注入ノズル
【課題】熱硬化性樹脂の注型成形にあたり、金型に接続される注入ノズル内での熱硬化性樹脂の熱硬化を抑制し、注入ノズルの詰まりを抑制すると共に注入ノズルの洗浄が容易となる注入ノズルを提供する。
【解決手段】注入ノズル1は、熱硬化性樹脂6を注型成形するための金型4に装着され、前記金型4内のキャビティ5に連通して前記キャビティ5へ熱硬化性樹脂6を注入するために用いられる。この注入ノズル1は、前記キャビティ5に連通する熱硬化性樹脂6の流路である注入路2と、この注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却するための冷却手段3とを備える。このため、注型成形時に冷却手段3により注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂の温度上昇が抑制され、この熱硬化性樹脂の熱硬化が抑制される。
【解決手段】注入ノズル1は、熱硬化性樹脂6を注型成形するための金型4に装着され、前記金型4内のキャビティ5に連通して前記キャビティ5へ熱硬化性樹脂6を注入するために用いられる。この注入ノズル1は、前記キャビティ5に連通する熱硬化性樹脂6の流路である注入路2と、この注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却するための冷却手段3とを備える。このため、注型成形時に冷却手段3により注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂の温度上昇が抑制され、この熱硬化性樹脂の熱硬化が抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂を金型にて注型成形するにあたり、金型内のキャビティへ熱硬化性樹脂を注入するために金型に装着される注入ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、熱硬化性樹脂6の注型成形法の一例を示す(特許文献1参照)。金型4は上型60と下型61とで構成される。上型60と下型61とは、両者の間にガスケット69が介在した状態で型締めされ、この型締めされた状態で上型60と下型61との間にキャビティ5が形成される。この上型60と下型61の内部にはキャビティ5内を加熱するためのヒータ65が埋設されている。符号64は、上型60に設けられた空気抜き孔を示す。
【0003】
図9にも示す通り、下型61の、上型60との接合部付近には、キャビティ5に連通する注入口70が設けられており、この注入口70にはブッシュ62が装着されている。ブッシュ62の外側端部には、内面に連結用の雌ねじ溝(図示省略)が形成された雌ねじ部63が設けられている。
【0004】
この金型4には、注入ホース57及び注入ノズル1を介して注入タンク56が接続される。注入タンク56は熱硬化性樹脂6を貯留する容器である。この注入タンク56の下部に注入ホース57が接続されている。この注入ホース57の先端に注入ノズル1が接続される。
【0005】
図10に示す従来の注入ノズル1は円筒形状を有する。この注入ノズル1の前端面に吐出口28が、後端面に導入口71が、それぞれ開口し、注入ノズル1内には前記吐出口28及び導入口71に連通する注入路2が形成されている。注入路2は吐出口28側ほど先細になるように形成されている。注入ノズル1の前端部の外周にはOリング37が取着されている。また、注入ノズル1の外周には外周側に突出する装着用雄ねじ部34が形成され、この装着用雄ねじ部34の外周面には雄ねじ(図示省略)が形成されている。注入ノズル1の前端から装着用雄ねじ部34までの部分が、装着部21として形成されている。また注入ノズル1の後端部には、後端側ほど大径になる締結部33が形成されている。一方、注入ホース57の先端には、先端側ほど大径になる締結具58が装着されている。この締結具58には、注入ホース57内に連通する連通孔72が開口している。
【0006】
上記締結具58の前端面と注入ノズル1の後端面とが突き合わせると共に注入ホース57内が連通孔72及び導入口71を介して注入ノズル1の注入路2に連通する。この状態で、注入ノズル1の締結部33と注入ホース57に装着された締結具58とが、クランプバンド59によって締結されることで、注入ホース57に注入ノズル1が接続される。
【0007】
そして、注入ノズル1の装着部21を注入口70内に挿入すると共に、雌ねじ部63に装着用雄ねじ部34を螺着することで、注入ノズル1が金型4に取り付けられ、この注入ノズル1及び注入ホース57を介して、金型4内のキャビティ5と注入タンク56とが接続される。
【0008】
図11に上記注入ノズル1を用いた注型成形の工程の一例を示す。尚、図11では金型4及び注入ノズル1の構造は簡略化して示されている。
【0009】
まず図11(a)に示すように、注入ノズル1を金型4に装着した状態で、注入タンク56内の熱硬化性樹脂6にエア圧をかけると、熱硬化性樹脂6が注入ホース57及び注入ノズル1を介して金型4内のキャビティ5に注入され、充填される。この間、キャビティ5内の空気は空気抜き孔64から外部に放出されることで、キャビティ5内に熱硬化性樹脂6が充分に充填される。キャビティ5に充填された熱硬化性樹脂6はヒータ65により加熱されて熱硬化し、図11(b)に示すように浴槽等の所定の形状の成形体75が形成される。その後、図11(c)に示すように上型60と下型61とを型開きすることで、金型4から成形体75が取り出される。
【0010】
このようにして熱硬化性樹脂6の注型成形を行う場合には、キャビティ5内で熱硬化性樹脂6が熱硬化する際に、このキャビティ5内から注入ノズル1の注入路2内に熱が伝達されて、注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6も硬化してしまい、熱硬化性樹脂6の硬化物74によって注入ノズル1が詰まってしまう(図11(b)参照)。このため、次のようにして注入路2内の熱硬化性樹脂6の硬化物74を除去する必要がある。
【0011】
まずキャビティ5内での熱硬化性樹脂6の熱硬化が終了した後、注入ノズル1を回転させて装着用雄ねじ部34と雌ねじ部63との螺着を解除し、金型4から注入ノズル1を脱離する(図11(b)(c)参照)。このとき、注入路2が前記注入ノズル1の回転軸73から偏心するように形成されていると、注入路2内の硬化物74とキャビティ5内の成形体75との間にせん断応力が働いて、硬化物74が成形体75から容易に切断される。この注入ノズル1の吐出口28に図12(a)に示すようにピン76をあてがい、このピン76をハンマー77で叩打することにより注入路2内の硬化物74並びに未硬化の熱硬化性樹脂6を導入口71側から取り出す。次いで、図12(b)に示すようにこの注入ノズル1を溶剤78に浸漬したり、注入路2内に適宜の洗浄具79を差し入れて洗浄したりすることにより注入ノズル1を洗浄する。
【0012】
上記の通り、従来は熱硬化性樹脂6の注型成形時に注入ノズル1内の注入路2で熱硬化性樹脂6が硬化してしまい、注型成形後には前記注入路2内の熱硬化性樹脂6の硬化物74を除去するために煩雑な作業を必要とするため、作業効率及び生産効率が悪いものであった。
【特許文献1】特開2005−305935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、熱硬化性樹脂の注型成形にあたり、金型に接続される注入ノズル内での熱硬化性樹脂の熱硬化を抑制し、注入ノズルの詰まりを抑制すると共に注入ノズルの洗浄が容易となる注入ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る注入ノズル1は、熱硬化性樹脂6を注型成形するための金型4に装着され、前記金型4内のキャビティ5に連通して前記キャビティ5へ熱硬化性樹脂6を注入するために用いられる。この注入ノズル1は、前記キャビティ5に連通する熱硬化性樹脂6の流路である注入路2と、この注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却するための冷却手段3とを備えることを特徴とする。
【0015】
このため、注型成形時に冷却手段3により注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制され、この熱硬化性樹脂の熱硬化が抑制される。
【0016】
