洗濯機
【課題】簡単な構成で、回転槽の脱水回転における振動状況を低速域から高速域にかけて検知する。
【解決手段】水槽2内には、洗濯機モータ17により回転される洗濯兼脱水用の回転槽2が回転可能に配設されている。この水槽2には該水槽2の振動度合いを検知する加速度センサ28、29が設けられており、これら加速度センサ28、29は、検知レンジの切り替えにより分解能の変更が可能である。
【解決手段】水槽2内には、洗濯機モータ17により回転される洗濯兼脱水用の回転槽2が回転可能に配設されている。この水槽2には該水槽2の振動度合いを検知する加速度センサ28、29が設けられており、これら加速度センサ28、29は、検知レンジの切り替えにより分解能の変更が可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転槽を内設した水槽の振動を検知する振動検知手段を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ドラム式洗濯機では、回転槽(ドラム)を高速回転させることにより、回転槽内に収容された洗濯物の脱水が行われる。この脱水の際、回転槽内の洗濯物が偏って分布していると、これがアンバランス荷重となって回転槽が振れ回り(アンバランス回転)、水槽を振動させたり、騒音を発生させたりする。そこで、従来では、水槽の振動を振動センサにより検知し、この検知結果に応じて、アンバランス回転などを検知し、アンバランス修正処理などの適正な制御処理を行うようにしている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3865791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、脱水運転時などに回転槽が回転する場合、回転開始から高速側の所定回転速度に至るまで、円滑に回転速度が立ち上がって推移していく場合もあるが、あらゆる回転速度域で振動度合いが種々変化する場合もある。すなわち、脱水回転速度が低い領域(周波数1〜6Hz)では、複数の振動モードの共振点を通過するため、共振時に水槽の振動量は大きくなる。又、逆に共振点を過ぎた脱水回転速度では、振動量が小さくなる。実際に検出する水槽の加速度は、脱水回転速度の低速側では、大きな振動量、低い周波数であるため、実際の加速度は小さい。逆に脱水回転速度の高速側では、小さな振幅、高い周波数であるため、実際の加速度は大きくなる。そのため、振動センサの感度レンジが固定である従来では、低速側及び高速側を両立して、発生する加速度に適した分解能で加速度を検出することができない。
【0005】
そのため、回転槽のアンバランス回転を検出する方式として、駆動モータのトルク変動と振動センサとの組み合わせにより、回転槽のアンバランス回転を検知する方式もあるが、構成が複雑となってしまう。又、乾燥時間の短縮化(省エネ)を図るために脱水回転速度のさらなる高速化(脱水率の向上)が必須条件となっており、この場合、脱水高速側での正確なアンバランス回転検知が重要になってきている。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で、回転槽の脱水回転における振動状況を低速域から高速域にかけて検知することができる洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外箱内に弾性支持手段を介して弾性支持された水槽と、この水槽内に回転可能に配設され駆動手段により回転される洗濯兼脱水用の回転槽と、前記水槽に設けられ該水槽の振動度合いを検知する振動検知手段とを備え、前記振動検知手段は、検知レンジの切り替えにより分解能の変更が可能であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動検知手段の検知レンジを切り替えることができるから、例えば脱水回転時の低速域や高速域に応じた検知レンジの変更により分解能の変更が可能で、回転槽の脱水回転における振動状況を、簡単な構成で、低速域から高速域のすべての領域あるいは任意の速度域において良好に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、ドラム式洗濯機の縦断側面図
【図2】電気的構成を示すブロック図
【図3】(a)は前側の加速度センサの振動振幅の変化状況の一例を示す図、(b)は後側の加速度センサの振動振幅の変化状況の一例を示す図
【図4】(a)は前側の加速度センサが検知する加速度の変化状況の一例を示す図、(b)は後側の加速度センサが検知する加速度の変化状況の一例を示す図
【図5】検知レンジ設定の制御内容を示すフローチャート
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図5相当図
【図7】本発明の第3の実施形態を示す図5相当図
【図8】洗濯物重量と設定レンジ切替回転速度との関係を示す図
【図9】本発明の第4の実施形態を示す図5相当図
【図10】運転コースと設定レンジ切替回転速度との関係を示す図
【図11】本発明の第5の実施形態を示す図1相当図
【図12】図5相当図
【図13】外気温度と設定レンジ切替回転速度との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をドラム式洗濯乾燥機に適用した第1の実施形態につき、図1〜図5を参照しながら説明する。図1はドラム式洗濯乾燥機の全体構成を示している。この図1のように、外箱1の底部を構成する台板1aの下面の四隅には、ゴム脚1bが取り付けられている。また、外箱1内には、水槽2が配設され、水槽2内に回転槽(ドラム)3が配設されている。これら水槽2および回転槽3は同心状をなし、槽体4を構成している。この槽体4は、回転槽3の回転中心軸線C方向が前後方向となる横軸状で、且つ前上がりの傾斜状である。
【0011】
外箱1の台板1a上には、弾性支持手段たる左右一対の防振ダンパ5が配設され、前記水槽2がこの左右一対の防振ダンパ5によって弾性的に支持されている。また、水槽2は、その上部において、弾性部材としての引張りコイルばね6によって外箱1の天板1cに補助的に弾性支持されている。
【0012】
上記水槽2および回転槽3は、共に前面部を開放した円筒状をなしている。このうち、水槽2の前面開放部分と外箱1の前面部に形成された洗濯物の出入口9との間は、ベローズ10によって連結されている。そして、外箱1には、出入口9を開閉する扉11が設けられている。出入口9から投入される洗濯物が収容される回転槽3は、洗濯、脱水および乾燥槽として兼用される。
【0013】
