説明

洗浄籠

【課題】 窓穴に張られる網状体が着脱自在となる洗浄籠を提供すること。
【解決手段】 本発明の洗浄籠10は、内部に被洗浄物が収容される筒状の胴部14と、胴部14の上下両側に着脱自在に取り付けられるとともに、窓穴57が形成された底部16とを備えている。胴部14は、外側の窓穴38が形成された外筒26と、外筒26の内側に着脱自在に取り付けられるとともに、外側の窓穴38に相対する内側の窓穴49が形成された内筒28と、外筒26及び内筒28に挟み込まれた状態で、窓穴38,49の間に張られる横側の網状体30と、外筒26、内筒28及び底部16に挟み込まれた状態で、窓穴57に張られる底側の網状体31とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品、電子部品、水晶等の被洗浄物を洗浄液に浸漬して洗浄する際に、前記被洗浄物を収容する洗浄籠に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小さな電子部品や機械部品等の被洗浄物を洗浄する場合、当該被洗浄物を洗浄籠に収容した状態で、当該洗浄籠ごと洗浄液に浸漬させることにより、前記被洗浄物の洗浄が行われる。前記洗浄籠としては、窓穴が形成された枠体と、当該枠体に接着若しくは溶接され、前記窓穴に張られた網状体を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−212534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の洗浄籠にあっては、網状体が接着若しくは溶接により枠体に固定されているため、網状体を枠体から取り外して交換することができず、網状体のみが破損、変形したときでも、洗浄籠全体を新たなものに交換しなければならない。つまり、網状体は、枠体よりも強度が低いことが多く、網状体の方が早く劣化する可能性が高く、網状体の破損等が発生すると、枠体自体は未だ使用できるにも拘らず、洗浄籠全体を廃棄せざるを得ず、環境資源を有効活用できないという不都合がある。また、網状体が枠体に接着されてなる洗浄籠は、例えば、特殊部品の洗浄時に強酸性の洗浄液を使用した場合、接着剤が洗浄液中に溶出する虞があり、洗浄液に混入した不純物により、適正な洗浄ができなくなるという不都合もある。
【0004】
本発明は、以上のような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、窓穴に張られる網状体が着脱自在となる洗浄籠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、内部に被洗浄物が収容される筒状の胴部を備え、
前記胴部は、外側の窓穴が形成された中空の外側部材と、当該外側部材の内側に着脱自在に取り付けられるとともに、前記外側の窓穴に相対する内側の窓穴が形成された内側部材と、前記外側部材と前記内側部材の間に挟み込まれた状態で、前記各窓穴の間に張られる網状体とを備える、という構成を採っている。
【0006】
(2)また、本発明は、内部に被洗浄物が収容される筒状の胴部と、当該胴部の下側に着脱自在に取り付けられるとともに、窓穴が形成された底部とを備え、
前記胴部は、前記底部に挟み込まれた状態で、前記窓穴に張られる網状体を備える、という構成を採っている。
【0007】
(3)ここで、前記胴部は、中空の外側部材と、当該外側部材の内側に着脱自在に取り付けられる内側部材とを更に備え、
前記網状体は、前記外側部材、前記内側部材及び前記底部の間に挟み込まれる、という構成を採ることが好ましい。
【0008】
(4)更に、前記網状体を前記内側部材に固定する固定手段を更に備え、
前記固定手段は、前記外側部材から前記内側部材を取り外した状態で、当該内側部材に対して着脱自在に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0009】
なお、本特許請求の範囲及び本明細書において、「上」、「下」とは、特に明記しない限り、図1の姿勢の洗浄籠における「上」、「下」を意味する。
【発明の効果】
【0010】
前記(1)の構成によれば、網状体が外側部材と内側部材の間に挟み込まれた状態になっているため、外側部材から内側部材を取り外すことで網状体の取り外しが可能になる。つまり、接着や溶接を用いずに網状体を窓穴に張ることができ、しかも、外側部材から内側部材を取り外すと、胴部に対して網状体が着脱自在になる。これにより、網状体が破損、変形等した場合、新たな網状体への交換を難なく行うことができ、洗浄籠全体を廃棄する必要がなくなり、環境資源の有効活用を図ることができる。また、接着等を使って網状体が窓穴に張られるものでないため、製品の製造作業を簡単に行える他、どの洗浄液を用いても、接着剤等の不純物が洗浄液に溶出することがなく、洗浄を適正に行うことができる。
【0011】
前記(2)の構成によれば、網状体が胴部と底部の間に挟み込まれた状態になっているため、底部を胴部から取り外すことで網状体を取り外すことができ、前記(1)の構成と同様の効果が得られる。
【0012】
前記(3)の構成によれば、被洗浄物の重みがかかる底部に張られた網状体をより強固に支持でき、網状体が洗浄籠から不意に外れることを一層防止できる。
【0013】
