説明

洗浄装置を操作するデバイス及びシステム

海面下の海洋設備から海洋性汚損付着物を除去する洗浄装置の操作及び推進デバイスであって、デバイスは少なくとも、流体を高圧で供給するように構成された誘導部分(3)と、流体を高圧で供給する入口を有するノズルと、誘導側(6)及び出口(7)を有し、前記ノズルが誘導側(6)の近くに配置された管状本体とを備える。本発明は、海洋設備を洗浄するために1つ又は複数の操作及び推進デバイスを使用するシステムも備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海面下の引き網及び生け簀から海洋性汚損付着物を除去するための洗浄装置に関し、該洗浄装置は少なくとも自身を操作及び推進するデバイスを備える。特に、操作及び推進する少なくとも1つのデバイスはそれぞれ、高圧で流体を供給するように構成された誘導部分と、高圧で流体を供給する入口を有するノズルと、誘導側(6)及び出口(7)を有する管状本体とを備え、上記ノズルは誘導側(6)に近接して配置される。本発明はまた、引き網及び生け簀から海洋性汚損付着物を除去する洗浄装置の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
海洋性汚損付着物は、海運業などのすべての海洋活動、養魚産業及びオフショア石油産業で問題となっている。海運業では、海洋性汚損付着物は摩擦を増大させるため、燃料消費量を増大させ、それにより特にCO排出量も増大させるという点で問題である。亜鉛及び鉛の化合物を含む従来の有害な船底塗料は、海中の生物に有害な影響を及ぼす。養魚産業では、汚損付着物が水の流れを妨害し、それにより引き網内の酸素レベルも低下させる。固定設備及び石油設備では、汚損付着物は構造的弱点をわかりにくくすることがあり、また汚損付着物は埠頭、橋の脚柱などのような設備の疲労も加速させることがある。
【0003】
生け簀は、従来望ましくない汚損付着物を除去するためにダイバーが高圧の水噴射を使用することによって洗浄されてきた。船舶及び固定建造物もある程度、ダイバーによって高圧洗浄用の可動機器で洗浄されてきた。
【0004】
手作業による除去の1つの欠点は、処理に時間がかかり、養魚産業の場合のように定期的な洗浄が要求されると、この解決法は厄介で、かつ資源を要することになる点である。これらの洗浄方法による短所の結果、海洋性汚損付着物を除去するためにより洗練され自動化された機器が開発されている。
【0005】
海洋設備を洗浄するデバイスの一例が、ノルウェー特許第19986219号(Andorsen)に開示されている。このデバイスは、高圧の水によって推進される複数のロータを有する板状デバイスを備える。デバイスは、ロータを推進するように供給された高圧で洗浄する対象に沿って案内される。最適な流れの状態では、この解決法がうまく機能する。
【0006】
あまり最適でない流れの状態では、海洋設備を洗浄する「ロータデバイス」は操作が困難であり、また多くの場合、洗浄する本体の表面輪郭に追随することが困難である。漁網や生け簀の外壁は、必ずしも真っ直ぐに垂れ下がるわけではなく、したがって漁網や生け簀の壁はその底に対して垂直であるか、又は放物線となる。生け簀の漁網の外壁は流れの状態によってその底に向かってS字形状になることがむしろ一般的であることに留意されたい。幾つかの他の設備もこのような形状を有しているので、ノルウェー特許第19986219号によるロータデバイスを使用すると要求される操作性が提供されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ノルウェー特許第19986219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、上記問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の別の態様は、洗浄機器の効率を向上させ、噴射ディスクへの水圧を増大させずにアクセス性が低下した場所での汚損付着物の除去を可能にする。
【0010】
上記目的及び目標は、添付の特許請求の範囲による洗浄装置によって本発明により達成される。有利な実施形態は従属請求項を読めば明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図1】従来技術による操作本体を示す図である。
【図2】本発明の1つの実施形態による推進及び操作本体の例を示す図である。
【図3】本発明の1つの実施形態による推進及び操作本体のより詳細な例を示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態による推進及び操作本体のより詳細な例を示す図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態による推進及び操作本体のより詳細な例を示す図である。