前記外箱1の上部内側には、給水弁12に連結された給水ケース13が配設されている。上記給水弁12は、水道の蛇口にホースを介して接続され、洗濯時に水道水を給水ケース13内の洗剤投入室(図示せず)を通じて水槽2内に供給し、すすぎ時には水道水を仕上げ剤室を通じて水槽2内に供給するように構成されている。水槽2内に供給された水は、回転槽3の周側部および後面部に形成された多数の小孔3aを通じて回転槽3内に供給される。
【0014】
水槽2の底部には、排水口14が形成されており、この排水口14には、排水弁15が接続され、更に、この排水弁15に排水ホース16が接続されている。そして、洗濯終了時および脱水時には、洗濯水および洗濯物から脱水された水が排水口14から排水弁15および排水ホース16を介して外部に排出される。
【0015】
また、水槽2の後端面の外側には、洗濯機モータ17が取り付けられている。この洗濯機モータ17は、三相のブラシレスDCモータから構成され、その回転軸17aは、回転槽3に連結されている。この洗濯機モータ17は、PWM方式によって回転速度の制御がなされ、洗濯時および乾燥時には回転槽3を比較的低速度で回転駆動し、脱水時には回転槽3を高速度で回転駆動する。
【0016】
水槽2の前部上側には、温風出口18が形成され、後端面上部には、温風入口19が形成されている。そして、これら温風出口18と温風入口19との間が、通風路20によって接続されている。通風路20は、前後両端部に蛇腹管21,22を有し、この蛇腹管21,22を夫々温風出口18側と温風入口19側とに接続することにより、水槽2と通風路20との間での振動伝達の減少化を図っている。
【0017】
この通風路20のうち、後部には、循環用送風機23が配設されている。この循環用送風機23は、乾燥運転時に起動され、水槽2(回転槽3)内の空気を、温風出口18から通風路20内に吸入し、そして、通風路20内を外箱1の前方側から後方側へと流通させて温風入口19から水槽2(回転槽3)内に戻すというように循環させる。
【0018】
また、通風路20内には、上流側である前側に位置して蒸発器24、下流側である後側に位置して凝縮器25が配設されている。これら蒸発器24および凝縮器25は、通風路20内を流通する空気と熱交換する。これら蒸発器24および凝縮器25は、台板1aに配設された圧縮機26と共にヒートポンプ27を構成している。このヒートポンプ27は、乾燥運転時に起動され、通風路20内に吸入された空気を蒸発器24によって除湿した後、凝縮器25により加熱して水槽2内に戻す。これにより、回転槽3内の洗濯物の乾燥が行われる。
【0019】
さて、水槽2には、これに発生する振動を検出するために、振動検知手段として、例えば2つの加速度センサ28,29が設けられている。これら加速度センサ28,29は、水槽2の外周部であって、回転中心軸線C方向に前後に隔てて配設されている。
また、外箱1の前面下部には、外気を導入するためのダクト30が配設されており、このダクト30の内部には、外気取り入れファン30aが配設されている。なお、この外気取り入れファン30aは例えば外箱1内の湿気を外部に出すために使用される。
【0020】
上記加速度センサ28、29は、3次元方向の振動を検出できるようになっており、その振動検出構成は、錘を配設した支持部と、この支持部の撓み変形時の歪を抵抗値変化によって検出するピエゾ抵抗素子とを備えており、検出軸X,Y,Z方向の加速度が錘に加わることによるピエゾ抵抗素子の抵抗値変化に基づいて各検出軸方向の加速度の大きさを検出するものである。
【0021】
図2には、洗濯乾燥機の制御装置31が示されている。この制御装置31は、マイクロコンピュータを主体とするもので、洗濯乾燥機の動作全般を制御する制御手段として機能するようになっている。この制御装置31には、図示しない操作パネルに設けられた各種のキースイッチからなる操作入力部32より各種操作信号、水槽2内の水位を検出するように設けられた水位センサ33からの水位検知信号、洗濯機モータ17の回転速度を検出するように設けられた回転速度検出部(回転速度検出手段)34からの回転速度検出信号、水槽用前後両加速度センサ28,29からの振動検知信号などが入力されるようになっている。なお、制御装置31は、外箱1内の上部前側に設けられている(図1参照)。
そして、制御装置31は、上記各種の入力信号および予め記憶された制御プログラムに基づいて、前記給水弁12、排水弁15、洗濯機モータ17、循環用送風機23、圧縮機26を駆動回路35を介して制御し、洗濯乾燥運転を実行すると共に、駆動回路35を介して報知手段としての表示器36およびブザー37を制御する。
【0022】
ところで、周知のように、洗濯運転において、洗剤洗い運転後およびすすぎ洗い運転後には、回転槽3を高速回転させる脱水運転が行われる。
この脱水運転時では、通常(アンバランス回転がないとすれば)、回転槽3を最終回転速度まで順次立ち上げ、該最終回転速度に達したときにはこの最終回転速度を所定時間継続した時点で該脱水運転を終了する。上記最終回転速度は例えば1300rpmとしている。この脱水運転時においては、例えば上記アンバランス回転の有無を検出するために、前記加速度センサ28、29により水槽2の振動度合いを検知する。
【0023】
ここで、上記の水槽2の振幅(振動度合い)は、各加速度センサ28〜30の検出加速度により求めるが、実際に各加速度センサ28、29が検出する物理量は、加速度であるので、制御装置31は、この加速度センサ28、29の検出加速度と、そのとき回転速度検出部34により検出された洗濯機モータ17の回転速度に基づいて振幅を演算する。この演算式は式(1)で示す。aは加速度[G]、Xは振幅[mm]、fはモータ回転速度[rpm]であり、Xを求めることになる。
【0024】
【数1】
なお、以下では、加速度センサ28、29が直接振動振幅を検出するかのように説明する。また、本実施形態では、回転槽3を洗濯機モータ17の回転軸17aに直結しているので、回転速度検出部34により検出した回転速度がそのまま回転槽3の回転速度となる。
【0025】
この加速度センサ28、29は、例えば−6G〜+6Gの加速度に対応した出力電圧を出力する。前記制御装置31には例えば128ビットの分解能を備えたA/D変換器を備えており、このA/D変換器はその出力電圧のうち加速度−2G〜+2Gに対応した出力電圧幅を128ビットの分解能でA/D変換する場合つまり検知レンジを加速度−2G〜+2Gとする場合(分解能が前記検知レンジを後述の加速度−6G〜+6Gとする場合より高い)と、−6G〜+6Gに対応した出力電圧幅を128ビットの分解能で変換する場合つまり検知レンジを加速度−6G〜+6Gとする場合(分解能が前記検知レンジを加速度−2G〜+2Gとする場合より低い)とを切り替え可能である。なお、上記ビット数は128に限定されるものではない。
