説明

洗濯機

【課題】外槽に電解水が供給された状態でドラムの回転数を高速回転と通常回転で行うことで、洗濯物と槽の両者の除菌を実現する洗濯機を提供すること。
【解決手段】筐体1の内部に配設された外槽2と、外槽2の内側に水平方向または水平方向から傾斜した回転軸によって回転可能な状態で配設されたドラム3と、次亜塩素酸を含有する電解水を生成する電解槽9と、電解水を外槽2の内部に供給する電解水給水手段と、ドラム3を回転駆動するモータ4(駆動手段)とを設け、モータ4によりドラム3を高速で回転させることで電解水を遠心力によって外槽2の内側面に当てる高速回転工程と、ドラム3を通常回転させる通常回転工程とを有し、電解水を含有する洗濯水が外槽2に所定量供給された状態で最初に行う工程を、高速回転工程と通常回転工程とで、洗濯工程毎に交互に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌作用を有する電解水を用いて洗濯物と洗濯槽の両者の除菌を実現する洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、次亜塩素酸を含有する電解水を用いた洗濯機は、ドラム(水槽)と水受槽(外槽)の間に電解水を給水し、ドラムを通常洗濯時と同様の回転数で回転させることで洗濯物と電解水を接触させ、次亜塩素酸の除菌作用によって洗濯物を除菌する方法が考えられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−170392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記の洗濯機の構成では、洗い工程またはすすぎ工程の開始時のドラムの通常回転速度(約30から60rpm)での撹拌では、ドラム内の洗濯物に優先的に接触するため、電解水が外槽の内側面の全体に当たることが無い。よって、外槽全体が除菌されることがなく、その結果、水受槽にカビや菌が発生し、水受槽から悪臭が発生するなどの衛生上の課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、外槽に電解水が供給された状態でドラムの回転数を高速回転と通常回転で行うことで、洗濯物と槽の両者の除菌を実現する洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の洗濯機は、筐体の内部に配設された外槽と、前記外槽の内側に水平方向または水平方向から傾斜した回転軸によって回転可能な状態で配設されたドラムと、次亜塩素酸を含有する電解水を生成する電解槽と、前記電解水を前記外槽2の内部に供給する電解水給水手段と、前記ドラムを回転駆動する駆動手段とを設け、前記駆動手段により前記ドラムを高速で回転させることで電解水を遠心力によって前記外槽の内側面に当てる高速回転工程と、前記ドラムを通常回転させる通常回転工程とを有し、電解水を含有する洗濯水が外槽に所定量供給された状態で最初に行う工程を、前記高速回転工程と前記通常回転工程とで、洗濯工程毎に交互に行うことを特徴とする。
【0007】
これによって、高速回転工程中に電解水を含有する洗濯水は遠心力によって外槽の内側へ当たることとなるので、外槽の内側が除菌されることとなる。また、通常回転工程中は電解水を含有する洗濯水により洗濯物が洗濯水中で撹拌されることで洗濯物が除菌されることとなるので、電解水を含有する洗濯水による外槽の内側と洗濯物の両者の除菌が実現する。また、電解水を含有する洗濯水が外槽に所定量供給された状態で最初に行う工程を、高速回転工程と通常回転工程とを洗濯工程毎に交互に行うことによって、電解水に含有される次亜塩素酸が最初に接触して除菌作用を及ぼす対象が、洗濯工程毎に槽と洗濯物で交互に入れ替わるので、例えば通常回転工程の後に高速回転工程を行った場合に、通常回転工程で洗濯物を除菌することにより次亜塩素酸の除菌能力が弱まり、その後の高速回転工程で外槽の内側の除菌が十分に行われなかったとしても、次の洗濯工程時には高速回転工程が最初に行われるので、その時には外槽の内側が十分に除菌されることとなる。つま
