洗車機
【課題】 洗車機において、洗車台数の増加に従って布製洗浄体の腰、即ち弾力が減少して、洗浄ブラシの進行方向に対して布製洗浄体が斜め方向に擦り移動する方向の角度(α)が小さくなり洗浄効果が低下する問題を、低減できるようにする。
【解決手段】 円盤状の布製洗浄体61A,61Bに、弾性を有する円盤状の発泡体製洗浄体81を隣接配置し、この発泡体製洗浄体81の弾力により、車体面に対する布製洗浄体61A,61Bの、洗浄ブラシ進行方向に向かって回転支持軸21の軸方向一方側及び他方側への斜め方向a,bの擦り移動を助勢する。
【解決手段】 円盤状の布製洗浄体61A,61Bに、弾性を有する円盤状の発泡体製洗浄体81を隣接配置し、この発泡体製洗浄体81の弾力により、車体面に対する布製洗浄体61A,61Bの、洗浄ブラシ進行方向に向かって回転支持軸21の軸方向一方側及び他方側への斜め方向a,bの擦り移動を助勢する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの被洗浄車両の車体面に洗浄体を回転させつつ追従接触させて車体面を洗浄するようにした洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転支持軸に、複数の円盤状の布製洗浄体を前記回転支持軸の回転軸線に対して傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備えた洗車機は、特許文献1,2に記載されているように公知である。また、特許文献3には、ブラシ軸(回転支持軸)に、布製ブラシ単体25(布製洗浄体)とスポンジ製単体27とが、ブラシ軸心の方向で交互に配置された洗浄ブラシを備えた洗車機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−282451号公報
【特許文献2】特開2008−189011号公報
【特許文献3】特開2003−48520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1,2の洗車機のように、回転支持軸に、複数の円盤状の布製洗浄体を前記回転支持軸の回転軸線に対して傾斜させて取り付けると、車体面に対し布製洗浄体を、洗浄ブラシ進行方向に向かって回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動をさせることができ、その擦り移動により洗浄効果を向上させることができる利点がある。
【0005】
しかしながら布製洗浄体は、使用するに従って(即ち、同一の布製洗浄体で洗浄する洗車台数が多くなるに従って)布製洗浄体の先端側の腰、即ち弾力が弱くなって、洗浄ブラシの被洗浄車両に対する進行方向に対して布製洗浄体が前記擦り移動する方向の角度(α)が小さくなり、洗浄効果が低下する、という問題があった。
【0006】
また、前記特許文献3の洗車機には、ブラシ軸に、布製ブラシ単体とスポンジ製単体とがブラシ軸心の方向で交互に配置されているが、車体面に対し布製洗浄体を、洗浄ブラシの進行方向に向かって回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動をさせる構成を元々、備えていない。
【0007】
本発明はかかる結果なされたものであり、洗車台数の増加に従って布製洗浄体の腰、即ち弾力が減少して、洗浄ブラシの進行方向に対して布製洗浄体が前記擦り移動する方向の角度(α)が小さくなり洗浄効果が低下する前記問題を低減可能とした新規な洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的達成のため、請求項1記載の発明は、回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とし、また請求項2の発明は、回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を該回転支持軸の回転軸線に対し傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とする。
【0009】
さらに請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の前記特徴に加えて、前記発泡体製洗浄体が、隣り合う前記布製洗浄体の間に挟まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発泡体製洗浄体の弾力により、車体面に対する布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢するので、洗車台数の増加に従って布製洗浄体の腰すなわち弾力が弱くなることで洗浄ブラシの進行方向に対して布製洗浄体が車体面上を斜め方向に擦り移動する方向の角度(α)が小さくなって洗浄効果が低下するという問題を、低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明洗車機の全体側面図
【図2】図1の2−2線に沿う洗車機の平面図
【図3】図1の3−3線に沿う洗車機の後面図
【図4】図2の4矢視仮想線囲い部分の拡大詳細図
【図5】図1の5矢視仮想線囲い部分の拡大詳細図
【図6】洗浄体素材の側面図
【図7】第1の洗浄体の背面図
【図8】第2の洗浄体の正面図
【図9】図8の9−9線に沿う断面図
【図10】芯材の正面図
【図11】トップブラシによる自動車の洗浄過程を示す図
【図12】トップブラシの、車体上面洗浄時の状態を示す模式図
【図13】サイドブラシによる車体側面洗浄時の状態を示す模式図
【図14】車体とブラシの干渉を説明する模式図
【図15】移動方向a,bの作用を説明する第1の模式図
【図16】移動方向a,bの作用を説明する第2の模式図
【図17】トップブラシ(サイドブラシ)の進行方向に対する洗浄体の傾斜角を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0013】
先ず、図1〜3において、洗車機の洗車機本体1は、被洗浄車両としての自動車Vを跨ぎ得る、フレームとしての門型の走行フレーム2を備え、この走行フレーム2は、走行モータ3,3で駆動される左右一対の駆動輪4,4と左右一対の従動輪5,5により左右一対の走行レール6,6を往復走行する。一方の走行モータ3の出力軸には、洗車機本体1の走行位置を検出するロータリエンコーダ51が設けられている。
【0014】
走行フレーム2の上部には、その左右方向に延びる昇降駆動軸7が回転自在に支持され、この昇降駆動軸7の一端には、後述のトップブラシ13の昇降位置を検出するロータリエンコーダ28が設けられている。
【0015】
また、走行フレーム2の左右側部には、上下方向に延びる左右一対のガイドレール8,8が一体に設けられている。ガイドレール8,8は横断面コ字状に形成されており、これらのガイドレール8,8には、このガイドレール8,8の内側壁で案内される2個のローラ9,9とガイドレール8,8の内奥壁で案内される1個のローラ10とを有する左右一対の台車11A,11Bがそれぞれ昇降できるように設けられている。
【0016】
一対の台車11A,11Bには、トップブラシ13のトップブラシ支持軸12の両端が固定されており、このトップブラシ支持軸12には、後述するトップブラシ13が回転自在に支持されている。そして、トップブラシ13は、一対の台車11A,11Bと共に左右一対のガイドレール8,8に案内される。
【0017】
図2に示すように、走行フレーム2の一側上部には、昇降モータ14が設けれられている。昇降モータ14の出力軸に固定したスプロケット15と昇降駆動軸7に固定したスプロケット16には無端状のチエン17が巻き掛けられている。また、昇降駆動軸7の両端部には、スプロケット18,18が固定され、一方、走行フレーム2の左右下部には、これらのスプロケット18,18に対応する他のスプロケット19,19が回転自在に支持されており、これらのスプロケット18,18,19,19には、チエン20,20がそれぞれ巻き掛けられており、これらのチエン20,20の両端は、前記台車11A,11Bの上下部にそれぞれ接続されている。
【0018】
しかして、昇降モータ14を駆動すると、左右一対の台車11A,11Bは、案内レール8,8の案内されて同調、昇降される。
【0019】
図2に示すように、トップブラシ13(後に詳述)の、パイプよりなる回転支持軸21は、トップブラシ支持軸12に軸受を介して回転自在に支持されており、この回転支持軸21の、一方の台車11Bに近い一端には、スプロケット22が一体に設けられている。一方の台車11Bには、ブラシ回転モータ23が設けられており、このブラシ回転モータ23の出力軸に設けられたスプロケット24と前記スプロケット22には無端状のチエン25が巻き掛けられている。そして、ブラシ回転モータ23の駆動によれば、トップブラシ13の回転支持軸21が回転駆動される。
【0020】
また、図2に示すように、他方の台車11Aを案内するガイドレール8の下部と上部には、この台車11Aが下限位置にあることを検出する下限検出スイッチ26と、台車11Aが上限位置にあることを検出する上限検出スイッチ27とがそれぞれ設けられている。