本発明に係る注入ノズル1は、上記注入路2の外周側に配される筒体7を具備し、上記冷却手段3として前記筒体7を冷却するものを備えることが好ましい。
【0017】
この場合、冷却手段3が筒体7を冷却することによって、この筒体7の内側の注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却される。
【0018】
また、本発明に係る注入ノズル1は、上記注入路2の内側に配されるバルブピン11を備え、上記冷却手段3として前記バルブピン11を冷却するものを備えることも好ましい。
【0019】
この場合、注入ノズル1をバルブピン11で開閉することができ、且つ冷却手段3が前記バルブピン11を冷却することで、このバルブピン11の外側の注入路2内の熱硬化性樹脂6の熱硬化が抑制される。
【0020】
また、上記注入ノズル1の先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることも好ましい。
【0021】
この場合、注入ノズル1が金型4に装着された状態で金型4から注入ノズル1への熱の伝導が抑制されて、注入ノズル1の温度上昇が抑制され、これにより熱硬化性樹脂6の熱硬化が更に抑制される。
【0022】
また、本発明に係る注入ノズル1は、上記注入路2の内側に配されるバルブピン11を備え、このバルブピン11の先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることも好ましい。
【0023】
この場合、注入ノズル1をバルブピン11で開閉することができ、且つ金型5からのバルブピン11への熱の伝導が抑制されて、バルブピン11の温度上昇が抑制され、これにより熱硬化性樹脂6の熱硬化が更に抑制される。
【0024】
また、上記バルブピン11が、ピン体8と、このピン体8の先端部に取着され金属よりも断熱性の高い材質で形成された断熱部材9とを備え、前記ピン体8と断熱部材9との間に空気層10が形成されていることが好ましい。
【0025】
この場合、金型5からのピン体8への熱の伝導が断熱部材9及び空気層10によって抑制されて、バルブピン11の温度上昇が更に抑制され、これにより熱硬化性樹脂6の熱硬化が更に抑制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱硬化性樹脂の注型成形にあたり、注入ノズルを介して金型に熱硬化性樹脂を注入する際に、注入ノズル内の熱硬化性樹脂が加熱硬化することが防止され、注入ノズルの詰まりを抑制すると共に注入ノズルの洗浄を容易に行うことができるようになる。よって、熱硬化性樹脂の注型成形の際の作業効率及び生産効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
図1,2に注入ノズル1の構成を示す。この注入ノズル1は筒体7とバルブピンユニット80とで構成される。
【0029】
筒体7は、図3に示すように内筒部12、外筒部13、先端チップ14等で構成される。
【0030】
内筒部12は適宜の金属材等で形成される。この内筒部12は前端と後端に開口する中空孔15を備える円筒形状を有し、前端側に冷却用筒部16が、後端側に前記冷却用筒部16よりも外径の大きな装着用筒部17が形成されている。また、冷却用筒部16の外周面には、この冷却用筒部16の全体に亘り、外周側に開口する螺旋状の流通溝18が形成されている。流通溝18の両端は共に冷却用筒部16の後端部の外周面に形成され、流通溝18は冷却用筒部16の後端部にある一端からこの冷却用筒部16の前端部へ至り、更に冷却用筒部16の後端部にある他端に戻るように形成される。また装着用筒部17には、この装着用筒部17の外周面と中空孔15とを連通する接続孔19が形成されている。
【0031】
外筒部13は適宜の金属材等で構成される。外筒部13の前端側には装着部21が、後端側には前記装着部21よりも外径の大きな基部22が形成されている。この外筒部13には、この外筒部13の前端面と後端面で開口する装着孔20が形成されている。内筒部12は外筒部13の前記装着孔20内に装着される。内筒部12の外周面は外筒部13の前記装着孔20内の内周面と密接している。内筒部12と外筒部13の各後端面は面一になっている。一方、内筒部12の前端面は外筒部13の前端面よりも後方に位置する。
【0032】
内筒部12が外筒部13に装着された状態では、内筒部12の流通溝18の外周側開口が外筒部13の装着孔20の内周面で閉塞されることで、この流通溝18の内面と装着孔20の内周面で囲まれた冷媒通路23aが形成されている。これにより、筒体7内に冷媒通路23aが、中空孔15の先端側部分(内筒部12の冷却用筒部16に囲まれた部分)の周囲を囲むように螺旋状に形成される。冷媒通路23aは、冷却用筒部16の後端部にある一端からこの冷却用筒部16の前端部へ至り、更に冷却用筒部16の前端部にある他端に戻るように形成される。この冷媒通路23aが、筒体7を冷却する冷却手段3を構成する。
【0033】
外筒部13の装着孔20の前端側開口縁には全周に亘り、内周側に向けて延出する係止部24が形成されている。係止部24と内筒部12の前端面とは隙間をあけて対向している。外筒部13の装着孔20の前端部に先端チップ14が取着されている。先端チップ14は金属よりも断熱性の高い材質で形成され、例えばポリアミドイミド樹脂等の樹脂成形品で形成される。先端チップ14は円盤状の形状を有し、前後方向に貫通する通孔25が形成されている。通孔25の内周面は弁座26を構成する。この弁座26は前端側ほど通孔25の内径が小さくなるようにテーパ状に形成されている。先端チップ14の外周面の後端部からは全周に亘り、外周方向に突出する鍔部27が形成されている。この鍔部27が外筒部13の係止部24と内筒部12の前端面との間で挟持されることで先端チップ14が外筒部13に取着されている。この先端チップ14の前端面は外筒部13の前端面と面一になり、先端チップ14の通孔25は内筒部12の中空孔15と連通する。この先端チップ14が設けられることにより、筒体7の先端部が金属よりも断熱性の高い材質で形成される。また、先端チップ14の通孔25の前面開口は吐出口28を構成する。
【0034】
また、外筒部13には、基部22の前端側の外周面から装着孔20の内周面まで貫通する冷媒供給孔29a及び冷媒導出孔30aが形成されている。冷媒供給孔29aは冷媒通路23aの一端に連通し、冷媒導出孔30aは冷媒通路23aの他端に連通している。
【0035】
外筒部13の基部22の、冷媒供給孔29a及び冷媒導出孔30aよりも後方には、外周側に突出する連結部31が形成されている。外筒部13には連結部31の先端面と装着孔20の内周面とを貫通する樹脂導入孔32が形成されており、樹脂導入孔32が接続孔19に連通している。連結部31の先端部には、先端側ほど大径になる締結部33が形成されている。
【0036】
また、基部22の前端には、この基部22の外周面の全周に亘り、外周方向に突出する装着用雄ねじ部34が形成されている。装着用雄ねじ部34の外周面には雄ねじ(図示省略)が形成されているが、この雄ねじは台形ねじであることが好ましい。基部22の後端にはこの基部22の他の部分よりも外径が小さい連結用雄ねじ部35が形成されている。連結用雄ねじ部35の外周面には雄ねじ(図示省略)が形成されている。
【0037】
また、この筒体7では、内筒部12の冷却用筒部16の前端部、並びに装着用筒部17の前後各端部の各外周面に形成された凹溝36a,36b,36c内に、それぞれOリング37a,37b,37cが取着され、内筒部12の外周面と装着孔20内の内周面との間に前記Oリング37a,37b,37cが介在している。これにより、冷媒用通路の形成位置の前方及び後方、樹脂導入孔32及び接続孔19の形成位置の前方及び後方、並びに冷媒通路23aの形成位置と樹脂導入孔32及び接続孔19の形成位置との間で、内筒部12の外周面と外筒部13の装着孔20の外周面との間の高い密着性が確保されている。また、装着部21の前端部にはその外周の全周に亘る凹溝36dが形成され、この凹溝36dにOリング37dが取着されている。
【0038】
バルブピンユニット80は、図4に示すようにバルブピン部38とシリンダ部39とで構成される。
【0039】
