説明

洗濯機

【課題】洗濯槽内に導入されるオゾン又は活性種による除菌効率等を従来よりもさらに高め、オゾン又は活性種を生成するのに必要な消費電力を低減できるとともに、洗濯終了時にオゾンの分解待ちをしなくてもすぐに洗濯した衣類を取り出すことできる洗濯機を提供する。
【解決手段】所定距離離間させて設けられた一対の電極21、22と、各電極21、22に形成された流体流通孔21b、22bと、からなるプラズマ電極2を具備し、前記各電極21、22間で生成されたプラズマにより、前記流体流通孔21b、22bを通過する空気流にオゾン又は活性種を含有させる殺菌分解気体発生装置200と、前記流体流通孔21b、22bを通過した空気流を、洗濯槽1が脱水工程にある時に当該洗濯槽1内に供給するオゾン・活性種供給機構201と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン又はイオン、ラジカル等の活性種を洗濯槽内に導入することで除菌や消臭、有機物等の汚れの分解を行う洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から単に洗濯するだけでなく、オゾンやイオン、ラジカル等の活性種を洗濯槽内に導入することで洗濯されている衣類の除菌や消臭、有機物等の汚れの分解するための機能が付加された洗濯機がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、プラズマにより発生させた活性種であるOHラジカルを含んだ空気を洗濯槽内に導入することで、除菌、脱臭、有機物の汚れ分解を行う洗濯機が示されている。
【0004】
また、特許文献2にはオゾンによる除菌機構を備えた洗濯乾燥機が示されている。このものは、洗濯されている衣類に水分が含まれていない方がオゾンによる除菌効果が高いと考えているため、乾燥工程であり洗濯槽の回転数が所定の設定値よりも高い値の時にオゾンを洗濯槽内に導入する構成が示されている。
【0005】
しかしながら、本願発明者が鋭意検討を行ったところ、衣類の乾燥が進むほどオゾンの除菌効率は実際には低下する事が確認された。このことから、特許文献2ではオゾンを発生させるためのプラズマ装置をオンオフ制御することで、消費電力の低減を図ることも示されているが、そもそも除菌効率の悪い領域でオゾンを発生させているので、過剰にオゾンを発生させる必要があり総量として消費電力は多くなってしまっているものと考えられる。さらに、特許文献2の洗濯乾燥機では洗濯乾燥の最終工程でオゾンを導入しており、洗濯乾燥機の使用者の安全のために、オゾンが酸化反応により消滅するのを待つ待機時間を洗濯乾燥終了後に長く取っておく必要がある。このため、脱水工程や乾燥工程が終了した直後に洗濯機のふたを開けることができず、使用者に無駄な待ち時間が生じてしまっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−192901号公報
【特許文献2】特開2010−259916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、洗濯槽内に導入されるオゾン又は活性種による除菌効率や除菌効果を従来よりもさらに高め、オゾン又は活性種を生成するのに必要な消費電力を低減できるとともに、洗濯終了時にオゾンの分解待ちをしなくてもすぐに洗濯した衣類を取り出すことできる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、所定距離離間させて設けられた一対の電極と、各電極に形成された流体流通孔と、からなるプラズマ電極を具備し、前記各電極間で生成されたプラズマにより、前記流体流通孔を通過する空気流にオゾン又は活性種を含有させる殺菌分解気体発生装置と、前記流体流通孔を通過した空気流を、洗濯槽が脱水工程にある時に当該洗濯槽内に供給するオゾン・活性種供給機構と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記各電極に印加される電圧やパルス幅等のパラメータを適宜変更することにより、オゾンを優勢に発生させたり、活性種を優勢に発生させたりすることができる。