説明

注湯ノズル

【課題】本発明は、タンディッシュに溶湯が流れている間にタンディッシュの底面付近にある介在物が注湯ノズルに引き込まれることを抑制し、かつ、タンディッシュに溶湯を残すことなく、タンディッシュから鋳型への溶湯の注入作業を完了することができる注湯ノズルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、溶湯131が流れるタンディッシュ114に設けられ、略筒状をなし、一端の引込口201より溶湯を引き込み、他端の排出口202より溶湯を注湯先に供給する注湯ノズル200であって、引込口201が、タンディッシュ114の底面より上方に突出した位置となるようにタンディッシュ114に取り付けられるとともに、溶湯131の流れの下流側の側面に、タンディッシュ114の底面114aを下端として、内周側と外周側とを貫通する貫通穴203を備えた構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注湯ノズルに係り、特に、溶湯が流れるタンディッシュに設けられ、略筒状をなし、一端の引込口より溶湯を引き込み、他端の排出口より溶湯を注湯先に供給する注湯ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
砂鋳、金型鋳造の鋳物、押出材の鋳造、金属の連続鋳造などでは、溶湯を供給する際、タンディッシュと呼ばれる溶湯を収容するための容器を介して供給している。ここで、タンディッシュを用いた鋳造法の一例として、圧延スラブの半連続鋳造(DC鋳造;Direct chill Casting)の概要を説明する。なお、圧延スラブの半連続鋳造は、例えば、アルミニウム及びその合金の鋳塊である、圧延スラブ、押出用ビレットの製造に用いられる鋳造方法である。
【0003】
図10は、従来の圧延スラブの半連続鋳造装置の一例の概略構成図、図11は、従来の圧延スラブの半連続鋳造装置の一例の要部の断面図を示す。
圧延スラブの半連続鋳造装置100は、圧延スラブが所定の長さになる毎に注湯を一端停止し、鋳造された圧延スラブを取り出し、新たに注湯を行うことにより、圧延スラブを半連続的に製造する装置である。圧延スラブの半連続鋳造装置100は、主に、溶解炉111、脱ガス装置112、フィルタ113、タンディッシュ114、注湯ノズル115、鋳造部116などを含む構成とされている。
溶解炉111は、例えば、電気炉、るつぼ炉などからなり、アルミニウム合金などを溶解させる。溶解炉111で溶解された溶湯は、更に、脱ガス装置112に供給される。
【0004】
脱ガス装置112は、例えば、塩素ガス、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、塩化カリウムなどを主成とするパウダー状のフラックスの混合物を溶湯に投入し、撹拌する、いわゆる、フラクシングや、塩素精錬などの手法を用いて、溶湯からピンホールやブリスタの原因となる水素ガスを除去する。脱ガス装置112で水素ガスが除去された溶湯は、フィルタ113に供給される。フィルタ113は、脱ガス装置112から供給された溶湯からアルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、スピネル(Al2O3-MgO)などを含む介在物と呼ばれる不純物を除去する。フィルタ113で介在物を除去された溶湯は、タンディッシュ114に供給される。
【0005】
タンディッシュ114は、例えば、平面形状が略長方形、あるはL字状とされ、断面形状が略凹状とされた溶湯131を流すための容器である。なお、タンディッシュ114の平面形状は、長方形、L字状に限定されるものではなく、種々の形状が存在している。タンディッシュ114には、フィルタ113で介在物が概ね除去された溶湯131が供給される。溶湯131は、タンディッシュ114の長手方向の一方の端部に供給され、他方の端部に向けて供給される。これにより、タンディッシュ114内には、溶湯131の流れが矢印A方向に生じる。
【0006】
注湯ノズル115は、タンディッシュ114の内側底面114aの長手方向に略等間隔に複数箇所にわたって取り付けられている。
【0007】
タンディッシュ114に供給された溶湯131は、注湯ノズル115の引込口115aから引き込まれて、注湯ノズル115の排出口115bから排出される。注湯ノズル115から排出された溶湯131は、鋳造部116に供給される。
【0008】
鋳造部116は、鋳型121、ボトムブロック122、昇降装置123などを含む構成とされ、注湯ノズル115から供給された溶湯131を鋳型121により凝固させ、垂直下方に連続して排出する装置である。鋳型121は、例えば、中空状の筒体を、例えば、矩形状に形成した構成とされている。鋳型121は、タンディッシュ114の下部に、注湯ノズル115の排出口115bを囲むように配置される。また、注湯ノズル115の排出口115bの周囲には、例えば、湯面制御のためにフロート117が設けられている。フロート117は、鋳型121の湯面の高さに応じて上下動して、注湯ノイズル115の排出口115bを開閉することにより鋳型121の湯面の高さを略一定に調整する。
【0009】
鋳型121の中空内部には、冷却水118が流れており、注湯ノズル115から排出された溶湯131を冷却して、凝固させる。また、鋳型121の下端内周側には、冷却水118の排出口121aを有し、鋳型121の下端から排出されるスラブ133を、排出口121aから排出される冷却水118により直接的に冷却する。なお、鋳型121の下側開口部から排出されるスラブ133は、横断面形状が鋳型121の内周側の形状とされている。
