説明

波長検波型ファイバセンサシステム

【課題】温度変化や歪変化等の環境の変化があっても、測定精度を向上させることができる波長検波型ファイバセンサシステムの提供。
【解決手段】ファブリペローエタロンを構成する互いに近接配置された一対のファイバブラッググレーティングFBGからなる測定用センサ素子2Aと、この測定用センサ素子2Aの反射帯域中にある1本の透過線スペクトルの中心波長を含む波長帯域を反射波長として有する帯域反射フィルタ2Bとを備えて構成した。一対の測定用センサ素子2Aがファブリペローエタロンを構成することになるため測定用センサ素子から透過される光の透過スペクトルの半値全幅を従来の反射スペクトルの半値全幅より狭くできる。半値全幅を従来のFBGよりも狭くすることによって、測定分解能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度、歪み、振動、加速度などの物理量の測定を行うための波長変化型光センサを備えた波長検波型ファイバセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、主に通信用として広く利用されているが、計測分野においても広範囲にわたり研究が行われており、様々な光ファイバセンサが実用化されている。
その中でも、ファイバブラッググレーティング(FBG)を利用した波長検波型光ファイバセンサ(FBGセンサ)は、耐電磁ノイズ性に優れ、電気システムのように火花を発生することがないので引火、爆発の危険性が少なく化学プラント、石油プラントなどの計装に適しているという光ファイバセンサに共通する特徴を有し、更に、波長多重伝送(WDM)技術により1本の光ファイバ内に複数の光ファイバセンサを配置することにより空間的な分布計測システムを実現できるという優れた特徴を有する。
【0003】
波長検波型ファイバセンサの従来例として、FBGセンサの反射中心波長がFBGセンサに印加された歪とともに変化することを利用した歪みセンサが知られている(従来例1;非特許文献1、非特許文献2)。
従来例1は、光ファイバにFBGを描画しセンサが構成されている。このFBGに光源から光を入射させ、所定の波長で反射した反射光長が検波手段で測定される。検波手段では、FBGの反射スペクトルを検出し、この検出波長に基づいて測定値が求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Alan D.kersy, Mihael A. Davis, Heather j. Patric, Michel LeBlanc, K. P. Koo, C. G.Askins, M. A. Putnam, and E. Joseph Friebele, “Fiber Bragg Sensors,”Journal of Lightwave Technology, Vol. 15, No.8 1997
【非特許文献2】W.W. Morey, G.Meltz, and W.H.Glenn,”Fiber optic Bragg grating sensors,” SPIE Vol.1169, pp.98-106,1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例1では、FBGセンサの反射スペクトルは狭いものでも100pm程度の半値全幅であるため、波長計測再現性が5pm程度出てしまう。FBGセンサの波長可変変化幅は2nm程度であるため、ダイナミックレンジは800(4nm/5pm)であり、電気式センサのダイナミックレンジより狭く、測定精度の向上に限界がある。
そして、FBGセンサの反射スペクトルの半値全幅が狭くても100pm程度であるため、歪みの測定分解能は130nstrain/Hz程度である。つまり、測定分解能は1回のサンプリングあたり、5pmであり、1秒間には約1000回サンプリングを行うことができるので、1秒間の測定分解能としては、5pm/10001/2=0.16pmとなる。一方、ひずみと波長との関係は約1.2pm/μstrainなので、1秒間のひずみ測定分解能は、(0.16pm/1.2pm)=0.133μstrain/Hz=130nstrain/Hzとなる。そこで、高分解能な計測をする場合、半値全幅の小さなスペクトラムを有するセンサ素子を用いることが望ましい。
【0006】
従来例1のFBGセンサで半値全幅を小さくしようとする場合、グレーティング長を長くすることが考えられる。例えば、通常のグレーティング長の長さは、ほぼ5mm〜10mmであるが、グレーティング長を20mm、30mmと延長することが考えられる。このように、グレーティング長を長くすると、センサ素子自体が大きくなるという不都合を生じるだけでなく、長いセンサ素子に完全に均一の歪分布が加わらないため、歪分布等により、かえって、スペクトラムが広がるという問題が発生する。そのため、グレーティング長を長くするという方法は実用性がない。
【0007】
本発明の目的は、温度変化や歪変化等の環境の変化があっても、測定精度を向上させることができる波長検波型ファイバセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の波長検波型ファイバセンサシステムは、光源と、この光源から出射される光が入射するとともに被測定部に設置される波長検波型光センサと、この波長検波型光センサから出力される出力光を検出する光検波手段とを備えた波長検波型ファイバセンサシステムであって、前記波長変化型光センサは、ファブリペローエタロンを構成するとともに互いに近接配置された帯域反射フィルタ対の測定用センサ素子と、この測定用センサ素子の透過スペクトル帯域中の1本の線スペクトルを含む波長帯域よりも狭い反射波長帯域を有する帯域反射フィルタとを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成の本発明では、ファブリペローエタロンにより測定用センサ素子を構成するので、センサの透過スペクトルの半値全幅が従来の単一のFBGに比べ狭くなり測定分解能の向上が図れる。
しかも、本発明では、帯域反射フィルタの反射波長領域を、ファブリペローエタロンからなる測定用センサ素子の1本の線の透過スペクトルを含むように構成してあるため、前記帯域反射フィルタの反射スペクトルはファブリペローエタロンからなる測定用センサ素子の1本の線透過スペクトルのみとなる。これにより使用する波長領域の利用効率を向上させることができる。
【0010】
本発明では、前記帯域反射フィルタ対及び帯域反射フィルタは、それぞれファイバブラッググレーティングから構成される構成が好ましい。
この構成の本発明では、フィルタのコストを抑えることができ、かつ、帯域反射フィルタの反射帯域を動的に変動させることができるようになるために、物理量の測定レンジを拡大できる。
【0011】
前記ファブリペローエタロンは、前記反射波長帯域中に1本の透過線スペクトルのみが生じるようにするために、反射波長帯域BWはフリースペクトルレンジFSRの倍より狭くなるようにする構成が好ましい。

この構成の本発明では、1本の透過線スペクトルのみが生じるので、波長演算時の測定エラーを回避することができる。
【0012】
前記帯域反射フィルタ対を構成するファイバブラッググレーティング対は、同一波長スペクトル特性であり、物理的長さが同一であり、かつ、実効長Leとファイバブラッググレーティング対の格子ピッチΛとの関係がLg=mΛ−2Le(mは自然数、Lgはファイバブラッググレーティング対間のグレーティングが描画されていない部分の長さ)を満たすようにファイバブラッググレーティングの反射中心波長に透過線スペクトルの波長を一致させる構成が好ましい。
この構成の本発明では、FBG対からなるセンサ素子の物理量測定レンジを広くすることができる。
【0013】
前記帯域反射フィルタを構成するファイバブラッググレーティングの反射中心波長と前記ファブリペローエタロンの透過線スペクトルの波長とを一致させ、かつ、前記ファイバブラッググレーティングの反射帯域を前記ファブリペローエタロンの透過線スペクトルを含み、かつ、フリースペクトルレンジよりも狭くした構成が好ましい。
この構成の本発明では、物理量測定レンジを拡大し、温度等の外乱因子によって帯域反射フィルタの中心波長とファブリペローエタロンの透過線スペクトルの値がずれてしまうことによる測定レンジの低下を防ぐことができる。
【0014】
前記測定用センサ素子と前記帯域反射フィルタとは同一温度の条件下となるように互いに近接配置される構成が好ましい。
この構成の本発明では、温度が変化して一対の測定用センサ素子の透過スペクトルが短波長側あるいは長波長側にシフトしても、このシフトした透過スペクトルに帯域反射フィルタの反射スペクトルが同じ量だけシフトするので、透過スペクトルを完全に分離することができる。そのため、被測定部の温度が変化しても、測定精度を向上させることができる。
【0015】
前記測定用センサ素子と前記帯域反射フィルタとは同一応力が加わるようにベースに固定される構成が好ましい。
