説明

洗浄装置

【課題】電気分解によって発生するスケールの堆積を確実に抑制することが可能な洗浄装置を提供すること。
【解決手段】この洗浄装置APは、対象に向けて機能水を吐出するノズル18と、給水源から供給された水をノズル18に供給する給水路12と、給水路12に設けられ、一対の電極を有し、給水源から供給された水を電気分解して性状を変化させて機能水と成す電解槽16と、を備え、給水源から供給された水のSiイオン濃度を高めるSiイオン濃度調整部14を、電解槽16よりも上流側に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解して性状を変化させた機能水を対象に向けて吐出するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような洗浄装置の一例として、人体の局部に機能水を吐出するものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。下記特許文献1には、所定の局部洗浄位置に移動して人体の局部に向けて局部洗浄水を噴出するノズルと、ノズルが所定の洗浄位置に到達した時、ノズルを局部洗浄水とその性状を異にするノズル洗浄水に晒すノズル洗浄手段と、を備えることを特徴とする局部洗浄装置が開示されている。更に、ノズル洗浄手段は、上水または中水の性状を変化させてノズル洗浄水を生成するノズル洗浄水生成部を備えている。ノズル洗浄水生成部は、電気分解によってノズル洗浄水を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−93034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、電気分解によって殺菌性を有する機能水を生成しているため、上水又は中水に含まれるCaイオン由来のスケールが流路内に堆積する。このようなスケールの堆積は一般的に起こる事象であるけれども、本発明者らは特定の地域において顕著なスケールの堆積が発生していることを見出した。この特定の地域において給水源から供給される水は、Caイオン濃度が極端に高いわけではないにも拘らず、スケールの堆積は顕著なものとなっている。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気分解によって発生するスケールの堆積を確実に抑制することが可能な洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らは、上記特定の地域において給水源から供給される水の性質をより詳細に調査し、他の地域において給水源から供給される水との性質の違いについて検討を重ねた。その結果、上記特定の地域においては、給水源から供給される水に含まれるSiイオン濃度が、他の地域において給水源から供給される水に含まれるSiイオン濃度よりも低い状態にあることを見出した。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0007】
本発明に係る洗浄装置は、電気分解して性状を変化させた機能水を対象に向けて吐出するための洗浄装置であって、対象に向けて機能水を吐出する吐出口が形成されたノズルと、給水源から供給された水を前記吐出口に供給する給水路と、前記給水路に設けられ、一対の電極を有し、給水源から供給された水を電気分解して性状を変化させて機能水と成す電解部と、を備え、給水源から供給された水のSiイオン濃度を高めるSiイオン濃度調整部を、前記電解部よりも上流側に設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、給水源から供給された水のSiイオン濃度を高めるSiイオン濃度調整部を、電解部よりも上流側に設けているので、給水源から供給される水のSiイオン濃度が低い場合においても、電解部にはSiイオン濃度が高まった水を供給することができる。従って、電解部においては、Siイオン濃度が高まった水を電気分解し、性状を変化させた機能水を供給することができるので、Caイオン由来のスケールの堆積を抑制することができる。本発明によれば、Caイオン由来のスケールが堆積したとしても、その粒子径を極めて小さく抑制することができるので、電解部における極反転によってそのスケールを離脱させ、ノズルから外部へと排出することができ、給水路の閉塞を確実に回避することができる。
【0009】
また本発明に係る洗浄装置では、前記Siイオン濃度調整部は、給水源から供給された水を前記電解部側に流す内部流路を有し、前記内部流路を流れる水にSiイオンを与える化合物を前記内部流路内に配することも好ましい。
【0010】
この好ましい態様によれば、化合物からのSiイオンの流出を利用して、給水源から供給された水にSiイオンを混入させるので、内部流路にSiイオンを与える化合物を配するという簡単な構成で、スケールの堆積を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気分解によって発生するスケールの堆積を確実に抑制することが可能な洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である衛生洗浄装置を含む温水洗浄便座を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である衛生洗浄装置の構成を示すブロック構成図である。
【図3】図2に示す衛生洗浄装置を用いた場合のスケールの堆積状態を示す図である。
【図4】Siイオン濃度調整部を設けない場合のスケールの堆積状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