【図6】本発明による推進及び操作本体の詳細な図である。
【図7】洗浄装置に固定された本発明による幾つかの推進及び操作手段の例を示す図である。
【図8】洗浄装置に固定された本発明による幾つかの推進及び操作手段の使用例を、洗浄装置の裏側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、添付の図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。以下では、ウォータージェットデバイスという用語の意味は、固定又は回転式のすべてのウォータージェットデバイスを含み、ウォータージェットデバイスの入口を高圧の流体に接続すると、出口では有意に低下した圧力の流れになり、同時に流量が有意に増大することを理解されたい。すなわち、流量が少なく且つ高い入力圧を流量が多く且つ低い出口圧力に変換する変換器と称することができる。
【0013】
本発明による基本原理は、流量が多く且つ比較的低い圧力の噴射は、高圧で相応して低下した流量の噴射より流体の推進力を有意に上昇させることである。この現象は、本発明による海面下の洗浄ユニットの操作性が向上するために用いられる。操作するためのウォータージェットデバイスをこのように使用すると、操作性の向上に加えて多数の追加の利点が生じる。1つは例えば、流体流量が少なく高圧で噴射する従来のシステムより、洗浄ユニットに結合された高圧リザーバからの供給エネルギーの使用量が減少することである。
【0014】
図1は、洗浄装置を操作し推進するための従来のデバイスの例を示す。このようなデバイスは、回転する洗浄装置、すなわち海洋設備を洗浄する「ロータデバイス」の中心に配置されることが周知であり、ここで回転する洗浄ユニットは高圧の水噴射によって推進される。回転式洗浄ユニットは、一例として枠体及び/又は適切な板に固定されている。経験及び実験は、海面下で汚損付着物を除去する洗浄装置としては、このような従来のデバイスは操作性及び推進力に有意の欠点があることが判明している。
【0015】
以上で示したように、流量が少なく且つ高圧の入口及び流量が多い出口は経験的に、推進及び操作のために特に有利な特性を示している。洗浄中に、このような洗浄デバイスは洗浄する対象に可能な限り近いことが必要である。したがって、本発明により達成される最適な前方への推力が望ましい。これにより、洗浄する表面に最適な方法で追随する洗浄装置が得られる。
【0016】
図2は、本発明による操作及び推進用のウォータージェットデバイスを通って、入口及び出口の水の流れがどのように変換されるかの例を簡単な方法で示す。図6は、動作及び構成をより詳細に示す。ウォータージェットデバイスは、ここでは平面又はほぼ平面に配置され、海洋設備から海洋性汚損付着物を除去する装置の前板1を有する。例えば150〜300バールの比較的高圧の水が、高圧管を通ってウォータージェットデバイスの入口側3に供給される。水噴射開口の中心には、入口側3から上記水を受けるノズルが配置され、このノズルが次に高圧で水を押し出す(2、4)。この設計の結果、水の流れ3と比較して大量の水(例えば150〜200L/分)がウォータージェットデバイスの開口内の6に吸引され、水はウォータージェットデバイスへの管状本体を通り、中心に配置されたノズルを超えてウォータージェットデバイスの出口5に向かって誘導される。ウォータージェットデバイスの出口には、水流2及び5の結果として水流7を有する。
【0017】
上記ウォータージェットデバイスを、海洋設備から海洋性汚損付着物を除去する装置の前板に装着される幾つかのウォータージェットデバイスと組み合わせることができる(図7、図8)。このような前板には通常、図では7で示された複数の回転式洗浄ユニットが設けられるが、回転式洗浄ユニットの数は2以上であり得ることを認識されたい。回転式洗浄ユニットは通常、高圧の水によって推進されるが、これはウォータージェットデバイスと同じ高圧源からであることが好ましい。前板と、2つ以上の回転式洗浄ユニットと、少なくとも1つのウォータージェットデバイスとを備えるシステムを、本発明による海洋設備を洗浄用の「ロータ装置」と呼ぶ。本発明による海洋設備を洗浄用の「ロータ装置」は、従来技術によるロータ装置とは対照的に、困難な流れの状態でも良好な安定性を有し、本発明による海洋設備を洗浄する「ロータ装置」は従来技術によるロータ装置よりも良好な方法で洗浄する対象の形状を追随するので、非常に優れた洗浄効果を奏する。本発明により海洋設備を洗浄する「ロータ装置」にウォータージェットデバイスを使用することは、使用の一例である。何故なら、ウォータージェットデバイスを他の板状洗浄装置に固定することができることが明白だからである。
