説明

注出キャップと注出容器及び塗布具の組み合わせ

【課題】塗布部の位置を決定するための回動部材を注出容器用のキャップに回動可能に組み付け、必要に応じて回動部材を回動して、位置決めを行えるようにした注出キャップを提案する。
【解決手段】柄付き塗布部に注出物を付着させるための注出キャップであって、頂板14内側の注出口18の周りから容器口頸部への装着筒20を垂下したキャップ本体12と、このキャップ本体12の上面を覆う蓋体60と、キャップ本体12の外周側へ起伏可能に連結された回動部材40と、を具備し、回動部材40は、倒伏状態で回転軸Oから注出口18へ延び、かつ起立状態で注出口18に向けて垂直で平らな第1受面50を有し、この第1受面で、注出口と反対側の塗布部背面で受けて塗布部を位置決めすることが可能にしており、かつ回動部材の起立状態を解除可能に保持するための姿勢保持手段38を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、注出キャップ、特に歯磨き剤などのクリーム状物を収納した注出容器に適用することに適した注出キャップに関し、さらに、注出キャップを含む注出容器及び塗布具の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯磨き剤などの注出容器のキャップは、注出容器の口頸部を覆う有頂筒形に形成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−149207
【特許文献2】特開2000−037232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の注出容器を使用するときには、そのキャップを外して容器の口頸部先端を歯ブラシなどの塗布部の塗布面に近づけて注出物を付着させることになるが、怪我などの利用者の身体的理由により、塗布具を持つ手先の位置が定まりにくいことがある。そのように手先が器用でない利用者でも、歯ブラシを口頸部の先端に直接当てて注出物を付着させることは比較的簡単にできる。しかしながら、歯ブラシと異なり、歯磨き剤入りの注出容器などは、家族などの複数人が共有する場合があるから、衛生面から歯ブラシが容器の口頸部に当てることは避けることが望ましい。
【0005】
塗布具を持つ手先の位置が定まらないと、その塗布部が口頸部に近過ぎるときには塗布部が口頸部に直接触れてしまう可能性があり、逆に塗布部と口頸部との間に距離があり過ぎるときには、口頸部から吐出する注出物が床に落ちてしまうおそれがある。とくに近年は、塗布部を小型とした歯ブラシが市販されており、容器口頸部に対するブラシ部の相対的な位置決めがなおさら難しい。
【0006】
塗布部の位置決めを補助する装置として、注出容器を逆さに支える壁付けの支持具と、この支持具の下方に配置された塗布部載置用のブラケットとで構成したものがある(特許文献2)。しかしながら、この特許文献2では、容器とは別に位置決め用の機構を設置しなければならないという面倒がある。
【0007】
こうした従来技術を背景として、出願人は塗布部の位置決め用の壁部をキャップ本体の上面から起立した注出キャップを出願した(特願2009−085906)。この構成は、手先の器用ではない利用者にとっては、歯ブラシなどの塗布部の位置決めが容易となるので便利である。しかしながら、この種のキャップ付き容器は前述の通り複数人が共用する場合があり、通常程度に手先を動かすことができる利用者にとっては、位置決め用の回動部材が内容物の注出作業において却って邪魔になることもある。
【0008】
本発明の第1の目的は、塗布部の位置を決定するための回動部材を注出容器用のキャップに回動可能に組み付け、利用者が必要とする場合に当該回動部材を回動して、簡単に注出物を塗布部に付着させることができる注出キャップを提案することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、上記注出キャップを有する注出容器と塗布具との組み合わせであって、位置決め状態での塗布部と注出容器の注出口とが直接触れないように近接するように構成したものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の手段は、柄付き塗布部に注出物を付着させるための注出キャップであって、
頂板14内側の注出口18の周りから容器口頸部への装着筒20を垂下したキャップ本体12と、
このキャップ本体12の上面を覆う蓋体60と、
キャップ本体12の外周側へ起伏可能に連結された回動部材40と、を具備し、
