説明

注入及び成形可能な骨誘導性セラミック材料

表面微細孔を有する多孔性リン酸カルシウムと、水を含まないキャリアとを含む注入及び成形可能なセラミック材料が開示され、前記キャリアは生理学的環境下で分解するように選ばれる。キャリアは、人体への(例えば注入又は移植による)配置後に溶解、解離、又は他に分解するキャリアの特性を示す。表面微細孔を有するリン酸カルシウムに組み合わされた水を含まないポリマー又はポリマーブレンドを選ぶことによって、表面微細孔による好ましい骨誘導特性が長期の寿命にわたって保持されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物活性のセラミック材料、特にリン酸カルシウムを示し、好ましくは、とりわけそれらの表面微細構造、及び特にそれらの表面微細孔に基づいた骨誘導特性を明らかにする。この特定の種類のリン酸カルシウムを以下では、表面微細構造、特に表面微細孔を有するリン酸カルシウムと呼ぶ。本発明は、好ましくは注入及び/又は成形可能な骨誘導性セラミック材料を好ましくは示す。
【背景技術】
【0002】
好ましくは骨誘導性であるセラミック材料の発展は、骨の欠損を治療する医学の分野での重要な進歩である。摘出できる自己骨は珍しいため、これは患者自身の骨から自己骨を摘出する必要性を最小限にする助けとなる。骨誘導性材料は、新しい骨組織の成長を誘導することが出来る。通常このような骨誘導は、間葉組織がその細胞構造体から造骨に変化するよう誘導される機構として定義される。
【0003】
多孔性リン酸カルシウムによって示される骨誘導性の背景となる文献は、非特許文献1である。これらの材料は、表面微細孔性を示す多孔性リン酸カルシウムとして特徴付けられることができる。それ以来、山崎らによって開示された材料と比べた大きな進歩として、多孔性リン酸カルシウム材料は改善された骨誘導特性を示すものとして利用可能になった。表面微細構造、特に表面微細孔を有する本発明のリン酸カルシウムは、幅広い範囲の微細孔及び顆粒サイズ、並びに高い全孔隙率を示す。
【0004】
骨誘導性であり表面微細孔を有するリン酸カルシウムの1つの代表的な文献は、特許文献1である。更に改善された骨誘導性であり表面微細孔を有するリン酸カルシウムを対象にした別の代表的な文献は、特許文献2である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6511510号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/94672号
【特許文献3】国際公開第2007/068489号
【特許文献4】国際公開第2003/028779号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山崎ら著、バイオマテリアルズ(Biomaterials)、1992年、第13号、第308−312頁
【非特許文献2】H.ユアン(H.Yuan)ら著、バイオマテリアルズ、1999年、第20号、第1799−1806頁
【非特許文献3】P.ハビボビック(P.Habibovic)ら著、バイオマテリアルズ、2005年、第26号、第3565−3575頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨欠損の治療の別の改善は、骨の形成に貢献する活性を有する材料の、ペースト、ゲル、パテなどの糊のような材料との合体にある。この点に関して背景となる文献は、例えば特許文献3などである。ここでペースト材料は、微粒子の固体多孔性材料とともに、骨の置換又は増強に使用できる母材を形成するために用いられる。微粒子の固体多孔性材料は、リン酸カルシウムであり得る。結果として、細胞、成長因子、又は骨誘導剤などの活性成分が好ましくは提供された、骨成長のためのマクロ孔を有する骨格が得られる。骨を充填するための注入可能な調合(formulation)に対する別の背景となる文献は、特許文献4である。ここでカルシウム塩粒子を含む骨充填剤には、有機バインダー、並びに幹細胞、骨形成原細胞及び骨幹細胞などの細胞が提供される。これらの文献の何れも、それ自体が骨誘導性である多孔性リン酸カルシウムの使用に関連せず、記載されたリン酸カルシウム材料は前述の表面微細構造、特に表面微細孔を有するタイプではない。それどころか、これらの文献に記載されたシステムが前述の種類の骨誘導性であり表面微細孔を有するリン酸カルシウムに使用される場合、特許文献3のペースト材料、特許文献4のバインダーはそれぞれリン酸カルシウムの表面を覆うことになる。材料の表面構造がその目的とする機能のための要点である場合、表面を覆う技術を選ぶことは、明らかに直観と相いれない。本発明に内在する課題は、改善された骨誘導性効果を有し、成形及び/又は注入可能であるという利点を有するリン酸カルシウムを特に含む材料を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面では、本発明は、好ましくは骨誘導性であり、表面微細構造、特に表面微細孔を有する多孔性リン酸カルシウムと、生理学的環境下で分解する、水を含まないポリマー又は水を含まないポリマーブレンドであるキャリアと、を含む生体材料を示す。
【0009】
別の側面では、本発明は、好ましくは骨誘導性であり、表面微細孔を有する多孔性リン酸カルシウムと、キャリアとを含む生体材料を対象とし、前記キャリアは骨成長を開始するための所定の時間内に、特に6週間以内に、生体内で分解する。
【0010】
更なる側面では、本発明は、好ましくは骨誘導性であり、表面微細孔を有する多孔性リン酸カルシウムと、キャリアとを含む生体材料に関し、前記キャリアは37℃の生理学的塩水において好ましくは1週間の溶解時間を有する。
【0011】
更に別の側面では、本発明は、好ましくは骨誘導性であり、表面微細孔を有する多孔性リン酸カルシウムと、水を含まないキャリアとを含む生体材料を示し、前記キャリアは最長1週間の寸法安定時間(Dimensional Stability Life)を有するが、それは人間の体温の環境においてポリマーが実質的に溶解しないか又は解離しない時間である。
【0012】
更なる側面では、本発明は、好ましくは骨誘導性であり表面孔を有する生体材料を、その骨誘導性を保ったまま供給し収容するのを補助するための、上述のような水を含まないキャリアの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】描写された組織部位は、212から300μm(A)、106から212μm(B)、及び45から106μm(C)のBCPサンプルにおける十分な骨形成を示すが、45μmより小さいサンプル(D)では骨が存在しないことを示す図面である(脱灰されていない切片はメチレンブルー及び塩基性フクシンで、骨は赤で、移植された材料は暗色で染められている)。
【図2】全サンプルにおける骨の面積の割合、利用可能な空間における骨の面積の割合、及び異なる粒子サイズを有するBCP粒子のサンプルにおける骨の体積を示す組織形態計測データである。
【図3】P84/F87セラミックパテ、C:P85/PEG4000セラミックパテ、及びTCP粒子のみ(コントロール)で移植された臨界サイズの腸骨の翼状の部位の欠損の、描写された組織部位の断面図である。
【図4a)】12週間の時点での骨誘導性である水を含まないパテ及び注入可能材料を含むイヌ科の大腿骨欠損の、描写された組織部位の断面図であり、骨形成を視覚化するために塩基性フクシン及びメチレンブルーで染められている。大腿骨欠損が、TCP顆粒(黄褐色、黒色)が広域の骨(ピンク)の再生によって囲まれた欠損に保持されたことを示す。
【図4b)】12週間の時点での骨誘導性である水を含まないパテ及び注入可能材料を含むイヌ科の筋肉内移植片の、描写された組織部位の断面図であり、骨形成を視覚化するために塩基性フクシン及びメチレンブルーで染められている。骨誘導性TCP顆粒(150から500μm)を含むCMCGキャリア(A)又はTCP顆粒(150から500μm)のみ(B)の筋肉内移植部位である。CMCG移植(A)による広域な骨形成(ピンク)は、このような水を含まないキャリアを含むTCP顆粒の骨誘導性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[好ましくは骨誘導性である、表面微細構造(微細孔)を有する生体材料]