【0018】
ウォータージェットデバイスには、その出口7に旋回する曲げた端パイプ部片を設けることができ、端パイプ部片を回転することによって水流の方向を制御することができる。回転する端パイプ部片は、手動で回転するか、又は遠隔回転することができる。回転する端パイプ部片の代替物として、柔軟であり、したがって屈曲可能である端パイプ部片を設けることができる。さらに、端パイプ部片に水流を制御する羽根を設けるか、又はさらに水流を制御するために内側にフィンを設けることができる。端パイプ部片の上記変形例を任意の適切な方法で組み合わせることができる。端パイプ部片として多くの変形例がある柔軟な解決法により、前板の設計を変更した状態でウォータージェットデバイスを非常に多数の洗浄装置に適用することが可能となり、いずれの例でも良好な安定性及び良好な推進性能を得ることができる。
【0019】
引き網又は他の対象の部分が水流6とともに吸引されるのを防止するために、ウォータージェットデバイスの開口には網目、横桁、2つの交差する桁、又は対象が水流6とともに吸引されるのを防止する任意の他の解決策を設けることができる。
【0020】
本発明により海洋設備を洗浄する「ロータ装置」の他の改良点は、洗浄する表面との摩擦を軽減するために、前板上に車輪を分散させて装着することである。本発明は、洗浄するベースに対する摩擦の軽減を利用して海洋設備を洗浄する「ロータ装置」の推進力を増大させるので、「ロータ装置」上の車輪は、洗浄する表面と接触するように配置することが適切である。車輪は、(引き網洗浄機の場合)引き網上の水平及び垂直の支持紐上で容易に滑動できるように、様々な方向に配置することができる。車輪は、本発明による海洋設備を洗浄する「ロータ装置」とほぼ同一の幅を有することができる。この場合、車輪は自身が網の網目のサイズを通過するのを防止する直径を有する。
【0021】
以下では、本発明を例示的実施形態で説明する。
【0022】
本発明の第1の実施形態
次に、1つ又は複数のウォータージェットデバイスを備えるシステムの第1の実施形態を、図3を参照しながら説明する。図3に、前板に装着され、この前板の開口を覆っているウォータージェットデバイスを示す。このウォータージェットデバイスは通常、図6に示すような設計を有する。約280バールの圧力で4〜5L/分の流水量の高圧管がウォータージェットデバイス3に供給され、中心に配置された内部ノズルへと誘導される。次に、ウォータージェットデバイスから約200L/分で4〜5バールの圧力の出口水流7が生成される。
【0023】
本発明の第2の実施形態
次に、1つ又は複数のウォータージェットデバイスを備えるシステムの第2の実施形態を、図4を参照しながら説明する。図4には、前板に装着されたウォータージェットデバイスが示され、1つ又は複数の突出するスペーサが上記前板の裏側に装着されている。このウォータージェットデバイスは通常、図6に示すような設計を有する。約280バールの圧力で4〜5L/分の流水量の高圧管がウォータージェットデバイス3に供給され、中心に配置された内部ノズルへと誘導される。次に、ウォータージェットデバイスから約200L/分で4〜5バールの圧力の出口水流7が生成される。このシステムは、第1の実施形態と比較して、異物がウォータージェットデバイスの入口に吸引され、したがってそれを閉塞するか最終的に異物がウォータージェットデバイスの吸引を損傷することを防止する効果がより大きい。
【0024】
本発明の第3の実施形態
次に、1つ又は複数のウォータージェットデバイスを備えるシステムの第3の実施形態を、図5を参照しながら説明する。図5には、前板に装着されたウォータージェットデバイスが示され、1つ又は複数の突出するスペーサ又は管状スペーサが上記前板の裏側に装着されている。このウォータージェットデバイスは通常、図6に示すような設計を有する。約280〜300バールの圧力で4〜5L/分の流水量の高圧管がウォータージェットデバイス3に供給され、中心に配置された内部ノズルへと誘導される。この解決策の場合、ウォータージェットデバイスの入口に1つ又は複数のスリットが設けられ、これらは一緒になってウォータージェットデバイスの入口を構成する。次に、ウォータージェットデバイスから約200L/分で4〜5バールの圧力の出口水流7が生成される。このシステムは、第1の実施形態と比較して、異物がウォータージェットデバイスの入口内に吸引され、したがってそれを閉塞するか最終的に異物がウォータージェットデバイスの吸引を損傷することを防止する効果がより大きい。
【0025】
