説明

洗浄用溶剤組成物及び洗浄方法

【課題】硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物の洗浄に対して、優れた洗浄効果を発揮する溶剤組成物を提供すること。
【解決手段】(a)ノルマルプロピルブロマイドを15重量%〜55重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40重量%〜80重量%、及び(c)添加剤を0.5〜5重量%からなることを特徴とする、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用溶剤組成物に関し、更に詳しくは、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等の硬化性樹脂は、硬化性樹脂に硬化剤等の添加剤成分を配合することにより硬化し、成型される。具体的には、これらの硬化性樹脂は、金属部品と一体成型されたり、また電子部品の封止目的に一体的に成型されたりしている。これらの硬化性樹脂は、硬化性樹脂及び添加剤等の各成分の配合中に又は配合後の硬化性樹脂の貯蔵中に、あるいは硬化性樹脂の硬化後に、硬化性樹脂及びその硬化物が装置類に付着する。特に、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂は、一旦硬化すると非常に硬い皮膜等を形成するため、金属部品や電子部品に一体成型されると、これら金属部品や電子部品からウレタン樹脂やエポキシ樹脂を分離することはきわめて困難であった。このため、製品に不良が発生した場合、金属部品や電子部品をこれら硬化性樹脂から分離して再利用することはできなかった。
【0003】
一方、特許文献1には、イソプロピルブロマイド及びノルマルプロピルブロマイドの少なくとも一方の溶剤と、ニトロアルカン類、エーテル類、エポキシド類及びアミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の溶剤からなる安定剤とを配合した溶剤第1成分と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを含むプラスチック用溶剤組成物が、ポリエステル、アクリル樹脂、及びフェノキシ樹脂などのプラスチックに対して、高い溶解性能を示すことが開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された溶剤第1成分とN−メチル−2−ピロリドンとを含む組成物では、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂のような硬化性樹脂及びその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄した場合に、その洗浄効果は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−172290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような事情から、洗浄除去が困難である、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等の硬化性樹脂及びその硬化物が付着した被洗浄物に対して、イソプロピルブロマイド及びノルマルプロピルブロマイドの少なくとも一方の溶剤と、ニトロアルカン類、エーテル類、エポキシド類及びアミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の溶剤からなる安定剤とを配合した溶剤第1成分と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを含む組成物と比較して優れた洗浄効果を有する溶剤組成物が望まれていた。本発明は、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物に対して良好な洗浄効果を有する溶剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、(a)ノルマルプロピルブロマイド(NPB)を15重量%〜55重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を40重量%〜80重量%、及び(c)添加剤を0.5重量%〜5重量%からなることを特徴とする溶剤組成物が、特許文献1に開示されたイソプロピルブロマイド及びノルマルプロピルブロマイドの少なくとも一方の溶剤と、ニトロアルカン類、エーテル類、エポキシド類及びアミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の溶剤からなる安定剤とを配合した溶剤第1成分とN−メチル−2−ピロリドンとを含む組成物と比較して、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等の硬化性樹脂及びその硬化物が付着した被洗浄物に対して、優れた洗浄効果を有することを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)ノルマルプロピルブロマイドを15重量%〜55重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40重量%〜80重量%、及び(c)添加剤を0.5〜5重量%からなることを特徴とする、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物に関する。
