説明

波長変換システム及び波長変換方法

【課題】波長変換の速度律速を解消し、波長変換器の数を大幅に低減可能な波長変換システム及び波長変換方法を提供する。
【解決手段】入力波長光を、1次ポンプ光を用いて第1の非線形光ファイバにより混合することにより中間波長光に変換し、上記中間波長光のみを固定の波長フィルタによりろ波した後、当該中間波長光を、2次ポンプ光を用いて第2の非線形光ファイバにより混合することにより出力波長光に変換する波長変換器を備えた波長変換システムであって、上記2次ポンプ光波長をITU−Tに基づくグリッド上に配置し、上記2次ポンプ光と上記出力波長光とを分離することにより上記出力波長光をろ波して得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システム又は光情報処理装置に用いられる波長変換器、及び波長合分波器や光スイッチを有する波長変換システム及び波長変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の光通信システムでは、1本の光ファイバに異なる波長の光を複数伝搬させることができる波長多重伝送技術(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いることによって伝送容量を増大させ、飛躍的に増加するトラフィックに対応している。また、ネットワークの接続点となる光ノード内に、波長多重信号光から特定波長の光信号を取り出すため波長選択スイッチを利用した光クロスコネクト装置が利用されている。
【0003】
このようなWDMネットワークにおいては、他の光ノードから来た光信号の波長同士が同じ波長となる波長競合が生じる。光ファイバによる伝送では、複数の同一波長の光信号は同一経路を通すことができないため、波長競合が起こり、信号が消失する。この場合、一方の波長を違う波長に変換して再び伝送する必要がある。つまり、光信号を電気信号に変換して、再び違う波長の光信号に戻して再送する。一旦、電気信号に変換すると非常に細かい制御が可能となるが、光信号の大容量化への対応が困難になる。また、限られた波長資源で波長競合が起こらないように光ネットワークの制御管理をすることが必要になり、ネットワークの一部経路の障害や、混雑度合いに応じて信号の経路を変えるといった柔軟な運用が困難になる。全光による波長変換は上記のような問題を解決し、波長資源を有効に利用する一つの手段として、光ネットワークへの導入が期待されている。
【0004】
全光による波長変換器には、4光波混合や差周波発生を利用したコヒーレント型と、相互利得変調(XGM:Cross-gain modulation)、相互吸収変調(XAM:Cross-absorption modulation)、相互位相変調(XPM:Cross-phase modulation)などを利用した光スイッチ型がある。それらの波長変換器の中で4光波混合を利用したコヒーレント型の波長変換器は、非線形応答の超高速性を活かして波長変換が行うことが可能であり、また、変換後も位相情報が保たれるので動作速度やフォーマットに依存しない波長変換が可能である。つまり、従来まで4光波混合は、WDM伝送において回避すべき現象の一つと考えられてきたが、応用によっては、光ネットワークに新たな価値を提供可能な技術と期待されている。上記のような、4光波混合を利用した波長変換器の構成においては非特許文献1に記載されたものがある。
【0005】
図8は非特許文献1に記載されている波長変換器の実験システム構成を示すブロック図である。図8の波長変換器は波長変換部に高非線形光ファイバ807,824を適用したものであり、波長変換部は、使用帯全域にわたって波長変換が可能となるように、波長変換器を2段(S1,S2)接続したカスケード型の波長変換器となっている。
【0006】
図8において、ステージS1の波長変換器は、1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光を発生する波長可変レーザ光源(TLS)801と、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)802と、偏光コントローラ(PC)803と、入力光と1次ポンプ光とを混合する光カップラ804と、偏光子(P)805と、偏光コントローラ(PC)806と、高非線形光ファイバ(HNLF)807と、波長可変のバンドパスフィルタ(tBPF)808aと、入力波長λinを有する入力光を発生する波長可変レーザ光源(TLS)811と、偏光コントローラ(PC)812とを備えて構成される。また、ステージS2の波長変換器は、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)821と、偏光コントローラ(PC)822と、中間波長光と2次ポンプ光とを混合する光カップラ823と、高非線形光ファイバ(HNLF)824と、減衰器(ATT)826と、光スペクトラムアナライザ(OSA)827と、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を発生する波長可変レーザ光源(TLS)831と、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)832と、偏光コントローラ(PC)833とを備えて構成される。なお、825は、実験システム構成では不要であるが、実際の運用では必要であって、中間波長λiwを有する中間波長光と、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光とを除去し、出力波長λoutを有する出力波長光を帯域ろ波する固定のバンドパスフィルタ(光波長フィルタ)である。
【0007】
図8において、ステージS1の波長変換器に、入力波長λinを有する入力光と、1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光とを入射する。そして、高非線形光ファイバ807による4光波混合により、中間波長λiwの中間波長光は、1次ポンプ光に対して入力波長λinの左右対称位置に発生する。非特許文献1では、中間波長λiwが一定となるように、入力波長λinに対して必要な1次ポンプ光の波長を変化させ入射している。その後、ステージS1の波長変換器の後段の波長可変フィルタ808aにより、中間波長λiwのみを透過させる。次いで、ステージS2の波長変換器では、ステージS1の波長変換器と同様に、中間波長λiwを有する中間波長光と、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を入射する。そして、高非線形光ファイバ824による4光波混合により、出力波長λoutの出力波長光は、2次ポンプ光に対して中間波長λiwの左右対称位置に発生する。ここで、2次ポンプ光は、出力波長λoutが存在する使用波長帯に配置される可能性があるため、波長可変のバンドパスフィルタ(tBPF)825(図8において点線で表示)を用いて、2次ポンプ光を除去する。この変換過程は高速に行うことが可能で位相情報が保たれるため、動作速度やフォーマットに依存しない。このように、4光波混合を用いた波長変換は、様々な変調フォーマットが混在する可能性がある次世代ネットワークに適用される波長変換器の有力候補の一つである。