回動部材40は、倒伏状態で回転軸Oから注出口18へ延び、かつ起立状態で注出口18に向けて垂直で平らな第1受面50を有し、この第1受面で、注出口と反対側の塗布部背面で受けて塗布部を位置決めすることが可能にしており、
かつ回動部材の起立状態を解除可能に保持するための姿勢保持手段38を設ける。
【0011】
本手段では、容器口頸部に装着するキャップ本体に対して、塗布部の位置決め用の回動部材を回動可能に組み込むことを提案している。必要に応じてこの回動部材を起立させ、注出操作の際に図8の上下方向への塗布部の位置決めを行うことができる。「回動部材」は、塗布部を受ける台(例えば台板)として一定の剛性を有する。回動部材は、キャップ本体の頂板に後述の折返し板を介して連結することが望ましいが、直接連結することを除外するものではない。回動部材は、図6に示す起立状態において、第1受面と注出口との間に塗布部をセットするために必要な距離(塗布部セット代という)Aをとる。この距離は塗布部の高さにおおよそ対応している。
【0012】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
倒伏状態での回動部材40の下面に、回動部材の回転軸Oから一定の距離を存して回転軸と平行な係止リブ52を付設し、この係止リブの一方側面を、塗布部の側面を受けるための第2受面54としている。
【0013】
本手段では、回動部材の下面に係止リブを付設しており、この係止リブの側面を、塗布部の側面を受けるための第2受面としている。これにより、図8の左右方向への塗布部の位置決めが可能となる。第1の手段と相まって2方向の位置決めが可能となるので、塗布部のセットが容易となる。好適な図示例では、図8に示すように、回動部材の回動半径方向で回転軸から近い塗布部側面と係合するように、回動部材の先部の一箇所(P)に係止リブを設け、この係止リブの回転軸寄りの側面を第2受面としている。しかしながら、同図に想像線で描くように、回動部材の基部の一箇所(P)に係止リブを設け、この係止リブの回転軸から遠い側面を第2受面としてもよい。また回動部材の先部であるリング状部の先端部分(P)に係止リブを設けてもよい。係止リブを図8の(P)に設置するときには、係止リブと回転軸との間に、注出口のほぼ下方に塗布部を位置させるために必要な一定の距離Bをとることが望ましい。
【0014】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ上記注出口18を、頂板14の中心から起立した注出筒16の筒孔として形成するとともに、
上記回動部材40の先部をリング状部44に形成し、回動部材40を頂板14に対して起伏することで、注出筒16に対するリング状部44の挿脱が可能に形成している。
【0015】
本手段は、回動部材の先部を、注出筒への挿脱可能なリング状部に形成することを提案している。これにより、回動部材の長さに比べて相対的にキャップ本体を小さくすることができる。本願の図5に、係止リブ付きのリング状部を有する回動部材の構造を実線で、また対比例として、先端に係止リブを有する一枚の帯板で形成する回動部材の構造を想像線でそれぞれ描いている。回転軸から係止リブまでの距離Bを同じにすると、後者の回動部材をキャップ本体外周の回転軸と注出筒との間に組み込むためには、その回転軸を符号Oで示す位置に配置しなければならない。そうするとキャップ本体の直径も大径となる。逆に言えば先部をリング状部とすることで回動部材をキャップ本体にコンパクトに組み込むことができる。
【0016】
第4の手段は、第2の手段又は第3の手段を有し、かつ
上記回動部材40とキャップ本体12との連結箇所を、キャップ本体上面の外縁から一定長さ離れた箇所に設定するとともに、
上記姿勢保持手段38は、上記起立状態で回動部材40の基端部から起立し、回動部材とともに回動する回動突片38bと、頂板14のうちキャップ本体への回動部材の連結箇所付近から起立する固定突片38aとで形成され、回動突片38bは、回転軸O外方のキャップ本体上面部分へ重なることで起立状態の回動部材を支えるように形成し、固定突片38aは、上記起立状態において回動突片38b又は回動部材の基端部に対して分離可能に係合し、回動部材40の起立状態を保持するように形成している。
【0017】
本手段は、回動部材の起立状態を保持するための姿勢保持手段の構造を提案する。すなわち、倒伏状態での回動部材の基部から回動突片を起立し、回動部材を起こしたときに、回転軸外方のキャップ本体上面部分へ回動突片が重なるようにしている。キャップ本体の上面と回動突片が一定の距離(以下「重なり代」という)を持って重なり合うように、回転軸はキャップ本体の外縁から後方へ離して設置する。なお、「キャップ本体上面部分」とは、図示例の如くキャップ本体が頂板外縁からの折返し板を含むときには、折返し板の上面を含む。回動突片は操作板を兼ねることが望ましい。