【0008】
本発明は、前記硬化性樹脂がウレタン樹脂である、前記に記載の溶剤組成物に関する。
【0009】
本発明は、前記硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、前記に記載の溶剤組成物に関する。
【0010】
本発明は、前記添加剤が、ニトロアルカン系安定剤、エポキシド系安定剤及び防錆剤からなる群より選択される1種以上の添加剤である、前記に記載の溶剤組成物に関する。
【0011】
本発明は、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための方法であって、前記に記載の溶剤組成物を該被洗浄物と接触させる工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0012】
本発明は、硬化性樹脂の硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための、前記に記載の方法であって、前記に記載の溶剤組成物を該被洗浄物と接触させる工程において、該硬化性樹脂の硬化物が該被洗浄物から剥離することを特徴とする方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の溶剤組成物は、広範囲な硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物に対して良好な洗浄効果を有し、特にウレタン樹脂、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂若しくはエポキシ樹脂の硬化物が付着した被洗浄物の洗浄に適している。また、本発明の溶剤組成物は、毒性も少なく、安全性の面、及び更に揮発性が低く、消耗も少ないという経済的な面からも非常に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の溶剤組成物は、(a)ノルマルプロピルブロマイドを15重量%〜55重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40重量%〜80重量%、及び(c)添加剤を0.5重量%〜5重量%からなる。なお、本発明の溶剤組成物は、ノルマルプロピルブロマイドの製造工程において生成するイソプロピルブロマイドを不可避的な量で含み得る。
【0015】
本発明の溶剤組成物は、N−メチル−2−ピロリドンを40〜80重量%含む。本発明において、N−メチル−2−ピロリドンの含有量が40重量%未満であると、硬化性樹脂及びその硬化物を被洗浄物から効率よく洗浄除去することが難しく、80重量%を超えると、硬化性樹脂及びその硬化物の洗浄効果が低下し、むしろ、N−メチル−2−ピロリドンの皮膚刺激性等の人体への有害性が増すので好ましくない。
【0016】
本発明の溶剤組成物は、添加剤を0.5〜5重量%含む。添加剤としては、防錆剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤が挙げられる。
【0017】
防錆剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンが挙げられ、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンが特に好ましい。
【0018】
安定剤としては、ニトロアルカン系安定剤及びエポキシド系安定剤が挙げられる。好ましくは、ニトロアルカン系安定剤及びエポキシド系安定剤の混合物である。
【0019】
ニトロアルカン系安定剤としては、例えばニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン及び2−ニトロプロパンが挙げられる。
【0020】
エポキシド系安定剤としては、例えばエピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメチルエーテル、グリシジルメタクレート、ペンテンオキサイド、シクロペンテンオキサイド及びシクロヘキセンオキサイドが挙げられる。
【0021】
本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂、特に硬化前のウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等の表面に付着した油類、ポリマー及びスケール等への浸透性や溶解速度の向上のために、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の溶剤組成物は、洗浄液の長期保存等における安定性の向上のために、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、本発明の溶剤組成物に溶解するものであればいずれも使用することができ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤は、本発明の溶剤組成物に溶解するものであればいずれも使用することができ、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系等酸化防止剤が挙げられる。
