説明

注出口部材、該注出口部材を取り付けた多室包装袋及び該多室包装袋に内容物を充填した内容物充填体

【課題】異なる種類の内容物を、袋本体内に設けられた複数の小室に使用直前まで各内容物を隔離した状態で保存することができる多室包装袋に取り付けられる注出口部材、並びに、該注出口部材ユニットを取り付けた多室包装袋及び該多室包装袋に内容物を充填した内容物充填体を提供する。
【解決手段】袋本体と注出口部材とを備える包装袋用の注出口部材であって、前記袋本体の外部と内部とを連通させる連通路と、前記連通路の一端において前記袋本体の外部に接続する外部口と、前記連通路の一端において前記袋本体の内部に接続する内部口と、前記袋本体と接合される接合部と、を有し、前記連通路が、隔壁によって互いに独立した小通路に区画されており、前記隔壁の前記袋本体の内部側の端縁に、該隔壁の面方向と略平行に開裂するスリットを有することを特徴とする、注出口部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋本体内の前後方向に複数の小室を有する多室包装袋に取り付けられる注出口部材、該注出口部材を取り付けた多室包装袋及び該多室包装袋に内容物を充填した内容物充填体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、予め、異なる種類の内容物を1つの袋内で配合させておくと、経時的に内容物の状態に変化が生じてしまうような内容物については、使用直前まで各内容物を隔離した状態で保存することが好ましく、このような内容物の充填に適する袋として、複数の小室(多室)を備えた多室包装袋が提案されてきた。
【0003】
多室包装袋の技術分野においては、様々な改良が重ねられ、例えば、特許文献1では、主収納室と主収納室と連結可能な副収納室、及び主収納室と副収納室を隔離する剥離性シール部等からなる仕切部とを有する多室パウチが開示されている。当該多室パウチは、使用時に圧をかけることによって、仕切部を開封し、パウチ内で各内容物を混合させることができる機能を有することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、対向するシート同士を接着して形成された隔壁シール部を介して、収容室が二つ以上に区画された包装袋であって、袋本体の縁部には収容室内の収容物を注出する注出路を有する注出具が取り付けられ、且つ該注出具には隔壁シール部と連続してシートが接着された接合部が突接されてなる包装袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−227841号公報
【特許文献2】特開平11−79257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、異なる種類の内容物を袋本体内の前後方向に設けられた複数の小室に使用直前まで各内容物を隔離した状態で保存することが可能な、多室包装袋に取り付けられる注出口部材、該注出口部材を取り付けた多室包装袋、及び、該多室包装袋に内容物を充填した内容物充填体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の注出口部材は、袋本体と注出口部材とを備える包装袋用の注出口部材であって、
前記袋本体の外部と内部とを連通させる連通路と、
前記連通路の一端において前記袋本体の外部に接続する外部口と、
前記連通路の一端において前記袋本体の内部に接続する内部口と、
前記袋本体と接合される接合部と、
を有し、
前記連通路が、隔壁によって互いに独立した小通路に区画されており、
前記隔壁の前記袋本体の内部側の端縁に、該隔壁の面方向と略平行に開裂するスリットを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の注出口部材は、可撓性フィルムで形成された仕切り部により袋本体の内部が複数の小室に仕切られた多室包装袋において、該袋の仕切り部をスリットに挿入することによって、該袋の仕切り部と注出口部材の隔壁とが接合され、袋本体の小室と注出口部材の小通路とが接続される。従って、本発明の注出口部材によれば、多室包装袋の各小室に収容された各内容物を、混合させずに袋本体から注出することができる。
【0009】
前記隔壁の前記袋本体の内部側の端縁は、前記内部口から突出していることが好ましい。隔壁と該隔壁のスリットに挿入された可撓性フィルムとの接着が容易となるからである。
【0010】
