説明

洗浄液及び洗浄方法

【課題】ポリマー成分を含むインク及びその乾固物の洗浄性に優れた洗浄液を提供する。
【解決手段】顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物の洗浄を行なう洗浄液であって、塩基性化合物と全質量に対して5質量%以上の界面活性剤と水とを含有する洗浄液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを含む水性インク組成物の製造設備などの洗浄に好適な洗浄液及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用の水性インクは、一般に染料や顔料を色材として含んでおり、そのうち顔料としては、カプセル化顔料、自己分散型顔料、樹脂分散型顔料、界面活性剤分散型顔料などが使用されている。
【0003】
カプセル化顔料や樹脂分散型顔料においては、インクビヒクル中における分散安定性を保持する目的でポリマーが使用されており、また、それ以外にも印字性能の向上を目的として、水不溶性ポリマー粒子等を添加することが一般的に行なわれている。
【0004】
インクを製造する工程においては、その製造設備にインクが付着したり、インク中に含まれているポリマー成分が付着し、乾燥することによりインク乾固物が生成し、一旦乾固してしまうと、乾固状態にあるインクを洗浄除去することは非常に困難である。また、インク乾固物が生成すると、その上にさらにインクが堆積し、連続製造中に堆積したものが剥がれ落ちる等することで、インク自体の品質不良を招いたり、後工程の濾過等を行なう設備に異常を来す等の問題を発生させる。
【0005】
一方、インクの洗浄廃液は、廃液処理費がかかるために製造コストに影響するばかりか、環境負荷の観点での問題も付随しており、効率的な洗浄、及び洗浄廃液の削減は重要な技術である。
【0006】
上記に関連する技術として、ポリマーを含む水性インクの洗浄方法としては、インクジェットプリンタのノズル洗浄液として、界面活性剤、塩基性化合物、水を含有し、pHが9以上である洗浄液や、pH8〜11でアルコールアミンを含有する水性媒体からなるメンテナンス液及びこれを用いたメンテナンス方法が開示されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−127419号公報
【特許文献2】特許2000−109733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の洗浄液等では、主としてインクジェットプリンタのインクを吐出するヘッドノズル等を洗浄対象とし、そのメンテナンスのために吐出の都度、局所的にノズル部の残インクを取り除くための洗浄を目的とするもので、例えば壁面に付着、堆積して固着しているようなインク乾固物の除去など、インク製造に用いるタンク等の製造設備を洗浄する洗浄液としては適していない。すなわち、これらの洗浄液等は、ヘッドから混入してインク性状に悪影響を与えない組成となっている等により、繰り返し洗浄による洗浄効果が小さく、乾固したインクや広範な範囲の洗浄適性までは得られない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、ポリマー成分を含むインク組成物及びその増粘物や乾固物が付着したインク製造設備等の洗浄性に優れた洗浄液、及びポリマー成分を含むインク組成物及びその増粘物や乾固物が付着したインク製造設備の洗浄を少量の洗浄液で洗浄することができる洗浄方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物の洗浄を行なう洗浄液であって、塩基性化合物と全質量に対して5質量%以上の界面活性剤と水とを含有する洗浄液である。
【0011】
<2> 更に、有機溶剤を含有することを特徴とする前記<1>に記載の洗浄液である。
【0012】
<3> 前記有機溶剤の炭素数が5以下であることを特徴とする前記<2>に記載の洗浄液である。
【0013】
<4> pH(25℃)が11以上であることを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の洗浄液である。
【0014】
<5> 前記有機溶剤の全質量に対する含有量が0.2〜5.0質量%であることを特徴とする前記<2>〜前記<4>のいずれか1つに記載の洗浄液である。
【0015】
<6> 顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物の製造に用いられる製造設備の内部を、前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の洗浄液を循環使用して繰り返し洗浄する洗浄方法である。
【0016】
<7> 前記水性インク組成物は、前記ポリマーとしてポリマー粒子を含有することを特徴とする前記<6>に記載の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリマー成分(特にポリマー粒子)を含むインク組成物及びその増粘物や乾固物が付着したインク製造設備等の洗浄性に優れた(好ましくはインクジェットインク用の)洗浄液及びポリマー成分を含むインク組成物及びその増粘物や乾固物が付着したインク製造設備の洗浄を少量の洗浄液で洗浄することができる(好ましくはインクジェットインク洗浄用の)洗浄方法を提供することができる。
