説明

洗車機

【課題】 洗車機において、洗浄する車体面の領域の特徴に合った効果的な洗浄を行うことができる。
【解決手段】 洗車機本体に一対のトップブラシを設け、そのトップブラシで自動車を洗浄できるようにした洗車機において、一対のトップブラシは、その両トップブラシの少なくとも一部の領域において、ブラシ毛の材質を異ならせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車機本体に一対のトップブラシを設け、そのトップブラシで自動車を洗浄できるようにした洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来普通の洗車機においては、洗車機本体にトップブラシが1つだけ設けられているが、2つのトップブラシを洗車機本体に設けた洗車機も既に知られている(例えば、下記の特許文献1,2を参照。)。
【特許文献1】特開昭62−273150号公報
【特許文献2】特開平11−222108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら2つのトップブラシを有する従来の洗車機においては、トップブラシが2つとも同じ構造のものが使用されており、その両ブラシのブラシ毛も同材質のものが使用されていたので、洗浄する車体面の2つの領域の相異なる特徴に合った効果的な洗浄ができなかった。
【0004】
例えば、合成樹脂製ブリッスル製のブラシ毛は、比較的柔軟であって、車体の突起物を損傷させないで洗浄できる利点がある反面、車体面の洗浄効果が高くない欠点があり、一方、布又は発泡体製洗浄体製のブラシ毛は、水を含むと車体面によく馴染んで車体面の洗浄効果が高い利点がある反面、車体面の突起物に絡み付いて損傷させ易い欠点があるが、従来の洗車機ではトップブラシのブラシ毛材として合成樹脂製ブリッスル、或いは布又は発泡体製洗浄体の何れか1つしか使用されないため、車体面に突起物のある自動車において、その突起物に対応する領域と、その領域の前後に連なる領域とを効果的に洗い分けることができなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、洗浄する車体面の異なる2つの領域の特徴に合った効果的な洗浄できる洗車機を提供することを第1の目的とし、また車体面の突起物に対応する領域と、その領域の前後に連なる領域とを効果的に洗浄することができる洗車機を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記第1の目的を達成するために、請求項1の発明は、洗車機本体に一対のトップブラシを設け、そのトップブラシで自動車を洗浄できるようにした洗車機において、前記一対のトップブラシは、その両トップブラシの少なくとも一部の領域において、ブラシ毛の材質を異ならせていることを特徴とする。
【0007】
また前記第2の目的を達成するために、請求項2の発明は、洗車機本体に一対のトップブラシを設け、そのトップブラシで車体上面に突起物を有する自動車を洗浄できるようにした洗車機において、一方のトップブラシは、前記突起物に対応する部分のブラシ毛が合成樹脂製のブリッスルより構成され、また他方のトップブラシは、前記突起物に対応する部分のブラシ毛が布又は発泡体製洗浄体より構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように請求項1の発明によれば、洗浄する車体面の領域の特徴に合った効果的な洗浄を行うことができる。
【0009】
また請求項2の発明によれば、車体面の突起物に対応する領域は、その突起物に対応する部分のブラシ毛が合成樹脂製のブリッスルよりなる一方のトップブラシで、該突起物に対する安全性を高めながら洗浄することができ、また前記突起物に対応する領域の前後に連なる領域は、突起物に対応する部分のブラシ毛が布又は発泡体製洗浄体よりなる他方のトップブラシで奇麗に洗浄することができ、以上により、車体面の突起物に対応する領域と、その領域の前後に連なる領域とを的確に且つ効果的に洗い分けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0011】
