ることも有効である。
【0046】
上記のように本実施形態の光伝送システムによれば、波長の異なる複数のテスト光が、対向する端局A,Bの間で一組の伝送路P1,P2を介して周回されるようにしたことで、該テスト光の伝播経路上に光アンプが配置されていても、該光アンプに接続された光アイソレータによりテスト光が遮断されることはない。また、システム内を周回するテスト光は、各端局A,Bで受信されると一旦電気信号に変換された後にテスト光に再変換されて伝送路に送信されるので、周回数が増えてもテスト光パワーの低下が生じることはない。さらに、各端局A,Bの受信側に配置されたDCF32およびTDC41〜41により、運用中の信号光と同様にしてテスト光の波長分散補償も行われるので、周回数の増加に伴って波長分散によるテスト光の波形歪みが生じることもない。このため、各波長のテスト光の周回数を確実にカウントしてM周回に要する伝播時間を正確に計測することができる。これにより、テスト光の波長間における伝播時間差をパラメータとして、伝送路P1,P2での波長分散量の変化を高い精度で容易に測定することが可能になる。そして、当該測定結果に応じて各TDC41〜41の分散補償量の最適化を行うことにより、システム運用中に伝送路P1,P2での波長分散量に変化が生じても、運用中の信号光を安定して受信することができる。このような分散補償量の最適化は、従来のように分散補償量を増減させなくても制御の方向を決定することが可能であるため、エラー訂正の限界を超えて最適化が困難になるような事態も回避できる。
【0047】
なお、上記実施形態の光伝送システムでは、端局B内に波長分散測定装置8(カウント回路81および伝播時間差算出回路82)を配置し、端局Aから伝送路P1に送信したテスト光が端局Bで受信された時に伝播時間の計測を開始するようにしたが、例えば図9に示すように、端局A内に波長分散測定装置8を配置するようにして、端局Aの光送信部1Aからテスト光を送信した時を伝播時間の計測開始とし、該テスト光が伝送路P1、端局Bおよび伝送路P2を伝播して端局Aで受信されることでカウント値(周回数)を1増やすようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、WDM光の未使用チャネルを利用してテスト光の伝送を行うようにしたので、テスト光の伝播時間の計測の途中で当該波長による信号光の運用が開始されることが想定される。その際には当該波長とは別の未使用チャネルにテスト光を切り替える必要が生じる。この場合、テスト光の波長の切り替えを行う時点で、切り替え前後の各波長におけるm周回(m<M)に要する伝播時間を測定して両波長の対応関係を求めておき、当該関係を用いて切り替え前までに計測した伝播時間を切り替え後の波長に対応する伝播時間に換算して計測結果を引き継ぐようにしてもよい。これにより、運用波長の切り替えに柔軟に対応してテスト光の伝播時間を効率的に計測することが可能である。なお、未使用チャネルを利用せず、テスト光専用の光送信器および光受信器を用意する場合には、上記のようなテスト光の波長の切り替えは不要である。
【0049】
さらに、上記実施形態では、端局A,Bが一組の伝送路P1,P2により直接接続されるシステム構成について説明したが、例えば図10に示すように、インラインアンプを備えた中継局Cが伝送路P1,P2上に配置されたシステム構成についても本発明は有効である。一般的な光伝送システムに適用される中継局Cには、WDM光の波長分散を一括補償するための固定分散補償器(DCM)が搭載されており、WDM光に合波されたテスト光は中継局C内のインラインアンプおよびDCMを通過して端局A,B間を中継伝送されることになる。このため、運用中の信号光と同様にして伝送路の損失および波長分散が補償されたテスト光がシステム内を周回することになり、上述した実施形態の場合と同様な波長分散量の変化の測定結果を用いたTDCの分散補償量の最適化を行うことが可能である。
【0050】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムについて、前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する方法であって、
前記第1および第2端局間で運用される信号光とは波長の異なる複数のテスト光を前記第1端局で生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信し、該第1伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第2端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第2端局から前記第2伝送路に送信し、さらに、該第2伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第1端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信することにより、前記各テスト光を前記光伝送システム内で周回させ、
前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を基に前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化を測定することを特徴とする波長分散測定方法。
【0051】
(付記2) 第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムについて、前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する装置であって、
前記第1および第2端局間で運用される信号光とは波長の異なる複数のテスト光を前記第1端局で生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信し、該第1伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第2端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第2端局から前記第2伝送路に送信し、さらに、前記第2伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第1端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信することにより、前記各テスト光を前記光伝送システム内で周回させる手段と、