従って、脱水工程においてオゾンの除菌効率が高い領域ではオゾンを優勢に発生させ、活性種の除菌効率が高い領域では活性種を優勢に発生させることで、脱水工程の全ての領域において除菌効率の高い運転を行うことができ、オゾン又は活性種を発生させるのに必要な消費電力を低減することができる。また、脱水工程終了時には、活性種の比率が高くなるようにして、オゾンがほとんど含まれないようにしておけば、酸化反応によりオゾンが消滅するまでの時間を劇的に短くすることができるので、従来必要であった工程終了後の待ち時間をほとんど取ることなく、すぐに洗濯機の蓋を開放することができるようになる。
【0010】
より具体的に、本発明の洗濯機による殺菌作用について説明すると、図11に示すように、脱水工程の初期にあり含水量が多い衣類には、オゾンは繊維間の水分に溶解・浸透して殺菌効果を発揮する。このオゾン水による殺菌効果は、主に衣類表面付近にいる菌に有効作用する、一方、活性種は水分に接触することで消滅してしまうため、水分が多い場合には殺菌作用がそれほど強くは発揮されない。これとは反対に、脱水され衣類中の水分量が減少してくるとオゾンよりも殺菌力の高い活性種が衣類内部にも作用できるので、繊維間に存在する菌を殺菌できる。このように本発明のように脱水工程のように衣類の水分量が大きく変化している時にオゾンと活性種を導入することによって、衣類の表面と内部の両方に殺菌作用を効果的に発揮させることができ、濡れた衣類の完全除菌が可能となる。
【0011】
言い換えると、従来のように脱水工程の終わった後の乾燥機による乾燥工程ではなく、本願発明のように衣類の水分量が変化する脱水工程において、オゾン又は活性種を導入するという構成は、本願発明者らが、オゾンは水に溶解することでオゾン水となり、気相オゾンに比べ数倍の除菌性能を有する一方、イオン、ラジカルなどの活性種は水分と接触することで消滅してしまうが、水分量が低下すると活性種は消滅せずに除菌性能を保持できることを実験結果から見出したことと、この実験結果から、衣類の含水量が多い場合にはオゾンを導入することでオゾン水を生成し、脱水により衣類の含水量が低下して乾燥すると活性種を導入して、衣類内部まで浸透、効率的な除菌を実施することができることを鋭意検討の結果見出したことにより初めて想到し得たのである。
【0012】
オゾン又は活性種の量を衣類の状態に合わせて変更し、除菌効率を高め、消費電力を低減するためには、前記殺菌分解気体発生装置が、少なくとも前記各電極に印加する電圧を変更することによって空気流に含有されるオゾンと活性種の量を制御するオゾン・活性種量制御部を更に備え、前記オゾン・活性種量制御部が、前記洗濯槽内の衣類に含まれる水分量に応じて、前記空気流に含まれるオゾンと活性種の比率を変更するように構成されたものであればよい。
【0013】
簡単な制御で、除菌効率を最適値にするとともに、脱水工程終了時にオゾンの酸化分解を待つ必要が無いような制御を行うための構成としては、前記オゾン・活性種量制御部が、前記洗濯槽内の衣類に含まれる水分量が所定量以上の場合は、空気流に含まれるオゾンの量が第1規定量以上であり、活性種の量が第2規定量以下となるオゾンモードで制御し、前記洗濯槽内の衣類に含まれる水分量が所定量より少ない場合は、空気流に含まれるオゾンの量が第1規定量以下であり、活性種の量が第2規定量以上となる活性種モードで制御するよう構成されたものであればよい。
【0014】
電圧値の制御により前記オゾンモード、前記活性種モードのそれぞれに変更する際の定義としては、前記各電極に印加される電圧値がある特定電圧値以下では活性種モード、前記各電極に印加する電圧値がある特定電圧値以上ではオゾンモードと構成されたものが挙げられる。
【0015】
前記オゾン・活性種量制御部が、前記各電極にパルス状の電圧を印加することによりオゾン・活性種の量を制御するように構成されており、そのパルス幅がある特定パルス幅以下では活性種モード、パルス幅がある特定パルス幅以上ではオゾンモード、と定義するものとする。
【0016】
