説明

注射器

【課題】新規の注射器を提供する。
【解決手段】注射器は、ハウジング(34)と、注射すべき液体(52)を有するカルプーレ(50)を受容するためのカルプーレコンテナ(44)と、前記カルプーレ(50)内において摺動可能なピストン(48)とを有する。更に該注射器は、前記カルプーレコンテナ(44)内へ挿入されたカルプーレ(50)のピストン(48)を注射時に摺動させ、該摺動により該カルプーレ(50)から液体(52)を押し出すために用いられるピストン棒(38)を有する。該ピストン棒(38)は外ねじ(40)を有し、該外ねじ(40)は、前記ハウジング(34)内に配設された構成部材(150)の内ねじと係合状態にある。更に該注射器は伝動機構(98)を有し、該伝動機構(98)は第1構成部材(68)を有し、該第1構成部材(68)は、前記ハウジング(34)に対して相対的に回転可能であるが、軸方向において摺動不能に配設されており、該伝動機構(98)は第2構成部材(92)を有し、該第2構成部材(92)は、前記ピストン棒(38)と相対的に回転不能であるが、軸方向において摺動可能に連結されており、かくして、前記ピストン棒(38)が軸方向に移動することを妨げられていない間は、前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)と前記ピストン棒(38)とが共に前記ハウジング(34)に対して相対的に回転することができ、そして、前記ピストン棒(38)がカルプーレ(50)のピストン(48)により該ピストン(48)の方向へ更に移動することを妨げられているときには、前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)とは互いに相対的に動き、該動きにより、前記第2構成部材(92)と、前記第2構成部材(92)と相対的に回転不能に連結された前記ピストン棒(38)とが前記ハウジング(34)に対する相対的な回転を妨げられる位置へと、前記第2構成部材(92)が摺動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注射器に関し、好ましくは、カルプーレ(カートリッジ Karpule)とも称される薬剤貯蔵容器から患者の薬剤要求に応じて1回又は複数回の注射を行うために用いられる注射器に関する。これらの注射は、カニューレ(Kanuele)とも称される注射針を通して行われる。
【背景技術】
【0002】
カルプーレは、通常はエラストマーから成る摺動可能なピストンを有し、該ピストンは押込栓(Stopfen)とも称される。注射をする際に押込栓は、配量ピストンとも称されるピストン棒により、前に向かう方向に即ち患者に向かい、薬剤を注射針を通して押し出すために押圧される。
【0003】
このような注射器の一般的な使用においてピストンの所望の動きは0.14mmのステップ幅で設定することができる。従って、注射される薬剤の量に関して所望の正確さを達成するには、ピストンのポジションが注射の開始の際に正確に分かっていることが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの注射器においてカルプーレは交換可能であり、即ちカルプーレの内容液が使い切られた場合には注射器内へ新しいカルプーレが取り付けられる。新しいカルプーレが取り付けられた後にはカルプーレ内のピストンの位置は正確には分かっていない。機械的に一定の容積で充填されるカルプーレでさえ、ピストンの位置は、ほぼ±0.5mmの割合で変動することがある。
【0005】
それ故、カルプーレを交換することのできるペン型注射器(Pen-Injektor)では、カルプーレ交換の後にはピストン棒がカルプーレのピストンに対して「当接調節(angestellt)」されなくてはならなく、即ちピストン棒とピストンの間には当接調節の後にもはや遊びがあってはならない。この当接調節は、多くの場合、患者がカルプーレを取り付けた後で且つ注射針をねじ固定した後に、繰り返し少量の注射量を設定し、そしてピストン棒がピストンに対して十分に当接し且つ初めて薬剤が注射針から出ていくまで、空中への「注射」を行うことにより行われる。この過程は注射準備(空打ち Primen)と呼ばれている。実際には、この過程が出来るだけ簡単で且つはっきりと感知できることが重要であるが、その理由はこの過程がそうでなければ容易に忘れられてしまうためである。
【0006】
ペン型注射器は、通常、カルプーレが挿入され且つ該ペン型注射器に固定される保持器を有している。この保持器は、カルプーレコンテナと称することができるが、患者に近い方の前側端部において、注射針が例えばバヨネット結合機構又はねじ山機構を用いて装着可能であるように形成されている。
【0007】
