説明

洗濯用組成物

【課題】繊維製品等への賦香効果に優れ、且つ設計した香調で賦香できる洗濯用組成物を提供する。
【解決手段】(a)一般式(I)で表されるグリセリルモノエーテル及び/又はポリグリセリルモノエーテルと、(b)水・オクタノール分配係数(logP)が3.0未満であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)を超える香料成分を10〜50質量%含有する香料組成物と、を含有する洗濯用組成物。
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を、nは1〜7の数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の洗濯工程で用いる洗濯用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、消費者の要求に伴って、衣類等の繊維製品の洗濯工程で用いる洗剤、仕上げ剤(柔軟剤、糊剤、香り付け剤等)等の香りを訴求した洗濯用組成物が販売されている。
【0003】
香りの持続性を高める技術として、保留剤の添加や包摂化合物の利用(特許文献1)、マイクロカプセル調剤の利用(特許文献2)、香料前駆体の利用(特許文献3)、等の徐放性に関する技術は従来より知られている。しかしながら、これらは単に経時的な香料成分の揮散速度を制御する方法か、加熱時による急激な揮散を抑制する方法であった。洗濯工程で用いる洗濯用組成物は多量の水に希釈して用いるため、このような方法では大部分の香料成分は水とともに排水され、繊維製品に香料を十分残留させることはできなかった。
【0004】
洗濯工程で繊維製品に香料を残留させる技術として、アミドカルボン酸の利用(特許文献4)、疎水性香料の利用(特許文献5、6、7)、等が知られている。しかしながら、これらの方法では疎水性香料成分を繊維製品に残留させることはできても、親水性香料成分は水とともに排水され、繊維製品に親水性香料成分を十分残留させることはできなかった。
【0005】
一般に、トップノートと呼ばれるフレッシュな香調を与える香料成分は親水性香料成分であり、洗濯用組成物としてはまとまった香調のものが得られたとしても、洗濯工程により親水性香料成分は水とともに排水されるため、繊維製品に残留する香調(特に乾燥後の香調)は洗濯用組成物としての香調とは異なるものとなり、使用者に違和感を与えることになる。このため、洗濯用組成物としての香調と繊維製品に残留する香調を同様にするために香料組成の開発に大きな制約となっていた。また、洗濯工程後繊維製品に残留する香調(特に乾燥後の香調)をフレッシュな香調にすることは困難であった。
【特許文献1】特開平01−193397号公報
【特許文献2】特表2003−504490号公報
【特許文献3】特表2003−511823号公報
【特許文献4】特開平10−45553号公報
【特許文献5】特開2007−124444号公報
【特許文献6】特開2007−45964号公報
【特許文献7】特開2007−247101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、繊維製品等への賦香効果に優れ、且つ設計した香調で賦香できる洗濯用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有する洗濯用組成物に関する。
(a)成分:一般式(I)で表されるポリグリセリルモノエーテル
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を、nはグリセリンの縮合度であり、整数を示す。)
(b)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0未満であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)を超える香料成分(b1)を10〜50質量%含有する香料組成物
【0008】
また、本発明は、上記本発明の洗濯用組成物と水とを含有し、(a)成分の含有量が0.1〜1000ppmである液体組成物を、繊維製品と接触させる繊維製品の処理方法に関する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明の洗濯用組成物と水とを含有し、(a)成分の含有量が0.1〜1000ppmである液体組成物を、繊維製品と接触させる繊維製品の賦香方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維製品等への賦香効果に優れ、且つ設計した香調で賦香できる洗濯用組成物が得られる。すなわち、衣類等の繊維製品の洗濯後に、フレッシュな香調を残すことができる。またこれにより、洗濯用組成物の香調と洗濯後の繊維製品に残留する香調(特に乾燥後の香調)を近似させることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<洗濯用組成物>