この構成の本発明では、被測定部の歪みが変化して一対の測定用センサ素子の透過スペクトルが短波長側あるいは長波長側にシフトしても、このシフトした透過スペクトルに帯域反射フィルタの反射スペクトルが同じ量だけシフトするので、透過スペクトルを完全に分離することができる。そのため、被測定部の歪みが変化しても、測定精度を向上させることができる。
【0016】
前記測定用センサ素子及び帯域反射フィルタが前記ベースに接着剤で接着固定される構成が好ましい。
この構成の本発明では、測定用センサ素子と帯域反射フィルタとが近接配置された状態でベースに接着固定されるので、温度変化や歪変化の環境変化があっても、この環境変化を簡易な構造によって対応することができる。
【0017】
前記測定用センサ素子のファイバブラッググレーティング以外の部分と前記帯域反射フィルタ以外の部分とが前記ベースに接着剤で接着固定された構成が好ましい。
この構成の本発明では、物理量測定レンジの拡大を図ることができる。
【0018】
前記測定用センサ素子及び前記帯域反射フィルタを挿通する管を備え、この管の両端と前記測定用センサ素子及び前記帯域反射フィルタとを接着剤で接着固定する構成が好ましい。
この構成の本発明では、測定用センサ素子と帯域反射フィルタとの重要な部分を管で覆うことができるから、外部から力が加わっても、これらのフィルタ等の破損を防止することができる。
【0019】
前記センサ素子は、それぞれ中心波長が異なる複数の対が直列に接続されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、被測定部の異なる位置での物理量変化を正確に測定することができる。
【0020】
前記センサ素子からの出力光を入力するとともに多チャンネル分波デバイスとしてのアレイ導波路格子と、このアレイ導波路格子で分波された信号に基づいて各センサ素子で検出される物理量に対応した波長を演算する演算回路とを有する光検波手段を備えた構成が好ましい。
この構成の本発明では、複数のセンサ素子から出力される信号に基づいて、演算回路で正確に演算することで、正確な測定を実施することができる。
【0021】
前記光検波手段は、前記センサ素子から透過された光に基づく信号を受信するとともに予め記憶された信号パターンから前記センサ素子からの検波波長を認識する光スペクトルパターン認識回路を備えた構成が好ましい。
この構成の本発明では、予め記憶された信号パターンから検波波長を認識するので、容易に測定を行うことができる。
【0022】
前記測定用センサ素子からの出射光が入射する第一のポートと、この第一のポートから入射された光を前記帯域反射フィルタに出射するとともに前記帯域反射フィルタで反射された反射光を入射する第三のポートと、この第三のポートに入射された光を前記光検波手段に出射する第二のポートとを有するサーキュレータを備えた構成が好ましい。
この構成の本発明では、サーキュレータにより信号を一方向にのみ送るようにしたので、システムの誤動作防止を図ることができる。
【0023】
前記サーキュレータは、複数が測定用センサ素子及び帯域反射フィルタを経由して直列に接続されており、上流側のサーキュレータの第三のポートは下流側のサーキュレータの第一のポートに前記帯域反射フィルタ及び前記測定用センサ素子を経由して連結され、最も下流側のサーキュレータの第二のポートは前記光検波手段に連結されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、複数のサーキュレータを用いることで、測定レンジの拡大を図ることができる。
【0024】
前記ファブリペローエタロンは、シリコンサブストレート上にそれぞれ二酸化ケイ素からなるアンダークラッドとオーバクラッドとにそれぞれ囲まれ、これらのアンダークラッドとオーバクラッドより高屈折率にするための不純物がドープされた二酸化ケイ素を材料とした第一のコアから形成される第一の光導波路に、近接して描画された同一の反射波長帯域をもつ第一の光導波路ブラッググレーティングと第二の光導波路ブラッググレーティングとから構成され、前記帯域反射フィルタは前記シリコンサブストレート上にそれぞれ二酸化ケイ素からなるアンダークラッドとオーバクラッドにそれぞれ囲まれ、これらのアンダークラッドとオーバクラッドより高屈折率にするための不純物がドープされた二酸化ケイ素を材料とした第二のコアから形成される第二の光導波路に光導波路ブラッググレーティングから構成されている構成が好ましい。
この構成の本発明では、センサの量産化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる波長検波型ファイバセンサシステムの概略構成図。
【図2】第1実施形態の要部の概略構成図。
【図3】第1実施形態の異なる例の要部を示す概略構成図。
【図4】第1実施形態の異なる例の要部を示す概略構成図。
【図5】第1実施形態の要部のセンサ素子のスペクトルを示す図。
【図6】第1実施形態の要部のセンサ素子のスペクトルを示す図。
【図7】第1実施形態における広帯域光源の出射スペクトル、第三のブラッググレーティング(帯域反射フィルタ)への入射スペクトル、アレイ導波路格子の入射スペクトル及びアレイ導波路格子の透過スペクトルの関係を示す図。
【図8】センサ素子の透過スペクトルの実測例を示すグラフ。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる波長検波型ファイバセンサシステムの概略構成図。
【図10】第2実施形態における広帯域光源の出射スペクトル、第三のブラッググレーティングへの入射スペクトル、光サーキュレータからの出射スペクトル及び掃引型ファブリペロー干渉フィルタへの入射スペクトルの関係を示す図。
【図11】発信器の出力パルス信号と、同パルス信号を計数する計数カウンタにより駆動されるデジタルアナログ変換器の鋸波状出力電圧と、2値信号波形と、鋸波状出力電圧により駆動される掃引型ファブリペロー干渉フィルタの該鋸波状出力電圧に対応した波長毎の透過率スペクトルとを時系列に示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態にかかる波長検波型ファイバセンサシステムの概略構成図。
【図13】第3実施形態における可変波長レーザの出射スペクトル、第三のブラッググレーティングへの入射スペクトルとセンサ素子からの出射スペクトル及びフォトダイオードへの入射スペクトルとの関係を示す図。
【図14】本発明の変形例を示すもので図2に対応する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図8には本発明の第1実施形態が示されている。
図1は第1実施形態にかかる波長検波型ファイバセンサシステムの概略構成図である。
図1において、波長検波型ファイバセンサシステムは、温度、歪、加速度、振動等の物理量の測定を行うものであり、広帯域光源10と、この広帯域光源10から入射された光が通過する光ファイバFと、光ファイバFに設けられた波長検波型光センサ2と、この波長検波型光センサ2から出力された出力光を検出する光検波手段3とを備えた構成である。
広帯域光源10は従来例と同様の構造であり、所定の波長領域に渡って光ファイバFに光を入射させる。
【0027】
波長検波型光センサ2は、複数のセンサ素子21〜2nと、これらのセンサ素子21〜2nにそれぞれ設けられたサーキュレータ6と、このサーキュレータ6に接続されるアドフィルタ7とを備えている。このアドフィルタ7は光通信で汎用的に使用されるものでよく、例えば、Optoplex社のアドドロップフィルタ(型式100GHz ROADM あるいは200GHz ROADM)を適用することができ、サーキュレータ6から送られた信号を光検波手段3に送る構成である。
ここで、複数のセンサ素子21〜2nのうち、センサ素子21が広帯域光源10側に配置され、このセンサ素子21から光検波手段3側に向けてセンサ素子22、センサ素子23、センサ素子24……センサ素子2n-1、センサ素子2nが配置されている。これらのセンサ素子21〜2nは、検出する中心波長λ1〜λnの波長変動領域がそれぞれ異なるものである。
【0028】
第1実施形態の要部の概略が図2に示されている。図2(A)は平面を示す概略図、図2(B)はセンサ素子21〜2nの側面を示す概略図である。
図2において、センサ素子21〜2nは、それぞれ、第一、第二のブラッググレーティングからなる測定用センサ素子2Aと、この測定用センサ素子2Aの透過線スペクトルを含み第一、第二のブラッググレーティングの反射波長帯域よりも狭い波長帯域を反射波長領域として有する第三の帯域反射フィルタ2Bと、これらの測定用センサ素子2A及び帯域反射フィルタ2Bを平面上に配置するベース2Cと、このベース2Cと測定用センサ素子2A及び帯域反射フィルタ2Bとを接着して形成される接着層2Dとから構成されるセンサヘッドを備える。ベース2Cは図示しない被設置物に固定されている。
【0029】