り、外槽の内側の除菌を優先的に行う高速回転工程と、洗濯物の除菌を優先的に行う通常回転工程とを、洗濯工程毎に交互に最初に行うことによって、繰り返し洗濯時にも洗濯物と外槽の内側との両者の除菌が実現する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗濯機は、外槽の内側の除菌を優先的に行う高速回転工程と、洗濯物の除菌を優先的に行う通常回転工程の順序を洗濯工程毎に交互に変えるので、繰返し洗濯時に外槽の内側と洗濯物の両者の除菌が実現することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電解槽の構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の概略構成図である。
【0012】
図1において、洗濯機の筐体1の内部に外槽2が配設され、外槽2の内側に洗濯槽としてのドラム3が水平方向または水平方向から少し傾斜した回転軸によって回転可能な状態で配設されている。ドラム3は背面にモータ4が接続されてモータ4の回転によりドラム3が回転するようになっている。また、ドラム3は外周面に複数の通水孔が設けられており、洗濯槽の他に脱水槽や乾燥槽としても機能するものである。
【0013】
筐体1の上面には水道水給水口5を設け、その下流側に洗剤給水弁6と柔軟剤給水弁7と電解槽給水弁8を設ける。
【0014】
水道水給水口5から給水された水道水は、洗剤給水弁6の開栓によって筐体1の内部手前側に設けた洗剤ケース11内に投入された洗剤を外槽2の内部に流し込む構成となっている。
【0015】
また、水道水給水口5から給水された水道水は、柔軟剤給水弁7の開栓によって筐体1の内部手前側に洗剤ケース11と並設した柔軟剤ケース12内に投入された柔軟剤を外槽2の内部に流し込む構成となっている。
【0016】
筐体1の内部には電解水を生成する電解槽9を設け、電解槽給水弁8の開栓によって水道水給水口5から給水された水道水は電解槽9の内部に給水される。また電解槽9で生成された電解水は電解水注水弁10の開栓によって外槽2の内部に注水される構成となっている。
【0017】
図2は本発明の実施の形態1における電解槽の構成図である。
【0018】
図2において、電解槽9は電解槽給水弁8から給水された水道水を挟んで対向するよう陽極14と陰極15を設け、図示しない電源装置によって陽極14と陰極15間に所定の直流電圧を印加して電解水を生成する。生成した電解水は、電解水注水弁10の開栓によって外槽2の内部に注水される構成になっている。なお空気開放口16を設けることで電解槽9内への給水時に発生する内圧が開放されると共に、電気分解時に発生する水素ガスは電解槽9の外部へ排出されることとなる。
【0019】
次に、本実施の形態の洗濯機の動作について説明する。
【0020】
洗濯工程は洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の順序で図示しない制御装置によって行われる。
【0021】
洗い工程では、使用者が洗濯物をドラム3内に投入し洗剤を洗剤ケース11に投入後、図示しない水位検知手段によって所定水位と検知されるまで洗剤給水弁6が開栓となり水道水が外槽2の内部に注水される。
【0022】
水道水が外槽2の内部に注水された後、ドラム3がモータ4によって回転することでドラム3内の衣類は洗い水の中で撹拌され洗浄される。
【0023】
また、水道水が外槽2の内部に注水された後、電解槽給水弁8が所定時間開栓し、電解槽9の内部に水道水が陽極14と陰極15を覆うまで給水される。その後、図示しない電源装置によって陽極14と陰極15間に直流電圧が印加され電解水が生成される。なお直流電圧の印加による電解水の生成は以下で述べる最終すすぎ工程の開始時まで行われる。
【0024】
所定時間のドラム3による衣類の撹拌の後、外槽2の底部に設けた排水口13から洗い水は排水され、その後、ドラム3が高速で回転して衣類は脱水される。
【0025】
すすぎ工程は、上記の洗い工程と同様に給水、撹拌、脱水の動作が複数回(通常2回または3回)繰り返して行われ、その繰り返される最終の動作を特に最終すすぎ工程と呼ぶ。動作の繰返しが1回のみの場合は、それが最終すすぎ工程となる。また最終すすぎ工程の脱水動作は脱水工程となる。
【0026】