バルブピン部38は、図5に示すようにバルブピン11と、このバルブピン11の後端に取着された接続部40から構成される。バルブピン11は、筒体7の中空孔15の内径と合致する外径寸法を有する基体41の前面に、バルブピン11の主体となるピン体8が接続されることで構成される。ピン体8は、前記中空孔15の内径よりも小さい外径寸法を有する。ピン体8の前端から後端までの寸法は、筒体7の中空孔15の、吐出口28から通孔25の形成位置までの寸法以上であり、且つ中空孔15全体の前後寸法よりは小さい。またピン体8の前端から基体41の後端までの寸法は中空孔15全体の前後寸法以上である。基体41の前端部寄りにはその外周の全周に亘る凹溝36eが形成され、この凹溝36eにOリング37eが取着されている。
【0040】
ピン体8の先端部の外周には、先端チップ14の通孔25の内周面(弁座26)の形状と合致するテーパ状の当接面81が形成されている。ピン体8の先端面には、取着凹部42が凹設されており、この取着凹部42に断熱部材9が取着されている。断熱部材9は金属よりも断熱性の高い材質で形成され、例えばポリアミドイミド樹脂等の樹脂成形品で形成される。この断熱部材9は取着凹部42と合致する形状を有するが、後端面の一部(中央部)には後方に突出するスペーサ43が形成されている。断熱部材9は取着凹部42内に圧入されるなどして、ピン体8に取着される。これにより、バルブピン11の先端部が金属よりも断熱性の高い材質で形成される。このとき、断熱部材9の後端面では、スペーサ43が取着凹部42の底面と密接するが、スペーサ43が形成されていない箇所では取着凹部42の底面と断熱部材9の後端面との間に中空の空気層10が形成されている。
【0041】
接続部40は基体41よりも大きな外径寸法を有する。この基体41の後端には連結部66が設けられている。
【0042】
接続部40内にはその外周面に開口する冷媒供給孔29b及び冷媒導出孔30bが形成されており、バルブピン11内には前記冷媒供給孔29b及び冷媒導出孔30bに連通する冷媒通路23bが形成されている。この冷媒通路23bが、バルブピン11を冷却する冷却手段3を構成する。また、バルブピン部38の内部には仕切り部44が形成されている。前記冷媒供給孔29b及び冷媒導出孔30bは、接続部40の外周面の二つの開口を連通する貫通孔45が仕切り部44で仕切られることで形成されている。また、冷媒通路23bは前記貫通孔45からピン体8の前端部に至るまで形成されており、この冷媒通路23bは前記仕切り部44で仕切られることで、ピン体8の前端部で折り返す略U字状に形成されている。この冷媒通路23の一端が冷媒供給孔29bに連通し、他端が冷媒導出孔30bに連通している。
【0043】
図6はバルブピン部38の他の形態の例を示す。このバルブピン部38では、ピン体8の先端部の外周には、上記当接面81よりも後方に隣接して、先端側ほど外径が大きくなる拡径部82が形成されている。
【0044】
シリンダ部39は、支持体46と、この支持体46に支持されるシリンダ機構67とで構成される。支持体46は前後に対向する前板47と後板48とを複数の連結バー49で連結して構成される。後板48には前後に貫通する開口部68が形成され、この開口部68の内周面には雌ねじ(図示省略)が形成されている。シリンダ機構67は、支持体46の後板48の背面で支持されるエアシリンダ等のシリンダ50と、シリンダ50から後板48の前方に突出し、このシリンダ50によって前後方向に進退駆動するロッド51とで構成される。ロッド51の先端は前板47と後板48の間に位置する。ロッド51の先端にはこのロッド51の他の部分よりも大径の取着部52が形成されている。このロッド51には連結部53が取着されている。連結部53にはロッド51の取着部52と合致する形状の前面に開口する収容凹部54が形成されていると共にこの収容凹部54の底面から連結部53の背面まで貫通する挿通孔55が形成されている。この挿通孔55にロッド51が挿通されると共に収容凹部54内に取着部52が収容されることで、前記連結部53がロッド51に取着されている。
【0045】
このようなバルブピン部38とシリンダ部39とを連結部66,53同士で連結することで、バルブピンユニット80が構成される。連結部66,53同士の連結は、図示はしていないが、例えばねじ締め等による締結にて両者を連結するなどして行われ、これにより、バルブピン部38とシリンダ部39とが着脱自在となる。このときシリンダ部39は後板48の開口部68を挿通するように配置される。このように連結部66,53同士を連結すると、シリンダ部39の連結部53の収容凹部54の開口がバルブピン部38の連結部66によって閉塞されて、ロッド51の取着部52が連結部66,53間で挟持される。これによりバルブピン部38はシリンダ部39のロッド51の先端に支持され、ロッド51が進退駆動するとバルブピン部38も連動して進退駆動する。
【0046】
上記のように構成される筒体7とバルブピンユニット80が着脱自在に連結することで、図1,2に示すように注入ノズル1が構成される。筒体7とバルブピンユニット80との連結は、上記筒体7の中空孔15にバルブピンユニット80のバルブピン11を挿入すると共に、筒体7の後端の連結用雄ねじ部35を筒体7の前板47の開口部68内面の雌ねじに螺着することによってなされる。
【0047】
この注入ノズル1では、中空孔15に挿入されたバルブピン11の基体41は中空孔15内の接続孔19よりも後方に配置され、この基体41の外周面が中空孔15の内周面と密接している。一方、バルブピン11のピン体8の外面と中空孔15の内面との間には隙間が形成され、この隙間によって注入路2が構成されている。これにより、冷媒通路23aを有する筒体7が注入路2の外側を囲むように配されると共に、冷媒通路23bを有するバルブピン11が注入路2の内側に配される。注入路2の後端は接続孔19を介して樹脂導入孔32に連通し、注入路2の前端は先端チップ14の通孔25を介して吐出口28に連通している。
【0048】
また、バルブピン11はシリンダ50によって中空孔15内を進退駆動することで、吐出口28を開閉する。すなわち、バルブピン11が後退すると、図2に示すようにバルブピン11の先端の当接面81が弁座26から後方に離間して吐出口28が開放され、注入路2が吐出口28を介して外部に連通する。一方、バルブピン11が前進すると、図1に示すようにバルブピン11の先端の当接面81が弁座26に当接し、このバルブピン11によって吐出口28が閉塞される。
【0049】
この注入ノズル1を用いた熱硬化性樹脂6の注型成形について説明する。
【0050】
図8は、熱硬化性樹脂6の注型成形法の一例を示し、図9は金型の要部の構成を示す。金型4、注入タンク56及び注入ホース57の構成は、上記背景技術の欄で説明されているものと同一であるため、説明を省略する。
【0051】
注入ノズル1には注入ホース57を接続することで、注入ホース57が注入ノズル1の樹脂導入孔32、接続孔19を介して、注入路2に連通するようにする。注入ノズル1と注入ホース57との接続にあたっては、例えば図10に示す従来技術と同様に、注入ホース57に装着された締結具58の前端面と注入ノズル1の締結部33の端面とを突き合わせ、この締結具58と締結部33とをクランプバンド59等によって締結することで、注入ノズル1の締結部33に締結具58を介して注入ホース57を接続することができる。
【0052】
図7にこの注入ノズル1を用いた注型成形の工程の一例を示す。尚、図7では金型4及び注入ノズル1の構造は簡略化して示されている。
【0053】
まず図7(a)に示すように注入ノズル1の装着部21を、上型60と下型61とで構成される金型4の注入口70内に挿入すると共に、雌ねじ部63に注入ノズル1の装着用雄ねじ部34を螺着することで、注入ノズル1が金型4に取り付けられ、この注入ノズル1及び注入ホース57を介して、金型4内のキャビティ5と注入タンク56とが接続される。
【0054】
また、この注入ノズル1の各冷媒供給孔29a,29bには冷媒供給用の配管83,83をそれぞれ接続すると共に各冷媒導出孔30a,30bには冷媒導出用の配管84,84をそれぞれ接続しておく。冷媒は水等の適宜のものが使用される。
【0055】
まず、注入ノズル1のバルブピン11は後退させておき、吐出口28を開放しておく(図2参照)。
【0056】
この状態で、注入タンク56内の熱硬化性樹脂6にエア圧をかけると、図7(b)に示すように熱硬化性樹脂6が注入ホース57及び注入ノズル1を介して金型4内のキャビティ5に注入され、充填される。注入ノズル1内では、熱硬化性樹脂6は樹脂導入孔32、接続孔19を介して、注入路2に供給され、この注入路2から吐出口28を介して金型4内のキャビティ5に注入される。この間、キャビティ5内の空気は上型60に形成された空気抜き孔64から外部に放出されることで、キャビティ5内に熱硬化性樹脂6が充分に充填される。
