説明

洗浄剤組成物

【課題】 ペースト状の外観を呈し、水溶けが良い或いは泡立ちが良いといった使用特性に優れた洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 下記(A),(B)及び(C)を配合したことを特徴とする洗浄剤組成物。
(A)一般式R−COO(CH)−CH−CH−SO(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基、Xはアルカリ金属塩を表す。)で表される脂肪酸N−メチルタウリン塩(B)一般式R−COO(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基、Yはアルカリ金属塩を表す。)で表される脂肪酸アルカリ金属塩、又は一般式R−COO(CHCHOH)(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。)で表される脂肪酸トリエタノールアミン塩(C)多価アルコール

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脂肪酸のN−メチルタウリン塩と、脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩と、多価アルコールとを配合した洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、泡立ちや泡質を向上させる目的でクレンジングフォーム、ボディーシャンプー、シャンプーなどの洗浄料に石鹸が多く用いられてきた。このうち、最も多く用いられてきたのは、脂肪酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩石鹸であるが、これらは、コストが安いうえ、泡立ちが良く、泡質もクリーミーであるという長所を有している反面、中性での泡立ちが悪く、きしみ感や使用後につっぱり感を有するなどの欠点があった。
【0003】また、中性付近での泡立ちやきしみ感に配慮して脂肪酸のトリエタノールアミンやリジンなどの弱塩基による石鹸も利用されてきたが、弱塩基部分によるアミン臭が出る、泡質が悪くなりさっぱり感が得られにくい、溶解点(クラフト点)が低く固形の製品に配合できないなどの問題点を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らはかかる事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、脂肪酸のN−メチルタウリンアルカリ金属塩又はN−メチルタウリン有機アルカリ塩を必須成分として配合した洗浄剤組成物が、泡立ち、泡質ともに良く、泡立ちのpH依存性が少なく、きしみ感やつっぱり感がないうえに、悪臭が出ないなどの点で、従来と比較して優れていることを見出した。しかし、このような組成物は固形状、液状剤形には適した物性を示すものの、水溶けや泡立ち等の使用特性の良さから洗顔料などで好まれるペースト状剤形には適していないという欠点を有していた。
【0005】本発明者らは、前記技術的課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、脂肪酸のN−メチルタウリン塩と、脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩と、多価アルコールとを配合した洗浄剤組成物が、ペースト状の外観を呈し、水溶けが良い或いは泡立ちが良いといった使用特性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】本発明の目的は、ペースト状の外観を呈し、水溶けが良い或いは泡立ちが良いといった使用特性に優れた洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、下記(A),(B)及び(C)を配合したことを特徴とする洗浄剤組成物を提供するものである。
(A)一般式R−COO(CH)−CH−CH−SO(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基、Xはアルカリ金属塩を表す。)で表される脂肪酸N−メチルタウリン塩(B)一般式R−COO(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基、Yはアルカリ金属塩を表す。)で表される脂肪酸アルカリ金属塩、又は一般式R−COO(CHCHOH)(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。)で表される脂肪酸トリエタノールアミン塩(C)多価アルコール
【0008】また、本発明は、前記脂肪酸N−メチルタウリン塩(A)を1〜45重量%、前記脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩(B)を0.1〜15重量%、前記多価アルコール(C)を1〜40重量%配合したことを特徴とする上記記載の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0009】また、本発明は、前記脂肪酸N−メチルタウリン塩(A)を10〜40重量%、前記脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩(B)を1〜10重量%、前記多価アルコール(C)を10〜35重量%配合したことを特徴とする上記記載の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0010】さらに、本発明は、前記多価アルコールは、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、マルチトール、グルコース及びスクロースから選択されたものであることを特徴とする上記記載の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