これにより、乾固物等の混入やインク濾過時の濾過不良等を防止でき、品質不良のリスクを抑えて製造安定性を向上させることができると共に、廃液削減が図れ、ひいては環境負荷の軽減効果をも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】水性インクを調液するための調液装置の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の洗浄液及びこれを用いた洗浄方法について詳細に説明する。
本発明の洗浄液、洗浄方法は、顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物(その増粘物や乾固物を含む。)の洗浄を行なうための洗浄液、洗浄方法である。具体的には、
本発明の洗浄液は、塩基性化合物、全質量に対して5質量%以上の界面活性剤、及び水を少なくとも含有し、必要に応じて他の成分を用いて構成される。また、本発明の洗浄方法は、顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物の製造に用いられる製造設備の内部(例えば、水性インクを調製する調製タンクやインクを貯留する貯留用タンクなどの内壁)を、塩基性化合物と全質量に対して5質量%以上の界面活性剤と水とを含有する洗浄液を循環使用して繰り返し洗浄する構成としたものである。
【0020】
本発明においては、顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)及びその増粘物や乾固物である被洗浄物に対して、所定の組成とした洗浄液を所定量、繰り返し供給することで、被洗浄物に対する洗浄液の洗浄効能をより発揮させ得るようにするので、製造設備に付着したインクの洗浄除去を少量の洗浄液で行なうことができる。ポリマー成分としてポリマー粒子を含有するインク及びその増粘物や乾固物の洗浄を行う場合に、特に良好な洗浄性を示す。
【0021】
本発明の洗浄液を構成する各成分について説明する。
−塩基性化合物−
本発明の洗浄液は、塩基性化合物の少なくとも一種を含有する。塩基性化合物は、無機又は有機の塩基性化合物のいずれも使用可能である。
【0022】
無機系の塩基性化合物の好ましい例としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)の水酸化物が挙げられる。中でも、汎用性が高いという点で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0023】
有機系の塩基性化合物としては、例えば、モノ−、ジ−もしくはトリ−低級アルキルアミン、モノ−、ジ−もしくはトリ−低級アルカノールアミン、環状アミン又はジアミンを挙げることができる。低級アルキルや低級アルカノールの部位の炭素数としては、1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4である。また、ジ−置換体もしくはトリ−置換体の低級アルキルや低級アルカノールの部位は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0024】
前記モノ−、ジ−もしくはトリ−低級アルキルアミンとしては、例えば、モノ−、ジ−もしくはトリ−メチルアミン、モノ−、ジ−もしくはトリ−エチルアミン、モノ−、ジ−もしくはトリ−ter−ブチルアミンを挙げることができる。また、モノ−、ジ−もしくはトリ−低級アルカノールアミンとしては、例えば、モノ−、ジ−もしくはトリ−メタノールアミン、モノ−、ジ−もしくはトリ−エタノールアミンを挙げることができる。前記環状アミンとしては、例えば、ピペリジン、又はピロリジンを挙げることができる。前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、又はトリメチレンジアミンを挙げることができる。
前記有機系の塩基性化合物としては、トリ−エタノールアミン、ピペリジン、又はエチレンジアミンが好ましい。
【0025】
無機系又は有機系の塩基性化合物は、一種単独であるいは2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。塩基性化合物の洗浄液中における含有量には、特に制限はないが、その含有量は、洗浄液のpH(25℃;以下同様)が11以上になる量が好ましく、pHが13以上になる量がより好ましい。塩基性化合物の含有量は、pHが11以上となる量とすることにより、特にインクの増粘物や乾固物の洗浄性が良好になる。
【0026】
pHは、pHメーター(東亜DKK(株)製のHM−30G)を用いて25℃にて測定される値である。
【0027】
具体的には、無機系の塩基性化合物の含有量については、洗浄液の全質量に対して、0.01〜1規定(N)が好ましく、より好ましくは0.1〜1規定である。特に、無機系の塩基性化合物がアルカリ金属の水酸化物である場合、その含有量は洗浄液の0.01〜1規定が好ましく、より好ましくは0.1〜1規定である。また、有機系の塩基性化合物の含有量については、洗浄液に対して、0.05〜1規定が好ましく、より好ましくは0.1〜1規定である。
【0028】
−界面活性剤−
本発明の洗浄液は、界面活性剤の少なくとも一種を含有する。界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性、両性の界面活性剤、及び非イオン性の界面活性剤の中から目的や組成等に応じて選択することができる。
【0029】
本発明では、界面活性剤を洗浄液の全質量に対して5質量%以上含有する。界面活性剤の含有量が5質量%未満であると、水性インク組成物及びその増粘物、乾固物の洗浄効果が低下する。中でも、界面活性剤の含有量は、繰り返し洗浄効果の向上の点で、洗浄液の全質量に対して、10質量%以上が好ましい。なお、界面活性剤の含有量の上限値は、15質量%が望ましい。
