説明

洗浄装置

【課題】手の差込口からのオゾンガスの漏出を抑制し得る洗浄装置を提供する。
【解決手段】 筐体1の一部に開口された差込口2から差し込まれた洗浄対象部位に散布装置(オゾン水供給器4、散水器10)によりオゾン水を散布するようにした洗浄装置において、筐体1内のオゾンガスを前記差込口2側から筐体1の内方に向かう向きに強制的に循環させるオゾンガス循環部(送風ファン17、18、ポンプ14、噴射口3)と、筐体1内を負圧状態にするオゾンガス排出部(ポンプ13)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水を用いた洗浄装置に係り、より詳細には手指等の人体部位の殺菌洗浄に好適な洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種給食施設、病院等では、衛生上、手洗いが義務付けられている。従来の手洗いの仕方としては、石鹸等の洗剤を使用する方法、あるいはクレゾールやエチルアルコール等の薬剤を用いる方法が一般的である。
【0003】
しかし、上記施設の従事者は繁雑に手洗いを行う必要があるため、手荒れが問題となる。一方、石鹸や除菌アルコールを使用した洗浄の効果は、洗浄する人の個人差(洗い方等)に依存し、必ずしも完全な洗浄は期しがたい。
そこで、近年、手荒れを抑制することができ、かつ殺菌効果の高いオゾン水を利用した手洗い洗浄装置が種々開発されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−206498号公報
【特許文献2】特開平7−31665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オゾン水を利用した手洗い洗浄装置では、洗浄時にオゾン水から分離されたオゾンガスの外部への漏出が問題となる。すなわち、オゾンガスは人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、洗浄装置の筐体外への漏出防止策を講じる必要がある。
【0006】
この点に関し、特許文献1、2の手洗い装置では、二酸化マンガンを備えた排気ファンにより保護カバー内のオゾンガスを酸素に分解して排出させる構成を採用している。また、特許文献1、2の手洗い装置は、洗浄容器内のオゾンガスの周囲への拡散または漏洩に対する対策として、洗浄容器内のオゾンガスを酸素に分解して洗浄容器外に排出する構成を用いている。
【0007】
しかしながら、洗浄容器内のオゾンガスの周囲への拡散または漏洩を防止するのに、排出ファンによる洗浄容器内へのオゾンガスの引き込みだけでは不十分であり、依然として差込口からのオゾンガス漏出の問題は残るといわざるを得ない。
本発明の課題は、手の差込口からのオゾンガスの漏出を抑制し得る洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明によれば、筐体の一部に開口された差込口から差し込まれた洗浄対象部位に散布装置によりオゾン水を散布するようにした洗浄装置において、前記筐体内のオゾンガスを前記差込口側から前記筐体の内方に向かう向きに強制的に循環させるオゾンガス循環部と、前記筐体内を負圧状態にするオゾンガス排出部と、を備えた洗浄装置が提供される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の洗浄装置において、前記ガス循環部が前記筐体内に設けられた循環用送風ファンである洗浄装置が提供される。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の洗浄装置において、前記筐体内に、前記送風ファンにより循環されるオゾンガスを前記差込口側から前記筐体の内方に向かう向きに案内する送風ガイド部材が設けられている洗浄装置が提供される。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の洗浄装置において、前記ガス循環部が前記差込口に前記筐体の内方に指向して設けられており、循環オゾンガスを噴射する噴射口と、前記筐体内のオゾンガスを吸引する循環用ポンプと、当該吸引された循環オゾンガスを前記噴射口に供給する配管と、を含む洗浄装置が提供される。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1、2、3又は4のいずれか一項に記載の洗浄装置において、前記筐体内に前記洗浄対象部位が存在するか否かを検出する検出部と、当該検出部からの検出信号に基づいて、前記散布装置、前記オゾンガス排出部、前記送風ファン及び前記循環用ポンプを駆動する制御部と、を含む洗浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、手の差込口からのオゾンガスの漏出を抑制し得る洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置の外観を示す立面図である。