【0008】
このような波長変換器をWDMネットワーク内に導入する場合、光ネットワークを構成する光ノードのすべての波長ポートに、波長変換器を組み込む形態が考えられている。上記のような波長変換器を有する光クロスコネクト装置においては、特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。
【0009】
図9は特許文献1に記載されている光クロスコネクト装置の構成例を示すブロック図である。図9において、光クロスコネクト装置の光スイッチ901には、構成の簡易さ、コスト、信頼性の観点から光信号を電気信号に変換せず、そのまま切り替えを行う光スイッチが用いられる。光スイッチ901は、入力光信号1〜nを入力する複数n本の入力ポートと、出力波長光信号1〜nを出力する複数n本の出力ポートを有し、スイッチ制御回路902の制御により、各入力ポートと各出力ポートをそれぞれ接続する構成を有する。
【0010】
図10は特許文献1に記載されているWDMに用いられる光クロスコネクト装置の構成例を示すブロック図である。図10において、複数m本の光ファイバからそれぞれ波長多重光信号1〜mがそれぞれ波長分波器1001−1〜1001−mに入力され、波長分波器1001−1〜1001−mは各波長の光信号に分波して光スイッチ1002の各入力ポートに出力する。光スイッチ1002はスイッチ制御回路1004により制御されて、光スイッチ1002の出力ポートから出力される各波長の光信号は、複数m本の光ファイバ伝送路にそれぞれ対応する波長合波器1003−1〜1003−mに出力され、各波長合波器1003−1〜1003−mは入力される各波長の光信号を合波して、各光ファイバにそれぞれ波長多重光信号1〜mを出力する。
【0011】
図11は特許文献1に記載されている波長変換機能を有する光クロスコネクト装置の構成例を示すブロック図である。波長競合を解消するため、図11に示すように、複数m個の波長合波器1101に対応する光スイッチ1102の複数t本の出力ポートにそれぞれ複数t個の波長変換器1103を備え、波長競合が起こった場合にはどちらかの波長を変換してから波長合波器1104に入力し、複数m個の波長合波器1104により波長多重する構成が提供されている。なお、光スイッチ1120はスイッチ制御回路1110により制御される。
【0012】
このような波長変換器1103をWDMネットワーク内に導入する場合、光ネットワークを構成する光ノードのすべての波長ポートに、波長変換器1103を組み込む形態が考えられている。上記のような波長変換器1103を有する光クロスコネクト装置においては、特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平06−292246号公報。
【特許文献2】特開2003−304563号公報。
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】S. Petit et al. "Truly Arbitrary Wavelength Conversion by Cascaded Four-Wave Mixing in Low Dispersion Slope SBS Suppressed Highly Nonlinear Fibers", Proceedings of IEEE Winter Topicals 2010, Majorca in Spain, January 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、非特許文献1に記載の従来の4光波混合を利用した波長変換器では、通信に使用する波長帯に存在する2次ポンプ光を除去するため、波長可変フィルタが必要となる。この波長可変フィルタの動作速度が波長変換の処理速度を律速している。中間波長λiwを使用波長帯から遠ざけるなどの、中間波長λiwの配置条件によっては、通信に使用する波長帯外に2次ポンプ光を配置可能であるが、変換効率が大幅に低下する。
【0016】
また、特許文献1及び2に記載の従来のWDMネットワークに波長変換器を導入する場合、すべての波長出力ポートに波長変換器が必要となるため、波長変換器の数量が多くなり構成が複雑になってコストが大きくなる。また加えて、システムに要求される波長変換数に応じて変換器をアップグレードするなどの柔軟な運用ができないという問題点があった。この波長変換器の数量の多さ、運用の非効率性が全光波長変換システムのネットワーク導入を阻害する要因の1つとなっている。
【0017】
本発明の目的は、波長変換の速度律速を解消し、波長変換器の数を大幅に低減可能な波長変換システム及び波長変換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の発明に係る波長変換システムは、入力波長光を、1次ポンプ光を用いて第1の非線形光ファイバにより混合することにより中間波長光に変換し、上記中間波長光のみを固定の波長フィルタによりろ波した後、当該中間波長光を、2次ポンプ光を用いて第2の非線形光ファイバにより混合することにより出力波長光に変換する波長変換器を備えた波長変換システムであって、
上記2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッド上に配置し、上記2次ポンプ光と上記出力波長光とを分離することにより上記出力波長光をろ波して得るフィルタ手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
上記波長変換システムにおいて、上記波長変換器は、上記中間波長光を、上記1次ポンプ波長に対して上記入力波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生し、上記出力波長光を、上記2次ポンプ波長に対して上記中間波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生することを特徴とする。
【0020】
また、上記波長変換システムにおいて、上記フィルタ手段は、上記波長変換器の後段に設けられるアレイ導波路回折格子であることを特徴とする。
【0021】
さらに、上記波長変換システムにおいて、上記フィルタ手段は、
上記波長変換器の後段に設けられ、上記1次ポンプ光を除去するフィルタと、
上記第1のフィルタの後段に設けられ、上記2次ポンプ光を除去するインターリーバとを備えたことを特徴とする。
【0022】
またさらに、上記波長変換システムにおいて、上記1次ポンプ光を、上記入力波長光及び上記出力波長光を含む使用波長帯近傍の波長であって、互いに異なる所定の2つの波長をそれぞれ発生する2個の光源を選択的に用いて発生することを特徴とする。
【0023】
また、上記波長変換システムにおいて、上記波長変換器は、複数の入力波長光を、上記1次ポンプ光を用いて複数の中間波長光に変換した後、上記複数の中間波長光を、上記2次ポンプ光を用いて複数の出力波長光に変換することを特徴とする。
【0024】
さらに、上記波長変換システムにおいて、上記1次ポンプ光の波長及び上記2次ポンプ光の波長を、「上記入力波長光から上記出力波長光への波長変換情報」に基づいて決定して制御する制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0025】