従って本発明の課題は、新規の注射器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により前記課題は、請求項1の対象により解決される。
【0009】
本発明の更なる詳細と有利な展開形態は、以下で説明され且つ図面に図示され、決して本発明の限定と理解すべきではない実施例、並びに下位請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】所謂ペン型注射器の形式の注射器28を示す図であり、図1は図2の矢印Iの方向から見た図である。
【図2】図1の注射器を示す図であり、図2は図1の矢印IIの方向から見た図であり、この図においてカルプーレ(カートリッジ)は薬剤で部分的に満たされている。
【図3】図1及び2による注射器を示す図であり、該注射器では、薬剤の蓄え(ストック)が使い切られており、それ故、空のカルプーレが満タンのカルプーレと交換されなくてはならない。
【図4】図3の注射器と同じ注射器を示す図であり、該注射器では、空のカルプーレの交換を可能にするために、矢印58の方向のカルプーレコンテナの回転によりピストン棒が後方へねじ戻されている。
【図5】図4の注射器を示す図であり、該注射器では、カルプーレコンテナ(該カルプーレコンテナはまだ空のカルプーレを含んでいる)が取り外されている。
【図6】図5の注射器を示す図であり、該注射器では、古いカルプーレがカルプーレコンテナから取り外された後に新しいカルプーレと取り替えられている。
【図7】図6の注射器を示す図であり、該注射器では、カルプーレコンテナが注射器のハウジングに固定されている。
【図8】図7の注射器を示す図であり、該注射器では、ピストン棒がカルプーレコンテナの回転により新しいカルプーレ内のピストンへと導かれ、該ピストンに対して遊びのない状態で当接している。
【図9】図8に対応する図であるが、拡大図として示されており、この図は、カルプーレ内のピストンと、ピストン棒に固定された円盤との間に空隙があってはならないことを説明するために用いられる。
【図10】カルプーレコンテナ44の側面図であり、図10は図11の矢印Xの方向から見た図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿って見た縦断面図であり、ここではカルプーレコンテナ44内に満タンのカルプーレ50が配置されている。
【図12】図10及び11のカルプーレコンテナ44の立体図である。
【図13】ハウジング34にカルプーレコンテナ44を固定するために用いられる第1構成部材68であり、注射準備(Primen)のサポートのために用いられるここでは3つの傾斜台(カム面)を支持する第1構成部材68の立体図である。
【図14】図13の第1構成部材68の立体図であるが、図14は3つの傾斜台のある側から見た図である。
【図15】図13及び14の第1構成部材68の平面図であり、図15は図14の矢印XVの方向から見た図である。
【図16】図13〜15の第1構成部材68の傾斜台と協働(連携作用)する同様に3つの傾斜台を支持する第2構成部材92の立体図である。
【図17】第2構成部材92の下方からの平面図であり、図17は図18の矢印XVIIの方向から見た図である。
【図18】図17の矢印XVIIIの方向から見た側面図である。
【図19】図16の第2構成部材92の平面図であり、図19は図16及び18の矢印XIXの方向から見た図である。
【図20】図16〜19による第2構成部材92並びに該第2構成部材92に作用する圧縮ばねの立体図である。
【図21】図20に対応する図であるが、側面図として示されており、第2構成部材92の図示は、ほぼ図18による図示に対応している。
【図22】ハウジング34の平面図であり、図22は図21の矢印XXIIの方向から見た図である。
【図23】上記各図面において図示された構成部材の協働を説明するための分解図である。
【図24】図23に対応する立体図である。
【図25】カルプーレ50のピストン48に対するピストン棒38(図9)の当接調節(Anstellung)と、回転に対する第2構成部材92の同時ロック(gleichzeitige Verriegelung)とを説明するために用いられる図である。
【図26】第2構成部材92のロックされた状態を示す図であり、この状態によりピストン棒38(図9)も回転に対してブロックされるが、軸方向においては動かすことができる。
【図27】カルプーレの交換前における第2構成部材92のロックの解除を示す図であり、ここではカルプーレコンテナ44は、図示の矢印58の方向(反時計方向)に回転される。
【図28】図25の矢印XXI−XXIの方向から見た縦断面図である。
【図29】図26の矢印XXIX−XXIXの方向から見た縦断面図である。
【図30】ハウジング34の平面図であり、図30は図31の矢印XXXの方向から見た図である。