従来の研究では、筋肉などの異所性であり非骨性である部位において特定の材料が骨形成を誘導できることが示されてきた。材料の表面微細構造がこの骨の誘導(骨誘導)プロセスにおいて重要な役割を担うことが示されてきた。材料に誘導される骨形成に対する現在の仮説では、タンパク質及び成長因子の吸収、それに続く幹細胞又は前駆細胞の移動及び付着並びにそれらの後に続く増殖及び骨形成分化が重要な役割を担うとされる。[非特許文献2;非特許文献3]
【0015】
リン酸カルシウムなどの材料の骨誘導性は、移植前に骨形成細胞又は骨成長因子を追加することなく非骨性部位において異所性の骨形成を材料が誘導する特性として定義される。通常このような骨誘導は、間葉組織がその細胞機能から造骨に変化するよう誘導される機構として定義される。
【0016】
本発明は、好ましくは骨誘導性であり、表面微細構造、特に表面微細孔を有するリン酸カルシウム材料を対象としている。微細孔はここでは、水銀圧入及び走査型電子顕微鏡で決められたサイズが1.5μm未満である孔に関連するものとして定義される。表面微細構造は通常、表面がマイクロスケール、つまり10μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは1.5μm未満の突起部及び/又は刻み目を備えることを示す。
【0017】
表面微細孔を有するリン酸カルシウムを得る1つの方法は、特許文献1で開示される。ここでは(マクロ)孔を有する材料が提供され、マクロ孔の表面に微細孔を作るために酸処理が施される。この材料は全体で20から90%の孔隙率を有し、0.1から1.5mmのサイズを有するマクロ孔が存在し、0.05から20μmのサイズを有する微細孔が存在する。
【0018】
好ましくは、セラミック材料はリン酸カルシウムである。好ましいリン酸カルシウムは、リン酸オクタカルシウム、水酸化アパタイト又は炭酸アパタイトなどのアパタイト、[アルファ]−リン酸三カルシウム及び[ベータ]−リン酸三カルシウムなどのウイトロカイト、並びにそれらの組み合わせである。
【0019】
好ましくは骨誘導性であるこれらのセラミック材料の重要な側面は、特に生体材料である材料の物理的構造である。材料はマクロ孔と微細孔の両方を含む。全孔隙率は20から90%に及び、好ましくは40から80%であり、最も好ましくは50から80%である。材料のマクロ孔は0.1から1.5mmのサイズを有する;好ましくは、マクロ孔のサイズは0.2から1mmである。マクロ孔のサイズは、特にマクロ孔が相互接続されている場合、例えば材料の骨誘導特性に対して著しく有益な影響を与える。
【0020】
材料の微細孔は0.05から20μmのサイズを有する。微細孔のサイズの好ましい範囲は0.1から10μm、0.1から3μm、又は0.1から5μmであり、好ましくは0.1から1.5μmである。好ましくは、微細孔は少なくともマクロ孔内に位置する。この実施形態によると、骨組織の形成は高く促進される。代わりに、微細孔は少なくともマクロ孔の表面に存在する。
【0021】
材料表面の微細孔率は、好ましくは20から60%の間、好ましくは30から50%の間である。特許文献1によると、生体材料は好ましくは結晶から成る。好ましくは、結晶のサイズは微細孔のサイズと同様であるが、それはこれが生体材料の好ましい多くの微細なしわをもたらすからである。故に、結晶のサイズは好ましくは0.05から20μmの間であり、より好ましくは0.1から10μm、0.1から3μm、又は0.1から5μm、最も好ましくは0.1から1.5μmの間である。
【0022】
表面微細孔を有するリン酸カルシウムを得る別の好ましい方法が、特許文献2に開示される。これは、好ましくは骨誘導性であり、0.1から1.5μmの平均粒子サイズを有し、孔が0.1から1.50μmの範囲のサイズの微細孔を含み、10から40%の範囲の微細孔の表面積割合を有する多孔性リン酸カルシウム材料を示す。微細孔の表面積割合は、好ましくは40%未満、より好ましくは1から30%又は1から20%、最も好ましくは10から25%に及ぶ。
【0023】
本発明の多孔性リン酸カルシウムは、好ましくは少なくとも40%、好ましくは40から100%、50から100%、60から100%、70から100%、80から100%又は90から100%のタンパク質吸収容量を有する。吸収容量は、37℃で24時間経過した後、25ppmのアジ化ナトリウム(NaN)の存在下での体積3mlのウシ胎仔血清(FBS)の1%水溶液から、体積1.0mlの前記リン酸カルシウムによって吸収されたタンパク質の割合として表される。
【0024】
好ましい実施形態では、多孔性リン酸カルシウム材料の孔は、本質的に特定のサイズ範囲にある微細孔のみから成り、マクロ孔は存在しない。
【0025】
本発明では、表面微細構造、特に表面微細孔を有するリン酸カルシウムはキャリアと混合できる。この目的を達成するために、リン酸カルシウムは通常不規則に又は規則的に形作られた粒子状物質、好ましくは顆粒又は粉末の形態であり、例えば非晶質又は立方体、直並行六面体、球体若しくは円柱などの単純な幾何学的角柱である。
【0026】
本発明で使用されるような、好ましくは骨誘導性である多孔性リン酸カルシウムは、好ましくは略45から略1500μm、より好ましくは略200から略300μm、最も好ましくは45から106μm、106から212μm、又は212から300μmに及ぶ粒子サイズを有する微粒子の形態である。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態では、リン酸カルシウム粉末はTCP又はBCPである。BCPはTCP及びHAの混合物であり、HAは混合物の0%より大きく100%より小さい範囲を構成し、最も好ましくは45μmより大きい顆粒を有する。
【0028】
本発明の更なる別の好ましい実施形態では、焼結されたリン酸カルシウムを粉砕した後に集められた微粒子は、続いて例えばアセトン、エタノール及び/又は水で超音波などによって洗浄され、随意に乾燥され殺菌される。
【0029】
本発明の更に好ましい実施形態では、リン酸カルシウム粉末は不規則な形状の粒子を有する、オーブンで乾燥され粉砕された粉末である。
【0030】
最適な骨誘導特性を得る目的で、リン酸カルシウムは好ましくは少なくとも45μmの粒子サイズを有する。粒子サイズの好ましい上限は4000μmであるが、より大きな粒子サイズは排除されず、医療従事者にとって扱い易いという点で有利である。粒子サイズは、45から1000μm、45から500μm、より好ましくは45から300μm、45から150μm、150から1000μm、150から500μm、500から1000μm、1000から2000μm、1000から4000μm、及びそれらの混合物から成る群からより好ましくは選ばれる。好ましい実施形態では、示された任意の粒子サイズを有するリン酸カルシウムが、本発明の成形及び/又は注入可能な調剤、つまり任意の注入可能材料又はパテの準備に使用される。
【0031】
本発明で開示したように、リン酸カルシウム粒子及び水を含まないキャリアの組み合わせによって作られたが、結果として生じる好ましくは骨誘導性であるセラミック材料は、好ましくはパテ又は注入可能材料の形態である。パテは手又は手術器具によって手術部位に適用されるが、成形、打ち延ばし、及び/又は混練可能であるという取扱い特性を具体化する。注入可能材料は流動性があり、標準又は特注のシリンジノズルを通して、手動力又は機械的な分注装置(例えばコーキングガンなど)の助けとともに押し出すことができ、押出においてもまた成形可能であり得る。
【0032】