【0057】
キャビティ5への熱硬化性樹脂6の充填が終了したら、図7(c)に示すようにバルブピン11を前進駆動させて吐出口28を閉塞する(図1参照)。注入ノズル1の注入路2内には、金型4へ注入されなかった熱硬化性樹脂6が残存する。続いて、キャビティ5に充填された熱硬化性樹脂6をヒータ65により加熱して熱硬化する。
【0058】
金型4内で熱硬化性樹脂6が加熱される際、配管83,83を通じて、筒体7とバルブピンユニット80にそれぞれ設けられた冷媒供給孔29a,29bへ水等の冷媒を供給する。この冷媒は、この注型成形の工程の当初から供給されていても良い。筒体7の冷媒供給孔29aに供給された冷媒は、注入路2の周囲を囲む筒体7内の冷媒通路23aを流通した後、冷媒導出孔30aから配管84を通じて外部へ導出される。これにより注入路2の外周を囲むように配された筒体7が冷媒によって冷却され、更に注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制される。またバルブピンユニット80の冷媒供給孔29bに供給された冷媒はバルブピン11内の冷媒通路23bを流通した後、冷媒導出孔30bから配管84を通じて外部へ導出される。これにより注入路2の内側に配されたバルブピン11が冷却され、更に注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制される。更に、このように前記二種類の冷媒通路23a,23bに冷媒が流通することで、注入路2内の熱硬化性樹脂6は外側と内側の両方から冷却されて、温度上昇が効果的に抑制される。
【0059】
また、この注入ノズル1は、その先端部が金属よりも断熱性の高い材質で形成されているため、キャビティ5内の熱硬化性樹脂6から注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6への熱の伝達が抑制され、これにより注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6の温度上昇が更に効果的に抑制される。すなわち、筒体7の先端部には金属よりも断熱性の高い材質で形成された先端チップ14が取着されているので、キャビティ5内の熱硬化性樹脂6から前記先端チップ14を介した筒体7への熱の伝達が抑制されて、筒体7の温度上昇が抑制され、注入路2内の熱硬化性樹脂6の温度上昇も抑制される。またバルブピン11のピン体8の先端には金属よりも断熱性の高い材質で形成された断熱部材9が取着されているので、キャビティ5内の熱硬化性樹脂6から前記断熱部材9を介したピン体8への熱の伝達が抑制されて、バルブピン11の温度上昇が抑制され、注入路2内の熱硬化性樹脂6の温度上昇も抑制される。更に、ピン体8と断熱部材9との間には既述の通り空気層10が形成されているため、この空気層10によっても熱の伝達が抑制され、バルブピン11の温度上昇が更に抑制される。
【0060】
注入ノズル1に供給される水等の冷媒の温度は、金型4の加熱条件や熱硬化性樹脂6の硬化温度等に応じ、注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6の硬化が充分に抑制されるように適宜設定されるが、例えば加熱前の金型4の温度が50℃、加熱時の金型4の温度が90℃の場合に、冷媒の温度を15〜30℃の範囲とすることができる。
【0061】
このように注入ノズル1内に残存する熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制されるため、この熱硬化性樹脂6の熱硬化が防止され、注入ノズル1に詰まりが生じることが抑制される。また、この注入ノズル1を洗浄する際は、前記のように注入ノズル1の詰まりが抑制されているので、注入ノズル1の洗浄が容易となる。
【0062】
尚、本実施形態におけるバルブピン部38は上述のとおり図5に示す構成を有するが、バルブピン部38が図6に示す構成を有する場合には、ピン体8に拡径部82が形成されているため、この拡径部82よりも後端側においてピン体8の外径を小さくすることで、注入路2の断面積を大きくすることができる。このため、注入路2を流通する熱硬化性樹脂6の流量を増大させることが容易になり、注型成形時の熱硬化性樹脂6の注入効率が向上する。また、注入路2の断面積を大きくしつつ注入ノズル1の小型化を図ることが可能となり、注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却する際にキャビティ5内の熱硬化性樹脂6まで冷却されて成形不良が発生してしまうようなことを防止することもできる。
【0063】
また、本実施形態では、冷却手段3を冷媒通路23a,23bで構成しているが、筒体7やバルブピン11を冷却することにより注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却することが可能であれば、冷却手段3の機構は特に限定されない。また本実施形態では筒体7を冷却する冷却手段3とバルブピン11を冷却する冷却手段3の両方が設けられているが、筒体7とバルブピン11のうちいずれか一方を冷却する冷却手段3が設けられていても良い。
【0064】
この注入ノズル1の洗浄について説明する。熱硬化性樹脂6の注型成形後、注入ノズル1の装着用雄ねじ部34とブッシュ62の雌ねじ部63との螺合を解除することで金型4から注入ノズル1を取り外すと共に、注入ホース57と注入ノズル1の連結を解除する。この注入ノズル1の筒体7とバルブピンユニット80との連結を解除して筒体7の中空孔15からバルブピン11を引き抜く。この筒体7を適宜の溶剤中に浸漬するなどして中空孔15内の熱硬化性樹脂6を除去する。このとき筒体7内に残存する熱硬化性樹脂6の熱硬化が抑制されているために、この熱硬化性樹脂6を容易に除去することができる。また、バルブピンユニット80のバルブピン部38とシリンダ部39との連結を解除し、バルブピン部38を適宜の溶剤中に浸漬するなどしてバルブピン11の外表面に付着している熱硬化性樹脂6を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の実施の形態の動作を示す断面図である。
【図3】同上の実施の形態における筒体の構造を示す断面図である。
【図4】同上の実施の形態におけるバルブピンユニットの構造を示す断面図である。
【図5】同上の実施の形態におけるバルブピン部の構造を示す断面図である。
【図6】バルブピン部の構造の他例を示す断面図である。
【図7】同上の実施の形態の一例における注入ノズルを使用した注型成形の工程の一例を示すものであり、(a)乃至(c)は概略の断面図である。
【図8】注型成形方法の一例を示す概略図である。
【図9】同上の注型成形方法における金型の構成を示す一部の断面図である。
【図10】従来技術の一例を示す断面図である。
【図11】同上の従来技術の一例における注入ノズルを使用した注型成形の工程の一例を示すものであり、(a)乃至(c)は概略の断面図である。
【図12】同上の従来技術の一例における注入ノズルの洗浄方法の一例を示すものであり、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 注入ノズル
2 注入路
3 冷却手段
4 金型
5 キャビティ
6 熱硬化性樹脂
7 筒体
8 ピン体
9 断熱部材
10 空気層
11 バルブピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂を金型にて注型成形するにあたり、金型内のキャビティへ熱硬化性樹脂を注入するために金型に装着される注入ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、熱硬化性樹脂6の注型成形法の一例を示す(特許文献1参照)。金型4は上型60と下型61とで構成される。上型60と下型61とは、両者の間にガスケット69が介在した状態で型締めされ、この型締めされた状態で上型60と下型61との間にキャビティ5が形成される。この上型60と下型61の内部にはキャビティ5内を加熱するためのヒータ65が埋設されている。符号64は、上型60に設けられた空気抜き孔を示す。
【0003】
