説明

洗濯機

【課題】水槽を傾斜角度調整自在に配設する場合に、水槽が外箱にぶつかる限界角度を検出し、この限界角度で水槽の傾斜移動を停止して水槽が外箱に衝突することを防止し、安全にしかも確実に水槽の傾斜角度を制御できる洗濯機を得る。
【解決手段】水槽が傾斜可能な洗濯機において、水槽の傾斜によって水槽が外箱にぶつかる位置である吊り棒5の上限移動位置と下限移動位置とに、上限位置検出手段および下限位置検出手段としてのマイクロスイッチ17a、17bをそれぞれ配設し、水槽のそれ以上の傾斜移動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の水槽の傾斜角度検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗濯機は外箱内にその四隅から吊下げ手段によって水槽を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータを配設したもので、外箱の上部の四隅部から、吊り棒を主体とし下部に防振部分を有する吊下げ手段によって水槽が吊持されている。
【0003】
そして、洗濯行程や脱水行程では洗濯物である衣類の洗濯兼脱水槽内での片寄りによるアンバランスによって、洗濯兼脱水槽や水槽に大きな振動が発生するが、防振部分を備える吊り棒によってこの振動が外箱に伝わらないようにしている。
【0004】
ところで、近年、乾燥手段を備えた洗濯乾燥機が出現している。この洗濯乾燥機においても、通常の洗濯機と同じく、洗濯兼脱水槽の形状は鉛直方向に長い円筒型で、かつ、洗濯兼脱水槽の回転中心軸が鉛直方向を向いているため、洗濯乾燥時において衣類の鉛直方向への回転移動が少なくなる傾向にあり、その結果、衣類が洗濯兼脱水槽内で上下方向に入れ替りにくくなって、衣類に皺が生じたり、乾燥ムラが生じたりしやすかった。
【0005】
また、洗い行程でも、ほとんどが水平方向の単純な水流であり、洗浄効果が十分ではなかった。
【0006】
さらに、洗濯兼脱水槽が長い円筒型であるため、このような形状の槽が垂直に配設されていると、槽内の衣類を取出す際、特に底部のものを取出しにくく、使い勝手がよくなかった。
【0007】
そこで、かかる不都合を解消するものとして、乾燥行程時には洗濯兼脱水槽内の衣類が上下方向に入れ替りやすく、衣類に皺が生じたり、乾燥ムラが発生することを防止でき、また、洗い行程では水流を複雑にできてよりいっそうの洗浄効果が期待でき、さらに洗濯兼脱水槽内からの衣類の取出し作業を行いやすくできる洗濯機が提案された。
【0008】
これは、外箱内にその四隅から吊下げ手段によって水槽を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータを配設した洗濯乾燥機において、前記吊下げ手段は、下部に防振部分を有する吊り棒の上部に雄ネジ部分を形成し、この雄ネジ部分を駆動部で回転する雌ネジ回転体にねじ込んで吊下げ長さを調整可能としたものである。
【0009】
これにより、水槽は四隅のうちの全部または一部を吊下げ長さを自動調整可能とした吊り棒による吊下げ手段を介して外箱から吊下げられるから、この吊下げ長さを変えることで外箱内で水槽が傾斜する。よって、洗濯兼脱水槽の回転中心軸が鉛直方向ではなく、斜め方向となるから、乾燥行程時には洗濯兼脱水槽内の衣類が鉛直方向に回転移動しやすくなり、皺の発生や乾燥ムラを抑えることができる。
【0010】
また、洗い行程でも洗濯兼脱水槽の回転中心軸が斜め方向となることで、水流が複雑となって洗浄効果が増大する。
【0011】
さらに、水槽を手前に傾斜させることで、洗濯兼脱水槽内の衣類を取出す際に槽の上部開口面が使用者の方に斜めに向き、洗濯兼脱水槽の手前の高さが低くなる。これにより、槽内を見易くなって、衣類の取出し作業が行い易くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
水槽を傾斜可能とした洗濯機は、前記のように駆動部の駆動より水槽が傾斜するものであるが、例えば衣類の投入時や取出し時に作業し易いように水槽の傾斜角度が最大角度になるように設定した場合、駆動部の駆動が継続して設定値を超える傾斜角度になってしまうと、外箱に設けた衣類投入口と水槽の開口部との位置がずれたり、水槽と外箱が衝突し損傷するなどの問題が発生するおそれがある。
【0013】