【0018】
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
キャップ本体12は、頂板14の外縁に基端部をヒンジ連結し、かつ頂板14の上面側へ折り返した折返し板34を有し、
この折返し板34の先部に、回転軸Oを形成する薄肉ヒンジを介して回動部材40の基部を連結することで、キャップ本体12と回動部材40とを一体に成形したことを特徴とする。
【0019】
本手段は、回動部材とキャップ本体とを一体成形した構成に関し、とくにキャップ本体が頂板外縁からの折返し板を有することを提案する。折返し板の機能は、頂板外縁及び回転部材の基端部の間に前述の重なり代を確保しながら頂板外縁に回転部材の基端部を連結することである。キャップ本体へ回動部材を枢着するなどの方法に比べて製造が容易で部品数も少ない。頂板前端からの折返し板の突出長は、前記回動突片の突出長とほぼ同じ程度あれば足りる。これ以上長くすると、回転軸と注出口との間の距離が短くなり、塗布部のセットに利用できる空間が狭くなるからである。
【0020】
第6の手段は、第5の手段を有し、かつ
キャップ本体12の頂板14後縁に第1薄肉ヒンジ24を介して蓋体60を連結するとともに、キャップ本体の頂板14前縁に第2薄肉ヒンジ26を介して折返し板34を連結している。
【0021】
本手段では蓋体と折返し板をキャップ本体の頂板の反対側の縁部分に設けることを提案している。このような構成であるから、回転部材の操作に蓋体が邪魔とならず、塗布部への操作が良好に行える。
【0022】
第7の手段は、第4の手段に記載の注出キャップ10を含む注出容器2と、柄付きの塗布部84を含む塗布具80との組み合わせであって、
塗布部84の背面90を位置決め用の回動部材40の第1受面50に、また塗布部84の側面92を第2受面54にそれぞれ当接させた状態で、塗布部84の塗布面88が注出筒16に触れない程度に接近するように構成している。
【0023】
本手段は、第2の手段の応用例であり、その塗布部の背面及び側面を第1受面50及び第2受面にそれぞれ当接させた状態で(図8参照)、塗布部84の塗布面88が注出筒16に触れない程度に接近させている。塗布面と注出筒とが触れると、例えば塗布具に付いたゴミなどが注出筒側に付着してしまうおそれがあるからである。「接近する」とは、注出物が塗布具の塗布面以外の場所に垂れ落ちない程度に近いことを意味する。これについては後述する。塗布具はブラシに限らず、ヘラなどでもよい。
【発明の効果】
【0024】
第1の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○塗布部の位置決め用の第1受面50を備えるから、指先の動作が確かではない利用者でも注出口に対して塗布部を所定の位置関係にセットすることが大変容易である。
○第1受面50付きの回動部材40が起伏可能としたから、キャップ全体が嵩張らず、利用者が位置決めを必要としないときに、回動部材が注出操作の邪魔にならない。
【0025】
第2の手段に係る発明によれば、塗布部の側面を受けるための第2受面34を設けたから、塗布部の位置決めを確実に行うことができる。
【0026】
第3の手段に係る発明によれば、回動部材40の先部を、注出筒16への挿脱可能なリング状部44としたから、注出キャップがさらにコンパクトとなる。
【0027】
第4の手段に係る発明によれば、回転部材の回動突片38bとキャップ本体の固定突片38aとからなる姿勢保持手段38で回動部材の起立状態を確実に支持できる。
【0028】
第5の手段に係る発明によれば、キャップ本体12と回動部材40とを一体に成形したから、部品数が少なくなり、製造コストを廉価とすることができる。
【0029】
第6の手段に係る発明によれば、キャップ本体12の頂板14後縁に第1薄肉ヒンジ24を介して蓋体60を連結するとともに、キャップ本体の頂板14前縁に第2薄肉ヒンジ26を介して折返し板34を連結している。
【0030】
本手段では蓋体と折返し板をキャップ本体の頂板の反対側の縁部分に設けたから、塗布部への操作が良好に行える。
【0031】
第7の手段に係る発明によれば、確実に塗布面に注出物を付着させることができ、また塗布具が歯ブラシである場合には、衛生的である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る注出キャップを含む容器の閉蓋状態での縦断面図である。
【図2】図1に示すキャップの一部を切り欠いた平面図である。
【図3】図1の容器の開蓋状態での縦断面図である。
【図4】図1に示すキャップの開蓋状態での平面図である。