【0010】
また、鋳型121の下側の開口部には、ボトムブロック122が配置されている。ボトムブロック122は、鋳型121から下方に排出されたスラブ133を支える。ボトムブロック122は、昇降装置123により昇降可能とされており、鋳造時には、昇降装置123により鋳型121の下側の開口部付近から下方に移動し、鋳型121から排出されたスラブ133を下方に移動させる。
【0011】
注湯ノズル115から鋳造部116の鋳型121に溶湯131を供給しつつ、昇降装置123によりボトムブロック122を下方に移動させることにより、鋳型121で溶湯131が連続的に凝固され、横断面形状が鋳型121の内周側形状とされた柱体状のスラブ133が下方、すなわち、縦方向に連続的に排出される。排出されたスラブ133は、圧延スラブ、鋳塊などの半製品として出荷される。
【0012】
ここで、タンディッシュ114に流し込まれる溶湯131について説明する。
タンディッシュ114に流し込まれる溶湯131には、フィルタ113によって除去しきれない、あるいは、フィルタ113の通過後に新たに生成されるアルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、スピネル(Al2O3-MgO)などの粒状の介在物132が混入している。アルミニウム合金の溶湯131の密度が、略2.37g/cm3であるのに対し、介在物132であるアルミナ、マグネシア、スピネルの密度は、略3.6〜4.0g/cm3である。このため、タンディッシュ114に注入された溶湯131中においては、アルミナ、マグネシア、スピネルなどの介在物132は、タンディッシュ114内で浮上せず、溶湯131中にただよっていたり、沈降したりしている。
しかし、出荷品の品質の向上には、タンディッシュ114内の介在物132のスラブ133への混入を極力低減する必要がある。
【0013】
次に、従来の注湯ノズル115の構成について説明する。
注湯ノズル115は、通常、図11に示すように、引込口115aがタンディッシュ114の内側底面114aと一致するように配置されていた。このため、タンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降した介在物132が溶湯131とともに注湯ノズル115の引込口115aに引き込まれ、排出口115bから鋳型121に供給される可能性が高かった。これによって、スラブ133に介在物132が含有されることになり、出荷製品の品質の向上を阻害することになる。
【0014】
このため、タンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降した介在物132が鋳型121に供給されない手法が望まれている。
そこで、従来、例えば、図12(a)に示すように注湯ノズル141の引込口141aを、タンディッシュ114の内側底面114aより上方に突出して設け、タンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降した介在物132が注湯ノズル141の引込口141aより引き込まれない構造とした注湯ノズルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0015】
また、別の手法として、タンディッシュから注湯ノズルへの介在物の混入を抑制するために、注湯ノズルの引込口に対向してロッドストッパを配置し、ロッドストッパにより注湯ノズルの引込口から引き込まれる溶湯の量を適正化する構成とした連続鋳造装置において、ロッドストッパの断面形状を楕円形状とし、カルマン渦の発生を抑制する技術(例えば、特許文献2参照)、また、ロッドストッパによるカルマン渦発生箇所にカバー治具を設けることによりカルマン渦の発生を抑制する技術(例えば、特許文献3参照)、さらに、ロッドストッパに貫通穴を設けカルマン渦の発生を抑制する技術(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平8−252665号公報
【特許文献2】特開2009−18324号公報
【特許文献3】特開2009−90322号公報
【特許文献4】特開2009−90323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、特許文献1のような構造の注湯ノズル141では、図12(b)に示すように、鋳造作業が終了した後に、タンディッシュ114の内側底面114aと注湯ノズル141の引込口141aとの間に溶湯131が残存する。このため、タンディッシュ114から残存する溶湯131を排出する作業が、別途、必要となる。
【0018】
特許文献2〜4に開示された技術は、カルマン渦を抑制し、カルマン渦により注湯ノズルの引込口に引き込まれる介在物を抑制するものであり、タンディッシュの内側底面などに沈降した介在物を除去することはできない。
【0019】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、タンディッシュに溶湯が流れている間にタンディッシュの内側底面付近にある介在物が注湯ノズルに引き込まれることを抑制し、かつ、タンディッシュに溶湯を残すことなく、タンディッシュから鋳型への溶湯の注入作業を完了することができる注湯ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1は、溶湯が流れるタンディッシュに設けられ、略筒状をなし、一端の引込口より溶湯を引き込み、他端の排出口より溶湯を注湯先に供給する注湯ノズルであって、引込口が、タンディッシュの底面より上方に突出した位置となるようにタンディッシュに取り付けられるとともに、溶湯の流れの下流側の側面に、タンディッシュの底面を下端として、内周側と外周側とを貫通する貫通穴を備えたものである。