】本発明の洗浄剤組成物に必須成分(A)として配合する、一般式R−COO(CH)−CH−CH−SOで表される脂肪酸N−メチルタウリン塩において、式中のRは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、テトラエイコシル基などの直鎖状飽和炭化水素基、2−メチルヘプタデシル基、2−エチルペンチル基などの分枝飽和炭化水素基、8−ヘプタデセニル基、オレイル基、4,6−オクタデカジエニル基などの直鎖不飽和炭化水素基、2−メチルオクタデカ−6−エニル基などの分枝不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0013】また、式中のXはアルカリ金属を表し、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどが挙げられる。
【0014】脂肪酸N−メチルタウリン塩(A)の製造方法は、例えば、約80℃にて脂肪酸を溶解し、これにN−メチルタウリン塩の水溶液を撹拌しながら加えるか、N−メチルタウリン水溶液と他のアルカリの水溶液をそれぞれ別々に撹拌しながら加える方法などがある。
【0015】脂肪酸N−メチルタウリン塩(A)の配合量は、1〜45重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。配合量が1重量%未満では、十分なペースト状剤形を得ることができず、泡立ち(速泡力)も良くない。配合量が45重量%を超えると、固化してしまうことがある。
【0016】本発明の洗浄剤組成物に必須成分(B)として配合する、一般式R−COOで表される脂肪酸アルカリ金属塩、又は一般式R−COO(CHCHOH)で表される脂肪酸トリエタノールアミン塩において、式中のRは必須成分(A)における定義と同様に炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、前述した具体例が挙げられる。
【0017】また、式中のYはアルカリ金属を表し、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどが挙げられる。
【0018】脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩(B)の配合量は、0.1〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。配合量が1重量%未満では、十分なペースト状剤形を得ることができず、泡立ち(速泡力)も良くない。配合量が15重量%を超えると、つっぱり感やきしみ感が生じてしまうなど使用感触的に問題があるうえに、悪臭が出ることがある。
【0019】本発明の洗浄剤組成物に必須成分(C)として配合する多価アルコールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、マルチトール、グルコース、スクロースなどが挙げられる。
【0020】多価アルコール(C)の配合量は、1〜40重量%が好ましく、10〜35重量%がより好ましい。配合量が1重量%未満では、十分なペースト状剤形を得ることができない。配合量が40重量%を超えると、泡立ち(速泡力)が良くない。
【0021】本発明の洗浄剤組成物とは、あるものに対して、洗浄作用を発揮できる組成物を言い、洗浄されるべきものは制限されないが、好ましくは、化粧品、医薬部外品など身体に適用される洗浄剤を指し、上記必須成分に加えて必要により、通常洗浄剤組成物に含まれる石鹸、アルキル硫酸エステル(塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸(塩)、ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸(塩)などのアニオン界面活性剤、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系両性界面活性剤などの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、マルチトールヒドロキシ脂肪族エーテルなどの非イオン界面活性剤、トリメチルアルキルアンモニウムクロライドなどのカチオン界面活性剤、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの保湿剤、センブリ、シャクヤク、イリス、スギナなどの植物抽出成分、トラネキサム酸、アルブチンなどの薬剤、香料、防腐剤など他の成分を適宜配合することができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】「実施例1〜14、比較例1〜6」表1〜3に示す配合量(重量%)で各成分を配合して試料を調製した。調製した試料を以下の評価方法及び評価基準により評価した。
【0024】1)ペースト剤形評価調製した試料を外観目視により判定した。
P:ペースト状L:液状S:固形状
【0025】2)泡立ち(速泡力)評価すり栓付き内径3cm、高さ20cmのネスラー管に70ppmの塩化カルシウムを溶解したイオン交換水に、各試料0.5gを静かに添加した。この状態で30℃に保ち、振り子式しんとう機により1秒間に1回の割合で90°傾けた。しんとうを30秒間続けた後、試料の入ったネスラー管を取り出し、泡の高さを測定した。
◎:泡の高さが15cm以上○:泡の高さが10〜15cm△:泡の高さが5〜10cm×:泡の高さが5cm以下
【0026】3)使用感触(つっぱり感)評価調製した試料を用いた実使用試験を専門パネラー20名により実施した。判定は、すすぎ直後の肌感触を以下の基準に従い行った。
○:専門パネラー20名中、15名以上が肌がつっぱらず良好であると認めた。
△:専門パネラー20名中、10〜15名が肌がつっぱらず良好であると認めた。
×:専門パネラー20名中、10名以下がつっぱらず良好であると認めた。
【0027】
【表1】