好ましくは、本発明の注入可能なセラミック材料を押し出すのに必要な力は、100N未満である。一般論として、パテは最適な成形性をもたらす高い剛性によって特徴付けられ、一方、注入可能材料は標準又は特注のシリンジによる最適な押出をもたらす低い剛性及び流動性を特徴とする。
【0033】
[水を含まないキャリア]
水を含まないキャリアは、活性成分を物理的に保持する例えばペースト、ゲル、粉末又は顆粒などの任意の分子形態のバインダーとして定義される。本発明の水を含まないキャリアの使用は、最適化された取扱い性、及び治療部位への活性成分の適用を可能にする。例えば、好ましくは骨誘導性である本発明のセラミック材料は、セラミック粒子を含む水を含まないキャリアの流動性のある特性により、低侵襲治療の間に注入できる。別の例では、好ましくは骨誘導性である本発明のセラミック材料は、水を含まないキャリアによって与えられた成形及び打ち延ばしが可能であるという特徴により、複雑な形状の欠損に適合し治療部位における活性成分の長期間にわたる保持を可能にする成形可能なパテである。
【0034】
本発明の水を含まないキャリアは、好ましくは骨誘導性であるセラミック粒子の表面微細構造を良好に保つために、含水性キャリア(例えば、カルボキシメチルセルロース水性ゲルを含む、スミス&ネフュー(Smith&Nephew)のジャックスボーンボイドフィラー(JAX Bone Void Filler)(登録商標))に対して好ましい。リン酸カルシウムセラミックの結晶構造の性質及び化学的性質は、水性環境下での分解の影響を受けやすくする。故に、含水性リン酸カルシウム材料は制限された寿命を示すか、又は不便なことに移植前に手術部位において再構築若しくは混合される必要がある。
【0035】
更に、本願のようにリン酸カルシウムが微細構造を有する場合、この分解は骨誘導性などのその所望の効果に悪影響を及ぼし得る。それ故に、このような微細構造を有するセラミック材料の寿命を引き延ばすために、水を含まないキャリアはリン酸カルシウム粒子を含み貯蔵することが好ましい。更に水を含まないキャリアは、好ましくは骨誘導性であるセラミック材料を移植前の再構築又は成分混合なしにすぐに使える、という利便性を可能にするため好ましい。
【0036】
好ましくは骨誘導性である、含まれるリン酸カルシウム粒子の表面微細構造を最も都合良く移植環境にさらすことができ、それ故に移植後に早急に骨誘導性反応に影響を及ぼすことができるように、水を含まないキャリアが速い溶解時間を有することがまた好ましい。
【0037】
水を含まないキャリアは、
(i)例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、糖類、好ましくは単糖類及び/又はデキストラン、キサンタンなどの多糖類、ポリビニルアルコール及びグリセロールなどのポリオール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポロキサマー(poloxamer)、乳化剤、可溶化剤、界面活性剤(例えばソリュートル(Solutol)(登録商標) HS 15)などの他の合成ポリマー、及びそれらの混合物をベースとするポリマーなどの有機成分
(ii)例えばシリコンベースのゲル、リン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム及び/又はそれらの混合物などの無機成分
及び/又は
(iii)例えばグリセロールに分散されたキサンタン;グリセロールに分散されたカルボキシメチルセルロース(CMC);ポロキサマーと組み合わされたソリュートル(登録商標) HS 15、非イオン性界面活性剤、乳化剤、及びヒドロキシステアリン酸をベースとした可溶化剤;グリセロールに分散されたデキストラン、キサンタン及び/又はでんぷん;グリセロール及びPEG400に分散されたCMC;若しくは実施例4から6に記載された他の調合など、それらの混合物
を含む。好ましい実施形態では、水を含まないキャリアは、相溶性のある含水性キャリア、つまり例えば特に水及び/又は生理学的塩水などの生理的に受け入れ可能な溶媒を有するポリマーゲルなどの水性ポリマーより顕著に長い例えば骨誘導性粒子などの含有物の寿命を提供する水を含まないポリマー又は水を含まないポリマーブレンドである。上述のように、水を含まないキャリアはリン酸カルシウム粒子に対するバインダーとして働き、故に本発明のリン酸カルシウム材料の対象者への投与(例えば注入又は移植など)の際に存在する。キャリアは、リン酸カルシウム材料が骨誘導性などのその特徴的な性質を保持できるように選ばれる。
【0038】
好ましい実施形態では、骨誘導性のような特徴的な性質は、
(i)微細構造が、例えば水を含まないキャリアを有する骨誘導性粒子などの粒子を前もってパックすることによって保存される場合、
(ii)水を含まないキャリアが、例えば骨形成が起こる前に溶解するか又は分解する、グリセロールに懸濁されたキサンタン、デキストラン及びでんぷん;グリセロールに懸濁されたキサンタン、デキストラン及びソリュートル(登録商標)HS 15;グリセロールに懸濁されたCMC;PEG400及びグリセロールに懸濁されたCMC;ポロキサマーF88に懸濁された大豆レシチン;ソリュートル(登録商標)HS 15と混合されたポロキサマーF127;又は実施例4から6に記載された他の水を含まないキャリア;から成る群から好ましくは選ばれる場合、に好ましくは保持される。分解とは、(例えば、注入又は手作業での移植による)人体への配置後に、水を含まないキャリアを任意の可能な方法で溶解、解離、又は他の方法で崩れる(fall apart)特性を意味する。ここで溶解とは、水溶液中(つまり生理学的塩水又は血液)においてポリマー分子を解すこと及び分離することによって定義され、時間に対して視覚的に評価される。例えば表面微細孔を有する骨誘導性材料に対して特異的な水を含まないキャリアは、例えば前述の特許文献4などの従来技術に前例がない。必要条件は、ここで使用される有機バインダーが、例えば生きている骨の機能を引き継ぐほど十分に骨形成が起こるまで消えない、つまり溶解するか又は解離されることである。
【0039】
それ故に本質的に、水を含まないキャリアは、好ましくは骨誘導性であり表面微細孔を有する材料の投与(注入又は移植による体内への導入)において運搬手段としての役割を果たすが、その後、溶解又は他のモードの分解による解離が原因で、例えばインサイチュでの能動的な骨形成などを可能にする。
【0040】
この点に関して、本発明はまた、骨成長を必要としている対象者の体に好ましくは骨誘導性である材料を注入することによって対象者における骨成長を促進する方法に関し、その材料は生体適合性の水を含まないキャリアに組み合わされ、水を含まないキャリアは対象者の体への導入後、及び材料の骨形成の発現前に溶解又は解離を開始する加工助剤である。より具体的には、ここでの水を含まないキャリアは、骨形成の完了前、及び好ましくは骨形成の発現前に実質的に溶解されるか又は解離される。後者は、好ましくは骨誘導性である存在している材料の表面微細孔からの恩恵を十分に受け取る。
【0041】
好ましい水を含まないキャリアは、以下の種類:
−炭水化物:例えば、単糖類、セルロース化合物(例えばCMC、ヒドロキシエチルセルロースなど)、アルギン酸塩、キトサン、デキストラン、グアー、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、フルクトース、ペクチン、でんぷん、キサンタン、キシラン、マンナン、及びそれらの混合物などの糖類など
−タンパク質、ペプチド又はポリペプチド:例えば、フィブリン、ゼラチン、コラーゲン及びそれらの混合物など
−脂質:例えば、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質、大豆レシチン、及びそれらの混合物など
−ポリオール:例えば、グリセロール、プロピレングリコール(1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール)、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びその混合物など