【0021】
図1,3に示すように、走行フレーム2の往行方向後側の上部には、その走行フレーム2の左右方向に延びる案内レール31が支持され、この案内レール31の上部および下部には山形レール31A,31Bが固定されている。案内レール31には、左右一対の台車32L,32Rがそれぞれ往復走行可能に支持され、各台車32L,32Rの上部には、山形レール31A上を転動する駆動輪33および遊輪34が回転可能に支持され、また各台車32L,32Rの下部には、山形レール31B上を転動する一対の遊輪35,35が回転可能に支持されている。各台車32L,32Rには、トルクモータ36L,36Rがそれぞれ支持され、これらのトルクモータ36L,36Rの出力軸に前記駆動輪33,33がそれぞれ連結されている。
【0022】
しかして、各トルクモータ36L,36Rを駆動すれば、各台車32L,32Rをそれぞれ案内レール31に沿って往復走行させることができる。
【0023】
図1,3に示すように、各台車32L,32Rの中間部には、横方向に延びる支持軸37がそれぞれ固定され、これらの支持軸37には、ブラシ支持筒38が軸受を介してそれぞれ左右方向に揺動可能に支持されている。ブラシ支持筒38は上下方向に延びており、その下部には、上下方向に延びる回転軸39が回転自在に支持され、その回転軸39には、後に詳述するサイドブラシ40が設けられている。
【0024】
図1,3に示すように、各ブラシ支持筒38の上部には、モータベース41が固定され、そのモータベース41には、回転モータ42が設けられている。回転モータ42の出力軸に設けたスプロケット43と前記回転軸39の上端に設けたスプロケット44間には無端状のチエン45が掛け渡されている。
【0025】
しかして、回転モータ42を駆動して、後述のサイドブラシ40を回転させることができる。
【0026】
図3に示すように、台車32L,32Rには、支持軸37よりも上部で、ブラシ支持筒38の両側においてストッパー46,47がそれぞれ設けられている。各ブラシ支持筒38は、ストッパー46,47の間において揺動できるようになっており、ブラシ支持筒38がストッパー46に当たると、サイドブラシ40が鉛直位置(図3の位置)になり、またブラシ支持筒38がストッパー47に当たると、サイドブラシ40が傾斜位置になるようにされている。
【0027】
案内レール31の中央部には、台車36L,36Rがそれぞれ閉じた位置(図3位置)にあることを検出する閉スイッチ48L,48Rが設けられ、また案内レール31の左右側部には、台車36L,36Rがそれぞれ開いた位置にあることを検出する開スイッチ49L,49Rが設けられている。
【0028】
図1に示すように、洗車機の設置面上には、スタート位置カム52が設けられ、一方、走行フレーム2には、そのスタート位置カム52に当たって洗車機本体1がスタート位置にあることを検出するスタート位置検出スイッチ53が設けられている。
【0029】
図1,2に示すように、走行フレーム2のトップブラシ13よりも前部には、自動車V(図11参照)の上面位置を検出する車両上面位置検出手段54が設けられている。この車両上面位置検出手段54は、走行フレーム2の左右両側で上下方向にそれぞれ配列される、第1の光電センサ群54A,54B,54C・・・・54Nと、第2の光電センサ群54A′,54B′,54C′・・・・54N′とより構成されており、第1の光電センサ群54A,54B,54C・・・・54N群はそれぞれ投光器であり、第2の光電センサ群54A′,54B′,54C′・・・・54N′はそれぞれ受光器である。
【0030】
そして、図2中、2点鎖線Lは、第1の光電センサ54Aと第2の光電センサ54A′間の光軸を示している。
【0031】
図1に示すように、走行フレーム2の前面には、この洗車機を作動制御するための制御盤55が設けられており、この制御盤55内には、フレーム2に設けられる洗車機器を制御する制御装置56が設けられている。
【0032】
図1中、符号57は、自動車Vの車体上面に乾燥エアーを吹き付けるためのトップノズル、符号58,58は、自動車Vの車体両側面に乾燥エアーを吹き付けるための一対のサイドノズルである。
【0033】
なお、図示しないが、走行フレーム2には、自動車Vに洗浄水を噴射する、従来公知の洗浄水噴射装置が設けられている。
【0034】
つぎに、図2に、図4,6〜9を併せ参照して本発明にかかるトップブラシ13の構造について説明する。
【0035】
トップブラシ13は、左右の台車11L,11Rに固定のトップブラシ支持軸12と、この支持軸12に軸受を介して回転自在に支持される、パイプよりなる回転支持軸21と、この回転支持軸21にリベットRで固定される複数の洗浄体ユニット60とより構成されており、各洗浄体ユニット60は、第1の洗浄体61Aと第2の洗浄体61Bと芯材81とを備えており、円筒状の取付部62と、その取付部62に着脱可能に連結される円板状の押え板63とにより回転支持軸21に軸方向に間隔をおいて固定される。
【0036】
図4,7に示すように、第1の洗浄体61Aは不織布より円盤状に形成され、その放射方向に複数の山折と谷折とを交互に有して周方向に波状に形成されてなる洗浄体素材64を、複数枚(本実施例では3枚)重ね、その一側面に図9に示すように、他の洗浄体素材65を少なくとも1枚(本実施例では1枚)重ねて、それらを図7、8に示すN2,N3位置で同心円状に縫合して構成されている。
【0037】
この第1の洗浄体61Aの作り方について説明すると、図6に示すように、不織布よりなる矩形状の洗浄体素材64の両端N1,N1を縫合してリング状にする。つぎに、リング状の洗浄体素材64を図6に示す複数位置で山折と谷折りして、図7に示すように円盤状にする。
【0038】
つぎに、図8,9に示すように、洗浄体素材64を複数枚(本実施例では3枚)重合させ、その重合体の一側面に図9に示すように、他の洗浄体素材65を少なくとも1枚(本実施例では1枚)重ねた状態で、それらを図7、8に示すN2、N3位置で同心状に縫合する。
【0039】
つぎに、ビク型(トムソン型)で円形Cに切断し、複数のボルト穴H1を明けることで作られる。
【0040】
他の洗浄体素材65は、図8に示すように、平板状の不織布をビク型(トムソン型)で、前記洗浄体素材64の円形Cと同じ外形寸法になるように円形に切断する。つぎに、取付穴H2と、その外周部に周方向に間隔をあけて複数のボルト穴H1を明けることで作られる。
【0041】
また、第2の洗浄体61Bは、第1の洗浄体61Aが洗浄体素材64を複数枚(本実施例では3枚)重ねるのに変えて、洗浄体素材64を、第1の洗浄体61Aとは異なる複数枚(本実施例では2枚)重ねるところが相違し、他は第1の洗浄体61Aと同様に作られる。
【0042】
前記芯材81は、本発明の発泡体製洗浄体を構成するものであって、合成樹脂発泡体シート(例えば本実施例では、厚さ3.5ミリメートルの単泡スポンジシート)で作られる。この芯材81の作り方について説明すると、図10に示すように、ビク型(トムソン型)で、円形Cの外形寸法よりも小さい円形Dに切断する。つぎに、取付穴H2と、その外周部に周方向に間隔をあけて複数のボルト穴H1を明ける。つぎに、取付穴H2から外周までの切り込み82を作り、さらに芯材81の外周部には、比較的浅い深さ(例えば本実施例では約10ミリメートル)の複数の切り込み83を周方向に間隔をおいて入れることで作られる。
【0043】
芯材81の腰が弱くなったときに、前記切り込み82により、後述する複数のボルト・ナットを外せば、芯材81を新しいものに取り替えることができる。
【0044】
つぎに、前述のようにして作られた、第1の洗浄体61Aおよび第2の洗浄体61Bと芯材81とよりなる洗浄体ユニット60の作り方について説明する。
【0045】
1つの第1の洗浄体61Aと、1つの第2の洗浄体61Bと、1つの芯材81を用意し、図4に示すように、第1、第2の洗浄体61A、61Bの、平板状の他の洗浄体素材65が両外側になるようにして、芯材81を第1、第2の洗浄体61A、61Bで挟むように積層し、それら第1の洗浄体61Aと第2の洗浄体61Bと芯材81の積層体の内周部を、取付部62の外周に一体に突設したフランジ部62Fと、取付部62の外周に嵌合した押え板63との間に重ねるように挟持し、それらを複数のボルト・ナット66で固定する。
【0046】
図4に示すように、第1の洗浄体61Aと第2の洗浄体61Bと芯材81とよりなる洗浄体ユニット60は、回転支持軸21に取り付けた状態で、回転支持軸21の回転軸線と直交する直角面に対して傾斜角度β(約20度)傾斜している。
【0047】
つぎに、図1,3に図5を併せ参照して本発明にかかるサイドブラシ40の構造について説明する。
【0048】
このサイドブラシ40は、下段サイドブラシ40Aおよび上段サイドブラシ40Bを、前記回転軸39に固定した、パイプよりなる回転支持軸67に縦列固定して構成されている。
【0049】