またさらに、上記波長変換システムにおいて、少なくとも1つの上記波長変換器が、波長多重伝送システムの伝送ノードのアッド/ドロップ部に配置されたことを特徴とする。
【0026】
またさらに、上記波長変換システムにおいて、上記フィルタ手段は、波長多重伝送システムの伝送ノードのアッド/ドロップ部に配置されたことを特徴とする。
【0027】
第2の発明に係る波長変換方法は、入力波長光を、1次ポンプ光を用いて第1の非線形光ファイバにより混合することにより中間波長光に変換し、上記中間波長光のみを固定の波長フィルタによりろ波した後、当該中間波長光を、2次ポンプ光を用いて第2の非線形光ファイバにより混合することにより出力波長光に変換する波長変換器を用いた波長変換方法であって、
上記2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッド上に配置し、フィルタ手段を用いて上記2次ポンプ光と上記出力波長光とを分離することにより上記出力波長光をろ波して得ることを含むことを特徴とする。
【0028】
上記波長変換方法において、上記波長変換器が、上記中間波長光を、上記1次ポンプ波長に対して上記入力波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生し、上記出力波長光を、上記2次ポンプ波長に対して上記中間波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生することを特徴とする。
【0029】
また、上記波長変換方法において、上記1次ポンプ光を、上記入力波長光及び上記出力波長光を含む使用波長帯近傍の波長であって、互いに異なる所定の2つの波長をそれぞれ発生する2個の光源を選択的に用いて発生することをさらに含むことを特徴とする。
【0030】
さらに、上記波長変換方法において、上記波長変換器が、複数の入力波長光を、上記1次ポンプ光を用いて複数の中間波長光に変換した後、上記複数の中間波長光を、上記2次ポンプ光を用いて複数の出力波長光に変換することを特徴とする。
【0031】
またさらに、上記波長変換方法において、上記1次ポンプ光の波長及び上記2次ポンプ光の波長を、「上記入力波長光から上記出力波長光への波長変換情報」に基づいて決定して制御することをさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
従って、本発明に係る波長変換システムによれば、以下の特有の効果が得られる。
(1)4光波混合を利用した波長変換において、中間波長λiwを、「出力波長λoutの情報」、もしくは「入力波長λinから出力波長λoutへの変換情報」に基づいてITU−Tに基づくグリッド上でグリッドシフト制御することで2次ポンプ光の波長λp2をITU−Tに基づくグリッド上に配置させる。そのITU−Tに基づくグリッド上に配置した2次ポンプ光をネットワーク内に導入している固定の波長フィルタ(例えばバンドパスフィルタ)で除去を行う。これにより、波長変換の速度を律速している波長可変フィルタを不要にでき、超高速な波長変換が実現できる。
(2)波長選択機能を有するWDMネットワーク上のアッド/ドロップ部に上記の波長変換器を備えることで、選択波長もしくは多波長一括の波長変換が可能となる。これにより、ネットワークに必要とされる最小限の波長変換器の個数によりシステムを構成する柔軟な運用が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。
【図2A】図1の出力波長の関係を有する波長変換器210を用いた波長変換システムの構成を示すブロック図である。
【図2B】図2Aで用いる波長変換器210の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。
【図4】図3の出力波長の関係を有する波長変換器210を用いた波長変換システムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。
【図7】図6の出力波長の関係を有する波長変換器210を用いた波長変換システムの構成を示すブロック図である。
【図8】非特許文献1に記載されている波長変換器の実験システム構成を示すブロック図である。
【図9】特許文献1に記載されている光クロスコネクト装置の構成例を示すブロック図である。
【図10】特許文献1に記載されているWDMに用いられる光クロスコネクト装置の構成例を示すブロック図である。
【図11】特許文献1に記載されている波長変換機能を有する光クロスコネクト装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点を明確にすべく、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を以下に詳述する。なお、上述の本願発明の目的のほか、他の技術的課題、その技術的課題を解決する手段及びその作用効果についても、以下の実施形態による開示によって明らかとなるものである。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0035】
本発明に係る実施形態波長変換システムは4光波混合の際に、中間波長λiwを出力波長情報(λout)に基づいて、国際標準化組織ITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)G.694.1で規定されているITU−Tに基づくグリッド上でグリッドシフト制御することで2次ポンプ光波長をITU−Tに基づくグリッド上に配置させ、波長選択機能を有するWDMネットワーク上のアッド/ドロップ部200,200A,200Bに波長変換器210を付加したことを特徴とする。
【0036】
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。また、図2Aは図1の出力波長の関係を有する波長変換器210を用いた波長変換システムの構成を示すブロック図であり、図2Bは図2Aで用いる波長変換器210の詳細構成を示すブロック図である。
【0037】
本実施形態では、波長変換器として、非特許文献1に記載の4光波混合を利用したカスケード構成の波長変換器210(図2B)を用い、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッド上に配置することを特徴としている。そのため、カスケード構成の波長変換器210のステージS1の変換時において、中間波長λiwを有する中間波長光を、「入力波長λinから出力波長λoutへの波長変換情報」に基づいてグリッドシフト制御することで、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッド上に配置する。つまり、指定する変換後の出力波長λoutが偶数グリッド波長2m(mは自然数)の場合、中間波長λiwを有する中間波長光を偶数グリッド波長2n(nは自然数;m≠n)上に配置する。また、指定する変換後の出力波長λoutが奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)の場合、中間波長λiwを有する中間波長光を奇数グリッド波長2n−1(nは自然数;m≠n)上に配置する。