接着層2Dは測定用センサ素子2A及び帯域反射フィルタ2Bの厚さ寸法より厚い寸法を有するものであり、その平面上の大きさはベース2Cの大きさよりやや小さい。接着層2Dを構成する材料は適宜設定されるものである。なお、第1実施形態では、センサ素子21〜2nの構造は図2に示されるものに限定されるものではなく、例えば、図3(A)(B)に示される通り、接着剤2Dをセンシングの要となるFBGを除いた光ファイバFだけに設けた例としてもよく、さらには、図4に示される通り、光ファイバFの外径より若干大きな内径の、例えば金属からなり空気孔をあけたパイプ2Pに第一及び第二のFBGを有する光ファイバFと帯域反射フィルタとしてのFBGを有する光ファイバFを挿通して両端を接着剤2Dで固定した例でもよい。なお、図4中、符号2Hは管内外を連通するための孔である。
【0030】
測定用センサ素子2Aは、前述の通り、一対のファイバブラッググレーティングFBGを有するものであり、この一対のファイバブラッググレーティングFBGは、その中心部にファブリペローエタロンを構成するために必要な距離d、例えば100μmを隔てて形成されている。
両側にそれぞれ形成されるファイバブラッググレーティングFBGは、その反射波長帯域においてミラーの役割を有し、該FBGの格子間隔は例えば反射中心波長が1550nm、ファイバのコアの実効屈折率が1.451の場合は534.1144nmである。
帯域反射フィルタ2Bは光ファイバFに形成されたファイバブラッググレーティングFBGであって、このFBGは測定用センサ素子2Aの距離dが形成された中心部に近接されている。なお、光ファイバFへの該FBGの形成方法は従来と同じである。
【0031】
測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとは同一温度かつ同一応力が加わるようにベース2Cに固定されている。具体的には、測定用センサ素子2Aの中心位置(距離dの中間位置)と帯域反射フィルタ2Bの中心位置との間隔は狭いほどよい。例えば、ファイバブラッググレーティングが描画された石英光ファイバにプラスチックでコーティングされた直径が200μmの光ファイバをそれぞれセンサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bに用い、これらの光ファイバFをプラスチックコーティング部で接して構成する方法を採用することができる。そして、被測定部に固定されたベース2Cが歪むことで、測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとが同じ応力が加わるように、接着層2Dを介して測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとがベース2Cに強固に固定される。
【0032】
測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとはサーキュレータ6に接続されており、このサーキュレータ6は第一ポート61、第二ポート62及び第三ポート63を有する。広帯域光源10から出射された光は測定用センサ素子2Aを通過してサーキュレータ6の第一ポート61に入射し、この第一ポート61から入射した光は第三ポート63から帯域反射フィルタ2Bに送られ、この帯域反射フィルタ2Bで反射された光は第三ポート63から第二ポート62を通って光検波手段3に送られる。なお、図2では、アドフィルタ7の図示が省略されている。また、帯域反射フィルタの反射帯域以外の波長領域の光は当該フィルタを通過後に次のセンサ素子に入射する。例えば、センサ素子21であれば、センサ素子22に、センサ素子22であれば、センサ素子23に光ファイバF経由入射する。
【0033】
図5にはセンサ素子21〜2nから透過されるスペクトルの概略図が示されている。図5(A)には測定用センサ素子2Aを透過した光のスペクトルと波長との関係が示されている。一対のファイバブラッググレーティングFBGを有する測定用センサ素子2Aがファブリペローエタロンを構成するため、図5(A)に示される通り、測定用センサ素子2Aを透過した透過スペクトルは、1本の線スペクトルを含むことになる。
すなわち、後述する数式(4−4)で示されるファブリペローエタロンを構成するFBGの帯域幅BWと、数式(6−5)で示されるファブリペローエタロンのフリースペクトルレンジFSRとの関係が数式(7)となり、かつ、数式(4−3)で示されるFBGの反射中心波長と、数式(6−4)で示されるファブリペローエタロンのピーク波長を等しくするために、数式(8−1)、すなわち(8−2)が成り立つように設計諸元を設定すれば、ファブリペローエタロンの透過帯域の中央に1本の線スペクトルだけが現れることになる。
【0034】
図5(B)には帯域反射フィルタ2Bの反射率スペクトルが示されている。帯域反射フィルタ2Bから反射率スペクトルは所定の波長領域でピークを生じる。本実施形態では、図5(A)(B)で示される通り、帯域反射フィルタ2Bで反射する波長を測定用センサ素子2Aの1本の線スペクトルを含む透過スペクトルを含む波長帯域に合わせるようにする。そのため、測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとを直列に接続した本実施形態では、測定用センサ素子2Aを通って帯域反射フィルタ2Bで反射された光のスペクトルは、図5(C)に示される通りとなり、1本の透過スペクトルとして検出される。すなわち、帯域反射フィルタ2Bがファイバブラッググレーティングとして、これについても後述する数式(7)、数式(8−2)を満たすようにすれば、ブラッググレーティングから反射される光のスペクトルは1本の透過スペクトルとなる。
【0035】
ここで、測定用センサ素子2Aに温度変化や応力変化が生じた場合には、測定用センサ素子2A自体が伸縮し、あるいは測定用センサ素子2Aを構成するファイバブラッググレーティングFBGのコア部の屈折率が変化することになり、測定用センサ素子2Aで透過される透過スペクトルの波長が変化する。例えば、図6(A)に示される通り、透過スペクトルの波長が、温度変化や応力変化が生じていない場合の図5(A)に比べ長波長側にシフトする。本実施形態では、測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとは同一温度かつ同一応力が加わるようにベース2Cに固定されおり、それらを構成する光ファイバF及びブラッググレーティングFBGは同一材料で構成されているとすれば、測定用センサ素子2Aに温度変化や応力変化が生じて測定用センサ素子2Aの透過線スペクトルの波長が変化しても、測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとが同じ温度や応力の条件となるので、帯域反射フィルタ2Bで反射されるスペクトルが測定用センサ素子2Aの透過線スペクトルと同様にシフトする。例えば、図6(A)に示される通り、測定用センサ素子2Aの1本の線スペクトルを含み透過スペクトルが長波長側に変位する場合では、図6(B)に示される通り、帯域反射フィルタ2Bで反射されるスペクトルも透過スペクトルと同様にシフトする。そのため、測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとを直列に接続した本実施形態では、測定用センサ素子2Aを通って帯域反射フィルタ2Bで反射された光のスペクトルは図6(C)に示される通りとなり、測定用センサ素子2Aの透過スペクトルがシフトしても、その線スペクトルの中心波長を検出することができる。
【0036】
以上のことは後述する数式を使って説明できる。
数式(6−4)で示されるファブリペローエタロンの中心波長の温度Tあるいは歪εが変化した場合、それにより生ずる中心波長の変化Δλは数式(9)から求められ、同様に、ファブリペローエタロンを構成するFBGの中心波長の変化Δλbeは数式(10−1)から求められ、ここで、数式(8−1)を考慮すれば、数式(10−2)を得ることができる。これは温度あるいは歪が変化しても常にエタロンの透過帯域の中心に線スペクトルが位置することを意味している。
同様に帯域反射フィルタ2Bを光ファイバブラッググレーティングとしてこれについても数式(7)、数式(8−2)を満たすようにすれば、ファイバブラッググレーティングFBGから反射される光のスペクトルは温度変化、歪変化に関係なく常に1本の線スペクトルであって、かつ、その波長はファイバファブリペローエタロンの透過波長に一致する。
【0037】
図1において、光検波手段3は、センサ素子21〜2nからの出力光を入力するとともに波長帯域毎に分波するアレイ導波路格子としてのAWG31と、このAWG31で分波された信号に基づいて各センサ素子21〜2nで検出される波長を演算する演算回路32とを備えている。
アレイ導波路格子31は、分波される出力光の波長に対応して複数のチャンネルCH1〜CHnを備えている。
【0038】
演算回路32は、各チャンネルCH1〜CHnに対向して配置されたフォトダイオード3F1〜3Fnと、これらのフォトダイオード3F1〜3Fnにそれぞれ接続されたプリアンプ3A1〜3Anと、プリアンプ3A1〜3Anから出力された信号に基づいて演算する演算処理部32Cとを備えている。