図9にも示す通り、下型61の、上型60との接合部付近には、キャビティ5に連通する注入口70が設けられており、この注入口70にはブッシュ62が装着されている。ブッシュ62の外側端部には、内面に連結用の雌ねじ溝(図示省略)が形成された雌ねじ部63が設けられている。
【0004】
この金型4には、注入ホース57及び注入ノズル1を介して注入タンク56が接続される。注入タンク56は熱硬化性樹脂6を貯留する容器である。この注入タンク56の下部に注入ホース57が接続されている。この注入ホース57の先端に注入ノズル1が接続される。
【0005】
図10に示す従来の注入ノズル1は円筒形状を有する。この注入ノズル1の前端面に吐出口28が、後端面に導入口71が、それぞれ開口し、注入ノズル1内には前記吐出口28及び導入口71に連通する注入路2が形成されている。注入路2は吐出口28側ほど先細になるように形成されている。注入ノズル1の前端部の外周にはOリング37が取着されている。また、注入ノズル1の外周には外周側に突出する装着用雄ねじ部34が形成され、この装着用雄ねじ部34の外周面には雄ねじ(図示省略)が形成されている。注入ノズル1の前端から装着用雄ねじ部34までの部分が、装着部21として形成されている。また注入ノズル1の後端部には、後端側ほど大径になる締結部33が形成されている。一方、注入ホース57の先端には、先端側ほど大径になる締結具58が装着されている。この締結具58には、注入ホース57内に連通する連通孔72が開口している。
【0006】
上記締結具58の前端面と注入ノズル1の後端面とが突き合わせると共に注入ホース57内が連通孔72及び導入口71を介して注入ノズル1の注入路2に連通する。この状態で、注入ノズル1の締結部33と注入ホース57に装着された締結具58とが、クランプバンド59によって締結されることで、注入ホース57に注入ノズル1が接続される。
【0007】
そして、注入ノズル1の装着部21を注入口70内に挿入すると共に、雌ねじ部63に装着用雄ねじ部34を螺着することで、注入ノズル1が金型4に取り付けられ、この注入ノズル1及び注入ホース57を介して、金型4内のキャビティ5と注入タンク56とが接続される。
【0008】
図11に上記注入ノズル1を用いた注型成形の工程の一例を示す。尚、図11では金型4及び注入ノズル1の構造は簡略化して示されている。
【0009】
まず図11(a)に示すように、注入ノズル1を金型4に装着した状態で、注入タンク56内の熱硬化性樹脂6にエア圧をかけると、熱硬化性樹脂6が注入ホース57及び注入ノズル1を介して金型4内のキャビティ5に注入され、充填される。この間、キャビティ5内の空気は空気抜き孔64から外部に放出されることで、キャビティ5内に熱硬化性樹脂6が充分に充填される。キャビティ5に充填された熱硬化性樹脂6はヒータ65により加熱されて熱硬化し、図11(b)に示すように浴槽等の所定の形状の成形体75が形成される。その後、図11(c)に示すように上型60と下型61とを型開きすることで、金型4から成形体75が取り出される。
【0010】
このようにして熱硬化性樹脂6の注型成形を行う場合には、キャビティ5内で熱硬化性樹脂6が熱硬化する際に、このキャビティ5内から注入ノズル1の注入路2内に熱が伝達されて、注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6も硬化してしまい、熱硬化性樹脂6の硬化物74によって注入ノズル1が詰まってしまう(図11(b)参照)。このため、次のようにして注入路2内の熱硬化性樹脂6の硬化物74を除去する必要がある。
【0011】
まずキャビティ5内での熱硬化性樹脂6の熱硬化が終了した後、注入ノズル1を回転させて装着用雄ねじ部34と雌ねじ部63との螺着を解除し、金型4から注入ノズル1を脱離する(図11(b)(c)参照)。このとき、注入路2が前記注入ノズル1の回転軸73から偏心するように形成されていると、注入路2内の硬化物74とキャビティ5内の成形体75との間にせん断応力が働いて、硬化物74が成形体75から容易に切断される。この注入ノズル1の吐出口28に図12(a)に示すようにピン76をあてがい、このピン76をハンマー77で叩打することにより注入路2内の硬化物74並びに未硬化の熱硬化性樹脂6を導入口71側から取り出す。次いで、図12(b)に示すようにこの注入ノズル1を溶剤78に浸漬したり、注入路2内に適宜の洗浄具79を差し入れて洗浄したりすることにより注入ノズル1を洗浄する。
【0012】
上記の通り、従来は熱硬化性樹脂6の注型成形時に注入ノズル1内の注入路2で熱硬化性樹脂6が硬化してしまい、注型成形後には前記注入路2内の熱硬化性樹脂6の硬化物74を除去するために煩雑な作業を必要とするため、作業効率及び生産効率が悪いものであった。
【特許文献1】特開2005−305935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、熱硬化性樹脂の注型成形にあたり、金型に接続される注入ノズル内での熱硬化性樹脂の熱硬化を抑制し、注入ノズルの詰まりを抑制すると共に注入ノズルの洗浄が容易となる注入ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る注入ノズル1は、熱硬化性樹脂6を注型成形するための金型4に装着され、前記金型4内のキャビティ5に連通して前記キャビティ5へ熱硬化性樹脂6を注入するために用いられる。この注入ノズル1は、前記キャビティ5に連通する熱硬化性樹脂6の流路である注入路2と、この注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却するための冷却手段3とを備えることを特徴とする。
【0015】
このため、注型成形時に冷却手段3により注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制され、この熱硬化性樹脂の熱硬化が抑制される。
【0016】
本発明に係る注入ノズル1は、上記注入路2の外周側に配される筒体7を具備し、上記冷却手段3として前記筒体7を冷却するものを備えることが好ましい。
【0017】
この場合、冷却手段3が筒体7を冷却することによって、この筒体7の内側の注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却される。
【0018】
また、本発明に係る注入ノズル1は、上記注入路2の内側に配されるバルブピン11を備え、上記冷却手段3として前記バルブピン11を冷却するものを備えることも好ましい。
【0019】
この場合、注入ノズル1をバルブピン11で開閉することができ、且つ冷却手段3が前記バルブピン11を冷却することで、このバルブピン11の外側の注入路2内の熱硬化性樹脂6の熱硬化が抑制される。
【0020】
また、上記注入ノズル1の先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることも好ましい。
【0021】
この場合、注入ノズル1が金型4に装着された状態で金型4から注入ノズル1への熱の伝導が抑制されて、注入ノズル1の温度上昇が抑制され、これにより熱硬化性樹脂6の熱硬化が更に抑制される。
【0022】
また、本発明に係る注入ノズル1は、上記注入路2の内側に配されるバルブピン11を備え、このバルブピン11の先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることも好ましい。
【0023】
この場合、注入ノズル1をバルブピン11で開閉することができ、且つ金型5からのバルブピン11への熱の伝導が抑制されて、バルブピン11の温度上昇が抑制され、これにより熱硬化性樹脂6の熱硬化が更に抑制される。
【0024】
また、上記バルブピン11が、ピン体8と、このピン体8の先端部に取着され金属よりも断熱性の高い材質で形成された断熱部材9とを備え、前記ピン体8と断熱部材9との間に空気層10が形成されていることが好ましい。
【0025】
この場合、金型5からのピン体8への熱の伝導が断熱部材9及び空気層10によって抑制されて、バルブピン11の温度上昇が更に抑制され、これにより熱硬化性樹脂6の熱硬化が更に抑制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱硬化性樹脂の注型成形にあたり、注入ノズルを介して金型に熱硬化性樹脂を注入する際に、注入ノズル内の熱硬化性樹脂が加熱硬化することが防止され、注入ノズルの詰まりを抑制すると共に注入ノズルの洗浄を容易に行うことができるようになる。よって、熱硬化性樹脂の注型成形の際の作業効率及び生産効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