前記オゾン・活性種量制御部が、衣類を通過する空気流の速度の変化を検知することによって空気流に含有されるオゾンと活性種の量を制御するように構成されており、その空気流の速度で前記オゾンモード、前記活性種モードのそれぞれに切り替えるための定義としては、衣類を通過する空気流の速度がある特定速度に到達するまではオゾンモード、衣類を通過する空気流の速度がある特定速度に到達後は活性種モードと切り替わる設定がなされているものが挙げられる。
【0017】
脱水工程における衣類の水分量を直接測定することなく、水分量に合わせてモードの切り替えを行えるようにするには、前記オゾン・活性種量制御部が、脱水工程における前記洗濯槽の回転数が所定回転数以下の場合には前記オゾンモードで制御し、前記洗濯槽の回転数が所定回転数よりも高回転の場合には前記活性種モードで制御するように構成されたものが挙げられる。
【0018】
除菌効率を高く保つとともに、安全等に配慮してオゾン又は活性種を発生させるために前記各電極に印加する電圧の具体例としては、前記オゾン・活性種量制御部により前記各電極に印加される電圧が、そのピーク値を100V以上5000V以下の範囲とするとともに、パルス幅を0.1μs以上300μs以下の範囲に設定されているものが挙げられる。
【0019】
前記オゾンモードによる除菌効率が高い領域での使用例であり、適正な量のオゾンを洗濯槽内に導入することができる具体的な設定値としては、前記オゾン・活性種量制御部が、脱水工程時の前記洗濯槽の回転数が回転を開始してから所定回転数である900rpmから2000rpmの間に達するまでは前記オゾンモードで制御するように構成されており、当該オゾンモードにおいて前記各電極に印加される電圧が1200V以上、かつ、パルス幅を100μs以上、300μs以下に設定されているものが挙げられる。
【0020】
前記活性種モードによる除菌効率が高い領域での使用例であり、適正な量のオゾンを洗濯槽内に導入することができる具体的な設定値としては、前記オゾン・活性種量制御部が、脱水工程時の前記洗濯槽の回転数が所定回転数である900rpmから2000rpmの間に達した後は前記活性種モードで制御するように構成されており、当該活性種モードにおいて前記各電極に印加される電圧が1200V以下、かつ、パルス幅を0.1μs以上、100μs以下に設定されているものが挙げられる。
【0021】
前記殺菌分解気体発生装置におけるオゾン又は活性種を発生させるためのプラズマを効率よく生成するには、前記各電極の対向する面のうち、少なくとも一方の面に誘電体が塗布されているものであればよい。
【0022】
各電極間に更に効率よくプラズマを発生させ、オゾン又は活性種の生成に要する消費電力を低減できるようにするには、前記誘電体の表面に0.1μm以上100μm以下の凹凸が形成されているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明の洗濯機によれば、プラズマにより生成されるオゾン又は活性種の発生量を適宜変更可能な殺菌分解気体発生装置を備えた洗濯機であるので、例えば脱水工程において、衣類の水分量の多い時には前記オゾンモードで運転し、衣類の水分量が少なくなり、脱水工程が終了する間近では前記活性種モードで運転することで、いずれの場合でも除菌効率を高く保ち消費電力を低減することが可能となる。さらに、脱水工程の終了近傍では前記活性種モードで運転することにより、完了間際における洗濯槽内の残留濃度を低くしておくことができ、安全のためオゾンが分解されるまで待機する時間を劇的に短くすることができ、すぐに蓋を開けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗濯機の構造を示す模式的縦断面図。
【図2】同実施形態における洗濯機の上面を示す模式図。
【図3】同実施形態における殺菌分解気体発生装置を示す模式的斜視図。
【図4】同実施形態における殺菌分解気体発生装置の全体構成を示す模式的構造図。
【図5】同実施形態におけるプラズマ電極の微細構造を示す模式図。
【図6】同実施形態におけるプラズマ電極の構造を示す模式的断面図。
【図7】同実施形態におけるオゾン・活性種量制御部の制御モード切替態様を示す模式的グラフ。