【0023】
本発明において、これらの添加剤は、単独で用いることもでき、また複数の混合物として用いることもできる。添加剤として、安定剤及び防錆剤が好ましく、より好ましくは、ニトロアルカン系安定剤、エポキシド系安定剤及び防錆剤からなる群より選択される1種以上の添加剤である。
【0024】
本発明において、被洗浄物に付着した硬化性樹脂には、硬化性樹脂のほかに、硬化性樹脂に配合される添加剤を含む硬化性樹脂が含まれる。
【0025】
本発明において、硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
また、硬化性樹脂に配合される添加剤としては、硬化性樹脂に通常用いられている添加剤であれば、特に限定されるものではなく、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤が挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多塩基酸のポリグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びヒダントイン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。
【0028】
エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として通常使用されているものであればいずれであってもよく、例えばフェノールノボラック、ビフェノール型ノボラック、及びビスフェノールA型ノボラック等のノボラック、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、及びヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、並びにポリアミドアミン等のアミド樹脂等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば第三級アミン類又は有機リン化合物が挙げられる。
【0029】
ウレタン樹脂としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、及びジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)等のジイソシアナート、並びにポリプロピレングリコール等のポリオール類との反応生成物が挙げられる。本発明において、ウレタン樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、褶動性改良剤、及び耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0030】
本発明において、被洗浄物に付着した硬化性樹脂の硬化物には、硬化性樹脂の硬化反応が促進することにより硬化する硬化物のほかに、反応希釈剤等の硬化性樹脂に配合された添加剤が揮発し、粘度が上昇するによって固化した固化物も含まれる。
【0031】
本発明の溶剤組成物を用いて洗浄される被洗浄物として、硬化性樹脂を取り扱うために用いられる装置、例えば、容器、混合機、成形機、貯蔵タンク、加工機、混合槽、注型機、注入機、コーティング装置及び封入機;並びに、硬化性樹脂の加工物、例えばウレタン樹脂の加工物(例えば自動車部品及び電子部品など)及びエポキシ樹脂の加工物(例えば電子部品、配管部品及び自動車部品など)が挙げられる。
【0032】
硬化性樹脂を取り扱うために用いられる装置には、樹脂成分の充填及び混合、硬化成型などの樹脂の加工工程、及び装置の洗浄を繰り返して使用されるものが含まれる。また、注型器及び容器等は、一般に、原料成分の注入、硬化成型及び洗浄を繰り返して使用される。
【0033】
硬化性樹脂の加工物、例えばウレタン樹脂の加工物及びエポキシ樹脂の加工物は、加工物の成型の際に用いられたウレタン樹脂及びエポキシ樹脂以外の素材を再利用する目的で用いられる物が含まれる。具体的には、これらウレタン樹脂の加工物及びエポキシ樹脂の加工物に不良が発生した場合、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂以外の素材を、ウレタン樹脂の硬化物及びエポキシ樹脂の硬化物から分離して再利用する。
【0034】
このような素材として、例えば、ステンレス等の各種金属部品がある。すなわち、自動車用のシャフトやフレーム部品、外装部品等に用いられる金属製部品をはじめ、プリンタ等の電子機器に用いられるローラーシャフトやフレーム部品、さらにパイプ等の配管部品などがある。これらの金属製部品は、板状部材に限らず、断面円形状や矩形状のパイプ状部材や長尺部材であったり、その他、複雑な形状を有する部材であったりする。
【0035】