図1,2に注入ノズル1の構成を示す。この注入ノズル1は筒体7とバルブピンユニット80とで構成される。
【0029】
筒体7は、図3に示すように内筒部12、外筒部13、先端チップ14等で構成される。
【0030】
内筒部12は適宜の金属材等で形成される。この内筒部12は前端と後端に開口する中空孔15を備える円筒形状を有し、前端側に冷却用筒部16が、後端側に前記冷却用筒部16よりも外径の大きな装着用筒部17が形成されている。また、冷却用筒部16の外周面には、この冷却用筒部16の全体に亘り、外周側に開口する螺旋状の流通溝18が形成されている。流通溝18の両端は共に冷却用筒部16の後端部の外周面に形成され、流通溝18は冷却用筒部16の後端部にある一端からこの冷却用筒部16の前端部へ至り、更に冷却用筒部16の後端部にある他端に戻るように形成される。また装着用筒部17には、この装着用筒部17の外周面と中空孔15とを連通する接続孔19が形成されている。
【0031】
外筒部13は適宜の金属材等で構成される。外筒部13の前端側には装着部21が、後端側には前記装着部21よりも外径の大きな基部22が形成されている。この外筒部13には、この外筒部13の前端面と後端面で開口する装着孔20が形成されている。内筒部12は外筒部13の前記装着孔20内に装着される。内筒部12の外周面は外筒部13の前記装着孔20内の内周面と密接している。内筒部12と外筒部13の各後端面は面一になっている。一方、内筒部12の前端面は外筒部13の前端面よりも後方に位置する。
【0032】
内筒部12が外筒部13に装着された状態では、内筒部12の流通溝18の外周側開口が外筒部13の装着孔20の内周面で閉塞されることで、この流通溝18の内面と装着孔20の内周面で囲まれた冷媒通路23aが形成されている。これにより、筒体7内に冷媒通路23aが、中空孔15の先端側部分(内筒部12の冷却用筒部16に囲まれた部分)の周囲を囲むように螺旋状に形成される。冷媒通路23aは、冷却用筒部16の後端部にある一端からこの冷却用筒部16の前端部へ至り、更に冷却用筒部16の前端部にある他端に戻るように形成される。この冷媒通路23aが、筒体7を冷却する冷却手段3を構成する。
【0033】
外筒部13の装着孔20の前端側開口縁には全周に亘り、内周側に向けて延出する係止部24が形成されている。係止部24と内筒部12の前端面とは隙間をあけて対向している。外筒部13の装着孔20の前端部に先端チップ14が取着されている。先端チップ14は金属よりも断熱性の高い材質で形成され、例えばポリアミドイミド樹脂等の樹脂成形品で形成される。先端チップ14は円盤状の形状を有し、前後方向に貫通する通孔25が形成されている。通孔25の内周面は弁座26を構成する。この弁座26は前端側ほど通孔25の内径が小さくなるようにテーパ状に形成されている。先端チップ14の外周面の後端部からは全周に亘り、外周方向に突出する鍔部27が形成されている。この鍔部27が外筒部13の係止部24と内筒部12の前端面との間で挟持されることで先端チップ14が外筒部13に取着されている。この先端チップ14の前端面は外筒部13の前端面と面一になり、先端チップ14の通孔25は内筒部12の中空孔15と連通する。この先端チップ14が設けられることにより、筒体7の先端部が金属よりも断熱性の高い材質で形成される。また、先端チップ14の通孔25の前面開口は吐出口28を構成する。
【0034】
また、外筒部13には、基部22の前端側の外周面から装着孔20の内周面まで貫通する冷媒供給孔29a及び冷媒導出孔30aが形成されている。冷媒供給孔29aは冷媒通路23aの一端に連通し、冷媒導出孔30aは冷媒通路23aの他端に連通している。
【0035】
外筒部13の基部22の、冷媒供給孔29a及び冷媒導出孔30aよりも後方には、外周側に突出する連結部31が形成されている。外筒部13には連結部31の先端面と装着孔20の内周面とを貫通する樹脂導入孔32が形成されており、樹脂導入孔32が接続孔19に連通している。連結部31の先端部には、先端側ほど大径になる締結部33が形成されている。
【0036】
また、基部22の前端には、この基部22の外周面の全周に亘り、外周方向に突出する装着用雄ねじ部34が形成されている。装着用雄ねじ部34の外周面には雄ねじ(図示省略)が形成されているが、この雄ねじは台形ねじであることが好ましい。基部22の後端にはこの基部22の他の部分よりも外径が小さい連結用雄ねじ部35が形成されている。連結用雄ねじ部35の外周面には雄ねじ(図示省略)が形成されている。
【0037】
また、この筒体7では、内筒部12の冷却用筒部16の前端部、並びに装着用筒部17の前後各端部の各外周面に形成された凹溝36a,36b,36c内に、それぞれOリング37a,37b,37cが取着され、内筒部12の外周面と装着孔20内の内周面との間に前記Oリング37a,37b,37cが介在している。これにより、冷媒用通路の形成位置の前方及び後方、樹脂導入孔32及び接続孔19の形成位置の前方及び後方、並びに冷媒通路23aの形成位置と樹脂導入孔32及び接続孔19の形成位置との間で、内筒部12の外周面と外筒部13の装着孔20の外周面との間の高い密着性が確保されている。また、装着部21の前端部にはその外周の全周に亘る凹溝36dが形成され、この凹溝36dにOリング37dが取着されている。
【0038】
バルブピンユニット80は、図4に示すようにバルブピン部38とシリンダ部39とで構成される。
【0039】
バルブピン部38は、図5に示すようにバルブピン11と、このバルブピン11の後端に取着された接続部40から構成される。バルブピン11は、筒体7の中空孔15の内径と合致する外径寸法を有する基体41の前面に、バルブピン11の主体となるピン体8が接続されることで構成される。ピン体8は、前記中空孔15の内径よりも小さい外径寸法を有する。ピン体8の前端から後端までの寸法は、筒体7の中空孔15の、吐出口28から通孔25の形成位置までの寸法以上であり、且つ中空孔15全体の前後寸法よりは小さい。またピン体8の前端から基体41の後端までの寸法は中空孔15全体の前後寸法以上である。基体41の前端部寄りにはその外周の全周に亘る凹溝36eが形成され、この凹溝36eにOリング37eが取着されている。
【0040】
ピン体8の先端部の外周には、先端チップ14の通孔25の内周面(弁座26)の形状と合致するテーパ状の当接面81が形成されている。ピン体8の先端面には、取着凹部42が凹設されており、この取着凹部42に断熱部材9が取着されている。断熱部材9は金属よりも断熱性の高い材質で形成され、例えばポリアミドイミド樹脂等の樹脂成形品で形成される。この断熱部材9は取着凹部42と合致する形状を有するが、後端面の一部(中央部)には後方に突出するスペーサ43が形成されている。断熱部材9は取着凹部42内に圧入されるなどして、ピン体8に取着される。これにより、バルブピン11の先端部が金属よりも断熱性の高い材質で形成される。このとき、断熱部材9の後端面では、スペーサ43が取着凹部42の底面と密接するが、スペーサ43が形成されていない箇所では取着凹部42の底面と断熱部材9の後端面との間に中空の空気層10が形成されている。
【0041】
接続部40は基体41よりも大きな外径寸法を有する。この基体41の後端には連結部66が設けられている。
【0042】
接続部40内にはその外周面に開口する冷媒供給孔29b及び冷媒導出孔30bが形成されており、バルブピン11内には前記冷媒供給孔29b及び冷媒導出孔30bに連通する冷媒通路23bが形成されている。この冷媒通路23bが、バルブピン11を冷却する冷却手段3を構成する。また、バルブピン部38の内部には仕切り部44が形成されている。前記冷媒供給孔29b及び冷媒導出孔30bは、接続部40の外周面の二つの開口を連通する貫通孔45が仕切り部44で仕切られることで形成されている。また、冷媒通路23bは前記貫通孔45からピン体8の前端部に至るまで形成されており、この冷媒通路23bは前記仕切り部44で仕切られることで、ピン体8の前端部で折り返す略U字状に形成されている。この冷媒通路23の一端が冷媒供給孔29bに連通し、他端が冷媒導出孔30bに連通している。
【0043】
図6はバルブピン部38の他の形態の例を示す。このバルブピン部38では、ピン体8の先端部の外周には、上記当接面81よりも後方に隣接して、先端側ほど外径が大きくなる拡径部82が形成されている。