【図8】同実施形態における各電極に印加する電圧値を変化させた場合のオゾン・活性種の発生傾向と、モード切替定義を示すグラフ。
【図9】同実施形態における各電極に印加する電圧のパルス幅を変化させた場合のオゾン・活性種の発生傾向と、モード切替定義を示すグラフ。
【図10】別の実施形態における衣類を通過する空気流の風速を変化させた場合のオゾン・活性種の発生傾向を測定した実験データ。
【図11】別の実施形態における衣類に含有する水分量差によるオゾン・活性種での除菌メカニズム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すように本実施形態の洗濯機100は回転軸が垂直方向に向けられた洗濯槽1を有するものであり、少なくともオゾン又は活性種を含む空気流である殺菌分解気体を発生させるための殺菌分解気体発生装置200と、前記殺菌分解気体発生装置200で発生したオゾン又は活性種を前記洗濯槽1の上側から外側へと供給するためのオゾン・活性種供給機構と、を備えたものである。本実施形態では、オゾン・活性種供給機構は、前記殺菌分解気体発生装置200に取り付けられた吹出口201であり、前記洗濯槽1の回転を利用して当該洗濯槽1内に均一にオゾン又は活性種が散布されるように構成してある。
【0027】
前記殺菌分解気体発生装置200と前記吹出口201は、図1及び図2に示すように前記洗濯槽1の上側に設けてある。そして、図2に示すように上側から見た場合、前記吹出口201が前記洗濯槽1の上面側における円周部の接線方向に略沿って設けてあり、図1に示すようにその吹出し方向が斜め下方向に向くように設定してあり、内部に設けられたファン(図示しない)により斜め下方向にオゾン又は活性種を流すようにしてある。従って、図2の流線に示すように吹出口201から吹出されたオゾン又は活性種を含む空気流は、前記洗濯槽1が回転を利用して当該洗濯槽1の内側面に沿って上部から底面に向かって螺旋状を描きながら導入されていくことになる。このようにして、オゾン又は活性種を洗濯槽1内に収容されている衣類に対して均一に振り掛かかるようにしてある。
【0028】
前記殺菌分解気体発生装置200について詳述すると、図3及び図4に示すように、マイクロギャッププラズマ(Micro Gap Plasma)によりイオンやラジカル等の活性種を生成させるプラズマ電極部2と、当該プラズマ電極部2の外部に設けられて当該プラズマ電極部2に強制的に風(空気流)を送る送風機構3と、前記プラズマ電極2の外部に設けられてプラズマ電極2で生じる火炎が外部に伝播しないようにする防爆機構4、および電極部2に高電圧を印加するための電源5とを備えている。なお、送風機構3及び電源5は後述する制御装置により制御される。
【0029】
以下、殺菌分解気体発生装置200の各部について説明する。
【0030】
プラズマ電極2は、図4に示すように、対向面に誘電体膜21a、22aを設けた一対の平行平板である電極21、22を有し、それら電極21、22間に所定電圧が印加されてプラズマ放電するものである。各電極21、22は、特に図3に示すように、平面視において(電極21、22の面板方向から見たときに)概略矩形状をなすものであり、例えばSUS403といったステンレス鋼から形成されている。なお、電極部2の電極21、22の縁部には、電源5からの電圧が印加される印加端子2Tが形成されている(図4参照)。ここで電源5によるプラズマ電極部2への電圧印加方法は、各電極21、22に印加する電圧をパルス形状とし、そのピーク値を100V以上5000V以下の範囲内とし、且つパルス幅を0.1μs以上かつ300μs以下の範囲内としている。
【0031】
