洗浄装置
【課題】 突起状の被洗浄物における根元部位の有効かつ十分な洗浄を行うとともに、ブラシへのゴミの付着を回避する。
【解決手段】 突起状の被洗浄物Mを内部に挿入可能なハウジング部2の挿入口2iに配してブラシ機構部3と一体に回転するとともに、上面に洗浄部8wを有し、かつ中央に被洗浄物Mが挿通する挿通孔8iを有する円盤状の洗浄部材8と、この洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5と、上噴射部5u及び/又は下噴射部5dに洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6とを具備してなる。
【解決手段】 突起状の被洗浄物Mを内部に挿入可能なハウジング部2の挿入口2iに配してブラシ機構部3と一体に回転するとともに、上面に洗浄部8wを有し、かつ中央に被洗浄物Mが挿通する挿通孔8iを有する円盤状の洗浄部材8と、この洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5と、上噴射部5u及び/又は下噴射部5dに洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6とを具備してなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳牛の乳頭などの突起状の被洗浄物を洗浄する際に用いて好適な洗浄ユニット及び本体ユニットを備える洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、搾乳を行う乳牛の乳頭には、汚れや雑菌が付着しているため、牛乳の衛生的生産や乳質低下防止の観点或いは牛体の乳房炎等を防止する観点から、搾乳前に、乳頭に対する所定の清拭作業(洗浄作業)を行っている。しかし、このような清拭作業は、通常、大掛かりな洗浄装置を必要とするため、従来、携帯式に構成することにより小型コンパクト化及び使い勝手を高めた洗浄装置も特許文献1で知られている。
【0003】
同文献1で開示される突起状物の洗浄装置は、突起状物を内部に収納して、該突起状物の外周部を洗浄する洗浄装置であって、円筒状の外カバーと、突起状物洗浄用のブラシ及び長手方向に延びる溝部を壁部に備え、外カバー内に回動自在に収納される第1洗浄部材と、この第1洗浄部材を両方向へ回転する回動手段と、溝部に係合して長手方向へ移動自在であり、壁部にブラシを備えて突起状物の先端側の洗浄を行う第2洗浄部材とを備え、突起状物の先端部が当接する第2洗浄部材の上面に、先端部の形状に対応して変化し、当該先端部に摺接しながら洗浄を行う弾性を備えた先端部洗浄材を配置したものである。
【特許文献1】特開2005−192404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1で開示される従来の洗浄装置(突起状物の洗浄装置)は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0005】
第一に、乳頭の根元部位の洗浄が不十分になりやすい。このため、搾乳時にティートカップライナに汚れが付着し、牛乳の衛生的生産や乳質低下防止、更には乳房炎等の防止を十分に図れないとともに、汚れが残存しやすいことから洗浄後の確認作業や手作業による追加洗浄などが必要になり、作業性の低下や作業能率の低下を招く。
【0006】
第二に、乳頭にゴミ(稲藁,おがこ,籾殻,糞等)が付着していた場合、洗浄ブラシにそのゴミが付着しやすい。このため、洗浄能力の低下を来しやすいとともに、洗浄ブラシに付着したゴミの頻繁な除去作業を強いられる。
【0007】
第三に、乳頭の根元部位が汚れていた場合、洗浄は手作業に頼らざるを得ないため、牛体に不必要な負担をかけたり、或いは洗浄時間が必要以上に長くなってしまうなどの弊害を招きやすい。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した洗浄装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、突起状の被洗浄物Mを挿入口2iから内部に挿入可能なハウジング部2,このハウジング部2に挿入した被洗浄物Mを洗浄するブラシ機構部3,このブラシ機構部3を回転させる回転駆動部4及びハウジング部2の内部に洗浄液Lを噴射する噴射部5を備える洗浄ユニットU1と、少なくとも、洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6及び電力を供給する電力供給手段7を備える本体ユニットU2からなる洗浄装置1を構成するに際して、挿入口2iに配してブラシ機構部3と一体に回転するとともに、上面に洗浄部8wを有し、かつ中央に被洗浄物Mが挿通する挿通孔8iを有する円盤状の洗浄部材8と、この洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5と、上噴射部5u及び/又は下噴射部5dに洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6とを具備してなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、洗浄部材8は、上面から上方に突出する一又は二以上のフィン状部8wf…を有する洗浄部8wを備えて構成できるとともに、洗浄部材8は、弾性体素材により一体成形することができる。一方、ブラシ機構部3は、被洗浄物Mの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと当該被洗浄物Mの先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bを備えて構成できる。この際、第二洗浄ブラシ部3bを昇降自在に支持するブラシ支持手段11と、第二洗浄ブラシ部3bを上方へ付勢するブラシ付勢手段12を設けることができる。他方、洗浄装置1には、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを回収して本体ユニットU2に貯留する洗浄液回収手段13を設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る洗浄装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 上面に洗浄部8wを有する洗浄部材8が回転し、かつ洗浄部材8の上方に配した上噴射部5uから洗浄液Lを噴射するため、突起状の被洗浄物Mにおける根元部位Mmbに対する有効かつ十分な洗浄を行うことができる。したがって、被洗浄物Mとして乳頭Mmを適用した場合には、ティートカップライナに対する汚れの付着が回避され、牛乳の衛生的生産の確保及び乳質低下防止や乳房炎等の防止に貢献できるとともに、汚れの残存を解消できるため、洗浄後の確認作業や手作業による追加洗浄などが不要或いは軽減され、作業性の向上及び作業能率の向上を図ることができる。
【0013】
(2) 被洗浄物Mにゴミ(稲藁,おがこ,籾殻,糞等)が付着している場合であっても、ゴミはブラシ機構部3のブラシで掻き取られる前に、洗浄部材8により除去されるとともに、洗浄液Lにより速やかに流されるため、ブラシ機構部3におけるブラシへのゴミの付着を回避できる。これにより、洗浄能力の低下やブラシに付着したゴミの頻繁な除去作業を排除し又は軽減することができるとともに、より少ない量の洗浄液Lにより効率良く清拭できる。
【0014】
(3) 上面に洗浄部8wを有する専用の洗浄部材8により被洗浄物Mにおける根元部位Mmbの洗浄を行うため、根元部位Mmbに対して洗浄ユニットU1を必要以上の力で押付ける必要が無く、根元部位Mmb側に対して不必要な負担をかけてしまう弊害を回避できるとともに、洗浄時間も不必要に長くなる弊害を回避できる。
【0015】
(4) 洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5を備えるため、少ない洗浄液Lにより被洗浄物Mにおける先端部Msから根元部位Mmbまで効率良く洗浄することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、洗浄部材8に、上面から上方に突出する一又は二以上のフィン状部8wf…を有する洗浄部8wを設ければ、洗浄後、上噴射部5uからの洗浄液Lの噴射を停止し、かつ洗浄部材8を回転させることにより、洗浄部材8を送風ファンとして機能させることができるため、被洗浄物Mに対する迅速な液切り及び乾燥を行うことができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、洗浄部材8を弾性体素材により一体成形すれば、単一部品により容易かつ低コストに実施できるとともに、被洗浄物Mに対する保護を図りつつ根元部位Mmbに対する十分な洗浄を行うことができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、ブラシ機構部3を、被洗浄物Mの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bにより構成するとともに、第二洗浄ブラシ部3bを昇降自在に支持するブラシ支持手段11と、第二洗浄ブラシ部3bを上方へ付勢するブラシ付勢手段12を設けて構成すれば、異なる長さの被洗浄物Mに対応して先端部Msの洗浄を常にムラ無く良好に行うことができる。