【0026】
ここで、図3(a)には脱水運転時における水槽2の前側部分の振動振幅の変化状況の一例を示し、(b)には脱水運転時における水槽2の後側部分の振動振幅の変化状況の一例を示している。この図3から分かるように、低速域では振動振幅は大きく、変動度合いも大きい。高速域では振動振幅は小さく、変動度合いも小さい。また、図4(a)には、脱水運転時における前側の加速度28の検知加速度の変化状況の一例を示し、(b)には、後側の加速度29の検知加速度の変化状況の一例を示している。この図4から分かるように、おおまかには、低速域では加速度は小さく、高速になるにつれ加速度は大きくなる。
【0027】
ここで、前記制御装置31は脱水運転時には、常時、加速度センサ28、29によりアンバランス回転を検知しており、いずれかの加速度センサ28、29の出力に基づいてアンバランス回転が検知されると、アンバランス修正動作を実行するようにしている。このアンバランス修正動作は、例えば回転槽3を内周面に洗濯物が張り付く限界未満の例えば50[rpm]の低速で正反転させる内容であり、あるいは回転槽3の回転速度を同じく例えば50[rpm]に落として一方向に回転させる内容であって、それらにより、回転槽3の内周面から洗濯物が落ち、アンバランスの修正がなされる。この後、アンバランスが良好に修正されると、回転槽3を高速回転させる。なお、このアンバランス修正運転が所定回数実行されても、アンバランスの修正がなされないときには、洗濯機モータ17を断電して、ブザー37、あるいは表示器36により報知する。
【0028】
さて、制御装置31は上述した脱水運転時において、短い時間周期で、検知レンジ設定制御を実行しており、その制御内容を図5に示す。この図5のフローチャートにおいて、加速度センサ28、29のいずれかも、検知加速度が1.8G以上でなければ(ステップS1で判断)、加速度センサ28、29の検知レンジを−2G〜+2Gとする(ステップS2)。つまり、制御装置31が有するA/D変換器で−2G〜+2G相当の出力電圧を128ビットの分解能でA/D変換する(加速度センサ28、29の−2G〜+2Gのレンジでの分解能を高くする)。これにより、検知加速度が低く小さく変動する低速域での振動度合いを良好に検知でき、アンバランス回転検知精度を高めることができる。
【0029】
前記ステップS2で加速度センサ28、29のいずれかが検知加速度が1.8G以上であれば、ステップS3に移行して、検知レンジを−6G〜+6Gに切り替える(ステップS3)。つまり、制御装置31が有するA/D変換器で−6G〜+6G相当の出力電圧を128ビットの分解能でA/D変換する(加速度センサ28、29の−6G〜+6Gのレンジでの分解能を低くする)。これにより、検知加速度が大きく変動度が少ない高速域も、十分に振動度合いを良好に検知できる。
【0030】
このように本実施形態によれば、加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えることで分解能を変更することができるから、例えば脱水回転時の低速域や高速域に応じた検知レンジの変更により分解能の変更が可能で、回転槽3の脱水回転における水槽2の振動状況を、簡単な構成で、低速域から高速域のすべての領域あるいは任意の速度域において良好に検知することができる。
【0031】
特に、本実施形態によれば、前記回転槽3の脱水回転時において、回転槽3の回転速度の上昇に応じて前記加速度センサ28、29の検知レンジを高くするように切り替えるから、低速域での加速度センサ28、29の出力の微小変化を高い分解能により精度良く検出できると共に、高速域での出力変化も広いレンジ(分解能としては低くなるが)で良好に検出することができる。
【0032】
特に、本実施形態によれば、検知加速度に低い領域において分解能を高めるように検知レンジを切り替えるから、アンバランス回転検知精度を高めることができる。
又、本実施形態によれば、加速度センサ28、29で直接検知する物理量である検知加速度に基づいて検知レンジを切り替えるから、切り替えポイントの設定が容易である。
【0033】
次に図6は本発明の第2の実施形態を示しており、この実施形態においては、加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えるための回転速度(以下、レンジ切替回転速度という)を例えば450rpmに設定しており、回転槽3の脱水回転速度がこの設定レンジ切替回転速度450rpm未満であれば(ステップT1の「NO」)、加速度センサ28、29の検知レンジを−2G〜+2Gとし(ステップT2)、450rpm以上であれば、該検知レンジを−6G〜+6Gに切り替える(ステップT3)。
【0034】
この第2の実施形態によれば、回転槽3の回転速度が予め設定されたレンジ切替回転速度に到達したら加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えるから、アンバランス回転(異常振動振幅)の判断要素である回転槽3の回転速度をもって加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えることができて、低速域及び中高速域でアンバランス回転を良好に検知できる。
【0035】
特にこの実施形態によれば、低速域での検知レンジの分解能を相対的に大きくするから、アンバランス回転が発生しがちな低速域でのアンバランス回転検知精度を高めることができる。
【0036】
又、この実施形態では、回転槽3の回転速度が上昇するときも下降するときも同じ設定レンジ切替回転速度を境に加速度センサ28、29の検出レンジを切り替えるから、回転槽3の回転上昇時においても下降時においても、同じ速度域で同じ検知レンジとすることで同じ分解能とすることができ、回転槽3の回転速度が変動することがあっても良好に水槽2の振動状況を検知することができる。
【0037】
図7及び図8は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態では、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、洗濯物重量に応じて変更するようにしている。すなわち、この第3の実施形態においては、洗剤洗い運転開始前などにおいて、洗濯機モータ17を所定駆動モードに駆動し当該洗濯機モータ17の回転速度状況により洗濯物重量を検知するにしており、この洗濯物重量検知結果に応じてレンジ切替回転速度を変更する(ステップU1)。この変更内容を図8に示す。3kg未満のときには、前記レンジ切替回転速度を例えば480rpmに、3kg以上〜6kg未満のときには460rpmに、又6kg以上のときには450rpmに変更するようにしている。