添付図面において、図1〜図12は、本発明の一実施例を示すものであって、図1は洗車機の全体側面図、図2は図1の2矢視平面図、図3は図1の3−3線拡大断面図、図4は、図1の4矢視より見たトップブラシ昇降機構の要部拡大図、図5は図1の5−5線拡大断面図、図6は、トップブラシと自動車の車体前端部の接触状態を示す拡大側面図、図7は、トップブラシと2タイプの自動車の車体前端部の接触状態を示す平面図、図8は、乗用車タイプの自動車の標準洗浄動作を示す工程説明図、図9は、ワンボックスタイプの自動車の標準洗浄動作を示す工程説明図、図10は、ワンボックスタイプのリヤミラー付き自動車の標準洗浄動作を示す工程説明図、図11は、ワンボックスタイプのリヤミラー付き自動車の回避指示時の洗浄動作を示す工程説明図、図12は、ワンボックスタイプのリヤワイパ付き自動車の回避指示時の洗浄動作を示す工程説明図である。
【0012】
以下、図面により本発明の一実施例について説明すると、1は、被洗浄車両としての自動車Vがその前後方向に潜り抜けられるように門型に形成された洗車機本体としての門型フレ−ムであり、その門型フレーム1は、地上に敷設された軌条2,2に案内車輪3,3を介して載設され、図示しない走行用原動機の駆動により軌条2,2上を往復走行されるようになっている。
【0013】
門型フレーム1には、その前後方向中間部において前後方向に互いに近接して並列する前側トップブラシTf及び後側トップブラシTrが配設され、さらにその後側トップブラシTrの後側には左右一対のサイドブラシSl,Srが配設され、更に前側トップブラシTfの前側には、トップノズルTN及びサイドノズルSN、並びに左右一対のロッカブラシRl,Rrが配設される。更にまた門型フレーム1の前端部には、上記各ブラシTf,Tr,Sr,Sl,Rl,Rrおよび各ノズルTN,SNの作動を制御するマイクロコンピュータ等よりなる制御装置Cを内蔵した操作盤CPと、上下方向に等間隔置きに並ぶ多数の光電素子を有する車体上面位置検出装置Kとが配設される。また門型フレーム1の上部には、複数の洗浄水噴射ノズル(図示せず)が配設されている。尚、門型フレーム1に関して前側とは、スタート位置(図1左端)にあるフレーム1から見て自動車Vに近い側(図1で右側)をいい、また後側とは、自動車Vから遠い側(図1で左側)をいう。
【0014】
而して、従来の洗車機と同様、トップブラシTf,Trにより自動車の車体上面及び前後両端部をブラシング洗浄可能であり、またサイドブラシSr,Slにより車体側面及び前後両端面をブラシング洗浄可能であり、またロッカブラシRl,Rrにより車体側面下部をブラシング洗浄可能であり、さらにトップノズルTN及びサイドノズルSNにより車体上面及び側面をそれぞれ乾燥可能であり、さらに車体上面位置検出装置Kの多数の光電素子により自動車の車体上面の位置を検出可能である。前記制御装置Cは、上記車体上面位置検出装置Kによる検出信号と、門型フレーム1の走行位置を検出する図示しない走行位置検出装置による検出信号とに基づいて、洗浄される自動車Vの車形を検出し、その検出結果に基づいてトップブラシTr等を制御可能である。
【0015】
また前側トップブラシTf及び後側トップブラシTrは、その回転時における両トップブラシTf,Trの外周の、門型フレーム1 前後方向(図1で左右方向)での相互間隔がサイドブラシSr,Slの最大直径よりも小さくなるように互いに近接配置され、特に図示例では、両トップブラシTf,Trの回転軸20相互の軸間距離がサイドブラシSr,Slの最大直径(即ち回転時の外径)よりも小さくなるように互いに十分に近接して配置される。しかもその両トップブラシTf,Trは洗浄時に互いに同一方向に回転し、且つその回転状態で両トップブラシTf,Trの軸方向の少なくとも一部(図示例では両端部)のブラシ毛30が相互に接触状態にあるため、その接触部において両トップブラシTf,Trのブラシ毛30が互いに反対方向に移動して勢いよく擦れることで、トップブラシTf,Tr自体の洗浄効果を高めることができ、これにより、各ブラシTf,Trが長期間に亘り清浄に保たれ、車体上面に対する洗浄効果が向上する。