−合成有機ポリマー:例えば、ポリエチレングリコール(PEG、ポリエチレンオキシドPEOとも名付けられる)、及び/又はポロキサマー(例えば、P65、P84、P85、F87、F88、F98(ビーエーエスエフ(BASF)ベネルクスなど)及びF127(シグマ(Sigma)など)のようなプルロニック(Pluronic)(登録商標))、界面活性剤及び乳化剤(例えば、ソリュートル(登録商標)HS 15など)、ワックス、及びそれらの混合物など
−無機物ペースト:水硬性のリン酸カルシウムのセメント、硫酸カルシウムの石膏、及びそれらの混合物など
並びに、キサンタン、デキストラン、でんぷん及びグリセロール(XDS);CMC、PEG4k、PEG400及びグリセロール(CMC/PEG);大豆レシチン及びF88(SLF88);キサンタン、デキストラン及びソリュートル(登録商標)HS 15(XDHS);CMC及びグリセロール(CMCG);キサンタン及びグリセロール(XG);及びソリュートル(登録商標)HS 15及びF127(HSF);などのこれらの水を含まないキャリアの混合物から選ばれる。
【0042】
適時に消えるために、キャリアは人間の体温(37℃)において水への適切な溶解性を有することによって分解され、且つ好ましくは溶解され、又は任意の他の生物学的な方法によって解離される。本発明の水を含まないキャリアは、好ましくは人間の体温(37℃)において生理学的緩衝液(例えば、リン酸緩衝液PBSなど)に溶解する。
【0043】
好ましい水を含まないキャリアは、以下の特性によって特徴付けられる:第一側面において、水を含まないキャリアは、生体内で1週間未満の溶解時間を有するように選ばれ、それは好ましくは3日未満、より好ましくは1日未満であり、好ましくは10から100%、10から90%、10から80%、10から70%、10から60%、10から50%、より好ましくは50%、60%、70%、80%、90%又は100%が溶解される。より好ましくは、この溶解時間は12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、又は30分未満である。好ましい実施形態では、キャリアのうち10から100%、10から90%、10から80%、10から70%、10から60%、10から50%、より好ましくは50%、60%、70%、80%、90%又は100%が溶解時間で溶解される。
【0044】
溶解速度に関して、外科手術の間、外科医が材料を形作るか又は注入し、且つ粒子が分散するリスクなしに傷を縫合できる最短の溶解時間を、水を含まないキャリアが有する場合が好ましい。その後、溶解が速いほど骨形成には都合が良い。グリセロール、ポリキサマー、ポリエチレングリコール、CMC、キサンタン及び/又はソリュートル(登録商標)HS 15をベースとした水を含まないキャリアが、この点において好ましい。この点において、少なくとも1時間で生体内において溶解が開始することが好ましい。全体で、キャリアのうち10から100%、10から90%、10から80%、10から70%、10から60%、10から50%、より好ましくは50%、60%、70%、80%、90%又は100%が溶解される場合、溶解開始が1から3時間内に起こり、溶解の完了が3時間から1日(24時間)以内、好ましくは6から12時間以内に起こることが好ましい。
【0045】
キャリアは水を含まないように選ばれるため、骨誘導性粒子の微細構造面は、表面特性の変化、故に骨誘導性などの特徴的な性質の変化をもたらし得る滞在的な溶解/沈殿現象を有しない。一般的に、例えば骨誘導性などの特徴的な性質が保持されるようにキャリアが水を含まないことが好ましい。故に、水を含まないキャリアの使用は、他の任意のタイプのキャリアに比べて、好ましくは骨誘導性である事前に混合されたパテの寿命を長くすることができる。
【0046】
別の側面では、好ましくは骨誘導性であるリン酸カルシウム粒子に組み合わされた場合に、37℃のリン酸緩衝液(PBS)又は生理学的塩水における標準測定で、1週間以内、好ましくは3日以内、より好ましくは1日以内、最も好ましくは1から12時間以内の完全な溶解時間を有するように、水を含まないキャリアは選ばれる。本発明による標準測定は、任意の体積(1.0cc)を有するシリンダーで行われ、その中で好ましくは骨誘導性である粒子は、水を含まないキャリアに対するリン酸カルシウム粒子が任意の比率で分散される。このテストにおいて、溶解開始はバルク形状の変化によって分かるため、溶解開始はシリンダーの目視検査によって観察される。このテストで定義付けられたような完全な溶解は、リン酸カルシウム粒子の全体積が、認識できるバルク形状又は組織、つまり自由なリン酸カルシウム粒子の平坦層なしに溶液内で自由に分散しているように視覚的に観察される場合に生じる。
【0047】
本発明によると、溶解は外科的な投与の後、0.5から6時間、好ましくは1から6時間、最も好ましくは1から3時間以内に始まり、1から24時間、3から24時間、又は6から24時間以内、好ましくは1から12、3から12、6から12時間、より好ましくは1から8、2から8、3から8又は6から8時間以内に完了することが好ましい。
【0048】
例えば生理学的に受け入れられる流体、好ましくは水、塩水又はPBSなどの緩衝液における好ましくは骨誘導性であるパテの溶解時間は、好ましくは1から720分、1から180分、1から120分、1から100分、1から60分、5から60分、10から60分、20から60分、又は30から60分であり、溶解時間は緩衝液への浸水後、好ましくは7200分未満、180分未満、120分未満、100分未満、60分未満、30分未満、又は5分未満である。
【0049】
更に別の側面では、最長1週間、好ましくは最長3日、より好ましくは最長1日の寸法安定時間(DSL)を有するようにキャリアが選ばれる。DSLは、人間の体温の環境においてポリマーが実質的に溶解しないか又は解離されない間の時間を意味し、上述と同一の標準シリンダーの同一の目視検査によって決定される。評価は、シリンダーから解離される粒子の程度ではなくシリンダーの寸法を検査する点で異なる。DSLは前述の溶解開始と好ましくは類似であり、故に人間の体温の環境への配置後に最長1から24、1から12、1から6時間、好ましくは最長1から3時間である溶解時間を有するDSLが好ましい。
【0050】
前述の値を良好に得ることが出来る好ましい水を含まないキャリアは、(i)多糖類(例えばデキストラン、キサンタン、でんぷん、ペクチン、CMCなど)、(ii)脂質(例えば大豆レシチンなど)、(iii)ポリオール(例えばグリセロールなど)、(iv)PEG(例えばPEG300、PEG400、PEG1000、PEG4000又はPEG20000など)、(v)ポロキサマー(例えばP237、P238、P288、P407、P185、P234、P235、P65、P84、P85、F87、F88、F98、F127など)、(vi)界面活性剤及び/又は乳化剤(例えばソリュートル(登録商標)HS 15など)、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明の水を含まないキャリアは、リン酸カルシウム粒子と組み合わされるとき、チューイングガムと同様の凝集性、適度な粘着性、及び適度な堅さとして説明される取扱い特性を有する。好ましい実施形態では、リン酸カルシウム粒子を含む水を含まないキャリアは、外科用手袋に過剰な残渣又は粘性を与えることなしに、取り扱われ、形作られ、操作されることができる。別の好ましい実施形態では、リン酸カルシウム粒子と組み合わされた水を含まないキャリアは、標準シリンジを用いて注入できる。好ましい実施形態では、リン酸カルシウム粒子と組み合わされた水を含まないキャリアは、適用できる外科での治療において典型的である塩水又は水での外科的洗浄に耐えることができる。機能的に、これらの水を含まないキャリアは、(i)形成、打ち延ばし、混練、成形及び/又は注入できる、つまり圧縮圧力下で変形するか、若しくは流れることができる、(ii)物理的に粒子と結合し、周囲の骨に接着できるように十分な凝集性及び粘性がある、及び(iii)水溶解性であり37℃で素早く分解するが、典型的な外科的洗浄に対して一時的な耐久性がある、という利点を提供する。単独若しくは好ましくは骨誘導性である多孔性リン酸カルシウムと組み合わされた、本発明の水を含まないキャリア又は水を含まないキャリアの組み合わせは、それらの“調節可能な”化学組成に基づいたこれらの有利な取扱い特性を示す。具体的に、本発明の水を含まないキャリアは、含有された化学成分の比率、硬化時間、及び/又は硬化温度を変えることによって、理想的に成形可能であるか、又は理想的に注入可能であるように作られることができる。例えば、グリセロールに懸濁された1%(w/v)のCMCは注入可能材料として使用される一方、グリセロールに懸濁された15%(w/v)のCMCはパテとして使用される;更に、グリセロールに懸濁され、80℃で45分間硬化された2%(w/v)のキサンタンは注入可能材料として使用される一方、98.5℃で1.5時間硬化された同一調合はパテとして使用される。