【0021】
本発明の請求項1によれば、溶湯の引込口をタンディッシュの底面より上方に突出した位置となるように取り付けることにより、溶湯に比べて比重の重く、タンディッシュ内で沈降する介在物が引込口に流れ込むことを低減でき、かつ、溶湯の流れる下流側の側面に、タンディッシュの底面を下端として、内周側と外周側とを貫通する貫通穴を設けることにより、溶湯の流れが停止した後に、貫通穴を通してタンディッシュから溶湯を排出することができる。
【0022】
また、本発明の請求項2は、請求項1において、貫通穴を、タンディッシュの底面を下端とし、上方に延長されたスリットから構成したものである。
【0023】
本発明の請求項2によれば、貫通穴をタンディッシュの底面を下端とし、上方に延長されたスリットにより構成することにより、スリットを通して注湯ノズルの下流側に、下流側に向けた溶湯の流れを発生させることができる。
【0024】
さらに、本発明の請求項3は、請求項1又は2において、貫通穴を、引込口の開口面積より小さい開口面積としたものである。
【0025】
本発明の請求項3によれば、貫通穴を、引込口の開口面積より小さい開口面積とすることにより、貫通穴での溶湯の流れ方向の流速を早めることができる。
【0026】
本発明の請求項4は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、引込口を、タンディッシュの底面から略10mm以上の高さにタンディッシュに取り付けたものである。
【0027】
本発明の請求項4によれば、引込口を、タンディッシュの底面から略10mm以上の高さとすることにより、タンディッシュの底面付近に沈降した介在物の引込口への引き込みを低減できる。
【0028】
また、本発明の請求項5は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、タンディッシュの底面から鋳造中の溶湯の湯面までの位置を略100パーセントとしたとき、引込口が、タンディッシュの底面から略50パーセントから略90パーセントの高さとなるようにタンディッシュに取り付けたものである。
【0029】
本発明の請求項5によれば、タンディッシュの底面から鋳造中の溶湯の湯面までの位置を略100パーセントとしたとき、引込口の位置をタンディッシュの底面から略50パーセントから略90パーセントの高さとすることにより、引込口に介在物を含まない溶湯の上澄み部分を引き込むことができる。
【0030】
本発明の請求項6は、請求項1乃至5において、引込口を、溶湯の上流側で低く、溶湯の下流側で高くなるように傾斜した形状としたものである。
【0031】
本発明の請求項6によれば、引込口を、溶湯の上流側で低く、溶湯の下流側で高くなるように傾斜した形状とすることにより、タンディッシュの底面より高い位置で、溶湯を効率よく引込口に引き込むことができる。
【0032】
本発明の請求項7は、請求項6において、貫通穴を引込口の溶湯の上流側の高さが上端となるように形成したものである。
【0033】
本発明の請求項7によれば、請求項6において、貫通穴を引込口の溶湯の上流側の高さが上端となるように形成することにより、傾斜により受けた溶湯を貫通穴に通すことができるので、貫通穴を通る溶湯の流速を早くできる。
【0034】
本発明の請求項8は、請求項1乃至7のいずれか一項記載の注湯ノズルにより、溶湯を、鋳型を通して凝固させ、縦方向に排出する縦型鋳造装置に供給するものである。
【0035】
本発明の請求項8によれば、請求項1乃至7のいずれか一項記載の注湯ノズルにより縦型鋳造装置に溶湯を供給することにより、装置に介在物の混在が極めて少ない溶湯を提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の請求項1によれば、溶湯に比べて比重の重い介在物を引込口に流れ込むことを低減できるため、介在物がスラブに混入することを防止でき、高品質のスラブを提供することが可能となるとともに、溶湯の流れが停止した後に、貫通穴を通してタンディッシュから溶湯を排出することができるため、別途、タンディッシュから材料を取り出す作業を行わなくて済むので、作業効率を向上させることができ、よって、効率よく高品質のスラブを製造することが可能となる。
【0037】
本発明の請求項2によれば、貫通穴をタンディッシュの底面を下端とし、上方に延長されたスリットにより構成することにより、スリットを通して注湯ノズルの下流側に、下流側に向けた溶湯の流れを発生させることができるため、介在物を確実に下流側に押し流すことが可能となり、引込口から引き込まれる溶湯への介在物の混入を低減できる。
【0038】
本発明の請求項3によれば、貫通穴を、引込口の開口面積より小さい開口面積とすることにより、貫通穴での溶湯の流れ方向の流速を早めることができるため、介在物が貫通穴から注湯ノズル内部に引き込まれることを効率的に防止でき、かつ、引込口から排出口への溶湯の供給量を高めることができ、鋳造を効率的に行える。
【0039】
本発明の請求項4によれば、引込口を、タンディッシュの底面から略10mm以上の高さとすることにより、タンディッシュの底面付近に沈降した介在物の引込口への引き込みを十分に低減でき、よって、溶湯ノズルから排出された溶湯により鋳造されるスラブへの介在物の混入を低減できるため、製品の品質を向上させることが可能となる。
【0040】