【図5】図1に示すキャップの操作の一過程での縦断面図である。
【図6】図5に対応したキャップの平面図である。
【図7】図5に対応した容器の一部切欠き正面図である。
【図8】図1の容器の使用状態の説明図である。
【図9】図1に示すキャップの成形時の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1から図9には、本願発明に係る注出キャップ10を、このキャップを含む注出容器2及び塗布具80とともに記載する。本発明は注出キャップ単独で実施できるが、相互の関係を明確にするため、本実施形態では注出キャップの他、注出容器及び塗布具にも言及する。
【0034】
注出容器2は、容器体4と、注出キャップ10とからなる。上記容器体4は、チューブ式胴部5から肩部6を介してシール突条8付きの口頸部7を起立する。
【0035】
上記注出キャップ10は、キャップ本体12と回動部材40と蓋体60とからなり、これらを図9に示す展開状態で合成樹脂などを用いて一体に成形することができる。
【0036】
上記キャップ本体12は、頂板14の中央部を穿孔し、その孔縁を貫通する注出筒16の内部を注出口18とするとともに、注出筒よりもやや外側の頂板下面部分から、口頸部外面への装着筒20を垂下している。図示の注出筒16は口頸部7よりも小径であり、この注出筒の下端部は上記口頸部の上端部に密着させている。注出筒16の左右両側の頂板部分には後述の係止リブを挿入するための挿入穴19を凹設している。頂板14の外周部からは肩部6付近まで円筒形の外周壁22を垂下する。この外周壁22の後部は第1の薄肉ヒンジ24を介して蓋体60に連結している。キャップ本体12の前部では頂板14の前端部を前方へ突出し、この前端から第2の薄肉ヒンジ26を介して後述の折返し板を突出する。上記頂板前端の後方には、後述の係合脚を嵌合するための係合孔28を穿設し、係合孔後方の頂板部は薄肉部30としている。
【0037】
またキャップ本体12は、図9の展開状態において、頂板14の前端部から第2の薄肉ヒンジ26を介して突出する折返し板34を有し、この折返し板の先端で第3の薄肉ヒンジ32を介して回動部材40に連続している。そして第2の薄肉ヒンジ26を中心として回動部材とともに折返し板34を後方へ折り返す。折返し板34は、下面から係合脚36を垂下し、この係合脚36を係合孔28内へ嵌合させて折返し状態を維持している。上記第3の薄肉ヒンジ32は回動部材の回転軸Oを形成する。
【0038】
この回動部材の起立状態を保持するために姿勢保持手段38を設ける。この実施形態では、姿勢保持手段をキャップ本体に付設した固定突片38aと、回動部材40に付設した回動突片38bとで形成している。固定突片38aは、折返し板34の先部34bの両側において頂板14上面から少なくとも折返し板の厚さより高く起立する。各固定突片の上半部間に回動突片38bを挟持するためである。図示例の固定突片38aは、図2に示すように上方から見て矩形の板部に形成している。そして両固定突片の対向面が折返し板の先部34bの左右両端に隣接することで、折返し板の左右方向のブレを抑制している。回動突片38bの構成については後述する。
【0039】
図4に示す例では、折返し板34の先部34bは、折返し板の基部34a及び回動部材40の基端部に比べて回転軸Oの方向に巾狭となっており、これにより、図6に示す回動部材の起立状態において固定突片38aが折返し板の基部34a及び回動部材40の基端部を係止する。従って回動部材40の起立状態が安定する。
【0040】
上記回動部材40は、基部である帯板部42から、先部であって注出筒16を囲むリング状部44を連続形成している。リング状部44の内縁と注出筒16の外周面との間には間隙があり、第3の薄肉ヒンジ32を中心として回動部材40が回動することで、リング状部44が注出筒16に対して挿脱することが可能に構成する。具体的には、図3に示す如くリング状部の先端部内縁が回転軸Oを中心に描く円弧Cが注出筒の上端にぶつからないように間隙を設定すればよい。なお、図示の回動部材40はキャップ本体12の前部に連結しているが、その連結箇所は適宜変更できる。
【0041】
また帯板部42の基端部上面からは前述の回動突片38bを起立する。図示の回動突片38bは、図3の如く上端が先鋭な楔形状であり、指を掛けて前方へ倒し易い。もっともその形状は適宜変更することができる。図示例では、回動突片38bの前面は垂直面であり、前方から見た形状は横長の長方形である。頂板14上面から回動突片38bの先端までの高さhは、図3に示すように注出筒16の高さと同程度であるか、それ以下とすることが望ましい。注出筒よりも高いと、回動部材を使用せずに注出操作をするときに、回動突片が作業の邪魔になることがあるからである。