最終すすぎ工程では、水道水の給水時に柔軟剤給水弁7が開栓すると共に電解水注水弁10も開栓となり、外槽2の内部のすすぎ水は柔軟剤と電解水の両者を含有することになる。また、最終すすぎ工程以外の繰返し動作時には、水道水の給水は洗剤給水弁6が開栓することで行われ、また電解水注水弁10は閉栓のままである。
【0027】
最終すすぎ工程で図示しない水位検知手段によりすすぎ水が所定の水位に達した時、柔軟剤給水弁7は閉栓して水道水の外槽2への給水は止まる。
【0028】
その後、ドラム3はモータ4によって回転数が約40rpmである通常回転、または回転数が約200rpmである高速回転のいずれかを行う。図示しない記憶装置により前回の洗濯工程時で最初に通常回転または高速回転のいずれを行ったのかが記憶されているので、仮に前回の洗濯工程時に最初に通常回転が行われれば高速回転の後に通常回転を動作し、また仮に前回の洗濯工程時に最初に高速回転が行われれば通常回転の後に高速回転を動作する。
【0029】
これによって、高速回転中に電解水を含有する洗濯水は遠心力によって外槽の内側へ当たることとなるので、外槽の内側が除菌されることとなり、また、通常回転中は電解水を含有する洗濯水により洗濯物が洗濯水中で撹拌されることで洗濯物が除菌されることとなるので、電解水を含有する洗濯水による外槽の内側と洗濯物の両者の除菌が実現し、また、電解水を含有する洗濯水が外槽に所定量供給された状態で最初に行う工程を、高速回転と通常回転とを洗濯工程毎に交互に行うことによって、電解水に含有される次亜塩素酸が最初に接触して除菌作用を及ぼす対象が、洗濯工程毎に槽と洗濯物で交互に入れ替わるので、例えば通常回転の後に高速回転を行った場合に、通常回転で洗濯物を除菌することにより次亜塩素酸の除菌能力が弱まり、その後の高速回転で外槽の内側の除菌が十分に行われなかったとしても、次の洗濯工程時には高速回転が最初に行われるので、その時には外
槽の内側が十分に除菌されることとなる。
【0030】
つまり、外槽の内側の除菌を優先的に行う高速回転と、洗濯物の除菌を優先的に行う通常回転とを、洗濯工程毎に交互に最初に行うことによって、繰り返し洗濯時にも洗濯物と外槽の内側との両者の除菌が実現する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明の洗濯機は、外槽の内側の除菌を優先的に行う工程と、洗濯物の除菌を優先的に行う工程とを、洗濯工程毎に交互に最初に行うことによって、繰り返し洗濯時にも洗濯物と外槽の内側との両者の除菌が実現するので、被洗浄物を内槽に入れて、内槽の水受け槽としてその外部に外槽を設ける洗浄装置一般の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 筐体
2 外槽
3 ドラム
4 モータ
5 水道水給水口
6 洗剤給水弁
7 柔軟剤給水弁
8 電解槽給水弁
9 電解槽
10 電解水注水弁
11 洗剤ケース
12 柔軟剤ケース
13 排水口
14 陽極
15 陰極
16 空気開放口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に配設された外槽と、
前記外槽の内側に水平方向または水平方向から傾斜した回転軸によって回転可能な状態で配設されたドラムと、
次亜塩素酸を含有する電解水を生成する電解槽と、
前記電解水を前記外槽2の内部に供給する電解水給水手段と、
前記ドラムを回転駆動する駆動手段とを設け、
前記駆動手段により前記ドラムを高速で回転させることで電解水を遠心力によって前記外槽の内側面に当てる高速回転工程と、前記ドラムを通常回転させる通常回転工程とを有し、電解水を含有する洗濯水が外槽に所定量供給された状態で最初に行う工程を、前記高速回転工程と前記通常回転工程とで、洗濯工程毎に交互に行うことを特徴とする洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−102920(P2013−102920A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248320(P2011−248320)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】