前記隔壁のスリットの構造は特に限定されないが、前記スリットの入口又はその近傍において対向し合う内面の一方又は両方に、前記入口と略平行に延びる突起が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の注出口部材は、前記接合部が、その外周面に、前記隔壁と略平行な面方向において左右両側に張り出す一対のフランジを有し、前記スリットが、前記フランジの先端部又はフランジ面から開裂している形態とすることができる。
【0012】
本発明の多室包装袋は、上記した本発明の注出口部材を、可撓性フィルムにより形成された袋本体に取り付けた多室包装袋であって、
前記袋本体は、少なくとも、袋の前側と後ろ側を構成する対向する一対の平面部と、袋本体の内部空間を複数の小室に区画する仕切り部と、を有し、
前記注出口部材の前記隔壁の前記スリットに、前記仕切り部の端縁部が挿入されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の内容物充填体は、上記した本発明の多室包装袋の各小室に内容物を充填したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の注出口部材によれば、袋本体内に設けられた複数の小室に、異なる種類の内容物を使用直前まで各内容物を隔離した状態で保存することができる多室包装袋から、各小室に収容された各内容物を、混合させずに袋本体から注出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の注出口部材を取り付けた多室包装袋の一形態例を示す平面図である。
【図2】図1の多室包装袋100を図1のA−A面において切断した際の袋本体4の斜視図である。
【図3】図1の多室包装袋100に取り付けられた注出口部材1の正面図(3A)、側面図(3B)、該注出口部材1を上側から見た平面図(3C)、及び下側から見た平面図(3D)である。
【図4】図1の多室包装袋100の注出口部材1近傍の部分拡大断面図(4A)、及び該注出口部材1の隔壁15の下端の拡大断面図(4B)である。
【図5】本発明の多室包装袋における注出口部材と袋本体の構造及び位置関係の一形態例を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の注出口部材の一形態例を示すものであって、注出口部材を下側から見た平面図である。
【図7】本発明の注出口部材の一形態例を示すものであって、注出口部材を上側から見た平面図(7A)、及び下側から見た平面図(7B)である。
【図8】本発明の注出口部材の一形態例を示すものであって、注出口部材1の正面図(8A)、側面図(8B)、該注出口部材1を上側から見た平面図(8C)、及び下側から見た平面図(8D)である。
【図9】図8の注出口部材1を取り付けた多室包装袋101の一形態例を示す平面図である。
【図10】図9の多室包装袋101の注出口部材1近傍の部分拡大断面図である。
【図11】本発明の多室包装袋の他の形態を示すものであって、多室包装袋の注出口部材1近傍の部分拡大断面図(11A)、該注出口部材1の隔壁15の下端の拡大断面図(11B)、及び該隔壁15のスリット17の内面の拡大斜視図(11C)である。
【図12】図5に示す多室包装袋100の封止構造を説明する分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の注出口部材は、袋本体と注出口部材とを備える包装袋用の注出口部材であって、
前記袋本体の外部と内部とを連通させる連通路と、
前記連通路の一端において前記袋本体の外部に接続する外部口と、
前記連通路の一端において前記袋本体の内部に接続する内部口と、
前記袋本体と接合される接合部と、
を有し、
前記連通路が、隔壁によって互いに独立した小通路に区画されており、
前記隔壁の前記袋本体の内部側の端縁に、該隔壁の面方向と略平行に開裂するスリットを有することを特徴とする。
【0017】
以下、本発明について、図を参照しながら説明する。
まず、本発明の注出口部材及び多室包装袋の基本的な構造について、図1〜図5を参照しながら説明する。
尚、以下、本発明の注出口部材の構造を説明するにあたり、注出口部材の連通路の連通方向に沿って、袋本体の外部に相対的に近い位置を上側又は高い位置とし、その内部に相対的に近い側を下側又は低い位置とする。ここで、注出口部材の連通路の連通方向とは、袋本体の内部と外部とを連通する注出口部材の連通路が延びる方向を意味する。