本発明の実施形態である衛生洗浄装置を含む温水洗浄便座について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態である衛生洗浄装置を含む温水洗浄便座を示す概略斜視図である。図1に示されるように、温水洗浄便座WAは、大便器CBに戴置されて使用されるものである。温水洗浄便座WAは、本体WAaと、便座WAbと、便蓋WAcと、操作部10とを備えている。操作部10には操作パネルが設けられていて、操作パネルの操作に応じた操作信号が本体WAaに送信される。
【0015】
例えば、操作パネルの「大洗浄」「小洗浄」といった表示がされた部分を操作すると、「大洗浄」「小洗浄」に対応する洗浄動作がなされるように指示する操作信号が本体WAaに送信される。本体WAaは、このような操作信号が送信されると、大便器CBのボウル面CBaを洗浄するために洗浄水をボウル面CBaに流す動作を実行する。
【0016】
また、例えば、操作パネルの「おしり洗浄」「ビデ洗浄」といった表示がされた部分を操作すると、「おしり洗浄」「ビデ洗浄」に対応する洗浄水の吐出がなされるように指示する操作信号が本体WAaに送信される。本体WAaは、このような操作信号が送信されると、ノズル18を繰り出して洗浄水を吐出する動作を実行する。
【0017】
ノズル18は、便座WAbに着座している使用者の肛門近傍や膣口近傍や尿道口近傍を洗浄するために洗浄水を吐出するものである。ノズル18には、ビデ洗浄吐水孔181(吐出口)とおしり洗浄吐水孔182(吐出口)とが設けられている。使用者が操作パネルの「おしり洗浄」と表示された部分を操作すると、おしり洗浄吐水孔182から洗浄水が吐出される。また使用者が操作パネルの「ビデ洗浄」と表示された部分を操作すると、ビデ洗浄吐水孔181から洗浄水が吐出される。
【0018】
続いて、図2を参照しながら、温水洗浄便座WAに含まれる衛生洗浄装置APの構成について説明する。図2は、本発明の実施形態である衛生洗浄装置APの構成を示すブロック構成図である。図2に示すように、衛生洗浄装置APは、給水路12と、Siイオン濃度調整部14と、電解槽16(電解部)と、ノズル18と、を備えている。
【0019】
ノズル18は、対象に向けて機能水を吐出する吐出口としてのビデ洗浄吐水孔181及びおしり洗浄吐水孔182が形成されたものである。給水路12は、給水源から供給された水をノズル18に供給することで、吐出口としてのビデ洗浄吐水孔181及びおしり洗浄吐水孔182に供給する流路である。
【0020】
電解槽16は、給水路12に設けられ、一対の電極(図示せず)を有し、給水源から供給された水を電気分解して性状を変化させて機能水と成すものである。電解槽16に設けられた一対の電極への通電は、機能水が必要とされる場面に応じて適宜行われるものである。
【0021】
Siイオン濃度調整部14は、給水源から供給された水のSiイオン濃度を高める部分であって、電解槽16よりも上流側に設けられている。Siイオン濃度調整部14は、給水源から供給された水を電解槽16側に流す内部流路(図示せず)を有している。この内部流路には、その内部を流れる水にSiイオンを与える化合物が配されている。具体的には、シリカゲル、グラスウール、ケイ酸ナトリウムといった、ケイ酸化合物が配されている。内部流路には、このケイ酸化合物を配する化合物保持部(図示せず)が形成されている。この化合物保持部の上流側及び下流側に、ケイ酸化合物が流出しないように網目状の流出防止機構が設けられている。
【0022】
このような衛生洗浄装置APを用いると、その内部におけるCaイオン由来のスケール堆積状況は図3に示すようなものとなる。図3に示すように、衛生洗浄装置AP内部におけるCaイオン由来のスケールは、極めて少なく、その粒子径も微小なものとなっている。具体的には、スケールとして付着したCa化合物の粒子径は、1μm以下となっている。このスケールは、電解槽16の電極に付着するので、極反転によって剥離させた後、給水路12内を下流側へと流れて、ノズル18から排出される。
【0023】
一方、Siイオン濃度調整部14を設けない場合の、Caイオン由来のスケール堆積状況は図4に示すようなものとなる。図4に示すように、Siイオン濃度調整部14を設けない場合には、Caイオン由来のスケールは、極めて多く、その粒子径も大きなものとなっている。具体的には、スケールとして付着したCa化合物の粒子径は、最大で10μm程度、最小で0.5μm程度となっている。
【0024】
尚、上述した本実施形態では、本発明の洗浄装置の一例として衛生洗浄装置を示したけれども、本発明の洗浄装置の実施形態としてはこれに限られるものではなく、アルカリイオン水供給装置といった実施形態を採用することも可能である。
【0025】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0026】
10:操作部
12:給水路
14:Siイオン濃度調整部
16:電解槽
18:ノズル
181:ビデ洗浄吐水孔
182:洗浄吐水孔
AP:衛生洗浄装置
CB:大便器
CBa:ボウル面
WA:温水洗浄便座
WAa:本体
WAb:便座
WAc:便蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解して性状を変化させた機能水を対象に向けて吐出するための洗浄装置であって、
対象に向けて機能水を吐出する吐出口が形成されたノズルと、
給水源から供給された水を前記吐出口に供給する給水路と、
前記給水路に設けられ、一対の電極を有し、給水源から供給された水を電気分解して性状を変化させて機能水と成す電解部と、を備え、
給水源から供給された水のSiイオン濃度を高めるSiイオン濃度調整部を、前記電解部よりも上流側に設けたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記Siイオン濃度調整部は、給水源から供給された水を前記電解部側に流す内部流路を有し、
前記内部流路を流れる水にSiイオンを与える化合物を前記内部流路内に配することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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