【0019】
(8) 好適な態様により、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを回収して本体ユニットU2に貯留する洗浄液回収手段13を設ければ、使用後の汚れた洗浄液Lが外部に無用に排出される不具合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る洗浄装置1の構成について、図1〜図8を参照して具体的に説明する。
【0022】
洗浄装置1は、図2に示す洗浄ユニットU1と本体ユニットU2を備える。洗浄ユニットU1には所定長さの接続部Ucが付属し、この接続部Ucを介して本体ユニットU2に接続することができる。この洗浄装置1は手で持って牛舎内の任意の場所まで携帯することができる。
【0023】
洗浄ユニットU1は、図1に示すように、基本的形態として、ハウジング部2,ブラシ機構部3,回転駆動部4及び噴射部5を備える。ハウジング部2は、全体を円筒形に形成し、上端開口が挿入口2iとなる。したがって、この挿入口2iを通して乳頭Mm(突起状の被洗浄物M)をハウジング部2の内部に挿入できる。また、ハウジング部2における外周面2fの上部には、リング形の噴射部形成部材21を取付ける。この場合、噴射部形成部材21の内周面には、周方向に沿ったリング状の凹溝による上下一対の液通路22u,22dを形成するとともに、各液通路22u,22dに臨むハウジング部2の外周面2fには、周方向に沿って複数の上噴射孔23u…及び複数の下噴射孔23d…を、それぞれ一定間隔おきに形成する。これにより、ハウジング部2の上部に、上噴射部5uと下噴射部5dがそれぞれ上下に離間して設けられ、上噴射部5u(上噴射孔23u…)は、後述する洗浄部材8に対してその上方に配されるとともに、下噴射部5d(下噴射孔23d…)は、洗浄部材8に対してその下方に配される。上噴射部5uと下噴射部5dは噴射部5を構成する。さらに、噴射部形成部材21には、各液通路22u,22dに洗浄液Lを供給する接続口部24u,24dを有する。
【0024】
回転駆動部4は、ケーシング26にブラシモータ(直流モータ)27を内蔵して構成し、ケーシング26の上端面からブラシモータ27のロータシャフト27sが上方に突出する。そして、ケーシング26の上端はハウジング部2の下端開口に取付ける。また、ケーシング26には排液口部28を一体形成する。この排液口部28を通してハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを外部に排出できる。
【0025】
ブラシ機構部3は、ハウジング部2に挿入した乳頭Mmの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと乳頭Mmの先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bを備える。第一洗浄ブラシ部3aは、図6及び図7に示す刷毛状をなす三つの洗浄ブラシ3ax,3ay,3azを備え、各洗浄ブラシ3ax…は一端(上端)を連結リング31の下面に固定して構成する。これにより、各洗浄ブラシ3ax…は、連結リング31に沿って120〔゜〕間隔で配され、連結リング31から吊下げられるとともに、各洗浄ブラシ3ax…におけるブラシ先端は、連結リング31の中心軸に向けて配される。各洗浄ブラシ3ax…におけるブラシ材質は、乳頭Mmを傷付けることのない軟質の合成樹脂素材を利用できるとともに、各洗浄ブラシ3ax…の上下方向の寸法及びブラシ長などは、乳頭Mmの長さ(大きさ)を考慮して選定し、特に、ブラシ密度は、ゴミが付着(残存)しにくい密度を選定する。
【0026】
第二洗浄ブラシ部3bは、図7に示すブラシ成形体32を備える。ブラシ成形体32は、ゴム等の弾性体素材、望ましくは、硬度の低いシリコンゴムによりスター状に形成し、中央に乳頭Mmの先端部Msにおける先端面に当接する先端面洗浄ブラシ3bcと、この先端面洗浄ブラシ3bcを中心にして120〔゜〕間隔で放射方向三方向に延出し、乳頭Mmの先端部Msにおける先端面から周面に至る境曲面に当接する境曲面洗浄ブラシ3bx,3by,3bzを有する。この場合、先端面洗浄ブラシ3bcは、図8に示すように、多数の円柱突起部33…を有する。円柱突起部33…は、上端にエッジ部33e…が形成されるため、乳頭Mm上の汚れを掻き取ることができ、特に、乳頭Mmの先端部Msにおける凹部を含む様々な形状に対する洗浄を行うことができる。また、各境曲面洗浄ブラシ3bx…は、図8における(a)及び(b)に示すように、並んだ二枚のシート片部34s,34sに多数の切込部34c…を形成して構成する。(a)は、シート片部34s,34sの下部の突出長が中間部の突出長と同じに選定したタイプを示すとともに、(b)は、一つのシート片部34sの下部の突出長が中間部の突出長よりも長くなるように選定したタイプを示す。したがって、(b)の場合には、特に、乳頭Mmの先端部Msにおける境曲面をよりムラ無く洗浄できる利点がある。なお、各境曲面洗浄ブラシ3bx…と先端面洗浄ブラシ3bc間の境界部3bs…は、図8に示すように薄肉形成する。さらに、第二洗浄ブラシ部3bは、図7に示すベース部35を備え、このベース部35にブラシ成形体32を固定する。これにより、各境曲面洗浄ブラシ3bx…は先端面洗浄ブラシ3bcに対して境界部3bs…から直角に起立する。例示のブラシ成形体32は、別体に形成した境曲面洗浄ブラシ3bx…を組付けた場合を示したが、全体を一体成形してもよい。
【0027】
また、ブラシ機構部3は、図6に示すように、第一洗浄ブラシ部3a及び第二洗浄ブラシ部3bを支持するカップ状をなすブラシホルダ37を備え、このブラシホルダ37の底面部下面は、回転駆動部4におけるロータシャフト27sに結合する。第一洗浄ブラシ部3aは、ブラシホルダ37に対して上から装着する。この場合、ブラシホルダ37には、上端から切込状のスリット部37s…を形成し、このスリット部37s…に第一洗浄ブラシ部3aにおける各洗浄ブラシ3ax…を嵌合させる。これにより、各洗浄ブラシ3ax…は、ブラシホルダ37の周面に固定される。第二洗浄ブラシ部3bは、ブラシホルダ37の内部に収容する。そして、ブラシ付勢手段12を構成する三つのスプリング38…により第二洗浄ブラシ部3bを上方に付勢するとともに、ブラシホルダ37に形成したガイドスリット37g…にベース部35に形成した凸部39…を係合させる。これにより、ブラシホルダ37により第二洗浄ブラシ部3bが昇降自在に支持されるブラシ支持手段11が構成される。このようなブラシ機構部3の構成により、各洗浄ブラシ3ax…と各境曲面洗浄ブラシ3bx…は、図4に示すように、周方向に沿って60〔゜〕間隔で交互に配される。
【0028】
このように、ブラシ機構部3を、乳頭Mmの周面部Mfを洗浄可能な第一洗浄ブラシ部3aと先端部Msを洗浄可能な第二洗浄ブラシ部3bにより構成するとともに、第二洗浄ブラシ部3bを昇降自在に支持するブラシ支持手段11と、第二洗浄ブラシ部3bを上方へ付勢するブラシ付勢手段12を設けて構成すれば、異なる長さの乳頭Mmに対応して先端部Msの洗浄を常にムラ無く良好に行うことができる利点がある。
【0029】
さらに、ブラシホルダ37の上端に位置する連結リング31の上面には、洗浄部材8を取付ける。洗浄部材8は、図6及び図7に示すように、円盤状に形成し、中央に乳頭Mmが挿通する挿通孔8iを有する。この際、挿通孔8iは、乳頭Mmを挿入した際に、乳頭Mm間に無用な隙間が生じないようにその内径を選定する。また、洗浄部材8の上面には、洗浄部8w、具体的には、上面から上方に突出する複数のフィン状部8wf…を有する洗浄部8wを設ける。この場合、各フィン状部8wf…は放射方向に形成するとともに、周方向に沿って一定間隔おきに配する。洗浄部材8は、ゴム等の弾性体素材、望ましくはシリコンゴムにより一体成形する。使用するシリコンゴムの硬度は、前述したブラシ成形体32に用いたシリコンゴムの硬度より高いものを用いることができる。これにより、洗浄部材8は、ハウジング部2の挿入口2iに配され、ブラシ機構部3と一体に回転することにより乳頭Mmにおける根元部位Mmbを洗浄する専用の洗浄部材となる。このように、洗浄部材8をシリコンゴム等の弾性体素材により一体成形すれば、単一部品により容易かつ低コストに実施できるとともに、乳頭Mmに対する保護を図りつつ根元部位Mmbに対する十分な洗浄を行うことができる。その他、洗浄ユニットU1には、ハウジング部2を手で持った状態で操作できる運転スイッチ25(図3参照)が付設されている。なお、図6〜図8において、n…は、固定用のネジ又はピンを示している。