本発明の請求項5によれば、タンディッシュの底面から鋳造中の溶湯の湯面までの位置を略100パーセントとしたとき、引込口の位置をタンディッシュの底面から略50パーセントから略90パーセントの高さとすることにより、引込口に介在物を含まない溶湯の上澄み部分を引き込むことができるため、介在物の混入がきわめて少ない溶湯を提供することができ、スラブの品質を向上させることができる。
【0041】
本発明の請求項6によれば、引込口を、溶湯の上流側で低く、溶湯の下流側で高くなるように傾斜した形状とすることにより、タンディッシュの底面より高い位置で、溶湯の流れを効率よく受けることができるため、介在物の混入の少ない溶湯を引込口より効率的に引き込むことができ、在物の混入の少ない溶湯を提供することができる。
【0042】
本発明の請求項7によれば、貫通穴を引込口の溶湯の上流側の高さが上端となるように形成することにより、タンディッシュの底面より高い位置で、溶湯の流れを、更に効率よく受けることができるため、介在物の混入の少ない溶湯を引込口より効率的に引き込むことができ、また、貫通穴を通る溶湯の流速を早くでき、鋳造の効率を向上させることができるとともに、介在物の混入の少ない溶湯を提供することができる。
【0043】
本発明の請求項8によれば、注湯ノズルにより縦型鋳造装置に溶湯を供給することにより、装置に介在物の混在が極めて少ない溶湯を提供することができ、製造されるスラブの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る注湯ノズルの第1実施例の周辺部の斜視図である。
【図2】本発明に係る注湯ノズルの第1実施例の周辺部の構成図であり、(a)は、上面図、(b)は、側面図である。
【図3】本発明に係る注湯ノズルの第1実施例の動作を説明するための図であり、(a)は、溶湯がタンディッシュを流れている状態、(b)は、溶湯の流れを停止し、溶湯が排出される過程の状態、(c)は溶湯がタンディッシュから排出された状態を示す図である。
【図4】本発明に係る注湯ノズルから排出される溶湯への粒流入分布を示す図である。
【図5】本発明に係る注湯ノズルの第2実施例の周辺部の斜視図である。
【図6】本発明に係る注湯ノズルの第2実施例の周辺部の構成図であり、(a)は、正面図、(b)は、背面図、(c)は、側面断面図である。
【図7】本発明に係る注湯ノズルの第2実施例の動作を説明するための図であり、(a)は、溶湯がタンディッシュを流れている状態、(b)は、溶湯の流れを停止し、溶湯が排出される過程の状態、(c)は溶湯がタンディッシュから排出された状態を示す図である。
【図8】本発明に係る注湯ノズルの第3実施例の周辺部の斜視図である。
【図9】本発明に係る注湯ノズルの第3実施例の周辺部の断面図であり、(a)は、溶湯の量が多いときの状態、(b)は、溶湯の量が少ないときの状態を示す図である。
【図10】従来の圧延スラブの半連続鋳造装置の一例の概略構成図である。
【図11】従来の圧延スラブの半連続鋳造装置の一例の要部の断面図である。
【図12】従来の圧延スラブの半連続鋳造装置の注湯ノズルの周辺部の断面図であり、(a)は、溶湯がタンディッシュを流れている状態、(b)は、溶湯の流れを停止した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に係る注湯ノズル200は、例えば、図9に示す圧延スラブの半連続鋳造装置100の注湯ノズル115に代えて適用されるものである。
注湯ノズル200は、引込口201、排出口202、スリット203を含む構成とされている。引込口201は、タンディッシュ114の内側底面114aより上方に、高さhだけ突出した位置となるように設けられている。高さhは、例えば、略10mm以上である。引込口201のタンディッシュ114の内側底面114aからの高さhを略10mm以上とすることにより、タンディッシュ114に溶湯131が矢印A方向に流れているときに、タンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降した介在物132の引込口201への引き込みを大幅に低減できることが実験的に確かめられている。
【0046】
なお、介在物132は、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、スピネル(Al2O3-MgO)などを含み、溶湯131に比べて比重が重い物質である。また、実験結果については、後述する。
また、このとき、図3に示すように、引込口201の高さhは、タンディッシュ114の内側底面114aから鋳造中の溶湯131の表面レベルPs(図3参照)を略100パーセントとしたとき、タンディッシュ114の内側底面114aから略50パーセントから略90パーセントの高さとなるように設定されることが好ましい。
【0047】
引込口201は、その高さhを、溶湯131の表面レベルPsを略100パーセントとしたとき、タンディッシュ114の内側底面114aから略50パーセントから略90パーセントの高さに設定することにより、介在物132の混入が少ない溶湯131を引込口201から引き込むことができ、更に効果的にタンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降した介在物132の引き込みを低減できる。
引込口201に引き込まれた溶湯131は、排出口202に供給される。排出口202は、タンディッシュ114の下面114bから下方に突出しており、引込口201から引き込まれた溶湯131を鋳造部116に供給する。
【0048】
スリット203は、注湯ノズル200の引込口201の付近、溶湯131の流れの下流側の側面に、外周側と内周側とを貫通し、タンディッシュ114の内側底面114aより引込口201の高さhまで、幅wにわたって連続して形成されている。なお、溶湯131の上流側は、タンディッシュ114の長手方向のフィルタ113(図9参照)を介して溶湯131が供給される側の端部側であり、他方の端部側が下流側となる。