【0042】
また上記回動部材40の下面は、起立状態で注出口側へ向かう垂直で平らな第1受面50となる。この第1受面50と注出口18との間には、図6に示すように塗布部のセット代Aをとる。塗布部セット代は、本願発明を注出キャップ単独で実施する場合には、市販の塗布具のサイズに対応させればよい。
【0043】
さらにまた回動部材40の先部の下面には、回転軸Oと平行な係止リブ52を形成し、係止リブの回転軸側の側面92を、塗布部の側面を受けるための第2受面54に形成している。本実施形態の如く回動部材の先半部をリング状部44に形成している場合には、このリング状部の下面に係止リブ52を形成する。図示例ではリング状部のうち2つに分かれた中間部分(P)に一対の係止リブ52を設けている。この場合、各係止リブ52の前面である第2受面54は、図5に一点鎖線で表す仮想直線上に載るように設計することが必要である。図7に示すように塗布部の側面92が2つの第2受面54に同時に面接することで塗布部80の位置を適切に決まるからである。2つの第2受面54の位置は、同図に示す箇所よりも回転軸に近づく方向又は遠ざかる方向へずらしてもよい。さらに回動部材の帯状部42の適所(P)又はリング状部の先端部分(P)に一つの係止リブを形成してもよい。上記係止リブ52は、挿入穴19内に挿入されている。この挿入穴19は、係止リブ52の個数及び位置に応じて形成する。これにより回動部材40の倒伏状態において回動部材40の下面全体をキャップ本体12の頂板14上面に密接させることができるので、塗布部の位置決めを必要としない利用者が注出作業をする場合に回動部材40が邪魔にならない。
【0044】
上記蓋体60は、蓋板62の外周部から円筒形の蓋周壁64を垂下しており、この蓋周壁の下端後部を、キャップ本体12の頂板14後部にヒンジ連結している。もっとも軸着などの方法で連結してもよい。蓋周壁64の前壁下端面には、閉蓋時に折返し板34を挿通させるための浅溝66を穿設する。浅溝66の左右両側には、蓋周壁に固定突片38aが当らないようにするための左右一対の切欠き凹部68、68を形成している。蓋板62の中央部から垂下筒70を垂下して、注出筒16に外嵌させる。
【0045】
80は、塗布具であり、好適な図示例では歯ブラシとして構成している。塗布具80は、図6及び図8に想像線で示すように、柄82と連続する基部86に多数の刷毛を植毛して塗布部84を形成している。塗布具は、歯ブラシに限定されるものではなく、クリーム状又は液体状の注出物を一旦塗布部に付着して被塗布面に塗り付ける用途に使用するものであれば何でも構わない。
【0046】
この塗布具80と、注出キャップの回動部材40は、決められた位置に塗布部がセットされたときに、塗布面88が注出口18に触れない範囲で接近するように構成する。具体的には、注出物Pが歯磨き剤のような稠密なクリーム状物であれば、本願図8に示すように、図の状態での水平方向に塗布面と注出口18との間に多少隙間があっても構わない。しかし、粘性の小さい液体である場合には、同図の状態で注出口18の真下に塗布面が位置するようにした方が確実に注出口18から塗布面88へ内容物を付着することができる。
【0047】
上記構成において、注出操作を行うときには、注出容器2の胴部5を把持し、図1の状態から蓋体60を開放し、そして指を回動突片38bの先端に掛けて前方へ倒すと、回転軸Oを中心とするテコの作用で回動部材40が起立する。このとき回動突片38bの前面が折返し板の上面に重なり、かつこの回動突片を左右一対の固定突片38で挟持することで、回動部材40の起立状態が保たれる。そしてキャップ付きの注出容器を横に倒して、第1受面50に塗布部の背面90を、第2受面54に塗布部の側面をそれぞれ当接すると注出口に対する塗布部84の位置を容易に決めることができる。換言すれば、利用者の指先の器用さとは無関係に、塗布面88と注出口18との間に、確実に内容物を塗布部に付すことができる小さな間隙を維持することができる。そして注出物Pを付着させた塗布具80を、注出キャップ10から離し、歯磨きなどを行えばよい。使い終わった後は、回動部材40の先部を指で後方へ倒すと、一対の固定突片38bの間から回動突片38bが離脱して、回動部材は倒伏状態に戻る。そして蓋体を閉じれば、図1の状態となる。
【0048】
また利用者が塗布部の位置決めを必要としないときには、回動部材40を外方へ引き出すことなく、蓋体を開いて注出作業を行えばよい。図1に示す如く回動部材40はキャップ本体12の頂板に沿って注出筒16に比べて低い位置にあるので、回動部材40が通常の注出作業の邪魔になることはない。
【符号の説明】
【0049】