【図2】本発明に係る洗浄装置の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る洗浄装置の構成を示す横断面図である。
【図4】本発明に係る洗浄装置の制御シーケンスを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置の内部構成図である。
【図6】図5に記載の洗浄装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
まず、洗浄装置の構成を説明する。
図1に洗浄装置の外観を示し、図2及び図3に洗浄装置の内部構成を示す。
洗浄装置は、筐体1と、筐体1内に収納されたオゾン水散布部と、散布されたオゾン水を回収するオゾン水回収部と、筐体1内に発生したオゾンガスを分解して外部に排出するオゾンガス排出部と、筐1体内に発生したオゾンガスを回収して再び筐体内に循環させるオゾンガス循環部と、を備える。
【0016】
筐体1は、オゾンに対する耐食性を有する材料(例えば、ポリエステル等の合成樹脂、ガラスコーティングを施した材料等)からなり、箱状に形成されている。
筐体1の正面側壁面には、手を差し入れるための円形状の差込口2が開口されている。なお、差込口2の開口形状は、楕円形、矩形であっても差し支えない。
【0017】
差込口2の内周端面は、筐体1の内周に向かって徐々に縮径するように、断面で見てテーパー状に形成されている。差込口2の内周面には、放射状位置に配置された複数の循環オゾンガス噴射口3が設けられている。この循環オゾンガス噴射口3は筐体1の内部に指向しており、オゾンガスを筐体1内に向けて噴出することができる。
【0018】
オゾン水散布部は、オゾン水を発生するオゾン水供給器4と、このオゾン水供給器4から供給されるオゾン水を手等の殺菌対象部位に散布する噴射口3と、を有する。
オゾン水回収部は、筐体1内の下部に設けられた廃液回収用のホッパー5と、このホッパー5に回収された廃液を外部に排出する排出口6と、を有する。
【0019】
オゾンガス排出部は、筐体1内から外部に向けて配された配管12と、オゾンガス取り込み口12の管路の途中に設けられたオゾン吸着器7と、オゾン吸着器7で清浄化された空気(オゾンガスからオゾンを取り除いた酸素ガス)を吸引し排出口8を介して外部に排出する排気用のポンプ13とで構成される。このポンプ13の吸引作用により、筐体1内は筐体1の外気圧に対して負圧の状態となる。
【0020】
オゾン吸着器7内には、活性炭等のオゾン吸着剤が封入されている。
オゾンガス循環部は、第1の循環系と第2との二つの循環系からなる。
第1の循環系は、筐体1内のオゾンガスを筐体内で還流させる系である。
【0021】
図3に示すように、第1の循環系は、筐体1内の左右の側壁に設けられたオゾンガス循環用の送風ファン17、18と、筐体1内の前後の内壁に設けられたガイド19、20、21、22を有する。この第1の循環系において、図3に矢印で示すように、送風ファン17、18の駆動により筐体1内のオゾンガスは筐体1内の中心部分→後壁→ガイド19,20→左右の側壁→送風ファン17、18→前壁のガイド21、22の経路を経て再び筐体1内の中心部分に戻るように強制循環される。この筐体1内部でのオゾンガスの循環により、オゾン水による殺菌に加えてオゾンガスによる殺菌効果を向上しうる。また、オゾンガスの還流方向が常に筐体内部に向かうので、差込口2からのオゾンガスの流出を抑制できる。
【0022】
第2の循環系は、筐体1内のオゾンガスを一旦吸引し、吸引したオゾンガスを差込口2の循環オゾンガス噴射口3を介して再び筐体内に強制的に吹きこませる系である。
【0023】