【0038】
洗濯物重量により振動系の質量が変わるため、洗濯物重量が重くなると、共振周波数は低く振動振幅も小さくなり、洗濯物重量が軽くなると、共振周波数は高くなり、振動振幅も大きくなる。この点を考慮したこの第3の実施形態によれば、洗濯物重量に合わせて検知レンジを切り替えるから、洗濯物重量に応じた振動状況を良好に検知できる。
【0039】
図9及び図10は本発明の第4の実施形態を示しており、この第4の実施形態においては、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、運転コースに応じて変更するようにしている(図9のステップV1)。すなわち、この運転コースが、図10に示すように、標準コースのときには、前記第3の実施形態と同様に洗濯物重量に応じて設定されたレンジ切替回転速度とし、ドライコースのときにはレンジ切替回転速度を例えば480rpmとし、毛布コースのときにはレンジ切替回転速度を450rpmに変更するようにしている。なお、上記標準コースは、洗濯物重量に応じて最適な洗濯を行う運転コースであり、ドライコースは、デリケートな衣類を弱水流で洗う運転コースであり、毛布コースは、毛布を洗うのに適した運転コースである。
【0040】
運転コースによっても振動状況が変わるが、この第4の実施形態によれば、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、運転コースに応じて変更するようにしているから、運転コースに応じて振動状況を良好に検知できる。
【0041】
図11ないし図13は本発明の第5の実施形態においては、この第5の実施形態においては、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、外気温度に応じて変更するようにしている。すなわち、図11に示すように外気を導入するためのダクト30の内側に外気温度センサ30bを設け、この外気温度センサ30bにより検知した外気温度に応じて、レンジ切替回転速度を設定する(図12のステップW1)。この設定の内容を図13に示している。外気温度が10℃未満であるときには前記レンジ切替回転速度を例えば480rpmに、10℃以上〜25℃未満のときには460rpmに、又25℃以上のときには450rpmに変更するようにしている。
【0042】
洗濯機では樹脂やゴムなど、温度特性を有する部品を多く使用しているから、外気温度により共振周波数や振動振幅が異なってくる。温度が低いと、共振周波数は高く振動振幅は小さくなり、温度が高くなると、共振周波数は低くなる。この点を考慮した第5の実施形態によれば、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、外気温度に応じて変更(外気温度が高いほどレンジ切替回転速度を低く設定)するようにしているから、外気温度に合った検知レンジ切り替えポイント(レンジ切替回転速度)で検知レンジの切り替え(分解能の変更)を行うことができ、使用環境に適した正確な振動状況の検知を行うことができる。
【0043】
本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、次のように変更して実施しても良い。
[1]前記回転槽3の脱水回転時において、回転槽3の回転速度の上昇にリニアに対応して前記加速度センサ28、29の検知レンジを順次高くするように切り替えるようにしても良い。
【0044】
[2]前記第1の実施形態で説明したように、アンバランス回転検知でアンバランス修正をするべく前記回転槽3の回転速度を低下(50rpmまで低下)させるが、当該低下させた際に、前記加速度センサ28、29の検知レンジを下げることで分解能を高めるようにしても良い。このようにすれば、アンバランス回転修正時での振動状況をさらに精度良く検知できる。
【0045】
[3]又、加速度センサ28、29は一つでも良い。又、レンジ切替回転速度も上記各実施形態に限定されるものではない。
[4]前記各実施形態においては、本発明を、ほぼ横軸方のドラム式洗濯機に適用して説明したが、本発明は、縦型の脱水兼用洗濯機にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1は外箱、2は水槽、3は回転槽、28、29は加速度センサ(振動検知手段)、31は制御装置を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転槽を内設した水槽の振動を検知する振動検知手段を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ドラム式洗濯機では、回転槽(ドラム)を高速回転させることにより、回転槽内に収容された洗濯物の脱水が行われる。この脱水の際、回転槽内の洗濯物が偏って分布していると、これがアンバランス荷重となって回転槽が振れ回り(アンバランス回転)、水槽を振動させたり、騒音を発生させたりする。そこで、従来では、水槽の振動を振動センサにより検知し、この検知結果に応じて、アンバランス回転などを検知し、アンバランス修正処理などの適正な制御処理を行うようにしている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3865791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、脱水運転時などに回転槽が回転する場合、回転開始から高速側の所定回転速度に至るまで、円滑に回転速度が立ち上がって推移していく場合もあるが、あらゆる回転速度域で振動度合いが種々変化する場合もある。すなわち、脱水回転速度が低い領域(周波数1〜6Hz)では、複数の振動モードの共振点を通過するため、共振時に水槽の振動量は大きくなる。又、逆に共振点を過ぎた脱水回転速度では、振動量が小さくなる。実際に検出する水槽の加速度は、脱水回転速度の低速側では、大きな振動量、低い周波数であるため、実際の加速度は小さい。逆に脱水回転速度の高速側では、小さな振幅、高い周波数であるため、実際の加速度は大きくなる。そのため、振動センサの感度レンジが固定である従来では、低速側及び高速側を両立して、発生する加速度に適した分解能で加速度を検出することができない。
【0005】
