説明

波長調整方法

【課題】
波長分割多重光伝送システムの波長分離多重素子の透過特性が経時的な変動によっても、安定した光伝送を実現する。
【解決手段】
光送受信装置14−1の制御装置40は波長対応表42を参照し、上りと下りに割り当てられている波長を読み込む。光送受信装置14−1,70−1は、下り用の割当て波長及び上り用の割当て波長での光信号の送受信を試行する。制御装置40は、一定時間内に光送受信装置70−1からの応答信号を受信しないと、エラーをオペレータに通知する。応答信号を受信したが、その信号品質が所定閾値未満の場合、下り波長及び上り波長の微調整を実行する。微調整は、割当てられている波長帯域内で、現在の波長とその前後の波長の3波長について信号品質を調べ、最良のもので更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分離多重光伝送システムにおける波長調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の光送受信装置を単一の光伝送媒体を介して1対1に接続し、互いに異なる波長で光信号を伝送する光伝送システムにおいて、波長を自動チューニングする方法が記載されている。具体的には、対となるべき光送受信装置の一方装置が、初期設定時に波長を掃引しながら波長情報を含む光信号を出力し、相手装置は、受信できた光信号で伝達される波長情報を一方装置に返信することで、一方装置は、他方装置への光信号に必要な波長を決定し調整する。波長多重のための多重分離素子は、通過波長が予め決定されており、これにより、対となるべきでない光送受信装置間で波長を調節してしまうことは無い。
【0003】
非特許文献1には、リモート局側にAWG(アレイ導波路格子)を用いずに、光カプラ又は光スプリッタを使用する構成において、光フィルタ、光モニタ又は周波数モニタなどを用いて、対となるべき光送受信装置間の使用波長を決定する技術が記載されている。
【0004】
非特許文献2には、AWGを用いた波長分割多重の光アクセス網の光源波長を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−041444号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】今井、「次世代ブロードバンドアクセスネットワークのキー技術」、神奈川大学工学研究所報30:3-10,2007年11月30日
【非特許文献2】山本杲也「高密度波長多重を用いた光アクセス方式における光源の波長制御」、帝京科学大学紀要Vol.1(2005)、pp.73−90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの波長を使用する波長分割多重伝送では、個別波長の分離に、周期的な波長透過特性を具備するアレイ導波路格子(AWG)を使用することが多い。1芯の光ファイバを双方向で使用する場合、双方向性から、AWGは、波長多重素子としても使用される。この場合、両方の局にAWGが配置されることになり、両者の透過波長にずれが生じると、通信に使用できる波長帯が狭くなる。
【0008】
特許文献1に記載の技術は、波長を1回、掃引する間に使用波長を決定するものであり、AWGの割り当てられた波長帯の中で適切な波長を決定するには、波長の掃引を細かくする必要がある。しかし、この方法では、波長決定に時間がかかる。
【0009】
また、特許文献1に記載の技術では、初期設定時、すなわち、通信開始時に波長を調整するのみであり、時間的な変動に対応できない。例えば、AWGの透過波長は、周囲温度で変動し、また、計時的に変化する。これに対し、初期設定時と同様の波長調整法を採用すると、最終的な波長決定までに時間がかかることから、長い通信不能時間を覚悟する必要があり、通信サービス上、許容できない。
【0010】
低コストでシステムを構築するためには、できる限り簡易で追加デバイスの必要とならない波長調整方式が求められる。
【0011】
本発明は、このような不都合を解消し、波長分離多重素子の透過特性の変動によっても安定した光伝送を実現する波長調整方法を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る波長調整方法は、第1及び第2の光送受信装置が、波長分割多重の光伝送路を介して、他の対を構成する光送受信装置間で使われる波長とは異なる波長を使って通信する光伝送システムにおいて、当該第1の光送受信装置から当該第2の光送受信装置への第1伝送方向の光信号に使用される第1波長、及び、当該第2の光送受信装置から当該第1の光送受信装置への第2伝送方向の光信号に使用される、当該第1波長とは異なる第2波長を調整する方法であって、当該第1波長及び当該第2波長として割り当