【0049】
スリット203は、開口面積S1が、引込口201の開口面積S2より小さい面積に設定されることが望ましい。スリット203は、高さがh、幅がwであるので、その開口面積S1は、(h×w)となる。一方、引込口201は、内径をRとすると、その開口面積S2は、(π×(R/2))となる。よって、スリット203の開口面積S1と引込口201の開口面積S2との関係は、〔S1>S2〕、すなわち、〔π×(R/2)>(h×w)〕であることが望ましい。なお、〔S1=S2〕であってもよい。
なお、スリット203の開口面積S1を引込口201の開口面積S2より小さくすることにより、スリット203を通して、注湯ノズル200の内周側に介在物132が流入することをより効果的に防止できる。
【0050】
次に、本実施例の注湯ノズル200の動作を、図面を用いて説明する。
まず、図3(a)に示すように、フィルタ113(図10参照)を介してタンディッシュ114に溶湯131が供給され、タンディッシュ114に溶湯131の流れが発生している状態では、介在物132は、溶湯131に比べて比重が大きいため、タンディッシュ114の内側底面114aに沈降し、溶湯131の流れに沿って移動する。このとき、注湯ノズル200は、引込口201が高さhに存在するため、タンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降した介在物132は、引込口201から引き込まれることはない。
【0051】
また、スリット203は、引込口201の下流側に存在するので、溶湯131の流れによって、スリット203には注湯ノズル200の内周側から外周側、すなわち、溶湯131の流れに沿って溶湯131が流れることになる。このため、スリット203の下端がタンディッシュ114の内側底面114aまで存在していても、タンディッシュ114の内側底面114a付近にある介在物132が注湯ノズル200の外周側からスリット203を通して、注湯ノズル200の内周側に流入することはない。
【0052】
フィルタ113を介してタンディッシュ114への溶湯131の流入が停止すると、タンディッシュ114内での溶湯131の流れが停止する。タンディッシュ114内での溶湯131の流れが停止すると、溶湯131が注湯ノズル200の引込口201及びスリット203から引き込まれ、排出口202から排出される。
【0053】
溶湯131がタンディッシュ114から排出され、溶湯131の表面レベルが図3(b)に示すように引込口201より低くなると、引込口201から溶湯131は引き込まれなくなる。しかし、スリット203がタンディッシュ114の内側底面114aまで形成されているため、溶湯131は、介在物132とともに、注湯ノズル200の外周側からスリット203を通して注湯ノズル200の内周側に引き込まれ、排出口202から排出される。このため、図3(c)に示すようにタンディッシュ114の内側底面114aには、溶湯131が残存することがない。
【0054】
このとき、タンディッシュ114に溶湯131を流し始めて、溶湯131の表面が注湯ノズル200の引込口201より低い位置にある間は、スリット203を通して溶湯131が注湯ノズル200の内周側に流れ込む。このため、鋳型121を通して鋳造されるスラブ133の下端部分、すなわち、ボトムブロック122付近のスラブ133には、介在物132が混入する。
【0055】
また、図3(b)に示す溶湯131の表面が引込口201の位置と一致する状態から、図3(c)に示すタンディッシュ114の内側底面114aから溶湯131が排出されるまでの間に、鋳型121を通して鋳造されるスラブ133の上端部分にも下端部分と同様に、介在物132が混入する。
【0056】
このように、タンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降する介在物132は、鋳型121を通して鋳造されるスラブ133の上端及び下端に集中して混在することは明らかである。したがって、製造されたスラブ133の上端及び下端から所定の部分を切断し、中間部分のスラブ133を半製品として出荷するようにする。あるいは、使用時にスラブ133の上端及び下端から所定の部分を切断して使用する。これにより、介在物132がほとんど混入しないスラブ133を使用することが可能となる。
【0057】
次に、本実施例の注湯ノズル200の有効性について説明する。
図4において、「□」は、図10に示す従来の注湯ノズル115から排出される溶湯131への粒流入分布、「●」は、本実施例の注湯ノズル200から排出される溶湯131への粒(介在物132)の流入の分布を示している。
【0058】
なお、図4において、#1strは、タンディッシュ114の溶湯131の供給口より最も近い位置に配置された注湯ノズル、#2strは、タンディッシュ114の溶湯131の供給口より2番目に近い位置に配置された注湯ノズル、#3strは、タンディッシュ114の溶湯131の供給口より3番目に近い位置に配置された注湯ノズル、#4strは、タンディッシュ114の溶湯131の供給口より3番目に遠い位置に配置された注湯ノズル、#5strは、タンディッシュ114の溶湯131の供給口より2番目に遠い位置に配置された注湯ノズル、#6strは、タンディッシュ114の溶湯131の供給口より最も遠い位置に配置された注湯ノズルを示している。