演算処理部32Cは、プリアンプ3A1〜3Anから出力されたアナログ信号を受信するアナログデジタル変換回路3B1〜3Bnと、これらのアナログデジタル変換回路3B1〜3Bnから出力されるデジタル信号を入力信号とする比演算部3C1〜3Cmと、これらの比演算部3C1〜3Cmからの信号に基づいて演算するCPU30とを備えて構成されている。
比演算部3C1はアナログデジタル変換回路3B1とアナログデジタル変換回路3B2との信号が入力されるものであり、比演算部3C2はアナログデジタル変換回路3B3とアナログデジタル変換回路3B4との信号が入力されるものであり、比演算部3Cmはアナログデジタル変換回路3Bn-1とアナログデジタル変換回路3Bnとの信号が入力されるものである。
ここで、センサ素子21〜2nの各々に対して実施される比演算は実際には比の対数をとった値を数式(1)で示されるWによって表される。なお、センサ素子の出力Wの算出方法については特許第3760649号公報に開示されている。
【0039】
【数1】

【0040】
上記の数式(1)において、I1,I2は、フォトダイオード3F1〜3Fnのうち隣り合うもの、例えば、フォトダイオード3F1,3F2による光電流であり、S1(λ),S2(λ)は、これら各々のフォトダイオードに光を供給するAWG31のチャンネルCH1、CH2の各波長における透過率と当該波長におけるセンサの光透過率の積を示し、φ(λ)は光源10の波長依存強度分布であり、Δλはフォトダイオードへの入射光波長のバンド幅である。ある1つのセンサの中心波長は該センサの波長を検波するために使われるアレイ導波路格子の2つのチャンネルの中心波長間で対象とする測定すべき物理量とともにシフトするようにシステム設計される。
そして、センサからの光の波長が所定の範囲内であれば、照射光の波長ごとに、log(I1/I2)がほぼ一定になり、そのときの光波長は数式(2)で示される。
【0041】
【数2】

【0042】
本実施形態では、前述した数式(1)、数式(2)で示される式による波長測定原理を所定の波長範囲(AWG31の隣接する2つのチャンネル間隔で例えば3nm以下の範囲)に適用する。このAWG31は、論文「Takahashi, et.al, ”Wavelength Multiplexer Based on SiO2-Ta2O5Arrayed-Waveguide Grating,” Journal of Lightwave Technology Vol.12, No.6, 1994」等に詳細が記載されている。
センサ素子21〜2nに対し、それぞれ重複しないように出力光波長範囲を割り当てておき(一例として、センサ素子21には1500〜1503nm、センサ素子22には1512〜1515nm、センサ素子23には1524〜1527nm、……等)、これらのセンサ素子21〜2nからの出力光をAWG31に入力することにより、これら複数のセンサ素子の中心波長はセンサごとにAWGの複数のチャンネルに分離・出力される。
AWG31の互いに隣接する2つのチャンネルからの光を、フォトダイオード3F1〜3Fnを入射させることにより、上述の各センサの波長測定範囲について前述した数式(1)及び数式(2)で示される数式を適用し、各センサの波長が高分解能で測定される。
【0043】
広帯域光源10から出射した光の各センサ素子21〜2nからの出力光(透過帯域における線スペクトルの中心波長をλ1〜λn)を、AWG31に入力する。そして、AWG31の隣接する2つのチャンネルCH1,CH2(CH3,CH4,…CHn-1,CHn)のフォトダイオード3F1,3F2(3F3,3F4,…3Fn-1,3Fn)の光電流を比演算部3C1〜3Cmに入力し、その出力をCPU30に入力して数式(2)で示される式の演算を行うことにより、各センサ素子21〜2nの位置における温度等の物理量に対応する波長が高分解能で検出可能とされている。
【0044】
図7は、広帯域光源10の出射光、AWG31の入射光及びAWG31の透過スペクトルの関係を示す図である。
図7(A)において、広帯域光源10から光が出射されると、この光がセンサ素子21の測定用センサ素子2Aを透過する。この透過した光のスペクトルが図7(B)に示される。測定用センサ素子2Aを透過した光はサーキュレータ6の第一ポート61に入射される。その後、サーキュレータ6の第三ポート63から帯域反射フィルタ2Bに送られ、この帯域反射フィルタ2Bで反射した光は再度、第三ポート63に戻り、その後、第二ポート62から光検波手段3のAWG31に送られる。図7(C)は第二ポート62から出射された光のスペクトルである。
【0045】
一方、広帯域光源10から照射される光のセンサ素子22内にある帯域反射フィルタ2Bへの入射スペクトルを図7(D)に示す。図7(E)はセンサ素子22からサーキュレータ6を介して出射された光のスペクトルである。
以上の工程がセンサ素子21、センサ素子22、センサ素子23、……、センサ素子2n-1、及びセンサ素子2nについて行われ、これらのセンサ素子21〜2nのセンサとしての信号の線スペクトルは図1に示されるアドフィルタ7で加算され、AWG31に入射される。AWG31に入射される光が図7(F)に示される。
【0046】
AWG31では、センサ素子21、センサ素子22、センサ素子23、……、センサ素子2n-1、センサ素子2nからAWG31側に向かってそれぞれ透過する光に対応して、チャンネルCH1とチャンネルCH2、チャンネルCH3とチャンネルCH4、……、チャンネルCHn-1とチャンネルCHnから透過スペクトルが出力される。本実施形態では、前述の通り、隣り合うチャンネルCH1とCH2(CH2とCH3,…CHn-1とCHn)の出射光量の比演算で対応する各センサ素子の波長が計測される。
【0047】
なお、本実施形態における光検波手段3の動作は特許第3760649号公報、「プラント制御のためのFBG多重センサの小型・高速波長検波法(第32回光波センシング技術研究会講演論文集, pp161-168,2003年12月)」、論文「Y.Sano and T.Yoshino, ”Fast Optical Wavelength Interrogator Employing Arrayed Waveguide Grating for Distributed Fiber Bragg Grating Sensors,” . Journal of Lightwave Technology Vol.21, pp.132-139, January 2003.」、論文「Y.Sano and T.Yoshino, ”Effect of Light Source Spectral Modulation on Wavelength Interrogation in Fiber Bragg Grating Sensors and Its Reduction,” IEEE Sensors Journal, Vol.3, pp.44-49, February 2003.」に記載の技術による。
【0048】
ここで、本実施形態において、センサ素子21〜2nから出力される光の透過スペクトルの半値全幅を従来の反射スペクトルの半値全幅より小さくできることを、数式を用いて説明する。FBGの反射率Rは、モード結合方程式を解くことにより求められ、次の数式(3)で表すことができる。
【0049】
【数3】

【0050】
ただし、FBGのグレーティング描画により発生する屈折率変調された実効屈折率の平均値はFBGが描画されていない個所のコアの実効屈折率に等しいとすれば、次の数式(4−1)から数式(4−3)がなりたつ。FBGのピークを与える波長からみて初めて反射率がゼロになる長波長側の波長と短波長側の波長との差で示される帯域幅BWを数式(4−4)から求めることができる。なお、数式(4−1)から数式(4−4)において、neはFBGの実効屈折率、ΔneはFBGの屈折率変調の振幅、Λは格子のピッチ、λは波長、λはFBGの反射中心波長、LはFBGの物理的な長さである。
【0051】
【数4】

【0052】
一方、センサ素子21〜2nの透過率Tは、このセンサ素子がファブリペロー干渉計を構成するものであることから、両FBGは同一特性、寸法であるとして、数式(3)を使って数式(5)で示される。センサ素子の透過率Tは論文「Yuri O. Barmenkov, et.al, ”Effective length of short Fabry-Perot cavity formed by uniform fiber Bragg gratings,” Optics Express, Vol. 14, No.14, pp.6394-6399」にも開示されている。
【0053】
【数5】

【0054】
ただし、Lgは、隣り合うFBGの格子の描画されていない部分の実際の長さであり、Lは、FBGの反射光の入射光に対する位相遅れにより生ずる実効長さであって、数式(6−1)から求められる。さらに、FBGの反射率Rの最大値Rmaxは数式(6−2)から求められる。そのため、実効長Lは数式(6−3)から求められる。さらに、透過率Tの最大値を与える波長λはmを自然数として数式(6−4)から求められる。この数式(6−4)を使ってフリースペクトルレンジFSRは数式(6−5)から求めることができる。