てられている波長を所定記憶手段から読み出すステップと、当該記憶手段から読み出した波長を使って、当該第1及び第2の光送受信装置間の通信の可否を確認するステップと、当該第1及び第2の光送受信装置間の通信が可能な場合に、当該第1の光送受信装置において当該第2伝送方向の光信号の信号品質を検査するステップと、当該第2伝送方向の光信号の信号品質が所定閾値未満の場合に、当該第1伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第1波長と当該第1波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第1波長とし、当該第2伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第2波長と当該第2波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第2波長とするステップと、所定時間経過後のデータ伝送の空き、及び、信号品質の低下のいずれかをトリガーとして、当該第1伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第1波長と当該第1波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第1波長とし、当該第2伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第2波長と当該第2波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第2波長とするステップとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、波長分割多重光伝送システムの波長分離多重特性に経時的な変動があったとしても、安定した光伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】下り波長と上り波長の配置例を示す。
【図3】光源波長調整動作の主フローチャートである。
【図4】下り波長微調処理の動作フローチャートである。
【図5】上り波長微調処理の動作フローチャートである。
【図6】本発明の第2実施例の概略構成ブロック図である。
【図7】図6に示す実施例のAWGの波長マップ例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。センタ局10のクライアント12−1〜12−nはそれぞれ、一芯の光ファイバ50を使う波長分割多重伝送によりリモート局60のクライアント62−1〜62−nと通信する。クライアント12−i(但し、i=1〜n。以下、同様。)からクライアント62−iへの下り通信には波長λdが使用され、逆方向の上り通信には、異なる波長λuが使用される。図2は、下り波長λdと上り波長λuの配置例を示す。波長λd〜λdは互いに異なり、波長λu〜λuも互いに異なる。また、下り波長λd〜λdと上り波長λu〜λuは、波長分割多重カプラにより分離多重可能な互いに異なる波長帯に所属する。
【0017】
理解を容易にするために、本実施例のデータ伝送時の基本的な動作を先に説明する。クライアント12−1は、他のクライアント12−2〜12−nとは一致しないように割り当てられた上り波長及び下り波長を使い、光送受信装置14−1,70−1によりクライアント12−1と双方向で通信する。
【0018】
光送受信装置14−1は、クライアント12−1からの下りデータを波長λdの光信号に変換して、アレイ導波路格子(AWG)16の波長λdを透過するポートに供給し、アレイ導波路格子(AWG)18の波長λuを透過するポートからの上り光信号を受光し、当該上り光信号で搬送される上りデータをクライアント12−1に供給する。光送受信装置14−2〜14−nは、割り当てられている上り波長及び下り波長が異なることを除いて、光送受信装置14−1と同じ機能を具備する。
【0019】
すなわち、光送受信装置14−iは、クライアント12−iからの下りデータを所定波長λdの下り光信号に変換し、所定波長λuの上り光信号を上りデータに変換する変換手段として機能する。詳細は後述するが、実際に使用される下り波長λd〜λd及び上り波長λu〜λuは、適切な波長値に調整される。
【0020】
AWG16は、光送受信装置14−1〜14−nからの下り光信号を合波して波長分割多重(WDM)光カプラ20に供給する。WDM光カプラ20は、下り波長帯Bd(図2)に属する光信号を光ファイバ50に供給し、光ファイバ50からの上り波長帯Bu(図2)に属する上り光信号をAWG18に供給する光素子である。機能的には、WDM光カプラ20の代わりに、波長選択制を有しない光サーキュレータを使用しても良い。