【0016】
しかも前記一対のトップブラシTf,Trは、その両トップブラシTf,Trの軸方向の少なくとも一部の領域において、ブラシ毛30の材質を異ならせている。即ち、図示例では、一方のトップブラシ、例えば前側トップブラシTfは、自動車Vの車体上面に突起物(例えば、後述するリヤミラーRM、リヤワイパーRW等)に対応する左半分のブラシ毛30Bが放射状に延びる多数の長い毛状の合成樹脂製ブリッスルより構成されると共に、右半分のブラシ毛30Aが布又は発泡体製洗浄体より構成される。また他方のトップブラシ、例えば後側トップブラシTrは、前記突起物に対応する部分を含む全部のブラシ毛30が布又は発泡体製洗浄体より構成されている。
【0017】
次に後側トップブラシTrの門型フレーム1への取付構造について説明する。
【0018】
門型フレーム1の左右両側部には相対向して左右一対のガイドレール4,4が垂直に固着され、これらガイドレール4,4に、ブラシ支持軸5を支承する移動台車6,6が両側に鍔を備えたガイドローラ7,7を介して昇降できるように設けられ、この移動台車6,6は以下に述べる昇降装置8によりガイドレール4,4に沿って昇降作動される。
【0019】
各移動台車6,6の上下端縁には、それぞれ上、下部チェン11a,11bの一端が結着され、その上部チェン11aは、門型フレーム1の上部に回転自在に支承した回転支持軸12に固着のチェン車13を経由してその他端が重錘14の上端に結着され、また下部チェン11bは門型フレーム1に軸支したチェン車15を経由してその他端が重錘14の下端に結着されており、移動台車6の自重およびそれにより支持される前側トップブラシTfの総重量の和と左右の重錘14の重量とが略バランスするようになっている。
【0020】
前記回転支持軸12の一端には、被動スプロケット16が固着され、この被動スプロケット16は伝動チェン17を介してブラシ移動モータ18の出力軸に固着した駆動スプロケット19に連動連結され、このモータ18の正転駆動により回転支持軸12が一方向に回転され、上、下部チェン11a,11bを介して移動台車6,6が下降され、またモータ18を逆転駆動すると、移動台車6,6は上昇されるようになっている。
【0021】
移動台車6,6間に固定支持されたブラシ支持軸5には、後側トップブラシTrの、中空円筒状をなす回転軸22の両端部が軸受を介して回転自在に嵌合され、その回転軸22の外周部には、後側トップブラシTrの布又は発泡体製洗浄体よりなるブラシ毛30の基部が固着される。
【0022】
前記回転軸22の一端には被動スプロケット24が固着され、この被動スプロケット24は、ブラケット25を介してブラシ支持軸5に固定支持されるブラシ駆動モータ26の出力軸27に固着した駆動スプロケット28に伝動チェン29を介して連動されており、従ってブラシ駆動モータ26の駆動により、出力軸27、駆動スプロケット28、伝動チェン29および被動スプロケット24を介して回転軸22を回転駆動させ、これにより、前側トップブラシTfを回転させることができる。尚、前記被、駆動スプロケット24,28および伝動チェン29はブラケット25に内蔵されている。
【0023】
またブラシ移動モータ18は、後側トップブラシTrの車体面に対する接触負荷を検出する図示しない負荷検出装置の検出信号に基づいて制御装置Cにより作動制御されるようになっており、図示例ではその負荷検出装置として、ブラシ駆動モータ26の回転トルクを検知するトルク検知器が利用される。
【0024】
即ち、制御装置Cは、ブラシ駆動モータ26の消費電力を検知してブラシ移動モータ18を正、逆転制御するように構成され、例えば、ブラシ駆動モータ26の回転トルクが所定下限値以下のときはブラシ移動モータ18を正転駆動してトップブラシTrを下降させ、このときブラシ駆動モータ26の回転トルクが所定範囲まで回復しなければ、トップブラシTrは引続き下限位置まで下降して下限リミットスイッチ(図示せず)をオンにしてブラシ移動モータ18を停止させ、またブラシ駆動モータ26の回転トルクが設定範囲内にあるときには、ブラシ移動モータ18の作動が停止され、さらにブラシ駆動モータ26の回転トルクが所定値を超えたときには、ブラシ移動モータ18が逆転駆動されてトップブラシTrを上昇させる。このときブラシ駆動モータ26の回転トルクが所定上限値を超えたときには、洗車機の作動を全停止させるようになっている。