【図31】注射器の簡素化された実施例の分解図である。
【図32】図31に対応する図であるが、立体図として示されている。
【図33】図16〜29による実施例の図16に対する変形例であり、この変形例は、特にカルプーレの交換が可能でない注射器に適していると認められ、即ち図13〜15の第1構成部材と協働する3つの傾斜台124を有する第2構成部材である。
【図34】第2構成部材92の下方からの平面図であり、図34は図35の矢印XXXIVの方向から見た図である。
【図35】図34の矢印XXXVの方向から見た側面図である。
【図36】図33〜35の第2構成部材92の平面図であり、図36は図35の矢印XXXVIの方向から見た図である。
【図37】図35のものよりもねじピッチが減少された傾斜台124’を有する第2構成部材92の変形例を示す図である。
【図38】第2構成部材92の平面図であり、図38は図37の矢印XXXVIIIの方向から見た図である。
【図39】カルプーレ交換後の「当接調節(Anstellen)」の過程時における注射器の重要部分を極めて模式的に示した図である。
【図40】当接調節の完了を示す図であり、ここではピストン棒38の円盤46’がピストン48に対して当接しておりピストン棒38は回転に対してブロックされている。
【図41】円盤46’を下方に動かすためにカルプーレコンテナ44が矢印58の方向に回転されるカルプーレ交換時の過程を示す図である。
【実施例】
【0011】
図1及び2は、注射器28を示しており、該注射器28は、そのサイズの小ささによりペン型注射器(ペンインジェクタ)とも称される。注射器28の後方、即ち患者の反対側において注射器28は(設定ボタン30の回転により)所望の注射量を設定するための設定ボタン30を有し、この際、設定された注射量は窓32内に表示される。設定時には設定ボタン30がハウジング34から引き出されて回転され、注射時には患者が矢印36の方向に即ち患者に向かって設定ボタン30を押圧する。それにより、外ねじ(雄ねじ)40の設けられたピストン棒38が矢印42の方向に前方へ(図1〜12及び23〜32において上側にいると見るべき)患者の方向に移動(回転摺動)される。外ねじ40は左ねじとして図示されている。
【0012】
図2及び3において、ピストン棒38はカルプーレコンテナ44内に位置しており、該カルプーレコンテナ44には互いに対向する2つの窓46が設けられている。
【0013】
図3は、空のカルプーレ(カートリッジ)50の入ったペン型注射器28を示しており、カルプーレ50の形状は図11においてもっとも良く見ることができる。注射液52(図2、6、7、8、9、11)が使い切られており、ピストン棒38は、その最も前方のポジションにある。図11に示されているような満タンのカルプーレ50の取り付けに先立って、ピストン棒38はその最も後方のポジションへ戻されなくてはならない。
【0014】
このことは、多くのペン型注射器では、カルプーレコンテナ44が回して取り外され、その後、ピストン棒38が、リターンリングと称される別個の部材における回転により回転して戻されることにより行われる。他のペン型注射器では、ピストン棒38が、カルプーレコンテナ44を取り外した後に単純に手によってハウジング34内へ押し戻される。
【0015】
図示されている注射器では、ピストン棒38は、カルプーレコンテナ44における回転により、ここでは反時計方向の回転により(図4の矢印58を参照(回転方向は注射器28の前側の目視点から記載されており、即ち上方の目視点からである))ねじ戻される。
【0016】
ピストン棒38がその最も後方のポジションに達した時に、カルプーレコンテナ44を取り外すことができ(図5)、そして空のカルプーレ50が満タンのカルプーレと取り替えられる(図6を参照)。その後、カルプーレコンテナ44は、再びハウジング34に固定される(図7を参照)。回転方向58とは反対方向の回転により、ここでは即ち時計方向の回転(図8の矢印60を参照)により、ピストン棒38は前方にねじ出される。
【0017】
ピストン棒38の円盤46’がピストン48に到達すると直ちに(図8)当該システムが自動的にロックを行う、即ち時計方向60におけるカルプーレコンテナ44の更なる回転は不可能となる。反時計方向にカルプーレコンテナ44を回転させる(図4の矢印58を参照)ためには、今や増加されたトルク(erhoehtes Drehmoment)が必要である。
【0018】
このようにして、現在取り付けられているカルプーレ50から患者がまだ注射を行いたいにもかかわらず、患者が誤ってカルプーレコンテナ44を反時計方向に回転させてしまうこと(ピストン棒38がハウジング34内へ戻ること)が防止される。つまりその際には円盤46’とピストン48との間に隙間62(図9)が発生することになり、ピストン48は、後に続く注射の間、ピストン棒38の円盤46’により、この隙間62の大きさ分だけ少なすぎる行程分をもって前方に動かされ、それにより注射時には、それに対応して少なすぎる液量が注射されることになるであろう。それ故、ピストン48に対する円盤46’の正確な「当接調節(Anstellen)」が極めて重要である。