図2に示すように、第2の循環系は、筐体1の後壁に設けられたオゾンガス取り込み口12と、配管から分岐された配管15と、配管15に設置されたポンプ14と、差込口2に設けられた複数の噴射口3と、で構成される。
【0024】
複数の噴射口3には、図3に示すように、差込口2の内周に沿って配された配管を通じて吸引オゾンガスが分配される。各噴射口3から噴射されるオゾンガスは、ポンプ14により強制送気されるのでジェット噴流となる。噴射口3の噴射の強さは噴射口3の先端の内径を適宜選択することにより設定する。
【0025】
なお、図示してないが、噴射口3の噴射方向を適調整可能な構成とすることにより、オゾンガスの漏出防止に最適な噴射方向を事後的にも調整することが可能となる。
その他、筐体1内には、浄対象部位が存在するか否かを検出するセンサ(検出部)24と、制御部9と、が設けられている。
【0026】
制御部9は、センサ24からの検出信号に基づいて、オゾン純水供給器4、オゾンガス排出用のポンプ13、送風ファン17,18及び循環用ポンプ14の駆動を制御する。
制御部9としては、マイクロコンピュータを用いることができる。マイクロコンピュータは、CPU、とROMと、作業エリアとしてのRAMと、センサ24からの検出信号を入力する入力ポートと、オゾン純水供給器4、オゾンガス排出用のポンプ13、送風ファン17,18及び循環用ポンプ14に駆動制御信号を送る出力ポートとを有する。マイクロコンピュータはROMに記憶された動作シーケンスプログラム(図4)をRAMに展開し、この展開された動作シーケンスとCPUとの協働により各部を統括的に制御する。
【0027】
なお、マイクロコンピュータに代えて同様の動作シーケンスのロジックで構成されたASIC等の専用ICを用いてもよい。
センサ24は、防水処置が施された光学センサ(フォトカップラ等)を用いることができる。
【0028】
次に、洗浄装置の一連の動作を説明する。
図4に、制御部9が実行する動作シーケンスを示す。
まず、差込口2から手が差し込むと、センサ24が手を検知する(ステップS1:YES)。この検知信号を受けた制御部9は、オゾン水供給装置4を駆動し(ステップS2)、噴射ノズル10からオゾン水を散布させる。
【0029】
次いで、制御部9は、排気用のポンプ13の起動(ステップS3)、紫外線ランプ23の点灯(ステップS4)、送風ファン17、18の起動(ステップS5)、ポンプ14の起動を行う。
【0030】
ここで、送風ファン17、18が起動されることにより、図3に示すように、筐体1内のオゾンガスは、矢印で示す向きに循環される。そして、噴射口3が筐体1の内方に向かうジェット噴流に引き込まれて再び筐体内に戻されるので、差込口2からのオゾンガスの漏出を防止することができる。また、オゾンガスの循環により、オゾン水の殺菌効果に加えてオゾンガスの殺菌効果も重畳されるので、殺菌効果をより高めることが可能となる。
【0031】
次いで、所定の洗浄時間が経過したら(ステップS7:YES)、オゾン水供給装置4の停止によりオゾン水の供給の停止(ステップS8)、排出ポンプ13の停止(ステップS8)、紫外線ランプ23の消灯(ステップS10)、送風ファン17、18の停止(S11)、ポンプ14の停止(ステップS12)を行う。
【0032】
次いで、ステップS13で電源がOFFされたか否かを検出し、YESであれば、当該洗浄装置の動作を停止させ、NOであれば、動作をステップS1に戻り、次の洗浄者の手の差し込みを待つ。
【0033】
なお、本実施の形態では、殺菌洗浄対象部位として人体の手を例にして説明したが、足であっても差支えない。なお、必要に応じて足の殺菌消毒に適するように適宜改造又は変形した態様は、本発明の技術的範囲に属する。
【0034】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置について図5及び図6に基づいて説明する。この図5は本実施形態に係る洗浄装置の内部構成図、図6は図5に記載の洗浄装置の動作フローチャートを示す。
【0035】
前記各図において、本実施形態に係る洗浄装置は、前記第1の実施形態と同様、筐体1、差込口2、循環オゾンガス噴射口3、オゾン水供給器4、廃液回収用のホッパー5、排出口6、オゾン吸着器7、排出口8、制御器9、散水器10、廃液11、配管12、排気用のポンプ13、ポンプ14、配管15、16、オゾンガス循環用の送風ファン17、18、後壁の送風ガイド19、20、前壁の送風ガイド21、22、紫外線ランプ23、センサ24とを共通して備え、この構成に加えて、前記筐体1内に乾燥用の空気(例えば、温風等)を供給する乾燥器25を備える構成である。