また、本発明において、略平行とは、完全に平行な状態の他、±10度程度の角度範囲で平行からずれている状態も含む。
また、図1、図2、図9、図12において、ハッチング箇所は、各構成部材の封止部分を示している。
【0018】
図1は、本発明の注出口部材を取り付けた多室包装袋の一形態例を示すものである。また、図2は、図1の多室包装袋100をA−Aにおいて切断した際の袋本体4の斜視図、図3は、図1の多室包装袋100に取り付けられた注出口部材1の正面図(3A)、側面図(3B)、該注出口部材1を上側から見た平面図(3C)、及び下側から見た平面図(3D)である。また、図4は、図1の注出口部材1近傍の部分拡大断面図(4A)、及び該注出口部材1の隔壁15の下端の拡大断面図(4B)である。図5は、注出口部材と袋本体の構造及び位置関係の一形態例を示す分解斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の多室包装袋100は、少なくとも、本発明の筒状の注出口部材1と、袋本体4とから構成され、必要に応じて、注出口部材1を閉鎖する閉鎖部材2を有する。尚、注出口部材1と閉鎖部材2との組み合わせを注出ユニット3とする。
【0020】
袋本体4は、図2に示すように、その内部10が、袋の前後方向に並設され、且つ、互いに独立した複数の小室10X,10Yに仕切られている。具体的には、袋本体4は、袋の前側と後ろ側を構成する対向する一対の平面部5,5と、一対の平面部5,5の間に当該平面部と略平行に配置され、袋本体4の内部10を複数の小室10X,10Yに区画する仕切り部6とを有している。袋本体4を構成する一対の平面部5,5及び仕切り部6は、その端縁部を重ね合わせて封止した封止部分(上端封止部分7、下端封止部分8、側端封止部分9,9)を有しており、小室10X,10Yは、互いに独立した空間となっている。袋本体4を構成する各部材は、いずれも可撓性フィルムで形成されており、折り曲げ又は折り畳み加工することが可能である。
【0021】
注出口部材1は、袋本体4の内部に充填される内容物の注出口として機能する他、場合によっては、袋本体4の内部に内容物を充填する際の充填口としても使用される。
図1において、注出口部材1は、注出口部材1の外周面に設けられたネジ部16と、閉鎖部材2であるキャップの内周面に設けられたネジ部(図示せず)とが螺合することによって、閉鎖部材2により閉鎖される。
【0022】
図1及び図3に示すように、注出口部材1は、袋本体4の外部と内部10とを連通する連通路11を有している。
連通路11は、その一端において袋本体4の外部に接続する外部口12、他方の一端において袋本体4の内部10に接続する内部口13を有している。また、注出口部材1は、袋本体4の内面と接合する接合部14を有している。
【0023】
連通路11は、図3、図4に示すように、連通路11の連通方向と略平行に、且つ、外部口12近傍の高さから接合部14の下端部14bの高さにかけて設けられた隔壁15によって、2つの小通路11X,11Yに区画されている。2つの小通路11X,11Yは、各々、袋本体4の内部と外部を連通する、互いに独立した通路であり、小通路11Xは袋本体4の小室10Xと袋本体4の外部を連通し、一方、小通路11Yは袋本体4の小室11Yと袋本体4の外部を連通する。
なお、隔壁15の上端縁、すなわち、隔壁15の袋本体の外部側の端縁は、閉鎖部材2の内面と当接し、各小通路11X,11Yが、外部口12において封止される(図示せず)。
【0024】
注出口部材1は、隔壁15の袋本体4の内部側の端縁、すなわち、隔壁15の下端縁から開裂するスリット17を有している。スリット17の開裂は、隔壁15から接合部14に及んでいる(図3(3B),(3D)及び図4(4A),(4B)参照)。スリット17は、隔壁15をその面方向と略平行に分割するように開裂しており(図3(3D)及び図4(4A),(4B)参照)、また、接合部14の上端14aの高さに達している(図3(3B)及び図4(4A)参照)。
【0025】
スリット17には、袋本体4の仕切り部6を構成する可撓性フィルムの端縁6tが隔壁15と平行に挿入される。これにより、注出口部材1の連通路11を区画する隔壁15と、袋本体4の内部10を区画する仕切り部6とが接合され、注出口部材1の小通路11Xと袋本体4の小室10X、及び、注出口部材1の小通路11Yと袋本体4の小室10Yが、各々互い独立した空間として連通される。
【0026】