そのため、回転槽のアンバランス回転を検出する方式として、駆動モータのトルク変動と振動センサとの組み合わせにより、回転槽のアンバランス回転を検知する方式もあるが、構成が複雑となってしまう。又、乾燥時間の短縮化(省エネ)を図るために脱水回転速度のさらなる高速化(脱水率の向上)が必須条件となっており、この場合、脱水高速側での正確なアンバランス回転検知が重要になってきている。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で、回転槽の脱水回転における振動状況を低速域から高速域にかけて検知することができる洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外箱内に弾性支持手段を介して弾性支持された水槽と、この水槽内に回転可能に配設され駆動手段により回転される洗濯兼脱水用の回転槽と、前記水槽に設けられ該水槽の振動度合いを検知する振動検知手段とを備え、前記振動検知手段は、検知レンジの切り替えにより分解能の変更が可能であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動検知手段の検知レンジを切り替えることができるから、例えば脱水回転時の低速域や高速域に応じた検知レンジの変更により分解能の変更が可能で、回転槽の脱水回転における振動状況を、簡単な構成で、低速域から高速域のすべての領域あるいは任意の速度域において良好に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、ドラム式洗濯機の縦断側面図
【図2】電気的構成を示すブロック図
【図3】(a)は前側の加速度センサの振動振幅の変化状況の一例を示す図、(b)は後側の加速度センサの振動振幅の変化状況の一例を示す図
【図4】(a)は前側の加速度センサが検知する加速度の変化状況の一例を示す図、(b)は後側の加速度センサが検知する加速度の変化状況の一例を示す図
【図5】検知レンジ設定の制御内容を示すフローチャート
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図5相当図
【図7】本発明の第3の実施形態を示す図5相当図
【図8】洗濯物重量と設定レンジ切替回転速度との関係を示す図
【図9】本発明の第4の実施形態を示す図5相当図
【図10】運転コースと設定レンジ切替回転速度との関係を示す図
【図11】本発明の第5の実施形態を示す図1相当図
【図12】図5相当図
【図13】外気温度と設定レンジ切替回転速度との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をドラム式洗濯乾燥機に適用した第1の実施形態につき、図1〜図5を参照しながら説明する。図1はドラム式洗濯乾燥機の全体構成を示している。この図1のように、外箱1の底部を構成する台板1aの下面の四隅には、ゴム脚1bが取り付けられている。また、外箱1内には、水槽2が配設され、水槽2内に回転槽(ドラム)3が配設されている。これら水槽2および回転槽3は同心状をなし、槽体4を構成している。この槽体4は、回転槽3の回転中心軸線C方向が前後方向となる横軸状で、且つ前上がりの傾斜状である。
【0011】
外箱1の台板1a上には、弾性支持手段たる左右一対の防振ダンパ5が配設され、前記水槽2がこの左右一対の防振ダンパ5によって弾性的に支持されている。また、水槽2は、その上部において、弾性部材としての引張りコイルばね6によって外箱1の天板1cに補助的に弾性支持されている。
【0012】
上記水槽2および回転槽3は、共に前面部を開放した円筒状をなしている。このうち、水槽2の前面開放部分と外箱1の前面部に形成された洗濯物の出入口9との間は、ベローズ10によって連結されている。そして、外箱1には、出入口9を開閉する扉11が設けられている。出入口9から投入される洗濯物が収容される回転槽3は、洗濯、脱水および乾燥槽として兼用される。
【0013】
前記外箱1の上部内側には、給水弁12に連結された給水ケース13が配設されている。上記給水弁12は、水道の蛇口にホースを介して接続され、洗濯時に水道水を給水ケース13内の洗剤投入室(図示せず)を通じて水槽2内に供給し、すすぎ時には水道水を仕上げ剤室を通じて水槽2内に供給するように構成されている。水槽2内に供給された水は、回転槽3の周側部および後面部に形成された多数の小孔3aを通じて回転槽3内に供給される。
【0014】
水槽2の底部には、排水口14が形成されており、この排水口14には、排水弁15が接続され、更に、この排水弁15に排水ホース16が接続されている。そして、洗濯終了時および脱水時には、洗濯水および洗濯物から脱水された水が排水口14から排水弁15および排水ホース16を介して外部に排出される。
【0015】
また、水槽2の後端面の外側には、洗濯機モータ17が取り付けられている。この洗濯機モータ17は、三相のブラシレスDCモータから構成され、その回転軸17aは、回転槽3に連結されている。この洗濯機モータ17は、PWM方式によって回転速度の制御がなされ、洗濯時および乾燥時には回転槽3を比較的低速度で回転駆動し、脱水時には回転槽3を高速度で回転駆動する。
【0016】
水槽2の前部上側には、温風出口18が形成され、後端面上部には、温風入口19が形成されている。そして、これら温風出口18と温風入口19との間が、通風路20によって接続されている。通風路20は、前後両端部に蛇腹管21,22を有し、この蛇腹管21,22を夫々温風出口18側と温風入口19側とに接続することにより、水槽2と通風路20との間での振動伝達の減少化を図っている。
【0017】
この通風路20のうち、後部には、循環用送風機23が配設されている。この循環用送風機23は、乾燥運転時に起動され、水槽2(回転槽3)内の空気を、温風出口18から通風路20内に吸入し、そして、通風路20内を外箱1の前方側から後方側へと流通させて温風入口19から水槽2(回転槽3)内に戻すというように循環させる。
【0018】
また、通風路20内には、上流側である前側に位置して蒸発器24、下流側である後側に位置して凝縮器25が配設されている。これら蒸発器24および凝縮器25は、通風路20内を流通する空気と熱交換する。これら蒸発器24および凝縮器25は、台板1aに配設された圧縮機26と共にヒートポンプ27を構成している。このヒートポンプ27は、乾燥運転時に起動され、通風路20内に吸入された空気を蒸発器24によって除湿した後、凝縮器25により加熱して水槽2内に戻す。これにより、回転槽3内の洗濯物の乾燥が行われる。
【0019】
さて、水槽2には、これに発生する振動を検出するために、振動検知手段として、例えば2つの加速度センサ28,29が設けられている。これら加速度センサ28,29は、水槽2の外周部であって、回転中心軸線C方向に前後に隔てて配設されている。