【0030】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、 N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩、2−ビニルピリジン誘導体、及びポリ−4−ビニルピリジン誘導体などが挙げられる。
【0031】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体が挙げられる。
【0032】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、又は、アセチレングリコール系界面活性剤(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(例えば、日信化学工業社製のサーフィノール104,82,465,485,TG等、オルフィン E1010等)が挙げられる。
【0033】
界面活性剤は、洗浄後の残留を考慮すると、インクに含まれる顔料粒子やポリマー粒子の凝集を招かないものが好ましい。例えば、イオン性界面活性剤の電荷と、顔料分散粒子やポリマー粒子の表面電荷が異なる場合、インクに僅かに洗浄液が混入しても粒子凝集の影響を生じないように、イオン性界面活性剤の電荷(カチオン性又はアニオン性)と顔料粒子やポリマー粒子の表面電荷(カチオン性又はアニオン性)とを一致させることが好ましい。本発明においては、インクに含まれる顔料粒子やポリマー粒子の凝集を招かない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0034】
−有機溶剤−
本発明の洗浄液は、有機溶剤を添加することが好ましい。有機溶剤を添加することにより、洗浄液にインクの増粘物や乾固物に対する浸透性を付与することができ、洗浄効果がより向上する。
【0035】
前記有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤などが好ましく挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、例えば、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。
これらの溶媒の中では、インクの増粘物、乾固物の洗浄性向上の点で、炭素数5以下の有機溶剤が好ましく、炭素数5以下のアルコール系溶剤がより好ましく、特には、炭素数3以下のアルコール系溶剤(特にメタノール)が好ましい。
【0036】
有機溶剤の洗浄液中における添加量としては、洗浄液の全質量に対して、0.2質量%以上が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。有機溶剤の添加が0.2質量%以上、更には1質量%以上であると、インクの増粘物や乾固物の洗浄効果を効果的に高めることができる。
【0037】
−水−
本発明の洗浄液は、水性液であり、水として例えば蒸留水やイオン交換水を用いて構成される。水の洗浄液に占める量は、特に制限はない。
【0038】
本発明の洗浄液は、上記成分に加え、必要に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、防腐剤などを含有することができる。
【0039】
〜〜水性インク組成物〜〜
ここで、本発明における洗浄対象である水性インク組成物について説明する。
水性インク組成物は、着色成分である顔料とポリマーとを少なくとも含有する着色液であり、ポリマーを含有すると、インクの乾燥に伴ない増粘、固化等を生じやすく、洗浄液による洗浄効果がより奏される。
【0040】
前記顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれでもよい。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。アゾ顔料の例としては、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが、多環式顔料の例としては、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料などが、また、染料キレートの例としては、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどが挙げられる。
また、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0041】
顔料は、樹脂分散剤により分散されていてもよい。この場合、顔料粒子を微粒径にして存在させることができ、分散後には高い分散安定性が得られる。本発明において、インク組成物がポリマー分散剤を含むと、インクの増粘、固化等に伴ない洗浄液による洗浄効果が低下し易いことから、ポリマー分散剤で分散された顔料を含む顔料インクを用いた場合に、洗浄性の向上効果がより奏される。
【0042】
顔料は、必ずしも粒子表面の全体が樹脂で被覆されている必要はなく、場合により粒子表面の少なくとも一部が樹脂で被覆された状態であってもよい。
【0043】
顔料の樹脂分散剤(以下、単に分散剤ともいう。)としては、ポリマー分散剤又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
【0044】