注出口部材1は、接合部14の外周面において袋本体4の内面と接合され、袋本体4に取り付けられている。具体的には、図1及び図5に示すように、注出口部材1は一対の平面部5,5の間に挟まれ、一対の平面部5,5の端縁部5t,5tにおいて、その接合部14の外周面と平面部5,5の内面とが接合されている。
このとき、図4及び図5に示すように、注出口部材1は、隔壁15の面方向が一対の平面部5,5と略平行になるように、その方向が合わせられている。そして、スリット17には、仕切り部6の端縁部6tが挿入され、隔壁15と仕切り部6とが接合されている。
その結果、図1に示すように、袋本体4において、一対の平面部5,5の端縁部5t,5tの間に仕切り部6の端縁部6tが重なって封止されている封止部分7に、注出口部材1が固着される。
【0027】
以上のように、本発明の注出口部材は、隔壁の下端側に形成されたスリットに可撓性フィルムが挿入されていることにより、注出口部材の連通路を区画する隔壁と、袋本体の内部を区画する仕切り部とが接合され、注出口部材の各小通路と、袋本体内の各小室とがそれぞれ連通されている。従って、本発明によれば、袋本体内の各小室に充填された各内容物を、混合することなく互いに分離させた状態で、注出口部材を経て袋本体の外部へと取出すことが可能となる。
【0028】
以下、本発明の注出口部材及びこれを備える多室包装袋の各構成部材について、さらに詳しく説明する。
まず、注出口部材について説明する。
注出口部材は、上記したような基本的な構造、すなわち、連通路、外部口、内部口、接合部、及びスリットを有する隔壁を少なくとも備えていれば、その形状は特に限定されない。例えば、図1に示される実施形態のように、注出口部材、注出口部材を取り付けた多室包装袋、又は多室包装袋に内容物を充填した内容物充填体を、製造工程の途中で吊るための支持フランジ18が設けられていてもよい。また、支持フランジによって吊り上げた注出口部材を整列するための整列リブ(図示せず)を備えていてもよい。また、図1のような閉鎖部材と螺着するためのネジ部を有していなくてもよく、単に筒状であってもよい。
【0029】
注出口部材の外部口を覆い、該注出口部材を閉鎖する閉鎖部材は、注出口部材(注出ユニット)が取り付けられる袋本体の内部の密封性を確保できれば、その構造に特に限定はない。例えば、図1に示すようなネジ型キャップ構造を有するものの他、注出口部材と連結され、扉のように不可分の状態で開閉可能な構造を有する蓋、注出口部材の外部口に嵌め込まれる、ゴム製やコルク製等の栓構造を有するもの等でもよい。また、閉鎖部材は、袋本体に充填された内容物を注出口部材から取出す際、注出口部材の外部口全面を開放させる構造の他、例えば、開放させる小通路を1つ以上選択できる構造を有していてもよい。さらに、袋本体内の密封性を高めるために、インナーシール部材を用いてもよい。また、閉鎖部材には、不正開封を防止する、改ざん防止機能が付与されていてもよい。
【0030】
図3(3D)や図5に示すように、注出口部材1の接合部14は、その外周面に、隔壁15と略平行な面方向において左右両側に張り出す一対のフランジ14fを有していることが好ましい。このようなフランジ14fを有することによって、そのフランジ面により、平面部5,5との接合面積を確保することができるからである。さらには、フランジ14fのフランジ面の形状により、平面部5,5と接合部14との接合工程における、該平面部5,5の内面と、接合部14の外周面との密着性が高まり、その接合性を向上させることができるからである。
フランジの具体的な形状は特に限定されず、注出口部材の構造、該注出口部材を取り付ける袋本体の構造等に応じて、適宜設計すればよい。
【0031】
接合部がフランジを有する場合、隔壁は、左右両側のフランジと直線状に結ばれる位置に設けられていてもよいし、直線状に結ばれない位置に設けられていてもよい。例えば、図3(3D)に示すように、フランジが注出口部材の前後方向中央位置に設けられ、隔壁15が連通路の断面を等分に分割するように設けられる場合、該隔壁15は、左右両側のフランジ14f,14fと直線状に結ばれる位置に設けられているまた、図6のように、フランジが注出口部材の前後方向中央位置に設けられ、隔壁15が連通路の断面を非等分に分割するように設けられる場合、該隔壁15は、左右両側のフランジ14f,14fと直線状に結ばれない位置に設けられている。
【0032】