【0030】
他方、本体ユニットU2は、図2に示すように、底面に足部41f…を設けたケーシング41を備え、このケーシング41の内部には、図3に示す洗浄液タンク42,洗浄液ポンプ43,制御部44及び洗浄液回収タンク45を内蔵する。図2中、46はケーシング41の上面に設けたグリップであり、このグリップ46を手で持って携帯することができる。また、42cは洗浄液タンク42の給液口42oに着脱するキャップを示すとともに、45gは、洗浄液回収タンク45に付設したグリップを示し、このグリップ45gを利用して本体ユニットU2から洗浄液回収タンク45を着脱できる。47は洗浄液回収タンク45に付設した吸引ファンを示す。
【0031】
図3に、本体ユニットU2の構成をブロック系統図により示す。洗浄ユニットU1と本体ユニットU2は、接続部Ucを介して接続され、この接続部Ucには、二本の給液チューブ51u,51d、排液チューブ52及び給電線53を含む。本体ユニットU2において、洗浄液ポンプ43の吸入口は洗浄液タンク42に接続する。また、洗浄液ポンプ43の吐出口は、上噴射部バルブ54uと一方の給液チューブ51uを介して上噴射部5uの接続口部24uに接続するとともに、下噴射部バルブ54dと他方の給液チューブ51dを介して下噴射部5dの接続口部24dに接続する。これにより、洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6が構成される。吸引ファン47は、洗浄液回収タンク45に付設するとともに、この洗浄液回収タンク45は、排液チューブ52を介して排液口部28に接続する。これにより、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを回収して本体ユニットU2に貯留する洗浄液回収手段13が構成される。制御部44は、各種制御を実行するマイクロコンピュータを利用したコントローラ44cを備える。コントローラ44cはメモリ44mを備え、このメモリ44mは、少なくとも、各種データを登録するデータ登録機能及びシーケンス制御を行うための制御プログラムを格納するプログラム格納機能を備えている。さらに、コントローラ44cには、配線57を介して洗浄ユニットU1に備える運転スイッチ25を接続するとともに、電源スイッチ55及びバッテリ56を接続する。また、コントローラ44cの出力部は給電線53を介してブラシモータ27に接続する。これにより、洗浄ユニットU1に対して電力を供給する電力供給手段7が構成される。
【0032】
次に、本実施形態に係る洗浄装置1の使用方法及び動作について、図1〜図8を参照しつつ図9〜図11に基づいて説明する。
【0033】
洗浄装置1を使用する際は、洗浄液タンク42に所定の洗浄液Lを収容するとともに、洗浄液回収タンク45を空にする。また、充電の終了したバッテリ56を搭載する。そして、洗浄装置1は、牛舎内における任意の洗浄場所まで持って行く。なお、第二洗浄ブラシ部3bはスプリング38…により上方に付勢されるため、未装着の洗浄ユニットU1における第二洗浄ブラシ部3bは、図1に示す最上昇位置にある。一方、洗浄は、予備洗浄と主洗浄からなる。図9に、予備洗浄及び主洗浄を行う際に利用するシーケンス制御パターンのタイミングチャートを示す。
【0034】
最初に予備洗浄を行う。予備洗浄は、主洗浄を行う前に各乳頭Mm…を洗浄液Lで濡らすことにより主洗浄において汚れをより落とし易くする目的で行う。まず、洗浄ユニットU1を任意の乳頭Mmに装着、即ち、挿入口2iにおける洗浄部材8の挿通孔8iを通して乳頭Mmをハウジング部2の内部へ挿入する。そして、運転スイッチ25を押してONにする。この場合、運転スイッチ25を押している間だけONになり、この運転スイッチ25のONに対応して、洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u,下噴射部バルブ54d,ブラシモータ27及び吸引ファン47がそれぞれONになる。
【0035】
洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u及び下噴射部バルブ54dのONにより、洗浄液タンク42内の洗浄液Lは、開放された給液チューブ51u及び51dを介して上噴射部5u及び下噴射部5dに供給される。そして、図10に示すように、洗浄液Lは、上噴射孔23u…から洗浄部材8の上方に噴射されるとともに、下噴射孔23d…から洗浄部材8の下方に噴射される。また、バッテリ56,コントローラ44c及び給電線53を介してブラシモータ27に給電が行われ、ブラシモータ27は、正転と逆転を交互に繰り返す(図10中、矢印Fpn方向)。図9中、Tsが正転(又は逆転)時間、Tiが正転と逆転間におけるブラシモータ27の僅かな停止時間をそれぞれ示す。なお、正転/逆転の各時間は、0.4〜0.8〔秒〕程度に設定できる。ブラシモータ27の回転により、第一洗浄ブラシ部3a,第二洗浄ブラシ部3b及び洗浄部材8が一体に回転し、乳頭Mmに対する予備洗浄が行われる。さらに、吸引ファン47のONにより、排液チューブ52内が吸引されるため、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lは、排液チューブ52を介して本体ユニットU2における洗浄液回収タンク45に回収(貯留)される。
【0036】
一方、作業者は、適当な時間を見計らって、運転スイッチ25を押すのを解除(OFF)する。図9中、Taが運転スイッチ25のON時間を示している。予備洗浄は、乳頭Mmを洗浄液Lで濡らすことを目的とするため、時間Taとしては、数〔秒〕程度の僅かな時間で足りる。なお、時間Taについては、最大時間Tamが設定されており、この最大時間Tamを越えた場合には、後述する主洗浄における制御パターンとなる。運転スイッチ25がOFFになることにより、洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u,下噴射部バルブ54d及びブラシモータ27もそれぞれOFFになる。しかし、運転スイッチ25がOFFになっても、吸引ファン47は時間Tb、例えば、数〔秒〕程度経過してOFFになる。以上により、一つの乳頭Mmの予備洗浄が終了する。同様の予備洗浄を他の三つの乳頭Mm…に対しても順次行う。
【0037】
予備洗浄が終了したなら、次いで、主洗浄を行う。主洗浄でも基本的な操作は予備洗浄と同じであるが、作業者は、乳頭Mmの汚れ度合等を考慮して、運転スイッチ25を押す時間(ON時間)を任意に変えることができる。まず、洗浄ユニットU1を任意の乳頭Mmに装着、即ち、挿入口2iにおける洗浄部材8の挿通孔8iを通して乳頭Mmをハウジング部2の内部へ挿入する(図10参照)。そして、運転スイッチ25を押してONにする。図9中、Tdが運転スイッチ25のON時間を示している。
【0038】
この運転スイッチ25のONにより、洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u,下噴射部バルブ54d,ブラシモータ27及び吸引ファン47がそれぞれONになる。したがって、予備洗浄の場合と同様に、洗浄液タンク42内の洗浄液Lは、開放された給液チューブ51u及び51dを介して上噴射部5u及び下噴射部5dに供給される。そして、図10に示すように、洗浄液Lは、上噴射孔23u…から洗浄部材8の上方に噴射されるとともに、下噴射孔23d…から洗浄部材8の下方に噴射される。また、ブラシモータ27は、正転と逆転を交互に繰り返す(図10中、矢印Fpn方向)。ブラシモータ27の回転により、第一洗浄ブラシ部3a,第二洗浄ブラシ部3b及び洗浄部材8が一体に回転し、乳頭Mmに対する主洗浄が行われる。
【0039】
この場合、第一洗浄ブラシ部3aは、刷毛状の洗浄ブラシ3ax…により乳頭Mmの周面部Mfに対する洗浄を行う。また、第二洗浄ブラシ部3bは、シート片部34s…を用いた境曲面洗浄ブラシ3bx…により乳頭Mmの先端部Msにおける境曲面部位の洗浄を行うとともに、円柱突起部33…を用いた先端面洗浄ブラシ3bcにより乳頭Mmの先端部Msにおける先端面部位の洗浄を行う。この際、境曲面洗浄ブラシ3bx…は、シート片部34s…を用いるため、ゴミが付着しにくい利点があるとともに、先端面洗浄ブラシ3bcは、円柱突起部33…を用いるため、上端のエッジ部33e…により乳頭Mm上の汚れを掻き取ることができ、特に、乳頭Mmの先端部Msにおける凹部を含む様々な形状に対する洗浄を行うことができる利点がある。さらに、洗浄部材8の回転により、洗浄部8w(フィン状部8wf…)による乳頭Mmにおける根元部位Mmbの洗浄が行われ、この洗浄には洗浄部材8の上方に配した上噴射部5uから噴射される洗浄液Lが用いられる。この際、円盤状の洗浄部材8を用いるため、ゴミはブラシ機構部3のブラシで掻き取られる前に、その一部又は全部が洗浄部材8により除去されるとともに、洗浄液Lにより速やかに流される。即ち、根元部位Mmbの洗浄に使用された洗浄液Lは、洗浄水圧及び吸引圧により洗浄部材8の挿通孔8iと乳頭Mm間の隙間から内部に入り、乳頭Mmの周面部Mfを伝わり先端部Ms側に流される。