下段サイドブラシ40Aおよび上段サイドブラシ40Bはそれぞれ洗浄体ユニットが別の構造を備えており、そのうち下段サイドブラシ40Aは、図5に示すように、回転支持軸67に、トップブラシ13の前記洗浄体ユニット60と同じ構造で外形寸法が相違(本実施例では洗浄体ユニット60よりも若干小径)の洗浄体ユニット60Aと、スポンジ円盤68とを軸方向に交互に且つ間隔をおいて取り付けて構成されている。スポンジ円盤68は、その中央部に前記取付部62のボス部62Aの外形寸法よりも若干小さい取付穴69が斜めに明けられており、このスポンジ円盤68は、それの弾性により取付穴62とボス部62Aとの間に働く摩擦力で、ボス部62Aの所定位置に固定されている。
【0050】
さらに、前記上段サイドブラシ40Bは、回転支持軸67に、トップブラシ13の前記洗浄体ユニット60と同じ構造で、外形寸法が相違する複数の洗浄体ユニット60Bを軸方向に間隔をおいて取り付けて構成されており、それらの洗浄体ユニット60Bの回転支持軸67に対する取付角は、洗浄体ユニット60Aと同じである。
【0051】
つぎに、主に、図11を参照して、この実施例の作用について説明する。
【0052】
洗車機に設けた、図示しないスタートキーが押されると、洗車機本体1はスタート位置から往走行する。この往走行時に、トップブラシ13およびサイドブラシ40,40で被洗浄車両、この実施例では自動車Vの車体面を洗浄する。このとき、トップブラシ13は、図11に示す矢印方向すなわち反時計方向に回転する。サイドブラシ40は、図13で左側のサイドブラシ40が上から見て反時計方向に、また図13で右側のサイドブラシ40が上から見て時計方向にそれぞれ回転する。
【0053】
トップブラシ13は、車両上面検出手段54で検出した車両上面位置と、ロータリエンコーダ51で検出した洗車機本体1の走行位置と、ロータリエンコーダ28で検出したトップブラシ13の昇降位置とにより、トップブラシ13の回転軸線から車両上面までの距離S(図14参照)を一定として車両上面に追従するように、昇降モータ14を制御することで昇降される。尚、図14の(A)は、洗浄体ユニット60の盤面が車両上面に対し最大限(即ち約20度)傾斜している状態(後述する図15の(A)(E)の状態)を示しており、また図14の(B)は、洗浄体ユニット60の盤面が車両上面に対し直交している状態(後述する図16の(C)(G)の状態)を示しているが、その何れの状態でも芯材81の外周端は車両上面の近傍に位置している。
【0054】
一方、サイドブラシ40,40は、トルクモータ36L,36Rを制御することで、一定の押付力で車体側面に接触する。
【0055】
ところで、トップブラシ13による自動車Vの洗浄過程において、トップブラシ13の回転により、図12(A),(B)に示すように、洗浄体素材64,65の外周部が、自動車Vの車体面上を左右に移動する。この左右移動により、洗浄体素材64,65の先端(即ち外周端)は、図17に示すようにトップブラシ13の進行方向に向かって回転支持軸21の軸方向一方側又は他方側(図17で上方側又は下方側)の斜め方向a,bに車体面に対し擦り移動する。そして、この斜め方向a、bの擦り移動により車体面に対する洗浄効果を向上させることができる。
【0056】
図17において、洗浄体素材64,65の先端は、移動方向a,bで示す方向に移動し、その移動方向は範囲am〜bm間で変化する。
【0057】
次に、主に、図15,16を参照して、車体面に対し洗浄体素材64,65の外周部(先端部)が、トップブラシ13の進行方向に対して斜め左右方向a,bに擦り移動する作用を説明する。
【0058】
図15(A)は、洗浄体ユニット60の盤面が車体上面に対し最大傾斜角度(即ち20度)傾斜しているときを示す。この状態をトップブラシ13の回転の基点0度とする。
【0059】
このとき、洗浄体ユニット60の車体上面に接触している外周部は、(A)正面図、平面図に示すように右に曲がる。(尚、この右に曲がる作用は後述する。)
この状態では、トップブラシ13の回転により、(A)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、アの範囲においては平面図でブラシ進行方向に向かって斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またイの範囲においては平面図でブラシ進行方向に向かって斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0060】
また、この状態では、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60と車体上面との摩擦により、平面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部のウ部付近が右方向へ移動し難くなることと、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60のエ部付近の遠心力でエ部付近が(A)正面図、平面図で右方向へ曲がり、この曲がりと前記ア、イ範囲の接触部の曲がりとが干渉することとで、オ部が(A)正面図、平面図で左方向へ脹らみ、このオ部の脹らみにより、ア範囲にある接触部は平面図で左方向すなわち矢印b方向へ移動する。このとき、ア、イ範囲にある接触部は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記ア、イ範囲にある洗浄体ユニット60の部分が占める位置付近まで移動するので、矢印b方向の、トップブラシ13の進行方向に対する角度αは大きくなる。
【0061】
そして、トップブラシ13がさらに回転すると、前記エ部は、遂にはトップブラシ13の回転による遠心力で右方へ曲げる力に抗して、(B)正面図、平面図に示すように左方へ曲がり、その曲がり状態で車体上面と接触する。このとき、前記エ部は、(B)正面図、平面図に示すように、洗浄体ユニット60の外周部(先端部)の腰とこの外周部より中心側の腰により、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記エ部が占める位置よりも左側の位置に保持される。
【0062】
尚、オ部が膨らむことは、基点0度の位置のみで起きるのではなく基点0度の近傍の回転位置でも起きる。
【0063】
前記基点(A)から45度回転した(B)の回転位置までトップブラシ13が回転すると、(B)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、カの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またキの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0064】
そして、トップブラシ13が前記(B)から更に45度回転して(C)になると、(C)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、クの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またケの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0065】
次いで、トップブラシ13が前記(C)から更に45度回転して(D)になると、(D)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、コの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またサの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0066】
次いで、トップブラシ13が前記(D)から更に45度回転して(E)になると、(E)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、シの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またスの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0067】
この(E)の状態では、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60と車体上面との摩擦により、平面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部のセ部付近が左方向へ移動し難くなることと、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60のソ部付近の遠心力でソ部付近が(E)正面図、平面図で左方向へ曲がり、この曲がりと前記シ、ス範囲の接触部の曲がりとが干渉することとで、タ部が(E)正面図、平面図で右方向へ脹らみ、このタ部の脹らみにより、シ範囲にある接触部は平面図で右方向すなわち矢印a方向へ移動する。このとき、シ、ス範囲にある接触部は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記シ、ス範囲にある洗浄体ユニット60の部分が占める位置付近まで移動するので、矢印a方向の、トップブラシ13の進行方向に対する角度αは大きくなる。