【0025】
而して、後側トップブラシTrの車体面に対する接触負荷、即ちブラシ駆動モータ26の回転トルクに応じてブラシ移動モータ18の作動が制御されて後側トップブラシTrの昇降が制御されるので、門型フレーム1に往行時及び復行時において、後側トップブラシTrを適正な接触面圧で車体上面に追従昇降させることができる。このような昇降制御の手法は従来周知であり、例えば特開昭59−106350号公報に記載されている。
【0026】
尚、前記負荷検出装置としては、少なくともトップブラシTrの接触負荷を検出可能なものであればよく、図示例の他、ブラシ駆動モータ26の電流、電力又は回転数を検出する検出装置であってもよく、またトップブラシの回転に伴う反力モーメントを検出する検出装置を負荷検出装置として用いるようにしてもよい。
【0027】
次に前側トップブラシTfの門型フレーム1への取付構造であるが、これは、前記した後側トップブラシTrの門型フレーム1への取付構造と基本的に同じであるので、説明を省略する。但し、前側トップブラシTfを昇降駆動するブラシ移動モータ18は、車体上面位置検出装置Kによる検出信号と、門型フレーム1の走行位置を検出する図示しない走行位置検出装置による検出信号とに基づいて検出可能な自動車Vの車形に応じて作動制御されて、前側トップブラシTfを昇降制御する。即ち、検出された自動車Vの車体上面形状に対してその上面より一定レベル上昇した目標レベルに前側トップブラシTfの昇降位置が制御されて、車両上面との接触面圧が常に略一定の適正値に維持されるようになっており、このようなトップブラシの車形に応じた昇降制御の手法は、従来周知であり、例えば特公平4−43017号公報に記載されている。
【0028】
ところで図7に示すように、前記一対のトップブラシTf,Trのうち、後側トップブラシTrは、車体前端部の中央部から左右コーナ部にそれぞれ向かう左右中間部分m,mの傾斜度が大きい第1のタイプの自動車V1の洗浄に適したものとされ、また前側トップブラシTfは、前記傾斜度が小さい第2のタイプの自動車V2の洗浄に適したものとされる。
【0029】
即ち、第1のタイプの自動車V1の洗浄に適した後側トップブラシTrの、第1のタイプの自動車V1の車体前端部に対する洗浄時の食い込み深さE2が、第2のタイプの自動車V2の洗浄に適した前側トップブラシTfの、第1のタイプの自動車V1の車体前端部に対する洗浄時の食い込み深さE1よりも大きくなるよう設定される。しかも第1のタイプの自動車V1の洗浄に適した後側トップブラシTrは、車体前端部の前記左右中間部分に対応した位置にあるブラシ毛30が、回転軸22の外周にその軸線と直交する平面に対し傾斜角度を以て取付けられ、また第2のタイプの自動車V2の洗浄に適した前側トップブラシTfは、車体前端部の前記左右中間部分に対応した位置にあるブラシ毛30が、前記平面に対し後側トップブラシTrのブラシ毛30よりも小さな傾斜角度を以て回転軸22の外周に取付けられるか、又は図示例のように前記平面にほぼ沿って回転軸22の外周に取付けられる。尚、上記取付けのために、後側トップブラシTrの回転軸22の左右中間部外周は、それぞれ外拡がりのテーパ面22tに形成され、そのテーパ面22tの大径端は回転軸22の大径円筒状の外端部22eに、またその小径端は回転軸22の小径円筒状の中央部22cにそれぞれ連続しており、その回転軸22外周形態に応じて後側トップブラシTrのブラシ毛30は鼓状に形成される。
【0030】