前記低分子の界面活性剤型分散剤は、インクを低粘度に保ちつつ、顔料を水溶媒に安定に分散させることができる。低分子の界面活性剤型分散剤は、分子量が2,000以下の低分子分散剤である。また、低分子の界面活性剤型分散剤の分子量は、100〜2,000が好ましく、200〜2,000がより好ましい。低分子の界面活性剤型分散剤は、親水性基と疎水性基とを含む構造を有している。また、親水性基と疎水性基とは、それぞれ独立に1分子に1以上含まれていればよく、また、複数種類の親水性基、疎水性基を有していてもよい。また、親水性基と疎水性基とを連結するための連結基も適宜有することができる。
前記親水性基は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、あるいはこれらを組み合わせたベタイン型等である。アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであればいずれでもよいが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基又はカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。また、カチオン性基は、プラスの荷電を有するものであればいずれでもよいが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素又はリンのカチオン性基であることがより好ましい。また、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることがさらに好ましい。また、ノニオン性基は、ポリエチレンオキシドやポリグリセリン、糖ユニットの一部等が挙げられる。親水性基は、アニオン性基であることが好ましい。
前記疎水性基は、炭化水素系、フッ化炭素系、シリコーン系等の構造を有しており、特に炭化水素系であることが好ましい。また、疎水性基は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また、疎水性基は、1本鎖状構造又はこれ以上の鎖状構造でもよく、2本鎖状以上の構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
【0045】
前記ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グーアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。さらに、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンアクリル酸のホモポリマーや、他の親水基を有するモノマーとの共重合体などのように、カルボキシル基が導入された水溶性分散剤が親水性高分子化合物として好ましい。
【0047】
ポリマー分散剤のうち、非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、画像の耐光性や品質等の点及びインクの増粘・固化物の溶解ないし再分散性を確保しつつ、洗浄時には洗浄液による洗浄効果がより奏される点で、顔料と共に分散剤を含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが更に好ましい。また更には、色材として含む顔料が、カルボキシル基を有するポリマー分散剤に被覆され、水不溶性の水分散性顔料であることが、インクの増粘・固化物の溶解ないし再分散性の点で好ましい。
【0049】
前記ポリマーには、顔料を被覆する水不溶性樹脂や、顔料を被覆することなく存在しているポリマー粒子などが含まれる。
水不溶性樹脂は、上記のように、顔料分散剤として顔料を被覆することで液中に分散させるためのポリマーである。また、ポリマー粒子は、インク画像の定着などのために分散含有されている分散粒子である。本発明においては、特に洗浄時の洗浄液による洗浄効果がより奏される点で、顔料(ポリマー分散剤を含んでもよい)とポリマー粒子と含有するインク組成である場合が特に好ましい。
【0050】
ポリマー粒子としては、例えば、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料、あるいはそれらの共重合体又は混合物などのアニオン性基を有する樹脂の粒子が挙げられる。これらのうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。前記アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1以上を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0051】
ポリマー粒子としては、吐出安定性、及び顔料を用いた場合の液安定性(特に分散安定性)の観点から、自己分散性ポリマー粒子が好ましく、カルボキシル基を有する自己分散性ポリマー粒子がより好ましい。自己分散性ポリマー粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。本発明における水不溶性ポリマーにおいては、インク組成物としたときの凝集速度と定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
【0052】
自己分散性ポリマー粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(例えば、塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
【0053】
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
【0054】
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