【0055】
【数6】

【0056】
数式(5)を用いてパラメータを適当に設定し計算をすることで、ファブリペロー構成されたセンサ素子21〜2nの透過スペクトルTを求めることができる。
例えば、FBGの長さLを2.08000mm、FBGの屈折率変化量Δnを0.0006、格子ピッチΛを537nm、FBG間の格子の描画されていない部分の実際の長さLを90.000μm、FBGの実効屈折率nを1.4493とすると、ファブリペロー構成されたセンサ素子の反射波長帯域は850pmであり、その帯域内の透過スペクトルの半値全幅は10pm、その中心波長は1556.476nmである。
数式(4−4)で示されるファブリペローエタロンを構成するFBGの帯域幅BWと数式(6−5)で示されるファブリペローエタロンのフリースペクトルレンジFSRとの関係を数式(7)で示す。数式(4−3)で示されるFBGの反射中心波長λと、数式(6−4)で示されるファブリペローエタロンのピーク波長Lgのいずれか1つが等しくなるように、すなわち数式(8−2)が成り立つようにする。
【0057】
【数7】

【0058】
【数8】

【0059】
数式(7)及び数式(8−2)が同時に成り立つように設計諸元を設定すればファブリペローエタロンの透過帯域の中央に1本の線スペクトルだけが現れることになる。さらに、センサ素子の透過スペクトルがシフトしても、その線スペクトルの中心波長を検出することができる。
この理由を数式を使って次に説明する。数式(6−4)で示されるファブリペローエタロンの中心波長の温度Tあるいは歪εが変化した場合、それにより生ずる中心波長の変化Δλは数式(9)で求められる。
【0060】

【数9】

【0061】
同様に、ファブリペローエタロンを構成するFBGの中心波長の変化Δλbeは数式(10−1)で求められる。
ここで、数式(8−1)を考慮すれば、数式(10−2)を得ることができる。
【0062】
【数10】

【0063】
以上のことから、センサ素子21〜2nから透過される光の透過スペクトルの半値全幅を従来の反射スペクトルの半値全幅より小さくできることを理論式により示すことができる。しかも、さらに温度あるいは歪が変化しても、理論的に常にエタロンの透過帯域の中心波長に線スペクトルの中心波長が位置することを意味している。
【0064】
従って、第1実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)波長検波型光センサ2は、ファブリペローエタロンを構成する互いに近接配置された一対のファイバブラッググレーティングFBGからなる測定用センサ素子2Aと、この測定用センサ素子2Aの反射帯域中にある1本の透過線スペクトルの中心波長を含む波長帯域を反射波長として有する帯域反射フィルタ2Bとを備えて構成した。一対の測定用センサ素子2Aがファブリペローエタロンを構成することになるため測定用センサ素子から透過される光の透過スペクトルの半値全幅を従来の反射スペクトルの半値全幅より狭くできる。半値全幅を従来のFBGよりも狭くすることによって、測定分解能を向上させることができる。実際に製作した本実施形態の測定用センサ素子の半値全幅は数pmであり従来のFBGの10倍以上狭く、そのため、例えば、一定の歪みの下で、所定時間ごとに複数回中心波長を測定し、その中心波長のデータを記録したところ、従来のセンサ素子と比較して、感度すなわち測定分解能を5倍程度高めることは容易に可能となった。図8はセンサ素子2Aの透過スペクトルの実測例である。図8に示される通り、1546nmあたりの波長がその前後の波長領域に比べて透過率が高く、その結果、センサ素子の感度が高いことがわかる。
しかも、帯域反射フィルタ2Bは、測定用センサ素子2Aの反射帯域中にある透過線スペクトルの中心波長を含む波長帯域を反射波長として有する構成であるため、温度や歪による、一対の測定用センサ素子2Aの透過スペクトルのシフト量と帯域反射フィルタ2Bの反射スペクトルのシフト量が同一になることにより、1本の透過線スペクトルを分離検出することができる。そのため、温度変化や歪変化等にかかわらず波長測定精度を維持できる。
【0065】
(2)測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとを同一温度の条件下となるように互いに近接配置した。被測定部において、温度が変化すると、一対の測定用センサ素子2Aの透過スペクトルが短波長側あるいは長波長側にシフトすることになるが、本実施形態では、シフトした透過スペクトルに測定用センサ素子2Aと同じ温度条件下にある帯域反射フィルタ2Bの反射スペクトルのシフト量が同一となり、透過スペクトルを確実に検出することができる。そのため被測定部の温度変化により使用する波長領域の利用効率が狭くなることはなく波長領域の利用効率を向上させることができる。
【0066】
(3)測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとを同一応力が加わるようにベース2Cに固定した。被測定部の歪みが変化すると、ベース2Cを介して測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとに応力が伝達され、一対の測定用センサ素子2Aの透過スペクトルが短波長側あるいは長波長側にシフトすることになる。本実施形態ではシフトした透過スペクトルに、測定用センサ素子2Aと同じ応力下にある帯域反射フィルタ2Bの反射スペクトルの波長シフト量が同一になることにより、透過スペクトルを確実に検出することができる。そのため被測定部の温度変化により使用する波長領域の利用効率が狭くなることはなく波長領域の利用効率を向上させることができる。
【0067】
(4)測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとが近接配置された状態でベース2Cに接着固定されるので、被測定部において、温度や歪の変化があっても、透過スペクトルを確実に検出することができる。そのため被測定部の温度や歪みの変化があっても使用する波長領域の利用効率が狭くなることはなく波長領域の利用効率を向上させることができる。
【0068】
(5)センサ素子21〜2nは、それぞれセンシング波長λ1〜λnの変化波長領域が異なるから、被測定部の物理量変化を正確に測定することができる。
(6)光検波手段3は、センサ素子21〜2nからの出力光を各チャンネルの波長領域毎に分波するアレイ導波路格子であるAWG31と、このAWG31で分波された信号に基づいて各センサ素子21〜2nで検出される波長を演算する演算回路32とを備えており、AWG31のチャンネル毎に分波される波長範囲は狭帯域化が可能であるため、多くのチャンネル数を確保でき、これにより多数のセンサの物理量を計測することができる。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態を図9から図11に基づいて説明する。
第2実施形態は第1実施形態とは光検波手段の構成が異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。
第2実施形態の1つの構成要素は掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41である。論文「Alan D.kersy, Mihael A. Davis, Heather j. Patric, Michel LeBlanc, K. P. Koo, C. G.Askins, M. A. Putnam, and E. Joseph Friebele, “Fiber Bragg Sensors,”Journal of Lightwave Technology, Vol. 15, No.8 1997」にはファブリペロー干渉フィルタを用いてFBGセンサからの波長検波を行う方法が示されているが、本実施形態の特徴である「ファブリペローエタロンを構成するFBG対からなるセンサに対して掃引型ファブリペロー干渉フィルタを用いてセンサ素子の中心波長を求める方法」は前述の論文には何ら記載されていない。
第2実施形態は第1実施形態とは波長検波手段の構成が異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。
図9は第2実施形態にかかる波長検波型ファイバセンサシステムの概略構成図である。
図9において、波長検波型ファイバセンサシステムは、広帯域光源10と、この広帯域光源10から出射された光が通過する光ファイバFと、光ファイバFに設けられた波長検波型光センサ2と、この波長検波型光センサ2から出力された出力光を検波する光検波手段4とを備えた構成である。
【0070】