また、外箱1の前面下部には、外気を導入するためのダクト30が配設されており、このダクト30の内部には、外気取り入れファン30aが配設されている。なお、この外気取り入れファン30aは例えば外箱1内の湿気を外部に出すために使用される。
【0020】
上記加速度センサ28、29は、3次元方向の振動を検出できるようになっており、その振動検出構成は、錘を配設した支持部と、この支持部の撓み変形時の歪を抵抗値変化によって検出するピエゾ抵抗素子とを備えており、検出軸X,Y,Z方向の加速度が錘に加わることによるピエゾ抵抗素子の抵抗値変化に基づいて各検出軸方向の加速度の大きさを検出するものである。
【0021】
図2には、洗濯乾燥機の制御装置31が示されている。この制御装置31は、マイクロコンピュータを主体とするもので、洗濯乾燥機の動作全般を制御する制御手段として機能するようになっている。この制御装置31には、図示しない操作パネルに設けられた各種のキースイッチからなる操作入力部32より各種操作信号、水槽2内の水位を検出するように設けられた水位センサ33からの水位検知信号、洗濯機モータ17の回転速度を検出するように設けられた回転速度検出部(回転速度検出手段)34からの回転速度検出信号、水槽用前後両加速度センサ28,29からの振動検知信号などが入力されるようになっている。なお、制御装置31は、外箱1内の上部前側に設けられている(図1参照)。
そして、制御装置31は、上記各種の入力信号および予め記憶された制御プログラムに基づいて、前記給水弁12、排水弁15、洗濯機モータ17、循環用送風機23、圧縮機26を駆動回路35を介して制御し、洗濯乾燥運転を実行すると共に、駆動回路35を介して報知手段としての表示器36およびブザー37を制御する。
【0022】
ところで、周知のように、洗濯運転において、洗剤洗い運転後およびすすぎ洗い運転後には、回転槽3を高速回転させる脱水運転が行われる。
この脱水運転時では、通常(アンバランス回転がないとすれば)、回転槽3を最終回転速度まで順次立ち上げ、該最終回転速度に達したときにはこの最終回転速度を所定時間継続した時点で該脱水運転を終了する。上記最終回転速度は例えば1300rpmとしている。この脱水運転時においては、例えば上記アンバランス回転の有無を検出するために、前記加速度センサ28、29により水槽2の振動度合いを検知する。
【0023】
ここで、上記の水槽2の振幅(振動度合い)は、各加速度センサ28〜30の検出加速度により求めるが、実際に各加速度センサ28、29が検出する物理量は、加速度であるので、制御装置31は、この加速度センサ28、29の検出加速度と、そのとき回転速度検出部34により検出された洗濯機モータ17の回転速度に基づいて振幅を演算する。この演算式は式(1)で示す。aは加速度[G]、Xは振幅[mm]、fはモータ回転速度[rpm]であり、Xを求めることになる。
【0024】
【数1】
なお、以下では、加速度センサ28、29が直接振動振幅を検出するかのように説明する。また、本実施形態では、回転槽3を洗濯機モータ17の回転軸17aに直結しているので、回転速度検出部34により検出した回転速度がそのまま回転槽3の回転速度となる。
【0025】
この加速度センサ28、29は、例えば−6G〜+6Gの加速度に対応した出力電圧を出力する。前記制御装置31には例えば128ビットの分解能を備えたA/D変換器を備えており、このA/D変換器はその出力電圧のうち加速度−2G〜+2Gに対応した出力電圧幅を128ビットの分解能でA/D変換する場合つまり検知レンジを加速度−2G〜+2Gとする場合(分解能が前記検知レンジを後述の加速度−6G〜+6Gとする場合より高い)と、−6G〜+6Gに対応した出力電圧幅を128ビットの分解能で変換する場合つまり検知レンジを加速度−6G〜+6Gとする場合(分解能が前記検知レンジを加速度−2G〜+2Gとする場合より低い)とを切り替え可能である。なお、上記ビット数は128に限定されるものではない。
【0026】
ここで、図3(a)には脱水運転時における水槽2の前側部分の振動振幅の変化状況の一例を示し、(b)には脱水運転時における水槽2の後側部分の振動振幅の変化状況の一例を示している。この図3から分かるように、低速域では振動振幅は大きく、変動度合いも大きい。高速域では振動振幅は小さく、変動度合いも小さい。また、図4(a)には、脱水運転時における前側の加速度28の検知加速度の変化状況の一例を示し、(b)には、後側の加速度29の検知加速度の変化状況の一例を示している。この図4から分かるように、おおまかには、低速域では加速度は小さく、高速になるにつれ加速度は大きくなる。
【0027】
ここで、前記制御装置31は脱水運転時には、常時、加速度センサ28、29によりアンバランス回転を検知しており、いずれかの加速度センサ28、29の出力に基づいてアンバランス回転が検知されると、アンバランス修正動作を実行するようにしている。このアンバランス修正動作は、例えば回転槽3を内周面に洗濯物が張り付く限界未満の例えば50[rpm]の低速で正反転させる内容であり、あるいは回転槽3の回転速度を同じく例えば50[rpm]に落として一方向に回転させる内容であって、それらにより、回転槽3の内周面から洗濯物が落ち、アンバランスの修正がなされる。この後、アンバランスが良好に修正されると、回転槽3を高速回転させる。なお、このアンバランス修正運転が所定回数実行されても、アンバランスの修正がなされないときには、洗濯機モータ17を断電して、ブザー37、あるいは表示器36により報知する。
【0028】
さて、制御装置31は上述した脱水運転時において、短い時間周期で、検知レンジ設定制御を実行しており、その制御内容を図5に示す。この図5のフローチャートにおいて、加速度センサ28、29のいずれかも、検知加速度が1.8G以上でなければ(ステップS1で判断)、加速度センサ28、29の検知レンジを−2G〜+2Gとする(ステップS2)。つまり、制御装置31が有するA/D変換器で−2G〜+2G相当の出力電圧を128ビットの分解能でA/D変換する(加速度センサ28、29の−2G〜+2Gのレンジでの分解能を高くする)。これにより、検知加速度が低く小さく変動する低速域での振動度合いを良好に検知でき、アンバランス回転検知精度を高めることができる。
【0029】
前記ステップS2で加速度センサ28、29のいずれかが検知加速度が1.8G以上であれば、ステップS3に移行して、検知レンジを−6G〜+6Gに切り替える(ステップS3)。つまり、制御装置31が有するA/D変換器で−6G〜+6G相当の出力電圧を128ビットの分解能でA/D変換する(加速度センサ28、29の−6G〜+6Gのレンジでの分解能を低くする)。これにより、検知加速度が大きく変動度が少ない高速域も、十分に振動度合いを良好に検知できる。