本発明は前記従来例の不都合を解消するものとして、水槽を傾斜角度調整自在に配設する場合に、水槽が外箱にぶつかる限界角度を検出し、この限界角度で水槽の傾斜移動を停止して水槽が外箱に衝突することを防止し、安全にしかも確実に水槽の傾斜角度を制御できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は前記目的を達成するものとして、外箱内にその四隅から吊下げ手段によって水槽を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータを配設した洗濯機において、前記吊下げ手段は、下部に防振部分を有する吊り棒の上部に雄ネジ部分を形成し、この雄ネジ部分を駆動部で回転する雌ネジ回転体にネジ込んで吊り棒の吊下げ長さを調整可能とし、水槽の傾斜によって水槽が外箱にぶつかる位置である吊り棒の上限移動位置と下限移動位置とに、上限位置検出手段および下限位置検出手段をそれぞれ配設し、水槽のそれ以上の傾斜移動を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
水槽が傾斜して水槽が外箱にぶつかる位置である吊り棒の上限移動位置と下限移動位置に吊り棒が達した時、上限位置検出手段および下限位置検出手段により吊り棒がこの位置に達していることが検出され、この位置検出により駆動部の駆動が停止される。よって、水槽がそれ以上傾斜することはなく、外箱に衝突したり、外箱に設けた衣類投入口と水槽の開口部との位置がずれたりすることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の洗濯機の実施形態を示す側面側の説明図、図2は同上平面側の説明図、図3は同上要部である吊下げ手段の縦断正面図で、洗濯機の全体構成は既に説明したとおり、洗濯機は外箱1内にその四隅から吊下げ手段6によって水槽2を吊下げ、図示は省略するが底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽2内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータ3を配設している。
【0017】
図中8はコントロールユニット、9はトップカバーを示す。
【0018】
本発明は吊下げ手段6として、図1、図3に示すように、下部に防振部分12を組み込んだ吊り棒5の上部に雄ネジ11の部分を形成し、この雄ネジ11の部分を駆動部10で回転する雌ネジ回転体13にねじ込んで吊下げ長さを自動調整可能とした。
【0019】
駆動部10はDCモータによるもの、雌ネジ回転体13はこのモータに歯合する嵌合歯車によるものであるが、これら駆動部10と雌ネジ回転体18とで駆動ユニット(アクチュエーター)7が形成され、吊り棒5の上部にこれが一体物として組み込まれる。
【0020】
図中14a、14bは駆動ユニット(アクチュエーター)7の上下位置で吊り棒5の駆動部分を埃や水分から保護する密閉ケースとしての防塵ケース、16は駆動ユニット(アクチュエーター)7の下面に形成する球面座である。
【0021】
雄ネジ11は金属製である吊り棒5に膨径部を設けて直接これに形成してもよいが、この雄ネジ11を合成樹脂製の外周ネジ管とし、これに吊り棒5の本体に被嵌して形成するようにしてもよい。
【0022】
そして、前記球面座16を外箱1の内側に突出させたフランジ状の吊り板4の球形凹部(図示せず)に嵌合させ、防振部分12を水槽2の側部から側方に突出させたフランジに係止する。これにより、吊下げ手段6が外箱1と水槽2との間に懸架される。
【0023】
本発明の駆動ユニット(アクチュエーター)7を組み込んだ吊下げ手段6は外箱1内の四隅に配置されるが、図1の例は図2に示すように四隅の全てに本発明の構成による吊下げ手段6を配置する場合である。
【0024】
本発明はかかる構成に加えて、水槽2の最大傾斜角度を検出する方法の第1実施形態として図3に示すように、吊り棒5の上限移動位置と下限移動位置とに、上限位置検出手段および下限位置検出手段としてのマイクロスイッチ17a、17bを防塵ケース14a、14b内に配設し、雄ネジ11の上部と下部とに前記マイクロスイッチ17a、17bをオンする押板15a、15bを設けた。
【0025】
ここで、吊り棒5の上限移動位置と下限移動位置とは、水槽2がそれ以上傾斜すると外箱1に衝突する位置である。
【0026】
次に動作を説明する。駆動ユニット(アクチュエーター)7を組み込んだ吊下げ手段6は、駆動部10は雌ネジ回転体13を回転駆動することにより、吊り棒5を雄ネジ11を介して上下動でき、これにより吊り棒5の長さを調整できる。