また前側トップブラシTfは、回転軸22が単純円筒状に形成され、そのブラシ毛30は、回転軸22外周にその軸方向全域に亘り、その軸線と直交する平面に略沿うように配置される。しかもその回転軸22外周部の両外端部に取付けられるブラシ毛30は、その内方のブラシ毛よりも長めに形成されており、従って、前側トップブラシTfは、その回転時に両端部が中央部よりも大径となって、車体前端コーナ部に無理なく回り込むことができ、該コーナ部の洗浄を的確に行えるようになっている。
【0031】
而して、上記のように一対のトップブラシTf,Trのうちの一方(後側トップブラシTr)が、車体前端部の中央部から左右コーナ部にそれぞれ向かう左右中間部分m,mの傾斜度の大きい第1のタイプの自動車V1の洗浄に適したものとなり、またその他方(前側トップブラシTf)が、前記傾斜度の小さい第2のタイプの自動車V2の洗浄に適したものとなるため、車体前端部の中央部から左右コーナ部にそれぞれ向かう左右中間部分m,mの傾斜度の大きい自動車V1でも、また小さい自動車V2でも、それらの車体前端部を洗い残しなく奇麗に洗浄することができる
次に前記実施例の作用について説明する。
[乗用車タイプの自動車の洗浄]
乗用車タイプの自動車Vを洗車するに当たっては、図1の実線で示すように門型フレーム1をスタート位置に待機させ且つ自動車Vを所定の洗車位置に静止させた状態で、洗車機の操作盤CPにおいて洗車コース及び車種を選択し且つスタートボタンを押すことで、洗車が開始される。その開始により、各トップブラシTf,Trが回転駆動されると共に、それらが上限位置(図1鎖線位置)から下限位置(図1実線位置)まで下降したところで図示しない走行用原動機が駆動され、門型フレーム1が往行を開始する(図8(イ))。
【0032】
門型フレーム1の前進により前側トップブラシTfが車両Vの前端部に達する(図8(ロ))と、それ以降は、前側トップブラシTfが車体上面検出装置K及び走行位置検出装置の検出信号に基づき予め検出された検出車形に応じて、車体上面に追従するよう昇降制御されて車体上面を洗浄し、一方、後側トップブラシTrは、それの車体面との接触負荷(即ちブラシ回転モータ26の回転トルク)に応じて、車体上面に追従するよう昇降制御されて車体上面を洗浄する(図8の(ロ)〜(オ))。但し、後側トップブラシTrは、リヤガラス対応部分では、リヤガラスを避けるように制御され、これにより、後述する回避指示を万一、怠ったような場合でも、ブラシ毛が布又は発泡性合成樹脂製である後側トップブラシTrが、リヤガラスに設けられることのあるリヤワイパを損傷させるリスクを回避することができる。
【0033】
門型フレーム1が反転位置(図1の鎖線位置)に達して往行が終了すると、ブラシ回転方向を逆転させ、門型フレーム1の復行が開始する。この場合も、基本的には往行時と同様に、前側トップブラシTfが検出車形に応じて、後側トップブラシTrが接触負荷に応じてそれぞれ昇降制御され(図8の(ワ)〜(タ))、また後側トップブラシTrは、リヤガラス対応部分では、往行時と同様にリヤガラスを避けるように制御され、これにより、後述する回避指示を万一、怠ったような場合でも、ブラシ毛が布又は発泡性合成樹脂製である後側トップブラシTrが、リヤガラスに設けられることのあるリヤワイパを損傷させるリスクを回避することができる。そして、門型フレーム1がスタート位置まで復行すると、洗浄工程が終了する。
【0034】
尚、上記洗浄工程においては、図示しない洗浄水噴射ノズルから洗浄水が噴射され、またサイドブラシSr,Slも従来周知の洗車機と同様に作動する。また、上記洗浄工程終了後は、門型フレーム1を再往復動させて、リンス工程及び乾燥工程が行われるが、発明の要旨ではないので、説明を省略する。
【0035】
また、洗車前に回避指示入力手段としてのリヤワイパー回避キーが押されて回避指示がなされた場合は、リヤワイパー対応部分のブラシ毛が合成樹脂製ブリッスルよりなる前側トップブラシTfについても、リヤガラス対応部分では、後側トップブラシTrと同様の手法でリヤガラスを避けるように制御され、従って、リヤワイパの損傷防止がより確実になされる。

[ワンボックスタイプの自動車の標準洗浄]