本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂又は硬化性樹脂の硬化物が付着した被洗浄物から、該硬化性樹脂又は硬化性樹脂の硬化物を、溶解除去又は剥離除去して、被洗浄物を洗浄するために用いられる。本発明の溶剤組成物は、ステンレス製の板及びステンレス製パイプなどの複雑な形状を有する金属部品と、硬化性樹脂とを一体成型することにより得られる、硬化性樹脂の硬化物が付着した被洗浄物から、硬化性樹脂の硬化物を剥離除去するための溶剤組成物として用いることができる。特に、ステンレス製のパイプ又は円柱の外周に硬化性樹脂の硬化物が付着している硬化性樹脂の加工物、例えばプリンタローラである場合、プリンタのシャフトに一体的に固着されたゴムやプラスチックなどのローラ部分を剥離除去することができる。このようなプリンタローラのゴム部分の材質として、エピクロロヒドリンゴムが挙げられる。
【0036】
本発明の溶剤組成物は、好ましくは(a)ノルマルプロピルブロマイドを15重量%〜45重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを50重量%〜80重量%、及び(c)添加剤を0.5重量%〜5重量%からなり、より好ましくは(a)ノルマルプロピルブロマイドを25重量%〜45重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを50重量%〜70重量%、及び(c)添加剤を0.5重量%〜5重量%からなり、更に好ましくは(a)ノルマルプロピルブロマイドを35重量%〜45重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを50重量%〜60重量%、及び(c)添加剤を0.5重量%〜5重量%からなる。このような範囲であれば、硬化性樹脂に対する溶解力も高く、なおかつ、粘度がN−メチル−2−ピロリドン単体よりも低く、しいては、被洗浄物に対する浸透力が高くなり、洗浄時間が短くなる点で良好である。
【0037】
また、硬化性樹脂の硬化物が付着したステンレス製のパイプ又は円柱から、硬化性樹脂の硬化物を剥離除去するための溶剤組成物、つまり剥離剤として使用する場合、本発明の溶剤組成物は、好ましくは(a)ノルマルプロピルブロマイドを15重量%〜45重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを50重量%〜80重量%、及び(c)添加剤を0.5重量%〜5重量%からなり、より好ましくは(a)ノルマルプロピルブロマイドを25重量%〜45重量%、(b)N−メチル−2−ピロリドンを50重量%〜70重量%、及び(c)添加剤を0.5重量%〜5重量%からなる。
【0038】
本発明の溶剤組成物は、原料成分であるノルマルプロピルブロマイド、N−メチル−2−ピロリドン、及び添加剤を混合することにより製造することができる。
【0039】
本発明において、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄する方法は、本発明の溶剤組成物を、前記被洗浄物と接触させる工程を含む。本発明において、本発明の溶剤組成物を被洗浄物に接触させる工程において、被洗浄物に付着した硬化性樹脂又はその硬化物は、被洗浄物から溶解除去されるか、又は剥離除去される。本発明において、硬化性樹脂の硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための方法は、本発明の溶剤組成物を被洗浄物に接触させる工程において、硬化性樹脂の硬化物が被洗浄物から剥離することが好ましい。
【0040】
本発明の溶剤組成物と、前記硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物とを接触させるための方法としては、特に制限はなく、溶剤組成物への前記被洗浄物の浸漬、溶剤組成物を含浸したスポンジによる前記被洗浄物の拭き取り、及び前記被洗浄物に対する溶剤組成物のスプレー等が好ましく、浸漬による方法がより好ましい。
【0041】
浸漬による方法において、洗浄効果を高めるために、浸漬と同時に、攪拌、揺動、超音波振動、又はエアバブリング等による手段を組み合わせることが好ましく、超音波振動による手段を組み合わせることがより好ましい。超音波振動は、発振周波数が20〜100kHzであり、発振出力が10〜500Wであるのが好ましい。エアバブリングでは、微細な気泡を、好ましくは、ガス及び溶剤組成物の体積比が1:1〜5:1となるように通気することで、溶剤組成物に不溶性の汚れを気泡と共に上昇させることができ、これにより被洗浄物に付着した硬化性樹脂又はその硬化物のみならず、不溶性の汚れをも分離することができる。
【0042】
本発明において、溶剤組成物及び被洗浄物の接触時間に相当する洗浄時間は、被洗浄物に付着した硬化性樹脂又は被洗浄物に付着した硬化性樹脂の硬化物を洗浄除去できる時間であれば特に制限されない。
【0043】
例えば、超音波振動を組み合わせた浸漬による方法における洗浄時間は、硬化前の硬化性樹脂が付着した被洗浄物を洗浄するために、好ましくは5秒間〜5分間、特に好ましくは10秒間〜1分間であり、硬化性樹脂組成物の硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するために、好ましくは10分間〜10時間、特に好ましくは30分間〜2時間である。