【0052】
[製造]
好ましくは骨誘導性であり表面微細孔を有するリン酸カルシウム材料は、例えば前述の参考文献:特許文献1及び特許文献2に従って調製されることができる。故に1つの方法は、上述のような好ましくは骨誘導性である生体材料が得られるような条件下でセラミック材料を焼結する段階を含む。セラミック材料は、焼結段階の前は焼成された状態である。焼結は好ましくは1000から1275℃の間の温度で実施され、有機酸の水溶液で処理され、酸を除去するために洗浄される。より好ましくは、焼結は1150から1250℃の間の温度で実施される。焼結段階の持続時間は、6から10時間、好ましくは7から9時間の間で適切に選ばれることができる。セラミック材料がセラミック材料の粉末に沈んでいる間に焼結を実施することが有利であることが更に分かっている。これは材料表面の反応性、それ故に例えば溶解、再沈殿などに基づいた生物活性にも有益な影響を与える。焼結の後、表面の化学的な不純物を除去するために、材料は好ましくはSi−C研磨紙などの研磨紙で研磨される。続いて、材料は酸水溶液で処理される。この点において適切な酸は、任意のエッチング酸、つまりリン酸カルシウムベースの材料の僅かな溶解をもたらす任意の酸である。例えばマレイン酸、塩酸、リン酸、及びそれらの組み合わせなどの酸の使用は、非常に好ましい結果をもたらすことが分かっている。溶液中の酸濃度は、溶液のpHが0から4の間、より好ましくは1から3の間になるように好ましくは選ばれる。好ましくは3から15分間続く酸処理の後、セラミック材料は酸を除去するために洗浄される。洗浄は、エタノール、水、又はそれらの組み合わせを用いて、適切に行われることができる。
【0053】
好ましい方法では、セラミック材料は、好ましくは骨誘導性であり、1.0から8.0μm、好ましくは2.0から4.0μmの粒子サイズを有するリン酸カルシウム粉末と、発泡剤と、随意に細孔形成(porogenic)剤との水性スラリーを水中で含む多孔性リン酸カルシウムセラミックを作る;前記スラリーの泡を発生させる条件にスラリーをさらす;多孔性の素地(green body)を提供するために、結果として得られた発泡スラリーを乾燥させ、随意に細孔形成剤を除去し、多孔性の焼結リン酸カルシウムを提供するために1050から1150℃の間の温度で多孔性の素地を焼結する;随意に焼結リン酸カルシウムを粉砕して粒子にし、略40から略1500μmの範囲の粒子サイズを有する粒子を集める方法によって調製される。好ましい実施形態では、注入可能な調合を調製するために、その方法は焼結リン酸カルシウムを粉砕して粒子にする段階を更に含み、その粒子はふるいを用いて集められ、好ましくは45から500μmの微粒子分画を提供するために45から500μmのふるいが用いられ、より好ましくは45から300μmの微粒子分画を提供するために45から300μmのふるいが用いられ、最も好ましくは45から150μmの微粒子分画を提供するために45から150μmのふるいが用いられる。最も好ましくは、微粒子は45から106μm、106から212μm、又は212から300μmのサイズを有する。好ましい実施形態では、成形可能なパテ調合又は注入可能材料を準備するために、その方法は焼結リン酸カルシウムを粉砕して粒子にする段階を更に含み、その粒子はふるいを用いて集められ、好ましくはそれぞれ150から500μm、500から1000μm、及び1000から2000μmの微粒子分画を提供するために、150から500μm、500から1000μm、及び1000から2000μmのふるいが用いられる。
【0054】
本発明の方法の好ましい実施形態では、リン酸カルシウム粉末は0.01から1μm、好ましくは0.05から0.5μmの結晶サイズを有する結晶から成る粉末である。本発明の方法の別の好ましい実施形態では、発泡剤は過酸化水素である。本発明の方法の更に好ましい実施形態では、細孔形成剤はナフタレン粒子を含み、細孔形成剤は80から110℃での蒸発によって除去される。
【0055】
本発明の方法の更に別の好ましい実施形態では、細孔形成剤はワックス粒子を含み、細孔形成剤は、50から70℃で泡立て、続いて980から1020℃で前焼結することによって除去される。本発明の方法の更に別の好ましい実施形態では、前記スラリーの発泡をもたらす前記条件は、スラリーを略50から70℃に加熱する段階を含む。
【0056】
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、乾燥され発泡されたスラリーは、TCPの場合は1050から1100℃、より好ましくは1050から1075℃の温度で焼結され、又はHA及び/又はBCPの場合は1100から1150℃の温度で焼結される。リン酸カルシウム粒子は、好ましくは骨誘導性である材料を作るために、1:10から10:1、好ましくは2:5から5:2の体積比率で、より好ましくは1:2から2:1の間、最も好ましくは3:2から成る比率で、水を含まないキャリアと混合される。好ましい実施形態では、水を含まないキャリアは、水を含まないキャリアのブレンドを含むか、又はそれらから成り、それらは例えば、2つのポロキサマーのブレンド、1つのポロキサマー及びポリエチレングリコールのブレンド、ポリエチレンオキシドポリマー及びグリセロールのブレンド、又はポロキサマー及びグリセロールのブレンドなどである。
【0057】
更に好ましい実施形態(例えば実施例4及び5参照)では、水を含まないキャリアは同一の一般的な手順に従って作られる:
−乾燥粉末成分の質量は質量又は体積によって測定され、室温又は例えば22から98.5℃などのより高い温度で非水性溶媒に完全に混合される。
−PEG、ポロキサマー、又は界面活性剤などの合成ポリマーが溶解され、次いでこの混合物に組み合わされ、完全なキャリア溶液をもたらす。
−キャリア溶液は、98.5℃で加熱されたXDSなどの特定の温度で、例えば45分などの特定の時間、撹拌とともに又は撹拌なしで加熱される。
−キャリア溶液は加熱から外され、撹拌とともに又は撹拌なしで自然に室温まで冷却されるか又は冷凍で急激に冷却される。それらは次いで、組み合わせのために室温で保存される。
【0058】
例えばTCP又はBCPなどのリン酸カルシウム粒子は、含水性キャリアとともに保存されるべきではない。例えばパテ提示物又は注入可能材料などの好ましくは骨誘導性である本発明の材料は、
−適切な容器(シリンジ又は小びん)における、好ましくは骨誘導性である前もって混合されたパテ又は注入可能材料:好ましくは骨誘導性である粒子及び水を含まない水溶性キャリアのブレンド
−好ましくは骨誘導性である乾燥したパテのブレンド又は注入可能材料、1つの容器は水を含まない(つまり凍結乾燥された)粉末形状である水を含まないキャリアに好ましくは骨誘導性である粒子を組み合わせる
として好ましくは調製される。パテ又は注入可能材料は、無菌食塩水若しくは患者の血液、骨髄、又は任意の他の体液を用いて、手術室で再水和される。