また、接合部が上記のようなフランジを有する場合、スリットは、フランジの先端部又はフランジ面から開裂する。例えば、図3(3D)に示すように、隔壁15が連通路の断面を等分に分割するように設けられる場合、スリット17は、通常、フランジ14fの先端部14ftから開裂する。また、図6のように、隔壁15が連通路の断面を非等分に分割するように設けられる場合、スリット17は、フランジ14fの隔壁15の対応する位置のフランジ面から開裂する。
尚、フランジが注出口部材の前後方向の中央位置からずれて設けられている場合は、この形状に限定されない。
【0033】
注出口部材は、連通路を小通路に区画する隔壁を1つ有する形態、すなわち、連通路を2つの小通路に区画する形態に限られず、隔壁を2つ以上有し、連通路を3つ以上の小通路に区画する形態でもよい。例えば、図7に示すように、2つの隔壁15,15によって、連通路が3つの小通路11X,11Y,11Zに区画される形態でもよい。
【0034】
隔壁と、袋本体の仕切り部である可撓性フィルムは、スリットに該可撓性フィルムを挿入することで接合されるが、隔壁と仕切り部との接合性を確保し、袋本体の小室間及び該小室と連通する注出口部材の小通路間の独立性を確実にするためには、隔壁のスリット内において、該隔壁と仕切り部とが接着されていることが好ましい。接着する方法としては特に限定されない。例えば、接着剤を用いる方法やヒートシール法が挙げられるが、隔壁の下端縁は内容物と触れる位置であるため、接着剤を用いる方法より、ヒートシール方が好ましい。
【0035】
また、隔壁は、少なくとも、接合部の上端よりも高い位置から該上端よりも低い位置にかけて設けられていれば、袋本体の仕切り部を構成する可撓性フィルムをそのスリットに挿入することで、該可撓性フィルムと接合することができる。また、隔壁の上端が、閉鎖部材により各小通路を外部口において封止できる高さを有していれば、各小通路間の独立性は確保することができる。そのため、隔壁15は、必ずしも、図4のように、外部口12近傍の高さから接合部14の下端部14bの高さにかけて設けられていなくてもよい。但し、図4のような高さを有する隔壁15は、各小通路の閉鎖部材による封止の確実性、閉鎖部材の構造の簡略化等の点においてメリットを有している。
【0036】
さらに、隔壁15は、図8〜図10に示すように、袋本体の内部側の端縁(下端)が内部口13から突出していることが好ましい。このように隔壁15の下端が内部口13から突出している場合、隔壁15と、該隔壁15のスリット17に挿入された仕切り部6である可撓性フィルムとの接着が、注出口部材の接合部14や連通路10等に妨げられにくく、容易となるからである。
例えば、隔壁15と、該隔壁15のスリット17に挿入された仕切り部6である可撓性フィルムとの接着を、ヒートシールにより行う場合、可撓性フィルムをスリット17に挿入した状態で、隔壁15の両面を加熱加圧することにより、隔壁15と可撓性フィルムを貼り合せることができる。すなわち、隔壁15の下端が内部口13の下端から突出している場合、この突出した隔壁15の下端の両面に外側からヒートシールバーをあて易くなり、可撓性フィルムを挿入した状態の隔壁15を加熱加圧しやすく、隔壁15と可撓性フィルムとの接着が容易になる。
【0037】
スリットの構造は、袋本体の仕切り部である可撓性フィルム、すなわち、接合部における注出口部材の径よりも幅の広い可撓性フィルムを、隔壁と略平行に挿入することができれば、その構造に特に限定はない。例えば、スリットは、図3(3B)及び図4(4A)のように、接合部14の上端14aの高さに達していなくてもよく、上端14aの近傍(例えば、上端14aのわずかに下側)の高さに達する構造でもよい。スリットの上端は、隔壁の上端面を貫通していてもよい。
【0038】
スリットは、図4に示すように、可撓性フィルムが挿入可能な単なる切れ込み構造の他、その入口又はその近傍において対向する内面の一方又は両方に、該入口と略平行に延びる(図11参照)突起17aが設けられ、この突起17aの先端部の挟み込む力によって、該スリットに挿入した可撓性フィルムと隔壁との間が封止できる構造でもよい。尚、図11は、注出口部材1近傍の部分拡大断面図(11A)、該注出口部材1の隔壁15の下端の拡大断面図(11B)、及び該隔壁15のスリット17の内面の拡大斜視図(11C)である。