前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を基に前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化を測定する手段と、
を備えたことを特徴とする波長分散測定装置。
【0052】
(付記3) 第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムにおいて、
前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する波長分散測定装置を備え、
前記第1および第2端局は、それぞれ、
前記第1および第2端局間で運用される信号光、並びに、該信号光とは波長の異なる複数のテスト光を生成可能であり、前記信号光および前記各テスト光を合波して前記第1および第2伝送路の一方に送信する光送信部と、
前記第1および第2伝送路の他方を伝播した光が与えられ、該光の波長分散を可変補償する可変分散補償部と、
前記可変分散補償部における分散補償量を制御する補償量制御部と、
前記可変分散補償部で分散補償された光を受信する光受信部と、
前記光受信部で前記各テスト光を受信したとき、該各テスト光を変換した電気信号を同じ端局内の前記光送信部に伝達することにより、該各電気信号を再変換した前記各テスト光が前記光送信部で生成されるようにする信号経路と、を有し、
前記波長分散測定装置は、前記第1および第2端局の間を前記第1および第2伝送路を介して周回する前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を、前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化に関する測定情報として前記第1および第2端局の前記補償量制御部に伝え、
前記補償量制御部は、前記波長分散測定装置からの測定情報を基に、前記可変分散補償部における分散補償量の制御を行うことを特徴とする光伝送システム。
【0053】
(付記4) 付記3に記載の光伝送システムであって、
前記可変分散補償部は、システム起動時に、前記第1および第2伝送路の波長分散特性に応じて分散補償量が初期設定され、
前記波長分散測定装置は、システム運用開始後に、所定の測定周期に従って前記各テスト光の伝播時間の計測を行い、
前記補償量制御部は、前記波長分散測定装置からの測定情報を基に、前記可変分散補償部における分散補償量の初期設定値を補正することを特徴とする光伝送システム。
【0054】
(付記5) 付記3または4に記載の光伝送システムであって、
前記第1および第2端局は、それぞれ、
前記光送信部から前記第1および第2伝送路の一方に送信する光を増幅する送信側光増幅部と、
前記第1および第2伝送路の他方を伝播して前記可変分散補償部に与えられる光を増幅する受信側光増幅部と、を有することを特徴とする光伝送システム。
【0055】
(付記6) 付記5に記載の光伝送システムであって、
前記送信側光増幅部および前記受信側光増幅部は、それぞれ、光アイソレータを含むことを特徴とする光伝送システム。
【0056】
(付記7) 付記5または6に記載の光伝送システムであって、
前記受信側光増幅部は、固定分散補償器を含むことを特徴とする光伝送システム。
【0057】
(付記8) 付記3〜7のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
波長の異なる複数の信号光を含む波長分割多重光が前記第1および第2端局の間で送受信され、
前記各テスト光は、前記波長分割多重光の未使用チャネルを利用して伝送されることを特徴とする光伝送システム。
【0058】
(付記9) 付記8に記載の光伝送システムであって、
前記波長分散測定装置は、前記各テスト光の伝送に利用する未使用チャネルを切り替えるとき、切り替え前後の各波長における伝播時間の関係を求め、該関係を用いて、切り替え前までに計測した伝播時間を切り替え後の波長に対応する伝播時間に換算して、計測結果を引き継ぐことを特徴とする光伝送システム。
【0059】
(付記10) 付記3〜7のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
波長の異なる複数の信号光を含む波長分割多重光が前記第1および第2端局の間で送受信され、
前記各テスト光の波長は、前記波長分割多重光の最短波長近傍および最長波長近傍に少なくとも設定されることを特徴とする光伝送システム。
【0060】
(付記11) 付記3〜10のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記各テスト光は、疑似ランダムパターンを有することを特徴とする光伝送システム。
【0061】
(付記12) 付記3〜11のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記波長分散測定装置は、
前記各テスト光の周回数をそれぞれカウントするカウント回路と、
前記カウント回路のカウント値に応じて、前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を算出して、該算出結果を前記測定情報として前記第1および第2端局の前記補償量制御部に伝える伝播時間差算出回路と、を有することを特徴とする光伝送システム。
【0062】
(付記13) 付記3〜12のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
前記第1および第2伝送路上に、インラインアンプおよび固定分散補償器を有する中継局を備えたことを特徴とする光伝送システム。
【符号の説明】
【0063】
1A,1B…光送信部
2A,2B…送信側光増幅部
3A,3B…受信側光増幅部
4A,4B…可変分散補償部
5A,5B…補償量制御部
6A,6B…光受信部
7A,7B,71〜71…信号線路
8…波長分散測定装置
11〜11…光送信器(TX)
12…合波器
13…送信光制御回路
21…ポストアンプ
22,23,33,34…光アイソレータ
31…プリアンプ
32…分散補償ファイバ(DCF)
41〜41…可変分散補償器(TDC)
51…補償量演算回路
52…補償量制御回路
61…分波器
62〜62…光受信器(RX)
81…カウント回路
82…伝播時間差算出回路
A,B…端局
C…中継局
P1,P2…伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムについて、前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する方法であって、