【0059】
[使用]
本発明の材料は、動物及び好ましくは人間において骨成長が必要とされる任意の用途で使用することができる。特に本発明は合成骨空隙フィラーとしての使用がある。目的とされる好適な集団は、外傷又は手術によって生じた骨欠損を有する個体である。好ましい解剖場所は:骨格組織、つまり四肢、脊柱、及び骨盤、頭顎顔面の領域における骨空隙又は割れ目である。従って、注入可能材料又はパテは、非耐力骨構造における空隙及び割れ目のための骨空隙フィラーとしての使用を目的としている。それは外科手術で作られた骨欠損、又は骨への外傷から生じた骨欠損の治療に使用されることを目的とする。注入可能材料又はパテは、骨格組織(つまり、四肢、脊柱及び骨盤)における骨空隙又は割れ目の中に詰められることを目的とする。
【0060】
骨誘導性などの存在している表面微細孔を有するリン酸カルシウムの特性に関して、骨成長を促進するために活性物質を添加することは必要ない。例として生物学的活性物質、成長因子及びホルモン、幹細胞、骨形成原細胞、及び骨幹細胞などの細胞を含むような活性物質はすべて使用することができる。
【0061】
本発明は、以下の実施例及び図面を参照して、以下で更に説明される。実施例及び図面は単に例示であり、生体内(in vivo)、生体外(ex vivo)、及び体外(in vitro)での使用による結果を推定することができるが、本発明を限定しない。
【実施例】
【0062】
[実施例1:生体内での注入可能セラミック粒子の骨誘導性]
45μm未満、45から106μm、106から212μm及び212から300μmのセラミック粒子(二相性リン酸カルシウムセラミック、BCP)がふるいを用いて調製され、超音波で洗浄され、乾燥され、次いで殺菌された。
【0063】
セラミック粒子(サンプル毎1000±10mg)が、誘導的な骨形成を評価するために8匹の雑種犬の傍脊柱筋群に12週間移植された。地元の動物保護委員会の許可とともに、地元のストックブリーダーから得られた8匹の痩せた雑種成犬(オス、10から15kg)に外科手術が行われた。ペントバルビタールナトリウム(体重に対して30mg/kg)の腸内注入によって犬を麻酔した後、背中の毛が剃られ、肌がヨウ素で洗浄された。次いで縦切開が行われ、傍脊柱筋群が鈍分離(blunt separation)によって露出された。縦筋肉切開が外科用メスによって続いて行われ、筋肉袋(muscle pouch)が鈍分離によって作られた。セラミック粒子は2mlシリンジの補助によって筋肉袋の中に次いで押し込まれ、傷はシルク縫合糸を用いて層に閉じられた。少なくとも2cm離れた4つの別個の筋肉ポケットが傍脊柱筋群のそれぞれの側面に作られ、それぞれのポケットに1つのサンプルが移植された。手術の後、それぞれの犬は感染を防ぐために、連続した3日間筋肉注射でペニシリンを与えられた。
【0064】
移植の12週間後、動物は犠牲とされて移植片が周囲の組織とともに採取され、直ちに4%の緩衝化されたホルムアルデヒド溶液(pH=7.4)に入れられた。リン酸緩衝液(PBS)で洗浄した後、外植片を囲む軟組織が丁寧に切り取られ、外植片の体積(Ve)が水の置換によって測定された。次いで外植片は一連のアルコール溶液(70%、85%、90%、95%、及び100%×2)で脱水され、メチルメタクリレート(MMA)に埋め込まれた。薄い部位(10から20マイクロメートル)がダイヤモンド・ソー(SP1600、レイカ(Leica)、ドイツ)でサンプルの中心を横切って作られた。部位はメチレンブルー及び塩基性フクシンで染められた。
【0065】
組織形態計測がアドビフォトショップソフトウェア(Adobe Photoshop software)を用いて行われた。第1に、サンプル全体が関心領域(ROI)として選ばれ、その領域の画素が読み込まれ(ROI)、次いでBCP及び石灰化した骨の両方が疑似的に着色され、BCP及び骨の画素がそれぞれM及びBとして読み込まれた。サンプル中の材料の面積割合(移植片に対してはMi%、外植片に対してはMe%)がM100/ROIとして計算され、利用可能な空間の割合(孔隙率、移植片に対してはPi%、外植片に対してはPe%)は(ROI−M)100/ROIとして計算され、外植片の利用可能な空間における骨の割合(BP%)はB100/(ROI−M)として計算され、サンプル全体における骨の面積割合(BROI%)はB100/ROIとして計算された。
【0066】
以下のデータは分析及び比較に利用できる:Vi(移植片の体積)、Ve(外植片の体積)、Mi%(移植片におけるBCPの面積割合)、Me%(外植片におけるBCPの面積割合)、Pi%(移植片における利用可能な空間の面積割合)、Pe%(外植片における利用可能な空間の面積割合)、BP%(外植片の利用可能な空間における骨の面積割合)、及びBROI%(外植片における骨の面積割合)。移植片におけるBCP材料の体積は概略でViMiとして決めることができ、外植片におけるBCPの体積はVeMeとして決めることができ、外植片における骨の体積は概略でVeBROI%として決めることができる。
【0067】
[結果]
45μmより大きいBCP粒子を含む全ての移植片で骨は形成されたが、45μmより小さいBCP粒子を含む全ての移植片で骨は形成されなかった(図1及び2)。212から300μmの粒子、106から212μmの粒子、及び45から106μmの粒子の間での骨形成における顕著な差異は見られなかった。
【0068】
[考察]
この研究では、粒子サイズが、CaPセラミックスの骨誘導性に影響を与えることが示された。45μmより大きい粒子は骨誘導特性を示し、故に適切なポリマーキャリアとともに骨誘導性セラミック材料の開発に用いることができる。
【0069】
[実施例2:適合した体外での分解特性を有する水を含まないキャリアの調合]
この研究では、適合した成形性、注入性及び溶解速度を得ることを目的として、様々な水を含まないキャリアの調合が開発された。これらの調合は、実績のある生体適合性、医学的使用の履歴、迅速な溶解性、及び潤滑効果を有する原材料を用いて作られたが、それらは以下に要約される:
−ポリエチレングリコール(PEG):PEG400、PEG1000、PEG4000、PEG20000(例えばメルク化学工業(Merck Chemical Industry)など)
−プルロニック(登録商標):P65、P84、P85、F87、F88、F98(例えばビーエーエスエフベネルクスなど)及びF127(例えばシグマなど)
−ポリオ−ル:グリセロール(例えばメルク化学工業など)
−乳化剤:大豆レシチン(例えばエーエムディー特殊成分(AMD Special Ingredients)など)
−炭水化物:スクロース(例えばシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)など)
【0070】
調合は上記の成分のうち2つを容量で混合することによって作られた。予備の調合は、定性的な取扱い評価に基づいた粒子バインダーとしての適性によって選別された。プラスに評価されたキャリアのみがその後、キャリア:TCP=2:3の体積比率で、TCP粒子(500から1000μm)とブレンドされた。これらの結果として生じたセラミックパテ材料はそして、取扱い性、凝集性、及び粘性に基づいて記録された。最終的にそれぞれの調合の溶解速度は、以下のように評価された:セラミック材料の1ccシリンダーが生理学的な体液を模倣するための37℃、8ccリン酸緩衝液(PBS)に浸された。サンプルは次いで、溶解に対して視覚的に観察されたが、溶解はここでリン酸カルシウム粒子がバルク材料から自由に解離され、容器の底部に粒子の非晶質層を形成するときとして定義された。約75%までの溶解に必要な時間が記録された。
【0071】
[結果]
単一の成分、つまりプルロニック(登録商標)、PEG、グリセロール、大豆レシチン又はスクロースポリマーをTCP粒子とブレンドすることで、凝集性があり成形可能なパテ調合は生じなかったが、これらの成分のうち2つをブレンドすることにより、滞在的に凝集性があり成形可能な調合が生じた。以下の表に要約された5つのセラミック材料において、最良の取扱い性、凝集性及び粘性値が観察された。