【0068】
そして、トップブラシ13がさらに回転すると、前記ソ部は、遂にはトップブラシ13の回転による遠心力で左方へ曲げる力に抗して、(F)正面図、平面図に示すように右方へ曲がり、その曲がり状態で車体上面と接触する。このとき、前記ソ部は、(F)正面図、平面図に示すように、洗浄体ユニット60の外周部(先端部)の腰とこの外周部より中心側の腰により、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記ソ部が占める位置よりも右側の位置に保持される。
【0069】
尚、タ部が膨らむことは、基点から180度の回転位置のみで起きるのではなく、その180度の近傍の回転位置でも起きる。
【0070】
前記(E)から45度回転した(F)の回転位置までトップブラシ13が回転すると、(F)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、チ範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またツ範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0071】
そして、トップブラシ13が前記(F)から更に45度回転して(G)になると、(G)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、テの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またトの範囲においては平面図で左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0072】
次いで、トップブラシ13が前記(G)から更に45度回転して(H)になると、(H)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、ナの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またニの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0073】
そして、トップブラシ13が前記(H)から更に45度回転して前記(A)の回転位置に戻る。
【0074】
以上において、前記芯材81が設けられない場合は、洗車台数の増加にしたがって洗浄素材64,65の車体上面との接触部の腰が減少すると、例えば図15(B)のときに、カ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印b方向に移動する距離が小さくなる。また、前記カ範囲の接触部よりも中心側の腰が減少すると、例えば図15(B)のときに、その中心側は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合にその中心側が占める位置よりも右側へ移動する。これにより、その接触部が矢印b方向に移動する距離がさらに小さくなり、すなわち、矢印bの前記角度αは小さくなる。また、前記のように矢印b方向に移動する距離が小さいので、キ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印a方向に移動する前記角度αは小さくなる。このように、他の回転角度のときも矢印a、bの角度αは小さくなる。
【0075】
これに対して、前記芯材81があると、洗車台数の増加にしたがって洗浄素材64,65の腰が減少しても、芯材81の弾力により、洗浄ブラシの進行方向に対する洗浄素材64,65の先端部の左右方向への移動を助勢することができる。
【0076】
すなわち、カ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印b方向に移動するのを芯材81が助勢するので、その移動距離が大きくなる。また、前記カ範囲の接触部よりも中心側の腰が減少しても、芯材81の弾力により、その中心側は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合にその中心側が占める位置よりも右側へ移動する距離が小さくなる。
【0077】
これにより、その接触部が矢印b方向に移動する距離がさらに大きくなり、すなわち、矢印bの前記角度αは大きくなる。また、前記のように矢印b方向に移動する距離が大きいので、キ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印a方向に移動する前記角度αは大きくなる。このように、他の回転角度のときも矢印a、bの角度αは大きくなる。
【0078】
かくして、洗車台数の増加にしたがって布製洗浄体61A,61Bの腰(弾力)が減少して、トップブラシ13の被洗浄車両に対する進行方向に対して布製洗浄体61A,61Bと車体面との接触部の移動方向角度(α)が小さくなり洗浄効果が低下することを、芯材81を用いた簡単な構造で低減することができる。
【0079】
サイドブラシ40,40は、洗浄体素材64と他の洗浄体素材65の外周部が上下に移動する。これにより、トップブラシ13と同様の効果を生じる。
【0080】
また、下段サイドブラシ40Aは、図5に明瞭に示すように、洗浄体ユニット60Aとスポンジ円盤68とが交互に配設されるので、自動車Vの車体がサイドブラシ40の回転支持軸67に近づき過ぎるのを防止して、洗浄体素材64、他の洗浄体素材65や車体が傷むことを防止できる。
【0081】
さらに中段サイドブラシ40Bの中間部ブラシ40Bnは、発泡体により構成したので、ドアミラーMやフェンダミラーなどの車体の上下方向の中間部分より突出する付属機器が破損するのを防止できる。
【0082】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0083】
たとえば、前記実施例では、本発明を、被洗浄車両に対し洗車機本体1を走行させる洗車機に実施した場合を説明したが、コンベアなどの移送手段により被洗浄車両を移送する洗車機にも実施できる。
【0084】
また前記実施例では、発泡体製洗浄体としての芯材81を洗浄体61A,61Bよりも小径のものを使用したが、本発明では、芯材81を洗浄体61A,61Bよりも大径、又は同径のものを使用してもよい。
【0085】
また前記実施例では、発泡体製洗浄体としての芯材81を洗浄体61A,61Bに密着状態で隣接配置したものを示したが、本発明では、発泡体製洗浄体としての芯材81で洗浄体61A,61Bに、本発明の効果を達成可能な十分な弾力を付与できるのであれば、芯材81を洗浄体61A,61Bに小間隔をおいて隣接配置してもよい。
【0086】
また前記実施例では、発泡体製洗浄体としての芯材81の両側に布製洗浄体61A,61Bを配置するものを示したが、本発明では、発泡体製洗浄体としての芯材を布製洗浄体の両側に配置するようにしてもよい。
【0087】
また、本発明は、布製洗浄体を構成する洗浄体素材64,65に不織布を用いたが、これに代えて織布、編布などの他の布を用いることができる。
【0088】
また、前記実施例では、回転支持軸21,67に円盤状の布製洗浄体61A,61Bを該回転支持軸21,67の回転軸線に対し傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備えた洗車機を示したが、本発明(請求項1)は、回転支持軸に円盤状の布製洗浄体を該回転支持軸の回転軸線に対し直交させて取り付けた洗浄ブラシを備えた洗車機に実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
2・・・・・・フレーム(走行フレーム)
13・・・・・・洗浄ブラシ(トップブラシ)
21・・・・・・回転支持軸
40・・・・・・洗浄ブラシ(サイドブラシ)
61A・・・・・洗浄体(第1の洗浄体)
61B・・・・・洗浄体(第2の洗浄体)
67・・・・・・回転支持軸
81・・・・・・発泡体製洗浄体(芯材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの被洗浄車両の車体面に洗浄体を回転させつつ追従接触させて車体面を洗浄するようにした洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転支持軸に、複数の円盤状の布製洗浄体を前記回転支持軸の回転軸線に対して傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備えた洗車機は、特許文献1,2に記載されているように公知である。また、特許文献3には、ブラシ軸(回転支持軸)に、布製ブラシ単体25(布製洗浄体)とスポンジ製単体27とが、ブラシ軸心の方向で交互に配置された洗浄ブラシを備えた洗車機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−282451号公報