【0021】
光ファイバ50を伝搬した下り波長λd〜λdの波長分割多重された光信号は、リモート局60のWDM光カプラ64に入射する。WDM光カプラ64は、WDM光カプラ20と同じ波長透過特性を具備し、光ファイバ50からの下り波長λd〜λdの光信号をAWG66に供給する。後述するように、WDM光カプラ64は、AWG68からの上り波長λu〜λuの光信号を光ファイバ50に転送する。
【0022】
AWG66は、WDM光カプラ64からの下り波長λd〜λdの波長分割多重された光信号を個々の下り波長λd〜λdに分離して,対応するポートから出力する。この例では、下り波長λdの光信号を光送受信装置70−1に供給し、下り波長λdの光信号を光送受信装置70−2に供給し、以下、同様である。まとめると、AWG66により、下り波長λd〜λdの光信号はそれぞれ、光送受信装置70−1〜70−nに入力する。
【0023】
光送受信装置70−1〜70−nはそれぞれ、AWG66から入力する下り波長λd〜λdの光信号を電気信号である下りデータ信号に変換し、クライアント62−1〜62−nに供給する。このようにして、クライアント12−iからクライアント62−iに下りデータが伝送される。
【0024】
クライアント62−iからクライアント12−iへの上りデータ伝送動作を説明する。光送受信装置70−1は、クライアント62−1からの上りデータを波長λuの光信号に変換して、アレイ導波路格子(AWG)68の波長λuを透過するポートに供給する。光送受信装置70−2〜70−nも、光送受信装置70−1と同様に動作する。すなわち、光送受信装置70−iは、クライアント62−iからの上りデータを所定波長λuの上り光信号に変換する。
【0025】
AWG68は、光送受信装置70−1〜70−nからの上り光信号を合波してWDM光カプラ64に供給し、WDM光カプラ64は、上り波長帯Bu(図2)に属する光送受信装置70−1〜70−nからの上り光信号(波長λu〜λu)を光ファイバ50に供給する。
【0026】
光ファイバ50を伝搬した上り波長λu〜λuの波長分割多重された上り光信号は、センタ局10のWDM光カプラ20に入射する。WDM光カプラ20は、先に説明したように、光ファイバ50からの上り波長λu〜λuの上り光信号をAWG18に供給する。AWG18は、WDM光カプラ20からの上り波長λu〜λuの波長分割多重された上り光信号を個々の上り波長λu〜λuに分離して、対応するポートから光送受信装置14−1〜14−nに出力する。この例では、上り波長λuの上り光信号を光送受信装置14−1に供給し、上り波長λuの上り光信号を光送受信装置14−2に供給し、以下、同様である。
【0027】
光送受信装置14−1〜14−nはそれぞれ、AWG18から入力する上り波長λu〜λuの上り光信号を電気信号である上りデータ信号に変換し、クライアント12−1〜12−nに供給する。このようにして、クライアント62−iからクライアント12−iに上りデータが伝送される。
【0028】
光送受信装置14−1の内部の基本動作を説明する。光送受信装置14−1では、フレーム変換装置30が、クライアント12−1からの下りデータを光伝送のフレーム構造に変換すると共に、必要により制御装置40からの種々の制御情報を埋め込む。制御装置40は、波長可変レーザ(TLD)32のレーザ発振波長、すなわち下り波長を、後述する方法で制御する。TLD32は連続レーザ発振し、光変調器34は、フレーム変換装置30の出力信号に従い、TLD32の出力光を変調、例えば、強度変調する。TLD32は、光変調器34の変調に同期してパルス発振していても良い。光変調器34の出力光は、クライアント12−1からクライアント62−1への下りデータを搬送する下り光信号であり、光送受信装置14−1の出力が接続するAWG16のポートに入力する。
【0029】
また、受光器(PD)36は、アレイ導波路格子(AWG)18からの上り光信号を電気信号に変換して、フレーム変換装置38に供給する。フレーム変換装置38は、受光器36の出力信号のうち、クライアント12−1に向けた上りデータを所定フレーム構造でクライアント12−1に供給し、光送受信装置14−1,70−1間の制御(例えば,波長制御)に関する制御信号を制御装置40に供給する。
【0030】
波長対応表42には、光送受信装置14−1が、対向する光送受信装置70−1との間での光通信に使用する上り波長と下り波長の対応が格納されている。これらの上り波長と下り波長は、光送受信装置14−1が接続するAWG16,18の対応ポートを透過する波長である。詳細は後述するが、制御装置40は、波長対応表42を参照して、光送受信装置70−1との間での光通信に使用する上り波長と下り波長を設定し、調整する。
【0031】