【0055】
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載のものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
【0056】
自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性の観点及び低洗浄性のインクの洗浄性向上の点から、親水性の構成単位と、芳香族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
【0057】
親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば、特に制限はなく、親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基が好ましく、アニオン性の解離基がより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。中でも、自己分散性と凝集性の観点から、親水性基含有モノマーは解離性基含有モノマーが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーが好ましい。解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
【0058】
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。解離性基含有モノマーのうち、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0059】
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば、特に制限はない。芳香族基は、芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよく、水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基が好ましい。重合性基は、縮重合性又は付加重合性の重合性基のいずれでもよく、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましい。
【0060】
芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0061】
次に、本発明の洗浄液を用いて洗浄を行なう方法について、図1を参照し、インク調液タンクを洗浄する場合を一例に説明する。図1は、顔料及びポリマー並びに必要に応じて他の成分を混合、撹拌して水性インクを調液するための調液装置の構成例を示す概略構成図である。
【0062】
図1に示すように、調液タンク1は、2つのプロペラを有し、所望の速度で回転可能なように天部に取り付けられた撹拌棒6を備えており、試料の投入口から、所望の形態で例えば水、水不溶性顔料等の顔料、有機溶剤、及びポリマーラテックス等のポリマー粒子(並びに必要に応じて他の成分)が投入されたときには、撹拌棒6を回転させることにより撹拌し、諸成分を混合して水性インクの調液が行なえるようになっている。混合は、例えば、はじめに水や有機溶剤を投入した後に撹拌棒6を回転して撹拌を開始し、撹拌しながら顔料やポリマー粒子などの成分を加え、あるいは目的の全成分を投入した後に撹拌棒6を回転して撹拌を開始する等して行なうことができる。
【0063】
調液タンク1の天部には、洗浄液を広角に噴射して調液タンク内に洗浄液を供給する噴射ノズル2が取り付けられている。この噴射ノズル2に洗浄液が供給されたときは、噴射ノズル2により洗浄液がタンク内壁に一様に供給されるように噴射され、タンク内壁に付着しているインクを除去できるように構成されている。
【0064】
噴射ノズルからの洗浄液の供給は、例えば、シャワー状、スプレー状に噴射することにより好適に行なえる。このようにすると、タンク内壁の広範な領域に洗浄液の流れが形成され、付着したインクと接触する洗浄液が短時間に入れ替わるので、洗浄性を向上させることができる。噴射ノズルは、洗浄液をタンク内壁の全体に供給できるものが好ましく、例えば、多孔の噴射面を有するシャワーノズルやスプレーノズルなどを使用できる。
【0065】
洗浄は、洗浄液のタンク壁面(被洗浄物)に供給する単位時間当たりの液量を50〜300L/minとして行なうことが好ましい。前記液量が前記範囲であると、本発明の洗浄液を用いることによりインクの増粘物、乾固物の洗浄除去を効果的に行なえる。
【0066】
調液タンク1の底部には、液体排出口3が設けられており、液体排出口3には、調液タンク内の液体を排出するための排出配管11の一端が接続されている。
【0067】
バッファタンク5は、100L(リットル)の洗浄液を貯留できる貯留タンクである。バッファタンク5は、排出配管11の他端と接続されており、排出配管11から排出された洗浄液を一時的に蓄えることができるようになっている。
【0068】
このバッファタンク5は、調液タンク1の天部に取り付けられた噴射ノズル2と供給配管12を介して接続されており、供給配管12の配管途中には、バッファタンク5中の液体を噴射ノズル2に送液するための送液ポンプ4が取り付けられている。
【0069】
このように、調液タンク1の噴射ノズル2と液体排出口3との間に排出配管11、バッファタンク5、及び供給配管12を設け、これらを介して噴射ノズル2と液体排出口3とを接続することにより、洗浄と洗浄に用いた洗浄液の循環とを連続的に繰り返すことができる循環系統が構築されている。