【0072】
【表1】

【0073】
[考察]
2つの水を含まない成分の組み合わせはキャリアの特性に実質的な影響を与えるが、全ての組み合わせが適切なキャリアに役立つわけではない。表1に要約された材料は、この研究で開発された優良キャリアを含む。これらの水を含まないキャリアは微細構造を有するCaP粒子と組み合わせることが好ましいが、それは含水性キャリアに比べて水を含まないキャリアが機能的な寿命を実質的に長くするからである。
【0074】
[実施例3:3つの異なる水を含まないキャリアの生体内での有効性]
様々な水を含まないキャリアが準備され、実施例2に記載されたパテを形成するためにTCP顆粒と組み合わせた。これらの調合は取扱い特性に基づいて無分別に評価され、5つのうち2つが生体内での移植のために選ばれた。これらのパテは、ヤギの腸骨の翼状の部位における臨界サイズの欠損(19mm)に16週間にわたって移植された。外植の後、サンプルはホルマリンに入れられ、エタノールを用いて脱水され、メチルメタクリレートに埋め込まれた。石灰化した部位が作られ、骨形成を視覚化するためにメチレンブルー及び塩基性フクシン溶液で染められた。パテサンプルにおける骨形成は、同一のヤギにコントロールとして更に移植されたキャリアを含まないTCP顆粒の骨形成と比較された。実験的な設計は以下の表2に要約される。
【0075】
【表2】

【0076】
[結果]
腸骨の翼状の部位における欠損の外植片の中心から取られた組織部位は、全ての移植片における骨形成を示した。両方の水を含まない調合に対して、新しい骨形成は構成されたTCP粒子と接触しているが、それは骨欠損への材料の真の統合を示す。P85/PEG4000(図3A)及びP84/F87(図14B)サンプルにおける骨形成は、500から1000μmのTCP顆粒のみ(図3C)と匹敵した。
【0077】
[考察]
骨形成の質は、全ての治療群に対して類似した。つまり、新しい骨形成はCaP粒子と直接接触した。これはテストされた水を含まないキャリアが新しい骨形成を妨げないことを示す。更に、残留キャリアの残部は観察されず、それはこれらの水を含まない調合が以前に体外で観察されたように生体内でも迅速に分解することを示す。要約すると、これらの結果はこれらの水を含まないキャリアが骨欠損治療のために骨誘導性CaP材料を運搬するのに役立つという結論を支持する。
【0078】
[実施例4:水を含まない骨誘導性パテの調合]
様々な自然発生材料成分及び合成材料成分の両方が、調節可能な取扱い特性及び特定の分解速度を有し、生体適合性で水を含まない成形可能なキャリアを構築するために選ばれた。それらは溶媒又は増粘剤の何れかとして一般的に分類される:
溶媒:
−ポリエチレングリコール、mw=400(メルク)(“PEG400”)
−グリセロール(シグマ)(“Gly”)
増粘剤:
−ポリエチレングリコール、mw=4,000(フルカ(Fluka))(“PEG4k”)
−デキストラン、mw=40,000(ファーマコスモス(Pharmacosmos))(“Dex”)
−キサンタン XGF FNHV(ジャングブンズラウア(Jungbunzlauer))(“Xan”)
−ブラノーズ(Blanose)(登録商標) カルボキシメチルナトリウムセルロース、7H4XF PH(ハークルス(Hercules))(“CMC7H”)
−でんぷん、溶解性(シグマ)
−大豆レシチン(エーエムディー)
−プルロニック(登録商標)F88(ビーエーエスエフ)(“F88”)
−ソリュートル(登録商標)HS 15(ビーエーエスエフ)(“HS15”)
【0079】
複数の調合が、異なる明確な剛性、均一性、及び粘性を有する成形可能なキャリアを開発するために、これらの成分の異なる組み合わせを用いて調製された。調合は以下の一般的な手順に従って作られた:溶媒及び増粘剤が体積及び質量によってそれぞれ測定され、次いで均一になるまでブレンドされた。
【0080】
成形可能な粒子バインダーとして有益なキャリア調合は、次いでTCP粒子(500から1000μm)に組み合わされた。このようなキャリア調合は、例えば:キサンタン、デキストラン、でんぷん、及びグリセロール(XDS);CMC7H、PEG4k、PEG400、及びグリセロール(CMC/PEG);大豆レシチン及びF88(SLF88);及びキサンタン、デキストラン、及びソリュートル(登録商標)HS 15(XDHS)である。キャリア及びTCP粒子は、キャリア:粒子が1:2から3:4の範囲の体積比率で、均一になるまで混合された。これらは次いで成形可能なセラミックパテとして評価され、それらの取扱い特性−特に、凝集性、粘性、及び延性−について記録された。
【0081】
これらのパテ−例えば:XDS、CMC/PEG、及びSLF88など−の溶解速度を評価するために、それらは37℃でPBSに浸され(1:10v/v)、実施例2と同様に溶解に対して視覚的に観察された。
【0082】
[結果]
取扱い特性及び溶解データの両方によって、所望の要件を満たしたもののみに達した水を含まないキャリアの集団を絞り込む基準が提供されたが、所望の要件は例えば2日以内は成形可能であり水溶性であることなどである。
【0083】
【表3】

【0084】
[考察]
表3に記載されたような広範な成分を使用することで、成形可能であり骨誘導性であるパテ−例えば、XDS(キサンタン、デキストラン、でんぷん、及びグリセロール)、CMC/PEG(CMC、PEG400、PEG4k、及びグリセロール)、SLF88(大豆レシチン及びプル F88)、及びXDHSが、2日以内に溶解するようにカスタマイズされた取扱い特性を有するように開発された。水を含まないため、これらのパテはTCP粒子の加水分解を引き起こすことなく延長された寿命を提供する。
【0085】
[実施例5:水を含まず骨誘導性である注入可能材料の調合]
様々な自然発生材料成分及び合成材料成分の両方が、所望の取扱い特性及び特定の分解速度を有し、生体適合性で水を含まない注入可能なキャリアを構築するために選ばれた:
−CeKol50000 カルボキシメチルセルロース(シーピーケルコ(CP Kelco))(“CMC50k”)
−グリセロール(シグマ)(“Gly”)
−ルトロール(登録商標)F127(ビーエーエスエフ)(“F127”)
−ソリュートル(登録商標)HS 15(ビーエーエスエフ)(“HS15”)
−キサンタン XGF FNHV(ジャングブンズラウア)(“Xan”)
【0086】
複数の調合が、ルアーチップシリンジ(luer tip syringe)による押出に対して最適な剛性、均一性、及び粘性を有する注入可能なキャリアを開発するために、異なる成分の組み合わせを用いて調製された。調合は以下の同一の一般的な手順で作られた:成分量は体積又は質量によって測定され、次いで均一になるまでブレンドされた。
【0087】
注入可能な粒子バインダーとして有益なこれらのキャリア調合は、次いでTCP粒子(150から500μm)に組み合わされた。例えばこのようなキャリア調合は、キサンタン及びグリセロール(XG);F127及びHS15(HSF);CMC50k及びグリセロール(CMCG);並びにキサンタン、ソリュートル(登録商標)HS 15、及びグリセロール(XHS)から成る。キャリア及びTCP粒子は、キャリア:粒子が0.6:1から1:1の範囲の体積比率で、均一になるまで混合され、次いで様々なルアーチップシリンジに移された。注入可能な粒子バインダーは次いで、それらの取扱い特性−例えば、凝集性、粘性、及び押出の簡易性−に基づいて評価された。
【0088】
それらの溶解特性を評価するために、これらのパテ−例えば:XG、HSF、及びCMCG−は37℃のPBSに浸され(1:10v/v)、実施例2と同様に溶解に対して視覚的に観察された。
【0089】
[結果]
取扱い特性及び溶解データの両方によって、所望の要件を満たしたもののみに達した水を含まないキャリアの集団を絞り込む基準が提供されたが、所望の要件は例えば2日以内は注入可能であり水溶性であることなどである。これらの調合は表4に要約された。