光送受信装置70−1の内部の基本動作は、光送受信装置14−1のそれと同様である。フレーム変換装置80が、クライアント62−1からの上りデータを光伝送のフレーム構造に変換すると共に、必要により制御装置90からの種々の制御情報を埋め込む。制御装置90は、波長可変レーザ(TLD)82のレーザ発振波長、すなわち上り波長を、後述する方法で制御する。TLD82は連続レーザ発振し、光変調器84は、フレーム変換装置80の出力信号に従い、TLD82の出力光を変調、例えば、強度変調する。TLD82は、光変調器84の変調に同期してパルス発振していても良い。光変調器84の出力光は、クライアント62−1からクライアント12−1への上りデータを搬送する上り光信号であり、光送受信装置70−1の出力が接続するAWG68のポートに入力する。
【0032】
また、受光器(PD)86は、AWG66からの下り光信号を電気信号に変換して、フレーム変換装置88に供給する。フレーム変換装置88は、受光器86の出力信号のうち、クライアント62−1に向けた下りデータを所定フレーム構造でクライアント62−1に供給し、光送受信装置14−1,70−1間の制御(例えば,波長制御)に関する制御信号を制御装置90に供給する。
【0033】
波長対応表92には、光送受信装置70−1が、対向する光送受信装置14−1との間での光通信に使用する上り波長と下り波長の対応が格納されている。これらの上り波長と下り波長は、光送受信装置70−1が接続するAWG66,68の対応ポートを透過する波長である。制御装置90は、必要により、制御装置40同様に動作して、光送受信装置14−1との間での光通信に使用する上り波長と下り波長を設定し、調整することができる。
【0034】
以上の説明から容易に理解できるように、下り光信号は、AWG16、WDM光カプラ20,64及びAWG66を通過する。これは、AWG16、WDM光カプラ20、光ファイバ50、WDM光カプラ64及びAWG66からなる波長分割多重光伝送路が、AWG16、WDM光カプラ20,64及びAWG66の波長フィルタ特性を乗算して得られる合成波長フィルタ特性を有することになり、下り光信号は、この合成波長フィルタ特性を通過できなければならない。同様に、上り光信号は、AWG68、WDM光カプラ64,20及びAWG18による合成波長フィルタ特性を通過できなければならない。
【0035】
特に、AWG16,18,66,68は、周期的な波長特性を具備する光素子であり、光送受信装置14−i,70−iは、その出力光信号の波長が、接続するAWG16,68のポートの通過波長帯に入るように、好ましくは、当該通過波長帯の最大透過率に相当する波長に調整される必要がある。AWGの通過波長は、周囲温度の影響を受けて変化し、また、経時的にも変化する。従って、運用中にも光送受信装置14−i,70−iの光源波長を適切な値に調整する必要がある。但し、その波長変動は、隣のポートの通過波長帯に一致する程では無いのは勿論である。
【0036】
光送受信装置14−1,70−1の間での光源波長調整動作を例に、本実施例の波長調整方法を説明する。図3は、その動作フローチャートを示す。光送受信装置14−1,70−1を図1に示す位置に接続し、電源をオンにする。制御装置40は波長対応表42を参照し、上りと下りに割り当てられている波長を読み込む(S1)。下りに割当てられている波長は、光送受信装置14−1が接続するAWG16のポートを透過する波長であり、AWG66の、光送受信装置70−1に接続するポートを透過する波長である。
【0037】
制御装置40は、読み込んだ下り用の割当て波長にTLD32のレーザ発振波長を制御し、また、読み込んだ上り用の割当て波長を光送受信装置70−1に指定するために、その波長値をヘッダ等に埋め込んだ所定フォーマットの波長設定用制御信号をフレーム変換装置30から光変調器34に出力させる。光変調器34は、フレーム変換装置30からの波長設定用制御信号に従い、TLD32の出力光を変調する。これにより、波長設定用制御信号を搬送する下り光信号が生成され、光送受信装置70−1に送信される(S2)。
【0038】
この下り光信号は、AWG16、WDM光カプラ20、光ファイバ50、WDM光カプラ64及びAWG66を介して、光送受信装置70−1の受光器86に入射する。受光器86は、AWG66からの下り光信号を電気信号に変換し、フレーム変換装置88は、受光器86の出力信号(波長設定用制御信号)を制御装置90に供給する。
【0039】
制御装置90は、受信した波長設定用制御信号で指定された上り波長にTLD82のレーザ波長を設定し、所定の応答信号をフレーム変換装置80から光変調器84に出力させる。光変調器84は、フレーム変換装置80からの応答信号に従いTLD82の出力光を変調する。これにより、応答信号を搬送する上り光信号が生成される。この上り光信号は、AWG68、WDM光カプラ64、光ファイバ50、WDM光カプラ20及びAWG18を介して、光送受信装置14−1の受光器36に入射する。受光器36は、AWG18からの上り光信号を電気信号に変換し、フレーム変換装置38は、受光器36の出力信号(応答信号)を制御装置40に供給する。