【0044】
上記洗浄時間未満である場合は洗浄が不十分で、付着した硬化性樹脂又はその硬化物を被洗浄物から十分に除去できない場合があり、一方、上記洗浄時間を超えた場合は、洗浄効果が格別向上しない。
【0045】
本発明において洗浄温度は、好ましくは20〜120℃である。このような温度において、より高温で処理することにより洗浄効果を上昇させることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0047】
実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物を、表1で示される組成で各成分を混合することにより調製した。
【0048】
【表1】

【0049】
試験例1 硬化前ウレタン樹脂
(1−1)硬化前ウレタン樹脂が付着したステンレス板の作製
ウレタン樹脂として、三洋化成工業株式会社製のF−3500A(主剤)及びF−3500B(硬化剤)を用いた。このウレタン樹脂は、主剤及び硬化剤の混合後、室温120秒で表面の硬化が開始する。4cm×4cm、厚さ0.4mmのステンレス板に、主剤及び硬化剤を混合したウレタン樹脂を厚さ40mmほど塗布し、室温にて60秒間硬化させて、樹脂が付着したステンレス板を得た。
【0050】
(1−2)被洗浄物の洗浄
洗浄試験のため、200ミリリットルのビーカーに、実施例1〜7及び比較例1〜5の各溶剤組成物150gを入れた。樹脂が付着したステンレス板を、実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物に浸漬させて、超音波洗浄機(発振周波数38kHz、出力360W)にて10秒間洗浄を行った。洗浄後、ステンレス板を取り出してウレタン樹脂が溶解除去できているかどうかを目視により判定した。
【0051】
試験例2 硬化後ウレタン樹脂(1)
(2−1)硬化後ウレタン樹脂が付着したステンレス板の作製
ウレタン樹脂組成物として、株式会社エアータイト社製のクリームエアータイトフォームATF−001を用いた。このウレタン樹脂組成物は、約15分で表面が硬化し始め、約1時間程度で内部もほぼ硬化する。4cm×4cm、厚さ0.4mmのステンレス板に、ウレタン樹脂を厚さ40mmほど塗布し、室温にて約1時間放置して硬化させて、ウレタン樹脂が付着したステンレス板を得た。
【0052】
(2−2)被洗浄物の洗浄
被洗浄物の洗浄のため、200ミリリットルのビーカーに、実施例1〜7及び比較例1〜4の各溶剤組成物150gを入れた。樹脂が付着したステンレス板を、実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物に浸漬させて、約1時間放置した。その後、ステンレス板を取り出してウレタン樹脂が剥離除去できているかどうかを目視により判定した。
【0053】
試験例1及び2の結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
試験例3 硬化前エポキシ樹脂
(3−1)硬化前エポキシ樹脂が付着したステンレス板の作製
エポキシ樹脂として、京セラケミカル社製エポキシレジンTCG1628A(主剤)及びTCG1628B(硬化剤)を用いた。このエポキシ樹脂は、主剤及び硬化剤の混合後、室温24時間で表面の硬化が開始する。4cm×4cm、厚さ0.4mmのステンレス板に、主剤及び硬化剤を混合したエポキシ樹脂を厚さ1mmほど塗布し、樹脂が付着したステンレス板を得た。樹脂の塗布後、直ちに洗浄テストを行った。
【0056】
(3−2)被洗浄物の洗浄
被洗浄物の洗浄のため、200ミリリットルのビーカーに、実施例1〜7及び比較例1〜4の各溶剤組成物150gを入れた。樹脂が付着したステンレス板を、樹脂の塗布後直ちに実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物に浸漬させて、超音波洗浄機(発振周波数38kHz、出力360W)にて洗浄を10秒間行った。洗浄後、ステンレス板を取り出してエポキシ樹脂が溶解除去できているかどうかを目視により判定した。
【0057】
試験例4 硬化後エポキシ樹脂
(4−1)硬化後エポキシ樹脂が付着したステンレス板の作製
エポキシ樹脂として、コニシ社のボンドE250(A剤:エポキシ、B剤:ポリアミドアミン)を用いた。このエポキシ樹脂は、A剤及びB剤を混合後、室温20℃にて24時間後で実用強度に達する。4cm×4cm、厚さ0.4mmのステンレス板に、A剤及びB剤を混合したエポキシ樹脂を、厚さ1mmほど塗布し、室温にて24時間硬化させて、樹脂が付着したステンレス板を得た。
【0058】
(4−2)被洗浄物の洗浄
被洗浄物の洗浄のため、200ミリリットルのビーカーに、実施例1〜7及び比較例1〜4の各溶剤組成物150gを入れた。樹脂が付着したステンレス板を、実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物に浸漬させて、超音波洗浄機(発振周波数38kHz、出力360W)にて1時間洗浄を行った。洗浄後、ステンレス板を取り出してエポキシ樹脂が剥離除去できているかどうかを目視により判定した。