【0090】
【表4】

【0091】
[考察]
表4に記載されたような様々な成分を使用することで、骨誘導性である注入可能材料−例えば、XG(キサンタン及びグリセロール)、HSF(ソリュートル(登録商標)HS 15及びプル F127)、CMCG(CMC及びグリセロール)、及びXHS(キサンタン、ソリュートル(登録商標)HS 15、及びグリセロール)−が、2日以内に溶解するようなカスタマイズされた取扱い特性を有するように開発された。水を含まないため、これらの注入可能材料はTCP粒子の加水分解を引き起こすことなく延長された寿命を提供する。
【0092】
[実施例6:水を含まず骨誘導性であるパテ及び注入可能材料の生体内での骨形成]
TCP粒子を含み、パテ又は注入可能材料の形態である骨誘導性の水を含まない材料(実施例4及び5で事前に記載された)が、それらの生体内での骨形成の滞在能力を評価するために、8匹のオスの犬に移植された。材料は骨の部位及び非骨性の部位−それぞれ大腿骨及び傍脊柱筋群−の両方に移植された。5mm直径の大腿骨欠損は0.5cc未満の材料テストサンプルで満たされ、1ccサンプルが筋肉に移植された。リン酸三カルシウム(TCP)粒子(500から1000μm及び150から500μm)のみがコントロールとして移植された。移植片は12週間後に採取され、組織評価のために調製された。テストサンプルは骨形成を視覚化するために、メチレンブルー及びフクシンで染められた。
【0093】
加えて、キャリア調合は、生理学的な体液と類似したリン酸緩衝液(PBS)に完全溶解するのに必要な時間について評価された。リン酸カルシウム顆粒を含まない、1ccのそれぞれのキャリア調合のサンプルは8ccのPBSに浸され、37℃で保存された。サンプルは完全溶解に対して視覚的に観察された−ここで完全溶解は、キャリアの認識できるバルクの輪郭、形状及び断片がPBS中に見られず、キャリア−PBS混合物が視覚的に均一であるときとして定義された。完全溶解のための時間が記録された。
【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

【0096】
[結果]
大腿骨移植(図4a))の組織染色は、TCP粒子が意図された通り欠損において水を含まないキャリアによって保持されたことを示す。更に、広範囲に及ぶ骨再生が欠損にわたって明らかであった。顕著に、残留キャリア材料は検査された如何なる移植部位においても観察されなかった。
【0097】
筋肉内移植(図4b))の染色は、SLF88を除く全ての調合における筋肉での異所性の骨形成(例としてCMCGが示された)から明らかなように、水を含まないキャリアを含むTCP顆粒によって骨誘導性が保持されることを示す。
【0098】
体外でのキャリアの溶解テストだけでも、SLF88が体外で2日以内に完全に溶解しない唯一のキャリアであることが示された。
【0099】
[考察]
この研究の結果は、骨誘導性セラミックを運搬するために、ここで開発されたような水を含まないキャリアを適用することの実用性及び有効性を示す。これらのキャリアはセラミック材料を欠損部位に容易に運搬することができ、それらを最適な骨治療のためにインサイチュで保持できる。顕著に、体外での溶解データは、骨形成滞在能力と骨誘導性パテで使用されたキャリアの体外での溶解時間との間の重要な関係を示した。具体的に、早く溶ける水を含まないキャリアは遅く溶けるキャリアより好ましいが、それは遅い溶解が含まれる微細構造を有するリン酸カルシウム粒子の骨誘導性を抑制し得るからである。しかしながら、遅く溶けるキャリア(例えばSLF88など)は、キャリアの化学組成(例えば、濃度、分子量など)、硬化温度(例えば、98.5℃ではなく60℃で硬化する)、及び硬化時間(例えば、90分ではなく45分)を修正することによって早く溶けるように“調節”することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面微細構造、特に表面微細孔を有する多孔性リン酸カルシウムと、水を含まないキャリアとを含み、前記キャリアが脂質、多糖類ポリマー、合成有機ポリマー、ポリオール、又はそれらのブレンド若しくは混合物から成る群から選ばれる、成形、打ち延ばし、混練及び/又は注入可能なセラミック材料。
【請求項2】
骨誘導性である、請求項1に記載のセラミック材料。
【請求項3】
前記水を含まないキャリアが生体内で、投与後6週間以内、好ましくは3週間以内に分解する、請求項1又は2に記載のセラミック材料。
【請求項4】
前記キャリアが、1週間以内、好ましくは3日以内、より好ましくは1日以内の体外での37℃の生理学的塩水における溶解時間を有する、請求項1から3の何れか1項に記載のセラミック材料。
【請求項5】
前記水を含まないキャリアが、最長1週間、好ましくは最長3日、及びより好ましくは最長1日の寸法安定時間を有する、請求項1から4の何れか1項に記載のセラミック材料。
【請求項6】
前記キャリアが、P84、P85、F87、F88などのポロキサマー;PEG400、PEG1000、PEG4000などのPEG;大豆レシチンなどの脂質;キサンタン、デキストラン、でんぷん、CMCなどの多糖類;グリセロールなどのポリオール;及び界面活性剤/乳化剤 ソリュートル(登録商標)HS 15、又はそれらの混合物若しくはブレンドである、請求項1から5の何れか1項に記載のセラミック材料。
【請求項7】
前記多孔性リン酸カルシウムが20から90%の全孔隙率を有し、マクロ孔が0.1から1.5mmのサイズを有して存在し、微細孔が前記マクロ孔の表面に存在し、前記微細孔が0.05から20μmのサイズを有する、請求項1から6の何れか1項に記載のセラミック材料。
【請求項8】
孔が0.1から1.50μmの範囲のサイズの微細孔を含み、10から40%の範囲の微細孔の表面積割合を有する、0.1から1.50μmの範囲の平均粒子サイズを有する請求項1から7の何れか1項に記載の材料。
【請求項9】
骨形成を必要としている対象者での骨形成の促進に使用するための請求項1から8の何れか1項に記載の材料であって、前記使用は前記材料に生体適合性キャリアを組み合わせることを含み、前記水を含まないキャリアは前記対象者の体への導入後であって前記材料の骨誘導性作用の開始前に分解を開始する加工助剤である、使用のための請求項1から8の何れか1項に記載の材料。
【請求項10】
前記水を含まないキャリアが、骨形成の完了前に、実質的に完全に溶解されるか又は解離される、請求項9に記載の材料。
【請求項11】
前記水を含まないキャリアが、骨形成の開始前に、実質的に完全に溶解されるか又は解離される、請求項9又は10に記載の材料。
【請求項12】
前記水を含まないキャリアが、前もって混合されたパテの保存寿命を長くできる水を含まない組成物を含む、請求項9、10又は11の何れか1項に記載の材料。

【図1】
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【図3】
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【図4a)】
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【図4b)】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−533373(P2012−533373A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520963(P2012−520963)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004548
【国際公開番号】WO2011/009635
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(512016917)
【Fターム(参考)】