【0040】
このように、本実施形態に係る洗浄装置1では、乳頭Mmにおける根元部位Mmbに対する有効かつ十分な洗浄を行うことができる。したがって、搾乳時のティートカップライナに対する汚れの付着が回避され、牛乳の衛生的生産の確保及び乳質低下防止や乳房炎等の防止に貢献できるとともに、汚れの残存を解消できるため、洗浄後の確認作業や手作業による追加洗浄などが不要或いは軽減され、作業性の向上及び作業能率の向上を図ることができる。また、乳頭Mmにゴミ(稲藁,おがこ,籾殻,糞等)が付着している場合であっても、ゴミはブラシ機構部3のブラシで掻き取られる前に、洗浄部材8により除去されるとともに、洗浄液Lにより速やかに流されるため、ブラシ機構部3におけるブラシへのゴミの付着を回避できる。これにより、洗浄能力の低下やブラシに付着したゴミの頻繁な除去作業を排除し又は軽減できるとともに、より少ない量の洗浄液Lにより効率良く清拭できる。さらに、上面に洗浄部8wを有する洗浄部材8が回転して被洗浄物Mにおける根元部位Mmbの洗浄を行うため、根元部位Mmbに対して洗浄ユニットU1を必要以上の力で押付ける必要が無く、根元部位Mmb側に対して不必要な負担をかけてしまう弊害を回避できるとともに、洗浄時間も不必要に長くなる弊害を回避できる。しかも、洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5を備えるため、少ない洗浄液Lにより乳頭Mmにおける先端部Msから根元部位Mmbまで効率良く洗浄することができる。
【0041】
一方、吸引ファン47により、排液チューブ52内が吸引されるため、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lは、排液チューブ52を介して本体ユニットU2における洗浄液回収タンク45に回収(貯留)される。よって、使用後の汚れた洗浄液Lが外部に無用に排出される不具合を回避することができる。
【0042】
そして、作業者は、適当な時間を見計らって、運転スイッチ25を押すのを解除(OFF)する。図9中、Tdが運転スイッチ25のON時間を示している。主洗浄は正規の洗浄を行うため、時間Tdは、予備洗浄時の時間Taよりも長くする。例示の場合、時間Tdは時間Taの2倍程度である。なお、時間Tdは最大時間Tamを越えるため、最大時間Tamが経過した時点では、上噴射部バルブ54uが自動でOFFになり、上噴射部5uからの洗浄液Lの噴射が停止する。したがって、最大時間Tamが経過した以降は、乳頭Mmの根元部位Mmbに対する実質的な洗浄が終了し、洗浄部材8は回転するフィン状部8wf…により液切り及び乾燥を開始する。
【0043】
運転スイッチ25がOFFになることにより、ブラシモータ47の回転は、図9に示すように、正転方向にのみ回転する(図11中、矢印Fp方向)。また、洗浄液ポンプ43,下噴射部バルブ54dはそのままONを継続し、予め設定したTe時間(例えば、数〔秒〕程度)経過後に、洗浄液ポンプ43,下噴射部バルブ54d及びブラシモータ47がOFFになる。したがって、運転スイッチ25をOFFにした後、このTe時間内に、洗浄ユニットU1を乳頭Mmから離脱する。この場合、Te時間内では、回転するフィン状部8wf…により洗浄部材8は送風ファンとして機能するため、Te時間内に、洗浄ユニットU1を乳頭Mmから離脱することにより、乳頭Mmに対して迅速な液切り及び乾燥を行うことができる。特に、このようなファン機能に加え、離脱中に下噴射部5dから洗浄液Lの噴射を継続した場合であっても、乳頭Mmの周面部Mfの径が洗浄部材8の挿通孔8iより大きい部位は、挿通孔8iにより液切りが行われるとともに、乳頭Mmの周面部Mfの径が洗浄部材8の挿通孔8iより小さい部位は、挿通孔8iと周面部Mf間における隙間から空気の高速進入及びブラシ機構部3の正転方向のみの回転により迅速な液切り及び乾燥を行うことができる。図11が離脱時の状態を示している。そして、Te時間経過後、さらに、Tf時間(例えば、数〔秒〕程度)が経過すれば、吸引ファン47が自動でOFFになる。以上により、一つの乳頭Mmの主洗浄が終了する。同様の主洗浄を他の三つの乳頭Mm…に対しても順次行う。
【0044】
以上、各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、洗浄部8wは、洗浄部材8の上面から上方に突出するフィン状部8wf…により構成した場合を示したが、刷毛状に構成した洗浄部8wを排除するものではない。また、ブラシ機構部3は、被洗浄物Mの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと当該被洗浄物Mの先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bにより構成した場合を示したが、第一洗浄ブラシ部3aと第二洗浄ブラシ部3bは一体に構成してもよい。さらに、洗浄ユニットU1と本体ユニットU2を接続部Ucにより接続する場合を示したが、洗浄ユニットU1と本体ユニットU2を一体、即ち、本体ユニットU2に洗浄ユニットU1を組込む構成を排除するものではない。
【0045】
なお、洗浄装置1は、乳牛の乳頭Mmを洗浄する際に用いて好適であるが、突起状の被洗浄物Mであれば、その他、手の指等の突起状となる各種被洗浄物を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る洗浄装置における洗浄ユニットの内部構造を示す断面側面図、
【図2】同洗浄装置の外観側面図、
【図3】同洗浄装置のブロック系統図、
【図4】同洗浄装置における洗浄ユニットの平面図、
【図5】同洗浄装置における洗浄ユニットの外観斜視図、
【図6】同洗浄装置における洗浄ユニットの分解斜視図、
【図7】同洗浄装置におけるブラシ機構部の分解斜視図、
【図8】同洗浄装置における境曲面洗浄ブラシの抽出図及び第二洗浄ブラシ部の一部を示す断面側面図、
【図9】同洗浄装置を動作させる際に用いるシーケンス制御パターンのタイミングチャート、
【図10】同洗浄装置の動作を説明するための洗浄時における洗浄ユニットの模式的側面構成図、
【図11】同洗浄装置の動作を説明するための離脱時における洗浄ユニットの模式的側面構成図、
【符号の説明】
【0047】
1:洗浄装置,2:ハウジング部,2i:ハウジング部の挿入口,3:ブラシ機構部,3a:第一洗浄ブラシ部,3b:第二洗浄ブラシ部,4:回転駆動部,5:噴射部,5u:上噴射部,5d:下噴射部,6:洗浄液供給手段,7:電力供給手段,8:洗浄部材,8i:挿通孔,8w:洗浄部,8wf…:フィン状部,11:ブラシ支持手段,12:ブラシ付勢手段,13:洗浄液回収手段,M:突起状の被洗浄物,Mf:被洗浄物の周面部,Ms:被洗浄物の先端部,L:洗浄液,U1:洗浄ユニット,U2:本体ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳牛の乳頭などの突起状の被洗浄物を洗浄する際に用いて好適な洗浄ユニット及び本体ユニットを備える洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、搾乳を行う乳牛の乳頭には、汚れや雑菌が付着しているため、牛乳の衛生的生産や乳質低下防止の観点或いは牛体の乳房炎等を防止する観点から、搾乳前に、乳頭に対する所定の清拭作業(洗浄作業)を行っている。しかし、このような清拭作業は、通常、大掛かりな洗浄装置を必要とするため、従来、携帯式に構成することにより小型コンパクト化及び使い勝手を高めた洗浄装置も特許文献1で知られている。
【0003】
同文献1で開示される突起状物の洗浄装置は、突起状物を内部に収納して、該突起状物の外周部を洗浄する洗浄装置であって、円筒状の外カバーと、突起状物洗浄用のブラシ及び長手方向に延びる溝部を壁部に備え、外カバー内に回動自在に収納される第1洗浄部材と、この第1洗浄部材を両方向へ回転する回動手段と、溝部に係合して長手方向へ移動自在であり、壁部にブラシを備えて突起状物の先端側の洗浄を行う第2洗浄部材とを備え、突起状物の先端部が当接する第2洗浄部材の上面に、先端部の形状に対応して変化し、当該先端部に摺接しながら洗浄を行う弾性を備えた先端部洗浄材を配置したものである。
【特許文献1】特開2005−192404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1で開示される従来の洗浄装置(突起状物の洗浄装置)は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0005】