ワンボックスタイプの自動車Vを洗車するに当たっては、門型フレーム1をスタート位置に待機させ且つ自動車Vを所定の洗車位置に静止させた状態で、洗車機の操作盤CPにおいて洗車コース及び車種を選択し且つスタートボタンを押すことで、洗車が開始される。その開始から、各トップブラシTf,Trが自動車Vの天井面後端に達する(図9の(イ)〜(ホ))までは、乗用車タイプの洗浄の場合と基本的に同様の昇降制御がなされる。そして、これ以降は、前側トップブラシTfについては、乗用車タイプの洗浄の場合と同様に車体上面後端部を洗浄するが、後側トップブラシTrについては、天井面洗浄高さを維持したままとされ、車体上面後端部の洗浄を行わない(図9の(ヘ)〜(チ))。従って、後述する回避指示を万一、怠ったような場合でも、ブラシ毛30が布又は発泡性合成樹脂製である後側トップブラシTrが、車体後端部に設けられることのあるリヤミラーRMやリヤワイパRWを損傷させるリスクを回避することができる。尚、リヤミラーRMのある自動車の場合は、図10の(ホ)〜(ト)に示すように前側トップブラシTfは、検出車形に基づいて、リヤミラーRMを迂回するように昇降制御される。
【0036】
門型フレーム1の往行が終了すると、ブラシ回転方向を逆転させ、門型フレーム1の復行が開始する。この場合も、基本的には往行時と同様に、前側トップブラシTfが検出車形に応じて、後側トップブラシTrが接触負荷に応じてそれぞれ昇降制御され、また後側トップブラシTrは、往行時と同様、車体天井面の後端に達するまでは、車体上面後端部を避けるように制御され、これにより、後述する回避指示を万一、怠ったような場合でも、ブラシ毛30が布又は発泡性合成樹脂製である後側トップブラシTrが、車体後端部に設けられることのあるリヤミラーRMやリヤワイパRWを損傷させるリスクを回避することができる。そして、門型フレーム1がスタート位置まで復行すると、洗浄工程が終了する。

[ワンボックスタイプの自動車でリヤミラー回避指示ある場合の洗浄]
また、洗車に当たり、操作盤CPに設けた回避指示入力手段としてのリヤミラー回避キー(図示せず)が押された場合は、後側トップブラシTrの制御は、その回避キーによる回避指示が無い場合と同じであり、前側トップブラシTfの制御だけが回避指示が無い場合と異なる。即ち、前側トップブラシTfは、車体天井面の後端に達すると、リヤミラーRMに沿って僅かに下がった後、天井面洗浄高さを維持しつつ前進し、リヤミラーRMを余裕を以て通過した時点で下限位置まで下降する(図11の(ホ)〜(チ))。そして、門型フレーム1が復行したときは、下限位置で車体上面後端部と接触し、そこから所定量上昇した後、門型フレーム1を僅かに再往行させて前側トップブラシTfを車体上面後端部より離し且つブラシ回転方向を変更し、しかる後に再上昇させて天井面洗浄高さに達すると上昇を停止させると共に門型フレーム1を再復行させる。そして前側トップブラシTfが車体天井面後端に達するとブラシ回転方向を変更する(図11の(リ)〜(カ))。それ以降は、回避指示が無い場合と同様である。このような回避制御によれば、リヤミラー対応部分のブラシ毛30Bが合成樹脂製ブリッスルよりなる前側トップブラシTfは、リヤミラーRMを回避しつつ車体上面後端部を効果的に洗浄でき、リヤミラーRMの損傷をより効果的に防止できる。

[ワンボックスタイプの自動車でリヤワイパ回避指示ある場合の洗浄]
また、洗車に当たり、操作盤CPに設けた回避指示入力手段としてのリヤワイパ回避キー(図示せず)が押された場合は、後側トップブラシTrの制御は、その回避キーによる回避指示が無い場合と同じであり、前側トップブラシTfの制御だけが回避指示が無い場合と異なる。即ち、前側トップブラシTfは、車体天井面の後端に達すると、それまでの天井面洗浄高さを維持しつつ前進し、リヤワイパーRWを余裕を以て通過した時点で下限位置まで下降する(図12の(イ)〜(チ))。そして、門型フレーム1が復行したときは、下限位置で車体上面後端部と接触し、そこから、リヤミラー回避指示の場合よりも小さい所定量上昇した後、門型フレーム1を僅かに再往行させて前側トップブラシTfを車体上面後端部より離し且つブラシ回転方向を変更し、しかる後に再上昇させて天井面洗浄高さに達すると上昇を停止させると共に門型フレーム1を再復行させる。そして前側トップブラシTfが車体天井面後端に達するとブラシ回転方向を変更する(図12の(リ)〜(カ))。それ以降は、回避指示が無い場合と同様である。このような回避制御によれば、リヤワイパ対応部分のブラシ毛30Bが合成樹脂製ブリッスルよりなる前側トップブラシTfは、リヤワイパRWを回避しつつ車体上面後端部を効果的に洗浄でき、リヤワイパRWの損傷をより効果的に防止できる。