〔(a)成分〕
本発明の(a)成分は、一般式(I)で示されるポリグリセリルエーテルであり、グリセリルモノエーテル、ポリグリセリルモノエーテル又はそれらを併用したもの(以下、これらを総称して「グリセリルモノエーテル等」という)である。
【0012】
一般式(I)中のRは、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和の何れでも良く、炭素数6〜22、更に12〜14、特に12のアルキル基が好ましい。
【0013】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12〜14、特に炭素数12及び14のアルキル基であるグリセリルモノエーテル等の比率が、合計で40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。
【0014】
(a)成分は、一般式(I)中のnが3〜5であるものが好ましい。なお、(a)成分が、一般式(I)中のnが単一のもののみからなる場合は結晶化しやすいため、特に低温で水への溶解性が劣り、その結果、香料成分の残香性は低下する傾向を示す。一方、(a)成分が、一般式(I)中のnが異なる複数のグリセリルモノエーテル等を含む場合、結晶化が抑制されるため低温でも高い溶解性を示し、その結果良好な香料成分の残香性が得られる。従って、(a)成分は、一般式(I)中のnが異なる複数のグリセリルモノエーテル等からなるものが好ましく、特にnが3〜5で、且つn=3及び4、n=3及び5、n=4及び5、又はn=3、4及び5のグリセリルモノエーテル等を含むものがより好ましく、特にn=3、4及び5のグリセリルモノエーテル等を含むものが好ましい。
【0015】
(a)成分中、一般式(I)の縮合度n=3〜5の化合物は、20質量%以上含まれることが好ましい。
【0016】
一般式(I)中のnは、洗浄力の観点から、n=4が最も好ましく、(a)成分中、n=4であるグリセリルモノエーテル等の比率が10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましい。
【0017】
また、一般式(I)中のnが1又は2であるグリセリルモノエーテル等の比率は合計で50質量%未満、更に35質量%以下であることが好ましい場合がある。又、(a)成分中、nが1であるグリセリルモノエーテル等の含有量が30質量%未満、更に20質量%以下であることが好ましい場合がある。
【0018】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12及び/又は炭素数14のアルキル基であって、且つnが3〜5であるグリセリルモノエーテル等が好ましく、その比率が40質量%以上であることが低温溶解性の観点から好ましい。前記比率は、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。また、低温での洗浄性能の観点から上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。
【0019】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12及び/又は炭素数14のアルキル基であって、且つnが3〜5であるポリグリセリルモノエーテルの合計の比率を99質量%以下とした場合には、低温での溶解性が著しく向上する。一般にこの含有量が低いほど低温での溶解性は向上するが、香料成分の残留性が低下する傾向にあるため、上記した下限値と上限値の範囲が好ましい。
【0020】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12のアルキル基で、nが3〜5であるグリセリルモノエーテル等(a−1)と、一般式(I)中のRが炭素数14のアルキル基で、nが3〜5であるグリセリルモノエーテル等(a−2)の両方を含んでいることが好ましい。更に(a−1)成分及び(a−2)成分は、いずれもnの異なる複数のグリセリルモノエーテル等、特にn=3、4、5の3種のグリセリルモノエーテル等を含有することが好ましい。(a)成分中の(a−1)成分及び(a−2)成分の合計の比率は、一般式(I)で表されるポリグリセリン全体に対して20質量%以上であること、あるいは、一般式(I)中のグリセリンの縮合度nが1〜7である化合物の合計量に対して40質量%以上であることが好ましい。
【0021】
(a)成分を構成するグリセリンの縮合度nの質量割合〔(a)成分中の質量割合〕は、ガスクロマトグラフィー(GC)法のエリア%から求めることができる。
【0022】