光検波手段4は、センサ素子21〜2nから透過された光を入力する掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41と、この掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41の出力CHに対向して配置されたフォトダイオード4Fと、このフォトダイオード4Fに接続されたプリアンプ4Aと、プリアンプ4Aから出力されたアナログ信号を2値信号に変換する2値化回路4Bと、この時系列の2値信号を受信する光スペクトルパターン認識回路42と、掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41を駆動するピエゾ素子PZTと、ピエゾ素子PZTを駆動するために発信器44からのパルス信号を受けてパルス数を計数する計数カウンタ43と、この計数カウンタ43の出力を受け当該計数値に対応したアナログ電圧を出力するデジタルアナログ変換器45とを備えて構成される。
光スペクトルパターン認識回路42は発信器44からのパルス信号と、2値化回路4Bからの2値信号を受信する。2値信号は時系列信号であってそのタイミングは発信器44からのパルス信号で規定される。
【0071】
図10は第2実施形態における広帯域光源の出射光スペクトルと掃引型ファブリペロー干渉フィルタへの入射光スペクトルの関係を示す図である。
図10(A)に示される光のスペクトルが広帯域光源10から入射されると、この光がセンサ素子21、センサ素子22、センサ素子23、……、センサ素子2n-1、センサ素子2nを透過した後、掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41に入射される。掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41に入射される光はセンサ素子21〜2nから出射される光であり、図10(F)に示される通り、図7(F)と同様なスペクトルとなる。
なお、同図において(B)はセンサ素子21の測定用センサ2Aを通過した光のスペクトル、(C)はセンサ素子21の測定用センサ2Aを通過した光がサーキュレータ6を経て帯域反射フィルタ2BのFBGで反射されサーキュレータ6を経てアドフィルタ7に入射する光のスペクトル、(D)はセンサ素子22の測定用センサ2Aを通過した光がサーキュレータ6を経て帯域反射フィルタ2BのFBGで反射されサーキュレータ6を経てアドフィルタ7に入射する光のスペクトル、(E)はセンサ素子22の測定用センサ2Aを通過した光がサーキュレータ6を経て帯域反射フィルタ2BのFBGで反射されサーキュレータ6を経てアドフィルタ7に入射する光のスペクトルである。
図11は発信器44の出力パルス信号を(A)に示し同パルス信号を計数する計数カウンタ43により駆動されるデジタルアナログ変換器45の鋸波状出力電圧(B)、2値信号波形(D)、それに該鋸波状出力電圧により駆動される掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41の該鋸波状出力電圧に対応した波長ごとの透過率スペクトル(C1),(C2)、・・・・・(CN)を模式的に時系列に示したものである。例えば、掃引型ファブリペロー干渉フィルタの中心波長を0.1pmずつのステップで短波長から長波長側に掃引した場合、掃引開始波長を1550.0000nmとすると、(C1)は1550.0000nm、(C2)は1550.0001nm、(C3)は1550.0002nmとなる。
【0072】
つまり、光スペクトルパターン認識回路42では、センサ素子21〜2nから透過された光が掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41に入力されると、ピエゾ素子PZTに入力されるデジタルアナログ変換器45の鋸波状出力電圧と掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41の通過中心波長が発信器44によってリンクしているので、センサ素子21〜2nの中心波長は鋸波出力電圧を観測することで分かる。
例えば、掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41の中心波長が短波長から長波長に変化した際、前記2値信号波形が「0,0,0・・・・0,1,0,0,0,0」となる信号波形パターンにより「1」となった波長を図11(B)で示される鋸波出力電圧から判定する。この判定された波長がセンサ素子21〜2nの中心波長である。
これに対して、例えば「0,・・・・0,0,0,1,1,1,1,0,0,0」となるような信号波形パターンは、センサ素子21〜2nの中心波長ではないと判定する。即ち、「1」が所定の回数以下の場合がセンサ素子21〜2nからの信号スペクトルと判定し、「1」を与える波長をセンサ素子21〜2nの中心波長と判定する。この所定の回数が1回の場合は波長が具体的に決定されるが、この所定の回数Nが2以上、例えば3の場合はこれら3個の波長の平均値を測定波長とする。
なお、光スペクトルパターン認識回路42は1の両脇に0がいくつか存在するパターンを抽出し、その1に相当する波長を、前記鋸波出力電圧をベースに決定するものであるが、一般に使用されているマイクロコンピュータを用いればこれを実現できる。さらに、計数カウンタ45の計数値がそのカウンタの最高計数値の場合は、ピエゾ素子PZTにより掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41の透過帯域は最も長波長側(短波長側)に設定され、次のカウンタ45への入力パルス信号で計数カウンタはイニシャル状態になりピエゾ素子PZTにより掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41の透過帯域は最も短波長側(長波長側)に設定されるようになっている。
【0073】
第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(5)と同様の効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(7)光波長検波手段4は、センサ素子21〜2nから透過された光を入力する掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41と、この掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41の出力チャンネルCHに対向して配置されたフォトダイオード4Fと、このフォトダイオード4Fに接続されたプリアンプ4Aと、プリアンプ4Aから出力された2値化回路4Bと、この2値化回路4Bから出力される2値信号を受信する光スペクトルパターン認識回路42と、掃引型ファブリペロー干渉フィルタ41駆動のためのピエゾ素子PZTと、発信器44からのパルス数を計数する計数カウンタ43と同カウンタの出力を受けてピエゾ素子PZTを駆動するための鋸波電圧発生用デジタルアナログ変換器45とを備えて構成されている。そして光スペクトルパターン認識回路42は発信器44の出力パルス信号と前記2値信号を受信し、予め記憶された信号パターンから各センサ素子21〜2nからの中心波長を認識する構成である。各センサ素子21〜2nのスペクトルの中心波長は「0,0,0,・・・0,0,1,0,0,0,・・・」というような信号のデータ処理により抽出されるので、AWG31により測定範囲が決まる第1実施形態に比べ、測定範囲は格段に広くなるという効果を奏することができる。ただし第一実施形態は掃引がないから掃引時間が不要なため第2実施形態よりもシステムは高速応答性を有する特徴がある。
【0074】
次に、本発明の第3実施形態を図12及び図13に基づいて説明する。
第3実施形態は第1実施形態とは光源及び光検出手段の構成が異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。
図12は、第3実施形態にかかる波長検波型ファイバセンサシステムの概略構成図である。
同図において、波長検波型ファイバセンサシステムは、光源としての可変波長レーザ11と、この可変波長レーザ11から入射された光が通過する光ファイバFと、光ファイバFに設けられた波長検波型光センサ2と、この波長検波型光センサ2から出力された出力光を検出する光検波手段5とを備えた構成である。
【0075】
光検波手段5は、センサ素子21〜2nから透過された光を入力するフォトダイオード5Fと、このフォトダイオード5Fに接続されたプリアンプ5Aと、プリアンプ5Aから出力されたアナログ信号をデジタルの2値信号に変換する2値化回路5Bと、この2値化回路5Bから出力されるデジタル信号を受信する光スペクトルパターン認識回路52と、この光スペクトルパターン認識回路52と可変波長レーザ11とにパルス信号を送る発信器54とを備えている。