【0044】
シリンダ部39は、支持体46と、この支持体46に支持されるシリンダ機構67とで構成される。支持体46は前後に対向する前板47と後板48とを複数の連結バー49で連結して構成される。後板48には前後に貫通する開口部68が形成され、この開口部68の内周面には雌ねじ(図示省略)が形成されている。シリンダ機構67は、支持体46の後板48の背面で支持されるエアシリンダ等のシリンダ50と、シリンダ50から後板48の前方に突出し、このシリンダ50によって前後方向に進退駆動するロッド51とで構成される。ロッド51の先端は前板47と後板48の間に位置する。ロッド51の先端にはこのロッド51の他の部分よりも大径の取着部52が形成されている。このロッド51には連結部53が取着されている。連結部53にはロッド51の取着部52と合致する形状の前面に開口する収容凹部54が形成されていると共にこの収容凹部54の底面から連結部53の背面まで貫通する挿通孔55が形成されている。この挿通孔55にロッド51が挿通されると共に収容凹部54内に取着部52が収容されることで、前記連結部53がロッド51に取着されている。
【0045】
このようなバルブピン部38とシリンダ部39とを連結部66,53同士で連結することで、バルブピンユニット80が構成される。連結部66,53同士の連結は、図示はしていないが、例えばねじ締め等による締結にて両者を連結するなどして行われ、これにより、バルブピン部38とシリンダ部39とが着脱自在となる。このときシリンダ部39は後板48の開口部68を挿通するように配置される。このように連結部66,53同士を連結すると、シリンダ部39の連結部53の収容凹部54の開口がバルブピン部38の連結部66によって閉塞されて、ロッド51の取着部52が連結部66,53間で挟持される。これによりバルブピン部38はシリンダ部39のロッド51の先端に支持され、ロッド51が進退駆動するとバルブピン部38も連動して進退駆動する。
【0046】
上記のように構成される筒体7とバルブピンユニット80が着脱自在に連結することで、図1,2に示すように注入ノズル1が構成される。筒体7とバルブピンユニット80との連結は、上記筒体7の中空孔15にバルブピンユニット80のバルブピン11を挿入すると共に、筒体7の後端の連結用雄ねじ部35を筒体7の前板47の開口部68内面の雌ねじに螺着することによってなされる。
【0047】
この注入ノズル1では、中空孔15に挿入されたバルブピン11の基体41は中空孔15内の接続孔19よりも後方に配置され、この基体41の外周面が中空孔15の内周面と密接している。一方、バルブピン11のピン体8の外面と中空孔15の内面との間には隙間が形成され、この隙間によって注入路2が構成されている。これにより、冷媒通路23aを有する筒体7が注入路2の外側を囲むように配されると共に、冷媒通路23bを有するバルブピン11が注入路2の内側に配される。注入路2の後端は接続孔19を介して樹脂導入孔32に連通し、注入路2の前端は先端チップ14の通孔25を介して吐出口28に連通している。
【0048】
また、バルブピン11はシリンダ50によって中空孔15内を進退駆動することで、吐出口28を開閉する。すなわち、バルブピン11が後退すると、図2に示すようにバルブピン11の先端の当接面81が弁座26から後方に離間して吐出口28が開放され、注入路2が吐出口28を介して外部に連通する。一方、バルブピン11が前進すると、図1に示すようにバルブピン11の先端の当接面81が弁座26に当接し、このバルブピン11によって吐出口28が閉塞される。
【0049】
この注入ノズル1を用いた熱硬化性樹脂6の注型成形について説明する。
【0050】
図8は、熱硬化性樹脂6の注型成形法の一例を示し、図9は金型の要部の構成を示す。金型4、注入タンク56及び注入ホース57の構成は、上記背景技術の欄で説明されているものと同一であるため、説明を省略する。
【0051】
注入ノズル1には注入ホース57を接続することで、注入ホース57が注入ノズル1の樹脂導入孔32、接続孔19を介して、注入路2に連通するようにする。注入ノズル1と注入ホース57との接続にあたっては、例えば図10に示す従来技術と同様に、注入ホース57に装着された締結具58の前端面と注入ノズル1の締結部33の端面とを突き合わせ、この締結具58と締結部33とをクランプバンド59等によって締結することで、注入ノズル1の締結部33に締結具58を介して注入ホース57を接続することができる。
【0052】
図7にこの注入ノズル1を用いた注型成形の工程の一例を示す。尚、図7では金型4及び注入ノズル1の構造は簡略化して示されている。
【0053】
まず図7(a)に示すように注入ノズル1の装着部21を、上型60と下型61とで構成される金型4の注入口70内に挿入すると共に、雌ねじ部63に注入ノズル1の装着用雄ねじ部34を螺着することで、注入ノズル1が金型4に取り付けられ、この注入ノズル1及び注入ホース57を介して、金型4内のキャビティ5と注入タンク56とが接続される。
【0054】
また、この注入ノズル1の各冷媒供給孔29a,29bには冷媒供給用の配管83,83をそれぞれ接続すると共に各冷媒導出孔30a,30bには冷媒導出用の配管84,84をそれぞれ接続しておく。冷媒は水等の適宜のものが使用される。
【0055】
まず、注入ノズル1のバルブピン11は後退させておき、吐出口28を開放しておく(図2参照)。
【0056】
この状態で、注入タンク56内の熱硬化性樹脂6にエア圧をかけると、図7(b)に示すように熱硬化性樹脂6が注入ホース57及び注入ノズル1を介して金型4内のキャビティ5に注入され、充填される。注入ノズル1内では、熱硬化性樹脂6は樹脂導入孔32、接続孔19を介して、注入路2に供給され、この注入路2から吐出口28を介して金型4内のキャビティ5に注入される。この間、キャビティ5内の空気は上型60に形成された空気抜き孔64から外部に放出されることで、キャビティ5内に熱硬化性樹脂6が充分に充填される。
【0057】
キャビティ5への熱硬化性樹脂6の充填が終了したら、図7(c)に示すようにバルブピン11を前進駆動させて吐出口28を閉塞する(図1参照)。注入ノズル1の注入路2内には、金型4へ注入されなかった熱硬化性樹脂6が残存する。続いて、キャビティ5に充填された熱硬化性樹脂6をヒータ65により加熱して熱硬化する。
【0058】
金型4内で熱硬化性樹脂6が加熱される際、配管83,83を通じて、筒体7とバルブピンユニット80にそれぞれ設けられた冷媒供給孔29a,29bへ水等の冷媒を供給する。この冷媒は、この注型成形の工程の当初から供給されていても良い。筒体7の冷媒供給孔29aに供給された冷媒は、注入路2の周囲を囲む筒体7内の冷媒通路23aを流通した後、冷媒導出孔30aから配管84を通じて外部へ導出される。これにより注入路2の外周を囲むように配された筒体7が冷媒によって冷却され、更に注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制される。またバルブピンユニット80の冷媒供給孔29bに供給された冷媒はバルブピン11内の冷媒通路23bを流通した後、冷媒導出孔30bから配管84を通じて外部へ導出される。これにより注入路2の内側に配されたバルブピン11が冷却され、更に注入路2内の熱硬化性樹脂6が冷却されてこの熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制される。更に、このように前記二種類の冷媒通路23a,23bに冷媒が流通することで、注入路2内の熱硬化性樹脂6は外側と内側の両方から冷却されて、温度上昇が効果的に抑制される。
【0059】
また、この注入ノズル1は、その先端部が金属よりも断熱性の高い材質で形成されているため、キャビティ5内の熱硬化性樹脂6から注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6への熱の伝達が抑制され、これにより注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6の温度上昇が更に効果的に抑制される。すなわち、筒体7の先端部には金属よりも断熱性の高い材質で形成された先端チップ14が取着されているので、キャビティ5内の熱硬化性樹脂6から前記先端チップ14を介した筒体7への熱の伝達が抑制されて、筒体7の温度上昇が抑制され、注入路2内の熱硬化性樹脂6の温度上昇も抑制される。またバルブピン11のピン体8の先端には金属よりも断熱性の高い材質で形成された断熱部材9が取着されているので、キャビティ5内の熱硬化性樹脂6から前記断熱部材9を介したピン体8への熱の伝達が抑制されて、バルブピン11の温度上昇が抑制され、注入路2内の熱硬化性樹脂6の温度上昇も抑制される。更に、ピン体8と断熱部材9との間には既述の通り空気層10が形成されているため、この空気層10によっても熱の伝達が抑制され、バルブピン11の温度上昇が更に抑制される。