【0036】
この乾燥器25は、洗浄対象の手に対して直接噴射することができる。また、乾燥器25は、前記直接噴射以外に、図示を省略する連結配管により前記配管15に分岐弁(図示を省略)を介して接続され、この配管15を経由して噴射口3から洗浄対象の手に対して温風等の乾燥用の空気を噴付けてオゾン水で洗浄された手を迅速に乾燥させることができる。
【0037】
次に前記構成に基づく一連の洗浄動作について説明する。本実施形態に係る洗浄装置は前記第1の実施形態の動作と同様に、ステップS1からステップS8まで実行され、このステップS8の後に乾燥器25を起動させ、筐体1に差込口2から挿入された洗浄対象の手に温風を噴射する(ステップS81)。
【0038】
この温風の噴射が予め設定された所定の乾燥時間を経過したか否かが制御器9にて判断され(ステップS82)、所定乾燥時間を経過したと判断された場合には乾燥器25を制御器9が停止させる(ステップS83)。なお、前記乾燥器25が温風等の乾燥用の空気を供給している間は、排気用のポンプ13、紫外線ランプ23、送風ファン17、18及びポンプ14はいずれも起動状態にあり、残留するオゾンと共に温風等の乾燥用の空気を排気口8を介して外部に排出する。さらに、前記ステップS83において乾燥器25が停止した後は、前記第1の実施形態と同様にステップS9ないしステップS13を実行して完了する。
【符号の説明】
【0039】
1 筐体
2 差込口
3 噴射口
4 オゾン水供給器
5 廃液回収用のホッパー
6 排出口
7 オゾン吸着器
8 排気口
9 制御器
10 散水器
11 廃液
12 オゾンガス取り込み口
13 排気用のポンプ
14 ポンプ(オゾンガス循環用)
15 配管
16 配管 (オゾンガス循環用)
17 送風ファン
18 送風ファン
19 送風ガイド部材(後壁側)
20 送風ガイド部材(後壁側)
21 送風ガイド部材(前壁側)
22 送風ガイド部材(前壁側)
23 紫外線ランプ
24 センサ
25 乾燥器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の一部に開口された差込口から差し込まれた洗浄対象部位に散布装置によりオゾン水を散布するようにした洗浄装置において、
前記筐体内のオゾンガスを前記差込口側から前記筐体の内方に向かう向きに強制的に循環させるオゾンガス循環部と、
前記筐体内を負圧状態にするオゾンガス排出部と、
を備えた洗浄装置。
【請求項2】
前記ガス循環部は、前記筐体内に設けられた循環用送風ファンである請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記筐体内には、前記送風ファンにより循環されるオゾンガスを前記差込口側から前記筐体の内方に向かう向きに案内する送風ガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記ガス循環部は、
前記差込口に前記筐体の内方に指向して設けられ、循環オゾンガスを噴射する噴射口と、
前記筐体内のオゾンガスを吸引する循環用ポンプと、
当該吸引された循環オゾンガスを前記噴射口に供給する配管と、
を含むことを特徴とする請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記筐体内に前記洗浄対象部位が存在するか否かを検出する検出部と、
当該検出部からの検出信号に基づいて、前記散布装置、前記オゾンガス排出部、前記送風ファン及び前記循環用ポンプを駆動する制御部と、
を含むことを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれか一項に記載の洗浄装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−147718(P2011−147718A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13189(P2010−13189)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(509316062)株式会社上原OTEC研究所 (1)
【Fターム(参考)】