また、図5の対向面の拡大図に示すように、電極21、22の対向面には、例えばチタン酸バリウム等の誘電体が塗布されて誘電体膜21a、22aが形成されている。この誘電体膜21a、22aの表面粗さ(本実施形態では算出平均粗さRa)は0.1μm以上100μm以下である。この他表面粗さとしては、最大高さRy、十点平均粗さRzを用いて規定しても良い。このように誘電体膜21a、22aの平面粗さを上記範囲内の値にすることによって、各電極21、22を重ね合わせるだけで、対向面間に空隙が形成されて、当該空隙内にプラズマが発生することになる。これにより、各電極21、22間にプラズマ形成用の空隙を形成するためのスペーサを不要としている。なお、前記誘電体膜21a、22aの表面粗さは、溶射法などの薄膜形成方法によって制御することが考えられる。また、電極に塗布する誘電体としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化シリコン、燐酸銀、チタン酸ジルコン酸鉛、シリコンカーバイド、酸化インジウム、酸化カドミニウム、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0032】
さらに図6に示すように、各電極21、22の対応する箇所にそれぞれ流体流通孔21b、22bを設けてこれらが連通して貫通するように構成するとともに、電極21、22の面板方向から視たときに(平面視において)、対応する各流体貫通孔21b、22bの輪郭の少なくとも一部が互いに異なる位置となるように構成されている。つまり、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの平面視形状と、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの平面視形状とが互いに異なるように構成されている。
【0033】
具体的には、各電極21、22の対応する箇所にそれぞれ形成された流体流通孔21b、22bは、平面視において概略円形状をなすものであり(図3)、一方の電極21に形成された流体流通孔21bの開口サイズ(開口径)が、他方の電極22に形成された流体流通孔22bの開口サイズ(開口径)よりも小さく(例えば開口径が10μm以上小さく)形成されている。
【0034】
制御装置は、CPU、メモリ、I/Oチャネル、D/A、A/Dコンバータ等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記メモリに記憶させた制御プログラムにしたがってCPU及びその周辺機器が協働することにより、洗濯槽1の回転速度、衣類に含まれる水分量等に応じて殺菌分解気体発生装置200を制御するものであり、少なくともオゾン・活性種量制御部300としての機能を発揮するものである。
【0035】
本実施形態のオゾン・活性種量制御部300の構成について詳述する。
【0036】
前記オゾン・活性種量制御部300は、脱水工程において前記洗濯槽1内に導入されるオゾン又は活性種の比率を制御するものである。より具体的には、前記オゾン・活性種量制御部300は、図7に示すように脱水工程において衣類に含まれる水分量が多い場合、すなわち、脱水工程初期においては、活性種よりもオゾンの発生量が多くなり優勢となるオゾンモードで各部を制御するように構成してある。一方、前記オゾン・活性種量制御部300は、脱水工程において衣類に含まれる水分量が少ない場合、すなわち、脱水工程の後期においては、オゾンよりも活性種の発生量が多くなり優勢となる活性種モードで各部を制御するように構成してある。言い換えると、前記オゾン・活性種量制御部300は、前記洗濯槽1内の衣類に含まれる水分量が所定量以上の場合は、空気流に含まれるオゾンの量が第1規定量以上であり、活性種の量が第2規定量以下となるオゾンモードで制御し、前記洗濯槽1内の衣類に含まれる水分量が所定量より少ない場合には、空気流に含まれるオゾンの量が第1規定量より少なく、活性種の量が第2規定量以上となる活性種モードで制御するよう構成してある。ここで、前記第1規定量は、オゾンの除菌能力が実質的に発揮される濃度等の量に基づいて定められる値であり、前記第2規定量は活性種の除菌能力が実質的に発揮される濃度等の量に基づいて定められる値である。本実施形態での衣類に含まれる水分量は、乾いた状態の衣類の重量に対して含まれている水分重量の百分率である含水率を基準にして制御モードの切替点を設定してある。本実施形態の制御モード切替トリガーとしては、衣類の含水率が所定値以下となった場合、例えば含水率が20〜40%程度以下となったことをトリガーとしてオゾンモードから活性種モードへと切り替えるように前記オゾン・活性種量制御部300は構成してある。