【0019】
つまりカルプーレコンテナ44は、ロックされた状態(図8)では、増加されたトルクをもってのみ反時計方向において回転することができる。このことは、カルプーレ交換の誤った開始(図4)に対する保護をもたらすように作用し、その効果は、比較可能なペン型注射器では通常である保護と比較可能である。
【0020】
カルプーレコンテナ44がロックされた後には、後続段落で説明するように、患者はペン型注射器をもう一度特別に注射準備(Primen)する必要なく注射を始めることができる。それにより、極めてはっきりと感知でき且つ容易に理解できる操作が達成されている。
【0021】
図10〜12は、カルプーレコンテナ44を説明するために用いられる。カルプーレコンテナ44は、患者から遠い方の端部63において、第1構成部材68の対応する穴66とのバヨネット結合機構のために用いられるピン64をもっている。第1構成部材68は、図13〜15及び23〜32において図示されている。
【0022】
図25によると、固定配置のためにピン64は、上方から軌道70に沿って穴66内へ挿入され、そして(左方向への)回転により経路72に沿って突起部(ノーズ)74を超え、図25、26、27に図示された固定配置位置へともたらされる。軸方向に延在する穴76(図26)により、穴66の下側境界部78(図26)は、固定配置結合を可能とするために弾性的なばね作用を有する。
【0023】
第1構成部材68は中空円筒形状の外壁80を有し、該外壁80には、弾性的なばね作用を有する案内要素82が作り込まれており、これらの案内要素82にはハウジング34内において環状溝84(図20、24、28、29)が割り当てられている。組み立てにより案内要素82がこの環状溝84とかみ合い、そのようにして第1構成部材68は、案内要素82によりハウジング34の環状溝84において回転可能に案内されているが、軸方向においてはハウジング34に対して相対的に摺動することはできない(軸方向には固定的に係合する)。また第1構成部材68は、バヨネット結合機構(ピン64、穴66)を介してカルプーレコンテナ44と、取り外し可能に固定的に結合されている。
【0024】
図14が示しているように、第1構成部材68は、円筒形状の外壁80に接続して底部86を有し、該底部86の中央には穴88が設けられており、該穴88内には、図28、29に従い、第2構成部材92のカラー90が突出しており、それにより第1構成部材68と第2構成部材92とは、互いに相対的に回転可能であり且つ軸方向においても摺動可能である。
【0025】
例えば図16、17、19が示しているように、カラー90は、軸方向に延在する穴94を有し、該穴94は、ピストン棒38の軸方向案内のために用いられ、それ故、ピストン棒38の横断面形状(ここでは不完全円形状)に形状適合されており、それによりピストン棒38と第2構成部材92とは、共同でのみ(共に一体的に)回転できるが、軸方向においては互いに相対的に摺動可能である。
【0026】
それに対して第1構成部材68は、確かにハウジング34に対して相対的に回転可能であるが、軸方向において摺動可能ではない。このことは、カルプーレコンテナ44が第1構成部材68に固定配置されている場合に、同様にカルプーレコンテナ44においても当てはまる。
【0027】
第1構成部材68と第2構成部材92とは共同で伝動機構98を形成し、該伝動機構98の機能を図25〜27に基づいて次に説明する。つまり伝動機構98は、第1構成部材68と第2構成部材92との間の相対回転を第2構成部材の軸方向運動へ変換するために用いられ、該軸方向運動は、第2構成部材92と、該第2構成部材92内に案内されているピストン棒38とを、例えばハウジング34と第2構成部材92との形状係合(図21〜23及び25〜27;ありつぎ的係合 formschluessiger Eingriff)により、又は第2構成部材92とハウジング34との間に強い摩擦を発生させること(図32〜36;摩擦係合)により、固定的に制動(festbremsen)するという機能を有する。
【0028】
図13〜36が示しているように、第1構成部材68並びに第2構成部材92には傾斜台(カム面ないし傾斜滑り部分を有する支台 Rampe)104並びに118が設けられている。
【0029】
図14及び15は、例として3つの傾斜台104を示しており、これらの傾斜台104は、第1構成部材68の底部86上に120°の同じ角度間隔で配設されている。
【0030】