前記(4)の構成によれば、外側部材に内側部材が取り付けられた状態では、固定手段で網状体をより強固に支持できる一方で、外側部材から内側部材が取り外された状態では、固定手段を取り外すことができ、網状体の交換を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1には、本実施形態に係る洗浄籠の概略斜視図が示され、図2には、前記洗浄籠の底面図が示されている。また、図3には、前記洗浄籠の概略断面図が示され、図4には、図3の概略分解図が示されている。これらの図において、前記洗浄籠10は、テトラフルオロエチレンとその他のモノマーの共重合体からなるフッ素樹脂によって、上端側が開放する有底円筒状に形成されている。この洗浄籠10は、取手12が設けられた上部13と、上部13が上側に着脱自在に取り付けられる胴部14と、胴部14の下側に着脱自在に取り付けられる底部16とを備えて構成されている。
【0016】
前記上部13は、図1、図3及び図4に示されるように、取手12が取り付けられた周壁19と、この周壁19の上端縁に連なる頂壁20とにより構成されている。前記周壁20の内周面には、胴部14に係わり合うねじ溝22が形成されている。前記頂壁20のほぼ中央には、上下方向に貫通する平面視円形の開放部24が形成されている。
【0017】
前記胴部14は、上下両端側が開放する円筒状に設けられており、その内部に図示しない被洗浄物が収容されるようになっている。この胴部14は、図3及び図4に示されるように、外側に位置する中空の外側部材となる円筒状の外筒26と、外筒26の内側に着脱自在に取り付けられる中空の内側部材となる円筒状の内筒28と、外筒26と内筒28の間に挟み込まれる横側の網状体30と、外筒26、内筒28、底部16の間に挟み込まれる底側の網状体31と、横側の網状体30を内筒28の上下両側で固定する第1及び第2のリング33,34と、底側の網状体31を内筒28の下端側で固定する第3のリング35とを備えている。
【0018】
前記外筒26の外周面には、内外間で貫通する外側の窓穴38と、当該窓穴38の上方及び下方に位置するねじ溝40,41とが形成されている。前記窓穴38は、正面視ほぼ方形状をなし、ほぼ一定間隔で周方向に複数形成されている。上側のねじ溝40は、上部13のねじ溝22に係り合うようになっており、下側のねじ溝41は、底部16のねじ溝53(後述)に係り合うようになっている。
【0019】
前記内筒28は、前記外筒26の内径に対して僅かに小さい最大外径を備えており、内筒28が外筒26の内部に挿入されると、内筒28が外筒26にほぼぴったり収まるようになっている。また、内筒28の上下両端側には、その周囲よりも肉薄に形成された段部43,44が設けられており、上側の段部43には、横側の網状体30の上端側を挟んで第1のリング33が嵌め込まれる。一方、下側の段部44には、上から順に、横側の網状体30の下端側を挟んで第2のリング34が嵌め込まれるとともに、底側の網状体31を挟んで第3のリング35が嵌め込まれる。各段部43,44には、ピン46が挿入されるピン穴47が周方向の複数箇所に形成されている。更に、内筒28の外周面には、内外間で貫通する内側の窓穴49が形成されており、当該窓穴49は、内筒28を外筒26に装着したときに、外側の窓穴38に相対する位置に設けられている。
【0020】
前記横側の網状体30は、穴が多数設けられた布状となっており、上下両端側が開放する円筒状に形成され、内筒28の外周面にほぼぴったり装着できるようになっている。
【0021】
前記底側の網状体31は、網状体30と同様、穴が多数設けられた布状となっており、上端側が開放する有底の筒状に形成され、その内側に内筒28の下端部分がほぼぴったり収まるようになっている。
【0022】
前記第1、第2及び第3のリング33〜35は、その内径が、嵌め込まれる段部43,44の外径に対してほぼ同一か僅かに大きく設定され、段部43,44にほぼぴったり収容されるようになっている。また、前記第1、第2及び第3のリング33〜35の外周部分には、ピン46が挿通される貫通穴51が形成され、貫通穴51は、各リング33〜35が段部43,44に嵌め込まれたときに、当該段部43,44のピン穴47,47に相対するようになっている。なお、各網状体30,31には、ピン穴47及び貫通穴51に連なる小穴(図示省略)が形成されている。
【0023】
前記底部16は、外筒26の下側のねじ溝41に係り合うねじ溝53が内周面に形成された周壁55と、この周壁55の下端縁に連なる底壁56とにより構成されている。前記底壁55のほぼ中央には、上下方向に貫通する底側の窓穴57が形成されている。
【0024】
前記洗浄籠10の組み立て及び取り外し手順を以下に説明する。
【0025】
図4に示される状態から、各網状体30,31が内筒28の外側に被せられた後で、第1〜第3のリング33,34,35が各段部43,44に嵌め込まれ、これらリング33〜35がピン46で内筒28に固定される。従って、第1〜第3のリング33,34,35、段部43,44、及びピン46は、網状体30,31を内筒28に固定する固定手段を構成するとともに、外筒26から内筒28を取り外した状態で内筒28に対して着脱自在となる。
【0026】