本実施例の注湯ノズル200を注湯ノズル115に代えて使用することにより、タンディッシュ114の溶湯131の供給口より最も遠い位置#1strに配置された注湯ノズルを除いて、注湯ノズルから排出される溶湯131への粒(介在物132)の流入が大幅に低減することが可能となる。
【0059】
なお、図4に示す本実施例の注湯ノズル200から排出される溶湯131への粒流入分布は、従来の注湯ノズル141から排出される溶湯131への粒流入分布と略同じになる。すなわち、溶湯131がタンディッシュ114を流れているときには、本実施例のように注湯ノズル200にスリット203を設けた場合であってもスリット203を通して介在物132が注湯ノズル200の内周側に引き込まれることはないので、従来の注湯ノズル141から排出される溶湯131への粒流入分布と同じになる。
【0060】
以上、本実施例によれば、注湯ノズル200の溶湯131の引込口201を、タンディッシュ114の内側底面114aより上方に突出した位置となるようにすることにより、溶湯131に比べて比重の重い介在物132が引込口201に流れ込むことを低減できる。また、溶湯131の流れる下流側の側面に、タンディッシュ114の内側底面114aを下端とするスリット203を設けることにより、溶湯131のタンディッシュ114での流れが停止した後に、スリット203を通してタンディッシュ114の内側底面114aから溶湯131を排出することができる。
【0061】
なお、スリット203は、タンディッシュ114の内側底面114aに残留する溶湯131を効率的に排出できる程度のサイズであればよい。また、スリット203ではなく、タンディッシュ114の内側底面114aに下端が接しており、注湯ノズル200の内周側と外周側とを貫通する貫通穴で構成されていればよく、要は、タンディッシュ114の内側底面114aに残留する溶湯131を、注湯ノズル200を通して排出できる構成であればよい。
【0062】
次に、本発明に係る注湯ノズルの第2実施例を、図7を用いて説明する。
本実施例の注湯ノズル300は、図7に示すように、引込口301、排出口302、スリット303を含む構成とされている。引込口301は、溶湯131の流れの上流側で、タンディッシュ114の内側底面114aから高さh1だけ突出し、溶湯131の流れの下流側で、タンディッシュ114の内側底面114aから高さh2だけ突出するように傾斜した形状とされている。すなわち、引込口301は、溶湯131の流れに対向するように傾斜した形状とされている。なお、例えば、高さh1は、略10mm以上、高さh2は、略10mm以上であり、かつ、高さh1より高く設定される。
【0063】
引込口301は、溶湯131の流れに対向するように傾斜した形状とすることにより、注湯ノズル300の内周側領域304で溶湯131の流れを受けることができる。このとき、内周側領域304は、高さh1より高い位置であるので、介在物132の混入が極めて少ない溶湯131の流れを受けることになる。内周側領域304は、溶湯131の流れを受けて、溶湯131を排出口302方向に供給する。
【0064】
排出口302は、タンディッシュ114の下面114bから更に下方に突出して設けられており、引込口301側から供給された溶湯131を鋳造部116に供給する。スリット303は、溶湯131の流れの下流側の引込口301の高さh2となる側面部分の下部に、タンディッシュ114の内側底面114aから高さh1、幅wにわたって形成されている。
【0065】
次に、本実施例の注湯ノズル300の動作を説明する。
まず、図7(a)に示すように、フィルタ113からタンディッシュ114に溶湯131が供給され、タンディッシュ114に溶湯131の流れが発生している状態では、介在物132は、溶湯131に比べて比重が大きいため、タンディッシュ114の内側底面114aに沈降しつつ、溶湯131の流れに沿って移動する。このとき、注湯ノズル300は、引込口301の上流側の高さh1に存在するため、タンディッシュ114の内側底面114a付近に沈降した介在物132は、引込口301から引き込まれることはない。
【0066】
また、このとき、引込口301の下流側の高さh2は、下流側の高さh1より高い位置にあるので、溶湯131の流れが受けやく、よって、溶湯131を引込口301に効率よく引き込むことが可能となる。また、スリット303は、引込口301の下流側の高さh1より下方に存在しているので、引込口301から引き込まれた溶湯131が流れによって、スリット203には注湯ノズル200の内側から外側に向けて溶湯131が流れることになる。このため、スリット303の下端がタンディッシュ114の内側底面114aまで存在していても、タンディッシュ114の内側底面114a付近にある介在物132がスリット303を通して、注湯ノズル300の内周側に流入することはない。
【0067】
フィルタ113からタンディッシュ114への溶湯131の流入が停止すると、タンディッシュ114内での溶湯131の流れが停止する。タンディッシュ114内での溶湯131の流れが停止すると、溶湯131が注湯ノズル300の引込口301及びスリット303から引き込まれ、排出口302から排出される。
【0068】
溶湯131がタンディッシュ114から排出され、表面が図7(b)に示すように引込口301の上流側の高さh1より低くなると、溶湯131は、引込口301からは引き込まれなくなる。しかし、スリット303は、タンディッシュ114の内側底面114aまで形成されているため、溶湯131は、介在物132とともに、スリット303を通して注湯ノズル300の内周側に引き込まれ、排出口302から排出される。したがって、図7(c)に示すようにタンディッシュ114の内側底面114aには、溶湯131が残存することがない。
【0069】