図11のように、その入口又はその近傍において対向する内面の一方又は両方に、該入口と略平行に延びる突起17aが設けられたスリットは、次のようなメリットがあることから、好ましい構造の一例として挙げられる。すなわち、仕切り部である可撓性フィルムの固定性、並びに各小室及び各小通路間の密封性を向上させることができる。また、上記のような突起が設けられることによって、スリット内に内容物が入り込むのを防止することができ、包装袋の衛生面も向上するというメリットがある。突起の構造によっては、袋本体に充填する内容物が液体等の浸透性の高い場合でも、該突起が設けられた隔壁と可撓性フィルム(仕切り部)とを、ヒートシールや接着剤等を用いて接着させなくても、スリット内に内容物が入り込むのを防止することが可能である。
【0039】
スリットに設けられる突起の具体的な構造は、特に限定されない。例えば、図11に示す実施形態では、スリットの入口で対向する内面の両方に突起17a,17aが設けられているが、スリットの対向する内面の一方のみに突起が設けられていてもよい。但し、突起による効果を確実に得るためには、スリットの入口又はその近傍において対向する内面の両方に、突起が、互いに当接するように配置されていることが好ましい。また、突起の断面形状は特に限定されない。
【0040】
注出口部材を形成する材料は、その接合部において、袋本体を構成する可撓性フィルムと接合することができ、袋本体に固着することができれば、特に限定されない。但し、上記したように、注出口部材と袋本体を構成する可撓性フィルムとをヒートシールにより接合する場合には、通常、該可撓性フィルムとの接着性を有し、且つ、ヒートシール工程における加熱に対して耐性を有する材料によって形成されている必要がある。そのため、典型的には、後述する可撓性フィルムの最内層である、ヒートシール性を有する内面層と同質材料であるプラスチック材料によって形成される。このようなプラスチック材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等を用いることができる。
【0041】
注出口部材の接合部の外周面を、袋本体の構成する一対の平面部の内面と接合させ、該注出口部材を袋本体に取り付ける方法は、特に限定されない。例えば、接着剤を用いる方法、ヒートシール法等が挙げられる。
ヒートシール法の具体的な方法としては、例えば、注出口部材の接合部の表面材質と、袋本体の平面部を構成する可撓性フィルムの最内面層の材質とを、ヒートシール性の同質材料とし、注出口部材を一対の平面部の間に挟み、且つ、その接合部を一対の平面部の端縁部に位置合わせした状態で、接合部と一対の平面部を加熱する方法が挙げられる。一対の平面部の間の配置された仕切り部は、注出口部材のスリットに挿入され、注出口部材の隔壁と仕切り部とが接合される。上記したように、必要に応じて、仕切り部と隔壁とは接着剤やヒートシール等により接着してもよい。
【0042】
本発明の多室包装袋において、注出口部材の取り付け位置は特に限定されない。例えば、図1のように、袋本体の上端部中央に取り付ける形態の他、袋本体上端部の角部であってもよいし、或いは袋本体の下端部や側縁部であってもよい。
【0043】
次に、多室包装袋について説明する。
本発明の注出口部材を取り付けた多室包装袋は、上記したような一対の平面部と、仕切り部、その内部が前後方向に仕切られ、互いに独立した複数の小室を備えた袋本体を有していれば、その構造は特に限定されない。
多室包装袋は、一対の平面部の端縁部の間に、仕切り部の端縁部を重ね合わせて封止した封止部分を有している。封止部分において、袋本体を構成する各部材の可撓性フィルムの端縁部が接合され、袋本体の内部と小室が形成される。各部材間の端縁部を封止するために、重ね合わせられた可撓性フィルムの相対する面同士を接合する方法は特に限定されないが、例えば、接着剤を用いて可撓性フィルムの相対する面同士を接着する方法や、可撓性フィルムの相対する面同士を同質材料としヒートシールにより接着する方法等が挙げられる。
ここで「ヒートシール性の同質材料」とは、加熱により熱融着し、接合が可能な特性を有する材質のことをいう。
【0044】
例えば、図1に示す多室包装袋100において、袋本体4は、図5に示すように、袋の前側と後ろ側を構成する対向する一対の平面部5,5と、山部2つと谷部1つを有するガセット形状を有する底部19と、一対の平面部5,5の間に該平面部と略平行に配置され、且つ、底部19の谷部19aに挟まれた仕切り部6から構成されている。
図12に示すように、仕切り部6はその下端部が底部19のガゼットの谷部19aに挟み込まれ、底部19の谷部19aを構成する可撓性フィルム間に固着されている(封止部分20)。また、一対の平面部5,5は、仕切り部6と底部19を前後から挟み込み、平面部の下端部と底部の下端部において底部19と接合される(封止部分8)。また、一対の平面部5,5は、その側縁部において、該平面部5,5の間に挟み込まれた仕切り部6の側縁部と接合されている(封止部分9)。封止部分9において折りたたまれた底部19の側縁部も仕切り部6及び平面部の側縁部と接合されている。さらに、仕切り部6の上端部と平面部5,5の上端部とが、接合されている(封止部分7)。