而して、以上の実施例によれば、前側トップブラシTf及び後側トップブラシTrは、その回転時における両トップブラシTf,Trの外周の、門型フレーム1 前後方向(図1で左右方向)での相互間隔がサイドブラシSr,Slの最大直径よりも小さくなるように互いに近接配置され、特に図示例では、両トップブラシTf,Trの回転軸20相互の軸間距離がサイドブラシSr,Slの最大直径(即ち回転時の外径)よりも小さくなるように互いに十分に接近しており、従って、門型フレーム1の往行時と復行時の何れにおいても、自動車Vを互いに接近した前後一対のトップブラシTf,Trで洗浄することができる。この場合に、その往行時に、先行する前側トップブラシTfによる洗浄により車体面より細かい汚れを浮き上がらせた直後に、その車体面を後追いする後側トップブラシTrで改めて再洗浄できる上、門型フレーム1の復行時にも、往行時と同様に、先行する後側トップブラシTrによる洗浄により車体面より細かい汚れを浮き上がらせた直後に、その車体面を後追いする前側トップブラシTfで改めて再洗浄できるため、全体として車体面を奇麗に洗浄することができる。しかも門型フレーム1の復行時には、前後一対のトップブラシTf,Trで、往行時とは反対方向から車体面を二回洗浄できるため、このようなブラシ作用方向の異なる往行時と復行時の2回ずつのブラシング洗浄により、車体面をむらなく高密度に洗浄することができる。以上の結果、汚れのひどい自動車Vに対しても、短時間で万遍なく奇麗に洗浄することができる。
【0037】
また本実施例では、乗用車タイプの自動車Vのボンネット上面の前端部を両トップブラシTf,Trが往行時も復行時も何れも二回洗浄するので、汚れが目立ち易いボンネット面の前端部に対する仕上がりが頗る良好である。
【0038】
また前記実施例において、一対のトップブラシTf,Trは、その両トップブラシTf,Trの少なくとも一部の領域(図示例ではリヤミラーRM、リヤワイパRW等の突起物に対応する領域)において、ブラシ毛の材質を異ならせており、即ち、その一方(前側トップブラシTf)は、前記突起物に対応する部分のブラシ毛30Bが合成樹脂製のブリッスルより構成され、またその他方(後側トップブラシTr)は、前記突起物に対応する部分を含む全部のブラシ毛30が布又は発泡体製洗浄体より構成される。そのため、車体面の突起物に対応する領域は、その突起物に対応する部分のブラシ毛30Bが合成樹脂製のブリッスルよりなる前側トップブラシTfで、該突起物に対する安全性を高めながら洗浄することができ、また前記突起物に対応する領域の前後に連なる領域は、突起物に対応する部分のブラシ毛30が布又は発泡体製洗浄体よりなる後側トップブラシTrで奇麗に洗浄することができる。その結果、前記実施例でも明らかなように、突起物に対する安全性を十分に確保した上で、車体面の突起物に対応する領域と、その領域の前後に連なる領域とを、一対のトップブラシTf,Trを用いて的確に且つ効果的に洗い分けることができる。
【0039】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく、種々の小設計変更を行うことが可能である。
【0040】
例えば、前記実施例では、本発明を、自動車Vを静止させ、洗車機本体としてのフレーム1を自動車Vに対しその前後に往復移動させ、そのフレーム1に処理装置および乾燥装置を設けるようにした移動式洗車機に実施したものを示したが、本発明では、固定のフレームと、その固定のフレームに対し自動車をその前後方向に移動させる車両移動手段とを備え、該フレームに一対のトップブラシ等の洗浄手段を設けるようにした洗車機に実施してもよい。
【0041】