以上で、ウォータージェットデバイスの幾つかの例を説明した。洗浄システム内でのウォータージェットデバイスの使用例を説明し、ウォータージェットデバイスの出口の強度及び方向を調整する方法を示した。上記デバイスはすべて、海で使用するために最適の洗浄装置を提供するように、相互に組み合わせ可能であることを認識されたい。すべての解決法に共通するのは、1つ又は複数のウォータージェットデバイスを使用することであり、ウォータージェットデバイスは入口で高圧の流体と結合され、その結果、出口で圧力が有意に低下し、同時に流量が有意に増大した流れになる。
【0026】
本発明のウォータージェットデバイスは、高圧の水リザーバに接続し得るすべての海面下洗浄装置で使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
3 高圧での水の入口
4 ウォータージェットデバイス3からの高圧で出る水
5 ウォータージェットデバイスの出口
6 水が吸引される
7 流量が多く且つ中位の圧力での出口水流
8 高圧管
9 前板
10 裏側
11 前

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面下で引き網及び生け簀から海洋性汚損付着物を除去する洗浄装置であって、少なくとも
前記洗浄装置を操作及び推進する少なくとも1つの操作及び推進デバイスを備え、
前記少なくとも1つの操作及び推進デバイスがそれぞれ、
流体を高圧で供給するように構成された誘導部分(3)と、
前記流体を高圧で供給する入口を有するノズルと、
誘導側(6)及び出口(7)を有する管状本体とを含み、前記ノズルが、前記誘導側(6)の近くに配置され、
前記洗浄装置が、自身上に装着された1つ又は複数の回転式洗浄ユニットを有する板状本体をさらに備え、前記操作及び推進デバイスの1つ又は複数が前記板状本体に装着され、したがって前記操作及び推進デバイスが、前記板状本体の開口を覆う誘導部分(3)を有する一方、前記出口(7)が前記板状本体の前記裏側から突出することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記板状本体が、その前側に装着された1つ又は複数の車輪を有することを特徴とする、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄装置の前記少なくとも1つの操作及び推進デバイスが、漏斗形状の吸引部分(6)をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄装置の前記少なくとも1つの操作及び推進デバイスが、板状本体に固定されるように構成された1つ又は複数の突出するスペーサを備え、前記突出するスペーサ(図4)は、前記管形状の吸引側(5)の周囲に配置することが好ましいことを特徴とし、
前記突出するスペーサ(図4)が前記デバイスの中心部分に平行であるか、又は実質的に平行である、請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄装置の前記少なくとも1つの操作及び推進デバイスの管状出口に、曲げた、又は曲げ可能である固定又は回転式端パイプ部片を設けることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄装置の前記少なくとも1つの操作及び推進デバイス内で、前記端パイプ部片が回転し、操作者によって遠隔制御可能であることを特徴とする、請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄装置の前記少なくとも1つの操作及び推進デバイスの出口(7)に、前記デバイスからの前記出口の流れを制御する1つ又は複数の調整可能な羽根を設けることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄装置の前記少なくとも1つの操作及び推進デバイスの前記開口に、異物の吸引を防止するように構成された手段を設けることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
引き網及び/又は生け簀を洗浄するための、前記請求項のうち1つ又は複数の項に記載の洗浄装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−527569(P2011−527569A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517371(P2011−517371)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/NO2009/000254
【国際公開番号】WO2010/005314
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510273318)
【Fターム(参考)】