このように、袋本体を構成する可撓性フィルムの端縁部を重ね合わせ、接合することによって、袋本体の製袋が行われる。尚、各部材を構成する可撓性フィルムの接合順序は上記順序に限定されない。
【0045】
また、袋本体の具体的な構造は特に限定されない。例えば、上記にて説明した袋本体は、底部にガゼット構造を有する自立型多室包装袋の一例であるが、例えば、側部にガゼット構造を有する多室包装袋であってもよいし、また、一対の平面部と仕切り部のみからなる平袋型の多室包装袋であってもよい。
さらに、袋本体内にその前後方向に並設される小室は、2つに限定されず、仕切り部を2つ以上用いることで、3つ以上の小室を設けた構造とすることができる。
【0046】
包装袋を構成する可撓性フィルムは、一般に袋の製造に用いられる可撓性フィルムであれば、特に限定されず、例えば、単層フィルムであってもよく、最外層としての基材層、中間層、及び最内層としての内面層などの複層からなる積層フィルムであってもよい。
【0047】
基材層は、袋の最外層を形成し、印刷適性、耐ピンホール性、及び耐衝撃性等の機能を有する層であることが好ましい。基材層の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、及びエチレンビニルアルコール共重合体等の一軸又は二軸延伸フィルム、並びに、これらの延伸フィルムを用いた積層フィルム等が挙げられる。
【0048】
これらの延伸フィルム又は積層フィルムに、袋の用途として、酸素バリア性、及び水蒸気バリア性が要求される場合、基材層の材質としては、例えば、アルミニウム等の金属、並びに、酸化アルミニウム、及び酸化ケイ素等の無機酸化物を蒸着させた蒸着フィルム;ポリ塩化ビニリデン、及びポリアクリル酸系樹脂等をコーティング(バリアコート)させたコートフィルム;等を用いることもできる。また、紙やセロファン等も用いることができる。
【0049】
中間層は、酸素バリア性、水蒸気バリア性、及び引き裂き性等の機能を有する層であることが好ましい。中間層の材質としては、袋の用途として、酸素バリア性、及び水蒸気バリア性が要求される場合には、例えば、アルミニウム箔などの金属箔;アルミニウム等の金属、並びに、酸化アルミニウム、及び酸化ケイ素等の無機酸化物を蒸着させたフィルム;ポリ塩化ビニリデン、及びポリアクリル酸系樹脂等をコーティング(バリアコート)させたフィルム;等が挙げられる。
【0050】
内面層は、袋の最内層を形成し、ヒートシールが可能な層であることが好ましい。内面層の材質としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、及びアイオノマー樹脂等からなる未延伸フィルム、又はこれらの樹脂を層状に押し出したものが挙げられる。
【0051】
これらの層を積層して積層フィルムを形成する方法は、一般に積層フィルムの形成に用いられる積層方法であれば、特に限定されず、例えば、接着剤を用いてドライラミネート法により積層フィルムを形成する方法であってもよく、熱接着樹脂を用いて押し出しラミネート法により積層フィルムを形成する方法であってもよい。また、その他のラミネート法により積層フィルムを形成する方法であってもよい。
【0052】
袋本体の製袋と注出口部材の袋本体へ取り付けの順序は、特に限定されない。例えば、注出口部材の取り付け部分を除いて、袋本体を構成する可撓性フィルムの接合(封止)が完了した状態の袋本体に、注出口部材を取り付けてもよいし、注出口部材を取り付ける平面部及び仕切り部の端縁部の封止と同時に、注出口部材の取り付けを行ってもよいし、袋本体を構成する一対の平面部と注出口部材とを接合した後、袋本体の製袋を行ってもよい。また、注出口部材と平面部及び仕切り部との接合については、例えば、仕切り部を構成する可撓性フィルムと注出口部材とを接着させた後、平面部を該注出口部材に接合してもよい。
【0053】
本発明の多室包装袋は、充填する内容物に特に限定はないが、混合せずに同時に使用する、複数種の内容物を充填するのに適している。また、本発明の多室包装袋は、予め、1つの袋内で配合させておくと、経時的にその状態の変化又は品質の低下が生じてしまうために、使用直前に混合することが好ましい複数種の内容物を充填するのにも適している。