【0060】
注入ノズル1に供給される水等の冷媒の温度は、金型4の加熱条件や熱硬化性樹脂6の硬化温度等に応じ、注入ノズル1内の熱硬化性樹脂6の硬化が充分に抑制されるように適宜設定されるが、例えば加熱前の金型4の温度が50℃、加熱時の金型4の温度が90℃の場合に、冷媒の温度を15〜30℃の範囲とすることができる。
【0061】
このように注入ノズル1内に残存する熱硬化性樹脂6の温度上昇が抑制されるため、この熱硬化性樹脂6の熱硬化が防止され、注入ノズル1に詰まりが生じることが抑制される。また、この注入ノズル1を洗浄する際は、前記のように注入ノズル1の詰まりが抑制されているので、注入ノズル1の洗浄が容易となる。
【0062】
尚、本実施形態におけるバルブピン部38は上述のとおり図5に示す構成を有するが、バルブピン部38が図6に示す構成を有する場合には、ピン体8に拡径部82が形成されているため、この拡径部82よりも後端側においてピン体8の外径を小さくすることで、注入路2の断面積を大きくすることができる。このため、注入路2を流通する熱硬化性樹脂6の流量を増大させることが容易になり、注型成形時の熱硬化性樹脂6の注入効率が向上する。また、注入路2の断面積を大きくしつつ注入ノズル1の小型化を図ることが可能となり、注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却する際にキャビティ5内の熱硬化性樹脂6まで冷却されて成形不良が発生してしまうようなことを防止することもできる。
【0063】
また、本実施形態では、冷却手段3を冷媒通路23a,23bで構成しているが、筒体7やバルブピン11を冷却することにより注入路2内の熱硬化性樹脂6を冷却することが可能であれば、冷却手段3の機構は特に限定されない。また本実施形態では筒体7を冷却する冷却手段3とバルブピン11を冷却する冷却手段3の両方が設けられているが、筒体7とバルブピン11のうちいずれか一方を冷却する冷却手段3が設けられていても良い。
【0064】
この注入ノズル1の洗浄について説明する。熱硬化性樹脂6の注型成形後、注入ノズル1の装着用雄ねじ部34とブッシュ62の雌ねじ部63との螺合を解除することで金型4から注入ノズル1を取り外すと共に、注入ホース57と注入ノズル1の連結を解除する。この注入ノズル1の筒体7とバルブピンユニット80との連結を解除して筒体7の中空孔15からバルブピン11を引き抜く。この筒体7を適宜の溶剤中に浸漬するなどして中空孔15内の熱硬化性樹脂6を除去する。このとき筒体7内に残存する熱硬化性樹脂6の熱硬化が抑制されているために、この熱硬化性樹脂6を容易に除去することができる。また、バルブピンユニット80のバルブピン部38とシリンダ部39との連結を解除し、バルブピン部38を適宜の溶剤中に浸漬するなどしてバルブピン11の外表面に付着している熱硬化性樹脂6を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の実施の形態の動作を示す断面図である。
【図3】同上の実施の形態における筒体の構造を示す断面図である。
【図4】同上の実施の形態におけるバルブピンユニットの構造を示す断面図である。
【図5】同上の実施の形態におけるバルブピン部の構造を示す断面図である。
【図6】バルブピン部の構造の他例を示す断面図である。
【図7】同上の実施の形態の一例における注入ノズルを使用した注型成形の工程の一例を示すものであり、(a)乃至(c)は概略の断面図である。
【図8】注型成形方法の一例を示す概略図である。
【図9】同上の注型成形方法における金型の構成を示す一部の断面図である。
【図10】従来技術の一例を示す断面図である。
【図11】同上の従来技術の一例における注入ノズルを使用した注型成形の工程の一例を示すものであり、(a)乃至(c)は概略の断面図である。
【図12】同上の従来技術の一例における注入ノズルの洗浄方法の一例を示すものであり、(a)は断面図、(b)は斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 注入ノズル
2 注入路
3 冷却手段
4 金型
5 キャビティ
6 熱硬化性樹脂
7 筒体
8 ピン体
9 断熱部材
10 空気層
11 バルブピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を注型成形するための金型に装着され、前記金型内のキャビティに連通して前記キャビティへ熱硬化性樹脂を注入するための注入ノズルであって、
前記キャビティに連通する熱硬化性樹脂の流路である注入路と、この注入路内の熱硬化性樹脂を冷却するための冷却手段とを備えることを特徴とする注入ノズル。
【請求項2】
上記注入路の外周側に配される筒体を具備し、上記冷却手段として前記筒体を冷却するものを備えることを特徴とする請求項1に記載の注入ノズル。
【請求項3】
上記注入路の内側に配されるバルブピンを備え、上記冷却手段として前記バルブピンを冷却するものを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の注入ノズル。
【請求項4】
上記注入ノズルの先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の注入ノズル。
【請求項5】
上記注入路の内側に配されるバルブピンを備え、このバルブピンの先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の注入ノズル。
【請求項6】
上記バルブピンが、ピン体と、このピン体の先端部に取着され金属よりも断熱性の高い材質で形成された断熱部材とを備え、前記ピン体と断熱部材との間に空気層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の注入ノズル。
【請求項1】
熱硬化性樹脂を注型成形するための金型に装着され、前記金型内のキャビティに連通して前記キャビティへ熱硬化性樹脂を注入するための注入ノズルであって、
前記キャビティに連通する熱硬化性樹脂の流路である注入路と、この注入路内の熱硬化性樹脂を冷却するための冷却手段とを備えることを特徴とする注入ノズル。
【請求項2】
上記注入路の外周側に配される筒体を具備し、上記冷却手段として前記筒体を冷却するものを備えることを特徴とする請求項1に記載の注入ノズル。
【請求項3】
上記注入路の内側に配されるバルブピンを備え、上記冷却手段として前記バルブピンを冷却するものを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の注入ノズル。
【請求項4】
上記注入ノズルの先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の注入ノズル。
【請求項5】
上記注入路の内側に配されるバルブピンを備え、このバルブピンの先端部が、金属よりも断熱性の高い材質で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の注入ノズル。
【請求項6】
上記バルブピンが、ピン体と、このピン体の先端部に取着され金属よりも断熱性の高い材質で形成された断熱部材とを備え、前記ピン体と断熱部材との間に空気層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の注入ノズル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−52192(P2010−52192A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217370(P2008−217370)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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