【特許文献2】特開2008−189011号公報
【特許文献3】特開2003−48520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1,2の洗車機のように、回転支持軸に、複数の円盤状の布製洗浄体を前記回転支持軸の回転軸線に対して傾斜させて取り付けると、車体面に対し布製洗浄体を、洗浄ブラシ進行方向に向かって回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動をさせることができ、その擦り移動により洗浄効果を向上させることができる利点がある。
【0005】
しかしながら布製洗浄体は、使用するに従って(即ち、同一の布製洗浄体で洗浄する洗車台数が多くなるに従って)布製洗浄体の先端側の腰、即ち弾力が弱くなって、洗浄ブラシの被洗浄車両に対する進行方向に対して布製洗浄体が前記擦り移動する方向の角度(α)が小さくなり、洗浄効果が低下する、という問題があった。
【0006】
また、前記特許文献3の洗車機には、ブラシ軸に、布製ブラシ単体とスポンジ製単体とがブラシ軸心の方向で交互に配置されているが、車体面に対し布製洗浄体を、洗浄ブラシの進行方向に向かって回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動をさせる構成を元々、備えていない。
【0007】
本発明はかかる結果なされたものであり、洗車台数の増加に従って布製洗浄体の腰、即ち弾力が減少して、洗浄ブラシの進行方向に対して布製洗浄体が前記擦り移動する方向の角度(α)が小さくなり洗浄効果が低下する前記問題を低減可能とした新規な洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的達成のため、請求項1記載の発明は、回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とし、また請求項2の発明は、回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を該回転支持軸の回転軸線に対し傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とする。
【0009】
さらに請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の前記特徴に加えて、前記発泡体製洗浄体が、隣り合う前記布製洗浄体の間に挟まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発泡体製洗浄体の弾力により、車体面に対する布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢するので、洗車台数の増加に従って布製洗浄体の腰すなわち弾力が弱くなることで洗浄ブラシの進行方向に対して布製洗浄体が車体面上を斜め方向に擦り移動する方向の角度(α)が小さくなって洗浄効果が低下するという問題を、低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明洗車機の全体側面図
【図2】図1の2−2線に沿う洗車機の平面図
【図3】図1の3−3線に沿う洗車機の後面図
【図4】図2の4矢視仮想線囲い部分の拡大詳細図
【図5】図1の5矢視仮想線囲い部分の拡大詳細図
【図6】洗浄体素材の側面図
【図7】第1の洗浄体の背面図
【図8】第2の洗浄体の正面図
【図9】図8の9−9線に沿う断面図
【図10】芯材の正面図
【図11】トップブラシによる自動車の洗浄過程を示す図
【図12】トップブラシの、車体上面洗浄時の状態を示す模式図
【図13】サイドブラシによる車体側面洗浄時の状態を示す模式図
【図14】車体とブラシの干渉を説明する模式図
【図15】移動方向a,bの作用を説明する第1の模式図
【図16】移動方向a,bの作用を説明する第2の模式図
【図17】トップブラシ(サイドブラシ)の進行方向に対する洗浄体の傾斜角を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0013】
先ず、図1〜3において、洗車機の洗車機本体1は、被洗浄車両としての自動車Vを跨ぎ得る、フレームとしての門型の走行フレーム2を備え、この走行フレーム2は、走行モータ3,3で駆動される左右一対の駆動輪4,4と左右一対の従動輪5,5により左右一対の走行レール6,6を往復走行する。一方の走行モータ3の出力軸には、洗車機本体1の走行位置を検出するロータリエンコーダ51が設けられている。
【0014】
走行フレーム2の上部には、その左右方向に延びる昇降駆動軸7が回転自在に支持され、この昇降駆動軸7の一端には、後述のトップブラシ13の昇降位置を検出するロータリエンコーダ28が設けられている。
【0015】
また、走行フレーム2の左右側部には、上下方向に延びる左右一対のガイドレール8,8が一体に設けられている。ガイドレール8,8は横断面コ字状に形成されており、これらのガイドレール8,8には、このガイドレール8,8の内側壁で案内される2個のローラ9,9とガイドレール8,8の内奥壁で案内される1個のローラ10とを有する左右一対の台車11A,11Bがそれぞれ昇降できるように設けられている。
【0016】
一対の台車11A,11Bには、トップブラシ13のトップブラシ支持軸12の両端が固定されており、このトップブラシ支持軸12には、後述するトップブラシ13が回転自在に支持されている。そして、トップブラシ13は、一対の台車11A,11Bと共に左右一対のガイドレール8,8に案内される。
【0017】
図2に示すように、走行フレーム2の一側上部には、昇降モータ14が設けれられている。昇降モータ14の出力軸に固定したスプロケット15と昇降駆動軸7に固定したスプロケット16には無端状のチエン17が巻き掛けられている。また、昇降駆動軸7の両端部には、スプロケット18,18が固定され、一方、走行フレーム2の左右下部には、これらのスプロケット18,18に対応する他のスプロケット19,19が回転自在に支持されており、これらのスプロケット18,18,19,19には、チエン20,20がそれぞれ巻き掛けられており、これらのチエン20,20の両端は、前記台車11A,11Bの上下部にそれぞれ接続されている。
【0018】
しかして、昇降モータ14を駆動すると、左右一対の台車11A,11Bは、案内レール8,8の案内されて同調、昇降される。
【0019】
図2に示すように、トップブラシ13(後に詳述)の、パイプよりなる回転支持軸21は、トップブラシ支持軸12に軸受を介して回転自在に支持されており、この回転支持軸21の、一方の台車11Bに近い一端には、スプロケット22が一体に設けられている。一方の台車11Bには、ブラシ回転モータ23が設けられており、このブラシ回転モータ23の出力軸に設けられたスプロケット24と前記スプロケット22には無端状のチエン25が巻き掛けられている。そして、ブラシ回転モータ23の駆動によれば、トップブラシ13の回転支持軸21が回転駆動される。
【0020】
また、図2に示すように、他方の台車11Aを案内するガイドレール8の下部と上部には、この台車11Aが下限位置にあることを検出する下限検出スイッチ26と、台車11Aが上限位置にあることを検出する上限検出スイッチ27とがそれぞれ設けられている。
【0021】
図1,3に示すように、走行フレーム2の往行方向後側の上部には、その走行フレーム2の左右方向に延びる案内レール31が支持され、この案内レール31の上部および下部には山形レール31A,31Bが固定されている。案内レール31には、左右一対の台車32L,32Rがそれぞれ往復走行可能に支持され、各台車32L,32Rの上部には、山形レール31A上を転動する駆動輪33および遊輪34が回転可能に支持され、また各台車32L,32Rの下部には、山形レール31B上を転動する一対の遊輪35,35が回転可能に支持されている。各台車32L,32Rには、トルクモータ36L,36Rがそれぞれ支持され、これらのトルクモータ36L,36Rの出力軸に前記駆動輪33,33がそれぞれ連結されている。
【0022】
しかして、各トルクモータ36L,36Rを駆動すれば、各台車32L,32Rをそれぞれ案内レール31に沿って往復走行させることができる。
【0023】
図1,3に示すように、各台車32L,32Rの中間部には、横方向に延びる支持軸37がそれぞれ固定され、これらの支持軸37には、ブラシ支持筒38が軸受を介してそれぞれ左右方向に揺動可能に支持されている。ブラシ支持筒38は上下方向に延びており、その下部には、上下方向に延びる回転軸39が回転自在に支持され、その回転軸39には、後に詳述するサイドブラシ40が設けられている。
【0024】
図1,3に示すように、各ブラシ支持筒38の上部には、モータベース41が固定され、そのモータベース41には、回転モータ42が設けられている。回転モータ42の出力軸に設けたスプロケット43と前記回転軸39の上端に設けたスプロケット44間には無端状のチエン45が掛け渡されている。