【0027】
この場合、例えば図1に示すように後方に配置されている雌ネジ回転体13が回転することで、雄ネジ11を介して吊り棒5が引き上げられ、吊下げ長さが短くなると、水槽2は前方に傾斜するが、吊り棒5の引き上げ、すなわち上方への移動によって押板15aも上昇し、最大傾斜角度まで水槽2が前傾した位置でマイクロスイッチ17aに係合しこれをオンする。
【0028】
その結果、マイクロスイッチ17aからのオン信号がコントロールユニット8に入り、ここで吊り棒5の移動量の上限が検知され、駆動ユニット(アクチュエーター)7の駆動を停止させる。
【0029】
よって、吊り棒5はそれ以上移動することなく、水槽2もそれ以上傾斜せず、水槽2が外箱1に衝突することはない。この第1実施形態は、防塵ケース14a、14b内にマイクロスイッチ17a、17bを配設するとともに、これを押す押板15a、15bを吊り棒5に設けるだけの小型で簡単な構造によって水槽2の傾斜角度の限界を容易に検出できる。
【0030】
図4は第2実施形態を示し、前記マイクロスイッチ17a、17bに替えて、フォトインタラプタ18a、18bを配設し、吊り棒5の上端と下端に遮蔽板19a、19bを設けた。
【0031】
これにより、吊り棒5が移動してその上端に設けた遮蔽板19aが上昇して遮蔽板19aがフォトインタラプタ18aの溝を遮ると、フォトインタラプタ18aからの遮蔽信号がコントロールユニット8に入り、ここで吊り棒5の移動量の上限が検知され、駆動ユニット(アクチュエーター)7の駆動を停止させる。よって、吊り棒5はそれ以上移動することなく、水槽2もそれ以上傾斜せず、水槽2が外箱1に衝突することはない。
【0032】
この第2実施形態は、第1実施形態と同様に小型で簡単な構造によって水槽2の傾斜角度の限界を容易に検出できるだけでなく、非接触の構造で上限位置を検出できるから検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の洗濯機の第1実施形態を示す洗濯機の側面側の説明図である。
【図2】本発明の洗濯機の第1実施形態を示す洗濯機の平面側の説明図である。
【図3】本発明の洗濯機の第1実施形態を示す洗濯機の要部である吊り下げ手段の縦断側面図である。
【図4】本発明の洗濯機の第2実施形態を示す洗濯機の要部である吊り下げ手段の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 外箱 2 水槽
3 モータ 4 吊り板
5 吊り棒 6 吊下げ手段
7 駆動ユニット(アクチュエーター)
8 コントロールユニット
9 トップカバー 10 駆動部
11 雄ネジ 12 防振部分
13 雌ネジ回転体 14a、14b 防塵ケース
15a、15b 押板 16 球面座
17a、17b マイクロスイッチ
18a、18b フォトインタラプタ
19a、19b 遮蔽板 20 マイクロコンピュータ
21 中央処理装置 22 記憶部
23 負荷駆動回路 24 電流検出回路
25 測距センサー 26 水位センサー
27 水受け部 28 導圧チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱内にその四隅から吊下げ手段によって水槽を吊下げ、底部に攪拌翼を配設した洗濯兼脱水槽を前記水槽内に配設し、洗濯兼脱水槽の下方にギヤ、クラッチなどの機構を介してモータを配設した洗濯機において、前記吊下げ手段は、下部に防振部分を有する吊り棒の上部に雄ネジ部分を形成し、この雄ネジ部分を駆動部で回転する雌ネジ回転体にネジ込んで吊り棒の吊下げ長さを調整可能とし、水槽の傾斜によって水槽が外箱にぶつかる位置である吊り棒の上限移動位置と下限移動位置とに、上限位置検出手段および下限位置検出手段をそれぞれ配設し、水槽のそれ以上の傾斜移動を停止することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記上限位置検出手段はマイクロスイッチまたはフォトインタラプタであることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−54938(P2008−54938A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235631(P2006−235631)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】