第一に、乳頭の根元部位の洗浄が不十分になりやすい。このため、搾乳時にティートカップライナに汚れが付着し、牛乳の衛生的生産や乳質低下防止、更には乳房炎等の防止を十分に図れないとともに、汚れが残存しやすいことから洗浄後の確認作業や手作業による追加洗浄などが必要になり、作業性の低下や作業能率の低下を招く。
【0006】
第二に、乳頭にゴミ(稲藁,おがこ,籾殻,糞等)が付着していた場合、洗浄ブラシにそのゴミが付着しやすい。このため、洗浄能力の低下を来しやすいとともに、洗浄ブラシに付着したゴミの頻繁な除去作業を強いられる。
【0007】
第三に、乳頭の根元部位が汚れていた場合、洗浄は手作業に頼らざるを得ないため、牛体に不必要な負担をかけたり、或いは洗浄時間が必要以上に長くなってしまうなどの弊害を招きやすい。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した洗浄装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、突起状の被洗浄物Mを挿入口2iから内部に挿入可能なハウジング部2,このハウジング部2に挿入した被洗浄物Mを洗浄するブラシ機構部3,このブラシ機構部3を回転させる回転駆動部4及びハウジング部2の内部に洗浄液Lを噴射する噴射部5を備える洗浄ユニットU1と、少なくとも、洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6及び電力を供給する電力供給手段7を備える本体ユニットU2からなる洗浄装置1を構成するに際して、挿入口2iに配してブラシ機構部3と一体に回転するとともに、上面に洗浄部8wを有し、かつ中央に被洗浄物Mが挿通する挿通孔8iを有する円盤状の洗浄部材8と、この洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5と、上噴射部5u及び/又は下噴射部5dに洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6とを具備してなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、洗浄部材8は、上面から上方に突出する一又は二以上のフィン状部8wf…を有する洗浄部8wを備えて構成できるとともに、洗浄部材8は、弾性体素材により一体成形することができる。一方、ブラシ機構部3は、被洗浄物Mの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと当該被洗浄物Mの先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bを備えて構成できる。この際、第二洗浄ブラシ部3bを昇降自在に支持するブラシ支持手段11と、第二洗浄ブラシ部3bを上方へ付勢するブラシ付勢手段12を設けることができる。他方、洗浄装置1には、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを回収して本体ユニットU2に貯留する洗浄液回収手段13を設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る洗浄装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 上面に洗浄部8wを有する洗浄部材8が回転し、かつ洗浄部材8の上方に配した上噴射部5uから洗浄液Lを噴射するため、突起状の被洗浄物Mにおける根元部位Mmbに対する有効かつ十分な洗浄を行うことができる。したがって、被洗浄物Mとして乳頭Mmを適用した場合には、ティートカップライナに対する汚れの付着が回避され、牛乳の衛生的生産の確保及び乳質低下防止や乳房炎等の防止に貢献できるとともに、汚れの残存を解消できるため、洗浄後の確認作業や手作業による追加洗浄などが不要或いは軽減され、作業性の向上及び作業能率の向上を図ることができる。
【0013】
(2) 被洗浄物Mにゴミ(稲藁,おがこ,籾殻,糞等)が付着している場合であっても、ゴミはブラシ機構部3のブラシで掻き取られる前に、洗浄部材8により除去されるとともに、洗浄液Lにより速やかに流されるため、ブラシ機構部3におけるブラシへのゴミの付着を回避できる。これにより、洗浄能力の低下やブラシに付着したゴミの頻繁な除去作業を排除し又は軽減することができるとともに、より少ない量の洗浄液Lにより効率良く清拭できる。
【0014】
(3) 上面に洗浄部8wを有する専用の洗浄部材8により被洗浄物Mにおける根元部位Mmbの洗浄を行うため、根元部位Mmbに対して洗浄ユニットU1を必要以上の力で押付ける必要が無く、根元部位Mmb側に対して不必要な負担をかけてしまう弊害を回避できるとともに、洗浄時間も不必要に長くなる弊害を回避できる。
【0015】
(4) 洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5を備えるため、少ない洗浄液Lにより被洗浄物Mにおける先端部Msから根元部位Mmbまで効率良く洗浄することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、洗浄部材8に、上面から上方に突出する一又は二以上のフィン状部8wf…を有する洗浄部8wを設ければ、洗浄後、上噴射部5uからの洗浄液Lの噴射を停止し、かつ洗浄部材8を回転させることにより、洗浄部材8を送風ファンとして機能させることができるため、被洗浄物Mに対する迅速な液切り及び乾燥を行うことができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、洗浄部材8を弾性体素材により一体成形すれば、単一部品により容易かつ低コストに実施できるとともに、被洗浄物Mに対する保護を図りつつ根元部位Mmbに対する十分な洗浄を行うことができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、ブラシ機構部3を、被洗浄物Mの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bにより構成するとともに、第二洗浄ブラシ部3bを昇降自在に支持するブラシ支持手段11と、第二洗浄ブラシ部3bを上方へ付勢するブラシ付勢手段12を設けて構成すれば、異なる長さの被洗浄物Mに対応して先端部Msの洗浄を常にムラ無く良好に行うことができる。
【0019】
(8) 好適な態様により、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを回収して本体ユニットU2に貯留する洗浄液回収手段13を設ければ、使用後の汚れた洗浄液Lが外部に無用に排出される不具合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る洗浄装置1の構成について、図1〜図8を参照して具体的に説明する。
【0022】
洗浄装置1は、図2に示す洗浄ユニットU1と本体ユニットU2を備える。洗浄ユニットU1には所定長さの接続部Ucが付属し、この接続部Ucを介して本体ユニットU2に接続することができる。この洗浄装置1は手で持って牛舎内の任意の場所まで携帯することができる。
【0023】
洗浄ユニットU1は、図1に示すように、基本的形態として、ハウジング部2,ブラシ機構部3,回転駆動部4及び噴射部5を備える。ハウジング部2は、全体を円筒形に形成し、上端開口が挿入口2iとなる。したがって、この挿入口2iを通して乳頭Mm(突起状の被洗浄物M)をハウジング部2の内部に挿入できる。また、ハウジング部2における外周面2fの上部には、リング形の噴射部形成部材21を取付ける。この場合、噴射部形成部材21の内周面には、周方向に沿ったリング状の凹溝による上下一対の液通路22u,22dを形成するとともに、各液通路22u,22dに臨むハウジング部2の外周面2fには、周方向に沿って複数の上噴射孔23u…及び複数の下噴射孔23d…を、それぞれ一定間隔おきに形成する。これにより、ハウジング部2の上部に、上噴射部5uと下噴射部5dがそれぞれ上下に離間して設けられ、上噴射部5u(上噴射孔23u…)は、後述する洗浄部材8に対してその上方に配されるとともに、下噴射部5d(下噴射孔23d…)は、洗浄部材8に対してその下方に配される。上噴射部5uと下噴射部5dは噴射部5を構成する。さらに、噴射部形成部材21には、各液通路22u,22dに洗浄液Lを供給する接続口部24u,24dを有する。
【0024】
回転駆動部4は、ケーシング26にブラシモータ(直流モータ)27を内蔵して構成し、ケーシング26の上端面からブラシモータ27のロータシャフト27sが上方に突出する。そして、ケーシング26の上端はハウジング部2の下端開口に取付ける。また、ケーシング26には排液口部28を一体形成する。この排液口部28を通してハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを外部に排出できる。