【0040】
制御装置40は、一定時間内に光送受信装置70−1からの応答信号を受信するまで(S3,S4)、波長設定用制御信号を光送受信装置70−1に繰り返し送信する。一定時間内に光送受信装置70−1からの応答信号を受信しない場合(S4)、制御装置40は、波長設定の失敗を図示しないディスプレイに表示することで、オペレータに通知する(S5)。ネットワーク管理されている場合、光送受信装置14−1は、管理コンソールに波長設定失敗のメッセージを送信する。波長設定を再開する場合、制御装置40は、図3に示すフローを再実行する。
【0041】
光送受信装置70−1からの応答信号を受信すると(S3)、制御装置40は、上り光信号の品質、すなわち信号品質を検査する。検査すべき信号品質は、例えば、受光パワー、符号誤り率又は信号対雑音比である。信号品質が一定以上であれば、波長対応表で指定される下り波長及び上り波長で、妥当な双方向通信が可能であることになるになるので、この時点で、更なる波長調節、すなわち、波長の微調整は不要になる。従って、品質が所定閾値以上の場合(S6)は、下り波長の微調整(S7)と上り波長の微調整(S8)を迂回し、所定閾値未満の場合には(S6)、下り波長を微調整し(S7)、上り波長を微調整する(S8)。これらの微調整処理の詳細は後述する。
【0042】
以後、制御装置40は、一定時間の経過を待ち(S9)、データ伝送の空きを狙って(S10)、下り波長の微調整(S7)と上り波長の微調整(S8)を実行する。
【0043】
このように、周期的又は間欠的に下り波長と上り波長を微調整することで、AWG16,18,66,68の透過波長の変動にかかわらず、良好な伝送状態を維持できる。
【0044】
波長微調処理(S7,S8)では、下り波長/上り波長をAWG16,18,66,68の個々のポートの通過帯域内に入るような微少量±Δλだけ変位させ、それぞれの信号品質により適用すべき波長を決定する。これにより、3回の信号品質計測で、短時間に好ましい波長を決定できる。Δλは例えば、通過帯域幅(半値幅)の10%程度で良い。
【0045】
図4は、下り波長微調処理(S7)の詳細なフローチャートを示す。図4を参照して、下り波長微調処理の詳細を説明する。
【0046】
光送受信装置14−1(制御装置40)は、現在、適用している下り波長λdで、光送受信装置70−1に信号品質を問い合わせる品質問合せ信号を送信する(S11)。光送受信装置70−1には、上り波長として現在の上り波長λuを指定する。微調処理(S7,S8)を一度も実行していないときには、下り波長λdは波長対応表42に記録された下り波長に等しく、光送受信装置70−1に指定する上り波長λuは、波長対応表42に記録された上り波長に等しい。光送受信装置70−1の制御装置90は、光送受信装置14−1からの品質問合せ信号の受光パワー、符号誤り率又は信号対雑音比等により信号品質を計測し、その計測結果を、指定された上り波長λuの上り光信号で光送受信装置14−1に返信する。光送受信装置14−1の制御装置40は、光送受信装置70−1からの返信結果を内蔵メモリに記憶する。光送受信装置70−1からの応答が一定時間内に無い場合、制御装置40は、返信として所定の悪い品質値を記憶する。
【0047】
次に、制御装置40は、下り波長をλd+Δλに変更し、光送受信装置70−1に信号品質を問い合わせる品質問合せ信号を送信する(S12)。Δλは、AWG16,18,66,68の個々のポートの通過帯域幅(半値幅)の10%程度である。光送受信装置70−1に指定する上り波長は、現在の上り波長λuのままである。ステップS11と同様に、光送受信装置14−1の制御装置40は、光送受信装置70−1からの返信された品質測定結果を内蔵メモリに記憶し、光送受信装置70−1からの応答が一定時間内に無い場合、所定の悪い品質値を記憶する。
【0048】
更に、制御装置40は、下り波長をλd−Δλに変更し、光送受信装置70−1に信号品質を問い合わせる品質問合せ信号を送信する(S13)。ここでも、光送受信装置70−1に指定する上り波長は、現在の上り波長λuのままである。ステップS11,S12と同様に、光送受信装置14−1の制御装置40は、光送受信装置70−1から返信される品質測定結果を内蔵メモリに記憶し、光送受信装置70−1からの応答が一定時間内に無い場合、所定の悪い品質値を記憶する。
【0049】
このようにして、3つの下り波長λd,λd+Δλ,λd−Δλで下り光信号の信号品質が計測でき、制御装置40は、これら3つの波長の内で最も信号品質の良い波長を、適用すべき下り波長λdとする。