【0025】
しかして、回転モータ42を駆動して、後述のサイドブラシ40を回転させることができる。
【0026】
図3に示すように、台車32L,32Rには、支持軸37よりも上部で、ブラシ支持筒38の両側においてストッパー46,47がそれぞれ設けられている。各ブラシ支持筒38は、ストッパー46,47の間において揺動できるようになっており、ブラシ支持筒38がストッパー46に当たると、サイドブラシ40が鉛直位置(図3の位置)になり、またブラシ支持筒38がストッパー47に当たると、サイドブラシ40が傾斜位置になるようにされている。
【0027】
案内レール31の中央部には、台車36L,36Rがそれぞれ閉じた位置(図3位置)にあることを検出する閉スイッチ48L,48Rが設けられ、また案内レール31の左右側部には、台車36L,36Rがそれぞれ開いた位置にあることを検出する開スイッチ49L,49Rが設けられている。
【0028】
図1に示すように、洗車機の設置面上には、スタート位置カム52が設けられ、一方、走行フレーム2には、そのスタート位置カム52に当たって洗車機本体1がスタート位置にあることを検出するスタート位置検出スイッチ53が設けられている。
【0029】
図1,2に示すように、走行フレーム2のトップブラシ13よりも前部には、自動車V(図11参照)の上面位置を検出する車両上面位置検出手段54が設けられている。この車両上面位置検出手段54は、走行フレーム2の左右両側で上下方向にそれぞれ配列される、第1の光電センサ群54A,54B,54C・・・・54Nと、第2の光電センサ群54A′,54B′,54C′・・・・54N′とより構成されており、第1の光電センサ群54A,54B,54C・・・・54N群はそれぞれ投光器であり、第2の光電センサ群54A′,54B′,54C′・・・・54N′はそれぞれ受光器である。
【0030】
そして、図2中、2点鎖線Lは、第1の光電センサ54Aと第2の光電センサ54A′間の光軸を示している。
【0031】
図1に示すように、走行フレーム2の前面には、この洗車機を作動制御するための制御盤55が設けられており、この制御盤55内には、フレーム2に設けられる洗車機器を制御する制御装置56が設けられている。
【0032】
図1中、符号57は、自動車Vの車体上面に乾燥エアーを吹き付けるためのトップノズル、符号58,58は、自動車Vの車体両側面に乾燥エアーを吹き付けるための一対のサイドノズルである。
【0033】
なお、図示しないが、走行フレーム2には、自動車Vに洗浄水を噴射する、従来公知の洗浄水噴射装置が設けられている。
【0034】
つぎに、図2に、図4,6〜9を併せ参照して本発明にかかるトップブラシ13の構造について説明する。
【0035】
トップブラシ13は、左右の台車11L,11Rに固定のトップブラシ支持軸12と、この支持軸12に軸受を介して回転自在に支持される、パイプよりなる回転支持軸21と、この回転支持軸21にリベットRで固定される複数の洗浄体ユニット60とより構成されており、各洗浄体ユニット60は、第1の洗浄体61Aと第2の洗浄体61Bと芯材81とを備えており、円筒状の取付部62と、その取付部62に着脱可能に連結される円板状の押え板63とにより回転支持軸21に軸方向に間隔をおいて固定される。
【0036】
図4,7に示すように、第1の洗浄体61Aは不織布より円盤状に形成され、その放射方向に複数の山折と谷折とを交互に有して周方向に波状に形成されてなる洗浄体素材64を、複数枚(本実施例では3枚)重ね、その一側面に図9に示すように、他の洗浄体素材65を少なくとも1枚(本実施例では1枚)重ねて、それらを図7、8に示すN2,N3位置で同心円状に縫合して構成されている。
【0037】
この第1の洗浄体61Aの作り方について説明すると、図6に示すように、不織布よりなる矩形状の洗浄体素材64の両端N1,N1を縫合してリング状にする。つぎに、リング状の洗浄体素材64を図6に示す複数位置で山折と谷折りして、図7に示すように円盤状にする。
【0038】
つぎに、図8,9に示すように、洗浄体素材64を複数枚(本実施例では3枚)重合させ、その重合体の一側面に図9に示すように、他の洗浄体素材65を少なくとも1枚(本実施例では1枚)重ねた状態で、それらを図7、8に示すN2、N3位置で同心状に縫合する。
【0039】
つぎに、ビク型(トムソン型)で円形Cに切断し、複数のボルト穴H1を明けることで作られる。
【0040】
他の洗浄体素材65は、図8に示すように、平板状の不織布をビク型(トムソン型)で、前記洗浄体素材64の円形Cと同じ外形寸法になるように円形に切断する。つぎに、取付穴H2と、その外周部に周方向に間隔をあけて複数のボルト穴H1を明けることで作られる。
【0041】
また、第2の洗浄体61Bは、第1の洗浄体61Aが洗浄体素材64を複数枚(本実施例では3枚)重ねるのに変えて、洗浄体素材64を、第1の洗浄体61Aとは異なる複数枚(本実施例では2枚)重ねるところが相違し、他は第1の洗浄体61Aと同様に作られる。
【0042】
前記芯材81は、本発明の発泡体製洗浄体を構成するものであって、合成樹脂発泡体シート(例えば本実施例では、厚さ3.5ミリメートルの単泡スポンジシート)で作られる。この芯材81の作り方について説明すると、図10に示すように、ビク型(トムソン型)で、円形Cの外形寸法よりも小さい円形Dに切断する。つぎに、取付穴H2と、その外周部に周方向に間隔をあけて複数のボルト穴H1を明ける。つぎに、取付穴H2から外周までの切り込み82を作り、さらに芯材81の外周部には、比較的浅い深さ(例えば本実施例では約10ミリメートル)の複数の切り込み83を周方向に間隔をおいて入れることで作られる。
【0043】
芯材81の腰が弱くなったときに、前記切り込み82により、後述する複数のボルト・ナットを外せば、芯材81を新しいものに取り替えることができる。
【0044】
つぎに、前述のようにして作られた、第1の洗浄体61Aおよび第2の洗浄体61Bと芯材81とよりなる洗浄体ユニット60の作り方について説明する。
【0045】
1つの第1の洗浄体61Aと、1つの第2の洗浄体61Bと、1つの芯材81を用意し、図4に示すように、第1、第2の洗浄体61A、61Bの、平板状の他の洗浄体素材65が両外側になるようにして、芯材81を第1、第2の洗浄体61A、61Bで挟むように積層し、それら第1の洗浄体61Aと第2の洗浄体61Bと芯材81の積層体の内周部を、取付部62の外周に一体に突設したフランジ部62Fと、取付部62の外周に嵌合した押え板63との間に重ねるように挟持し、それらを複数のボルト・ナット66で固定する。
【0046】
図4に示すように、第1の洗浄体61Aと第2の洗浄体61Bと芯材81とよりなる洗浄体ユニット60は、回転支持軸21に取り付けた状態で、回転支持軸21の回転軸線と直交する直角面に対して傾斜角度β(約20度)傾斜している。
【0047】
つぎに、図1,3に図5を併せ参照して本発明にかかるサイドブラシ40の構造について説明する。
【0048】
このサイドブラシ40は、下段サイドブラシ40Aおよび上段サイドブラシ40Bを、前記回転軸39に固定した、パイプよりなる回転支持軸67に縦列固定して構成されている。
【0049】
下段サイドブラシ40Aおよび上段サイドブラシ40Bはそれぞれ洗浄体ユニットが別の構造を備えており、そのうち下段サイドブラシ40Aは、図5に示すように、回転支持軸67に、トップブラシ13の前記洗浄体ユニット60と同じ構造で外形寸法が相違(本実施例では洗浄体ユニット60よりも若干小径)の洗浄体ユニット60Aと、スポンジ円盤68とを軸方向に交互に且つ間隔をおいて取り付けて構成されている。スポンジ円盤68は、その中央部に前記取付部62のボス部62Aの外形寸法よりも若干小さい取付穴69が斜めに明けられており、このスポンジ円盤68は、それの弾性により取付穴62とボス部62Aとの間に働く摩擦力で、ボス部62Aの所定位置に固定されている。
【0050】
さらに、前記上段サイドブラシ40Bは、回転支持軸67に、トップブラシ13の前記洗浄体ユニット60と同じ構造で、外形寸法が相違する複数の洗浄体ユニット60Bを軸方向に間隔をおいて取り付けて構成されており、それらの洗浄体ユニット60Bの回転支持軸67に対する取付角は、洗浄体ユニット60Aと同じである。
【0051】
つぎに、主に、図11を参照して、この実施例の作用について説明する。
【0052】
洗車機に設けた、図示しないスタートキーが押されると、洗車機本体1はスタート位置から往走行する。この往走行時に、トップブラシ13およびサイドブラシ40,40で被洗浄車両、この実施例では自動車Vの車体面を洗浄する。このとき、トップブラシ13は、図11に示す矢印方向すなわち反時計方向に回転する。サイドブラシ40は、図13で左側のサイドブラシ40が上から見て反時計方向に、また図13で右側のサイドブラシ40が上から見て時計方向にそれぞれ回転する。
【0053】