【0030】
このように本実施形態によれば、加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えることで分解能を変更することができるから、例えば脱水回転時の低速域や高速域に応じた検知レンジの変更により分解能の変更が可能で、回転槽3の脱水回転における水槽2の振動状況を、簡単な構成で、低速域から高速域のすべての領域あるいは任意の速度域において良好に検知することができる。
【0031】
特に、本実施形態によれば、前記回転槽3の脱水回転時において、回転槽3の回転速度の上昇に応じて前記加速度センサ28、29の検知レンジを高くするように切り替えるから、低速域での加速度センサ28、29の出力の微小変化を高い分解能により精度良く検出できると共に、高速域での出力変化も広いレンジ(分解能としては低くなるが)で良好に検出することができる。
【0032】
特に、本実施形態によれば、検知加速度に低い領域において分解能を高めるように検知レンジを切り替えるから、アンバランス回転検知精度を高めることができる。
又、本実施形態によれば、加速度センサ28、29で直接検知する物理量である検知加速度に基づいて検知レンジを切り替えるから、切り替えポイントの設定が容易である。
【0033】
次に図6は本発明の第2の実施形態を示しており、この実施形態においては、加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えるための回転速度(以下、レンジ切替回転速度という)を例えば450rpmに設定しており、回転槽3の脱水回転速度がこの設定レンジ切替回転速度450rpm未満であれば(ステップT1の「NO」)、加速度センサ28、29の検知レンジを−2G〜+2Gとし(ステップT2)、450rpm以上であれば、該検知レンジを−6G〜+6Gに切り替える(ステップT3)。
【0034】
この第2の実施形態によれば、回転槽3の回転速度が予め設定されたレンジ切替回転速度に到達したら加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えるから、アンバランス回転(異常振動振幅)の判断要素である回転槽3の回転速度をもって加速度センサ28、29の検知レンジを切り替えることができて、低速域及び中高速域でアンバランス回転を良好に検知できる。
【0035】
特にこの実施形態によれば、低速域での検知レンジの分解能を相対的に大きくするから、アンバランス回転が発生しがちな低速域でのアンバランス回転検知精度を高めることができる。
【0036】
又、この実施形態では、回転槽3の回転速度が上昇するときも下降するときも同じ設定レンジ切替回転速度を境に加速度センサ28、29の検出レンジを切り替えるから、回転槽3の回転上昇時においても下降時においても、同じ速度域で同じ検知レンジとすることで同じ分解能とすることができ、回転槽3の回転速度が変動することがあっても良好に水槽2の振動状況を検知することができる。
【0037】
図7及び図8は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態では、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、洗濯物重量に応じて変更するようにしている。すなわち、この第3の実施形態においては、洗剤洗い運転開始前などにおいて、洗濯機モータ17を所定駆動モードに駆動し当該洗濯機モータ17の回転速度状況により洗濯物重量を検知するにしており、この洗濯物重量検知結果に応じてレンジ切替回転速度を変更する(ステップU1)。この変更内容を図8に示す。3kg未満のときには、前記レンジ切替回転速度を例えば480rpmに、3kg以上〜6kg未満のときには460rpmに、又6kg以上のときには450rpmに変更するようにしている。
【0038】
洗濯物重量により振動系の質量が変わるため、洗濯物重量が重くなると、共振周波数は低く振動振幅も小さくなり、洗濯物重量が軽くなると、共振周波数は高くなり、振動振幅も大きくなる。この点を考慮したこの第3の実施形態によれば、洗濯物重量に合わせて検知レンジを切り替えるから、洗濯物重量に応じた振動状況を良好に検知できる。
【0039】
図9及び図10は本発明の第4の実施形態を示しており、この第4の実施形態においては、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、運転コースに応じて変更するようにしている(図9のステップV1)。すなわち、この運転コースが、図10に示すように、標準コースのときには、前記第3の実施形態と同様に洗濯物重量に応じて設定されたレンジ切替回転速度とし、ドライコースのときにはレンジ切替回転速度を例えば480rpmとし、毛布コースのときにはレンジ切替回転速度を450rpmに変更するようにしている。なお、上記標準コースは、洗濯物重量に応じて最適な洗濯を行う運転コースであり、ドライコースは、デリケートな衣類を弱水流で洗う運転コースであり、毛布コースは、毛布を洗うのに適した運転コースである。
【0040】
運転コースによっても振動状況が変わるが、この第4の実施形態によれば、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、運転コースに応じて変更するようにしているから、運転コースに応じて振動状況を良好に検知できる。
【0041】
図11ないし図13は本発明の第5の実施形態においては、この第5の実施形態においては、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、外気温度に応じて変更するようにしている。すなわち、図11に示すように外気を導入するためのダクト30の内側に外気温度センサ30bを設け、この外気温度センサ30bにより検知した外気温度に応じて、レンジ切替回転速度を設定する(図12のステップW1)。この設定の内容を図13に示している。外気温度が10℃未満であるときには前記レンジ切替回転速度を例えば480rpmに、10℃以上〜25℃未満のときには460rpmに、又25℃以上のときには450rpmに変更するようにしている。
【0042】