【0050】
図5は、上り波長微調処理(S8)の詳細なフローチャートを示す。図5を参照して、上り波長微調処理の詳細を説明する。
【0051】
光送受信装置14−1(制御装置40)は、現在、適用している下り波長λdで、光送受信装置70−1に、出力パワー又はビットパターン等を指定した返信要求信号を送信する(S21)。光送受信装置70−1には、上り波長として現在の上り波長λuを指定する。下り波長λdは、下り波長微調処理(S7)で決定された波長である。上り波長微調処理(S8)を一度も実行していないときには、光送受信装置70−1に指定する上り波長λuは、波長対応表42に記録された上り波長に等しい。
【0052】
光送受信装置70−1の制御装置90は、光送受信装置14−1からの返信要求信号で指示される上り波長λuで上り光信号を生成し、光送受信装置14−1に返信する。光送受信装置14−1の制御装置40は、光送受信装置70−1から返信された上り光信号の受信パワー、符号誤り率又は信号対雑音比等により信号品質を計測し、計測結果を内蔵メモリに記憶する。光送受信装置70−1からの返信が一定時間内に無い場合、制御装置40は、所定の悪い品質値を内蔵メモリに記憶する。
【0053】
次に、制御装置40は、下り波長λdを変更せず、光送受信装置70−1に指定する上り波長をλu+Δλに変更して、光送受信装置70−1に返信要求信号を送信する(S22)。ステップS21と同様に、光送受信装置14−1の制御装置40は、光送受信装置70−1から返信される上り光信号の信号品質を測定し、その測定結果を内蔵メモリに記憶する。光送受信装置70−1からの応答が一定時間に無い場合、制御装置40は、所定の悪い品質値を内蔵メモリに記憶する。
【0054】
更に、制御装置40は、下り波長λdを変更せず、光送受信装置70−1に指定する上り波長をλu−Δλに変更して、光送受信装置70−1に返信要求信号を送信する(S23)。ステップS21,S22と同様に、光送受信装置14−1の制御装置40は、光送受信装置70−1から返信される上り光信号の信号品質を測定し、その測定結果を内蔵メモリに記憶する。光送受信装置70−1からの応答が一定時間に無い場合、制御装置40は、所定の悪い品質値を内蔵メモリに記憶する。
【0055】
このようにして、3つの上り波長λu,λu+Δλ,λu−Δλで上り光信号の信号品質が計測でき、制御装置40は、これら3つの波長の内で最も信号品質の良い波長を、適用すべき上り波長λuと決定し、光送受信装置70−1に通知する(S24)。
【0056】
このように、本実施例では、AWG16,18,66,68の個々のポートの通過帯域内の透過率最大の波長を探索することをせず、3つの、即ち少数の波長の信号品質の比較で適用すべき上り波長/下り波長を決定するので、決定までに要する時間を短縮できる。
【0057】
また、波長微調処理をデータ伝送の空き時間帯に挿入することで、AWG16,18,66,68の温度変化又は計時変化に基づく全体の波長特性にも、適応的に対応でき、長期にわたり良好な伝送特性を期待できる。
【0058】
本実施例では、所定時間の経過及びデータ伝送の空きをトリガーとして上り波長と下り波長を微調整したが、それぞれ光信号の品質が所定閾値より低下したことをトリガーとして波長微調整処理を起動するようにしてもよい。その時点での光伝送系のトータルな透過波長特性から光信号の波長がずれている可能性が高いからである。
【実施例2】
【0059】
WDM光カプラ20,64に相当するWDM光カプラを光送受信装置14−i,70−iに配置することで、AWGを半減できる。図6は、変更構成の概略構成ブロック図を示す。図1と同じ構成要素には同じ符号を付してある。
【0060】
変更された構成部分を説明する。センタ局110では、光送受信装置114−i内にWDM光カプラ20と同じ伝達特性のWDM光カプラ116を配置する。そして、各光送受信装置114−iのWDM光カプラ116と光ファイバ50との間に、周期的な波長分離多重特性のAWG120に接続する。同様に、リモート局160でも、光送受信装置170−i内にWDM光カプラ64と同じ伝達特性のWDM光カプラ166を配置する。そして、各光送受信装置170−iのWDM光カプラ166と光ファイバ50との間に、AWG120と同じ波長分離多重特性のAWG164に接続する。
【0061】
図7は、AWG120,164で波長分離多重される波長のマップ例を示す。AWG120、164の波長分離多重特性は、FSR(Free Spectrum Range)を周期とする周期性を具備するので、各光送受信装置114−iに、AWG120の或るFSRの波長と別のFSRの異なる波長とを割り当てることで、単一のAWG120で下り波長を多重しつつ上り波長を分離でき、また、下り波長を分離しつつ上り波長を多重できる。