図15において1つの位置105(時計で見るとほぼ3時に対応するであろう位置)から出発すると、時計方向において先ずは、ほぼ50°の角度範囲を有する傾斜台のない部分106が続いている。この部分106には、傾斜部分110を有する部分108(例えば30°)が続いており、その傾斜部分110は、部分108において通常のごとく最大値まで上昇している。
【0031】
更に平坦部分112(例えば40°)が続いており、この平坦部分112では傾斜台104の高さはもはや基本的には変化せず、この平坦部分112の終端部114において傾斜台104の高さは突然ゼロに降下し、即ち終端部114の位置は傾斜台104の肩部を意味している。つまり全体として第1構成部材68は、3つの傾斜台104、3つの肩部114、そして3つの傾斜部分110を有している。
【0032】
肩部114に接続して上述の構造が繰り返される。即ち肩部114から所定の角度間隔106をおいて、図14及び15から明確に見てとれるように、次の傾斜部分110の上昇が始まる。
【0033】
第2構成部材92(図16〜19)は、図15と19の比較が示すように、第1構成部材68の上述の構造と十分に相補的な構造を有する。第2構成部材92は同様に3つの傾斜台118を有している。
【0034】
ほぼ4時に対応しうるであろう位置にある肩部(急斜面壁部)120(図19)から始まり、時計方向で見て先ずは、平坦領域122(例えば50°)があり、この平坦領域122には、図19において下側にある傾斜台118の上昇傾斜領域124が続いている。この傾斜領域124は、この例では、ほぼ30°の角度範囲126を有し、そして例えば40°の角度範囲128を有する平坦なルーフ領域(台頂部)において終端しており、このルーフ領域の終端部には再び肩部120が設けられている。
【0035】
傾斜台118はカラー90の周りに位置しており、カラー90の内側には、ピストン棒38が案内される(不完全円形状ないし欠円状の)穴94が設けられている。つまり第2構成部材92が回転すると、ピストン棒38も回転し、そして該ピストン棒38は、例えば注射準備(Primen)において必要であるように、軸方向において穴34内を自由に移動(回転摺動)することができる。
【0036】
第2構成部材92は、傾斜台118とは反対側において連結突出部130を有し、該連結突出部130は、その自由端部132において円錐台形状(frustokonisch)になっており、また該連結突出部130には、ハウジング34の対応する縦溝136に係合するための縦溝134が設けられており、それにより連結突出部130は、ハウジング34の縦溝136への係合時には形状結合(Formschluss)により回転が防止されるようになっている。場合によりこの効果は、図30〜36に従い、第2構成部材92が単純にハウジング34の面140(図32)に対して押し付けられ、そこで摩擦により回転に対して動かないように固定されることにより、連結突出部を用いなくても達成することができる。
【0037】
第2構成部材92は、ばね142により、第1構成部材68に向かう方向に押し付けられ、第1構成部材68は、ハウジング34内において回転可能であるが、案内要素82と環状溝84により軸方向においては摺動可能に案内されていない。
【0038】
(作動方式)
図25が示すように、第1構成部材68の傾斜台104は、新しいカルプーレ50の挿入後に行われる時計方向の回転時60(図8を参照)には、第2構成部材92の傾斜台118の間に位置しているが、その理由は、第2構成部材92がばね142(図24)により第1構成部材68に対して押し付けられるためである。それにより連結突出部130は、ハウジング34内に設けられている連結部(縦溝)136と係合状態にはなく、それにより、患者がカルプーレコンテナ44を時計方向(矢印60)に回転させると、カルプーレコンテナ44と共に第1構成部材68も自身の傾斜台104と共に回転し、これらの傾斜台104は、図25に従い、第2構成部材92の傾斜台118の間に嵌り込み、それによりこの回転運動60を、第2構成部材92にも、該第2構成部材92内に案内されているピストン棒38にも伝達する。
【0039】
ピストン棒38は、ハウジング34内においてねじ部150(図28、29)において案内されており、該ねじ部150は、例えば注射器の配量装置の一部分でありえて、カルプーレ交換時には回転しない。それ故、ピストン棒38は、図28において回転時60(図25)には、上に向かう方向、即ち患者に向かって移動(回転摺動)される。
【0040】
この際、ピストン棒38は、図9に図示されているように、その円盤46’を用いてカルプーレ50内のピストン48に対して当接することとなり、即ち注射器28は、注射準備された状態(geprimt)となり、つまり注射のために正しく準備が成された状態にある。
【0041】