トップブラシ13は、車両上面検出手段54で検出した車両上面位置と、ロータリエンコーダ51で検出した洗車機本体1の走行位置と、ロータリエンコーダ28で検出したトップブラシ13の昇降位置とにより、トップブラシ13の回転軸線から車両上面までの距離S(図14参照)を一定として車両上面に追従するように、昇降モータ14を制御することで昇降される。尚、図14の(A)は、洗浄体ユニット60の盤面が車両上面に対し最大限(即ち約20度)傾斜している状態(後述する図15の(A)(E)の状態)を示しており、また図14の(B)は、洗浄体ユニット60の盤面が車両上面に対し直交している状態(後述する図16の(C)(G)の状態)を示しているが、その何れの状態でも芯材81の外周端は車両上面の近傍に位置している。
【0054】
一方、サイドブラシ40,40は、トルクモータ36L,36Rを制御することで、一定の押付力で車体側面に接触する。
【0055】
ところで、トップブラシ13による自動車Vの洗浄過程において、トップブラシ13の回転により、図12(A),(B)に示すように、洗浄体素材64,65の外周部が、自動車Vの車体面上を左右に移動する。この左右移動により、洗浄体素材64,65の先端(即ち外周端)は、図17に示すようにトップブラシ13の進行方向に向かって回転支持軸21の軸方向一方側又は他方側(図17で上方側又は下方側)の斜め方向a,bに車体面に対し擦り移動する。そして、この斜め方向a、bの擦り移動により車体面に対する洗浄効果を向上させることができる。
【0056】
図17において、洗浄体素材64,65の先端は、移動方向a,bで示す方向に移動し、その移動方向は範囲am〜bm間で変化する。
【0057】
次に、主に、図15,16を参照して、車体面に対し洗浄体素材64,65の外周部(先端部)が、トップブラシ13の進行方向に対して斜め左右方向a,bに擦り移動する作用を説明する。
【0058】
図15(A)は、洗浄体ユニット60の盤面が車体上面に対し最大傾斜角度(即ち20度)傾斜しているときを示す。この状態をトップブラシ13の回転の基点0度とする。
【0059】
このとき、洗浄体ユニット60の車体上面に接触している外周部は、(A)正面図、平面図に示すように右に曲がる。(尚、この右に曲がる作用は後述する。)
この状態では、トップブラシ13の回転により、(A)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、アの範囲においては平面図でブラシ進行方向に向かって斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またイの範囲においては平面図でブラシ進行方向に向かって斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0060】
また、この状態では、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60と車体上面との摩擦により、平面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部のウ部付近が右方向へ移動し難くなることと、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60のエ部付近の遠心力でエ部付近が(A)正面図、平面図で右方向へ曲がり、この曲がりと前記ア、イ範囲の接触部の曲がりとが干渉することとで、オ部が(A)正面図、平面図で左方向へ脹らみ、このオ部の脹らみにより、ア範囲にある接触部は平面図で左方向すなわち矢印b方向へ移動する。このとき、ア、イ範囲にある接触部は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記ア、イ範囲にある洗浄体ユニット60の部分が占める位置付近まで移動するので、矢印b方向の、トップブラシ13の進行方向に対する角度αは大きくなる。
【0061】
そして、トップブラシ13がさらに回転すると、前記エ部は、遂にはトップブラシ13の回転による遠心力で右方へ曲げる力に抗して、(B)正面図、平面図に示すように左方へ曲がり、その曲がり状態で車体上面と接触する。このとき、前記エ部は、(B)正面図、平面図に示すように、洗浄体ユニット60の外周部(先端部)の腰とこの外周部より中心側の腰により、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記エ部が占める位置よりも左側の位置に保持される。
【0062】
尚、オ部が膨らむことは、基点0度の位置のみで起きるのではなく基点0度の近傍の回転位置でも起きる。
【0063】
前記基点(A)から45度回転した(B)の回転位置までトップブラシ13が回転すると、(B)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、カの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またキの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0064】
そして、トップブラシ13が前記(B)から更に45度回転して(C)になると、(C)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、クの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またケの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0065】
次いで、トップブラシ13が前記(C)から更に45度回転して(D)になると、(D)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、コの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またサの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0066】
次いで、トップブラシ13が前記(D)から更に45度回転して(E)になると、(E)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、シの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動し、またスの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動する。
【0067】
この(E)の状態では、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60と車体上面との摩擦により、平面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部のセ部付近が左方向へ移動し難くなることと、トップブラシ13の回転による洗浄体ユニット60のソ部付近の遠心力でソ部付近が(E)正面図、平面図で左方向へ曲がり、この曲がりと前記シ、ス範囲の接触部の曲がりとが干渉することとで、タ部が(E)正面図、平面図で右方向へ脹らみ、このタ部の脹らみにより、シ範囲にある接触部は平面図で右方向すなわち矢印a方向へ移動する。このとき、シ、ス範囲にある接触部は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記シ、ス範囲にある洗浄体ユニット60の部分が占める位置付近まで移動するので、矢印a方向の、トップブラシ13の進行方向に対する角度αは大きくなる。
【0068】
そして、トップブラシ13がさらに回転すると、前記ソ部は、遂にはトップブラシ13の回転による遠心力で左方へ曲げる力に抗して、(F)正面図、平面図に示すように右方へ曲がり、その曲がり状態で車体上面と接触する。このとき、前記ソ部は、(F)正面図、平面図に示すように、洗浄体ユニット60の外周部(先端部)の腰とこの外周部より中心側の腰により、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合に前記ソ部が占める位置よりも右側の位置に保持される。
【0069】
尚、タ部が膨らむことは、基点から180度の回転位置のみで起きるのではなく、その180度の近傍の回転位置でも起きる。
【0070】
前記(E)から45度回転した(F)の回転位置までトップブラシ13が回転すると、(F)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、チ範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またツ範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0071】
そして、トップブラシ13が前記(F)から更に45度回転して(G)になると、(G)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、テの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またトの範囲においては平面図で左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0072】