【0054】
具体的には、混合せずに同時に使用する内容物の組み合わせとしては、例えば、マスタードとケチャップ、マーガリンとジャム等、流動物の組み合わせの他、砂糖とクリーム、等の固形物と流動物の組み合わせが挙げられる。また、個包装されたものを内容物として充填することもできる。
また、使用直前に混合することが好ましいものとしては、例えば、豆乳と凝固剤、用事混合する医療用輸液等、流動物の組み合わせの他、ドレッシングとゴマ、ドレッシングと粉チーズ、水と茶粉、等の流動物と固形物の組み合わせが挙げられる。
【0055】
本発明の多室包装袋に内容物を充填した内容物充填体は、異なる種類の内容物を各小室に充填することによって、各内容物を混合させることなく、互いに隔離した状態で袋本体に封入させることができる。従って、本発明の内容物充填体は、上記にて例示したような、予め1つの袋内で配合させておくと、経時的にその状態に変化が生じてしまうような異なる種類の内容物、或いは、品質の低下が生じてしまうような異なる種類の内容物であっても、状態の変化や品質低下を生じさせることなく、保存することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 …注出口部材
2 …閉鎖部材
3 …注出ユニット
4 …袋本体
5 …平面部
5t …平面部の端縁部
6 …仕切り部
6t …仕切り部の端縁部
7 …封止部分(上端部)
8 …封止部分(下端部)
9 …封止部分(側縁部)
10 …内部
10X…小室
10Y…小室
11 …連通路
11X…小通路
11Y…小通路
12 …外部口
13 …内部口
14 …接合部
14a…接合部の上端部
14b…接合部の下端部
14f…接合部のフランジ
14ft…接合部のフランジの先端部
15 …隔壁
16 …ネジ部
17 …スリット
17a…突起
18 …支持フランジ
19 …底部
19a…谷部
20 …封止部分(底部)
100…多室包装袋
101…多室包装袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋本体と注出口部材とを備える包装袋用の注出口部材であって、
前記袋本体の外部と内部とを連通させる連通路と、
前記連通路の一端において前記袋本体の外部に接続する外部口と、
前記連通路の一端において前記袋本体の内部に接続する内部口と、
前記袋本体と接合される接合部と、
を有し、
前記連通路が、隔壁によって互いに独立した小通路に区画されており、
前記隔壁の前記袋本体の内部側の端縁に、該隔壁の面方向と略平行に開裂するスリットを有することを特徴とする、注出口部材。
【請求項2】
前記隔壁の前記袋本体の内部側の端縁が、前記内部口から突出していることを特徴とする、請求項1に記載の注出口部材。
【請求項3】
前記スリットの入口又はその近傍において対向し合う内面の一方又は両方に、前記入口と略平行に延びる突起が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の注出口部材。
【請求項4】
前記接合部は、その外周面に、前記隔壁と略平行な面方向において左右両側に張り出す一対のフランジを有し、
前記スリットは、前記フランジの先端部又はフランジ面から開裂していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の注出口部材。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか一項に記載の注出口部材を、可撓性フィルムにより形成された袋本体に取り付けた多室包装袋であって、
前記袋本体は、少なくとも、袋の前側と後ろ側を構成する対向する一対の平面部と、前記袋本体の内部を前後方向に複数の小室に区画する少なくとも1つの仕切り部と、を有し、
前記注出口部材の前記隔壁の前記スリットに、前記仕切り部の端縁部が挿入されていることを特徴とする、多室包装袋。
【請求項6】
請求項5に記載の多室包装袋の各小室に内容物を充填した内容物充填体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−285192(P2010−285192A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141326(P2009−141326)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】