【0025】
ブラシ機構部3は、ハウジング部2に挿入した乳頭Mmの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと乳頭Mmの先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bを備える。第一洗浄ブラシ部3aは、図6及び図7に示す刷毛状をなす三つの洗浄ブラシ3ax,3ay,3azを備え、各洗浄ブラシ3ax…は一端(上端)を連結リング31の下面に固定して構成する。これにより、各洗浄ブラシ3ax…は、連結リング31に沿って120〔゜〕間隔で配され、連結リング31から吊下げられるとともに、各洗浄ブラシ3ax…におけるブラシ先端は、連結リング31の中心軸に向けて配される。各洗浄ブラシ3ax…におけるブラシ材質は、乳頭Mmを傷付けることのない軟質の合成樹脂素材を利用できるとともに、各洗浄ブラシ3ax…の上下方向の寸法及びブラシ長などは、乳頭Mmの長さ(大きさ)を考慮して選定し、特に、ブラシ密度は、ゴミが付着(残存)しにくい密度を選定する。
【0026】
第二洗浄ブラシ部3bは、図7に示すブラシ成形体32を備える。ブラシ成形体32は、ゴム等の弾性体素材、望ましくは、硬度の低いシリコンゴムによりスター状に形成し、中央に乳頭Mmの先端部Msにおける先端面に当接する先端面洗浄ブラシ3bcと、この先端面洗浄ブラシ3bcを中心にして120〔゜〕間隔で放射方向三方向に延出し、乳頭Mmの先端部Msにおける先端面から周面に至る境曲面に当接する境曲面洗浄ブラシ3bx,3by,3bzを有する。この場合、先端面洗浄ブラシ3bcは、図8に示すように、多数の円柱突起部33…を有する。円柱突起部33…は、上端にエッジ部33e…が形成されるため、乳頭Mm上の汚れを掻き取ることができ、特に、乳頭Mmの先端部Msにおける凹部を含む様々な形状に対する洗浄を行うことができる。また、各境曲面洗浄ブラシ3bx…は、図8における(a)及び(b)に示すように、並んだ二枚のシート片部34s,34sに多数の切込部34c…を形成して構成する。(a)は、シート片部34s,34sの下部の突出長が中間部の突出長と同じに選定したタイプを示すとともに、(b)は、一つのシート片部34sの下部の突出長が中間部の突出長よりも長くなるように選定したタイプを示す。したがって、(b)の場合には、特に、乳頭Mmの先端部Msにおける境曲面をよりムラ無く洗浄できる利点がある。なお、各境曲面洗浄ブラシ3bx…と先端面洗浄ブラシ3bc間の境界部3bs…は、図8に示すように薄肉形成する。さらに、第二洗浄ブラシ部3bは、図7に示すベース部35を備え、このベース部35にブラシ成形体32を固定する。これにより、各境曲面洗浄ブラシ3bx…は先端面洗浄ブラシ3bcに対して境界部3bs…から直角に起立する。例示のブラシ成形体32は、別体に形成した境曲面洗浄ブラシ3bx…を組付けた場合を示したが、全体を一体成形してもよい。
【0027】
また、ブラシ機構部3は、図6に示すように、第一洗浄ブラシ部3a及び第二洗浄ブラシ部3bを支持するカップ状をなすブラシホルダ37を備え、このブラシホルダ37の底面部下面は、回転駆動部4におけるロータシャフト27sに結合する。第一洗浄ブラシ部3aは、ブラシホルダ37に対して上から装着する。この場合、ブラシホルダ37には、上端から切込状のスリット部37s…を形成し、このスリット部37s…に第一洗浄ブラシ部3aにおける各洗浄ブラシ3ax…を嵌合させる。これにより、各洗浄ブラシ3ax…は、ブラシホルダ37の周面に固定される。第二洗浄ブラシ部3bは、ブラシホルダ37の内部に収容する。そして、ブラシ付勢手段12を構成する三つのスプリング38…により第二洗浄ブラシ部3bを上方に付勢するとともに、ブラシホルダ37に形成したガイドスリット37g…にベース部35に形成した凸部39…を係合させる。これにより、ブラシホルダ37により第二洗浄ブラシ部3bが昇降自在に支持されるブラシ支持手段11が構成される。このようなブラシ機構部3の構成により、各洗浄ブラシ3ax…と各境曲面洗浄ブラシ3bx…は、図4に示すように、周方向に沿って60〔゜〕間隔で交互に配される。
【0028】
このように、ブラシ機構部3を、乳頭Mmの周面部Mfを洗浄可能な第一洗浄ブラシ部3aと先端部Msを洗浄可能な第二洗浄ブラシ部3bにより構成するとともに、第二洗浄ブラシ部3bを昇降自在に支持するブラシ支持手段11と、第二洗浄ブラシ部3bを上方へ付勢するブラシ付勢手段12を設けて構成すれば、異なる長さの乳頭Mmに対応して先端部Msの洗浄を常にムラ無く良好に行うことができる利点がある。
【0029】
さらに、ブラシホルダ37の上端に位置する連結リング31の上面には、洗浄部材8を取付ける。洗浄部材8は、図6及び図7に示すように、円盤状に形成し、中央に乳頭Mmが挿通する挿通孔8iを有する。この際、挿通孔8iは、乳頭Mmを挿入した際に、乳頭Mm間に無用な隙間が生じないようにその内径を選定する。また、洗浄部材8の上面には、洗浄部8w、具体的には、上面から上方に突出する複数のフィン状部8wf…を有する洗浄部8wを設ける。この場合、各フィン状部8wf…は放射方向に形成するとともに、周方向に沿って一定間隔おきに配する。洗浄部材8は、ゴム等の弾性体素材、望ましくはシリコンゴムにより一体成形する。使用するシリコンゴムの硬度は、前述したブラシ成形体32に用いたシリコンゴムの硬度より高いものを用いることができる。これにより、洗浄部材8は、ハウジング部2の挿入口2iに配され、ブラシ機構部3と一体に回転することにより乳頭Mmにおける根元部位Mmbを洗浄する専用の洗浄部材となる。このように、洗浄部材8をシリコンゴム等の弾性体素材により一体成形すれば、単一部品により容易かつ低コストに実施できるとともに、乳頭Mmに対する保護を図りつつ根元部位Mmbに対する十分な洗浄を行うことができる。その他、洗浄ユニットU1には、ハウジング部2を手で持った状態で操作できる運転スイッチ25(図3参照)が付設されている。なお、図6〜図8において、n…は、固定用のネジ又はピンを示している。
【0030】
他方、本体ユニットU2は、図2に示すように、底面に足部41f…を設けたケーシング41を備え、このケーシング41の内部には、図3に示す洗浄液タンク42,洗浄液ポンプ43,制御部44及び洗浄液回収タンク45を内蔵する。図2中、46はケーシング41の上面に設けたグリップであり、このグリップ46を手で持って携帯することができる。また、42cは洗浄液タンク42の給液口42oに着脱するキャップを示すとともに、45gは、洗浄液回収タンク45に付設したグリップを示し、このグリップ45gを利用して本体ユニットU2から洗浄液回収タンク45を着脱できる。47は洗浄液回収タンク45に付設した吸引ファンを示す。
【0031】
図3に、本体ユニットU2の構成をブロック系統図により示す。洗浄ユニットU1と本体ユニットU2は、接続部Ucを介して接続され、この接続部Ucには、二本の給液チューブ51u,51d、排液チューブ52及び給電線53を含む。本体ユニットU2において、洗浄液ポンプ43の吸入口は洗浄液タンク42に接続する。また、洗浄液ポンプ43の吐出口は、上噴射部バルブ54uと一方の給液チューブ51uを介して上噴射部5uの接続口部24uに接続するとともに、下噴射部バルブ54dと他方の給液チューブ51dを介して下噴射部5dの接続口部24dに接続する。これにより、洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段6が構成される。吸引ファン47は、洗浄液回収タンク45に付設するとともに、この洗浄液回収タンク45は、排液チューブ52を介して排液口部28に接続する。これにより、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lを回収して本体ユニットU2に貯留する洗浄液回収手段13が構成される。制御部44は、各種制御を実行するマイクロコンピュータを利用したコントローラ44cを備える。コントローラ44cはメモリ44mを備え、このメモリ44mは、少なくとも、各種データを登録するデータ登録機能及びシーケンス制御を行うための制御プログラムを格納するプログラム格納機能を備えている。さらに、コントローラ44cには、配線57を介して洗浄ユニットU1に備える運転スイッチ25を接続するとともに、電源スイッチ55及びバッテリ56を接続する。また、コントローラ44cの出力部は給電線53を介してブラシモータ27に接続する。これにより、洗浄ユニットU1に対して電力を供給する電力供給手段7が構成される。
【0032】
次に、本実施形態に係る洗浄装置1の使用方法及び動作について、図1〜図8を参照しつつ図9〜図11に基づいて説明する。