本発明の(a)成分は、例えば、炭素数6〜22のアルコールに所定量の2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)をアルカリ触媒の存在下で反応させることで得られる。また、特開2000−160190号公報の段落0007〜0011に記載されたような方法で製造することもできる。
【0023】
なお、一般式(I)中のn=3〜5のグリセリルモノエーテル等が所定比率にあるものを用いる場合には、必要に応じて反応物を蒸留等により精製することで、所定範囲の縮合度の化合物を得ることができる。
【0024】
例えば、一般式(I)中のn=1、2のものは、減圧下で蒸留することにより留去することができる。n=1、2の成分を減らすことで、3〜5モル成分の割合を増やすことができる。蒸留装置に限定は無いが、薄膜蒸留を行うことにより、これら成分を効率的に分離することができる。至適蒸留温度は、真空度によって大きく変化するが、真空度が0.13kPaの場合、150℃以上300℃以下、好ましくは170℃以上300℃以下、さらに200℃以上300℃以下が好ましい。300℃以上の温度で蒸留すると着色等品質の劣化が生じる場合がある。
【0025】
また例えば、一般式(I)中の縮合度が高いもの(nが大きいもの)を取り除く場合は、カラムによる分離を行うことができる。カラムによる分離は、条件を工夫することにより、n=1、2成分の除去に利用することもできる。
【0026】
本発明の組成物中、溶解性、香料成分の残香性の観点より、(a)成分の含有量は0.1〜50質量%が好ましく、0.3〜40質量%がより好ましく、0.5〜30質量%が更に好ましく、1〜25質量%が特に好ましい。
【0027】
〔(b)成分〕
本発明の(b)成分は、下記(b1)成分、要すれば(b2)成分の香料成分を含有する。
(b1)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0未満であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)を超える香料成分
(b2)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0以上であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)以下である香料成分
【0028】
(b1)成分は、比較的蒸散しやすい香料成分であり、通常は洗浄や柔軟処理後の衣料にはこれら香料成分は残りにくい。一方(b2)成分は、比較的蒸散しにくく、しかも洗浄や柔軟処理後の衣料に残りやすく、残香性を有する香料成分である。しかしながら、(b2)成分は衣料上に残っても香り立ちなどが悪く、また極限られた香調となってしまう。
【0029】
そこで本発明は、(a)成分を用いることで(b1)成分を残香させることができるようになったものである。これにより、従来の香り立ちが悪い点及び香調の種類が限られる点などの課題を解決して(b1)成分と(b2)成分の調和により、香り立ちの良い、さまざまな香調が得られるようになった。また、(b1)成分、(b2)成分以外の香料成分を含有しても良い。
【0030】
ここで、LogPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。
【0031】
多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP"で計算すると最も便利である。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと伴に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)"の値を出力する。
【0032】
(b1)成分は、香調の良い香りが残る点から、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)を超え、好ましくは0.02〜2mmHg(2.67〜267kPa)、特に好ましくは0.05〜1mmHg(6.67〜133kPa)である。
【0033】
(b2)成分は、香料の持続性の点から、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)以下、好ましくは0.001〜0.01mmHg(0.133〜1.33kPa)、特に好ましくは0.001〜0.005mmHg(0.133〜0.667kPa)である。
【0034】
(b1)成分の具体例を表1a〜表1cに示す。(b1)成分としては、特にローズオキサイド、マンザネート、リナロール、ゲラニオール、ネロール、テルピネオール、サリチル酸メチル、フェニル酢酸エチル、酢酸cis-3-ヘキセニル、酢酸スチラリル、酢酸ベンジル、ベンズアルデヒド、酢酸イソアミル、酢酸フェニルエチル、l-カルボン、マルトールが好ましい。
【0035】
【表1a】