【0037】
より具体的には、脱水工程における洗濯槽1の回転数が低回転領域にある場合には、オゾンモードで制御し、洗濯槽1の回転数が高回転領域にある場合には、活性種モードで制御するように前記オゾン・活性種量制御部300は構成してある。このように回転数に応じて制御モードを切り替えているのは、脱水工程において洗濯槽1の回転数と衣類に含まれている水分量との間にある負の相関関係があることを利用しているためである。つまり、図7に示すように前述したトリガーにしてある含水率20〜40%程度に相当する洗濯槽1の回転数である所定回転数である900rpmに到達した時点でオゾンモードから活性種モードへと制御が切り替えられる。このように構成してあるので、衣類の水分量や含水率を直接測定しなくても、洗濯槽1を回転させるモータから得られる物理量から除菌や汚れの分解に最適な比率でオゾン又は活性種を洗濯槽1内に導入することができる。
【0038】
次に前記オゾン・活性種量制御部300がオゾンモード及び活性種モードの切替をどのように行うかについて説明する。
【0039】
オゾンモードおよび活性種モードの定義として、電圧が1.2kV以下の場合が活性種モード、1.2kV以上の場合がオゾンモードとする。前記オゾン・活性種量制御部300は、前記電源5に印加するパルス状の電圧値及びパルス幅を制御することで、オゾンモードと活性種モードの切替を行う。図8の実験データは本実施形態の殺菌分解気体発生装置200においては、印加するパルス状電圧の周期及びパルス幅を一定にして制御した場合に印加電圧値を変化させて言った場合のイオン数密度をオゾン濃度で割った値をプロットしたものである。すなわち、縦軸の値が大きくなるほど、イオン数密度が高くなり、逆に縦軸の値が小さくなるほどオゾン濃度が高まっていることを示す。このことから、1.2kVを基準に、オゾンモードおよび活性種モードを定義する。
【0040】
また、図9の電圧値と周期を一定にして、パルス幅を変更していった場合の実験データに示すように、100μs近傍で、活性種とオゾンの発生傾向が逆転することが分かる。つまり、この実験条件ではパルス幅が100μs以下の領域を活性種モード、パルス幅が100μs以上の領域をオゾンモードとして使用できることが分かる。
【0041】
本実施形態のオゾン・活性種量制御部300は、上述したような実験で得られた知見に基づいて、オゾンモードにおいて前記各電極に印加される電圧を1200V以上、かつ、パルス幅を100μs以上、300μs以下に設定してある。同様に活性種モードにおいて前記各電極に印加される電圧を1200V以下、パルス幅を0.1μs以上、100μs以下に設定してある。
【0042】
<本実施形態の効果>
【0043】
このように構成された本実施形態の洗濯機100によれば、脱水工程において衣類に含まれる水分量が多い間はオゾンモードで運転し、活性種よりもオゾンが多量に洗濯槽1内に散布されるようにしてあるので、多量のオゾンを水に溶解させて効果的に除菌及び消臭することができる。例えば同じオゾン濃度であっても水に溶解したオゾン水と気相のオゾンとを比較した場合、オゾン水は気相のオゾンに対して1/4程度の時間で除菌を完了することができ、特許文献で知られていたのは逆にオゾン水のほうが除菌効率がよい。さらに、水に溶解させた状態のオゾンで除菌を行うので、洗濯槽1の外部へオゾンが漏れにくく、さらに安全性を向上させることもできる。
【0044】
また、脱水工程の後期であり、衣類に含まれる水分量が少なくなってオゾンによる除菌能力が落ちる領域では、活性種モードに切り替えて運転するので、その除菌能力を保つことができる。しかも、活性種モードを使用しているので脱水工程終了間際においてはオゾンの濃度も低濃度であるため、短時間でオゾンは酸化反応により消滅するので、脱水終了後すぐに蓋を開けて洗濯物を取り出すことができる。つまり、従来のようにオゾンが完全に消滅するまで待機する時間を別途設ける必要がなく、洗濯機100の使用者に長時間待たされている等の不快感を与えないようにすることができる。