【0033】
洗浄装置1を使用する際は、洗浄液タンク42に所定の洗浄液Lを収容するとともに、洗浄液回収タンク45を空にする。また、充電の終了したバッテリ56を搭載する。そして、洗浄装置1は、牛舎内における任意の洗浄場所まで持って行く。なお、第二洗浄ブラシ部3bはスプリング38…により上方に付勢されるため、未装着の洗浄ユニットU1における第二洗浄ブラシ部3bは、図1に示す最上昇位置にある。一方、洗浄は、予備洗浄と主洗浄からなる。図9に、予備洗浄及び主洗浄を行う際に利用するシーケンス制御パターンのタイミングチャートを示す。
【0034】
最初に予備洗浄を行う。予備洗浄は、主洗浄を行う前に各乳頭Mm…を洗浄液Lで濡らすことにより主洗浄において汚れをより落とし易くする目的で行う。まず、洗浄ユニットU1を任意の乳頭Mmに装着、即ち、挿入口2iにおける洗浄部材8の挿通孔8iを通して乳頭Mmをハウジング部2の内部へ挿入する。そして、運転スイッチ25を押してONにする。この場合、運転スイッチ25を押している間だけONになり、この運転スイッチ25のONに対応して、洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u,下噴射部バルブ54d,ブラシモータ27及び吸引ファン47がそれぞれONになる。
【0035】
洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u及び下噴射部バルブ54dのONにより、洗浄液タンク42内の洗浄液Lは、開放された給液チューブ51u及び51dを介して上噴射部5u及び下噴射部5dに供給される。そして、図10に示すように、洗浄液Lは、上噴射孔23u…から洗浄部材8の上方に噴射されるとともに、下噴射孔23d…から洗浄部材8の下方に噴射される。また、バッテリ56,コントローラ44c及び給電線53を介してブラシモータ27に給電が行われ、ブラシモータ27は、正転と逆転を交互に繰り返す(図10中、矢印Fpn方向)。図9中、Tsが正転(又は逆転)時間、Tiが正転と逆転間におけるブラシモータ27の僅かな停止時間をそれぞれ示す。なお、正転/逆転の各時間は、0.4〜0.8〔秒〕程度に設定できる。ブラシモータ27の回転により、第一洗浄ブラシ部3a,第二洗浄ブラシ部3b及び洗浄部材8が一体に回転し、乳頭Mmに対する予備洗浄が行われる。さらに、吸引ファン47のONにより、排液チューブ52内が吸引されるため、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lは、排液チューブ52を介して本体ユニットU2における洗浄液回収タンク45に回収(貯留)される。
【0036】
一方、作業者は、適当な時間を見計らって、運転スイッチ25を押すのを解除(OFF)する。図9中、Taが運転スイッチ25のON時間を示している。予備洗浄は、乳頭Mmを洗浄液Lで濡らすことを目的とするため、時間Taとしては、数〔秒〕程度の僅かな時間で足りる。なお、時間Taについては、最大時間Tamが設定されており、この最大時間Tamを越えた場合には、後述する主洗浄における制御パターンとなる。運転スイッチ25がOFFになることにより、洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u,下噴射部バルブ54d及びブラシモータ27もそれぞれOFFになる。しかし、運転スイッチ25がOFFになっても、吸引ファン47は時間Tb、例えば、数〔秒〕程度経過してOFFになる。以上により、一つの乳頭Mmの予備洗浄が終了する。同様の予備洗浄を他の三つの乳頭Mm…に対しても順次行う。
【0037】
予備洗浄が終了したなら、次いで、主洗浄を行う。主洗浄でも基本的な操作は予備洗浄と同じであるが、作業者は、乳頭Mmの汚れ度合等を考慮して、運転スイッチ25を押す時間(ON時間)を任意に変えることができる。まず、洗浄ユニットU1を任意の乳頭Mmに装着、即ち、挿入口2iにおける洗浄部材8の挿通孔8iを通して乳頭Mmをハウジング部2の内部へ挿入する(図10参照)。そして、運転スイッチ25を押してONにする。図9中、Tdが運転スイッチ25のON時間を示している。
【0038】
この運転スイッチ25のONにより、洗浄液ポンプ43,上噴射部バルブ54u,下噴射部バルブ54d,ブラシモータ27及び吸引ファン47がそれぞれONになる。したがって、予備洗浄の場合と同様に、洗浄液タンク42内の洗浄液Lは、開放された給液チューブ51u及び51dを介して上噴射部5u及び下噴射部5dに供給される。そして、図10に示すように、洗浄液Lは、上噴射孔23u…から洗浄部材8の上方に噴射されるとともに、下噴射孔23d…から洗浄部材8の下方に噴射される。また、ブラシモータ27は、正転と逆転を交互に繰り返す(図10中、矢印Fpn方向)。ブラシモータ27の回転により、第一洗浄ブラシ部3a,第二洗浄ブラシ部3b及び洗浄部材8が一体に回転し、乳頭Mmに対する主洗浄が行われる。
【0039】
この場合、第一洗浄ブラシ部3aは、刷毛状の洗浄ブラシ3ax…により乳頭Mmの周面部Mfに対する洗浄を行う。また、第二洗浄ブラシ部3bは、シート片部34s…を用いた境曲面洗浄ブラシ3bx…により乳頭Mmの先端部Msにおける境曲面部位の洗浄を行うとともに、円柱突起部33…を用いた先端面洗浄ブラシ3bcにより乳頭Mmの先端部Msにおける先端面部位の洗浄を行う。この際、境曲面洗浄ブラシ3bx…は、シート片部34s…を用いるため、ゴミが付着しにくい利点があるとともに、先端面洗浄ブラシ3bcは、円柱突起部33…を用いるため、上端のエッジ部33e…により乳頭Mm上の汚れを掻き取ることができ、特に、乳頭Mmの先端部Msにおける凹部を含む様々な形状に対する洗浄を行うことができる利点がある。さらに、洗浄部材8の回転により、洗浄部8w(フィン状部8wf…)による乳頭Mmにおける根元部位Mmbの洗浄が行われ、この洗浄には洗浄部材8の上方に配した上噴射部5uから噴射される洗浄液Lが用いられる。この際、円盤状の洗浄部材8を用いるため、ゴミはブラシ機構部3のブラシで掻き取られる前に、その一部又は全部が洗浄部材8により除去されるとともに、洗浄液Lにより速やかに流される。即ち、根元部位Mmbの洗浄に使用された洗浄液Lは、洗浄水圧及び吸引圧により洗浄部材8の挿通孔8iと乳頭Mm間の隙間から内部に入り、乳頭Mmの周面部Mfを伝わり先端部Ms側に流される。
【0040】
このように、本実施形態に係る洗浄装置1では、乳頭Mmにおける根元部位Mmbに対する有効かつ十分な洗浄を行うことができる。したがって、搾乳時のティートカップライナに対する汚れの付着が回避され、牛乳の衛生的生産の確保及び乳質低下防止や乳房炎等の防止に貢献できるとともに、汚れの残存を解消できるため、洗浄後の確認作業や手作業による追加洗浄などが不要或いは軽減され、作業性の向上及び作業能率の向上を図ることができる。また、乳頭Mmにゴミ(稲藁,おがこ,籾殻,糞等)が付着している場合であっても、ゴミはブラシ機構部3のブラシで掻き取られる前に、洗浄部材8により除去されるとともに、洗浄液Lにより速やかに流されるため、ブラシ機構部3におけるブラシへのゴミの付着を回避できる。これにより、洗浄能力の低下やブラシに付着したゴミの頻繁な除去作業を排除し又は軽減できるとともに、より少ない量の洗浄液Lにより効率良く清拭できる。さらに、上面に洗浄部8wを有する洗浄部材8が回転して被洗浄物Mにおける根元部位Mmbの洗浄を行うため、根元部位Mmbに対して洗浄ユニットU1を必要以上の力で押付ける必要が無く、根元部位Mmb側に対して不必要な負担をかけてしまう弊害を回避できるとともに、洗浄時間も不必要に長くなる弊害を回避できる。しかも、洗浄部材8の上方に配した上噴射部5u及び洗浄部材8の下方に配した下噴射部5dからなる噴射部5を備えるため、少ない洗浄液Lにより乳頭Mmにおける先端部Msから根元部位Mmbまで効率良く洗浄することができる。
【0041】
一方、吸引ファン47により、排液チューブ52内が吸引されるため、ハウジング部2の内部における使用後の洗浄液Lは、排液チューブ52を介して本体ユニットU2における洗浄液回収タンク45に回収(貯留)される。よって、使用後の汚れた洗浄液Lが外部に無用に排出される不具合を回避することができる。
【0042】
そして、作業者は、適当な時間を見計らって、運転スイッチ25を押すのを解除(OFF)する。図9中、Tdが運転スイッチ25のON時間を示している。主洗浄は正規の洗浄を行うため、時間Tdは、予備洗浄時の時間Taよりも長くする。例示の場合、時間Tdは時間Taの2倍程度である。なお、時間Tdは最大時間Tamを越えるため、最大時間Tamが経過した時点では、上噴射部バルブ54uが自動でOFFになり、上噴射部5uからの洗浄液Lの噴射が停止する。したがって、最大時間Tamが経過した以降は、乳頭Mmの根元部位Mmbに対する実質的な洗浄が終了し、洗浄部材8は回転するフィン状部8wf…により液切り及び乾燥を開始する。