可変波長レーザ11は、内部に図示しない計数カウンタを有し、入力されたパルス数に対応したレーザ光を出射するようになっており、計数カウンタがそのカウンタの最高計数値のときに該レーザの発振波長が可変範囲で最も長波長になるように設定され、次のパルスが入力されるとカウンタ計数値はゼロに戻りは出射される波長はその可変範囲で最も短波長になる。可変波長レーザ11は、さらにパルスが入力されると1パルスずつ長波長側に発振波長が移っていく。光スペクトルパターン認識回路52の内部にも可変波長レーザの場合と同様に図示しない計数カウンタが内蔵されており、その計数値はレーザ発振波長に対応している。これによりレーザ発振波長に対応した2値信号が光スペクトルパターン認識回路52で処理され各センサ素子の波長が確定される。
すなわち、光スペクトルパターン認識回路52は発信器54からのパルス信号と、2値化回路5Bからの信号を受信することにより、予め記録された信号パターンから各センサ素子21〜2nからの検波波長を確定する。
【0076】
図13は第3実施形態における可変波長レーザの出射スペクトルとセンサ素子からの出射スペクトルとの関係を示す図である。図13(A)に示される通り、可変波長レーザ11から波長が順次変化する光、すなわち波長掃引光が光ファイバFに入射されると、この光がセンサ素子21、センサ素子22、センサ素子23、……、センサ素子2n-1、センサ素子2nを透過する。この時センサ素子21〜2nから透過されるスペクトルは図13(F)に示される通りである。以下、図13(B)、(C)、(D)、(E)の信号の意味はそれぞれ第2実施形態の図10(B)、(C)、(D)、(E)の信号の意味と同じである。
【0077】
光スペクトルパターン認識回路52は、例えば以下のように動作する。センサ素子21〜2nからの出射光はフォトダイオード5F、プリアンプ5A経由2値化回路5Bにより、レーザ中心波長が短波長から長波長に変化した際、「0,・・・・0,0,0,1,0,0,0,0, ・・・・」となるデータパターンにおいて「1」に対応する波長をセンサ素子からの中心波長と判定する。
これに対して、例えば「0,・・・・0,1,1,1,1,1,1,1,1,1,0,0,0,0, ・・・・」となるようなデータパターンは、センサ素子21〜2nの中心波長ではないと判定する。即ち、「1」が一定回数以下の場合がセンサ素子21〜2nからの信号スペクトルと判定する。この所定の回数が1回の場合は波長が具体的に決定されるが、この所定の回数Nが2以上、例えば5の場合は、これら5個の波長の平均値を測定波長とする。光スペクトルパターン認識回路52は一般に使用されているマイクロコンピュータを用いればこれを実現できる。なお、アナログ信号をデジタル信号に変化するために、第2実施形態及び第3実施形態では2値化回路を用いているが、この2値化回路の代わりに多ビットのアナログデジタル変換器を用いればさらに高精度なスペクトルパターンの認識ができる。
【0078】
従って、第3実施形態では、前記実施形態の(1)〜(5)と同様の効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(8)光検波手段5は、センサ素子21〜2nから透過された光を入力するフォトダイオード5Fと、このフォトダイオード5Fに接続されたプリアンプ5Aと、プリアンプ5Aから出力されたアナログ信号を2値化する2値化回路5Bと、この2値化回路5Bから出力されるデジタル信号を受信する光スペクトルパターン認識回路52と、この内部に直列パルス入力/並列出力の計数カウンタを内蔵しこの計数値に対応したレーザ発振波長算出部を備えた光スペクトルパターン認識回路52と、内部に直列パルス入力や並列出力の計数カウンタを内蔵しこの計数値に対応した波長の光を出力する可変波長レーザ11とにパルス信号を送る発信器54とを備え、光スペクトルパターン認識回路52は発信器54からのパルス信号と、2値化回路5Bからの信号と受信し、予め記録された信号パターンから各センサ素子21〜2nからの検波信号を認識する構成としたから、第2実施形態と同様に、各センサ素子21〜2nのスペクトルの中心波長は「0,・・・・0,0,0,1,0,0,0,0, ・・・・」のデータ系列を信号処理することにより抽出されるので、測定範囲が広くなるという効果を奏することができる。
【0079】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、一対の測定用センサ素子2A及び帯域反射フィルタ2BをFBGセンサから構成したが、本発明では、図14に示される通り、測定用センサ素子2Aと帯域反射フィルタ2Bとを、光導波路にファイバブラッググレーティングを描画したWBGセンサから構成するものであってもよい。
図14は図2に対応する図であり、(A)は平面を示す概略図、(B)はセンサ素子21〜2nの側面を示す概略図である。
【0080】
図14において、センサ素子21〜2nは、それぞれ、サブストレート20Cと、このサブストレート20Cに設けられたクラッド20Eと、クラッド20Eにそれぞれ設けられた測定用センサ素子20A及び帯域反射フィルタ20Bとを有する。
サブストレート20Cは、シリコン等から板状に形成されるものであり、その裏面は図示しない被測定部に固定される。サブストレート20Cはアンダークラッド20WUCと、オーバクラッド20WOCとを備え、これらは二酸化ケイ素(SiO2)を成膜して形成される。
測定用センサ素子20Aは、アンダークラッド20WUCと、オーバクラッド20WOCに挟まれて設けられたコア20WCOからなる光導波路に一対のウェイブガイドブラッググレーティングWBGを、例えば紫外線で描画されて構成されたWBGセンサである。コア20WCOは前述のようにSiO2から形成されているアンダークラッド20WUCと、オーバクラッド20WOCと比較しゲルマニウムをドープしたSiO2から形成されており屈折率が両クラッドより高めに製作される。そしてこの光導波路は光ファイバFの端部に接着部20Dを介して接続されている。
【0081】
一対のウェイブガイド・ブラッグ・グレーティングWBGは、ファブリペローエタロンを構成するものであり、その中心部にファブリペローエタロンを構成するために必要な距離dを隔てて両側に回折格子がそれぞれ複数形成されている。両側にそれぞれ形成される回折格子はそれぞれミラーの役割を有する。
帯域反射フィルタ20Bは光導波路20Wにウェイブガイド・ブラッグ・グレーティングWBGが形成されたWBGセンサであり、前記実施形態と同様に、測定用センサ素子20Aの透過スペクトルのピークを含む波長帯域を反射波長として有する。この光導波路を使用した実施形態は接着剤を用いずにセンサ素子を構成できることが特徴である。いわゆるスパッタリング、エッチングなどの技術をベースとした光平面回路技術から構成されるものである。接着材を使用した場合、長期信頼性などに課題が残る。しかし、この方式では前述のアレイ導波路格子等、光通信分野のデバイスで安定性など実績のある素子製作技術として知られている。すなわち、歪、あるいは温度変化を感じるウエーブガイドブラッググレーティングは接着剤を用いないでシリコンサブストレート上に光平面回路技術により構成されているため安定性に優れたセンサ素子を実現できる特徴がある。なお、図14におけるファイバFとの接続に接着剤を用いるが、この部分は多少不安定さが残っても光導路と光ファイバの接続損失に影響を与える可能性はあるが直接ウェイブガイド・ブラッグ・グレーティングWBGのフィルタリング特性に影響を与えないためセンサ素子20Aの安定性にこの接着剤が悪影響をあたえることはない。
この測定用センサ素子は、例えば温度センサに用いる場合はウェイブガイドブラッググレーティングWBGの温度が変われば該WBGの反射波長が変化するため温度センサとして用いることができることは自明である。もちろんケーシングして感温部としてのケースの温度をWBGに適宜伝える構造を付加してもよいことは明らかである。同様に歪についてもWBGが歪めばWBGの反射波長が変化するため歪センサとして用いることができる。
なお、センサ素子2nにおいてアドフィルタ7を省略し、サーキュレータ6からの出力信号を光ファイバFに直接戻す構成としてもよい。また上述ではセンサ素子の中心波長を求めるための実施形態を述べた。しかし、例えば、掃引型ファブリペロー干渉フィルタの中心波長あるいは可変波長レーザの出射スペクトルの中心波長が時間とともに変化することからフォトダイオード4Fあるいは5Fの受光量がピークを示す波長を測定すべき波長として検出する方法であってもよい。
【0082】
さらに、前述の各実施形態では、光源は常時点灯を前提にしていたが光源の実質的な寿命を延ばすために測定したいときだけ点灯する方式であってもよいことは自明である。
また、いずれの実施形態においても、センサ素子2nにおいて、アドフィルタ7を省略し、サーキュレータ6からの出力信号を光ファイバFに直接戻す構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ビル、鉄橋、トンネル、原子力発電所を含む発電所等の建築構造物において、例えば耐震性能の劣化を地震発生前に検出し修理するためのヘルスモニタリング分野や、あるいは、船舶、航空機、ロケットなどの大型構造物の各所の歪を常時計測し歪が一定以上の値になり構造物が突然破壊することを事前に予測する予防保全分野や、さらには、化学プラント、石油精製プラント等の爆破の可能性のあるプラントの各所の温度を測定するプラント計装分野等に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