前記第1および第2端局間で運用される信号光とは波長の異なる複数のテスト光を前記第1端局で生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信し、該第1伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第2端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第2端局から前記第2伝送路に送信し、さらに、該第2伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第1端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信することにより、前記各テスト光を前記光伝送システム内で周回させ、
前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を基に前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化を測定することを特徴とする波長分散測定方法。
【請求項2】
第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムについて、前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する装置であって、
前記第1および第2端局間で運用される信号光とは波長の異なる複数のテスト光を前記第1端局で生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信し、該第1伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第2端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第2端局から前記第2伝送路に送信し、さらに、前記第2伝送路を伝播した前記各テスト光を前記第1端局で受信して電気信号に変換した後に該各電気信号を再変換して前記各テスト光を生成し、該各テスト光を前記信号光と合波して前記第1端局から前記第1伝送路に送信することにより、前記各テスト光を前記光伝送システム内で周回させる手段と、
前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を基に前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化を測定する手段と、
を備えたことを特徴とする波長分散測定装置。
【請求項3】
第1端局から送信され第1伝送路を伝播した信号光を第2端局で受信すると共に、前記第2端局から送信され前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を伝播した信号光を前記第1端局で受信する光伝送システムにおいて、
前記第1および第2伝送路の波長分散特性の変化を測定する波長分散測定装置を備え、
前記第1および第2端局は、それぞれ、
前記第1および第2端局間で運用される信号光、並びに、該信号光とは波長の異なる複数のテスト光を生成可能であり、前記信号光および前記各テスト光を合波して前記第1および第2伝送路の一方に送信する光送信部と、
前記第1および第2伝送路の他方を伝播した光が与えられ、該光の波長分散を可変補償する可変分散補償部と、
前記可変分散補償部における分散補償量を制御する補償量制御部と、
前記可変分散補償部で分散補償された光を受信する光受信部と、
前記光受信部で前記各テスト光を受信したとき、該各テスト光を変換した電気信号を同じ端局内の前記光送信部に伝達することにより、該各電気信号を再変換した前記各テスト光が前記光送信部で生成されるようにする信号経路と、を有し、
前記波長分散測定装置は、前記第1および第2端局の間を前記第1および第2伝送路を介して周回する前記各テスト光が所定の周回数だけ伝播するのに要する時間を波長毎に計測し、該計測した各波長の伝播時間の差を、前記第1および第2伝送路での波長分散量の変化に関する測定情報として前記第1および第2端局の前記補償量制御部に伝え、
前記補償量制御部は、前記波長分散測定装置からの測定情報を基に、前記可変分散補償部における分散補償量の制御を行うことを特徴とする光伝送システム。
【請求項4】
請求項3に記載の光伝送システムであって、
前記可変分散補償部は、システム起動時に、前記第1および第2伝送路の波長分散特性に応じて分散補償量が初期設定され、
前記波長分散測定装置は、システム運用開始後に、所定の測定周期に従って前記各テスト光の伝播時間の計測を行い、
前記補償量制御部は、前記波長分散測定装置からの測定情報を基に、前記可変分散補償部における分散補償量の初期設定値を補正することを特徴とする光伝送システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光伝送システムであって、
前記第1および第2端局は、それぞれ、
前記光送信部から前記第1および第2伝送路の一方に送信する光を増幅する送信側光増幅部と、
前記第1および第2伝送路の他方を伝播して前記可変分散補償部に与えられる光を増幅する受信側光増幅部と、を有することを特徴とする光伝送システム。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
波長の異なる複数の信号光を含む波長分割多重光が前記第1および第2端局の間で送受信され、
前記各テスト光は、前記波長分割多重光の未使用チャネルを利用して伝送されることを特徴とする光伝送システム。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれか1つに記載の光伝送システムであって、
波長の異なる複数の信号光を含む波長分割多重光が前記第1および第2端局の間で送受信され、
前記各テスト光の波長は、前記波長分割多重光の最短波長近傍および最長波長近傍に少なくとも設定されることを特徴とする光伝送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−176391(P2011−176391A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36895(P2010−36895)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】