【0043】
運転スイッチ25がOFFになることにより、ブラシモータ47の回転は、図9に示すように、正転方向にのみ回転する(図11中、矢印Fp方向)。また、洗浄液ポンプ43,下噴射部バルブ54dはそのままONを継続し、予め設定したTe時間(例えば、数〔秒〕程度)経過後に、洗浄液ポンプ43,下噴射部バルブ54d及びブラシモータ47がOFFになる。したがって、運転スイッチ25をOFFにした後、このTe時間内に、洗浄ユニットU1を乳頭Mmから離脱する。この場合、Te時間内では、回転するフィン状部8wf…により洗浄部材8は送風ファンとして機能するため、Te時間内に、洗浄ユニットU1を乳頭Mmから離脱することにより、乳頭Mmに対して迅速な液切り及び乾燥を行うことができる。特に、このようなファン機能に加え、離脱中に下噴射部5dから洗浄液Lの噴射を継続した場合であっても、乳頭Mmの周面部Mfの径が洗浄部材8の挿通孔8iより大きい部位は、挿通孔8iにより液切りが行われるとともに、乳頭Mmの周面部Mfの径が洗浄部材8の挿通孔8iより小さい部位は、挿通孔8iと周面部Mf間における隙間から空気の高速進入及びブラシ機構部3の正転方向のみの回転により迅速な液切り及び乾燥を行うことができる。図11が離脱時の状態を示している。そして、Te時間経過後、さらに、Tf時間(例えば、数〔秒〕程度)が経過すれば、吸引ファン47が自動でOFFになる。以上により、一つの乳頭Mmの主洗浄が終了する。同様の主洗浄を他の三つの乳頭Mm…に対しても順次行う。
【0044】
以上、各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、洗浄部8wは、洗浄部材8の上面から上方に突出するフィン状部8wf…により構成した場合を示したが、刷毛状に構成した洗浄部8wを排除するものではない。また、ブラシ機構部3は、被洗浄物Mの周面部Mfを洗浄する第一洗浄ブラシ部3aと当該被洗浄物Mの先端部Msを洗浄する第二洗浄ブラシ部3bにより構成した場合を示したが、第一洗浄ブラシ部3aと第二洗浄ブラシ部3bは一体に構成してもよい。さらに、洗浄ユニットU1と本体ユニットU2を接続部Ucにより接続する場合を示したが、洗浄ユニットU1と本体ユニットU2を一体、即ち、本体ユニットU2に洗浄ユニットU1を組込む構成を排除するものではない。
【0045】
なお、洗浄装置1は、乳牛の乳頭Mmを洗浄する際に用いて好適であるが、突起状の被洗浄物Mであれば、その他、手の指等の突起状となる各種被洗浄物を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る洗浄装置における洗浄ユニットの内部構造を示す断面側面図、
【図2】同洗浄装置の外観側面図、
【図3】同洗浄装置のブロック系統図、
【図4】同洗浄装置における洗浄ユニットの平面図、
【図5】同洗浄装置における洗浄ユニットの外観斜視図、
【図6】同洗浄装置における洗浄ユニットの分解斜視図、
【図7】同洗浄装置におけるブラシ機構部の分解斜視図、
【図8】同洗浄装置における境曲面洗浄ブラシの抽出図及び第二洗浄ブラシ部の一部を示す断面側面図、
【図9】同洗浄装置を動作させる際に用いるシーケンス制御パターンのタイミングチャート、
【図10】同洗浄装置の動作を説明するための洗浄時における洗浄ユニットの模式的側面構成図、
【図11】同洗浄装置の動作を説明するための離脱時における洗浄ユニットの模式的側面構成図、
【符号の説明】
【0047】
1:洗浄装置,2:ハウジング部,2i:ハウジング部の挿入口,3:ブラシ機構部,3a:第一洗浄ブラシ部,3b:第二洗浄ブラシ部,4:回転駆動部,5:噴射部,5u:上噴射部,5d:下噴射部,6:洗浄液供給手段,7:電力供給手段,8:洗浄部材,8i:挿通孔,8w:洗浄部,8wf…:フィン状部,11:ブラシ支持手段,12:ブラシ付勢手段,13:洗浄液回収手段,M:突起状の被洗浄物,Mf:被洗浄物の周面部,Ms:被洗浄物の先端部,L:洗浄液,U1:洗浄ユニット,U2:本体ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起状の被洗浄物を挿入口から内部に挿入可能なハウジング部,このハウジング部に挿入した被洗浄物を洗浄するブラシ機構部,このブラシ機構部を回転させる回転駆動部及び前記ハウジング部の内部に洗浄液を噴射する噴射部を備える洗浄ユニットと、少なくとも、前記洗浄ユニットに対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段及び電力を供給する電力供給手段を備える本体ユニットからなる洗浄装置において、前記挿入口に配して前記ブラシ機構部と一体に回転するとともに、上面に洗浄部を有し、かつ中央に前記被洗浄物が挿通する挿通孔を有する円盤状の洗浄部材と、この洗浄部材の上方に配した上噴射部及び前記洗浄部材の下方に配した下噴射部からなる噴射部と、前記上噴射部及び/又は前記下噴射部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを具備してなることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄部材は、上面から上方に突出する一又は二以上のフィン状部を有する洗浄部を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄部材は、弾性体素材により一体成形してなることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記ブラシ機構部は、前記被洗浄物の周面部を洗浄する第一洗浄ブラシ部と当該被洗浄物の先端部を洗浄する第二洗浄ブラシ部を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記第二洗浄ブラシ部を昇降自在に支持するブラシ支持手段と、前記第二洗浄ブラシ部を上方へ付勢するブラシ付勢手段を備えることを特徴とする請求項4記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記ハウジング部の内部における使用後の洗浄液を回収して前記本体ユニットに貯留する洗浄液回収手段を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項1】
突起状の被洗浄物を挿入口から内部に挿入可能なハウジング部,このハウジング部に挿入した被洗浄物を洗浄するブラシ機構部,このブラシ機構部を回転させる回転駆動部及び前記ハウジング部の内部に洗浄液を噴射する噴射部を備える洗浄ユニットと、少なくとも、前記洗浄ユニットに対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段及び電力を供給する電力供給手段を備える本体ユニットからなる洗浄装置において、前記挿入口に配して前記ブラシ機構部と一体に回転するとともに、上面に洗浄部を有し、かつ中央に前記被洗浄物が挿通する挿通孔を有する円盤状の洗浄部材と、この洗浄部材の上方に配した上噴射部及び前記洗浄部材の下方に配した下噴射部からなる噴射部と、前記上噴射部及び/又は前記下噴射部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを具備してなることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄部材は、上面から上方に突出する一又は二以上のフィン状部を有する洗浄部を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄部材は、弾性体素材により一体成形してなることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記ブラシ機構部は、前記被洗浄物の周面部を洗浄する第一洗浄ブラシ部と当該被洗浄物の先端部を洗浄する第二洗浄ブラシ部を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記第二洗浄ブラシ部を昇降自在に支持するブラシ支持手段と、前記第二洗浄ブラシ部を上方へ付勢するブラシ付勢手段を備えることを特徴とする請求項4記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記ハウジング部の内部における使用後の洗浄液を回収して前記本体ユニットに貯留する洗浄液回収手段を備えることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−206407(P2008−206407A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43480(P2007−43480)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]