【0038】
図2Bの波長変換器210の動作を概説すると(詳細説明は後述)、入力波長λinを有する入力波長光はステージS1に入力され、1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ波長光を用いて、少なくとも2次の非線形入出力特性を有する高非線形光ファイバ807により混合されて、中間波長λiwを有する中間波長光に変換され、当該中間波長光のみが固定のバンドパスフィルタ808により帯域ろ波されてステージS1の出力波長光として出力される。次いで、ステージS2において、中間波長λiwを有する中間波長光は、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ波長光を用いて、少なくとも2次の非線形入出力特性を有する高非線形光ファイバ824により混合されて、変換後の出力波長λoutを有する出力波長光に変換され、ステージS2の出力波長光として出力される。なお、ITUに基づくグリッド上において、中間波長λiwは1次ポンプ波長λp1に対して入力波長λinから左右対称の波長位置に位置し、出力波長λoutは2次ポンプ波長λp2に対して中間波長λiwから左右対称の波長位置に位置する。ここで、次式を満たす。
【0039】
[数1]
λin≠λout
[数2]
λiw≠λin
[数3]
λiw≠λout
[数4]
λp1≠λp2
[数5]
λiw≠λp1
[数6]
λiw≠λp2
【0040】
次いで、波長変換器210を用いた波長変換の一例について、図1を参照して説明する。なお、入力波長λin及び出力波長λoutがとりうる当該波長多重伝送システムの使用波長帯を100で示し、当該一例では、波長λ1から波長λ10までの間である。以下、ITUに基づくグリッドm(mは自然数)の波長をλmと表わす。
【0041】
図1において、入力波長λin=λ9から出力波長λout=λ2に変換する場合を考える。この場合、出力波長λoutは偶数グリッド波長2m(mは自然数)であるため、中間波長λiwを偶数グリッド2n(mは自然数)上、つまり波長λ14に配置するように1次ポンプ光をチューニングする。1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光は、入力波長λinと中間波長λiwの中間位置にチューニングにて配置される。また、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光は中間波長λiwと出力波長λoutの中間位置にチューニングにて配置されるため、中間波長λiwを偶数グリッド2n(nは自然数)上の波長λ14に配置することで、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を波長λ8のITU−Uグリッド上に配置可能となる。
【0042】
また、出力波長λoutが奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)の場合も同様な原理である。すなわち、図1において点線で示すように、中間波長λiwを奇数グリッド2n−1(nは自然数)上、つまり波長λ13に配置するように1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光をチューニングする。また、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光は中間波長λiwと出力波長λoutの中間位置にチューニングにて配置されるため、中間波長λiwを奇数グリッド2n−1(nは自然数)上に配置することで、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光をITU−Uグリッド上に配置可能となる。
【0043】
ここで、上記の4光波混合を用いたカスケード構成の波長変換後には、出力波長λout、2次ポンプ波長λp2、中間波長λiwの3つの波長光が存在する。入力波長λinと1次ポンプ波長λp1についてはカスケード型の波長変換器210のステージS1の波長変換器の最終段に挿入された固定のバンドパスフィルタ(波長フィルタ)808にて除去される。出力波長λout、2次ポンプ波長λp2、中間波長λiwの3つの波長光から出力波長λoutの出力波長光をフィルタリング抽出する手法として、図2Aの波長変換システムに組み込まれている固定のバンドパスフィルタ(波長フィルタ)として動作するアレイ導波路回折格子((Arrayed-Waveguide Grating);以下、AWGという。)214でフィルタリングを行う手法を用いる。ここで、AWGは原理的には第1のレンズ、三角プリズム及び第2のレンズから構成されたプレーナ光波回路(PLC)デバイスであって、波長分離するときは、波長多重光信号が三角プリズムにより波長分割された後、各ポートから互いに異なる波長分離後の光信号が出力され、波長多重するときはその逆に動作する。
【0044】
まず、図2Aを参照して上記波長変換器210を適用した波長変換システムについて以下説明する。図2Aにおいて、光伝送システムのドロップラインからの波長多重光信号はAWG211に入力された後、波長分離されて光スイッチ212の各ポートに入力される。光スイッチ212は2入力2出力のマッハツェンダー干渉計を複数個マトリクス上に配置して構成され、各入力ポートに入力された光信号を任意の出力ポートに出力することができる。各入力ポートに入力された光信号を任意の出力ポートに出力する機能を有していれば、マイクロミラー型、ファイバスイッチ型など光スイッチの構成は限定しない。光スイッチ212の出力ポートには、複数の光受信器215とともに、波長変換器210の入力ポートが接続される。光スイッチ212のある出力ポートから出力された光信号は波長変換器210に入力されて波長変換された後、光スイッチ213のある入力ポートに出力される。光スイッチ213の他の入力ポートには複数の光送信器216が接続される。光スイッチ213は光スイッチ212と同様の構成及び動作を有し、各入力ポートに入力された光信号を任意の出力ポートに出力することができ、各出力ポートからの光信号はそれぞれAWG214の入力ポートに入力される。AWG214は各入力ポートからの光信号を光多重して1つの出力ポートから光多重信号を出力し、光伝送システムのアッドラインに出力する。なお、コントローラ220は光スイッチ212,213の動作を制御するとともに、「入力波長λinから出力波長λoutへの波長変換情報」に基づいて1次ポンプ波長λp1及び2次ポンプ波長λp2を決定して制御信号Sc1,Sc2を用いて波長変換器210の1次ポンプ波長λp1及び2次ポンプ波長λp2を制御する。
【0045】
次いで、図2Bを参照して、図2Aの波長変換器210の構成及び動作について以下説明する。図2Bの波長変換器210は、基本的には図8の波長変換器と同様であるが、
(a)波長可変レーザ光源(TLS)811に代えて、入力ポートP1を備えたこと、
(b)光スペクトラムアナライザ(OSA)827に代えて、出力ポートP2を備えたこと、