次いで、トップブラシ13が前記(G)から更に45度回転して(H)になると、(H)左側面図に示す洗浄体ユニット60の車体上面との接触部は、ナの範囲においては平面図で斜め右方向すなわち矢印a方向へ移動し、またニの範囲においては平面図で斜め左方向すなわち矢印b方向へ移動する。
【0073】
そして、トップブラシ13が前記(H)から更に45度回転して前記(A)の回転位置に戻る。
【0074】
以上において、前記芯材81が設けられない場合は、洗車台数の増加にしたがって洗浄素材64,65の車体上面との接触部の腰が減少すると、例えば図15(B)のときに、カ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印b方向に移動する距離が小さくなる。また、前記カ範囲の接触部よりも中心側の腰が減少すると、例えば図15(B)のときに、その中心側は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合にその中心側が占める位置よりも右側へ移動する。これにより、その接触部が矢印b方向に移動する距離がさらに小さくなり、すなわち、矢印bの前記角度αは小さくなる。また、前記のように矢印b方向に移動する距離が小さいので、キ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印a方向に移動する前記角度αは小さくなる。このように、他の回転角度のときも矢印a、bの角度αは小さくなる。
【0075】
これに対して、前記芯材81があると、洗車台数の増加にしたがって洗浄素材64,65の腰が減少しても、芯材81の弾力により、洗浄ブラシの進行方向に対する洗浄素材64,65の先端部の左右方向への移動を助勢することができる。
【0076】
すなわち、カ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印b方向に移動するのを芯材81が助勢するので、その移動距離が大きくなる。また、前記カ範囲の接触部よりも中心側の腰が減少しても、芯材81の弾力により、その中心側は、トップブラシ13が仮に車体上面と接触せずに自由状態で回転した場合にその中心側が占める位置よりも右側へ移動する距離が小さくなる。
【0077】
これにより、その接触部が矢印b方向に移動する距離がさらに大きくなり、すなわち、矢印bの前記角度αは大きくなる。また、前記のように矢印b方向に移動する距離が大きいので、キ範囲にある洗浄体ユニット60の車体上面との接触部が矢印a方向に移動する前記角度αは大きくなる。このように、他の回転角度のときも矢印a、bの角度αは大きくなる。
【0078】
かくして、洗車台数の増加にしたがって布製洗浄体61A,61Bの腰(弾力)が減少して、トップブラシ13の被洗浄車両に対する進行方向に対して布製洗浄体61A,61Bと車体面との接触部の移動方向角度(α)が小さくなり洗浄効果が低下することを、芯材81を用いた簡単な構造で低減することができる。
【0079】
サイドブラシ40,40は、洗浄体素材64と他の洗浄体素材65の外周部が上下に移動する。これにより、トップブラシ13と同様の効果を生じる。
【0080】
また、下段サイドブラシ40Aは、図5に明瞭に示すように、洗浄体ユニット60Aとスポンジ円盤68とが交互に配設されるので、自動車Vの車体がサイドブラシ40の回転支持軸67に近づき過ぎるのを防止して、洗浄体素材64、他の洗浄体素材65や車体が傷むことを防止できる。
【0081】
さらに中段サイドブラシ40Bの中間部ブラシ40Bnは、発泡体により構成したので、ドアミラーMやフェンダミラーなどの車体の上下方向の中間部分より突出する付属機器が破損するのを防止できる。
【0082】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0083】
たとえば、前記実施例では、本発明を、被洗浄車両に対し洗車機本体1を走行させる洗車機に実施した場合を説明したが、コンベアなどの移送手段により被洗浄車両を移送する洗車機にも実施できる。
【0084】
また前記実施例では、発泡体製洗浄体としての芯材81を洗浄体61A,61Bよりも小径のものを使用したが、本発明では、芯材81を洗浄体61A,61Bよりも大径、又は同径のものを使用してもよい。
【0085】
また前記実施例では、発泡体製洗浄体としての芯材81を洗浄体61A,61Bに密着状態で隣接配置したものを示したが、本発明では、発泡体製洗浄体としての芯材81で洗浄体61A,61Bに、本発明の効果を達成可能な十分な弾力を付与できるのであれば、芯材81を洗浄体61A,61Bに小間隔をおいて隣接配置してもよい。
【0086】
また前記実施例では、発泡体製洗浄体としての芯材81の両側に布製洗浄体61A,61Bを配置するものを示したが、本発明では、発泡体製洗浄体としての芯材を布製洗浄体の両側に配置するようにしてもよい。
【0087】
また、本発明は、布製洗浄体を構成する洗浄体素材64,65に不織布を用いたが、これに代えて織布、編布などの他の布を用いることができる。
【0088】
また、前記実施例では、回転支持軸21,67に円盤状の布製洗浄体61A,61Bを該回転支持軸21,67の回転軸線に対し傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備えた洗車機を示したが、本発明(請求項1)は、回転支持軸に円盤状の布製洗浄体を該回転支持軸の回転軸線に対し直交させて取り付けた洗浄ブラシを備えた洗車機に実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
2・・・・・・フレーム(走行フレーム)
13・・・・・・洗浄ブラシ(トップブラシ)
21・・・・・・回転支持軸
40・・・・・・洗浄ブラシ(サイドブラシ)
61A・・・・・洗浄体(第1の洗浄体)
61B・・・・・洗浄体(第2の洗浄体)
67・・・・・・回転支持軸
81・・・・・・発泡体製洗浄体(芯材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、 前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とする、洗車機。
【請求項2】
回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を該回転支持軸の回転軸線に対し傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、
前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とする、洗車機。
【請求項3】
前記発泡体製洗浄体は、隣り合う前記布製洗浄体の間に挟まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗車機。
【請求項1】
回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、 前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とする、洗車機。
【請求項2】
回転支持軸に複数の円盤状の布製洗浄体を該回転支持軸の回転軸線に対し傾斜させて取り付けた洗浄ブラシを備え、その洗浄ブラシを被洗浄車両の車体面に沿って進行させながら前記回転支持軸の回転軸線回りに回転させて、該車体面を前記布製洗浄体でブラッシング洗浄できるようにした洗車機において、
前記布製洗浄体に、弾性を有して円盤状に形成される発泡体製洗浄体を隣接配置し、この発泡体製洗浄体の弾力により、前記車体面に対する前記布製洗浄体の、洗浄ブラシ進行方向に向かって前記回転支持軸の軸方向一方側及び他方側への斜め方向の擦り移動を助勢することを特徴とする、洗車機。
【請求項3】
前記発泡体製洗浄体は、隣り合う前記布製洗浄体の間に挟まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗車機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−71711(P2013−71711A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214196(P2011−214196)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000210595)タケウチテクノ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000210595)タケウチテクノ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
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