【0062】
なお、個々のポートの透過波長帯幅が、互いに異なる上り波長と下り波長を含むことができるAWGをAWG120,164として使用する場合には、1つのポートの波長帯域内に上り波長と下り波長を割り当ててもよい。但し、波長微調処理で上り波長と下り波長が衝突する可能性があるので、調節範囲を予め制限する必要がある。
【0063】
上り光信号及び下り光信号の伝搬自体は、WDM光カプラによる波長分離多重とAWGによる波長分離多重が、実施例1とは逆の順番になることを除いて同じ出あるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
上記実施例では、センタ局10,110側の光送受信装置14−i,114−iが上り波長と下り波長の調整を主導したが、リモート局60,160の光送受信装置70−i,170−iが主導しても良いことは明らかであり、この場合、リモート局60,160が波長調整の主局となり、センタ局10,110が従局となる。更には、上り波長の調整と下り波長の調整で主局が異なっても良い。
【0065】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10:センタ局
12−1〜12−n:クライアント
14−1〜14−n:光送受信装置
16:アレイ導波路格子(AWG)
18:アレイ導波路格子(AWG)
20:WDM光カプラ
30:フレーム変換装置
32:波長可変レーザ(TLD)
34:光変調器
36:受光器(PD)
38:フレーム変換装置
40:制御装置
42:波長対応表
50:光ファイバ
60:リモート局
62−1〜62−n:クライアント
64:WDM光カプラ
66:AWG
68:AWG
70−1〜70−n:光送受信装置
80:フレーム変換装置
82:波長可変レーザ(TLD)
84:光変調器
86:受光器(PD)
88:フレーム変換装置
90:制御装置
92:波長対応表
110:センタ局
114−1〜114−n:光送受信装置
116:WDM光カプラ
120:AWG
160:リモート局
170−1〜170−n:光送受信装置
166:WDM光カプラ
164:AWG

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の光送受信装置が、波長分割多重の光伝送路を介して、他の対を構成する光送受信装置間で使われる波長とは異なる波長を使って通信する光伝送システムにおいて、当該第1の光送受信装置から当該第2の光送受信装置への第1伝送方向の光信号に使用される第1波長、及び、当該第2の光送受信装置から当該第1の光送受信装置への第2伝送方向の光信号に使用される、当該第1波長とは異なる第2波長を調整する方法であって、
当該第1波長及び当該第2波長として割り当てられている波長を所定記憶手段から読み出すステップと、
当該記憶手段から読み出した波長を使って、当該第1及び第2の光送受信装置間の通信の可否を確認するステップと、
当該第1及び第2の光送受信装置間の通信が可能な場合に、当該第1の光送受信装置において当該第2伝送方向の光信号の信号品質を検査するステップと、
当該第2伝送方向の光信号の信号品質が所定閾値未満の場合に、当該第1伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第1波長と当該第1波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第1波長とし、当該第2伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第2波長と当該第2波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第2波長とするステップと、
所定時間経過後のデータ伝送の空き、及び、信号品質の低下のいずれかをトリガーとして、当該第1伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第1波長と当該第1波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第1波長とし、当該第2伝送方向に対して当該波長分割多重の光伝送路において割り当てられている波長帯の中で当該第2波長と当該第2波長の前後の2波長を含む複数波長について、信号品質を計測し、最も信号品質の良い波長を当該第2波長とするステップ
とを具備することを特徴とする波長調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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