本実施例によれば、引込口301を溶湯131の流れに対向するように傾斜させるとともに、スリット303を溶湯131の下流側にタンディッシュ114の内側底面114aから高さh1にわたって形成することにより、高さh1より上部を流れる溶湯131を効率よく引込口301に引き込むことができる。これにより、注湯ノズル300から鋳造部116に溶湯131を効率よく供給できる。また、スリット303に溶湯131の流れに沿って溶湯131が通過するため、溶湯131が流れている間にスリット303から介在物132が注湯ノズル300に流れ込むことを防止できる。
【0070】
なお、上記第1、第2実施例では、貫通穴をスリットとした例について説明したが、タンディッシュ114の内側底面114aに接しており、内周側と外周側とで、貫通しており、タンディッシュ114の内側底面114aから溶湯131を排出できる構成の貫通穴であれば、スリットに限定されるものではなく、例えば、丸穴、角穴などであってもよい。
【0071】
次に、本発明に係る注湯ノズルの第3実施例を、図8、図9を用いて説明する。
本実施例の注湯ノズル400は、図8、図9に示すように、可動ノズル部401、固定部402を含む構成とされている。
可動ノズル部401は、略円筒状をなし、引込口411、排出口412、蓋部413、ストッパ部414を含み、タンディッシュ114の内側底面114aと下面114bとを貫通する取付穴114cに取り付けられる。また、可動ノズル部401は、溶湯131に対して比重が十分に小さい材料により、引込口411,排出口412、蓋部413、ストッパ部414が一体に構成されている。
【0072】
引込口411は、可動ノズル部401の上端側であり、溶湯131のタンディッシュ114の内側底面114aからの高さが高さhより高いときに、溶湯131を引き込み排出口412に供給する。排出口412は、可動ノズル部401の下端側であり、引込口411から引き込まれた溶湯131を固定部402に供給する。
【0073】
蓋部413は、略円環状をなし、可動ノズル部401の下端側、排出口412の周囲に設けられる。可動ノズル部401は、溶湯131との比重の違いによって、タンディッシュ114に収容される溶湯131のレベルが所定レベル以上のときには、引込口411がタンディッシュ114の内側底面114aから高さhだけ上方に突出し、タンディッシュ114に収容される溶湯131のレベルが所定レベルに満たないときには、下降する構成とされている。
ストッパ部414は、引込口411の外周縁部に複数箇所にわたって、外周側に突出して設けられている。ストッパ部414は、取付穴114cの内周側に複数箇所にわたって突出して設けられている爪部114dに係合して、可動ノズル401の脱落を防止する。
【0074】
なお、取付穴114cは、内径が、可動ノズル部401の引込口411付近の外径より大きく、蓋部413の外径より小さい径とされている。蓋部413は、可動ノズル部401が浮上したときに、可動ノズル部401とタンディッシュ114の取付穴114cとの間の間隙dを閉蓋する。取付穴114cには、内周側に複数箇所にわたって爪部114dが突出して設けられている。
【0075】
可動ノズル部401は、タンディッシュ114の下面114b側から取付穴114cに挿入される。このとき、ストッパ部414は、爪部114dの間を通過してタンディッシュ114の内側底面114a側に突出する。ここで、可動ノズル部401を矢印B方向に回転させて、ストッパ部414の下方に爪部114dが位置するように可動ノズル部401をタンディッシュ114の内側底面114aに平行な矢印B方向、回転させる。これにより、可動ノズル部401の下降時にストッパ部414と爪部114dとが係合し、可動ノズル部401がタンディッシュ114から脱落することが防止される。
【0076】
なお、固定部402は、略円筒状をなし、可動ノズル部401から間隙dを通して供給される溶湯131を鋳造部116に供給する。取付穴114cは、開口部422は、固定部402の下端側に設けられた開口であり、可動ノズル部401から供給される溶湯131を鋳造部116に供給する部位である。
【0077】
次に、注湯ノズル400の動作を説明する。
まず、図9(a)に示すように、溶湯131がタンディッシュ114内を流れており、かつ、タンディッシュ114の内側底面114aから高さL1にあるときには、可動ノズル部401が溶湯131内部に浸された状態であるので、浮力が働き、上方に浮上する。
なお、高さL1は、可動ノズル部401が浮上しているときの高さhより十分に大きい値である。
【0078】
可動ノズル部401が上方に浮上した状態では、可動ノズル部401の蓋部413の周縁部がタンディッシュ114の取付穴114cの周囲に突き当たり、可動ノズル部401とタンディッシュ114の取付穴114cとの間の間隙dが閉蓋される。また、可動ノズル部401は、引込口411がタンディッシュ114の内側底面114aから高さhの高さに位置する。この状態では、高さhより上の溶湯131が引込口411から引き込まれる。
【0079】
次に、溶湯131のタンディッシュ114への供給が停止され、溶湯131が引込口411から引き込まれ、溶湯131のタンディッシュ114の内側底面114aからの高さが可動ノズル部401の浮上時の高さh付近になると、可動ノズル部401の浮力が低下して、可動ノズル部401が降下する。可動ノズル部401が降下すると、可動ノズル部401の蓋部413の周縁部上面とタンディッシュ114の取付穴114cの下面114bとの間に間隙eが生じる。これにより、可動ノズル部401とタンディッシュ114の取付穴114cの周縁部との間隙dと可動ノズル部401の蓋部413の周縁部上面とタンディッシュ114の取付穴114cの下面114bとの間の間隙eを通してタンディッシュ114の内側底面114aと固定部402の内周部とが連通する。このとき、ストッパ部414が爪部114dに支持され、可動ノズル部401がタンディッシュ114から脱落することが防止される。