10…広帯域光源、11…可変波長レーザ(光源)、2…波長変化型光センサ、2A,20A…測定用センサ素子、2B,20B…帯域反射フィルタ、2C…ベース、2D…接着層、3,4,5…光検波手段、21〜2n…センサ素子、31…アレイ導波路格子(AWG)、32…演算回路、42,52…中心波長検出回路、FBG…ファイバブラッググレーティング、WBG…ウェイブガイドブラッググレーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、この光源から出射される光が入射するとともに被測定部に設置される波長検波型光センサと、この波長検波型光センサから出力される出力光を検出する光検波手段とを備えた波長検波型ファイバセンサシステムであって、
前記波長変化型光センサは、ファブリペローエタロンを構成するとともに互いに近接配置された帯域反射フィルタ対の測定用センサ素子と、この測定用センサ素子の透過スペクトル帯域中の1本の線スペクトルを含む波長帯域よりも狭い反射波長帯域を有する帯域反射フィルタとを備える
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項2】
請求項1に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記帯域反射フィルタ対及び帯域反射フィルタは、それぞれファイバブラッググレーティングから構成される
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項3】
請求項2に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記ファブリペローエタロンは、前記反射波長帯域中に1本の透過線スペクトルのみが生じるようにするために、反射波長帯域BWはフリースペクトルレンジFSRの倍より狭くなるようにする
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項4】
請求項3に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記帯域反射フィルタ対を構成するファイバブラッググレーティング対は、同一波長スペクトル特性であり、物理的長さが同一であり、かつ、実効長Leとファイバブラッググレーティング対の格子ピッチΛとの関係がLg=mΛ−2Le(mは自然数、Lgはファイバブラッググレーティング対間のグレーティングが描画されていない部分の長さ)を満たすようにファイバブラッググレーティングの反射中心波長に透過線スペクトルの波長を一致させる
ことを特徴とする波長検波型光ファイバセンサシステム。
【請求項5】
請求項4に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記帯域反射フィルタを構成するファイバブラッググレーティングの反射中心波長と前記ファブリペローエタロンの透過線スペクトルの波長とを一致させ、かつ、前記ファイバブラッググレーティングの反射帯域を前記ファブリペローエタロンの透過線スペクトルを含み、かつ、フリースペクトルレンジよりも狭くした
ことを特徴とする波長検波型光ファイバセンサシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記測定用センサ素子と前記帯域反射フィルタとは同一温度の条件下となるように互いに近接配置される
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記測定用センサ素子と前記帯域反射フィルタとは同一応力が加わるようにベースに固定される
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項8】
請求項7に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記測定用センサ素子及び帯域反射フィルタが前記ベースに接着剤で接着固定される
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項9】
請求項8に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記測定用センサ素子のファイバブラッググレーティング以外の部分と前記帯域反射フィルタ以外の部分とが前記ベースに接着剤で接着固定された
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項10】
請求項6から請求項9いずれかに記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記測定用センサ素子及び前記帯域反射フィルタを挿通する管を備え、この管の両端と前記測定用センサ素子及び前記帯域反射フィルタとを接着剤で接着固定する
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記センサ素子は、それぞれ中心波長が異なる複数の対が直列に接続されている
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項12】
請求項11に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記センサ素子からの出力光を入力するとともに多チャンネル分波デバイスとしてのアレイ導波路格子と、このアレイ導波路格子で分波された信号に基づいて各センサ素子で検出される物理量に対応した波長を演算する演算回路とを有する光検波手段を備えた
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項13】
請求項12に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記光検波手段は、前記センサ素子から透過された光に基づく信号を受信するとともに予め記憶された信号パターンから前記センサ素子からの検波波長を認識する光スペクトルパターン認識回路を備えた
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記測定用センサ素子からの出射光が入射する第一のポートと、この第一のポートから入射された光を前記帯域反射フィルタに出射するとともに前記帯域反射フィルタで反射された反射光を入射する第三のポートと、この第三のポートに入射された光を前記光検波手段に出射する第二のポートとを有するサーキュレータを備えた
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項15】
請求項14に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記サーキュレータは、複数が前記測定用センサ素子及び前記帯域反射フィルタを経由して直列に接続されており、上流側のサーキュレータの第三のポートは下流側のサーキュレータの第一のポートに前記帯域反射フィルタ及び前記測定用センサ素子を経由して連結され、最も下流側のサーキュレータの第二のポートは前記光検波手段に連結されている
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載された波長検波型ファイバセンサシステムにおいて、
前記ファブリペローエタロンは、シリコンサブストレート上にそれぞれ二酸化ケイ素からなるアンダークラッドとオーバクラッドとにそれぞれ囲まれ、これらのアンダークラッドとオーバクラッドより高屈折率にするための不純物がドープされた二酸化ケイ素を材料とした第一のコアから形成される第一の光導波路に、近接して描画された同一の反射波長帯域をもつ第一の光導波路ブラッググレーティングと第二の光導波路ブラッググレーティングとから構成され、
前記帯域反射フィルタは前記シリコンサブストレート上にそれぞれ二酸化ケイ素からなるアンダークラッドとオーバクラッドにそれぞれ囲まれ、これらのアンダークラッドとオーバクラッドより高屈折率にするための不純物がドープされた二酸化ケイ素を材料とした第二のコアから形成される第二の光導波路に光導波路ブラッググレーティングから構成されている
ことを特徴とする波長検波型ファイバセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−149874(P2011−149874A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12505(P2010−12505)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(000150707)長野計器株式会社 (62)
【Fターム(参考)】