【0036】
【表1b】

【0037】
【表1c】

【0038】
(b2)成分の具体例を表2a〜表2cに示す。(b2)成分としては、特にペンタライド、セドリルメチルエーテル、パチュリアルコール、酢酸ベチベリル、ヘキシルシンナミックアルデヒド、シトロネロール、酢酸シトネリル、サリチル酸 cis-3-ヘキセニル、エチレンブラシレート、アセチルセドレン、桂皮酸ベンジル、カシュメラン、リリアル、α−ヨノン、β−ヨノン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、チモールが好ましい。
【0039】
【表2a】

【0040】
【表2b】

【0041】
【表2c】

【0042】
(b)成分中、(b1)成分の含有量は10〜50質量%であり、好ましくは20〜45質量%、更に好ましくは30〜40質量%含有する。また、(b)成分中、(b2)成分の含有量は10〜60質量%が好ましく、より好ましくは30〜60質量%、更に好ましくは35〜55質量%、より更に好ましくは40〜50質量%含有する。この範囲は、良好な(b)成分の残香性(香り立ちが良く、香調の良い香りが残ること)を得る観点で望ましい。
【0043】
本発明の組成物において、(a)成分/(b)成分の質量比は、残香性の観点より、1/1〜500/1が好ましく、2/1〜400/1がより好ましく、3/1〜300/1が更に好ましい。
【0044】
〔その他成分〕
本発明の組成物は(a)成分以外の界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0045】
陰イオン界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルコールのエトキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩若しくはそのエステル塩、又は脂肪酸塩が挙げられる。特に、アルキル鎖の炭素数が10〜18(好ましくは12〜14)の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数が10〜20のα−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩が好ましい。また、対イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アルカノールアミン等が挙げられる。
【0046】
非イオン界面活性剤としては、高級アルコールのエチレンオキシド(以下「EO」という)付加物、若しくはEO/プロピレンオキシド(以下「PO」という)付加物、脂肪酸アルカノールアミド、アルキル(ポリ)グリコシド等が挙げられる。特に炭素数が10〜16のアルコールのEO1〜10モル付加物が皮脂汚れの除去、耐硬水性、生分解性の点で好ましい。
【0047】
陽イオン界面活性剤として、アミン塩又は第4級アンモニウム塩等を用いることができる。特にジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩が好適であり、アルキル基中に−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−のような連結基を含むものであってもよい。
【0048】
両性界面活性剤として、カルボベタイン型、スルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
その他、洗剤、仕上げ剤(柔軟剤、糊剤、香り付け剤等)等、洗濯用組成物として特徴的な性質を付与できる成分を含有することができる。
【0050】
また、従来知られている洗剤、仕上げ剤(柔軟剤、糊剤、香り付け剤等)等の洗濯用組成物に本発明の(a)成分及び(b)成分を添加することで、本発明の組成物とすることができる。
【0051】
本発明の洗濯用組成物は、衣料、寝具等の繊維製品を対象とすることが好ましい。また、本発明の洗濯用組成物は、洗剤組成物、柔軟剤組成物、糊剤組成物などの洗濯用組成物としての応用が可能である。また、本発明の洗濯用組成物は、賦香用組成物として用いることもできる、
【0052】
〔繊維製品の処理方法〕
本発明の洗濯用組成物による衣類等の繊維製品の処理方法は特に制限されるものではなく、従来知られている洗剤、仕上げ剤(柔軟剤、糊剤、香り付け剤等)等と同様に処理できる。
【0053】
洗濯工程後(特に乾燥後)の繊維製品への香料成分の残香性の点で、本発明の洗濯用組成物と水とを含有し、(a)成分の含有量が0.1〜1000ppmである液体組成物を、繊維製品と接触させることが好ましい。その場合、当該液体組成物と繊維製品との比率(質量比)は、繊維製品/液体組成物=1000/1〜1000/50が好ましい。
【0054】
〔繊維製品の賦香方法〕
本発明の洗濯用組成物による衣類等の繊維製品の賦香方法は特に制限されるものではなく、従来知られている洗剤、仕上げ剤(柔軟剤、糊剤、香り付け剤等)等と同様に処理できる。
【0055】
洗濯工程後(特に乾燥後)の繊維製品への香料成分の残香性の点で、本発明の洗濯用組成物と水とを含有し、(a)成分の含有量が0.1〜1000ppmである液体組成物を、繊維製品と接触させることが好ましい。その場合、当該液体組成物と繊維製品との比率(質量比)は、繊維製品/液体組成物=1000/1〜1000/100が好ましい。
【実施例】
【0056】
<香料組成物>
表3a、3b記載の組成になるように香料成分を調合し、香料組成1〜4を得た。
【0057】
【表3a】