【0070】
図1に示すように構成された調液装置が起動されると、まず、例えば水不溶性顔料とポリマーラテックスと水と有機溶剤とを所定のタイミングで投入して混合、撹拌して水性インクを調液し、調液した水性インクはタンク外に排出される。その後、例えば所定回数の調液動作を行なった後に、送液ポンプ4を作動させることにより調液タンク1内に洗浄液を噴射ノズル2から噴射する。噴射された洗浄液は、連続的にタンク内壁に一様に供給される。このとき、噴射された洗浄液は、タンク内壁に沿ってその表面を洗浄しながら底部に流れ落ち、底部に溜まった洗浄液は液体排出口3から排出され、バッファタンク5に一旦貯留された後に、再び供給配管12を流通して噴射ノズル2から噴射され、洗浄に供される。このようにして、所定量の洗浄液を循環利用してタンク壁面を繰り返し洗浄できる構成にすることにより、洗浄液の持つ洗浄能力が有効に発揮され、従来より少量の洗浄液でポリマー成分を含むインク(及びその増粘物、乾固物を含む)の付着を効果的に除去することができる。
【0071】
本発明においては、上記した中でも、顔料とポリマー粒子とを含む水性インク組成物及びその増粘物、乾固物に対して、アルカリ金属の水酸化物と全質量に対して10質量%以上15質量%以下の非イオン性界面活性剤と炭素数3以下のアルコール系溶剤(好ましくは全質量に対して1〜5質量%)と水とを含有する洗浄液を、循環使用して繰り返し洗浄する態様が特に好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0073】
(実施例1)
−洗浄液の調製−
下記組成の諸成分を25℃にて1時間、混合攪拌することにより、洗浄液を調製した。pHメーター(東亜DKK(株)製のHM−30G)を用いて25℃にて測定したpHは、12.85であった。
<組成>
・オレフィンE 1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)・・・5質量%
・0.1N 水酸化ナトリウム水溶液 ・・・0.4質量%(NaOH換算)
・メタノール ・・・1質量%
・蒸留水 ・・・総量が100質量%となるようにするための残量
【0074】
−顔料インクの調製−
次に、以下に示すようにして評価用インクを調製した。
まず、シアニンブルーA220(シアン顔料、大日精化工業社製)15質量%と、ポリビニルピロリドン8質量%と、蒸留水77質量%とを、直径0.1mmビーズと共にサンドグラインダミル(アイメックス社製)にて回転数1500rpmにて8時間、分散した後、得られた分散液を200メッシュのフィルターで濾別して、シアン顔料分散液を調製した。
【0075】
続いて、得られたシアン顔料分散液を用いて、下記組成となるように諸成分を混合して、シアン色の顔料インク(シアンインク1)を調製した。
<シアンインク1の組成>
・前記シアン顔料分散液 ・・・15質量%
・グリセリン ・・・10質量%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・7質量%
・オルフィン E1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)・・・2質量%
・イオン交換水 ・・・66質量%
【0076】
−評価−
得られたシアンインク1にSUS316の板(3cm×4cm)を浸漬し、大気中で0.1MPaの加圧条件下、常温で2時間静置し乾燥させることにより、洗浄評価用のインク乾固物(1)とした。
【0077】
洗浄評価用インク乾固物(1)が設けられたSUSサンプルに、上記の洗浄液(25℃)5mlを3分間、繰り返しかけて掛け洗いを実施し、洗浄試験を行なった。掛け洗い終了後、SUSサンプルを目視にて下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は下記表1に示す。
<評価基準>
5:繰り返し洗浄初期にインク乾固物が全く確認できなくなった。
4:繰り返し途中でインク乾固物が全く確認できなくなった。
3:繰り返しかけ洗い終了後、インク乾固物が全く確認できなくなった。
2:インク乾固物が残存していることが僅かに確認できた。
1:洗浄前後でインク乾固物に変化が見られなかった。
【0078】
(実施例2)
実施例1において、洗浄液の組成を下記組成に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行なった。また、実施例1と同様にして測定したpHは、12.86であった。評価結果は下記表1に示す。
<組成>
・オレフィン E1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)・・・5質量%
・0.1N 水酸化ナトリウム水溶液 ・・・0.4質量%(NaOH換算)
・蒸留水 ・・・総量が100質量%となるようにするための残量
【0079】
(実施例3)
実施例1において、洗浄液の組成を下記組成に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行なった。また、実施例1と同様にして測定したpHは、10.96であった。評価結果は下記表1に示す。
<組成>
・オレフィン E1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)・・・5質量%
・0.001N 水酸化ナトリウム水溶液 ・・・0.004質量%(NaOH換算)
・蒸留水 ・・・総量が100質量%となるようにするための残量
【0080】
(実施例4)