洗濯機では樹脂やゴムなど、温度特性を有する部品を多く使用しているから、外気温度により共振周波数や振動振幅が異なってくる。温度が低いと、共振周波数は高く振動振幅は小さくなり、温度が高くなると、共振周波数は低くなる。この点を考慮した第5の実施形態によれば、加速度センサ28、29のレンジ切替回転速度を、外気温度に応じて変更(外気温度が高いほどレンジ切替回転速度を低く設定)するようにしているから、外気温度に合った検知レンジ切り替えポイント(レンジ切替回転速度)で検知レンジの切り替え(分解能の変更)を行うことができ、使用環境に適した正確な振動状況の検知を行うことができる。
【0043】
本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、次のように変更して実施しても良い。
[1]前記回転槽3の脱水回転時において、回転槽3の回転速度の上昇にリニアに対応して前記加速度センサ28、29の検知レンジを順次高くするように切り替えるようにしても良い。
【0044】
[2]前記第1の実施形態で説明したように、アンバランス回転検知でアンバランス修正をするべく前記回転槽3の回転速度を低下(50rpmまで低下)させるが、当該低下させた際に、前記加速度センサ28、29の検知レンジを下げることで分解能を高めるようにしても良い。このようにすれば、アンバランス回転修正時での振動状況をさらに精度良く検知できる。
【0045】
[3]又、加速度センサ28、29は一つでも良い。又、レンジ切替回転速度も上記各実施形態に限定されるものではない。
[4]前記各実施形態においては、本発明を、ほぼ横軸方のドラム式洗濯機に適用して説明したが、本発明は、縦型の脱水兼用洗濯機にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1は外箱、2は水槽、3は回転槽、28、29は加速度センサ(振動検知手段)、31は制御装置を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱内に弾性支持手段を介して弾性支持された水槽と、
この水槽内に回転可能に配設され駆動手段により回転される洗濯兼脱水用の回転槽と、
前記水槽に設けられ該水槽の振動度合いを検知する振動検知手段とを備え、
前記振動検知手段は、検知レンジの切り替えにより分解能の変更が可能であることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記回転槽の脱水回転時において、前記回転槽の回転速度の上昇に応じて前記振動検知手段の検知レンジを高くすることで分解能を低めるように切り替えることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
アンバランス検知でアンバランス修正をするべく前記回転槽の回転速度を低下させた際に、前記振動検知手段の検知レンジを下げ分解能を高めることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記回転槽の脱水回転時において、前記振動検知手段の検知レンジの切り替えを行うためのレンジ切替回転速度の設定が可能で、前記回転槽の回転速度が予め設定されたレンジ切替回転速度に到達したら前記振動検知手段の検知レンジを切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記回転槽の脱水回転時において、前記回転槽の回転速度が上昇するときも下降するときも同じレンジ切替回転速度を境に前記振動検知手段の検出レンジを切り替えることを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記レンジ切替回転速度を、洗濯物重量に応じて変更することを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記レンジ切替回転速度を、運転コースに応じて変更することを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記レンジ切替回転速度を、外気温度に応じて変更することを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項1】
外箱内に弾性支持手段を介して弾性支持された水槽と、
この水槽内に回転可能に配設され駆動手段により回転される洗濯兼脱水用の回転槽と、
前記水槽に設けられ該水槽の振動度合いを検知する振動検知手段とを備え、
前記振動検知手段は、検知レンジの切り替えにより分解能の変更が可能であることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記回転槽の脱水回転時において、前記回転槽の回転速度の上昇に応じて前記振動検知手段の検知レンジを高くすることで分解能を低めるように切り替えることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
アンバランス検知でアンバランス修正をするべく前記回転槽の回転速度を低下させた際に、前記振動検知手段の検知レンジを下げ分解能を高めることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記回転槽の脱水回転時において、前記振動検知手段の検知レンジの切り替えを行うためのレンジ切替回転速度の設定が可能で、前記回転槽の回転速度が予め設定されたレンジ切替回転速度に到達したら前記振動検知手段の検知レンジを切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記回転槽の脱水回転時において、前記回転槽の回転速度が上昇するときも下降するときも同じレンジ切替回転速度を境に前記振動検知手段の検出レンジを切り替えることを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記レンジ切替回転速度を、洗濯物重量に応じて変更することを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記レンジ切替回転速度を、運転コースに応じて変更することを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記レンジ切替回転速度を、外気温度に応じて変更することを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−227342(P2010−227342A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79159(P2009−79159)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
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