【0045】
さらに、上述してきたようにオゾンの除菌能力の高い領域でのみ使用するように構成してあるので、過剰なオゾンを生成することがなく、オゾンや活性種を生成するのに必要な消費電力を低減することができる。
【0046】
その他の実施形態について説明する。
【0047】
前記オゾン活性種量制御部300は、図10に示すように衣類を通過する空気流の風速によって、オゾンモードまたは活性種モードの切替を行うように構成してあっても構わない。より具体的には、衣類に含まれる水分量が多い場合、衣類を通過する空気流の風速は低速となり、その場合はオゾンモードとなる。脱水が実施されるにつれ衣類に含まれる水分量が低下する場合は、衣類を通過する空気流の風速は高速となり、その場合は活性種モードとなる。例えば、図10に示すようにある風速を境界として、その低速側をオゾンモード、その高速側を活性種モードとして使用すればよく、この実施形態では各モードの境界となる風速を1.0m/sに設定している。また、洗濯槽1の回転数ではなく、衣類の含水率を直接測定して、制御モードを変更してもよい。例えば、洗濯開始前に衣類の重量を測定しておくとともに、脱水工程における衣類の重量変化から含水率を算出し、その値に基づいてオゾンモードと活性種モードを切り替えるようにしてもよい。さらに、含水率や回転数ではなく、脱水工程が開始されてから所定時間経過前まではオゾンモードで運転し、所定時間経過後から脱水工程終了までは活性種モードで運転するようにしてもよい。
【0048】
前記実施形態では、オゾン・活性種量制御部は水分量、含水率、回転数などといった値が所定の値を超えたかどうかに基づいて制御モードを切り替えるように構成してあったが、例えば含水率の変化に応じて、オゾンと活性種の発生比率を逐次対応させて変更するものであってもかまわない。このようなものであれば、制御は複雑になるものの、より除菌効率を高くするとともに、消費電力を低減することができるようになる。
【0049】
また、前記実施形態では、オゾン・活性種量制御部が電圧やパルス幅等を制御することにより発生するオゾン・活性種の比率を制御していたが、例えば、脱水工程が進むにつれてオゾン及び活性種の発生量をともに減らしていくようにしても構わない。このようなものであれば、脱水工程の初期で衣類に多量の水分が含まれている間は、オゾンが殺菌作用を効果的に発揮するとともに、脱水工程の後期ではオゾンの存在量を低減しつつ、活性種による殺菌作用を発揮することができる。従って、脱水工程の進行に合わせてオゾン・活性種の発生に必要な消費電力を低減しつつ、脱水工程終了時には、オゾン濃度を略無視できる程度に低減することができるようになる。
【0050】
前記実施形態では縦型ドラムの洗濯機であったが、斜め型ドラム、横型ドラムの洗濯機であってもかまわない。
【0051】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や実施形態の組み合わせを行ってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
100 ・・・洗濯機
1 ・・・洗濯槽
200 ・・・殺菌分解気体発生装置
2 ・・・プラズマ電極
21、22 ・・・電極
21a、22a・・・誘電体膜
21b、22b・・・流体流通孔
201 ・・・吹出口(オゾン・活性種供給機構)
300 ・・・オゾン・活性種量制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定距離離間させて設けられた一対の電極と、各電極に形成された流体流通孔と、からなるプラズマ電極を具備し、前記各電極間で生成されたプラズマにより、前記流体流通孔を通過する空気流にオゾン又は活性種を含有させる殺菌分解気体発生装置と、
前記流体流通孔を通過した空気流を、洗濯槽が脱水工程にある時に当該洗濯槽内に供給するオゾン・活性種供給機構と、を備えたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記殺菌分解気体発生装置が、少なくとも前記各電極に印加する電圧を変更することによって空気流に含有されるオゾンと活性種の量を制御するオゾン・活性種量制御部を更に備え、