それ故、ピストン棒38は、更に上方へと動くことはできず、即ち矢印60(図25)の方向におけるトルクは、図26に図示されているように、患者がカルプーレコンテナ44を更に回転させるので確かに更に作用するが、第2構成部材92の回転は、ピストン棒38がピストン48に対して当接してるため(図8を参照)、今やブロック(阻止)されている。
【0042】
それ故、第1構成部材68の傾斜台104の傾斜面110(図14〜16)は、第2構成部材92の傾斜台118の傾斜面124に対して軸方向の力をもたらし、図26に図示されているように第2構成部材92を、ばね142(図21)の力に抗して、第1構成部材68から離れていくように摺動させる。それにより、連結突出部130(図21)とハウジング34内の縦溝136との間の連結がもたらされ、従って第2構成部材92は時計方向60において更に回転することはできない。
【0043】
つまり今や注射器28は直ぐに使える状態にあり、即ち患者は通常どおり自身に固有の注射量を設定し、カルプーレ50の内容液を使い切るまで注射を行うことができる。
【0044】
カルプーレ50の内容液が使い切られた後にはカルプーレコンテナ44が取り外されなくてはならない。そのためにカルプーレコンテナ44は、図27に従い、反時計方向の方向58において回転される。この際、第1構成部材68と第2構成部材92との間の今までの結合が解消され、第2構成部材92は、ばね142の付勢力により、上に向かう方向に摺動され、第1構成部材68の肩部114が第2構成部材92の肩部120に対して当接することとなり、それにより第2構成部材92は、同様に反時計方向の方向58において駆動される。
【0045】
それによりピストン棒38は、当接状態に至るまでハウジング34内へと回転され、この過程の最後においてバヨネット結合機構(ピン64、穴66)が解除され、それによりカルプーレコンテナ44を、図1〜9に基づいて既述したように、使い切られたカルプーレを取り除いて新しいカルプーレ50を挿入するために取り外すことができる。
【0046】
その後、上記の過程は、新しいカルプーレ50を新たに注射準備し(primen)且つ注射器28を新たに確実な使用のために準備するために繰り返される。
【0047】
本発明の最適化のために、複数の傾斜面の勾配(ピッチ)も変化された。
【0048】
これらの傾斜面の各々は、ねじの一部分として考えることができ、該ねじの(仮定上の)ねじ山は、所定のピッチをもっている。このねじピッチ(thread pitch)は、1つのねじ山から次のねじ山までの間隔であり、好ましくは、ほぼ10mmからほぼ20mmに至るまでの値を有する。
【0049】
図38には、第2構成部材92の傾斜面124’の内径aと外径bが記入されている。実際の値は、例えば、
a=6mm
b=11.5mm
である。
【0050】
傾斜面124’は、ここでは例えば40°の値をとる角度βにわたって延在している。
【0051】
当接調節時に第1構成部材68と第2構成部材92とが36°で互いに相対的に回転されるとすると、それらの間隔(高さ間隔)hは、以下の式に基づいて変化する。
【0052】
h=36°/360°×ねじピッチ (1)
【0053】
ねじピッチが15mmであるとすると、hは、例えば1.5mmとなり、この値は、試行において有利な値であることが判明した。
【0054】
第1構成部材68における傾斜台104は、第2構成部材92の傾斜面124’と同様の形状を有し、それ故、図39〜41においてのみ図示されている。そこでは第1構成部材68とその傾斜台104が、理解を容易にするために灰色(点状)で強調されている。
【0055】
図39〜41は、セッティング過程を極めて模式的に示している。図39は、ピストン48に対する円盤46’の当接調節を示している。傾斜台118が矢印60の方向に回転され、それによりこれらの傾斜台118は、先ずは円盤46’を上方にピストン48の方向に動かす。図40には円盤46’がピストン48に到達した状態が示されている。それ故、今や上側の傾斜面110が下側の傾斜面124’に対して相対的に摺動し、第2構成部材92を下に向かう方向に摺動させ、それにより今や第2構成部材92は第1構成部材68から間隔h’を有し、第2構成部材92は上述のように回転に対してブロックされる。今や注射器は注射準備完了となっている。
【0056】
図41は、カルプーレ交換(カートリッジ交換)の過程を示している。カルプーレコンテナ44が矢印58の方向に回転され、それにより傾斜台104は傾斜面124’から離され、第1構成部材68と第2構成部材92との間の間隔が再びhとなる。第2構成部材92は、ばね142(図31を参照)により第1構成部材68の方向に押し付けられる。今や傾斜台104の急勾配の側面(肩部)114は、傾斜台104の対応する側面(肩部)120(図40)に対して押し付けられる。