また前記実施例では、回避指示入力手段としてのリヤワイパ回避キーやリヤミラー回避キーを備えた洗車機が示されるが、本発明では、そのような回避指示入力手段を備えていない洗車機にも実施可能である。
【0042】
また前記実施例では、一方のトップブラシTfの左半分の領域のブラシ毛30Bを合成樹脂製ブリッスル製とし、右半分の領域のブラシ毛30Aを布又は発泡体製洗浄体製とし、また他方のトップブラシTrの全部のブラシ毛30を布又は発泡体製洗浄体製としたものを示したが、請求項1の発明では、一方のトップブラシTfと他方のトップブラシTrの少なくとも一部の領域のブラシ毛の材質を異ならせることが特徴であるから、例えば一方のトップブラシTfの全部のブラシ毛を合成樹脂製ブリッスル製とした実施例も可能である。
【0043】
また請求項2の発明では、一方のトップブラシTfの少なくとも車体面の突起物(図示例ではリヤミラー、リヤワイパ)に対応した領域のブラシ毛を合成樹脂製ブリッスル製とし、他方のトップブラシTfの少なくとも車体面の突起物(図示例ではリヤミラー、リヤワイパ)に対応した領域のブラシ毛を布又は発泡体製洗浄体製とすることが特徴であるので、例えば、一方のトップブラシTfの全部のブラシ毛を合成樹脂製ブリッスル製としたり、或いは他方のトップブラシTrの突起物と対応しない領域を合成樹脂製ブリッスル製としてもよい。
【0044】
また実施例の一対のトップブラシTf,Trを前後入れ換えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例に係る洗車機の全体側面図
【図2】図1の2矢視平面図
【図3】図1の3−3線拡大断面図
【図4】図1の4矢視より見たトップブラシ昇降機構の要部拡大図
【図5】図1の5−5線拡大断面図
【図6】トップブラシと自動車の車体前端部の接触状態を示す拡大側面図
【図7】トップブラシと2タイプの自動車の車体前端部の接触状態を示す平面図
【図8】乗用車タイプの自動車の標準洗浄動作を示す工程説明図
【図9】ワンボックスタイプの自動車の標準洗浄動作を示す工程説明図
【図10】ワンボックスタイプのリヤミラー付き自動車の標準洗浄動作を示す工程説明図
【図11】ワンボックスタイプのリヤミラー付き自動車の回避指示時の洗浄動作を示す工程説明図
【図12】ワンボックスタイプのリヤワイパ付き自動車の回避指示時の洗浄動作を示す工程説明図
【符号の説明】
【0046】
1 洗車機本体としての門型フレーム
30 ブラシ毛
30B ブラシ毛
RM 突起物としてのリヤミラー
RW 突起物としてのリヤワイパ
Tf 一方のトップブラシとしての前側トップブラシ
Tr 他方のトップブラシとしての後側トップブラシ
V 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車機本体に一対のトップブラシを設け、そのトップブラシで自動車を洗浄できるようにした洗車機において、
前記一対のトップブラシは、その両トップブラシの少なくとも一部の領域において、ブラシ毛の材質を異ならせていることを特徴とする洗車機。
【請求項2】
洗車機本体に一対のトップブラシを設け、そのトップブラシで車体上面に突起物を有する自動車を洗浄できるようにした洗車機において、
一方のトップブラシは、前記突起物に対応する部分のブラシ毛が合成樹脂製のブリッスルより構成され、また他方のトップブラシは、前記突起物に対応する部分のブラシ毛が布又は発泡体製洗浄体より構成されることを特徴とする洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−110734(P2008−110734A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296504(P2006−296504)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000210595)タケウチテクノ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】