(c)波長可変のバンドパスフィルタ(tBPF)808aに代えて、固定のバンドパスフィルタ(BPF)808を備えたこと、並びに、
(d)固定のバンドパスフィルタ(光波長フィルタ)825を備えないこと
を特徴としている。なお、光導波路の偏光特性が実質的に揃っているときは、偏光コントローラ(PC)803,806,812,822,833及び偏光子(P)805を備えないでもよい。また、光パワーに過不足がなければエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)802,821,832及び減衰器(ATT)826を備えないでもよい。
【0046】
図2Bにおいて、ステージS1の波長変換器は、1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光を発生する波長可変レーザ光源(TLS)801と、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)802と、偏光コントローラ(PC)803と、入力光と1次ポンプ光とを混合する光カップラ804と、偏光子(P)805と、偏光コントローラ(PC)806と、高非線形光ファイバ(HNLF)807と、固定のバンドパスフィルタ(BPF)808と、入力波長λinを有する入力光を入力する入力ポートP1と、偏光コントローラ(PC)812とを備えて構成される。また、ステージS2の波長変換器は、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)821と、偏光コントローラ(PC)822と、中間波長光と2次ポンプ光とを混合する光カップラ823と、高非線形光ファイバ(HNLF)824と、減衰器(ATT)826と、出力ポートP2と、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を発生する波長可変レーザ光源(TLS)831と、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)832と、偏光コントローラ(PC)833とを備えて構成される。
【0047】
以上のように構成された波長変換器210において、入力波長λinを有する入力波長光はステージS1の入力ポートP1に入力された後、偏光コントローラ(PC)812を介して光カップラ804に入力される。一方、波長可変レーザ光源(TLS)801はその発生波長がコントローラ220からの制御信号Sc1に基づいて制御され、1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光を発生した後、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)802及び偏光コントローラ(PC)803を介して光カップラ804に出力する。光カップラ804は入力される2つの光信号を合波した後、偏光子(P)805及び偏光コントローラ(PC)806を介して高非線形光ファイバ(HNLF)807に出力する。高非線形光ファイバ(HNLF)807は少なくとも2次の非線形入出力特性を有し、2つの光信号を混合することにより、中間波長λiwを有する中間波長光を発生して、中間波長光のみ帯域通過ろ波する(図1の例では、波長λ13及びλ14のみ帯域通過ろ波する)固定のバンドパスフィルタ808により当該中間波長光を帯域ろ波してステージS1の出力波長光として出力する。
【0048】
次いで、ステージS2において、中間波長λiwを有する中間波長光はエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)821及び偏光コントローラ(PC)822を介して光カップラ823に入力される。一方、波長可変レーザ光源(TLS)831はその発生波長がコントローラ220からの制御信号Sc2に基づいて制御され、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を発生した後、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)832及び偏光コントローラ(PC)833を介して光カップラ823に出力する。光カップラ823は入力される2つの光信号を合波した後、高非線形光ファイバ(HNLF)824に出力する。高非線形光ファイバ(HNLF)824は少なくとも2次の非線形入出力特性を有し、2つの光信号を混合することにより、出力波長λoutを有する出力波長光を発生して、減衰器(ATT)826を介してポートP2に出力する。ここで、ポートP2に出力される光信号には、出力波長λoutを有する出力波長光のほかに、中間波長λiwを有する中間波長光及び2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光が含まれているが、これらの不要光信号は、本実施形態においては図2AのAWG214により除去され、出力波長λoutを有する出力波長光のみがAWG214からアッドラインへ出力される。すなわち、AWG214の各入力ポートはポート毎に入力可能なグリッド上の波長が設定されており、当該実施形態では、出力波長λoutを有する出力波長光に対応するAWG214の入力ポートに入力されるように光スイッチ213がコントローラ220により制御される。
【0049】
以上のように構成された本実施形態に係る波長変換システムによれば、AWG211,214及び光スイッチ212,213から構成されるアッド/ドロップ部200に波長変換器210を備えたので、選択波長の波長変換を可能としている。つまり、例えば、異なる2つの方路からλ1の波長が光ノードに伝送されてきた場合、一方の方路からの波長λ1をドロップする。そして、λ1を別波長に変換してアッドし再伝送を行う。もう一方の方路からの波長λ1は、アッド/ドロップせずにそのままルーティングを行うことができる。
【0050】
このように、波長変換器210を、アッド/ドロップ部200に備えることで、システムに適合した最小限の波長変換器210で波長変換システムを構成することが可能であり、同一の光ノードに集約される同一波長の競合を解消する。出力波長λout、2次ポンプ光λp2及び中間波長λiwの3つの波長から出力波長λoutを有する出力波長光をフィルタリング抽出する方法として、光スイッチ213にて出力波長λoutを有する出力波長光をアッド側AWG214の所定のポートに入力することで、波長変換システムの出力ポートに、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光と中間波長λiwを有する中間波長光をアッドラインに導出しない。
【0051】
すなわち、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光と中間波長λiwを有する中間波長光をAWG214にてフィルタリング除去する。システムに必要な波長変換器数が必要になれば、アッド/ドロップ部200に備えられる波長変換器210をアップグレードすればよく、波長変換器数は限定されない。また、使用波長帯外の波長のフィルタリングに関しては、AWG214に限定するものではなく使用波長帯外をカットする固定のバンドパスフィルタ(波長フィルタ)を付加してもよい。
【0052】
第2の実施形態.