【0057】
第1構成部材68は、第2構成部材92と共に矢印58の方向に回転されるので、円盤46’は下方に動かされ、この動きの最後において、図5に図示されているように、第1構成部材68はカルプーレコンテナ(配量部材)44から外される。従って操作は極めて簡単で且つはっきりと感知でき、配量精度はそれに応じて向上される。
【0058】
勿論、それ以外でも本発明の枠内において多岐に渡る変形形態及び修正形態が可能である。
【符号の説明】
【0059】
28 注射器
30 設定ボタン
32 窓
34 ハウジング
36 設定ボタンの押圧方向(注射時)
38 ピストン棒
40 外ねじ(雄ねじ)
44 カルプーレコンテナ
46 窓
46’ 円盤
48 ピストン
50 カルプーレ(カートリッジ)
52 注射液
58 カルプーレコンテナの回転方向(反時計方向)
60 カルプーレコンテナの回転方向(時計方向)
62 隙間
63 端部
64 ピン
66 穴
68 第1構成部材
70 軌道
72 経路
74 突起部
76 穴
78 下側境界部
80 外壁
82 案内要素
84 環状溝
86 底部
88 穴
90 カラー
92 第2構成部材
94 穴
98 伝動機構
104 傾斜台(カム面)
105 位置
106 傾斜台のない部分
108 傾斜部分を有する部分
110 傾斜部分(傾斜面)
112 平坦部分
114 肩部
118 傾斜台(カム面)
120 肩部
122 平坦領域
124 傾斜領域(傾斜面)
124’ 傾斜面
126 角度範囲
128 角度範囲
130 連結突出部
132 自由端部
134 縦溝
136 縦溝
140 面
142 ばね(圧縮ばね)
150 ねじ部
a 傾斜面の内径
b 傾斜面の外径
β 傾斜面の角度範囲
h 間隔(高さ間隔)
h’ 間隔(高さ間隔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器、特にペン型注射器であって、
ハウジング(34)と、
該ハウジング(34)に付設された、注射すべき液体(52)を有するカルプーレ(50)を受容するためのカルプーレコンテナ(44)と、前記カルプーレ(50)内において摺動可能なピストン(48)と、
前記カルプーレコンテナ(44)内へ挿入されたカルプーレ(50)のピストン(48)を注射時に摺動させ、該摺動により該カルプーレ(50)から液体(52)を押し出すために用いられるピストン棒(38)とを備え、
該ピストン棒(38)は外ねじ(40)を有し、該外ねじ(40)は、前記ハウジング(34)内に配設された構成部材(150)の内ねじと係合状態にあり、
更に伝動機構(98)を備え、
該伝動機構(98)は第1構成部材(68)を有し、該第1構成部材(68)は、前記ハウジング(34)に対して相対的に回転可能であるが、軸方向において摺動不能に配設されており、そして作動中には前記カルプーレコンテナ(44)と連結されており、
該伝動機構(98)は第2構成部材(92)を有し、該第2構成部材(92)は、前記ピストン棒(38)と相対的に回転不能であるが、軸方向において摺動可能に連結されており、
かくして、前記ピストン棒(38)が軸方向に移動することを妨げられていない間は、前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)と前記ピストン棒(38)とが共に前記ハウジング(34)に対して相対的に回転することができ、
そして
前記ピストン棒(38)がカルプーレ(50)のピストン(48)により該ピストン(48)の方向へ更に移動することを妨げられているときには、前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)とは互いに相対的に動き、該動きにより、前記ハウジング(34)に対する相対的な、前記第2構成部材(92)の回転の可能性と、前記第2構成部材(92)と相対的に回転不能に連結された前記ピストン棒(38)の回転の可能性とが少なくとも妨げられる位置へと、前記第2構成部材(92)が摺動されること、
を特徴とする注射器。
【請求項2】
前記伝動機構(98)は第1傾斜台(104)を有し、該第1傾斜台(104)は、前記第1構成部材(68)において前記第2構成部材(92)に指向する側に設けられており、
前記伝動機構(98)は第2傾斜台(118)を有し、該第2傾斜台(118)は、前記第2構成部材(92)において前記第1構成部材(68)に指向する側に設けられており、
そして、前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)との間の相対回転により、前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)との間の軸方向の間隔(h)を変化させ、該変化により前記第2構成部材(92)を、前記ハウジング(34)に対する相対的な前記第2構成部材(92)の回転が少なくとも妨げられる位置へと摺動させるために、前記第2傾斜台(118)が前記第1傾斜台(104)と協働すること