2…注出容器 4…容器体 5…胴部 6…肩部 7…口頸部
10…注出キャップ 12…キャップ本体 14…頂板 16…注出筒
18…注出口 19…挿入穴 20…装着筒 22…外周壁
24…第1の薄肉ヒンジ 26…第2の薄肉ヒンジ 28…係合孔
30…薄肉部 32…第3の薄肉ヒンジ 34…折返し板 34a…基部
34b…基部 36…係合脚 38…姿勢保持手段 38a…固定突片
38b…回動突片 40…回動部材 42…帯板部 44…リング状部
50…第1受面 52…係止リブ 54…第2受面
60…蓋体 62…蓋板 64…蓋周壁 66…浅溝 68…切欠 70…垂下筒
80…塗布具 82…柄 84…塗布部 86…基部 88…塗布面 90…背面
92…側面 P…注出物
A…塗布部セット代 O…回転軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄付き塗布部に注出物を付着させるための注出キャップであって、
頂板14内側の注出口18の周りから容器口頸部への装着筒20を垂下したキャップ本体12と、
このキャップ本体12の上面を覆う蓋体60と、
キャップ本体12の外周側へ起伏可能に連結された回動部材40と、を具備し、
回動部材40は、倒伏状態で回転軸Oから注出口18へ延び、かつ起立状態で注出口18に向けて垂直で平らな第1受面50を有し、この第1受面で、注出口と反対側の塗布部背面で受けて塗布部を位置決めすることが可能にしており、
かつ回動部材の起立状態を解除可能に保持するための姿勢保持手段38を設けたことを特徴とする、注出キャップ。
【請求項2】
倒伏状態での回動部材40の下面に、回動部材の回転軸Oから一定の距離を存して回転軸と平行な係止リブ52を付設し、この係止リブの一方側面を、塗布部の側面を受けるための第2受面54としたことを特徴とする、請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
上記注出口18を、頂板14の中心から起立した注出筒16の筒孔として形成するとともに、
上記回動部材40の先部をリング状部44に形成し、回動部材40を頂板14に対して起伏することで、注出筒16に対するリング状部44の挿脱が可能に形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の注出キャップ。
【請求項4】
上記回動部材40とキャップ本体12との連結箇所を、キャップ本体上面の外縁から一定長さ離れた箇所に設定するとともに、
上記姿勢保持手段38は、上記起立状態で回動部材40の基端部から起立し、回動部材とともに回動する回動突片38bと、頂板14のうちキャップ本体への回動部材の連結箇所付近から起立する固定突片38aとで形成され、回動突片38bは、回転軸O外方のキャップ本体上面部分へ重なることで起立状態の回動部材を支えるように形成し、固定突片38aは、上記起立状態において回動突片38b又は回動部材の基端部に対して分離可能に係合し、回動部材40の起立状態を保持するように形成したことを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の注出キャップ。
【請求項5】
キャップ本体12は、頂板14の外縁に基端部をヒンジ連結し、かつ頂板14の上面側へ折り返した折返し板34を有し、
この折返し板34の先部に、回転軸Oを形成する薄肉ヒンジを介して回動部材40の基部を連結することで、キャップ本体12と回動部材40とを一体に成形したことを特徴とする、請求項4記載の注出キャップ。
【請求項6】
キャップ本体12の頂板14後縁に第1薄肉ヒンジ24を介して蓋体60を連結するとともに、キャップ本体の頂板14前縁に第2薄肉ヒンジ26を介して折返し板34を連結したことを特徴とする、請求項5に記載の注出キャップ。
【請求項7】
請求項4に記載の注出キャップ10を含む注出容器2と、柄付きの塗布部84を含む塗布具80との組み合わせであって、塗布部84の背面90を位置決め用の回動部材40の第1受面50に、また塗布部84の側面92を第2受面54にそれぞれ当接させた状態で、塗布部84の塗布面88が注出筒16に触れない程度に接近するように構成したことを特徴とする、注出容器と塗布具との組み合わせ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−260600(P2010−260600A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111658(P2009−111658)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】