図3は本発明の第2の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。また、図4は図3の出力波長の関係を有する波長変換器210を用いた波長変換システムの構成を示すブロック図である。本発明の第2の実施形態に係る波長変換システムは、方路制約を解消するため、図2Aの第1の実施形態に比較して、
(a)アッド/ドロップ部200AのAWG211a,214aとして周回性AWGを用いたこと、すなわち、図2AのAWG211,214に代えて周回性AWG211a,214aを備えたこと、並びに、
(b)波長変換器401の出力ポートに、使用波長帯外を帯域除去する固定のバンド除去フィルタ240及びインターリーバ230を接続したことを特徴としている。
【0053】
ここで、周回性AWG211a,214aとは、通常のAWGに複数の入出力ポートを持たせ、複数の入力ポートに波長多重信号を入力したときに、各出力ポートには特定の波長λ1〜λ10毎の光信号を出力可能であり、すなわち波長をルーティング可能な光デバイスである。そのため、第1の実施形態とは違い、出力波長λoutと2次ポンプ波長λp2の配置によっては、2次ポンプ波長λp2及び中間波長λiwを周回性AWG214aでフィルタリング除去することはできない。よって、本実施形態では、波長変換器401の出力ポートに、波長λ11〜λ20を帯域除去する固定のバンド除去フィルタ240(なお、波長λ11以上を除去する固定フィルタであってもよい。もしくは、波長λ1〜λ10なる使用波長帯100の信号光を帯域通過ろ波する固定のバンドパスフィルタであってもよい。)及びインターリーバ230を接続し、固定のバンド除去フィルタ240により中間波長λiwを有する中間波長光を除去するとともに、インターリーバ230により、出力波長λoutを有する出力波長光と、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を分離する。ここで、インターリーバ230とは、一入力及び二出力もしくは二入力及び一出力の周期性をもつ波長フィルタであって、偶数チャンネルと奇数チャンネルを合波もしくは分波することができる。なお、波長変換器210として、非特許文献1に記載の4光波混合を利用したカスケード構成の図2Bの波長変換器(第1の実施形態と同様の構成を有する。)を用いる。
【0054】
本実施形態においては、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッドに配置するのと同時に、インターリーバ230にて出力波長λoutを有する出力波長光と、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を分離することを特徴としている。なお、入力波長λinと出力波長λoutとの関係、入力波長λinと中間波長λiwと1次ポンプ波長λp1との関係、及び中間波長λiwと2次ポンプ波長λp2と出力波長λoutとの関係は第1の実施形態と同様である。
【0055】
カスケード型の波長変換器210のステージS1の変換時において、中間波長λiwを有する中間波長光を、「入力波長λinから出力波長λoutへの波長変換情報」に基づいてグリッドシフト制御することで2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッド上に配置し、その上、2次ポンプ波長λp2と出力波長λoutとの相対関係が偶数グリッド2m(mは自然数)と奇数グリッド2n−1(nは自然数であり、m=n又はm≠nであり、第2の実施形態において以下同様である。)の対応関係もしくは、奇数グリッド2m−1(mは自然数)と偶数グリッド2n(nは自然数)の対応関係になるようにグリッドシフト制御する。つまり、指定する出力波長λoutが偶数グリッド波長2n(nは自然数)の場合、中間波長λiwを偶数グリッド2m(mは自然数)上に配置する。また、指定する出力波長λoutが奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)の場合、中間波長λiwを奇数グリッド2n−1(nは自然数)上に配置する。これにより、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光をグリッド上に配置することが可能となる。その上、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光と、出力波長λoutを有する出力波長光の相対関係が偶数グリッド2m(mは自然数)と奇数グリッド2n−1(nは自然数)の対応関係、もしくは、奇数グリッド2m−1(mは自然数)と偶数グリッド2n(nは自然数)の対応関係になるようにグリッドシフトする。これにより、波長変換器210の後段に設けられるインターリーバ230にて、出力波長λoutを有する出力波長光と、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を分離することができる。つまり、アッド側の周回性AWG214aにて、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光と、出力波長λoutを有する出力波長光が同一ポートに出力することを回避できる。
【0056】
一例として、図3に示すように、入力波長λin=λ8から出力波長λout=λ4に波長変換する場合について以下説明する。この場合、出力波長λoutは偶数グリッド波長2m(mは自然数)であるため、中間波長λiwを偶数グリッド2n(nは自然数)上、つまりλ14又はλ16に配置するように1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光をチューニングする。その後、2通りの中間波長λiwに対して、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光の配置を計算する。つまり、中間波長λiwがλ16の場合、出力波長λout=λ4に変換するためには、波長λ10に2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を配置する必要がある。また、中間波長λiwがλ14の場合、波長λ4に波長変換するためには、波長λ9に2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を配置する必要がある。2次ポンプ波長λp2と出力波長λoutの相対関係が、偶数グリッド2m(mは自然数)と奇数グリッド2n−1(nは自然数)の対応関係もしくは、奇数グリッド2m−1(mは自然数)と偶数グリッド2n(nは自然数)の対応関係となる波長λ9に2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を配置し、波長λ4に波長変換する相対関係を選定する。上記の4光波混合を用いたカスケード波長変換を行った後には、出力波長λout、2次ポンプ波長λp2及び中間波長λiwの3つの波長光が存在する。中間波長λiwは使用波長帯100外をフィルタリング除去する固定のバンドパスフィルタ(波長フィルタ)240にてカットする。これにより、出力波長λoutを有する出力波長光は、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光に対して、インターリーバ230の別ポートに出力される。入力波長λinを入力光と、1次ポンプ波長λp1を有する1次ポンプ光については、カスケード型の波長変換器210のステージS1の波長変換器内の固定フィルタ808にて除去される。
【0057】
次いで、出力波長λoutと2次ポンプ波長λp2の2つの波長光から、出力波長λoutを有する出力波長光をフィルタリング抽出する手法について図4を参照して以下説明する。図4は上記の波長変換器210を適用した波長変換システムの構成を示すブロック図である。上記波長変換器210は、アグリゲーション機能(複数の経路にある波長を単一の経路に集約する機能)やマルチキャスト機能(単一経路にある波長を複数の経路に分配する機能)を有するアッド/ドロップ部200Aに備えられている。周回性AWG211a,214a及び光スイッチ212,213からなるアッド/ドロップ部200Aに波長変換器210を備えることで、複数の方路に対して、選択波長の波長変換を可能としている。波長変換器210後のインターリーバ230の別ポートから出力された出力波長λoutを有する出力波長光と2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光に関して、出力波長λoutを有する出力波長光は光スイッチ213により周回性AWG214aの特定ポートへ、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光は光スイッチ213にて破棄される。
【0058】
なお、他の実施形態と同様に、システムに必要な波長変換器数が必要になれば、アッド/ドロップ部200Aに備えられる波長変換器210をアップグレードすればよく、波長変換器210の数は限定されない。また、インターリーバ230の後段に2×1の光スイッチを備え、アッド/ドロップ部200Aの光スイッチ213のポート数を削減してもよい。
【0059】
なお、第1の実施形態では、2次ポンプ波長λp2を有する2次ポンプ光を除去するためにAWG214が必要であったが、第2の実施形態では、インターリーバ230を備えたので、周回性214aではそのためのフィルタリング機能は必須ではない。
【0060】
第3の実施形態.