【0059】
試験例3及び4の結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
試験例5 硬化後エポキシ樹脂(2)
(5−1)硬化後エポキシ樹脂が付着したステンレスパイプの作製
エポキシ樹脂として、コニシ社のボンドE250(A剤:エポキシ、B剤:ポリアミドアミン)を用いた。このエポキシ樹脂は、A剤及びB剤を混合後、室温20℃にて24時間後で実用強度に達する。A剤及びB剤を混合したエポキシ樹脂を、外径13mm、内径11mm、長さ90mmのステンレスパイプの外周面に沿って厚さ2mmほど塗布した。塗布したステンレスパイプを24時間放置し、完全硬化させて、樹脂が付着したステンレスパイプを得た。
【0062】
(5−2)被洗浄物の洗浄
被洗浄物の洗浄のため、200ミリリットルのビーカーに、実施例1〜7及び比較例1〜4の各溶剤組成物150gを入れた。樹脂が付着したステンレスパイプを、実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物に浸漬させて、室温にて6時間放置した。その後、ステンレスパイプを取り出して、エポキシ樹脂が剥離されたかどうかを目視により判定した。
【0063】
試験例6 硬化後ウレタン樹脂(2)
(6−1)硬化後ウレタン樹脂が付着したステンレスパイプの作製
ウレタン樹脂として、株式会社エアータイト社製のクリームエアータイトフォームATF−001を用いた。このウレタン樹脂は、約15分で表面が硬化し始め、約1時間程度で内部もほぼ硬化する。ウレタン樹脂を、外径13mm、内径11mm、長さ90mmのステンレスパイプの外周面に沿って厚さ10〜15mmほど塗布した。塗布したステンレスパイプを1.5時間放置し、硬化させて、樹脂が付着したステンレスパイプを得た。
【0064】
(6−2)被洗浄物の洗浄
被洗浄物の洗浄のため、200ミリリットルのビーカーに、実施例1〜7及び比較例1〜4の各溶剤組成物150gを入れた。ウレタン樹脂が付着したステンレスパイプを、実施例1〜7及び比較例1〜4の溶剤組成物に浸漬させて、室温にて1時間放置した。その後、ステンレスパイプを取り出してウレタン樹脂が剥離されたかどうかを目視により判定した。
【0065】
試験例5及び6の結果を表4に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
本願発明の好ましい含有量の溶剤組成物である実施例2〜7の溶剤組成物を用いた場合は、ステンレスパイプのような複雑な形状を有する被洗浄物であっても、硬化性樹脂の硬化物に対して優れた剥離洗浄力を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、広範囲な硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物に対して良好な洗浄効果を有し、特にウレタン樹脂及びエポキシ樹脂、並びにそれらの硬化物が付着した被洗浄物に対して良好な洗浄効果を有する。本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物に対する洗浄剤として工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ノルマルプロピルブロマイドを15重量%〜55重量%、
(b)N−メチル−2−ピロリドンを40重量%〜80重量%、及び
(c)添加剤を0.5〜5重量%
からなることを特徴とする、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物。
【請求項2】
前記硬化性樹脂がウレタン樹脂である、請求項1記載の溶剤組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1記載の溶剤組成物。
【請求項4】
前記添加剤が、ニトロアルカン系安定剤、エポキシド系安定剤及び防錆剤からなる群より選択される1種以上の添加剤である、請求項1〜3のいずれか1項記載の溶剤組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための方法であって、請求項1〜4のいずれか1項記載の溶剤組成物を該被洗浄物と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
硬化性樹脂の硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための、請求項5記載の方法であって、請求項1〜4のいずれか1項記載の溶剤組成物を該被洗浄物と接触させる工程において、該硬化性樹脂の硬化物が該被洗浄物から剥離することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2012−46689(P2012−46689A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192102(P2010−192102)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(597115750)株式会社カネコ化学 (12)
【Fターム(参考)】