実施例1において、洗浄液の組成中のオレフィン E1010の量を、5質量%から10質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行った。また、実施例1と同様にして測定したpHは、12.79であった。評価結果は下記表1に示す。
【0081】
(実施例5)
実施例4において、インク乾固物(1)を下記のインク乾固物(2)に代えたこと以外は、実施例4と同様にして洗浄試験及び評価を行った。評価結果は下記表1に示す。
【0082】
−インク乾固物の作製−
実施例1で調製した前記シアン顔料分散液を用い、下記組成となるように諸成分を混合して、シアン色の顔料インク(シアンインク2)を調製した。得られたシアンインク2にSUS316の板(3cm×4cm)を浸漬し、大気中で0.1MPaの加圧条件下、常温で2時間静置し乾燥させることにより、洗浄評価用のインク乾固物(2)とした。
<シアンインク2の組成>
・前記シアン顔料分散液 ・・・15質量%
・グリセリン ・・・10質量%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・7質量%
・オルフィン E1010(日信化学工業社製;界面活性剤)・・・2質量%
・ジョンクリル538J(BASFジャパン社製)・・・15質量%
・イオン交換水 ・・・41質量%
【0083】
(比較例1)
実施例1において、洗浄液の組成を下記組成に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行なった。また、実施例1と同様にして測定したpHは、6.98であった。評価結果は下記表1に示す。
<組成>
・オレフィン E1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)・・・5質量%
・蒸留水 ・・・95質量%
【0084】
(比較例2)
実施例1において、洗浄液の組成を下記組成に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行なった。また、実施例1と同様にして測定したpHは、6.69であった。評価結果は下記表1に示す。
<組成>
・オレイン酸ナトリウム(界面活性剤)・・・5質量%
・蒸留水 ・・・95質量%
【0085】
(比較例3)
実施例1において、洗浄液を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液(組成:NaOH100%)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行なった。また、実施例1と同様にして測定したpHは、12.98である。評価結果は下記表1に示す。
【0086】
(比較例4)
実施例1において、洗浄液の組成を下記組成に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行なった。また、実施例1と同様にして測定したpHは、12.89であった。評価結果は下記表1に示す。
<組成>
・オレフィン E1010(日信化学工業(株)製;界面活性剤)・・・1質量%
・0.1N 水酸化ナトリウム水溶液 ・・・0.4質量%(NaOH換算)
・蒸留水 ・・・総量が100質量%となるようにするための残量
【0087】
(比較例5)
実施例1において、洗浄液の組成中のオレフィン E1010の量を5質量%から3質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を調製し、洗浄試験及び評価を行なった。また、実施例1と同様にして測定したpHは、12.95であった。評価結果は下記表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
前記表1に示すように、実施例では、SUS板に固着した乾固物の洗浄性に優れていた。これにより、洗浄を実施した設備でインクを製造し際には、粗大粒子を濾過する濾過工程前において粗大粒子数を低減することができる。これに対し、比較例では、洗浄効果に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物の洗浄を行なう洗浄液であって、塩基性化合物と全質量に対して5質量%以上の界面活性剤と水とを含有する洗浄液。
【請求項2】
更に、有機溶剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記有機溶剤の炭素数が5以下であることを特徴とする請求項2に記載の洗浄液。
【請求項4】
pH(25℃)が11以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項5】
前記有機溶剤の全質量に対する含有量が0.2〜5.0質量%であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項6】
顔料及びポリマーを含有する水性インク組成物の製造に用いられる製造設備の内部を、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の洗浄液を循環使用して繰り返し洗浄する洗浄方法。
【請求項7】
前記水性インク組成物は、前記ポリマーとしてポリマー粒子を含有することを特徴とする請求項6に記載の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235712(P2010−235712A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83518(P2009−83518)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】