そして、各網状体30,31で覆われた内筒28が、外筒26の上下何れかの開放部分から挿入されて当該外筒26の内部に嵌め込まれる。その後、上部13及び底部16が外筒26の上下両側にねじ込まれて図3の組み立て状態となる。このとき、横側の網状体30は、外筒26と内筒28の間に挟み込まれた状態で支持され、外側の窓穴38と内側の窓穴49との間に張られた状態となる。一方、底側の網状体31は、胴部14及び底部16の間に挟み込まれた状態となり、底側の窓穴57に脱落不能に張られた状態となる。
【0027】
電子部品や機械部品等の被洗浄物(図示省略)の洗浄時には、洗浄籠10の上部の開放部24から前記被洗浄物が挿入された後で、洗浄籠10ごと、洗浄液が収容された図示しない液槽に浸漬され、前記被洗浄物が洗浄される。この際、各網状体30,31により、前記被洗浄物は、各窓穴38,49,57から外側に排出されないが、洗浄液は、各網状体30,31を介して洗浄籠10の内外間で流通可能になる。
【0028】
ところで、洗浄籠10の使用を経て、各網状体30,31に破損や変形が生じ、新たな網状体30,31に交換したい場合、又は、前記被洗浄物の大きさに応じて網目の大きさの異なる他の網状体30,31に交換したい場合等には、前述の組み立て手順と逆の手順で、洗浄籠10を分解することで、他の網状体30,31に交換し、前述の手順で再び洗浄籠10を組み立てればよい。
【0029】
従って、このような実施形態によれば、接着或いは溶接によって網状体30,31が窓穴38,39,57に固定されていないため、他の網状体30,31への交換を簡単に行うことができ、洗浄籠10の廃棄サイクルの大幅な延長が期待できる他、どの洗浄液を用いても、洗浄籠10から接着剤等の不純物が洗浄液に溶出することなく、適正な洗浄を行うことができるという効果を得る。
【0030】
また、本実施形態の洗浄籠10は、フッ素性樹脂で一体的に形成されているため、耐蝕性や耐薬性が高く、使用可能な洗浄液の範囲を従来よりも広げることができる。
【0031】
なお、前記実施形態では、横側の網状体30と底側の網状体31を別体としていたが、それらを一体化してもよく、この場合は、第2及び第3のリング34,35を一体化することができる。
【0032】
また、底側の網状体31は、外筒26若しくは内筒28の何れか一方と、底部16との間に挟み込んで支持される構造としてもよい。
【0033】
更に、前記固定手段としては、内筒28が外筒26から取り外された状態で内筒28に対して着脱自在であり、且つ、網状体30,31を内筒28に固定できる限り、例えば、弾性変形可能なバンド等、他の部材構成にすることも可能である。
【0034】
また、本発明は、胴部14に形成された横側の窓穴38,49と、底部16に形成された底側の窓穴57の何れか一方のみ設け、何れか一方の網状体30,31を張るようにしてもよい。
【0035】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、構成部材の形状等、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る洗浄籠の概略斜視図。
【図2】前記洗浄籠の底面図。
【図3】前記洗浄籠の概略断面図。
【図4】図3の概略分解図。
【符号の説明】
【0037】
10 洗浄籠
14 胴部
16 底部
26 外筒(外側部材)
28 内筒(内側部材)
30 横側の網状体
31 底側の網状体
33 第1のリング(固定手段)
34 第2のリング(固定手段)
35 第3のリング(固定手段)
43 段部(固定手段)
44 段部(固定手段)
46 ピン(固定手段)
38 外側の窓穴
49 内側の窓穴
57 底側の窓穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被洗浄物が収容される筒状の胴部を備え、
前記胴部は、外側の窓穴が形成された中空の外側部材と、当該外側部材の内側に着脱自在に取り付けられるとともに、前記外側の窓穴に相対する内側の窓穴が形成された内側部材と、前記外側部材と前記内側部材の間に挟み込まれた状態で、前記各窓穴の間に張られる網状体とを備えたことを特徴とする洗浄籠。
【請求項2】
内部に被洗浄物が収容される筒状の胴部と、当該胴部の下側に着脱自在に取り付けられるとともに、窓穴が形成された底部とを備え、
前記胴部は、前記底部に挟み込まれた状態で、前記窓穴に張られる網状体を備えたことを特徴とする洗浄籠。
【請求項3】
前記胴部は、中空の外側部材と、当該外側部材の内側に着脱自在に取り付けられる内側部材とを更に備え、
前記網状体は、前記外側部材、前記内側部材及び前記底部の間に挟み込まれていることを特徴とする請求項2記載の洗浄籠。
【請求項4】
前記網状体を前記内側部材に固定する固定手段を更に備え、
前記固定手段は、前記外側部材から前記内側部材を取り外した状態で、当該内側部材に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は3記載の洗浄籠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−279549(P2009−279549A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136111(P2008−136111)
【出願日】平成20年5月24日(2008.5.24)
【出願人】(505436508)サンフロロ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】