【0080】
タンディッシュ114の内側底面114aと固定部402の内周部とが連通することにより、タンディッシュ114の内側底面114aに残留する溶湯131が固定部402の開口部422から鋳造部116に供給される。これにより、タンディッシュ114の内側底面114aの溶湯131をほぼすべて排出することができる。
【0081】
本実施例によれば、タンディッシュ114の溶湯131の表面レベルが低下したときに、可動ノズル部401を下降させることにより、タンディッシュ114の内側底面114a付近に残留する溶湯131を鋳造部116に排出することができる。よって、別途、タンディッシュから材料を取り出す作業を行わなくて済むので、作業効率を向上させることができ、よって、効率よく高品質のスラブ133を製造することが可能となる。
【0082】
なお、本実施例では、可動ノズル部401を溶湯131との比重の差によって昇降させたが、可動ノズル部401を昇降させる昇降機構を別途設け、昇降機構により、可動ノズル部401を昇降させるようにしてもよい。
さらに、本実施例では、可動ノズル部401とタンディッシュ114の取付穴114cとの間に間隙d、eを設け、タンディッシュ114の内側底面114a付近に残留する溶湯131を排出するようにしたが、可動ノズル部401とタンディッシュ114の取付穴114cとの間に間隙d、eを設けずに、タンディッシュ114の内部の溶湯131の表面レベルが低下したときに、可動ノズル部401を下降させて、引込口411をタンディッシュ114の内側底面114aに一致させるようにしてもよい。
【0083】
可動ノズル部401の引込口411をタンディッシュ114の内側底面114aに一致させることにより、タンディッシュ114の内側底面114a付近に残留する溶湯131を排出することが可能となる。
また、本発明の注湯ノズル200、300、400は、圧延スラブの半連続鋳造装置100の溶解炉から保持炉への移湯桶の注湯ノズルとして適用することもできる。さらに、圧延スラブの半連続鋳造装置100に、本発明の注湯ノズル200、300、400などを適用した例について説明したが、本発明の注湯ノズル200、300、400は、圧延スラブの半連続鋳造への適用に限定されるものではなく、金属の縦型鋳造、砂鋳、金型鋳造の鋳物、押出材の鋳造などにおいて溶湯を供給する注湯ノズルなどとして適用できることは言うまでもない。
【0084】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲で、適宜適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
100 圧延スラブの半連続鋳造装置
111 溶解炉
112 脱ガス装置
113 フィルタ
114 タンディッシュ
114a 内側底面
114b 下面
114c 取付穴
116 鋳造部
121 鋳型
122 ボトムブロック
123 昇降装置
131 溶湯
132 介在物
133 スラブ
200 注湯ノズル
201 引込口
202 排出口
203 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯が流れるタンディッシュに設けられ、略筒状をなし、一端の引込口より該溶湯を引き込み、他端の排出口より該溶湯を注湯先に供給する注湯ノズルであって、
前記引込口が、前記タンディッシュの底面より上方に突出した位置となるように前記タンディッシュに取り付けられるとともに、
前記溶湯の流れの下流側の側面に、前記タンディッシュの底面を下端として、内周側と外周側とを貫通する貫通穴を備えた注湯ノズル。
【請求項2】
前記貫通穴は、前記タンディッシュの底面を下端とし、上方に延長されたスリットから構成されている請求項1記載の注湯ノズル。
【請求項3】
前記貫通穴は、前記引込口の開口面積より小さい開口面積である請求項1又は2記載の注湯ノズル。
【請求項4】
前記引込口が、前記タンディッシュの底面から略10mm以上の高さとなるように前記タンディッシュに取り付けられている請求項1乃至3のいずれか一項記載の注湯ノズル。
【請求項5】
前記タンディッシュの底面から鋳造中の前記溶湯の湯面までの位置を略100パーセントとしたとき、前記引込口が、前記タンディッシュの底面から略50パーセントから略90パーセントの高さとなるように取り付けられている請求項1乃至4のいずれか一項記載の注湯ノズル。
【請求項6】
前記引込口は、前記溶湯の上流側で低く、前記溶湯の下流側で高くなるように傾斜した形状とされている請求項1乃至5のいずれか一項記載の注湯ノズル。
【請求項7】
前記貫通穴は、前記引込口の前記溶湯の上流側の高さが上端となるように形成されている請求項6記載の注湯ノズル。
【請求項8】
前記溶湯を、鋳型を通して凝固させ、縦方向に鋳造スラブを排出する縦型鋳造装置に、前記溶湯を供給する請求項1乃至7のいずれか一項記載の注湯ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−206832(P2011−206832A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78283(P2010−78283)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】