【0058】
【表3b】

【0059】
<グリセリルモノエーテル(1)の合成方法>
ラウリルアルコール93.2g(0.50mol)、ランタントリフラート2.94g(0.0050mol)を300mL四つ口フラスコに入れ、窒素気流下、撹拌しながら90℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール148.16g(2.0mol)を24時間で滴下し、そのまま2時間撹拌を続け、反応生成物251.5gを得た。得られた反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、グリシドール転化率99.9%以上、ラウリルアルコール6.0質量%、ポリグリセリンの含有量は2.2質量%であった。また得られたラウリルポリグリセリルエーテルのうち、グリセリンの縮合度nが3〜5のものの割合は、nが1〜7のものの合計に対して43.3質量%であった。またn=1〜7のラウリルポリグリセリルエーテルの含有率は60.2質量%、8モル以上の縮合度のものは31.6質量%であった。よって、該生成物〔グリセリルモノエーテル(1)〕は、グリセリンの縮合度nが異なる複数の化合物を確認し、nが3〜5に関してはいずれのものも含まれていた。
【0060】
<洗剤組成物による繊維処理の方法>
表4で示した組成になるよう下記原料を混合し、実施例及び比較例の洗剤組成物6を得た。この組成物26.7gと肌着(グンゼYG)2kgをナショナル製全自動洗濯機、NA−F70AP2型に投入し、水位少量(40L)、標準コース(洗い7分、注水濯ぎ2回、脱水4分)で洗濯を行った。温度25℃、湿度65%rhの条件で12時間乾燥を行った後、香料の香り強度と香りの変化の有無を下記の方法で評価した。結果を表4に示す。また、表4で用いた成分は以下のものである。
【0061】
AS:花王(株)製エマール0を用いた。
エトキシレートノニオン(1):アルキル鎖長が炭素数12で、EO平均付加モル数6の、花王(株)製エマルゲン108を用いた。
ゼオライト:平均粒径3μmのA型ゼオライト、ゼオビルダー(株)製を用いた。
炭酸ナトリウム(デンス灰):セントラル硝子(株)製を用いた。
硫酸ナトリウム:四国化成(株)製の無水ボウ硝を用いた。
【0062】
<仕上げ剤組成物による繊維処理の方法>
表5で示した組成になるよう原料を混合し、実施例及び比較例の仕上げ剤組成物を得た。市販洗剤(花王(株)、アタック)26.7gと肌着(グンゼ(株)、グンゼYG)2kgをナショナル製全自動洗濯機、NA−F70AP2型に投入し、水位少量(40L)、標準コース(洗い7分、注水濯ぎ2回、脱水4分)で洗濯を行った。この際、2回目の濯ぎが開始されたと同時に仕上げ剤組成物15gを投入した。温度25℃、湿度65%rhの条件で12時間乾燥を行った後、香料の香り強度と香りの変化の有無を下記の方法で評価した。結果を表5に示す。また、表5で用いた成分は以下のものである。
【0063】
カチオン:トリエタノールアミンエステル化合物、Kao Corporation S.A.社製のテトラニルAT7590を使用した
エトキシレートノニオン(2):アルキル鎖長が炭素数12で、EO平均付加モル数8の、花王(株)製 エマルゲン108Kを用いた。
【0064】
<香料の香り強度の評価方法>
上記の方法で処理された肌着を10人のパネラーで行った。香りの強さに関する官能評価は次の6段階で行った。0(匂わない)、1(かすかに匂う)、2(匂う)、3(明らかに匂う)、4(強く匂う)、5(非常に強く匂う)。得点は10名の平均値で表した。
【0065】
<香りの変化の有無評価方法>
洗剤組成物あるいは仕上げ剤組成物の香調と、洗濯、乾燥後の肌着の香調を比較し、同じに感じられる場合には1点、異なると思われる場合には0点とし、10名の点数を加算し、5点以上を同等(○)、5点未満を異なる(×)として評価した。
【0066】
<洗浄力評価>
いずれの実施例や比較例もJISK3362(標準洗剤を用いた洗濯洗浄試験)の結果、標準洗剤より洗浄力が上回ることを確認した。
【0067】
【表4】

【0068】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有する洗濯用組成物。
(a)成分:一般式(I)で表されるポリグリセリルモノエーテル
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を、nはグリセリンの縮合度であり、整数を示す。)
(b)成分:水・オクタノール分配係数(logP)が3.0未満であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)を超える香料成分(b1)を10〜50質量%含有する香料組成物
【請求項2】
(a)成分中、Rが炭素数12及び又は炭素数14のアルキル基であって且つグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物の比率が、一般式(I)中のグリセリンの縮合度nが1〜7である化合物の合計量に対して、40質量%以上である請求項1記載の洗濯用組成物。
【請求項3】
(a)成分/(b)成分の質量比が1/1〜500/1である請求項1又は2何れか記載の洗濯用組成物。
【請求項4】
(b)成分中に、更に水・オクタノール分配係数(logP)が3.0以上であり、かつ、20℃における蒸気圧が0.01mmHg(1.33kPa)以下である香料成分(b2)を10〜60質量%含有する請求項1〜3何れか記載の洗濯用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4何れか記載の洗濯用組成物と水とを含有し、(a)成分の含有量が0.1〜1000ppmである液体組成物を、繊維製品と接触させる繊維製品の処理方法。
【請求項6】
請求項1〜4何れか記載の洗濯用組成物と水とを含有し、(a)成分の含有量が0.1〜1000ppmである液体組成物を、繊維製品と接触させる繊維製品の賦香方法。

【公開番号】特開2009−161593(P2009−161593A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339816(P2007−339816)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】