図5は本発明の第3の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。第3の実施形態に係る波長変換システムは第1の実施形態に比較して、1次ポンプ光の制御の簡略化のために、カスケード型の波長変換器のステージS1の変換時に必要な1次ポンプ光用の波長可変レーザ光源(TLS)801を、例えば波長λ11.5の1次ポンプ光を発生する波長固定の第1のレーザ光源と、例えば波長λ11の1次ポンプ光を発生する波長固定の第2のレーザ光源と、これらの2つの1次ポンプ光を切り替えて出力するスイッチとを備えたことを特徴としている。なお、上記の相違点を除いて、他の実施形態と同様に、波長変換器として非特許文献1に記載の4光波混合を利用したカスケード型の波長変換器210を用いた波長変換システムを用いる。
【0061】
本実施形態では、カスケード型の波長変換器210のステージS1の変換時において、1次ポンプ光の波長配置を、使用波長帯100近傍の2波長の固定波長とする。つまり1次ポンプ光の波長を、「入力波長λinから出力波長λoutへの波長変換情報」に基づいて1次ポンプ光の波長配置を半グリッドシフト制御することで2次ポンプ光をグリッドに配置する。図5の例では、1次ポンプ光の波長配置を、グリッド番号で11と11.5の位置の2選択性としている。
【0062】
偶数グリッド波長2m(mは自然数)から偶数グリッド波長2n(nは自然数;m≠n)への波長変換、もしくは、奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)から奇数グリッド波長2n−1(nは自然数;m≠n)への波長変換の場合、1次ポンプ光の波長λp1を図5中のグリッド番号11であるITU−Tのグリッド上(波長λ11)に配置する。また、偶数グリッド波長2m(mは自然数)から奇数グリッド波長2n−1(nは自然数;mはnと同じ又は異なる。)への波長変換、もしくは、奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)から偶数グリッド波長2n(nは自然数;mはnと同じ又は異なる。)への波長変換の場合、1次ポンプ光の波長λp1を図5中のグリッド番号11.5であるITU−Tのグリッド上から半グリッドシフトした波長位置(波長11.5)に配置する。
【0063】
一例として、図5中に示すように、入力波長λin=λ9から出力波長λout=λ2に波長変換する場合を考える。この場合、奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)から奇数グリッド波長2n−1(nは自然数;m≠n)への波長変換なので、1次ポンプ光の波長λp1を図5中のグリッド番号11.5のITU−Tのグリッド上から半グリッドシフトした位置に配置する。これにより、2次ポンプ光のλp2は、番号8のグリッド上に配置される。他の実施形態と同様に、ステージS1の波長変換器後の固定のバンドパスフィルタ808により、入力波長λinの入力光と1次ポンプ波長λp1の1次ポンプ光はフィルタリング除去される。上述のように、第3の実施形態では、1次ポンプ光が2波長選択の固定波長レーザ光源を用いて発生されるため、1次ポンプ光で通常使用する波長可変レーザ光源が不要となり、波長制御の簡略化を実現することができる。
【0064】
第4の実施形態.
図6は本発明の第4の実施形態に係る波長変換システムにおけるITU−Tに基づくグリッド上の出力波長の関係を示す波長配置図である。また、図7は図6の出力波長の関係を有する波長変換器210を用いた波長変換システムの構成を示すブロック図である。本発明の第4の実施形態は第1の実施形態と比較して、複数波長の同時の波長変換を実現することを特徴としている。なお、他の実施形態と同様に、波長変換器として非特許文献1に記載の4光波混合を利用したカスケード構成の波長変換器210を用いる。
【0065】
本実施形態では、第3の実施形態と同様に、カスケード型の波長変換器210のステージS1の変換時において、1次ポンプ光の波長λp1の配置を使用波長帯100近傍の2波長の固定波長(例えば、図6に示すように、波長λ11.5)とする。また、波長変換器210をアグリゲーション機能(複数の経路にある波長を単一の経路に集約する機能)やマルチキャスト機能(単一経路にある波長を複数の経路に分配する機能)を有するアッド/ドロップ部200Bに備える。AWG211,214及び光スイッチ212,213からなるアッド/ドロップ部200Bに波長変換器210を備えることで、選択された複数波長の同時の波長変換が可能となる。
【0066】
図6において、波長λ7,λ9の2つの入力光をそれぞれ波長λ4,λ6の2つの出力波長光に同時に波長変換する場合について以下に説明する。この場合、両者とも奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)から奇数グリッド波長2n−1(nは自然数;m≠n)への波長変換なので、1次ポンプ光の波長λp1をグリッド番号11.5であるITU−Tのグリッド上から半グリッドシフトした位置に配置する。これにより、波長λ16,λ14の中間波長λiwを、波長λ10の2次ポンプ光を用いて波長変換する。
【0067】
図6の例では、2波長の同時波長変換の例を記載したが、本発明はこれに限らず、3波長以上の同時波長変換を行ってもよい。ここで、上記複数波長一括の波長変換においては、同時変換が可能な波長情報に条件がある。つまり、偶数グリッド波長2m(mは自然数)から偶数グリッド波長2n(nは自然数;m≠n)、もしくは、奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)から奇数グリッド波長2n−1(nは自然数;m≠n)への複数波長の同時変換か、偶数グリッド波長2m(mは自然数)から奇数グリッド波長2n−1(nは自然数;m=n又はm≠nであるが、2m≠2n−1)、もしくは、奇数グリッド波長2m−1(mは自然数)から偶数グリッド波長2n(nは自然数;m=n又はm≠nであるが、2m−1≠2n)への複数波長の同時変換の場合の2通りが実施可能となる。なお、この条件を満たさない複数波長の同時波長変換を実現する場合は、アッド/ドロップ部200Bの波長変換器210を同時波長変換数を増大するようにアップグレードすればよく、波長変換器数は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上詳述したように、本発明に係る波長変換システムによれば、次の効果が得られる。
(1)4光波混合を利用した波長変換において、中間波長λiwを、「出力波長λoutの情報」、もしくは「入力波長λinから出力波長λoutへの変換情報」に基づいてITU−Tに基づくグリッド上でグリッドシフト制御することで2次ポンプ光の波長λp2をITU−Tに基づくグリッド上に配置させる。そのITU−Tに基づくグリッド上に配置した2次ポンプ光をネットワーク内に導入している固定の波長フィルタ(例えばバンドパスフィルタ)で除去を行う。これにより、波長変換の速度を律速している波長可変フィルタを不要にでき、超高速な波長変換が実現できる。