【0028】
【表2】


【0029】
【表3】


【0030】「実施例15」(洗顔フォーム)
下記成分を80℃に加熱して溶解し、30℃に冷却して製造した。
重量部 ラウリン酸 5 ミリスチン酸 10 パルミチン酸 5 ステアリン酸 15 N−メチルタウリンナトリウム水溶液(50%) 30 水酸化カリウム 2 アシルメチルタウリンナトリウム水溶液(30%) 3 防腐剤・金属封鎖剤 適量 香料 適量 精製水 残部
【0031】「実施例16」(洗顔フォーム)
下記成分を80℃に加熱して溶解し、30℃に冷却して製造した。
重量部 ラウリン酸 5 ミリスチン酸 8 パルミチン酸 5 ステアリン酸 18 N−メチルタウリンカリウム水溶液(50%) 25 水酸化カリウム 1.2 ヤシ脂肪酸ジエタノールアマイド 2 防腐剤・金属封鎖剤 適量 香料 適量 精製水 残部
【0032】「実施例17」(洗顔フォーム)
下記成分を80℃に加熱して溶解し、30℃に冷却して製造した。
重量部 ラウリン酸 5.5 ミリスチン酸 15 パルミチン酸 5 ステアリン酸 8 N−メチルタウリンナトリウム水溶液(50%) 28 水酸化カリウム 1 トリエタノールアミン 1 アシルメチルタウリンナトリウム水溶液(30%) 1 グリチルリチン酸ジカリウム 0.1 防腐剤・金属封鎖剤 適量 香料 適量 精製水 残部
【0033】「実施例18」(ハンドソープ)
下記成分を80℃に加熱して溶解し、30℃に冷却して製造した。
重量部 ラウリン酸 10 ミリスチン酸 5 N−メチルタウリンナトリウム水溶液(50%) 10 トリエタノールアミン 5 アシルメチルタウリンナトリウム水溶液(30%) 1 防腐剤・金属封鎖剤 適量 香料 適量 精製水 残部
【0034】「実施例19」(ボディソープ)
下記成分を80℃に加熱して溶解し、30℃に冷却して製造した。
重量部 ラウリン酸 5.5 ミリスチン酸 5 パルミチン酸 2 オレイン酸 2 N−メチルタウリンナトリウム水溶液(50%) 28 トリエタノールアミン 5 ラウロイルジエタノールアミド 5 防腐剤・金属封鎖剤 適量 香料 適量 精製水 残部
【0035】
【発明の効果】以上説明したように本発明の洗浄剤組成物は、脂肪酸のN−メチルタウリン塩と、脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩と、多価アルコールとを配合したことにより、ペースト状の外観を呈し、水溶けが良い或いは泡立ちが良いといった使用特性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(A),(B)及び(C)を配合したことを特徴とする洗浄剤組成物。
(A)一般式R−COO(CH)−CH−CH−SO(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基、Xはアルカリ金属塩を表す。)で表される脂肪酸N−メチルタウリン塩(B)一般式R−COO(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基、Yはアルカリ金属塩を表す。)で表される脂肪酸アルカリ金属塩、又は一般式R−COO(CHCHOH)(但し、式中Rは炭素数7〜23の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。)で表される脂肪酸トリエタノールアミン塩(C)多価アルコール
【請求項2】 前記脂肪酸N−メチルタウリン塩(A)を1〜45重量%、前記脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩(B)を0.1〜15重量%、前記多価アルコール(C)を1〜40重量%配合したことを特徴とする請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】 前記脂肪酸N−メチルタウリン塩(A)を10〜40重量%、前記脂肪酸アルカリ金属塩又は脂肪酸トリエタノールアミン塩(B)を1〜10重量%、前記多価アルコール(C)を10〜35重量%配合したことを特徴とする請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】 前記多価アルコールは、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、マルチトール、グルコース及びスクロースから選択されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2000−44998(P2000−44998A)
【公開日】平成12年2月15日(2000.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−210793
【出願日】平成10年7月27日(1998.7.27)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】