を特徴とする、請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)との間の相対回転の予め定められた範囲内において前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)との間の軸方向の間隔(h)の変化を起こさせないために、前記傾斜台(104、118)の少なくとも1つが、前記第1構成部材(68)の回転軸線に対してほぼ垂直に延在する部分へ移行すること
を特徴とする、請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
前記第2構成部材(92)を前記第1構成部材(68)の方向に付勢するばね要素(142)が設けられていること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項5】
前記第2構成部材(92)は、前記カルプーレ(50)の交換前に前記ピストン棒(38)を戻すためのリターン要素として形成されていること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項6】
前記第1構成部材(68)は、その前記カルプーレコンテナ(44)に指向する側において、前記カルプーレコンテナ(44)を取り外し可能に連結できるよう形成されて(64、66)いること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項7】
前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)とは、これらの互いに相対的な回転を可能にするマウント機構(88、90)を互いに接するよう有すること
を特徴とする、請求項5又は6に記載の注射器。
【請求項8】
前記伝動機構(98)は、次のように形成されていること、即ち、前記ハウジング(34)に対して相対的に行われる前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)と前記ピストン棒(38)との共同回転により、前記ピストン棒(38)が、前記カルプーレコンテナ(44)内へ挿入されたカルプーレ(50)のピストン(48)に到達したときには、前記第2構成部材(92)がロックポジションへ摺動可能であり、該ロックポジションでは、前記第2構成部材(92)に設けられた係合部(130)が、前記ハウジング(34)と相対的に回転不能に連結された対向係合部(134)に係合し、該係合により前記第2構成部材(92)と、前記第2構成部材(92)と相対的に回転不能に連結されたピストン棒(38)との更なる回転がブロックされるように形成されていること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項9】
前記傾斜台(104、118)は、各々(仮定上の)ねじ山状の形態に形成されていること
を特徴とする、請求項2又は3に記載の注射器。
【請求項10】
隣り合う2つの前記ねじ山の間の間隔であるねじピッチが、ほぼ10mmからほぼ20mmに至るまでの値を有すること
を特徴とする、請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記ねじピッチが、ほぼ14mmからほぼ16mmに至るまでの値を有すること
を特徴とする、請求項10に記載の注射器。
【請求項12】
前記第1構成部材(68)と前記第2構成部材(92)とには、各々3つの傾斜台が設けられており、前記第1構成部材(68)の前記傾斜台は前記第2構成部材(92)の前記傾斜台と少なくとも部分的に協働すること
を特徴とする、請求項2、3、9、10、11のいずれか一項に記載の注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公表番号】特表2013−505748(P2013−505748A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530158(P2012−530158)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005762
【国際公開番号】WO2011/035877
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(509323255)ハーゼルマイアー ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】