(2)波長選択機能を有するWDMネットワーク上のアッド/ドロップ部に上記の波長変換器を備えることで、選択波長もしくは多波長一括の波長変換が可能となる。これにより、ネットワークに必要とされる最小限の波長変換器の個数によりシステムを構成する柔軟な運用が実現できる。
【0069】
本発明に係る波長変換システム及び波長変換方法は、光通信システム又は光情報処理装置に用いられる波長変換器、及び波長合分波器や光スイッチを有するシステム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
100…使用波長帯、
200,200A,200B…アッド/ドロップ部、
211,214…アレイ導波路回折格子(AWG)、
211a,214a…周回性アレイ導波路回折格子(周回性AWG)、
121,213…光スイッチ、
210…波長変換器、
215…光信号受信器、
216…光信号送信器、
220…コントローラ、
230…インターリーバ、
240…固定のバンドパスフィルタ
801,831…波長可変レーザ光源(TLS)、
802,821,832…エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)、
803,806,812,822,833…偏光コントローラ(PC)、
804,823…光カップラ、
805…偏光子、
807,824…高非線形光ファイバ、
808…固定のバンドパスフィルタ、
826…減衰器、
P1,P2…ポート、
S1,S2…ステージ、
Sc1,Sc2…波長制御信号、
λin…入力波長、
λiw…中間波長、
λout…出力波長、
λp1…1次ポンプ波長、
λp2…2次ポンプ波長。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力波長光を、1次ポンプ光を用いて第1の非線形光ファイバにより混合することにより中間波長光に変換し、上記中間波長光のみを固定の波長フィルタによりろ波した後、当該中間波長光を、2次ポンプ光を用いて第2の非線形光ファイバにより混合することにより出力波長光に変換する波長変換器を備えた波長変換システムであって、
上記2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッド上に配置し、上記2次ポンプ光と上記出力波長光とを分離することにより上記出力波長光をろ波して得るフィルタ手段を備えたことを特徴とする波長変換システム。
【請求項2】
上記波長変換器は、上記中間波長光を、上記1次ポンプ波長に対して上記入力波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生し、上記出力波長光を、上記2次ポンプ波長に対して上記中間波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生することを特徴とする請求項1記載の波長変換システム。
【請求項3】
上記フィルタ手段は、上記波長変換器の後段に設けられるアレイ導波路回折格子であることを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換システム。
【請求項4】
上記フィルタ手段は、
上記波長変換器の後段に設けられ、上記1次ポンプ光を除去するフィルタと、
上記第1のフィルタの後段に設けられ、上記2次ポンプ光を除去するインターリーバとを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の波長変換システム。
【請求項5】
上記1次ポンプ光を、上記入力波長光及び上記出力波長光を含む使用波長帯近傍の波長であって、互いに異なる所定の2つの波長をそれぞれ発生する2個の光源を選択的に用いて発生することを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の波長変換システム。
【請求項6】
上記波長変換器は、複数の入力波長光を、上記1次ポンプ光を用いて複数の中間波長光に変換した後、上記複数の中間波長光を、上記2次ポンプ光を用いて複数の出力波長光に変換することを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の波長変換システム。
【請求項7】
上記1次ポンプ光の波長及び上記2次ポンプ光の波長を、「上記入力波長光から上記出力波長光への波長変換情報」に基づいて決定して制御する制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載の波長変換システム。
【請求項8】
少なくとも1つの上記波長変換器が、波長多重伝送システムの伝送ノードのアッド/ドロップ部に配置されたことを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の波長変換システム。
【請求項9】
上記フィルタ手段は、波長多重伝送システムの伝送ノードのアッド/ドロップ部に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の波長変換システム。
【請求項10】
入力波長光を、1次ポンプ光を用いて第1の非線形光ファイバにより混合することにより中間波長光に変換し、上記中間波長光のみを固定の波長フィルタによりろ波した後、当該中間波長光を、2次ポンプ光を用いて第2の非線形光ファイバにより混合することにより出力波長光に変換する波長変換器を用いた波長変換方法であって、
上記2次ポンプ光をITU−Tに基づくグリッド上に配置し、フィルタ手段を用いて上記2次ポンプ光と上記出力波長光とを分離することにより上記出力波長光をろ波して得ることを含むことを特徴とする波長変換方法。
【請求項11】
上記波長変換器が、上記中間波長光を、上記1次ポンプ波長に対して上記入力波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生し、上記出力波長光を、上記2次ポンプ波長に対して上記中間波長光とは波長配置図において左右対称の位置に配置するように発生することを特徴とする請求項10記載の波長変換方法。
【請求項12】
上記1次ポンプ光を、上記入力波長光及び上記出力波長光を含む使用波長帯近傍の波長であって、互いに異なる所定の2つの波長をそれぞれ発生する2個の光源を選択的に用いて発生することをさらに含むことを特徴とする請求項10又は11記載の波長変換方法。
【請求項13】
上記波長変換器が、複数の入力波長光を、上記1次ポンプ光を用いて複数の中間波長光に変換した後、上記複数の中間波長光を、上記2次ポンプ光を用いて複数の出力波長光に変換することを特徴とする請求項10又は11記載の波長変換方法。
【請求項14】
上記1次ポンプ光の波長及び上記2次ポンプ光の波長を、「上記入力波長光から上記出力波長光への波長変換情報」に基づいて決定して制御することをさらに含むことを特徴とする請求項10乃至13のうちのいずれか1つに記載の波長変換方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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