前記オゾン・活性種量制御部が、前記洗濯槽内の衣類に含まれる水分量に応じて、前記空気流に含まれるオゾンと活性種の比率を変更するように構成された請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記オゾン・活性種量制御部が、前記洗濯槽内の衣類に含まれる水分量が所定量以上の場合は、空気流に含まれるオゾンの量が第1規定量以上であり、活性種の量が第2規定量以下となるオゾンモードで制御し、前記洗濯槽内の衣類に含まれる水分量が所定量より少ない場合は、空気流に含まれるオゾンの量が第1規定量以下より少なく、活性種の量が第2規定量以上となる活性種モードで制御するよう構成された請求項2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記オゾンモードにおいて前記各電極に印加される電圧値が、前記活性種モードにおいて前記各電極に印加する電圧値よりも高い値に設定されている請求項2又は3記載の洗濯機。
【請求項5】
前記オゾン・活性種量制御部が、前記各電極にパルス状の電圧を印加することによりオゾン・活性種の量を制御するように構成されており、
前記オゾンモードにおいて前記各電極に印加されるパルス幅が、前記活性種モードにおいて前記各電極に印加されるパルス幅よりも大きい値に設定されている請求項2、3又は4記載の洗濯機。
【請求項6】
前記オゾン・活性種量制御部が、衣類を通過する空気流の速度を変更することによって空気流に含有されるオゾンと活性種の量を制御するように構成されており、
前記オゾンモードにおける空気流の速度が、前記活性種モードにおける空気流の速度よりも低い速度に設定されている請求項2、3、4又は5記載の洗濯機。
【請求項7】
前記オゾン・活性種量制御部が、脱水工程における前記洗濯槽の回転数が所定回転数以下の場合には前記オゾンモードで制御し、前記洗濯槽の回転数が所定回転数よりも高回転の場合には前記活性種モードで制御するように構成された請求項2、3、4、5又は6記載の洗濯機。
【請求項8】
前記オゾン・活性種量制御部により前記各電極に印加される電圧が、そのピーク値を100V以上5000V以下の範囲とするとともに、パルス幅を0.1μs以上300μs以下の範囲に設定されている請求項2、3、4、5、6又は7記載の洗濯機。
【請求項9】
前記オゾン・活性種量制御部が、脱水工程時の前記洗濯槽の回転数が回転を開始してから所定回転数である900rpmから2000rpmの間に達するまでは前記オゾンモードで制御するように構成されており、当該オゾンモードにおいて前記各電極に印加される電圧が1200V以上、かつ、パルス幅を100μs以上、300μs以下に設定されている請求項2、3、4、5、6、7又は8記載の洗濯機。
【請求項10】
前記オゾン・活性種量制御部が、脱水工程時の前記洗濯槽の回転数が所定回転数である900rpmから2000rpmの間に達した後は前記活性種モードで制御するように構成されており、当該活性種モードにおいて前記各電極に印加される電圧が1200V以下、パルス幅を0.1μs以上、100μs以下に設定されている請求項2、3、4、5、6、7、8又は9記載の洗濯機。
【請求項11】
前記各電極の対向する面のうち、少なくとも一方の面に誘電体が塗布されている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の洗濯機。
【請求項12】
前記誘電体の表面に0.1μm以上100μm以下の凹凸が形成されている請求項11記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−94432(P2013−94432A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239951(P2011−239951)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】